この話を語るとしたら、いったいどこから始めればいいだろうか。

無くすことができた日?
一緒に暮らすようになった日?
人生の決断をした日だろうか?
いや、やはりここは無難にいこう。
ああ、彼女と初めて会った日がいいだろう。
うん。よし。そうしよう。
昔のことにはなるがまあ大丈夫さ。

そう言って彼はぽつり、ぽつりと話し始めた。

高校の入学式だよ、彼女と会ったのは。
高校と言っても田舎の小さな高校でね、今はもうとっくに廃校になってしまった。
クラスメイトも29人しかいなかったよ。
入学式当日のことはよく覚えている。
体育館で式を終わらせた後教室に移動してね、簡単なホームルームをしたよ。
左の列から名前順に座らされてね、自己紹介をした。
出席番号も覚えているよ。僕は10番だった。
いやあ。僕は人見知りでね。自分の番が迫ってくるとドキドキしたもんさ。