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神様は私を化け物にした1

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  1. 1 : : 2018/07/19(木) 20:02:13
    一緒に居て楽しいと思える人を見つけたい。

    面白い話をしてくれる人を見つけたい。

    対等に見てくれる人を見つけたい。


    そんな人を見つけられるなら

    他の人達から

    化け物扱いされてもいい。

    その人に会えるなら監禁されてもいい。

    命さえあればそれ以外を差し出してもいい。


    そして…その人と友達になりたい。


    だけど私は吸血鬼だから

    存在してはいけないから

    生きてはいけないから

    神様はそんなこと

    許してくれるはずなかった。
  2. 2 : : 2018/07/20(金) 19:07:35
    「化け物が!」

    「お前なんか死んじまえ!」

    そっか…私は生きてはいけないのか。お母さんとお父さんが言ってるから間違いないね。でもね…私は不死身だから死ぬことができないの。

    不死身だから怪我をしても治るの。
    不死身だから食事をしなくても食の欲にまみれるだけなの。
    不死身だから寝なくても眠気が襲ってくるだけなの。
    不死身だから溺れても、火炙りされても、生き地獄を味わうだけなの。

    だから私は…謝ることしかできないの。

    「ごめんなさい」

    そう言うと、決まってお母さんは、

    「うるさい!お前なんか産まなければよかったよ!」

    って言うの。

    「ごめんなさい」

    これを毎日繰り返して、毎日ごめんなさいって言うの。でもね…私はこれでいいと思ってる。生きてはいけないのに、生かしてくれてるから。友達は欲しいけど…そんなわがまま…言っちゃいけないよね。
    だって私は…悪い子なんだから。生きてはいけないのだから。

    だけど、お母さんとお父さんの生命は今日までだった。
  3. 3 : : 2018/07/20(金) 21:31:32
    次の日になっても、何も変わらず怒鳴られている。

    「死ね!」

    死んであげたい。私が生きても意味が無いのだから。しかし私は死んであげることすらできないの。

    「お前のせいで私達がどれだけ大変な目にあってるか……!」

    「な、何だ!この地震は!?」

    お母さんの言葉を遮って、かなり大きい地震が発生した。今までここまで大きい地震は初めてだった。地震が止まると、お母さんとお父さんは急いで外に出た。私は外に出ない。
    だってお母さんに言われたの。

    外に出るなって。

    「な、何あれ…」

    最初に声を出したのはお母さんだった。声だけで分かる…お母さんは怯えている。何かに…怯えている。

    「巨…人…?」

    お父さんも怯えている。巨人?巨人と言えば、外の世界にいる化け物らしい。化け物から…巨人から身を守るために人類は壁を築いたと、昔聞いたことがある。
    一体お母さんとお父さんには何が見えているのだろうか。気になったから少し外を見ていた。すると、すごく大きな音と共に瓦礫が飛んできて、私は瓦礫に潰された。下半身の原型はもう無くなっている。自動的に、無理やり傷が回復するので、グチャグチャになって回復して、グチャグチャになってまた回復する。その繰り返しだ。
    すごく痛い…

    「巨人が…入ってきた!?」

    「急いで逃げるぞ!」

    お父さんがお母さんを引っ張って逃げてしまった。そうか…私はとうとう…捨てられたのか。
    私が悪い子だったから…

    「ごめんなさい」

    そう呟いていると、入ってきた巨人がお母さんとお父さんの方へ歩いていた。だいたい10mくらいだろうか。姿は人間が裸になって、大きくなったみたいな…そして彼らは笑っている。笑いながらお母さんとお父さんを呆気なく食べてしまった。すると今度は私の方へ歩いてきた。巨人に食べられれば死ねるのかな…

    だけど巨人は予想外に瓦礫をどかしただけで、あとは何もしなかった。

    「……え?」

    巨人は人間を食べる化け物じゃ…
    殺戮を好む生き物なんじゃ…
    困惑していた私だったが、すぐに理解した。

    「…あ」

    私は何を言っているのだろうか。
    私は人間じゃない、姿形だけが似ている化け物。
    一瞬でも死ねることに喜びを感じていた自分が馬鹿みたいだ。
    死ぬことなんてできないのに。
  4. 4 : : 2018/07/21(土) 05:43:37
    きたーい
  5. 5 : : 2018/07/21(土) 20:29:09
    20秒ほどすると足が回復したので、外を歩いてみることにした。私の記憶の限りだと、初めて外を歩いた。

    初めて家を外側から見た。
    初めて道路を見た。
    初めて家族以外の人間を見た。

    そして…初めて壁を見た。

    あれが3つの内の1番外側の壁…ウォール・マリアか。思ったよりも大きい。50mくらいだろうか。一体どのような造りになってるのだろう…。そして…どうやって巨人は入ってきたのだろう…

    「そこの君!早く逃げなさい!」

    そんなことを考えていると、腰に変な装置を付けていて、見たことない服を着ている人に声をかけられた。えっと…なんて言えばいいかな…。そもそも逃げる理由が分からないよ…
    それに…なんで私を助けるの?
    私は生きてちゃいけないんでしょ?
    私は化け物だって、お母さんとお父さんが言ってたよ?
    私は何が何だか分からなかったので、あやふやなままこう答えた。

    「な、何で?」

    すると相手は切羽詰まってる状態だったので、少し怒りながら、

    「は!?そんなの巨人に食われるかもしれないからだろうが!お前は生きたくないのか!?」

    私は巨人に食べられないから大丈夫。
    それに私は化け物なの。
    生きることはしてはいけないの。
    そう説明しようといたのに…

    「もういい!こっち来い!」

    私の体を掴んで走り始めてしまった。どこに行こうとしてるか分からないけど、生きるために走っているのは何となく分かった。
    なんで私を生かそうとするの?
    この人は知らないのかな…。私が化け物だってことを…
    そんなことを考えていると、門をくぐって水の上に大きな機械が浮かんでいる場所に来た。私を助けた人は何か話している。

    しかし私はそんなことより、この機械が不思議でたまらなかった。

    これはどうやって浮いてるのだろう。乗っているのは見える限りで1000人くらいだろうか。こんなに乗って潰れないのかな…。これに乗って何をするのだろう。

    「君!早く乗りなさい」

    似たような服を着た人に言われた。私は頷いた。この機械に興味があったので乗ることにした。

    それに…もしも許されるのなら…死ぬことについて考えるのは…ほんの少し遅らせようと思った。

    この機械に乗っている人達の声は、怖い…助けて…もう終わりだ…嫌だ…死にたくないだった。
    みんな絶望して…みんな涙を流していた。悲しまない人間はいなかった。
    私には分からない感情だった。それもそうだ、私は人間ではないのだから。人間の感情が…わかるわけが無い。

    吸血鬼如きが人間様になろうだなんて…あってはいけない。

    そんな話…あってはいけない。

    そんな願望を…持ってはいけない。
  6. 6 : : 2018/07/23(月) 12:42:10
    「この便は満員だ!!出航する!!」

    さっき私を助けた人と同じ服を着た人がそう叫んだ。意味はよくわからないけど、この機械に乗れなかった人はこれ以上ないくらいに絶望している。叫んでいる内容を聞いていると…恐らくこの機械が動くのだろうか。と思っていたら、本当に動いた。
    勝手に動いている。
    この人数を乗せて動いている。
    スピードも速かった。

    すごい…

    この一言に尽きた。
    体が勝手に動いていた。
    この機械の縁と呼ばれる部分に向かって足が動いていた。
    私の表情は自然と…無邪気な赤ん坊のように笑っていた。

    目は自然と見開いて…
    口も自然と開いていて…
    無邪気にはしゃいでいた。

    他の人が絶望している中…私だけが笑っていた。
  7. 7 : : 2018/07/23(月) 21:37:19
    1時間ほどで着いてしまった。もう少し乗りたかったけど…そんなわがまま…駄目だよね…

    それにしても…ここ…何処?

    どうしよう…どうすればいいのかな…

    さっきみたいに歩き回ってれば何か分かるかな?
    とりあえず死ぬことはないので、適当に歩くことにした。同じ場所も何度も通り、ウォール・マリアの東にあるカラネス区を何周かしていると、いつの間にか1週間くらい歩き続けていた。流石に疲れてきたのでベンチで休むことにした。

    「はぁ…疲れた…」

    ここまで歩き回ったのは初めてだけど…結局何もわからなかった…

    「でも…生きる意味はないから…分からなくてもいいよね…」

    あの機械以来、特にこれといって凄いものはなかったし…

    「はぁ…何しようかな…」

    歩き回って疲れたせいか、座り込んで寝てしまった。
  8. 8 : : 2018/07/24(火) 17:07:41
    ーーーーー

    「ギャァハハハハ!ギャァハハハハ!!」

    お父さん、お父さん、破壊って楽しい?

    「いいわねぇこっちも開いてぃ?いいでしょ?開いちゃうわねぇ。やっぱりこれも素敵ねぇ」

    お母さん、お母さん、臓器見るの楽しい?

    血まみれの少女は不思議そうに聞いています。
    すると2人は揃って

    「楽しい」

    そして

    「産まれてくれありがとう」

    と、幸せそうに答えるのです。

    ーーーーー
  9. 9 : : 2018/07/25(水) 07:48:54
    「……」

    何…さっきの夢…さっきのあれは…誰?
    あの女の子もあんなことされてるのに…痛みを感じてないかのように…

    「……怖い…」

    もう忘れよう。その方がいい。
    それにしてもまだ夜中か…どれぐらい寝てたんだろう………そうだ…そうだよ…私…寝ちゃったんだ…。そんなことを考えながら動こうとすると、クチャという音が鳴った。そして…そこを見てみると…

    「……」

    案の定、人間の無残な死体が転がっていた。
    忘れてた…どうして寝なかったのか…どうして寝ようとしなかったのか…忘れてた…10年も何も食べなかったから、注意すべきだったのに…間違いない、この人は私が食べた。
    私の口の周りと手がベタベタだ…後で川で洗わないと…

    「きゃぁぁぁぁ!!!」

    反射的に逃げた。あとから気づいたが、あれは散歩していた女の人の悲鳴だったらしい。それにしても…次からは気を付けないと…
  10. 10 : : 2018/07/25(水) 22:14:48
    あれから1ヶ月ぐらい経った。今は少し危険を感じた為、ウォール・マリアの南にあるトロスト区にいる。
    しかし…

    「あの事件、まだ犯人がわかんないんだとよ」

    「確か、食われた痕跡があったんだろ?」

    「噂だと人間じゃねぇって話もあるらしいぞ」

    「いくら何でも、んな馬鹿げた話あるか」

    また噂が流れてる…ここならまだ容姿まで流れてないけど…ついつい反応してしまう…

    「…」

    「君、そんなに険しい顔してどうしたの?」

    「!!!??」

    本当はこのビックリマークとクエスチョンマークだけでは足りないけど、とにかく驚いた。今まで話しかけられたことがなかったから。
    振り向いてみると、見る限りどこにでもいるような、黒髪のロングヘアで顔はそこそこ整ってる年上のお姉さんという感じだ。
    いやそんなことより、

    「だ、誰!?」

    「そんなに驚くとは思わなかったよ。吸血鬼ちゃんは面白い反応をするねぇ。そうそう自己紹介が遅れた。私は君のことなら何でも知ってるおねぇさんだよ」

    ……?

    「私のこと…今なんて言った?」

    「ん?何かおかしなことを言ったかい?吸血鬼ちゃん」

    「………なんで…?」

    「なんで知ってるか?それはさっきも言ったろうに。私は何でも知ってるおねぇさんだって。信じられないかい?それなら…」

    「なんで…なんで知ってるの…?吸血鬼だってこと…お母さんとお父さん…お姉ちゃんしか知らないはずなのに…なんで!」

    私はおねぇさんの言葉を遮った。おねぇさんのことで頭がいっぱいになって、感情的になっていた。するとおねぇさんは自信たっぷりに、

    「当たり前だろう?君のことなら何でも知ってるよ」
  11. 11 : : 2018/07/26(木) 17:16:07
    このあと何があったか覚えていない。覚えてないぐらいに衝動的になっていた、と思う。
    何も言わずに無反応だったかもしれないし、息を荒くしてたかもしれない。何も覚えていない、が正解かな。
    今は誰もいない路地裏にいた。
    理由は
    『私には家という家がないんだ。そしてこれから話す会話は誰にも聞かれたくない。だから誰もいない所に行こう。そこでじっくり話してあげるよ』
    とのことである。そして現在に至る。

    「それで…おねぇさんは私に何の用なの?」

    「最初の質問がそれか。まぁいい、理由は簡単さ。君が吸血鬼だからだよ。それだけさ」

    「それだけって…なんで吸血鬼なのに会おうとしたの?」

    「さぁ、なんでだと思う?」

    「えっと…」

    吸血鬼と会うのにメリットなんて…デメリットとしか出てこない…
    吸血鬼は人間を食べる。だから、会えば普通は食べられると思うだろう。もしも私が人間を沢山食べるような性格だったら、もうおねぇさんはとっくに食べられてる…。でもこのおねぇさんは私のことを知っている。そもそも

    「なんで私が吸血鬼ちゃんのことを知ってるかって?」

    「ふぁ!?」

    「ププッふぁ!?って、可愛いことするねぇ。面白いよ」

    笑われた…。というかなんで分かったの!?心の中を見られてる気分になって…なんだかおねぇさんが怖いよ…
    ……怖いといえば、

    「おねぇさんは怖くないの?」

    「何が?」

    「だって…私は…化け物なんだよ?」

    昔からお母さんとお父さんに言われていた呼び名…化け物。
    私の固有名詞が化け物で、
    私の印象が化け物だった。
    怖いと思われるのが当たり前だった。

    だけどおねぇさんは、

    「吸血鬼ちゃんが化け物?私はそう思わないけど」

    それをバッサリ否定した。
  12. 12 : : 2018/07/29(日) 19:27:05
    「……私の…何処が…化け物じゃ…ないの…?」

    私の声はとても震えていた。今まで信じていたものが裏切られた感じがした。

    「逆にどこが化け物なんだい?こんなに可愛い子が化け物のわけないだろう」

    「で、でも…」

    「私は人を食べるから、お母さんとお父さんに言われたから、私は化け物だとでも?」

    おねぇさんに遮られ、私が話そうとしたことを全て言われた。
    何気に声真似をしていたけど、私はこんなに幼い声をしてるかな…?

    「……うん…」

    「でもさ、それだけで化け物扱いになるの?人間だって生きるために豚や牛を殺して食べてるじゃないか。それと同じようなもんだろ?」

    「でも…動物でしょ?人間とは違う…」

    「いけないねぇ吸血鬼ちゃんは。それは動物を差別してるよ」

    「差別…?」

    「そう。動物も人間も吸血鬼も、全て平等な命で同じ命だ。そしてその命を生きるためとはいえ、奪うんだ。理由はどうであれ、人間が動物を殺すのは吸血鬼が人間を殺すのと同じだと思わないかい?」

    「そして」と強調し、

    「人間を殺して食べるのが化け物なら、人間は動物を一体何匹殺してる?無意味に殺してる時だってある。ならさ、人間も化け物になると思わないかい?いや、化け物以上の化け物だ」

    なんだか長くて頭が混乱してきた…言ってる意味は何となく分かる。
    だけど…理屈はわかったけど…納得はしたけど…実感が湧かない。

    「なら…お母さんとお父さんは何で私を化け物扱いしたの?」

    「怖いからだよ」

    「それは…私が化け物だから?」

    「正確には食べられたり殺されるかもしれなかったからだ。ただの食事をいけないことだと思わせて食べさせなかった。そして、その行為を化け物扱いした。でも、食事をするのはいけないことかな?」

    「……分からない」

    「徐々に分かればいいんだよ。今は思いっきりおねぇさんと遊ばない?今まで遊んだこと無かったろ」

    おねぇさんは微笑みながら言ってくれた。私はこの表情を、どこかで見たことがある気がした。
  13. 13 : : 2018/08/10(金) 13:54:12
    俺の方が化け物何だけど?

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著者情報
usapen3140

キルレイ

@usapen3140

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