モノクマ「はふっはふっ」
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- 1 : 2018/04/24(火) 23:48:21 :
- 春のコトダ祭り作品〜〜
テーマ:戦い
特別ルール:どのような形でもいいので作品に1つ嘘を入れること。
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- 2 : 2018/04/24(火) 23:50:02 :
「ここ最近の旦那さんの周りを調査したものです」
何枚かの写真とその時の時間帯を加えたファイルを依頼者に渡した。依頼者はそれを開くと、長く溜息を吐き、手をわなわなと震わせる。
「お気の毒ですが、旦那さんは…」
「…ありがとうございました。後は弁護士と話し合ってみます」
「はい、また何かあったらご連絡ください」
喫茶店から出ると、てんとう虫が鞄に飛び乗り3センチほど移動した。春が近づいているのか、最近は虫を多く見る。幼少の頃に比べ苦手意識が強くなってしまった虫だが、風情を感じさせるものとして今は最適であった。今年の春は桜を見る暇なんてないだろう。てんとう虫に向かって、ふっ、と息を吹きかけるとそのまま別の所に飛んで行った。
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- 3 : 2018/04/24(火) 23:51:21 :
ダンガンロンパが終わって数年が経った。生き残ってしまった僕たちは、それぞれ記憶にない自分の居場所で暫く生活していた。
そこはフィクションの中にいた時の記憶とは違う。探偵稼業を営んでいる叔父もいなければ、親は海外に飛び立ってまでの仕事はしていない。ごくごく普通の、異常ではない家庭だった。円満な家庭とは言い難いが、周囲から同情される程でもない。
きっとあの2人も、いや、ダンガンロンパを志望した人間のほとんどはそうだったのだろう。どこか満ち足りなさを感じ、刺激を求めて行き着いたのがダンガンロンパだった。そんなことは、探偵でなくても容易に想像がつく。誰もが考えていることだと認識していたから、罪悪感に陥ることすらなかった。
人を殺したいと意思のままに動いた、といったおぞましい選択をしたことすら、懐かしい思い出となることも想像がつく。あれは既に、自分の中では過去の出来事と成り果てていた。
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- 4 : 2018/04/24(火) 23:52:41 :
今日仕事を早めに切り上げたのは、旧い知人と会う約束をしていたからだ。待ち合わせの時間5分前に時計塔に着くと、彼女がこちらに視線を投げているのがわかった。腰より長かった髪をバッサリと切り、彼女からは以前より知的な印象が見て取れた。
「時間ギリギリに来る癖は、まだ変わんないみたいだね、最原」
こちらを睨みながら、呆れた声音を出す姿は、春川魔姫そのものであった。睨み付けられているように感じるのも、久々に彼女の視線に当てられるからかもしれない。ふと腕時計を見ると、5分遅れでズレていることがわかった。
「春川さん、久しぶりだね。元気だった?」
「まあね、仕事も順調だし」
「それは良かった。確か、警察官だっけ?」
「うん、非行少年とかを相手にしてる。だから最原と偶然にも殺人現場で仕事場が被ったり〜、なんてのは無さそうだけど」
「僕が殺人事件を担当したことはないよ」
「へぇ、意外だね。いや、そりゃそうか…元々そういう設定だったもんね」
僕が殺人事件を解決したのは一度だけ、そういう設定だった。その解決がトラウマになっていたが、今後の展開で成長することが約束もされていた。そう組み込まれていた。それにより得られた能力だが、使った方が生きやすいのも事実であった。
「まあ、暗殺者が警官なんて皮肉だよね。法を犯す側だったのに」
「そうかな?実際には春川さん、人を殺してないよね」
「そうだけど、人を殺した記憶は残ってる。これが理由で採用にも一悶着あったらしいし」
春川は短くなった髪の先を指先で遊び、何かに気づいた様に空を見上げた。
「少し降ってきたね」
「野外だったよね?雨天中止にならなければいいけれど…明日でも使えるらしいよ」
持っていた招待券を確認すると、ショーの開催期間であればいつでも使えることは間違いがなかった。
「行くよ、折角半休取ってきたんだから」
春川は数歩前を行き、早く行くよ、と言う風に視線を送り、駅の方へと足を進めた。
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