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第一章覚醒

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  1. 1 : : 2018/03/12(月) 17:54:03
    初めてです。
    よろしくお願いいたします。
  2. 2 : : 2018/03/12(月) 18:03:06
    夜。
    少女は、毛布にくるまっていた。
    130センチメートルあるかないかの体を、
    すっぽりと覆っていた。
    あまりの寒さに身体は、カタカタと、震えていた。夜中、少女が起きてしまったとき、母親が着せてくれた毛布は、くたびれ、所々穴もあいていたが、どうでもよかった。
    華泉アリサ、それが彼女の名前だった。
  3. 3 : : 2018/03/12(月) 18:11:19
    季節は冬だった。
    彼女達がすんでいるこのアパートは、アリサ、が生まれる前からそこにあった。
    母、華泉ツクヨは無能力者だった
    ―だからいつも借金に追われていた―仕事がなかった。ツクヨは水商売をしていた。
    生憎、持っているのは、顔と女の身体。出きる仕事などあって無いようなものだった。
  4. 4 : : 2018/03/12(月) 18:19:28
    アリサは気づいていた。
    幼いながらも賢い子供だった。
    年齢6歳。
    普通なら、もう幼稚園は卒業している。
    理由などわかっていた。
    我慢することを覚えてしまっていた。
    救いの手は、差し伸べられなかった。
    仕方なかったのだと、あきらめていた。
    気づくと、母親は居なくなっていた。
    自殺だった。
  5. 5 : : 2018/03/12(月) 18:25:54
    あの、悲惨な光景を、小さな目に、肌に、
    五感全てに、―心に―焼き付けていた。
    今でも夢に出る。
    物語は決まっていて、いつも母親との楽しい、
    楽しい、記憶だった。
    嬉しかった。夢心地だった。
    夢の中でも、母親にあえるならと。
    わかっているのだ。心の何処かで。いけないのだと。
  6. 6 : : 2018/03/12(月) 18:31:35
    そして、そのあとに。
    母が死ぬ。ただの肉の塊となって、私に助けを求めてくる。
    そして、私はただひたすらに、謝る。
    地面に顔を擦り付け、だだひたすらに、神に募る信者のように。ただだだひたすらに。
  7. 7 : : 2018/03/12(月) 18:35:06
    ごめんなさい、と
  8. 8 : : 2018/03/13(火) 08:04:21
    そこで夢は覚める。
    そして、私は白い息を吐き出す。
    開け放たれた窓からは、凍てつくような、空気が、少女の部屋へと、侵入してきていた。
    少女はそれを、甘受していた。それが当然の定めかのように。
    カラカラに乾いた喉と唇は、もはや機能していなかった。
    表情筋を少しでも動かせば、脆くわれてしまいそうだ。
    アリサは、それすらもどうでもいい。
    まだ、母親との記憶を思い返していた。
    そして、少し微笑んだ。
    久しぶりの笑みだった。
  9. 9 : : 2018/03/13(火) 08:10:19
    常時、低い体温は、底なし沼みたいに際限を知らないようだ。
    ふと、時計を見る。
    5時13分だった。何時もより、早く起きてしまったようだ。
    布団を押しやる。
    アリサは、
    まだ微笑みを崩してはいなかった。
  10. 10 : : 2018/03/13(火) 08:28:17
    ドアを開ける。それだけの行為が、酷く億劫だった。面倒くさい。
    ほんのすこしだけ、眉にしわがよった。
    階段を降りる。10段だけなのに、永遠に有るように感じた。そんなこと、あるわけないのに。
    やっと、リビングへと降りた。ペタペタと、裸足特有の、不快な音を我慢しながら台所へ向かった。
    棚から、コップを取り出す。
    蛇口をひねった。
  11. 11 : : 2018/03/13(火) 14:41:26
    水がてで来る。
    当たり前の事が、奇跡のように思えた。
    コップを真下に。
    水が入ってくる。ひとつの落ちこぼれもなく、静かに、静寂に。私はいるはずのない神へと感謝した。唇を歪ませながら―他人から見たら全く見えないだろうが―。
    その瞬間、血が出てくる。幾度となる労働に耐えきれなかったみたいだ。
    私は小さく小さく、舌打ちをする。
    誰にも聞かれないように。
  12. 12 : : 2018/03/13(火) 17:47:30
    誰かの足音が。
    そして、ゆっくりとそこにいる未知の生物に気づかれないようにと、何かがそこにいると、確信しているあけかただった。
    叔母は気づいていた。
  13. 13 : : 2018/03/13(火) 18:11:33
    伯母のは、桜場トミコといった。
    アリサの母親の、―華泉ツクヨの―姉だった。
    幼い頃に、ツクヨが死んでしまったアリサを同情したのか、それとも、ただ哀れだっただけなのか。
    私はどちらもだろうな、と、叔母は優しい人だから。叔母はが私を養子にしてくれなかったら、飢えて、死んでいただろう。容易く想像できる。
    思考を巡らせていると、いつの間にかトミコ、は私の目の前へと向かってきていた。
    驚いた私は、水入りのコップを、落とした。
    ショックだった。あの、面倒くさいと行程を経てここまで来たのに…。
    アリサ「すみません、伯母さん。」
    そこで私は、はっとする。やっと正常な意識が戻って気みたいだ。
    コップが割れていた。
    一般常識では、ここで謝った方がいいのだろう。
    だが私は叔母の顔を凝視した。機嫌を損ねていないが気になったのだ。
    叔母もまた、私の顔を凝視していた。優しい叔母もらしくなく、目へと皺を寄せながら。
    トミコ「…どうしたの、そんなに見つめて?……
    あら…血が出てるじゃない。大丈夫?」
    そうやって、心配性な伯母は、コップが割れていることにも気づいていなかった。
  14. 14 : : 2018/03/13(火) 18:29:57
    いや、心配ではないのだ。
    叔母もまた、ー私と同じように―機嫌を窺っていた。
    気持ち悪い。吐き気がしてきた。吐きそうだ。
    感情を向けられるのが、こんなに気持ち悪いだなんて。
    アリサ「おヴえぇっ…うっく」
    私は必死に吐き気を押さえながら、叔母から逃げるように、トイレへと向かって走り出していた。裸足の足には、割れたコップが突き刺さっていた。いたい。久しぶりに感じた痛みだった。痛覚は要らないときだけに働いてくれた。
    走る度に、痛みは大きくなっていた。それと同調して、ガラスも刺さっていった。もはや走れていないのかもしれない。
    トイレは何処だろうか。痛みと吐き気で朦朧としてきた頭で、必死に考えた。母親のことはもう忘れていた。
    目的地が見えてきた。あぁ、やっとだ、やっと楽になれる。ドアノブを捻る。ドアが開く。こんな単純な作業が出きることに、神へと感謝した。一日で、一体大嫌いな神様に感謝すればいいのだろう。

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