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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

この作品はオリジナルキャラクターを含みます。

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  1. 1 : : 2017/12/08(金) 22:49:00
    初投稿になります。本当に拙いお話になるとは思いますが、よろしくお願いいたします。
    オリジナルキャラクターは含むと言えば含むかもしれません。キャラの口調が定まらない点もあるかと思います。
    凄まじい捏造ですので、ご注意ください。
  2. 2 : : 2017/12/08(金) 22:50:37
    ハロー、うえるかむ。聞こえていますか?

    「はい。聞こえています」

     形の無い声に返事をしたとき、やっと自分はここに自分という存在があることに気が付いたように、無意識に自分の両掌を眺めていた。
     自分の存在を確認した次に、自分は今どこにいるのかという疑問を抱く。幾つもの白と黒のサイコロが鋭い面をこちらに向けて張り巡らされている壁が長い長い道に続いている。
     自分は室内にいる、という事までは分かった。
     白と黒のサイコロの壁と廊下は、見ただけでは分からない程遠いところまで続いているようだ。どこが出口か、どこが入り口か。そもそもそんなものが存在するのかどうかすらわからない。
     そんな状況に、自分は大いに動揺していた。しかし、心を揺さぶられたことがもう一つある。

     自分は、自分の事が何も思い出せないという事だ。

     震える手で顔があるであろう場所を押さえてみると、確かにそこには顔があった。目、鼻、口、化粧も何も施していないスベスベとした肌を指先は感じ取る。けれど、触っただけでは自分がどんな顔をしているのか、一切思い出すことが出来なかった。腕、胸、腰、手、足。それらに触れて確かめてみようとしたものの、自分は自分の事を思い出すことは出来ない。
     そういえば、この『自分』という一人称にもいまいち馴染みを感じない。私、あたし、うち、俺、ぼく。いくつかその呼び名を口に出してみると、低いとも高いとも言えない声が長く広い空間に響く。出そうと思えば低い声でも高い声でも出せる。いや、そもそもこの声が自分の地声だっただろうか。それくらいの話である。
     一人称も声にも何一つピンとくるものは無かった。自分は本当にすべてを忘れてしまったのだろうか。

     所謂『記憶喪失』という奴なのか。ということは、自分は自らの意思でここにいるのだろうか。それとも、他の誰かに無理やり連れて来られてしまったのだろうか。
     疑問が廻り巡ってまた疑問になって帰ってくる。これ以上考えても無駄だと自分の頭の中で誰かが言った。それが自分の言葉なのかもわからず、自分は『そうだね』と聞き入れて、ゆっくり腰を持ち上げる。
  3. 3 : : 2017/12/08(金) 22:53:06

     腰を持ち上げ、とにかく歩き出そうとしたその時だった。

    「あれ、よかった。人、いたんだ」

     突然姿を現したかのように、その人物は自分の目の前で微笑んでいた。殆ど同じくらいの身長だろうか。目線が丁度同じくらいだったので、何となくそう思った。

    「…………あの、誰ですか?さっき居ましたっけ……?」
    「あぁ、ごめんなさい。驚かせちゃった?私ってなんていうか、影が薄くて地味だから、特に派手な事しなかったら気づいてもらえないことが地味に多くて……」
     
     そう言って申し訳なさそうに『ごめんね』と謝ってくるその人物は、まだ十代ほどの少女だった。青くて少しヨレヨレとした青いロングの髪の毛と、丸い縁の眼鏡を付けている。肌は顔も手も殆ど日に焼けておらず、声は普通に可愛らしく少女らしい。

    「いや、別に大丈夫です。それより、ここは一体どこですか?」
    「……あー。私にも地味にわからないんだ……気づいたらここに居た、っていう感じなの。もしかしてあなたもそうなの?」
    「はい。きづいたらここで倒れてたみたいで」
    「そうなんだ……えっと、名前聞いてもいいかな」
     やっぱり来たか、と咄嗟にそう思った。初対面の相手にはまず名前を名乗らなければならないのは分かっていたが、やはりこういう場面になったとしても一向に思い出せるような気配はない。
     彼女が何者なのかはわからないし、信用できる相手なのかも謎だ。しかし、今ここには自分以外には彼女しかこの空間で存在していないように思える。長い長い廊下を先まで見通そうと思っても、人の影や気配は一向に感じ取ることができないからだ。

    「…………実は、目を覚ましてからその前の事を何も覚えてなくて。自分の名前も何者かも、全部思い出せないんです」
    「え?それってつまり、記憶喪失ってこと?……地味……じゃないけど、大変なことだよね……」
    「この場所の事もよくわかりませんし…………あの、あなたは」



    「私は『白銀つむぎ』
      
      



    『超高校級のコスプレイヤー』だよ。よろしくね」
  4. 4 : : 2017/12/08(金) 23:19:02


    「超高校級の…………?」
     
    聞きなれないような言葉に、多少困惑する。

    「あ、突然ごめんね。なんかこう、こんな感じの空間に来てみたら地味に言ってみたくなっちゃってさ。
     もしかして、『超高校級』も覚えてないの?」
    「『超高校級』って……何かの才能を持つ特別な高校生って意味でしたよね。コスプレイヤーって…………?」
     
     彼女こと白銀さんは、困ったような顔をして自分の方を見つめた。どうやら相当いろんなことが抜けてしまっているらしい。その『超高校級』は一般常識的なものらしいが、自分はそれすらも覚えていないようだ。
    「超高校級っていうのはさ…………所謂、とある才能に突出した人に政府から送られる称号みたいなものなんだ。
     それで、私には地味に『超高校級のコスプレイヤー』っていう称号が送られたの」
    「ふーん…………」
     
     ということは、彼女はそれなりに世間的に凄い人、ということになるのだろうか。
     と言っても、この空間の中で『コスプレイヤー』という才能が生かせる場所があるのかどうかという点ではかなり疑問がある。
    「あ……なんか、地味に自慢みたいになったかも。
     とりあえず、そうだなぁ……あなたは、名前が分からないから…………とりあえず、名無しのナナちゃん、なんてどうかな?私が考えたことだから、やっぱり地味かもしれないけどね」

     彼女自身の事を地味、地味と自分で連呼している彼女。確かに、彼女には特筆すべきような特徴は特に見当たらない。綺麗な顔をしてはいるものの、それはノーメイクと大きな眼鏡によって殆ど隠されてしまっている。

    「いや、大丈夫です。名無しのナナちゃん……か。そう呼んでくれると、自分のことだって分かりやすくて助かります」

     名無しのナナちゃん。
     ナナちゃん。
     
     嗚呼、そっか。
     白銀さんには、自分が『ちゃん』がつくような姿に見えているのか。 

     自分は女の子なのか。
     
     そんな、少し考えればわかることにふと気が付いた。

  5. 5 : : 2017/12/09(土) 17:27:02
     ここでモタモタしていても始まらないとばかりに、自分と白銀さんは不気味な壁の廊下を歩き始めた。
     景色は一向に変わらない。だが、十数メートルおき程度に天井に近い壁の端っこに出現する額縁が、たまに気になっていた。
     金色の高級そうな額縁の中で、派手な化粧と容姿をした美女と、可愛らしいがどこか狂気を孕む様相をしたモノクロカラーのクマが、赤い目をランランと光らせてこっちを見つめている。
    「な、なにかな。あれ……不気味で、地味に怖いよね……」
    「……そう、ですね」

     なんであのクマ、片方ずつ色が違って、目の大きさも色も違うんだろう。
     暫くぼうっとそんなことを考えながら、壁の方に視線を向けつつ歩いていた。あまりにも廊下の先の方に何も見えないため、しまいには軽く横歩きしながら壁を見て歩いていた。

    「あれだよね!コ●ンとかではさ、こういう出っ張った感じの壁のどっかが地味に隠し扉になってたりするんだよね!」
     
     そう言って白銀さんが適当に壁をグッグと押し込んでみるが、何の反応も示さないどころか普通に壁だったらしい。今のところ、額縁以外に特に変わった様子はない。とにかく歩き続けるべきか。



     そう思った時だった。


    「はっ…………」

     激しい閃光が何処からか降り注ぐ。あまりの眩しさに目をギュッと閉じ、そしてどうしてか襲ってくる鈍い頭の痛みに耐えながら膝を折って蹲った。
     白銀さんの様子は分からないが、おそらく同じようにしているのだろうと思った。

    「しろがね、さ………………」

     目を開こうとすると、先ほどの閃光のダメージか微かに痛みを感じる。それでも無理やり目を開くと、そこには白と黒のサイコロのような壁も、クマと少女の不気味な肖像画も存在しない。

     真っ赤な。ただひたすらに真っ赤な、先ほどの廊下と同じくらいに悪趣味な部屋が目の前に存在していた。
     こんなところに入った覚えは、無い。
  6. 6 : : 2017/12/09(土) 23:29:26
    「しろがねさん…………?」
     彼女の名前を呼んでみたが、何故かその部屋の中に彼女はいなかった。また一人になってしまった事にかなりの絶望感を抱き、大きくため息をついて肩を落とす。
     泣いていいのか、怒ればいいのか。自分の事すらよくわからない自分は、これからの行動すら自分自身の選択を信じることが出来なかった。

     とにかく探索だ。自分は立ち上がり、先ほどよりも高い目線から真っ赤な部屋の中を見渡した。こうしてみると、赤岳ではない。先ほどの廊下のように何も存在しないわけではなく、なにやら展示ケースのような物が数メートル間隔で設置されていた。
     
     しかも、中身は空では無いらしい。

    「………………?」
     
     なんだ、これ。

    「希望が峰学園……コロシアイ?」

     コロシアイ、なんてわざわざカタカナ表記のふざけたタイトルの中には、リアルなタッチで描かれた高校生程度であろう少年少女たちの姿が映っている。
     そして、さらに視線を展示ケースの中へ潜らせてみると、一枚の衝撃的な絵が目に入った。

     青い髪の毛の綺麗な顔立ちをした美少女が、壁にもたれかかり、ナイフで腹を貫かれ、死んでいた。

    「え?」

     赤い髪の毛の少年が、見るも無残な程に何かで何度もたたかれたような、そんな姿で磔にされている。
     
     小柄な少女が縛りつるされ、頭から血を流して死んでいる。
     
     特徴的なリーゼントを頭に乗っけた少年の絵と比較するように、その横に『大和田バター』と記されたバターの容器が置かれている。これはさすがに、意味がよく分からない。

     倒れ込んで死んでいる白い制服を身に着けた少年
     とても太っていて大きな体だが、おそらく同年代だと思われるであろう少年
     どちらも、頭から血を流し死んでいた。

     派手な黒い服とツインテールをした少女の写真と一緒に、何かが爆発して黒焦げになった何かの写真が乗せられていた。

     真っ白な灰になってしまったように動かない大柄の男性……否、スカートをはいているからおそらく、女性。

     何故かスクラップにされている何かの機械の写真。
    「あっ……」
     見覚えのある少女の写真を見つけて、思わず自分は飛びついた。
     
     廊下に貼られていた肖像画の中の、あの派手な姿の少女だ。
     その少女は、何本もの槍に体を貫かれ、目を見開いていた。その写真とつなげるように、焦げた何かが横たわっている写真も目に入る。
    「………………う」

     絵だ。結局のところ、これはただのイラストではないか、と……そう思っても、この状況の中でこんなものを見せられては、気分が悪くなっていくばかりだった。
     けれど、自分は今何をしているのかって、探索をしているのだ。少しでも多くの情報を集めなければならない。 
     そう思って、次の写真に視線を映した瞬間だ。
     
     トクン
     トクン

     心臓の音が響いて
     
     

     端正な顔立ちを歪ませて

     苦しみに耐えながら

     絶望し切った顔で

     快楽に酔いしれて

     笑っている


     あぁ


     プレス機の下から流れる、ショッキングピンク。



     ドクン、と。
     大きく鼓動は波打った

     





    「…………しろがねさん、探そう」
     自分は自分に言い聞かせるように一人でそう呟くと、展示ケースから目を背けた。展示ケースはあれだけではない。もっとたくさんの人物の写真もきっとあっただろうけれど、なんだかこれ以上見てはいけない気がした。

     気色が悪い。
     趣味も悪い。
     けれど、頭の中にこびりついて離れない。あの少女の絶望し切った顔を。その端正なものを押しつぶしたのでろう、ピンク色の血を下から垂れ流しているプレス機を。その少女の顔を見なくても理解できる、その光景から感じる絶望を。
     確信はない、が。

     自分はきっと、あれが何かを知っているのだ。
     記憶の蓋がこじ開けられかけているのを、微かに感じた。

  7. 7 : : 2017/12/11(月) 20:31:19
     赤い部屋の扉を開けると、次は穏やかな桃色をした部屋に出た。扉を開いた瞬間に、パシャリと写真を撮られるような音がしてまた光が自分に向けられた。本当に不気味な場所だ。
     自分が出てきた部屋は、穏やかな桃色と言っても壁と床、一面がそれだった。振り向いてみれば、先ほど自分が開けたであろう扉の色でさえまっピンク。この建物の所有者は、よほど趣味が悪いらしい。

    「………………誰?」
     この部屋の中にも一人、自分以外に人間がいた。
     肩までの金髪にアホ毛、端正な顔立ちをした女の子である。その子は自分のことを訝し気に睨みつけていた。彼女がいったい誰なのかは全く覚えがないが、自分の事を警戒しているようで、簡単に近づいていいものなのかと戸惑う。
     とりあえず話しかけてみようと思い、恐る恐る近づいた。

    「よかった。白銀さんの他に、まだ人が居たんですね」
    「よかったって…………冗談じゃないよ。キミ、一体何処から来たの?この部屋には扉も窓もなくて、途方憎れてたところに君が突然現れてさ……いったい、何者?ていうか、白銀って誰?」
     
     はぁ、と。金髪の彼女は深く深くため息を零す。

    「自分にもよくわかりません」
    「はぁ…………でも、この状況。何となく察しはついてるんだよね…………」
    「どういうことですか?」

     自分が尋ねると、彼女は面倒そうにもう一度ためいきをついて自分の方を軽く見上げた。この子は、自分よりも少し背が低いらしい。
     様々なことへの気力を失ってしまったような、そんな無機質の混ざった瞳とぱちりと視線がぶつかった。一見、大きくて透き通っていて綺麗な目なのに、何処か冷たくて刺々しい。

    「学校から帰ってたら突然車に乗せられてさ。誘拐かと思ったけど、私自身に覚えがあることが一つあるんだよね」
    「……って、いうと」


    「『ダンロン』のオーディションに応募して、結果待ちだったこと」

  8. 8 : : 2017/12/12(火) 23:12:52
    「ダンロン…………って?」
     聞きなれない単語に、自分は再び困惑して聞き返すが、少女は僕の言葉など頭の隅にも止めず、ブツブツと何か文句を言い始めた。
    「というか、友達に誘われただけなんだよね……別に、私自身はそれ程好きって訳でもないし。ただ、現実が嫌になった時にはもってこいのコンテンツだし。好きじゃないけど嫌いじゃないし……今時常識でしょ?」
    「そ、そうです……か?」

     まぁ、オタクはちょっとキモいけど。などと辛らつな言葉を空中に吐きながら、彼女ははぁ、と再びため息を零した。

    「…………とりあえず、さ。私の名前、『赤松楓』……超高校級のピアニスト。他に人もいないし……一応ね」

     出た。また、『超高校級』だ。

    「で、キミは?」
    「え?」
    「私が名乗ったんだから、キミだって名乗ればいいんじゃない。それに、キミも『ダンガンロンパ』のオーディションに参加したメンバーなの?そこらへん教えてよ」
     当たり前のようにそう言ってくる『赤松楓』さんは、そう言った後に小さくフン、と鼻を鳴らした。なんだかやたらにひねくれた人だなぁとおもいつつ、彼女に自分自身のことを簡潔に打ち明ける。

    「実は……気が付いたらこの建物の中にいて、自分の事を全く覚えてないんです。自分の事は……ナナって呼んでくれると嬉しいんですけど」
    「…………それって、本名じゃないの?」
     赤松さんの目の色が先ほどにも増して一層に険しいものになる。自己紹介をして、少しは警戒がほぐれたと思ったのだが、やはり自分の事はより一層警戒を強めさせるものだたのだろう。失敗したのだろうか。しかし、それ以外にどういっていいのかもわからない。
    「さっき会った人がつけてくれたんです。名無しのナナって……だから、そのオーディション?も、まったく意味不明で。」

    「ちょっと待って。そんなの怪しすぎるよ。…………せっかく人見つけたのに。一緒に行動出来たら良いとかちょっと思ったけど、無理そう」
    「え?」
     
     彼女は自分の傍からゆっくりと離れると、自分に背中を向けて部屋の隅の方へと歩いて行った。記憶喪失がどうの、という点で全く信用されなくなってしまったらしい。
     …………こんな状況でそんなことを言う人物がいれば、距離を置きたくなるのも分かるような気はする、けど。

    「…………あ、あれ?」

     不意に赤松さんから声が上がった。先ほどの研ぎ澄ましたような雰囲気ではなく、どこか緊張の糸が緩んだような声だった。何かを見て驚いているのだろうかと思い、歓迎されないのは承知していながらも彼女の背中に近づいた。
    「どうかしたんですか?」
    「…………変だなって。私がさっきこの部屋に居た時は、あんな扉無かったんだけど」
     
     そう指さす先には、確かに真っピンクの扉があった。一見壁の色と混じって分かりづらいが、確かにそれは扉である。
     驚いた様子の赤松さんは、自分の方にフイと視線を向けた。驚きの他に、またその瞳には疑いが混じっている。

    「……キミがここに現れた途端に、か」

  9. 9 : : 2017/12/17(日) 22:44:28
     それだけ言うと、彼女はさっさと扉を開けて部屋を出て行ってしまった。非現実に揉まれているのは自分だけでは無いらしい。が、彼女と行動を共にするのは難しそうだった。
     
     一人ではあるが、まだ捜索していないこの部屋の中を少し調べることにした。とはいっても、先ほどの部屋と違って、本当に普通の『部屋』といった感じだ。例えるなら、学校の応接室……という感じだろうか。

     特に手掛かりはなさそうだと思った時、ふと妙なツボや古書を並べてある棚の上に目を奪われた。棚の上に、この状況を劇的に変えることのできる何かがあったという訳ではない。ただ、白と黒に左右が別れたクマのヌイグルミが、まるでこちらを監視しているかのように赤い目を光らせて睨みつけてくる。

    「……気味悪い…………」

     手が普通に届く高さだったので、そのぬいぐるみをゆっくりと手に取った。フワフワのぬいぐるみとして見るのなら、中々可愛らしい。
    「……うぷぷ」

     変な鳴き声をつけてみながら、そのぬいぐるみを操る様に横に軽く振って遊んでみる。
     一人で何変な事をしているんだろう。そう思い、自分はぬいぐるみを元の棚の上へと戻した。
     
     …………さて、行くか。

     クマのぬいぐるみから視線を離し、自分は先ほど赤松三が消えて行った扉に手を伸ばす。
     ドアノブをゆっくりと捻り、手前に引き寄せた。
    「…………!!」
     
     また、眩い光が頭上から降り注いでくる。
     目を庇うように頭を抱えて下を向き、ギュッと目を閉じた。

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