この作品は執筆を終了しています。
十六夜「おいちくて幸せで不条理な学園生活」
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- 1 : 2017/11/05(日) 01:34:08 :
- 秋のコトダ祭りに参加させていただきました。テーマは『ナイフ』です。
初参加で右も左も分からない若輩者ですがよろしくお願いいたします。
ネタバレ注意。
٩( ᐛ )و
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- 2 : 2017/11/05(日) 01:49:29 :
-76期生の教室内-
流流歌「よいちゃん、新しく作ったお菓子だよ。はい、あーん」
十六夜「……おいちい」
俺…十六夜惣之助と流流歌は小さい頃からの友人、幼馴染と言ったところだ。
武器を作る事が得意だった俺と、お菓子を作ることが得意だった流流歌。
方向性は全く違うが、俺たちの特技は国に認められて一緒に希望ヶ峰学園に入学し、既に2年の月日が経っていた。
あと1年で、人生の勝ち組と呼ばれる希望ヶ峰学園の卒業生となれる。
そして、その暁には流流歌と……
流流歌「よいちゃん起きて!あと2秒で授業始まっちゃうよ?早く教室に戻ろ?」
十六夜「それは諦めた方が賢明だろうな」
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- 3 : 2017/11/05(日) 01:51:41 :
-公園-
流流歌「公園で遠足デートだなんて新鮮だね」
十六夜「そうだな」
楽しそうに遊具で遊ぶ子供たち、静かに轟く噴水の音、木霊する鳥たちの鳴き声。
…制服のポケットに物騒な暗器を忍ばせている俺自身を除いて、公園は平和でのどかな雰囲気に支配されていた。
流流歌「覚えてる?小学生の頃、私が遊具から落ちた時によいちゃんが飛び込んで、ダイビングキャッチしてくれた時のこと」
十六夜「いや……覚えてないな、すまない」
流流歌「いやいや別に気にする必要は無いよ!?結構前のことだしね!それよりお弁当食べよっか」
十六夜「待ってました」
流流歌「中身は流流歌特性モンブランだよ!」
十六夜「やはり流流歌のお菓子は世界一おいちいな」
流流歌「ありがとう、よいちゃん」
???「…………」ジ━━━
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- 4 : 2017/11/05(日) 01:53:51 :
十六夜「流流歌。今日は俺たちが付き合ってからちょうど一年ということで、プレゼントを持ってきた」
流流歌「やったぁ!ありがとよいちゃん!」ギュッ
十六夜「そ、それで肝心の品なんだが……」
十六夜「俺が作ったナイフだ」ババ-ン!
流流歌「ナイフ!?」
十六夜「流流歌にはいつも手作りのおいちいお菓子を作ってもらってばかりだから、俺も何か手作りの物を渡したくてな。一応、調理用のナイフだから、これでまたおいちいお菓子を作ってくれ」
流流歌「うん、ありがと!大事に使うからね」
-物陰-
???「十六夜先輩と安藤先輩、仲良いんだねー」
??「そうだね、親友って良いものだよね」
???「もー、残姉ホント残念なお姉ちゃんだわー」
??「え、なんで?」
???「あれは親友とかじゃなくて、恋人でしょ完全に!」
??「そ、そうなんだね…」
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- 5 : 2017/11/05(日) 01:56:09 :
-78期生の教室-
霧切「十六夜惣之助、そして安藤流流歌。2人とも76期生の同じクラスの生徒ね」
江ノ島「そこは分かってるっての!他になんか調べたりしてないの?」
戦刃「盾子ちゃん…一応私たち、“慰霊”してる立場なんだし……」
江ノ島「“慰霊”って何よ、“依頼”でしょ“依頼”!誰の霊慰めてんのよ」
霧切「コホン…それで、さっきの続きなんだけれど、彼らは幼少期からの友人で、家族ぐるみの付き合いだそうなの」
江ノ島「ふーん、つまり幼馴染ってヤツか…それより家族ぐるみの付き合いってマジ?」
霧切「ええ。もう1人、幼馴染的な存在の人が居るのだけれど、その人からの情報だから間違いないわ」
江ノ島「ふーん。あ、良いこと思いついた…」ニヤリ
戦刃「え、“お餅ついた”?まだ11月だけど」
江ノ島「“お餅ついた”じゃなくて“思いついた”だよバカ残姉!」
戦刃「ば、バカデブス残姉……酷い……」
江ノ島「そこまでは言ってないけど、まぁいいや」
霧切「私はこれから用事があるから電気と戸締りだけは宜しくお願いするわ」
江ノ島「オッケー任しとき!」
霧切「ええ、それじゃあまた明日」
***
戦刃「それで、何を思いついたの?」
江ノ島「んー、まあ大したことじゃないんだけどねぇ」
江ノ島「幸せの絶頂にいる人間が、どん底に叩き落とされた時の絶望する顔が見たくなってさ」
戦刃「……?」
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- 6 : 2017/11/05(日) 09:12:52 :
~数日後~
忌村「ねぇ」
十六夜「なんだ」
忌村「流流歌、休みなの?」
十六夜「分からない」
忌村「え」
十六夜「昨日の夜から連絡が取れない」
忌村「ケータイ、壊れてたんじゃないのかな」
十六夜「さぁな、それより流流歌に何か用か」
忌村「えっと、道端であった自称魔法使いの小学生に、“お菓子を食べられる魔法”を掛けてもらったの」
十六夜「悪いことを言う、そんな魔法があるわけない」
忌村「え!?そんな……。『お代はお主の笑顔じゃ』って言われて無理やり笑わされたのに……」
十六夜「変な魔法使いだな」
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- 7 : 2017/11/05(日) 09:46:48 :
十六夜(おかしい、流流歌は風呂にもケータイを持っていく。普通ならメールには気づいているはずだ。なのに返さない……つまり気づいていないということか)
十六夜(昨日の夜からずっと充電が切れてる?いや、それなら充電すれば即解決する)
十六夜(まさか!)
十六夜(ずっと、用を足しているのか?流石に流流歌もトイレにまではケータイは持っていかない。つまり昨日の夜からずっとトイレの中にいるという事か…?)
十六夜(いや、女子だろうとトイレくらい5分もあれば終わるだろう、知らないけど。ならトイレから出られない理由があるはず……そうか)
十六夜(『トイレットペーパーが無い』、という事か。ならば、俺が取るべき行動はただ一つ)
十六夜「流流歌の家にトイレットペーパー届けに行ってくる」
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- 8 : 2017/11/05(日) 09:49:00 :
*****
-安藤宅前-
十六夜「トイレに長時間篭っていたのならば、染み付いた匂いも気になるだろうな。ファブリーズも持って来て正解だった。さて」
ピンポ-ン
インターホンを押して一息ついたところで、普段とは何か違う、異様な臭いを俺の鼻は掠め取った。
これは『血』だと、俺の脳は告げる。
奥に何かある、何かが待ち構えている。この扉の奥にあるのは、何の血なのか、誰の血なのか。
血は体外に出なければ臭いを発さない。血を流すような事態が、流流歌の家の中で起きているという事だ。
何故そのような事が起きている?誰がそんなことを起こしている?
答えの出ない謎を、何度も考えようとする。
早くドアをあけて、俺に解答を教えてくれ。
インターホンを押し、チャイムを鳴らしてから何秒たっただろうか、もしかすると、何分も経っているのかもしれない。
時間など忘れてしまうほどに俺の心臓は高鳴っていた。
この先にある光景への恐怖と拒絶によって。
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- 9 : 2017/11/05(日) 09:50:35 :
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永遠にも思える僅か数分の静寂に痺れを切らし、俺は思い切ってドアノブに手をかけた。
十六夜「お邪魔します」
期待してはいなかったが、予想に反してドアの鍵はかかっていなかった。
呆気なく開いたドアとは対照的に、俺の目は反射的に閉ざされた。
家の中で待ち構えていたのは、流流歌の両親の亡骸が血の海に沈む悍ましい光景だった。
十六夜「な、何だこれ」
流流歌「よ、よいちゃん…」
十六夜「流流歌!」
流流歌「よいちゃんどうしよう、お母さんとお父さんが…」
十六夜「とりあえず、警察に通報しなきゃな」
流流歌「う、うん」
***********
警察からの質問を終え、俺と流流歌には完璧にアリバイがあるという事で解放された。
十六夜「流流歌、大丈夫か」
流流歌「大丈夫……な訳ないじゃん!お母さんもお父さんも、もう、みんな…死んじゃったんだよ?」
十六夜「……そう、だよな。すまない、悪いことを言った」
流流歌「ぐすっ、どうして…こうなっぢゃったんだろ……」
流流歌のすすり泣く声に混じって、何処からか嘲笑うような声が聞こえて来たような気がした。
俺はそれが不愉快でたまらなかった。
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- 10 : 2017/11/05(日) 09:52:57 :
流流歌の両親の事件は、殺人事件として取り扱われている。
殺害に用いられた凶器はナイフらしく、2名とも一撃で即死させられている事からかなりの腕前の者による犯行と見ているそうだ。
あれから流流歌は学校に来ていない。俺も1週間前、両親の葬式に参列した時を最後に彼女の姿を見ていない。
忌村「流流歌、今日も休み?」
十六夜「ああ」
忌村「そっか」
十六夜「流流歌に何か用か」
忌村「道端であった自称三割当たる占い師に、『お前はお菓子が食べられる様になる』って占われたの」
十六夜「随分適当な占いだな、胡散臭い」
忌村「え!?そんな……『お代はオメーの臓器だべ!』って言われて無理やり内臓取られかけたのに……」
十六夜「ちゃんと通報はしとけよ」
****
流流歌「お母さん、お父さん、また、逢いたいよ」
???「安藤流流歌さん、だよね〜?」
流流歌「誰?」
江ノ島「ようこそ、絶望の世界へ!アタシは江ノ島盾子!ヨロシクね!」
流流歌「………は?」
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- 11 : 2017/11/05(日) 09:55:13 :
流流歌との連絡が途絶えて2週間、もう寝ようと布団を被った直後に俺の携帯が音を立てて振動した。
電話が来た。相手は、流流歌だった。
十六夜「流流歌!大丈夫なのか?」
流流歌『うん。それでさ、今から希望ヶ峰学園の5階の教室に来て欲しいな…』
十六夜「か、構わないが…俺は寮生じゃないから時間がかかるぞ」
流流歌『うん。待ってる』
*****
-5階の教室-
十六夜「流流歌!」
教室のカーテンは締め切られており、照明は付いていなかった。教壇の上に置かれた小さなランプが暗闇に負けじと明かりを放っており、その光を頼りに俺は近くの机に腰を預けた。
流流歌「よいちゃん、待ってたよ」
十六夜「今までどうしてたんだ?」
流流歌「えっとね、あの家で過ごすのはちょっと心苦しいから、入寮手続きとか色々……」
十六夜「…そうか」
流流歌「それより、今日はよいちゃんに伝えたいことがあって来てもらったんだ」
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- 12 : 2017/11/05(日) 10:07:22 :
- 静子ちゃんの内臓むりやりとろうとするとか万死に値するぞ自称三割のウニ頭ァ!
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- 13 : 2017/11/05(日) 22:14:29 :
- >>12
俺も同感だが落ち着けww
期待です
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- 14 : 2017/11/05(日) 22:43:40 :
- >>1213
ありがとうございます。
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- 15 : 2017/11/05(日) 22:44:55 :
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十六夜「伝えたい事とはなんだ?」
流流歌「大好きだよ」
そういうと、流流歌は俺の前まで近寄って「目を瞑って」と告げた。
十六夜「分かった」
言われるがままに目を閉じ、反応を待つ。
流流歌「そのまま、もう少し待ってて」
指示通り目を塞ぎ続けていると
グサリ
俺の腹に鋭い刃物が捻じ込まれ、肉を抉っていった。
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- 16 : 2017/11/05(日) 22:58:45 :
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十六夜「ぐ、流流歌…何を?」
俺はその場に倒れこみ、激痛の発信源である腹を抑え込む。
赤のコートを着ていたため目立たないが、刺された部位からとめどなく血が溢れ出て、開いた傷口が外気に触れて痛みを促進させる。
流流歌「このナイフ、よいちゃんからプレゼントされたモノだよ。これ、すっごく斬れ味良いの……」
十六夜「……ど、どういう事だ」
流流歌「私、このナイフでたくさん、たくさんお菓子を作って 来たの。でも、何回作って も、何か足りない気がして」
十六夜「足りないって、何がだ…?」
流流歌「“絶望”、だよ。お母さんとお父さんが死んじゃったとき以上の絶望感があれば、もっと良いお菓子が作れると思うの」
流流歌「大好きなよいちゃんが死んだら、すっごい絶望すると思うの……。だから、試して見ても良いよね?」
十六夜「る、流流歌…なんで…」
流流歌「よいちゃん、愛してるよ」
その言葉を最後に、俺の意識は永遠に途絶えた。
俺の短い人生は、最愛の人に殺されるという形で幕を閉じた。
*****
江ノ島「ふふっ、絶望のスイーツの完成だね。流流歌先輩!」
気まぐれな絶望の神様の暇つぶしによって、俺たちの夢は崩れ去っていった。
〜End〜
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- 17 : 2017/11/05(日) 23:02:05 :
- 3アニメ視聴したの随分前で76期生の口調に違和感があるかもです。すみません。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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