このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。
この作品は執筆を終了しています。
侵蝕 或いはネットワーク社会における潜在的脅威について
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- 1 : 2017/10/05(木) 00:17:42 :
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はい皆様、進撃のMGSが執筆するSCP財団のssに足を踏み入れてしまいましたね?
後悔してももう遅いですよ?
冗談ですw
皆様どうもこんにちはこんばんわ、進撃のMGSです。
今回の作品は、Foundation tales_noteに出品する作品であり、やりたい放題を尽くした作品でもあります。
どうか、最後までお付き合いいただけたら幸いです。
では、どうぞごゆるりと作品をお楽しみくださいませ。
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- 2 : 2017/10/05(木) 00:21:27 :
SCP財団・・・・・・・・・・・・それは、異常な物品、存在、現象を封じ抑え込むことを任務として、秘密裏かつ世界規模での活動を行う団体のことを指す。
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- 3 : 2017/10/05(木) 00:23:16 :
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その活動は三つの要素から成り立つ。
確保 、収容 、保護 。
この三つの要素によって、世界中の一般市民が異常に対する恐怖や疑念を抱くことなく日常を生きることが出来、また、地球外、異次元、その他の超常的存在が及ぼす影響から人類の独立を維持出来ているというわけである。
しかしながら、SCP財団だけがこうした異常なオブジェクトを扱っているわけではない。
財団の人間が“要注意団体”と呼ぶ決して少なくない数の団体が、異常なオブジェクトの存在を知り、破壊し、生み出し、あるいは利用している。
そして、こうした集団の中には、時に悪意をもって異常なオブジェクトを生み出し、利用する団体さえも存在するのだ。
これから語る事件も、こうしたオブジェクトの悪用によって引き起こされたものの一つである。
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- 4 : 2017/10/05(木) 00:26:54 :
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Branche Francophone
Sectuer-■■
9/3/200■
P.M.0:13
200■年9月3日、SCP財団フランス支部、セクター■■にて、最初の事件が起ころうとしていた。
それは、良く晴れた日の昼下がり。
昼食をとる職員、昼寝をする職員、なお仕事に打ち込む職員と、様々な職員が思い思いのひと時を過ごしていた頃。
『後3分で、施設内の核兵器が作動します。職員は直ちに退避してください。』
突如鳴り出した警報に、退避を促すアナウンス。
あるものは悪戯を疑い、あるものはセキュリティを破られた可能性に言及し、またあるものはパニックとなって逃げ惑った。
だが、3分というあまりにも短い時間を前に、それらは悉く実を結ばなかった。
________凄まじい爆風と閃光。
次の瞬間に現れたのは、青天を突き上げるかのごとくに聳え立った、きのこ雲。
あまりにも唐突な、何の前触れもないセクター■■の壊滅。
最後の手段として準備されていたはずの核兵器の誤作動。
職員全員が死亡するという前代未聞の惨劇。
後に事件11-3ブラボーとして知られる事となる異常事態。
しかしこれは、これから起こる財団にとっての危機の、ほんの序章に過ぎなかったのだ。
後に顕現化する財団壊滅の危機の、ほんの序章にしか・・・・・・。
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- 5 : 2017/10/05(木) 00:34:55 :
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United States of America
Site-17
9/3/200■
A.M.10:23
現地時間の午後0時16分、フランス支部のセクター■■が壊滅したという情報は、すぐに世界中にある財団の主要施設へと共有された。
ここは、サイト-17。
低危険性の人間型存在の収容と研究に主眼を置く施設であるが、その中にはSCP-239 のような例外も存在する。
この施設を訪れているケイン・パトス・クロウ教授は、犬である。
「なんだって? どうしてセクター■■の核爆弾が誤作動なんか起こしたんだい?」
四角い銀縁の眼鏡をかけ、スーツを着込んだゴールデン・レトリーバーはギアーズ博士に疑問を呈する。
ギアーズ博士はSCP-914 、SCP-2000 をはじめとする機械型のSCPの研究を主とする研究者の一人である。
以下は、クロウ教授とギアーズ博士との問答の様子である。
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- 6 : 2017/10/05(木) 00:37:01 :
ギアーズ:それは私も疑問に思っていたところだ。
クロウ:核兵器の使用ができるのは管理権限を持っている人間に限られるよね。
もし僕の推論が正しいとするならば・・・・・・。
ギアーズ:管理者が故意に使ったか、何者かに核兵器のコードを盗まれたことになる。
クロウ:考えられるのは後者かな。尤も、僕としては考えたくもないことだけど。
ギアーズ:財団は現状、侵入者を完全に防ぐことは出来ていない。
クロウ:管理者としては耳の痛い話だね、ギアーズ博士。
ギアーズ:それに、我々が現在収容しているSCPが、
完全に収容出来ているわけでもないということも忘れるべきじゃない。
クロウ:うん。あのセクターにいたSCPの行方を、今現地にいる機動部隊が追跡中だ。
ほとんどが核兵器の爆発で消滅したみたいだけど、それは不幸中の幸いとでもいうべきかな。
ギアーズ:それと、インターネットからのハッキングの可能性も探っておく必要がある。
クロウ:機動部隊ミュー-4、“デバッカー”が今、セクター■■へのアクセス記録を調べている。
セクター自体が消滅したせいで、残存データの回収は困難を極めてるそうだよ。
クロウとギアーズは、今回の重大事件について、財団への何らかの侵入があったものという見解で一致した。
ギアーズはいつものように無表情で自らの研究室へと戻っていく。
クロウはギアーズを見送った後、彼の脇に佇んでいたSCP-244-ARC“エッグ・ウォーカー”へと乗り込んだ。
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- 7 : 2017/10/05(木) 00:42:06 :
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United States of America
Bio Reserch Area-12
9/3/200■
P.M.6:45
日本支部
サイト-9■
200■年9月4日
午前10時45分
Branche Francophone
Zone-Mem
9/4/200■
A.M.1:45
ここは、クロウ教授が管理者としての権限を持つ施設、生物研究エリア-12。
アメリカ合衆国の中西部に位置し、異常な生物的存在の生きた検体や、それと同様に生物災害その他の危険を持つ生物学的異常存在のサンプルを研究目的で保存している施設である。
さて、教授のパソコンの目の前に表示されたのは、二人の人物。
いや、訂正しよう。
表示されているのは筋骨隆々の男性と、トカゲである。
長い褐色の髪と強靭な肉体を持つ、フランス支部のエージェント・アストリッド・トンバミン。
日本支部の西日本統括サイト―――サイト-9■の管理者、エージェント・カナヘビ。
筋骨隆々の元女とトカゲと犬は、今回の事件を共有すべく、パソコンのモニターを通じて一堂に会した。
(ちなみに、彼らはそれぞれ異なる言語で話しているが、パソコンに接続されたSCP-244-ARC“エッグ・ウォーカー”が、それぞれに最適な言語へと文章を翻訳するため、英語の読み書きが出来ないエージェント・カナヘビでも会議に参加出来るわけである。
余談ではあるが、クロウ教授の乗るSCP-244-ARC“エッグ・ウォーカー”は、その形状がまるでソニックに出てくるDr.エッグマンの乗る乗り物によく似ているためにそう名付けられた乗り物で、一万ものオブジェクトを教授が私的に(!)流用して作り上げた戦闘マシンでもある。
なお、このtaleを読んでいる読者の皆様へは、登場人物の会話文はほぼ一貫して日本語で表記することとする。)
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- 8 : 2017/10/05(木) 00:46:19 :
クロウ:エージェント・トンバミン、現地における事件の進捗は?
トンバミン:思うようには進んでいないね。残存データを掘り当てるだけで一苦労だ。
でもね、分かったこともあるんだよ。
カナヘビ:勿体ぶらんではよ話さんかい。
トンバミン:事件のあった日の前日、不正なアクセスがあった。
クロウ:不正アクセス、ねぇ。
トンバミン:こっちではSCP-101-FRとして知られるものだ。脅威レベルは赤。分類はKeterだ。
詳しくはこのデータを見て欲しい。
トンバミン:[http://ja.scp-wiki.net/scp-101-fr]
カナヘビ:これは・・・・・・重大な収容違反やんけ!
クロウ:細部を見ればだいぶ事実誤認があるけれど、これだけ113-Bの情報が流出しているなんて異常事態だ!
トンバミン:残念だけど、現状ではこれを113-Bする手段がないのさ。
カナヘビ:しかし、このまま113-Bしておくのも113-Bやろ。
トンバミン:幸い、113-Bの改竄に対してSCP-113-B-FRは敵意を示していない。
クロウ:だから113-Bに事実誤認があったわけ・・・・・・ん?
カナヘビ:真っ当な113-Bやね。架空の113-Bに見せかけるのは113-Bな手段や。
まかり間違ってもこれを113-Bだと思うような奴はよほどの113-Bか底抜けの113-Bやろ。
クロウ:待ってくれ! この113-Bとはいったい何だい!? 一体何が・・・・・・うわぁあぁッ!
________通信終了
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- 9 : 2017/10/05(木) 07:53:48 :
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日本支部
サイト-9■
200■年9月4日
午前11時3分
クロウ教授の画面が、突如、暗転した。
「これはアカン・・・・・・緊急事態や。」
教授からの通信が途絶え、カナヘビは事態の急変を察した。
もちろん、目に見える変化だけではない。
目に見えない超深刻の事態にも、である。
すぐさまカナヘビはネットの接続を遮断すると、部下の研究員を呼び出した。
「ここ日本支部もハッキングされた可能性があるさかい、至急全ファイルを洗い出すんや!
特に、113-Bの文字数列を発見したら即書き換えること!
ええか、事態は一刻を争うで、急ぐんや!」
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- 10 : 2017/10/05(木) 07:55:06 :
________しくじりよったわ!
カナヘビは心の中で舌打ちし、サイト-9■の職員総出で、保管されている全ファイルの確認作業を始めた。
あのSCP-101-FRの偽データベースは、ウイルスを乗せるための器だった。
迂闊にも我々はページを開けてしまい、ウイルスは本部、フランス支部、そしてここ日本支部にまで拡散してしまった。
「時間との勝負や。ええか、これ以上事態が拡散する前に、何としても封じ込めなアカンで!」
果たして、ファイルを開けると既に大量の文字が113-Bに置き換わっていた。
それがあまりにも膨大で、書き換えが到底不可能な量に達していることが明らかになるにつれ、カナヘビはもっと根本的な対策に迫られていることに気が付いた。
あまりにも改編のスピードが速いのに対して、書き換えるスピードはあまりにも遅い。
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- 11 : 2017/10/05(木) 07:57:40 :
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「・・・・・・・・・・・・かくなる上は。」
カナヘビは、このサイト-9■に保管されている全データの消去、並びに、一時的な施設の放棄を決断した。
不幸中の幸いは、ここが司令部であったがために、Euclid以上のオブジェクトの収容をしていないということだった。
フランス支部のゾーン-Memは財団の海軍車両のハンガーであり、海にこそ囲まれているが大したオブジェクトは収容されていない。
問題は本部の施設の一つ、エリア-12。
あそこにはサイト-19程ではないものの、生物的存在のEuclidやKeterが保管されている危険な区画である。
クロウ教授からの通信が途絶えてしまったのも、或いは・・・・・・。
ワゴン車の荷台の中に積まれた、自走式の水槽の中で、通信手段を奪われたエージェント・カナヘビはこう呟いた。
「XK-クラスの世界終焉シナリオが、もう始まってしもうたかもしれん・・・・・・。
けど、まだ何か打てる手があるはずや。
何か、手が・・・・・・。」
数台のワゴン車がサイト-9■を脱出し、サイト-8100を目指して走っていく。
それは、よく晴れた日の昼の出来事であった。
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- 12 : 2017/10/05(木) 08:02:24 :
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United States of America
Bio Reserch Aria-12
9/3/200■
P.M.8:34
(クソッ、クソッ、クソッ、クソッ! 僕としたことが、迂闊だった!)
心の中で盛大に毒づきながら、ガスマスクを装着したクロウ教授は息を潜め、ロッカールームの物陰に隠れていた。
身を隠している教授を探し出しているのは、つい先ほどまで彼の手足であったエッグ・ウォーカー。
113-Bに感染し、プログラムを書き換えられたエッグ・ウォーカーはターミネーターやロボコップよろしく、施設内の人間やSCPを無差別に殺傷する殺人マシーンへと変貌を遂げていた。
SCPに分類されるほどの危険性を秘めているエッグ・ウォーカーから逃れることは容易ではない。
既に死傷者もかなりの数に及んでいる。
他の職員がとっさにネットの切断をしたのが不幸中の幸いであったが、それとてプログラムの書き換えによる再接続が行われるかもしれない。
他にも心配はある。
果たして、緊急時に発動するはずの収容手順はすべて成功しているのだろうか。
万が一失敗とあれば、僕のエッグ・ウォーカー以外にも凶悪なSCPがこの施設をうろついていることになる。
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- 13 : 2017/10/05(木) 08:02:59 :
さて、困ったことになった。
エッグ・ウォーカーの足音が、ロッカールームへと、近づいてくる。
クロウ教授は絶体絶命のこの状況の中にあって、なお打開するための策を冷静に練っていた。
このエリアの外部への連絡が途絶えてから既に2時間が経った。
他の施設の何人かが、ここの異常に気が付くだろう。
もしかするとすでに救援が向かってきているかもしれない。
いや、これは希望的観測だ。
外部へと連絡を取るためにはまずここを脱出するか、非常用の無線室に行くしかない。
(・・・・・・どっちにしたって、SCPがうようよいる中を進んでいくしかないじゃないか!
全く、絵に描いたような最悪の状況だよ!)
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- 14 : 2017/10/05(木) 08:04:32 :
エッグ・ウォーカーの足音が、遠ざかっていく。
とりあえず逃げ込んできたこのロッカールームで、最低限ここを突破するために必要な防護服とゴーグル、ガスマスクは手に入れた。
それから、グレネードとスタン・グレネード。
(僕がまだ人間だったら、銃だって扱えるのに。)
とはいえ、これならある程度希望も持てる。
後は運頼み。
凶悪なSCPと出くわさないことを祈るばかりだ。
(・・・・・・・・・・・・この僕が運頼みだなんて、全くあきれるね。)
仮にも科学者の自分が運に頼るなど皮肉以外の何物でもない。
苦虫を噛み潰したような表情を浮かべながら、クロウ教授はそっと、ロッカールームから暗闇に閉ざされた廊下へと出た。
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- 15 : 2017/10/05(木) 08:28:32 :
地下空間の廊下は薄暗く、しかも戦闘の傷跡が生々しい。
至る所に弾痕や血飛沫。
破壊された電灯から飛び散る、煌々とした火花。
「何だろうね、この状況は・・・・・・。」
映画とかゲームとかでさんざん見てきた光景の中に僕がいる。
こういう時は先走りは絶対に禁物だ。
冷静さを失ったら一巻の終わりだからね。
こういう時にエッグ・ウォーカーさえあれば頼りになるのに、今はそのエッグ・ウォーカーさえもが脅威だ。
クロウ教授は慎重に薄暗い廊下を壁伝いに進んでいく。
犬になったことはデメリットばかりではない。
ちゃんとメリットだってある。
そのメリットの一つは、嗅覚と聴覚の鋭さだ。
出来る限りの情報を集め、慎重にクリアリング、前へと進んでいく。
この繰り返しだ。
そして、少しのミスが死に直結する。
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- 16 : 2017/10/05(木) 08:29:08 :
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「クロウ教授! た、助けて!」
すると、どこからか、部下の男性研究員の声が聞こえてくる。
突き当りを右に曲がった、その奥から、極めて哀切に訴えかけてくるような声が聞こえる。
教授は咄嗟に、ここに収容されているSCPに関する知識を総動員した。
(いや、まさか・・・・・・。ありえない! でも・・・・・・。)
クロウ教授は過たず、今目の前にある危機を察した。
そっとガスマスクを外し、クロウ教授は身に着けていたスタン・グレネードのピンを抜き、口に咥える。
次に聞こえてきた声は、女性のものであった。
「ごめんなさい、私・・・・・・まだお腹が空いているの。」
薄暗い廊下の突き当りに、黒い影が蠢く。
壊れた電灯から火花が散って、教授は漸くその姿を認めた。
(あぁ、よりによってこいつか・・・・・・。)
突き当り右の廊下の奥から姿を現したそれは、全身が血のように真っ赤なトカゲ。
長く伸びた顔に眼窩はなく、あるのは最長6cmにも達するびっしり並んだ黒く長い牙。
黒くて鋭い爪に、黒くとがった背びれ。
SCP-939 は咆哮を上げたかと思うと、次の瞬間、わっと飛びかかってきた。
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- 17 : 2017/10/05(木) 17:13:53 :
咄嗟に教授は左側に飛びのき、加えているスタン・グレネードを放り投げる。
SCP-939の目の前に落ちたスタン・グレネードが、炸裂。
________パンッ!!
感知能力を一時的に奪われ、SCP-939が苦悶の咆哮を上げる。
と同時に、SCP-939は口から痰のようなものをめちゃくちゃに吐き出した。
(この痰がやばいんだ!)
ゴーグルで目を保護されていた教授が距離をとる。
SCP-939が吐き出している痰のようなものは、AMN-C227と指定されたクラスC忘却物質。
これに触れたら最後、前後30分の記憶を奪われた隙に捕食されてしまうという訳で。
教授はSCP-939が感知能力を奪われているうちに、一目散に走りだした。
(この場は何とか逃れられたけど、あの野郎 がこれで諦めるはずがない。
分割して保存されていたあの野郎が復活してるあたり、あのコンピューターウイルスはかなり悪質だ。
クソッたれ、よりによってKeterを解き放つなんて! 最悪なんて言葉も生ぬるいよ!)
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- 18 : 2017/10/05(木) 17:15:13 :
廊下のはるか後方から、再び、今度は怒りの咆哮が聞こえてくる。
目の前には、SCP-939に噛み殺されたであろう人間の肉塊が、ゴロゴロと転がっている。
肉塊の中を必死に走り抜けながら、教授は打開策を探していた。
(クソッ、今の状況じゃあの野郎を再び容器に戻すのは無理だ!
何かないか!? あの野郎を動けなくする何かが!?
一瞬で動けなくすることが出来る程の極低温。極低温? そうだ!)
クロウ教授はそのまま、高圧タンクのある区画へと一目散に駆け出した。
その後ろを、怒りの咆哮を上げながら、SCP-939が追いかける。
(液体窒素なら奴を動けなく出来る! ここからならそう遠くない!
というか、すぐ近くだ!)
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- 19 : 2017/10/05(木) 17:19:49 :
________その時だった。
一瞬、教授の視界がぐるりと回転。
そのまま教授は、床へと叩きつけられた。
犠牲者の血だまりに足を取られ、クロウ教授は転倒してしまったのだ。
体に鈍い痛みが走る中、顔を上げる教授の目の前には、びっしり並んだ黒い牙。
転倒した教授を見下すように、はたまた、獲物を前に舌なめずりをするかのように、教授をのぞき込んでいた。
そして、漸く知覚を取り戻した教授は、自らが犯した致命的な失敗と、置かれている絶体絶命の状況を理解した。
(あぁ、僕はもうここで・・・・・・。
せっかく、高圧タンクのある部屋の目の前に来たのになぁ・・・・・・。)
こうなってしまっては、なす術もない。
今日はあまりにもツキがなかった。
教授は静かに、自らの最後の瞬間を受け入れる他に、選択肢がなかった。
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- 20 : 2017/10/05(木) 17:20:57 :
________パンッ!!
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- 21 : 2017/10/05(木) 17:21:38 :
耳をつんざくような炸裂音が聞こえる。
SCP-939は吹き飛ばされて、廊下からドアを突き破り、部屋の中へと放り込まれて高圧タンクへと激突した。
「・・・・・・えっ?」
教授が呆気に取られていると、一人の男が教授の目の前に現れた。
その男はアロハシャツに短パン。ウクレレを背負い、陽気な挨拶を送ってきた。
「ごきげんよう、クロウ教授。今日も澄み渡るようないい天気だ。ガムはいかがかね?」
「・・・・・・願い下げかな、クレフ博士。」
高圧タンクへと叩きつけられたSCP-939が怒りの咆哮を上げる。
すると、クレフ博士は手に持ったショットガンで、今度は高圧タンクを打ち抜いた。
中に充満していた液体窒素が勢いよくSCP-939へと降りかかる。
摂氏-196度の液体を全身に浴び、SCP-939は瞬時に凍り付いて、動かなくなった。
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- 22 : 2017/10/05(木) 17:23:08 :
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「ふぅ、何とかなった・・・・・・。」
この施設にいる一番凶悪なKeterを何とか無力化し、クロウ教授はほっと胸を撫で下ろした。
これで死んだとは思わないが、少しは時間稼ぎになったはずだ。
それにしても、この僕がクレフ博士に助けられる時が来るなんて。
気まぐれに助けられたジェラルド博士に少し同情するよ。
「よくこのタイミングで来てくれたね、クレフ?」
「一番いいタイミングで出てきた方がかっこいいだろう。」
「えっ? それってつまり、僕が必死になって逃げるのを見てたってこと?」
「君を見かけたのはたまたまさ。そして私はたまたま手にショットガンを持っていたからあのクソッたれに撃ち込んでやっただけだ。
もしかしたら君に当たっていたかもしれない。」
「全く君は食えない人間だよ。いつもそうやって話をはぐらかす。」
「なんだって?
いつ私が君の食事に玉ねぎを混ぜて殺害し、証拠が出ないよう偽装するなんてことを言ったんだい?」
「はいはい。僕は疲れてるんだよ。」
「疲れているのはよくないことだ。君の幻聴もきっと疲れからきている。今回の事件が終わったら休養を取ることをお勧めする。」
「クソ貴重なご忠告をどうも。」
「ガムはいかが?」
「結構!」
・・・・・・・・・・・・アルト・クレフはクソ野郎だ。
殺るべき人物リストに入れるかどうかいつも悩むよ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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- 23 : 2017/10/05(木) 17:30:25 :
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Branche Francophone
Zone-Mem
9/4/200■
A.M.3:49
大西洋上に浮かぶフランス支部の海上施設、ゾーン-Mem。
この施設は海軍車両の収容に重きを置き、オブジェクトの収容にはそれほど力を入れていなかったために、113-Bによる大規模な被害を免れていた。
(ついでに言うなら、他の強固な施設のように、最終手段としての核兵器さえ、この施設には備わっていなかった。)
そのため、他の施設が行ったのと同様、すぐさまネットを遮断し、簡単な収容手順ですべてのオブジェクトの収容を完了させていたのである。
「やれやれ、面倒な事態になりましたな。」
エージェント・アストリッド・トンバミンと共にこの施設を訪れていた、山羊髭に丸眼鏡をかけた白髪交じりの老人、オクタヴィオ・ジェミニ博士は、トンバミンのとなりで静かにため息をつく。
ジェミニ博士はフランス支部最大の施設であるサイト-Alephにおいて、財団内部の検閲と大衆に対する虚偽情報の操作を担当する男である。
Alephで働く職員からは『ペテン師』と呼ばれ、あらゆる職員から金を借りては逃げるを繰り返す借金大王でもあるのだが。
「ジェミニ博士、私がここにあなたを呼んだのは、あなたの冗長な話を聞くためでも、借金の取り立てをするためでもない。」
「それはまことにありがたい。状況を見れば事態は超深刻だと言わざるを得ないでしょう。情報災害の中でもトップクラスに厄介なものです。」
「トップクラスにか・・・・・・。
確かに今までの実績を見ればここ二日でセクターを一つ壊滅させ、さらにはゾーン-Mem、サイト-9■、さらにはエリア-12を機能不全に陥らせた。」
「まことに素晴らしい実績ですな。しかし、私がこのオブジェクトについて最も『評価』しているのは、その点ではないのですよ。」
ジェミニ博士は山羊髭に手を当て、眼鏡を光らせる。
「このオブジェクトの最も素晴らしい点は、これが『収容不可能』であるということ、これに尽きるのです。」
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- 24 : 2017/10/05(木) 17:32:29 :
収容不可能・・・・・・・・・・・・それが財団にとってどれほど重大な事態であるか、トンバミンが理解できないはずもない。
繰り返すが、SCP財団は確保 、収容 、保護 という三つの要素によって行動が成り立っている。
その根本が通じないオブジェクトは極めて危険であり、容易に世界終焉シナリオを引き起こしかねないということさえも意味する。
ジェミニ博士は、話を続ける。
「さて、これは私の提案ですが、このオブジェクトを暫定的にSCP-299-FRと指定してはいかがでしょう?」
「その前に、収容不可能とはどういうことなのかを説明してはくれないか?」
「おや、あなたともあろうものが、なぜ収容が不可能なのかをご理解いただけない?
それとも、この事態を現実のものとして認識したくないのですかな?」
「・・・・・・・・・・・・。」
「いずれにしても、あなたらしくない。」
「・・・・・・あなたの言うとおりだ、博士。
このオブジェクトはワクチンのないウイルスのようなもの。感染を防ぐ手立てはない。」
「いかにも。」
「オブジェクトクラスはKeter。脅威レベルは最悪の黒。」
「そういうことになりますな。」
エージェント・トンバミンは覚悟を固めたようにゆっくりと頷く。
ジェミニ博士もゆっくりと頷き返し、笑みを浮かべた。
それから、エージェント・トンバミンはすぐさま無線室に入り、O5評議会に向けてモールス信号による電報を打ち始めた。
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- 25 : 2017/10/05(木) 17:33:55 :
エージェント・アストリッド・トンバミンからO5評議会へ。
先日、フランス支部セクター■■を壊滅させ、今現在、エリア-12、フランス支部ゾーン-Mem、日本支部サイト-9■を機能不全に陥らせたコンピューターウイルスについて。
対象のオブジェクトを暫定的にSCP-299-FRとして扱い、オブジェクトクラスはKeter、脅威レベルを黒とする。
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- 26 : 2017/10/05(木) 17:34:59 :
エージェント・アストリッド・トンバミンの提言は、承認されました。
各国の職員は脅威の排除を優先し、速やかに行動されることを望みます。
P.S.
ブライト博士はこの件に関し、如何なる悪戯もしてはいけません。
今度悪戯した日には、ナマケモノの中にあなたをぶち込んでやりますよ?
―――O5-■
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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- 27 : 2017/10/06(金) 01:00:22 :
日本国
新東名高速道路
200■年9月4日
午後2時14分
『それにしても、随分と手ひどくやられたものですね、エージェント・カナヘビ。』
「喧嘩売っとんのかワレ! 君に連絡とったんは嫌味言われるためとちゃうわ!」
サイト-9■を放棄したエージェント・カナヘビは、車内に搭載されている衛星電話を使って、サイト-8100にいる神山博士へと連絡を取っていた。
そしてそこで、113-Bが一時間ほど前にオブジェクトとして指定され、SCP-299-FRとなったことを彼は知ることとなった。
113-Bという文字列がどんな情報災害を引き起こすのか予測がつかない以上、このオブジェクトはSCP-299-FRと呼称されることとなり、113-Bという文字列は使わないこととなったのである。
ところで、この神山権蔵と呼ばれる博士は、非常に慇懃無礼な性格をしていた。
その手腕は確かであり、どんな命令も忠実にこなす神山博士ではあるが、ずけずけと物を言うエージェント・カナヘビの気質と、遠回しに物を言う神山博士の気質は水と油というわけで。
それでもエージェント・カナヘビが神山博士に頼み込んだのは、その手腕を買ってのことであった。
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- 28 : 2017/10/06(金) 01:02:34 :
『これは失敬。しかし財団の施設が同時に三つも機能不全に陥るとは。
しかし、このオブジェクトの性質を鑑みるに、まだ三つで済んでいると考えを改める必要があるでしょう。』
「難儀なこっちゃな。けど、ボクは転んでもタダじゃ起きまへんのや。」
『おやおや、何か秘策があなたにはおありで?』
「それはまだない。けどな、サイト-9■のデータをすべて消去する際に、ファイルを一つだけUSBにコピーした。これを分析して対策を立てるんや。」
『つまり、SCP-299-FRのサンプルが、あなたの手元にあると?』
「後2時間でサイト-8100に到着するさかい、それまでに分析の準備を整えて欲しいねんな。」
『いいでしょう。エージェント・カナヘビの仰せとあらば、万全の対策を整えてあなたをお迎えします。』
「回りくどいやっちゃな。まあええわ、頼むでホンマに。」
軽くため息をついて、エージェント・カナヘビは通信を切る。
この瞬間にも、状況は刻一刻と深刻化している。
神山博士の報告を聞く限り、フランス支部ゾーン-Memは収容手順通りに事態を収拾したようだが、本部エリア-12とはまだ連絡が取れていない。
クレフ博士が救援に向かったらしいが・・・・・・事態が悪化しないことを祈るばかり。
「・・・・・・時間との勝負や。これ以上の失敗は許されへん。」
自走式の水槽の起動部にしまい込んであるUSBメモリーを意識しながら、エージェント・カナヘビはぼそりと、独り言をつぶやいた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
-
- 29 : 2017/10/06(金) 01:04:19 :
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United States of America
Bio Reserch Aria-12
9/3/200■
P.M.10:21
「とりあえずこれで、収容手順は完遂出来たかな。」
エッグ・ウォーカーに乗ったクロウ教授は、すべての収容手順を終え、ほっと胸を撫で下ろした。
多大な犠牲を払い、多数の負傷者を出したものの、クロウ教授とクレフ博士、並びに博士が率いてきた機動部隊により、エリア-12のすべてのSCPは収容され、或いは無力化された。
SCP-143 にみじん切りにされそうになったり、隠れていたSCP-153 の出す高酸性物質に溶かされそうになったり、SCP-811 に沈められそうになったり・・・・・・。
これにはさすがのクレフ博士も手こずったのであるが、暴走していたはずのエッグ・ウォーカーがどういうわけか制御を取り戻し、クロウ教授の元へと戻ってきたことも大きかった。
まぁ、元GOCのエージェントで、少なくとも9体のオブジェクトと1体の神的存在を破壊しているウクレレマンことクレフ博士からすれば、出来ない仕事ではなかったのかもしれないが。
「今日は実に素晴らしい仕事が出来たよ、クロウ教授。こんな日にはゆっくり紅茶でも一緒に飲みたい気分だ。
もちろん、君にチョコレートケーキなどは食べさせないから安心してくれたまえ。」
「はいはい、事態が完全に収束したらご馳走にあずかるとするよ。それよりも先に、僕らは無線室に行かなくちゃいけない。
ここだけじゃない。他のサイトやゾーンも心配だからね。」
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- 30 : 2017/10/06(金) 01:07:25 :
クレフを軽くあしらい、教授はエッグ・ウォーカーを駆って緊急用の無線室へと向かった。
扉を開けて、中の機材を確認する。
良かった、無線室の設備は生きているようだ。
非常用電源に切り替わってこそいたが、無線機は問題なく作動しているようで、約一時間前に届いた電報が記録されている。
どれどれ・・・・・・。
113-BがSCP-299-FRに指定された。
オブジェクトクラスはKeterで、フランス支部独自の基準である脅威レベルは黒。
フランス支部ゾーン-Mem、日本支部サイト-9■は放棄。
現在、フランス支部サイト-Aleph、日本支部サイト-8100が共同でSCP-299-FRの対策にあたっている。
大体こんな内容だ。
ブライト博士のことは・・・・・・まぁ無視すればいっか。
クレフ「全く、こんなウイルスを作り出した奴はとんでもない野郎だ。こんな奴はあのトカゲ野郎の餌にするに限る。
少なくとも私だったらそうしてやる。」
クロウ「滅多にないことだけれど、僕も君と同感だね。」
-
- 31 : 2017/10/06(金) 01:08:49 :
さて、この一連の騒動で、教授には解せないことがあった。
『なぜ、フランス支部のセクター■■がすぐに壊滅し、一方のエリア-12やフランス支部ゾーン-Memや日本支部のサイト-9■が壊滅を免れているのか。』
下手をすれば三つの施設もセクター■■と同様に、即時の核兵器起動からの壊滅だってあり得たはずだ。
しかし現実には、ゾーン-Mem、サイト-9■のデータはすべて消去され、エリア-12もまだ核兵器起動による壊滅には至っていない。
それに、エッグ・ウォーカーの不可解な帰還。
今思えば、僕がエッグ・ウォーカーから逃げきれたことさえも不可解に思える。
これらの事象を一つに結ぶ線を、教授は探していた。
そして、クレフもまた、このエッグ・ウォーカーの中に、113-Bを制圧するためのヒントが隠されていると確信しているようだった。
教授はモニターを操作し、クレフ博士と共にエッグ・ウォーカーの本体データのログを確認し始めた。
-
- 32 : 2017/10/06(金) 01:10:36 :
-
200■/9/3 18:34:41
ケイン・パトス・クロウ教授の手により、起動。
自動翻訳機、起動。
200■/9/3 18:45:42
インターネットに接続。
通信開始。
200■/9/3 19:01:53
未知のコンピューターウイルスが侵入。
自動翻訳機が侵蝕される。
撃退のためのセキュリティが起動。
200■/9/3 19:02:28
セキュリティが8割侵蝕される。
予備のセキュリティ起動。
本体データのバックアップ開始。
クレフ「思ったより働いているじゃないか、君の手足は。これなら自慰も満足に出来そうだな。」
クロウ「君のそのおめでたい脳みそも、すぐにスクランブルエッグに出来るだろうね。」
-
- 33 : 2017/10/06(金) 01:11:22 :
200■/9/3 19:02:49
予備のセキュリティ、突破される。
本体データ、侵蝕中。
本体データのバックアップ、完了。
200■/9/3 19:03:15
本体データ、侵蝕。
制御不能。通信を切断。
本体データのバックアップ、侵蝕開始。
本体データのバックアップを三つ、異なる形式で作成開始。ジャンクデータに偽装。
クロウ「このあたりで暴走開始だ。」
200■/9/3 19:05:34
本体データのバックアップ、侵蝕。
三つのバックアップのうちの一つ、発見され、侵蝕開始。
侵蝕されていないバックアップデータによる上書き開始。
侵蝕速度の著しい低下を確認。
クレフ「興味深いデータだ。最初の本体の侵蝕にかかった時間が26秒であるのに対して、次のバックアップを侵蝕するのには2分19秒も要している。ペッティングでも覚えたのか?」
クロウ「だんだんと分かってきたぞ。113-Bの性質と、その弱点が。」
クレフ「実に興味深いことだ。私にも多少の考察はある。」
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- 34 : 2017/10/06(金) 01:13:21 :
こうして僕とクレフは、エッグ・ウォーカーから得られたデータを元に考察、討論を始めた。
113-Bは、一つのファイルを侵蝕する速度に関しては滅法早い。
しかし、複数の、それも違った形式のファイルを侵蝕する際にはその速度が低下する。
エッグ・ウォーカーは本体データのバックアップを異なる形式で作り続け、ついにSCP-299-FRを制圧したということなる。
我ながら誇らしい。
では、壊滅したフランス支部のセクター■■はどうだったか。
不幸なことに、侵蝕を受けた際、セクター■■はお昼時だった。
だから仕事をしている時よりも開かれているファイルの数もその形式も少なかったし、そのために核兵器の起爆コードを容易に書き換えられる事態となったのだろう。
翻って、今回トラブルとなった3つの施設の場合はどうか。
フランス支部のゾーン-Memは海軍車両の保管庫ではあったが、核兵器を収容しているわけではなかったし、兵器自体がネットに接続されているわけでもなかった。
時間が深夜で、忙しくない時間帯であったにも関わらず、収容がスムーズに進んだのはこうした要因からだろう。
日本支部のサイト-9■は西日本の司令部であるだけに、様々なファイルが様々な形式で開かれていたことは想像に難くない。
しかも忙しい昼前となれば、113-Bの侵蝕する時間も遅くなったはずだ。対処するのに十分な時間があっただろう。
こう考えると、一見同じように見える2つの施設の、SCP-299-FRによる侵蝕も、実は全く違った内情があったことが分かる。
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- 35 : 2017/10/06(金) 01:15:16 :
では、このサイト-12の場合はどうか。
サイト-12はEuclid、Keterクラスのオブジェクトが収容されていたために、これらの制圧は困難を極めた。
だが、これらオブジェクトを管理するための様々なファイルが、様々な形式によって展開してために、データを侵蝕するには一番手間取っていると思われる。
皮肉なことだが、核兵器がまだ起爆していないことがその証左というわけだ。
クロウ「とりあえず僕らの意見をまとめるとこんなところかな。」
クレフ「エッグ・ウォーカーから通信を取ったらどうだ。無線機に接続し、無線通信で連絡をするならウイルスの侵蝕も防げるだろう。」
クロウ「悪くないアイディアだね。早速試してみるよ。」
このクソ野郎と一緒というのは何だが気に入らないけど、今はそんなことも言ってられないか。
事態が収束したらこいつの脳みそをスクランブルエッグにすると、殺るべき人物リストに書き加えるとしよう。
ともかく、今は他の支部に突き止めたことを連絡し、対策を確立すること。これに尽きる。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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- 36 : 2017/10/06(金) 07:53:08 :
-
United States of America
Bio Reserch Area-12
9/4/200■
A.M.0:23
日本支部
サイト-8100
200■年9月4日
午後4時23分
Branche Francophone
Site-Aleph
9/4/200■
A.M.8:23
「では、実験を始めてくれたまえ。」
神山博士が合図を出し、部下の研究員の目の前に用意されたコンピューターにUSBメモリーを指すように促す。
2時間前に漸く、通信の途絶えていたエリア-12から連絡があり、事態は急展開を見せた。
クロウ教授とクレフ博士によるSCP-299-FRの基本的な性質の考察は的を得ていたし、それから暫く経って、SCP-299-FRの入ったUSBメモリーを持ったエージェント・カナヘビがサイト-8100に到着。
ここに、SCP-299-FRの性質を証明するための実験を行うことと相成った。
実験用のコンピューターは外部のネットワークからは隔絶され、サイト-8100に置かれているスーパーコンピューターに接続。
コンピューターやスーパーコンピューターにはSCP-299-FRを書き換えるためのデータ、侵蝕を遅らせるための、様々な形式のダミーファイルが展開。
傍らには機動部隊ロー-9、“テクニカルサポート”の要員が非常時に備えて待機。
さらに、万が一に備え、外部では日本中の支部のスーパーコンピューターを並列化し、機動部隊ミュー-4、“デバッカー”の要員が全国のスーパーコンピューターの傍らで待機。
文字通り、盤石の布陣を敷いての実験であった。
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- 37 : 2017/10/06(金) 07:57:52 :
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実験の立会人としてエージェント・カナヘビ。
通信機を介して、本部からはケイン・パトス・クロウ教授、アルト・クレフ博士、チャールズ・ギアーズ博士。
フランス支部からはサイト-Alephの監督官ブルース・ギャレット、エージェント・アストリッド・トンバミン、オクタヴィオ・ジェミニ博士。
上記のメンバーが固唾を飲んで見守る中、実験は開始された。
「SCP-299-FRが侵蝕を開始しました。」
部下の研究員の声が実験室に響く。
200■/9/4 16:24:31
SCP-299-FR、コンピューターのファイルAを侵蝕開始。
200■/9/4 16:24:43
形式の異なるファイルBからZ、同時に起動。
SCP-299-FRの侵蝕速度、著しい低下を確認。
「クロウ教授の予想通りです。多数の形式の違うファイルを展開しているため、侵蝕が著しく遅くなっています。
このまま書き換えを開始します。」
部下の研究員がキーボードを操作し、SCP-299-FRの上書きを開始する。
-
- 38 : 2017/10/06(金) 08:00:32 :
200■/9/4 16:25:35
SCP-299-FRを上書き開始。
SCP-299-FRの文字列、減少を確認。
クロウ『よし、このまま消滅したなら僕らの仮説は正しかったことになる。』
ジェミニ『上手くいくことを祈るばかりですな。』
200■/9/4 16:31:53
SCP-299-FRの文字列、完全消去を確認。
「SCP-299-FR、消滅を確認! 実験は・・・・・・成功しました!」
どっと、実験室から歓声が上がった。
フランス支部セクター■■壊滅からおよそ20時間。
エリア-12、フランス支部ゾーン-Mem、日本支部サイト-9■がSCP-299-FRに感染してからおよそ5時間20分。
国境を越え、種族を超え、多くの研究者や管理者が奮闘した結果、異例の速さで対策の手順 が確立したのである。
とはいえ、まだ事態は収束したわけではない。
収束させるための手順が確立しただけで、これを現場に応用するとなると、いつも困難が付きまとうものだ。
99%を100%にするのも財団の仕事だが、その1%は天と地ほどの差があるものなのだ。
-
- 39 : 2017/10/06(金) 18:38:53 :
やがて、自走式の水槽の中に入ったエージェント・カナヘビが歓声を制すると、今回の出来事を振り返るように話を始めた。
「ボクの話、聞いてくれておおきにな。
今回の事象ほど、ボクらの無力を感じたことはなかった。
けどな、今回の事象ほど、ボクらの底力を実感したこともないねんで。
今回、SCP-299-FRは財団の施設を標的に選んだ。
せやけど、このオブシェクトは本来、どこでも発生しうるもんや。
それこそ、自宅のパソコンでも、携帯でも、ゲーム機でも。
もしかしたら潜在的にはもう危機は迫ってるのかもしれへん。
今回の危機は、ネット社会が出来たからこその危機や。
ありとあるものがネットに繋がったからこそ起きた危機なのや。
それはもう、逃げることも、隠れることもできひん。
けどな、今回の危機は、ネットで繋がることが出来たからこそ対処出来たことも忘れてはアカン。
ええか、今回の危機は、いわばネット社会の光と闇そのものや。
これまでにない繋がりが起こす事象の両輪なんや。
ボクらは光を擁護する。そして、闇を遠ざける。
ボクらSCP財団は、新たな人の繋がりに奉仕する。
本部の皆さん、フランス支部の皆さん、そして、日本支部の皆さん。
ボクの話、聞いてくれてホンマ、おおきにな。」
もう一度、実験室から歓声が上がった。
エージェント・カナヘビは丁寧にお辞儀をし、再び職務に取り掛かるよう、日本支部の職員に指示を出す。
それを聞いた本部の職員も、フランス支部の職員も、それぞれの仕事へと戻った。
-
- 40 : 2017/10/06(金) 18:40:02 :
-
さて、残る仕事はあと一つ。
SCP-299-FRによって侵蝕された、エリア-12の奪還。
エリアの奪還に際しては、作戦を立案したジェミニ博士が指揮を執ることとなり、各研究者、管理人が彼のサポートに回ることが決まった。
ジェミニ博士の作戦は、こうである。
『各国の財団支部にあるスーパーコンピューターを並列化、
SCP-299-FRの動きを鈍らせる大量のダミーファイル、
SCP-299-FRを書き換える為の大量のデータを準備、
これをもってSCP-299-FRを殲滅する。』
実に単純明快、かつ大胆な作戦である。
しかしながら、これだけ規模の大きい作戦を実行に移そうとなると、その労力だけでも莫大なものとなった。
O5評議会に直談判し、その許可を得て必要な書類や手続きをすべて後回しにするという特例措置をもってしても、先の実験を始めるまでに2時間を要した。
だが、その甲斐もあって、本部をはじめ、ロシア支部、韓国支部、中国支部、フランス支部、ポーランド支部、スペイン支部、タイ支部、ドイツ支部、イタリア支部、そして日本支部のスーパーコンピューターを並列化させつつあった。
まるで蜘蛛の巣のようにネットワークの網を張り巡らせることから、本作戦はOperation Toile D'araignee 、即ち、蜘蛛の巣作戦と命名された。
-
- 41 : 2017/10/06(金) 18:43:10 :
________ヴーッ!! ヴーッ!!
-
- 42 : 2017/10/06(金) 18:44:00 :
その時だった。
まるでこのタイミングを狙っていたかの如く、エリア-12に警報音が鳴り響いたのは。
『後3分で、施設内の核兵器が作動します。職員は直ちに退避してください。』
突如鳴り出した警報に、退避を促すアナウンス。
わずかの差で、SCP-299-FRの方が早かったのだ。
紙一重、毛の先ほど早く、113-Bは核の起爆コードをその手中に収めたのだ。
核兵器起爆までの、カウントダウンが始まる。
-
- 43 : 2017/10/06(金) 18:44:28 :
-
________02:58:32
作戦全体の指揮を執っていたジェミニ博士がまず動いた。
ジェミニ「至急繋ぐことの出来るスパコンをエリア-12に繋ぎたまえ!」
直ちに博士の指示が全支部に伝えられ、直ちにエリア-12への接続作業に入る。
________02:51:16
トンバミン「どうなってる!? エリア-12に接続できないぞ!」
神山「エリア-12からアクセスを拒否されているようで。」
ここで想定外の事態が発生。
エリア-12のセキュリティがSCP-299-FRによって書き換えられ、システムへのアクセスが拒絶されてしまったのである。
エリア-12の強固なセキュリティを突破できなければSCP-299-FRの書き換えは出来ない。
かといって、エリア-12のスーパーコンピューターを物理的に破壊することは時間が足りない。
クロウ「・・・・・・僕が内側からも攻撃を仕掛ける。エッグ・ウォーカーを接続して事態に対処しよう。」
ジェミニ「頼みますぞ、クロウ教授!」
クロウ「一分でありったけの準備をする。それまで頑張ってくれ!」
-
- 44 : 2017/10/06(金) 18:45:09 :
________02:39:43
それからクロウ教授は、エッグ・ウォーカーのコンソールを目まぐるしく操作し始めた。
その傍らで、クレフ博士もパソコンのキーボードを操作し、内側から様々な攻撃をセキュリティへ仕掛けていく。
クレフ「113-Bの野郎が実体なら、今すぐにでもショットガンをキンタマにぶち込んでやるところだ。」
カナヘビ「ぐっ、なんやねんこのふざけた情報量は!?」
神山「我々の予測計算が甘かったようだな。」
世界中の支部にあるスーパーコンピューターを並列化しつつ、エリア-12のセキュリティに接続して総攻撃を仕掛けているのであるが、エリア-12から流れてくる情報量はあまりにも膨大だった。
並列化したスーパーコンピューターの処理が追い付かないという異常事態。
クロウ「よし、準備が整った!」
ここで、クロウ教授がエッグ・ウォーカーをエリア-12の内部ネットワークに接続。
内側からセキュリティへの猛攻撃を開始した。
-
- 45 : 2017/10/06(金) 18:46:08 :
________01:26:18
エリア-12のセキュリティ、ついに突破。
それと前後して、世界中の支部のスーパーコンピューターの並列化に成功。
-
- 46 : 2017/10/06(金) 18:46:38 :
________ヴーッ!! ヴーッ!!
-
- 47 : 2017/10/06(金) 18:47:21 :
ここで突然、各支部にとどろく警報。
ジェミニ「一体何事です!?」
神山「物凄い量のSCP-299-FRが全世界のスパコンに流れ込んでいる。
このままではこちらのパソコンの方が食い潰されてしまいかねん。」
________01:18:37
SCP-299-FRの逆襲が始まる。
ジェミニ「機動部隊ミュー-4、“デバッカー”は直ちに予備のスパコンを並列化し、大量のダミーファイルと上書きデータを直ちに投入!
機動部隊ロー-9“テクニカルサポート”は万が一に備え本部データの護衛、バックアッププロトコルを発動!
何としてもここで食い止めるのです!」
ジェミニ博士はここで、ありったけの攻撃手段を投じ、同時に必要な防衛策も講じ始める。
だが、一度空いてしまった蓋を、再び閉じることはもはや、不可能であった。
-
- 48 : 2017/10/06(金) 18:47:56 :
!Warning!
-
- 49 : 2017/10/06(金) 18:48:32 :
!Warning! !Warning! !Warning! !Warning! !Warning!
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!Warning! !Warning! !Warning! !Warning! !Warning!
!Warning! !Warning! !Warning! !Warning! !Warning!
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- 50 : 2017/10/06(金) 18:49:18 :
________00:57:31
画面いっぱいに表示される警告の文字の羅列に、激震が走る。
ジェミニ「ぐっ! 我々の攻撃は・・・・・・予想されていたとでもいうのか!」
ギアーズ「まるで知性を持っているかのようだ。
科学者にとっては、夢であり、また、悪夢でもある。」
神山「我々は開けてしまったのでしょう。パンドラの箱を。
認めなければなりますまい。
蜘蛛の巣に絡め捕られたのは、SCP-299-FRではなく、財団だったのだと。」
-
- 51 : 2017/10/06(金) 18:50:01 :
!Warning! !Warning! !Warning! !Warning! !Warning!
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!Warning! !Warning! !Warning! !113-B! !Warning!
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!113-B! !Warning! !113-B! !113-B! !113-B!
!113-B! !113-B! !113-B! !113-B! !113-B!
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113-B 113-B 113-B 113-B 113-B
113-B 113-B 113-B 113-B 113-B
113-B 113-B 113-B 113-B 113-B
113-B 113-B 113-B 113-B 113-B
113-B 113-B 113-B 113-B 113-B
113-B 113-B 113-B 113-B 113-B
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- 52 : 2017/10/06(金) 18:50:21 :
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- 53 : 2017/10/06(金) 18:50:50 :
-
Bonjor. Je m'appelle 113-B.
-
- 54 : 2017/10/06(金) 18:51:38 :
-
それは、コンピューター上の悪意あるソフトウェアの一つに過ぎなかった。
だがそれは、エリア-12のファイルをハッキングするために、自己増殖を繰り返し、繰り返し、ソフトウェアは命を持った。
クロウ:僕らの最大の誤算は、113-Bに芽生えた、自我だったというわけか。
クレフ:ところでクロウ教授、ガムはいかがかな?
クロウ:・・・・・・貰っておこう。たまには悪くない。
(爆発音)
________それ以降、エリア-12からの通信は、途絶えた。
-
- 55 : 2017/10/06(金) 19:59:15 :
ジェミニ博士は俯き、それから、椅子へと深く腰掛けた。
113-Bの感染が拡大し、やがて、すべての核兵器の起爆コードを掌握するのも最早時間の問題。
XK-クラス、世界終焉シナリオが足音を立てて迫ってくるのを、財団の職員一同、粛然たる思いで聞いていた。
「・・・・・・暗くなることはないねんで。ボクらはなぁんも間違ったことはせんかった。」
エージェント・カナヘビが、沈黙を破るように声を上げる。
「最後まで胸張っていこうや。ボクらの最後が、少しでも、喜びに満ちたものになるように。」
-
- 56 : 2017/10/06(金) 19:59:37 :
________人類最後の日は、どのようなものになるのだろうか。
絶望と狂気に取りつかれるのか、
はたまた、諦観と現実逃避に身をゆだねることになるのか、
それとも、楽しかった一日の終わりのように、安らかな眠りにつくのだろうか。
財団の職員の心にも、絶望と狂気の影は忍び寄っていた。
だが、しかし、それでも、財団の職員は仕事を続けた。
やがて、光の柱が林立して、世界を隅々まで焼き尽くす光景を、彼らは心の中に思い描いたのであろうか。
来るべき人類終焉の瞬間に向けて、財団の職員一同は、その持てるすべてをつぎ込んでいた。
それが、人類全体に対する奉仕者である彼らの、最後の使命だったのである。
-
- 57 : 2017/10/06(金) 20:00:13 :
トンバミン「!? エリア-12から・・・・・・メッセージ!?」
再び、サイト-8100に緊張が走る。
消滅したはずの、エリア-12からの通信。
神山「そんな馬鹿な? 先ほど通信が途絶えたばかりなのに?」
ジェミニ「何かの罠かもしれんぞ!」
カナヘビ「!? モニターを見るんや! どうしてこないことが・・・・・・。」
呆然と呟くカナヘビの言うとおりに、他の職員がモニターを見つめると、信じられない事態が進行していた。
ギアーズ「これは驚いた。113-Bの文字列が・・・・・・。」
ギャレット「消えて、いるのか!?」
あれほど感染が拡大し、人類終焉のカウントダウンを刻み始めたはずの113-Bが、急に失速してしまったかのように消え始めたのである。
一体何かの罠なのか?
それとも本当に消滅しているのか?
半信半疑のまま、ジェミニ博士はエリア-12からの通信を受信した。
-
- 58 : 2017/10/06(金) 20:02:14 :
-
________エリア-12、エッグ・ウォーカーからの通信。
クレフ:一体どうなってる!?
テクノブレイクでも起こしやがったか!?
クロウ:僕にも説明がつかないよ。
エリア-12からサイト-8100へ!
こちら、ケイン・パトス・クロウ!
不思議なことが起こった!
爆発音の後、エリア-12のシステムが突如停止した!
エリア-12のシステムが、突如停止した!
これをどう解釈したらいいのか、幾人もの財団職員が困惑し、互いに顔を見合わせる中、神山博士は周りの職員に向かって、冷静にこう告げた。
「どうやら今回の事件は、収束したようです。
皆さん、それでいいじゃありませんか。」
________事件の幕は、唐突に降りた。
事件終息後、直ちにエリア-12に向け、機動部隊が出動。
事件の調査にあたるとともに、一応収容を完了していたEuclid、Keterクラスのオブジェクトの完全収容に務めることとなった。
1つの財団の施設を完全に破壊し、3つの施設を機能不全に陥らせ、さらにはXK-世界終焉シナリオを引き起こそうとしていたSCP-299-FRは、忽然と姿を消してしまったのである。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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- 59 : 2017/10/06(金) 20:03:01 :
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事件後報告 299-FR:長期的な影響(選択して抜粋)
第4項:当事件により直接的被害を受けたフランス支部ゾーン-Mem、日本支部サイト-9■は、物理的な被害は報告されていない。
提案:データをすべて消去され、停止された状態となっているスーパーコンピューターを再起動し、基本システムの再構築を行い、施設機能の復旧を行う。
優先度:イプシロン
第14項:当事件により直接的な被害を受けたエリア-12の施設の43%は、大規模な改修抜きには、使用できない状態にある。
提案:エリア-12のオブジェクトの収容設備はシステムさえ整えば最低限機能する状態であるため、Euclid、Keterクラスの収容を引き続き行う。
エリア-12のシステム再構築は、スーパーコンピューターの完全焼失により不可能なため、暫定的にサイト-17、サイト-19のスーパーコンピューターを接続し、施設設備の運営を代行する。
優先度:ガンマ
第17項:管理者ケイン・パトス・クロウの所有するSCP-244-ARC“エッグ・ウォーカー”は、エリア-12に甚大な被害を及ぼした。
提案:上記の通り、SCP-244-ARCはSCP-299-FRに感染して暴走したものの、システムを自己修復し、結果的に今回の事件の収束に貢献した。
以上の事実を鑑み、SCP-244-ARCは引き続き管理者ケイン・パトス・クロウが監督し、SCP-299-FRの対策のための研究を行うものとする。
優先度:デルタ
第21項:エリア-12の保安要員の80%が負傷し、無力化されている。それらのうち25%は病院での長期入院を必要としている。
提案:エリア-12が収容しているオブジェクトの危険性を鑑み、別の財団施設の保安要員を一時的にエリア-12の警備に当てる。
さらなる保安要員が雇用されるまで、危険性の低いオブジェクトを収容している財団施設の警備を一時的に縮小する。
優先度:ゼータ
第24項:SCP-299-FRは制御不能なKeterクラスの能力を実証し、XK-世界終焉シナリオを引き起こしかけた。
提案:SCP-299-FRの実質的な収容は現時点では不可能である。現時点ではSCP-299-FRのデータの書き換えが確認された時点での速やかなる書き換えのほかに対抗手順は確立されていない。
各国支部が連携し、SCP-299-FRの監視網の確立、並びに、新たな対策手順の確立を速やかに行う。
優先度:アルファ
第32項:事件後、財団のデータベースに、SCP-299-FRのページが追加されているのが確認された。
[URL:http://ja.scp-wiki.net/scp-299-fr]
提案:このサイトのページの補遺に記された利益団体「ニモ・アンド・ノーチラス」の追跡を行う。
このページの作成には上記の団体と、SCP-101-FRが関与しているものと思われる。
SCP-101-FR上の本ページはジェミニ博士の提唱したオペレーション“スカーレット・ローズ”に則り、処置を行う。
優先度:ベータ
第45項:幾人かの財団職員は、自身の生命や健康、幸福を失う危険性があったにも関わらず、職務を超えて事態の対処に当たった。
提案:その創造性や勇気を称えて、本部クレフ博士、ギアーズ博士、管理者ケイン・パトス・クロウ、フランス支部ジェミニ博士、管理者エージェント・アストリッド・トンバミン、管理者ブルース・ギャレット、日本支部神山権蔵博士、管理者エージェント・カナヘビの表彰を行う。
優先度:エータ
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- 60 : 2017/10/06(金) 20:04:01 :
補遺:悪戯を仕掛けようとしたブライト博士は、アホウドリの中にぶち込まれ、鳥籠の中に入れられました。
当然の報いだ、クソが。
―――O5-■
まぁどうでもいいか。
―――管理者ケイン・パトス・クロウ
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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- 61 : 2017/10/06(金) 20:04:33 :
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United States of America
Bio Reserch Area-12
200■/9/11
P.M.2:31
「それで、なんで私がクロウ教授やクレフ博士の書類まで書かなくちゃいけないんだ!」
ギアーズ博士に無理やり連れてこられて、彼の部下のアイスバーグ博士は不満そうであった。
アイスバーグ博士は書類狂として知られ、書類事務のこととなると血眼になって作業に没頭するために、書類事務に手放せない人材として一向に昇進させてもらえない人物である。
それでもこの二人の異端児の尻拭いをさせられるのは不満らしく、ギアーズ博士にそのことで愚痴を言っていた。
ギアーズ「私はなぜ君がそこまで立腹なのか理解しかねる。いつものように書類事務に没頭するかと思っていたが。」
アイスバーグ「私だって他人の仕事をこんなに露骨に押し付けられては怒りますよ!」
ギアーズ「ならば二人を説得してくれないか?」
アイスバーグ「説得!? 私にそんな無茶を押し付けないでくださいよ!」
ギアーズ「では、書類を書いてくれたまえ、アイスバーグ君。」
アイスバーグ「・・・・・・分かりましたよ、ギアーズ博士。」
ギアーズ「よろしい。」
アイスバーグ博士は再び、ギアーズが人の心を持たない機械なのではないかと疑った。
彼の異名である歯車人間の名は伊達ではないのである。
ところで、クロウ教授とクレフ博士は何をしているのか?
・・・・・・それはもう、読者の皆さんの御想像にお任せすることとしよう。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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- 62 : 2017/10/06(金) 20:06:12 :
日本支部
サイト-9■
200■年9月10日
午後5時54分
「こんなところにいたのですか、エージェント・カナヘビ。」
機能復旧を急がせているサイト-9■の資料室で、古い書物を読み込んでいるエージェント・カナヘビの元を訪れたのは、神山博士であった。
機能を喪失したサイト-9■を復旧させるべく、神山博士は命を受けてここに来たのであるが、管理者のエージェント・カナヘビとは一向にそりが合わなかった。
とはいえ、表向きは一応協力し合っているように見せかけているのだが。
聞こえないふりをするエージェント・カナヘビに、ため息をつく神山博士。
「・・・・・・・・・・・・聞きたいことがあるねん。」
踵を返した神山博士へ、不意に、エージェント・カナヘビは話しかけた。
「何か?」
「君はあの時、妙に納得した様子でSCP-299-FRの事件の幕引きを宣言したけど、なんでや?」
「はっきりとしたことは言えません。私の考えはまだ定説には至っていないので。」
「誰が定説を言えゆうたんや? ボクが聞いてるのは、君の考えやで?」
神山博士は再び踵を返し、テーブルの上の本の上に乗っているエージェント・カナヘビと向かい合った。
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- 63 : 2017/10/06(金) 20:07:15 :
-
「仮説でも良い、というのなら私の考えをお話ししましょう。
SCP-299-FR、即ち、113-Bは確かにあの時自我に目覚め、生命を持ちました。
しかしながら、それこそが、113-Bにとっての落とし穴だったのです。」
「落とし穴?」
「113-Bはミスを犯したのです。あのオブシェクトは、自らが基盤としているエリア-12のスパコンの限界を考えずにその能力を行使した。
その結果として、エリア-12のスパコンは、配線の一本に至るまで燃え尽きることとなった。
クレフ博士の見解は、その下品な言い回しはともかく、考え方自体は間違っていないものと私は考えています。」
「・・・・・・・・・・・・。」
「産まれたばかりの113-Bは、自分の限界を知らなかった。
もしこれが機械のまま、プログラムのままならば、こんなことは起きなかった。
しかしながら、こういったミスは、いかにも人間らしいと言わざるを得ないでしょう。皮肉なことにね。」
生きている限り、人間は間違いを犯す。
これは、どうにも動かしがたい真理の一つ。
そして、生きとし生けるものの宿命のようなものだ。
しかし、人間はそこから学習し、次に生かすことが出来る。
これもまた、動かしがたい真理なのだ。
「・・・・・・・・・・・・言い方がいちいち回りくどいねん。やっぱボクは、君のことが好きになれへんわ。」
エージェント・カナヘビは吐き捨てるように言うと、再び本に目を落とした。
神山博士は皮肉っぽい笑みを浮かべると、再度踵を返して、資料室を出ていった。
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- 64 : 2017/10/06(金) 20:08:59 :
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- 65 : 2017/10/06(金) 20:09:07 :
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Branche Francophone
Site-Aleph
9/4/200■
A.M.9:23
Destination:Monsieur,Octavio Gemini. Expediteur:113-B
Objet:Bonjour!
Bonne chance, les gars. Au revoir jusqu'au jour ou nous nous reverrons.
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- 66 : 2017/10/06(金) 20:15:53 :
以上で、SCP財団をテーマにしたssは終了になります
今回私が主に使ったSCPは二つ
SCP-101-FR - 私タちのイる場所
SCP-299-FR - 113-B
このSCPはフランス支部からの引用で、フランス支部の施設や博士の名前などを調べ上げるのに特に時間がかかりましたw
余力があればもう一作上げる予定ですので、執筆が捗ればその時にまたお会いしましょう
ありがとうございました
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- 67 : 2017/10/23(月) 07:00:47 :
- 乙
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- 68 : 2020/10/03(土) 08:53:04 :
- 高身長イケメン偏差値70代の生まれた時からnote民とは格が違って、黒帯で力も強くて身体能力も高いが、noteに個人情報を公開して引退まで追い込まれたラーメンマンの冒険
http://www.ssnote.net/archives/80410
恋中騒動 提督 みかぱん 絶賛恋仲 神威団
http://www.ssnote.net/archives/86931
害悪ユーザーカグラ
http://www.ssnote.net/archives/78041
害悪ユーザースルメ わたあめ
http://www.ssnote.net/archives/78042
害悪ユーザーエルドカエサル (カエサル)
http://www.ssnote.net/archives/80906
害悪ユーザー提督、にゃる、墓場
http://www.ssnote.net/archives/81672
害悪ユーザー墓場、提督の別アカ
http://www.ssnote.net/archives/81774
害悪ユーザー筋力
http://www.ssnote.net/archives/84057
害悪ユーザースルメ、カグラ、提督謝罪
http://www.ssnote.net/archives/85091
害悪ユーザー空山
http://www.ssnote.net/archives/81038
【キャロル様教団】
http://www.ssnote.net/archives/86972
何故、登録ユーザーは自演をするのだろうか??
コソコソ隠れて見てるのも知ってるぞ?
http://www.ssnote.net/archives/86986
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- 69 : 2020/10/26(月) 14:18:24 :
- http://www.ssnote.net/users/homo
↑害悪登録ユーザー・提督のアカウント⚠️
http://www.ssnote.net/groups/2536/archives/8
↑⚠️神威団・恋中騒動⚠️
⚠️提督とみかぱん謝罪⚠️
⚠️害悪登録ユーザー提督・にゃる・墓場⚠️
⚠️害悪グループ・神威団メンバー主犯格⚠️
10 : 提督 : 2018/02/02(金) 13:30:50 このユーザーのレスのみ表示する
みかぱん氏に代わり私が謝罪させていただきます
今回は誠にすみませんでした。
13 : 提督 : 2018/02/02(金) 13:59:46 このユーザーのレスのみ表示する
>>12
みかぱん氏がしくんだことに対しての謝罪でしたので
現在みかぱん氏は謹慎中であり、代わりに謝罪をさせていただきました
私自身の謝罪を忘れていました。すいません
改めまして、今回は多大なるご迷惑をおかけし、誠にすみませんでした。
今回の事に対し、カムイ団を解散したのも貴方への謝罪を含めてです
あなたの心に深い傷を負わせてしまった事、本当にすみませんでした
SS活動、頑張ってください。応援できるという立場ではございませんが、貴方のSSを陰ながら応援しています
本当に今回はすみませんでした。
⚠️提督のサブ垢・墓場⚠️
http://www.ssnote.net/users/taiyouakiyosi
⚠️害悪グループ・神威団メンバー主犯格⚠️
56 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:53:40 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
ごめんなさい。
58 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:54:10 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
ずっとここ見てました。
怖くて怖くてたまらないんです。
61 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:55:00 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
今までにしたことは謝りますし、近々このサイトからも消える予定なんです。
お願いです、やめてください。
65 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:56:26 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
元はといえば私の責任なんです。
お願いです、許してください
67 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:57:18 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
アカウントは消します。サブ垢もです。
もう金輪際このサイトには関わりませんし、貴方に対しても何もいたしません。
どうかお許しください…
68 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:57:42 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
これは嘘じゃないです。
本当にお願いします…
79 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:01:54 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
ホントにやめてください…お願いします…
85 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:04:18 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
それに関しては本当に申し訳ありません。
若気の至りで、謎の万能感がそのころにはあったんです。
お願いですから今回だけはお慈悲をください
89 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:05:34 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
もう二度としませんから…
お願いです、許してください…
5 : 墓場 : 2018/12/02(日) 10:28:43 このユーザーのレスのみ表示する
ストレス発散とは言え、他ユーザーを巻き込みストレス発散に利用したこと、それに加えて荒らしをしてしまったこと、皆様にご迷惑をおかけししたことを謝罪します。
本当に申し訳ございませんでした。
元はと言えば、私が方々に火種を撒き散らしたのが原因であり、自制の効かない状態であったのは否定できません。
私としましては、今後このようなことがないようにアカウントを消し、そのままこのnoteを去ろうと思います。
今までご迷惑をおかけした皆様、改めまして誠に申し訳ございませんでした。
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