このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。
この作品はオリジナルキャラクターを含みます。
この作品は執筆を終了しています。
風に乗せて
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- 1 : 2017/08/29(火) 17:28:26 :
- しゃぁ!ssのお時間です(っ´ω`c)!どうも、ルカです!
今回は蒼電さんのイベントである短期ss執筆会に参加させて頂くことになりました!
URL:http://www.ssnote.net/groups/2275
色々悩んでて、あれでもないこれでもないと様々な考えを踏み倒しての作品です(´・ω・`)
クオリティは保証できませんが最後まで読んで頂けると幸いです!
なお、今回のテーマは「風」でございます!
それでは、張り切っていきましょう(っ´ω`c)
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- 2 : 2017/08/29(火) 17:56:43 :
- ここはある住宅街。その住宅街を2人の男子が歩いていた。年は高校生ぐらいだろうか。学校指定のカバンが綺麗なことから恐らく新入生だろう。
「毎日毎日同じことの繰り返し……本当にイヤになる……」
学生服を着た少年が、友人に話している。どうやら、担任の先生に怒られてはらわたが煮えくりかえっているようだ。
「それは仕方ないだろうよ。嵐が五十嵐にやったことがいけないことだったんだから……」
「いけないことって、ペンを勝手に使っただけだぜ?それで、返すときもありがとうと言って返した。それの何がいけねぇってんだよ?」
どうやら、ここにいるのは風間 嵐 という男とその友達の高島 翔 だった。
風間はよく五十嵐 優子 という女の子に対してちょっかいをかけており、その関係で担任の先生によく怒られていた。それの愚痴を聞く係が高島というわけだ。
ただ、高島も風間の愚痴を聴くのもまんざらではない様子だった。高島はいつも笑顔で風間の愚痴を聴いていた。
「そりゃぁ、勝手に使って悪かったという詫びを入れないと男じゃねぇぜ!」
「そんなものか……?」
高島は中島の問いかけに頷いた。高島は恋愛経験も豊富で、風間にとっては言い相談相手だった。そんな、風間と高島の間をいきなり突風が吹き抜けた。
「のわぁ!!」
いきなりのことで、2人とも声を合わせて前につんのめった。雲行きも怪しくなってきた。
「やべぇ……今日は台風か!」
そう高島が言うと、家の前の自転車とかを固定するために走って帰って行ってしまった。
風間はひとりぼっちになってしまった。強い風は風間に対して力強く吹き付けている。
風間は商店街についた。今日は親がいないために、買い物をして帰らないと行けなかった。風間の両親は共働きで、家にいるのは土日ぐらいだ。
風間はスーパーに入り、インスタントラーメンとおにぎり2つをカバンの中に入れて、レジにむかった。
レジには2、3人並んでいた。レジうちの人は女性で手慣れた手つきで作業をしていた。年は同い年ぐらいか……
ふと、風間はスーパーの自動ドアのところから外を見ると、外の木々が左右に大きく揺れていた。
「風が強くなってきたな……」
風間がそうつぶやいたときに風間の番になった。
かごを置いてお金を出そうとしているときにふと……
「風間くん……?」
という声が聞こえた。その声のある方を見ると、レジうちをしていた少女の名札に『五十嵐優子』と書かれていた。
「い……五十嵐!?」
風間は思わず大きな声で叫んだ。辺りの人が振り返るくらいだったため、恥ずかしくなり風間は縮こまってしまった。
一方の五十嵐は最初は驚いていたが、すぐに我に還り、おにぎりとインスタントラーメンをレジにとおした。
「450円です。おにぎりは温めますか?」
レジうちが終わったのか、五十嵐が風間に声をかけた。風間は、
「温めてくれ。」
と告げて、500円を五十嵐に手で渡した。五十嵐はそれを受け取り、レジスターの中に入れる。すると、レジスターの扉が、
チーン……
という音とともに開いた。おにぎりを先にレンジからだし、耐熱用の袋に入れる。そして、レシートをビリッと破り、その裏にメモを書いた。
それから、五十嵐はおつりの50円をレジスターの小銭入れのところから取り出し、レシートとともに風間に渡した。そして、
「ありがとうございました。」
と一礼をして次の客の商品をレジにとおしていく。
風間はそんな五十嵐の新たな一面を見て、顔を赤らめていた。そして、風間はおつりの50円を財布に入れてから、五十嵐のメモを見た。そこにはこう書いてあった。
「10分後にバイトが終わるので、店の前で待っててくれませんか?」
風間は、
チッ……
と舌打ちをすると、店の前にあったベンチに腰掛けておにぎりを1つ食べることにした。
中の具材までしっかり温かくなっている。風間はその暖かみを感じながら、暴風が吹き荒れる街並みを眺めていた。
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- 3 : 2017/08/29(火) 19:34:28 :
- 10分ほど待っていると、スーパーの中からセーラー服をきた女の子が歩いてきた。
「ごめんね!待った?」
五十嵐が風間の近くに歩み寄り、隣に座った。
「……なんでだよ…………俺、お前に嫌がらせした後だぞ!なんで、話そうと思ったんだよ……」
まさかの問いかけに、五十嵐は驚いた表情を見せた。そして五十嵐は少し考えて、答えた。
「そうね……確かに嫌がらせをされた……のかもしれない…………だけど、風間くんの嫌がらせは嫌がらせと言うには可愛すぎるの……」
「それじゃぁなんで先公なんかにちくんだよ!」
「ちょっとまって!!それは違う!」
激昂する風間に対して、五十嵐は顔の前で手を左右に振って否定した。この五十嵐の行為に風間は何が起きたのか分からなかった。風間はこの時、頭の中が竜巻のようにぐるぐる回って整理できていなかった。
「じゃぁ……誰が言ったんだよ……」
風間は恐る恐る聴いた。そうすると、五十嵐は答えた。
「私の友達が嫌がらせと捉えたのよ……ほら、体操服が机の上に置かれていたのも、私が渡り廊下におとしたのを届けてくれたんでしょ?」
「(そういえば、そんなこともあったか。あのときも風が強かったかな……)」
と風間が考えていた。すると風間があることに気づく。
「ちょっとまて!俺が先公に怒られてる時って風が強いときだ!!」
「うん!てか、風間くんはその時しか嫌がらせ?してないよね?」
風間の訳の分からない発言に五十嵐は不思議そうに風間の顔を見た。
風間は嫌がらせのことを思い出していたが、よく考えたら落とし物を拾って、そのついでに使わせてもらったり、服とかの場合は折りたたんだりしたぐらい……
それをたまたま見た人が先生にチクる。それが原因で風間が放課後に呼び出されて怒られる。
それも……強風の時に……
余計に分からなくなって、脳内がグルグル回り始めた。外が無風なのに頭の中では暴風が吹き荒れて、風間自身訳が分からなくなった。
「……ということは、五十嵐自身は…………」
「うん!イヤじゃなかったよ!」
そういうと、五十嵐は立ち上がり、風間に向けて手をさしのべた。風間は驚いた表情を見せたが、すぐに彼女の手を掴みベンチから立ち上がった。
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- 4 : 2017/08/29(火) 21:32:09 :
- 風間と五十嵐は家が近所なので、途中まで一緒に帰ることにした。五十嵐は風間の家の事情も知っていたために、時々スーパーで売り物をおまけしたりなどとしてくれる。
今日はそれはなかったが、嫌がらせと勘違いされて怒られたお詫びと言うことで、五十嵐の家でご飯をご馳走になることになった。
五十嵐の家庭は母子家庭で、五十嵐のお母さんは女手一つで五十嵐を育てた。高校も奨学金を借りずに行かせられるぐらいにお金は稼いでいるが、夜勤の仕事なので、晩飯時には親がいないことが多い。
それもあってか、五十嵐は基本的な料理は全て作れる。その料理をご馳走してくれるらしい。
「さぁ、ついたよ!」
五十嵐が住んでいるマンションに着いた。エレベーターに乗って5階へと行く。そのマンションの部屋は一室一室が広めだが、家賃はかなり安いと有名だ。
欠陥住宅なのかとおもい、住民が調べたところ欠陥すら見当たらない。もちろん、曰く付きでもない。
五十嵐の部屋は角部屋だったのでエレベーターから距離があったが、それでも遠く感じることはなかった。
五十嵐が鍵を鍵穴に挿しこみ、回す。
ガチャ……
その音とともに扉が開く。中はとても綺麗で整っていた。
「お邪魔しま~す!」
風間は靴を脱ぎ、五十嵐の自宅に足を踏み入れた。どこかいいにおいがする。
風間はリビングに通され、ソファに座るように言われた。そのソファは座り心地も良かった。
そのソファに腰掛けた風間は、窓を叩く風の音が気になった。
ガタガタガタガタガタ……ピヒューーー……
風が強くなっていく。雨も混じってきた。いわゆる暴風雨だ。
「(どうやって帰ろうか……)」
そう思いながら、五十嵐の姿を見た。
五十嵐はエプロンをしており、料理の手際もいい。ものの10分で野菜炒めと味噌汁を仕上げた。
その味も美味しいらしく、風間はずっと笑顔で食べていた。
そして、その後は少しの間、五十嵐とたわいもない話をした。その中で、今度買い物にいくことになった。
話が盛り上がるにつれて、暴風雨も収まりをみせた。風間は暴風雨が止んでいるうちに帰ると、五十嵐の家を後にすることにした。
「ねぇ……またきてくれる?」
「あぁ、またくるよ!」
まるで、居酒屋でのワンシーンみたいなやりとりに思わず2人は笑い出してしまった。
その後、2人は別れを告げた。風間の帰り道には鮮やかな月明かりとともに、そよ風が風間の頬をやさしく包んだ。
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- 5 : 2017/08/30(水) 13:02:28 :
- その週の日曜日、五十嵐と買い物に行くことになった風間は珍しく早起きをした。
気持ちが昂ぶって、夜も眠れなかったようだ。だが、自然と体は疲れていない。それほど楽しみだったのかと思いながら、朝食のテーブルに座った。
テーブルの近くで慌ただしく何かをしている母親に風間は話しかけた。
「母さん、今日昼飯いらねぇわ!」
「え?どうしたの?」
「今日デート!」
風間の突然の言葉に母親は、驚いて持っていたタオルをおとしてしまった。
「嵐!相手は誰なの!!」
かなり食い気味で聴いてくる母に風間は飯を喉に詰まらせてしまった。牛乳を流し込み呼吸を整えると母の質問に答えた。
「五十嵐だよ……ほら、うちの近所の……」
「あぁ、あんたがよく嫌がらせをする……」
「嫌がらせじゃねぇって!」
「はいはい、仲良くね!」
母は風間の対面に座って化粧を始めた。今日、母親は父と日帰り旅行で温泉に行くらしい。
「(たまにはゆっくりやすんでいいから1泊してきて欲しいのだが……まぁ、2人共の休みがそこしか会わなかったのだろうな)」
と風間が考えていたときに父が部屋にきた。
「おはよう!嵐!洗面台から聴いてたが、デートだって?」
「うん……」
父は笑顔で風間の背中を叩いてきた。風間はまた喉に詰める。風間は、
「(なんなんだよ、この親子は……)」
と思いながらマグカップに入った牛乳を飲んだ。
フゥー……
と一息ついた風間だったが、また風間を焦らせる出来事が起こった。ふと時計を見ると集合の30分前だった。
集合は中頭公園前という大きな駅にある時計塔の前で、家から歩いて20分はかかる。嵐は朝ご飯こそ食べ終わっていたが、着替えは終わっていなかった。
「ヤベェ!!準備しないと!!」
嵐は急いで2階へと駆け上がり、一瞬で服を着替えた。階段を駆け下りて入り口まで行く途中に洗面台の鑑で髪の毛を整えて靴を履いた。つま先を、
トントン……
と地面に打ち付け調整する。すると、父が走ってきた。
「嵐!臨時の小遣いだ!」
そういう父の手から受け取ったものは封筒だった。早速中にあるものを取り出すと2万円入っていた。
「いらねぇよ!こんな大金!」
「デートだろ?ある程度の金は財布に入れとかないと女に嫌われるぞ……」
そんな父のアドバイスにため息をつきながら、嵐は2万円を財布にしまった。そして、
「ありがとうな!父さん!」
と告げて、扉を開けてかけだした。外は快晴!風は無風!
「(何かいいことがありそうだ!)」
そう思いながら風間は駅に向かって歩き始めた。
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- 6 : 2017/08/30(水) 21:17:51 :
- 一方、五十嵐はもう中頭公園前駅の時計塔についていた。白いワンピースに青いカーディガンとさわやかな服装で立っていた。
「少し早く来すぎたかな?」
五十嵐がついたのは集合時間の10分前だった。駅にはたくさんの人が歩いており、その人達の多くはカップルだ。
その光景を見て五十嵐はふと考えた。
「(そういえば……私も風間くんと……)」
そう考えた瞬間、五十嵐は顔を赤らめた。自分の頭の中で何が起こってるか整理できない……
頭の中でグルグルと混ざり、風間と……
「(イヤァァァァ!!)」
心の中で叫びながら顔を手で覆った。自分の顔が熱くなってるのを感じながら、風間が駅に来るのを待っていた。
すると無風だった町並みにいきなり突風が吹いた。五十嵐は思わず目をつぶった。少しして、突風が止んだので目を開けると、自分の目の前に風間が立っていた。
「うわぁ!!いつからいたの?」
あまりに突然のことで五十嵐は飛び上がった。その様子を不思議そうに見ていた風間が答える。
「本当についさっきついた……さて…………」
風間は五十嵐に手を差し伸べた。風間の顔にそよ風が吹いた。風間はその風の温かい温度を頬に感じていた。
その時の風間の目は優しく、その瞳の奥に吹き込んでいる風によって、五十嵐は吸い込まれそうになった。
そして……
「行こうか……」
「…………はい……」
その声とともに五十嵐は立ち上がり、風間の手を取ってそのまま駅の方にむかった。
風間達はつい最近できた大型ショッピングセンターに向かうことにした。そのショッピングセンターは電車で15分ほど進んだところにある場所にあった。
ショッピングセンターの中には五十嵐の行きたいお店ばかりだった。五十嵐は笑顔でその話をする。それに対し風間も笑顔で答える。
そうこうしているうちにショッピングセンターに到着し、2人はショッピングを始めた。
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- 7 : 2017/08/30(水) 22:28:18 :
- 風間は五十嵐の楽しそうな顔を見ながらショッピングを楽しんでいた。
有名ブランドの店で買い物をする五十嵐につられて風間も五十嵐ほどではないが少し買い物をした。
そして、午前中には五十嵐と風間は両手に袋をいっぱい持ってショッピングモールをウロウロしていた。
「そろそろ昼ごはんにしようか……」
「そうだね……」
時間が1時ぐらいだったので、レストランは人がいっぱいだった。
2人は『洋食 風』というお店に入った。その洋食店はオムライスが売りらしく、そのオムライスを2人は頼んだ。
「いやぁ……やっぱりこんでたな…………」
「そうだね……少し歩き疲れたよ……」
2人は用意されていた水を飲み、大きく一息ついた。窓の外を見ると晴れてはいるが強風が吹いていた。
五十嵐は再び風間の顔を見たが、そこには顔を少し赤らめた風間がいた。その顔を見た五十嵐は下を向く。
そんな2人をよそに定員さんがオムライスを二つ持ってきた。サイズ的にはそこし小さめだった。ふわりとした卵から湯気が伸びていた。その湯気が空調の風にあわせてゆらゆらと揺れていた。
そのオムライスを食べながら、2人は今後のことについて話をした。
「ねぇ、風間くんは高校でたら進路どうするの?」
「どうすっかな?頭良くねぇから就職かもな……」
そう、風間は大学行ける学力はない。その話を聴いて五十嵐も笑っていたが、人のことは言えないぐらい学力は低い。と言っても、2人共まだ1年生なので取り返しは十分できるのだが、風間に関しては半ば諦めていた。
しかし、五十嵐は夢がある。その夢のために高校卒業後に首都圏へと引っ越そうと思っていたのだ。
風間は不思議なことに五十嵐とは別れてすみたくないという感情が募っていた。少し前では考えられない感情だった。
「それなら俺も行くよ!」
「行って何するの?」
五十嵐が真剣な表情を浮かべた。風間の表情が凍り付いた。確かにそうだと風間は思った。たとえ、一緒にいったとしても俺にはその場所でやりたいことがない。はっきりいって、ついていっても無意味だ。
風間は横目で外の景色を見ると風は強くなり、雲行きも怪しくなってきた。
「それで、風間くんは満足なの?」
五十嵐の質問に対して風間は言葉が出なかった。五十嵐が付け足す。
「私は、風間くんがきてくれるのはうれしいんだよ?だけどね……私は風間くんが将来的にどうするか…………なんのためにくるのか……そこを知りたいの。」
「そうか……ワリィ…………少し考えさせてくれ……」
「うん……それがいいよ……」
2人は冷めたオムライスを口の中に放り込み、店を後にした。会計は風間が済ませ、そのまま五十嵐の家へと帰ることにした。
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- 8 : 2017/08/30(水) 22:40:52 :
- 帰る道中、2人の距離は遠かった。風間に到っては少しうつむき加減になっていた。
道中当たる風が冷たく、風間の体温を冷やしていく。それを感じる五十嵐もどこか心に穴が開いた気持ちになった。
五十嵐の家に着き荷物を置いた風間は五十嵐の家を後にしようとする。
「まって……風間くん!晩ご飯を一緒に……」
「ワリィ……今日は…………いい……」
風間は相当ショックだった。風間が初めての恋心を抱いた相手にここまで言われるとは思わなかったからだ。
「風間くん!」
「ウルセェ!!」
風間の肩を掴もうとした五十嵐の手を払いのけて風間は叫んだ。風間の声がマンションの一室に響き渡った。五十嵐はじっと風間の顔を見ていた。
「なんで、俺にあんなことを言ったんだ!!今日は初めてのデートのはずだろ!!」
風間はかなり荒れていた。その怒りの度合いは外の風と比例していた。風が強く吹くと風間の声が大きくなり小さくなると風間は静かになる。
「俺は……俺は…………」
風間はうずくまった。そのうずくまった風間を五十嵐はそっと抱きしめた。
「ごめんね……風間くん…………本当に……ごめんね……」
五十嵐の目から涙がこぼれた。外は
ポツ…………ポツ……
と雨が降っていた。五十嵐も相当辛かったようだ。その姿を見た風間は、目頭が熱くなった。
「俺の方こそ……ごめん……」
五十嵐と風間は30分ほど涙を流していた。その間、外は強い雨と風に包まれた。
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- 9 : 2017/08/31(木) 07:50:10 :
- 2人が泣き止んだころ、五十嵐が外に目をやると雨が止んでいた。風も少し落ち着いたようだ。
2人は背中合わせに座り込んでいた。五十嵐が体育座りに対し、風間はあぐらをかきながら頭をポリポリかいていた。
「ごめんなさい……みっともない姿を見せてしまって……」
「いや……こちらこそ……」
2人は少し気まずかった。それもそうだ。高校生が2人揃ってワンワン泣き出したからこれほど気まずいことはない。だが、それもすぐに解消された。
風間が窓の外を横目で見た。そして、その光景に思わず大声で叫んだ。
「おい!見てみろよ!」
風間が興奮した様子で、五十嵐の肩を笑顔で掴んだ。そこには2本の虹が輝いていた。
「きれい……」
風間が肩を掴む手が弱まり、五十嵐を抱き寄せた。それに答えた五十嵐は風間の方に頭を寄せる。
風間はふと五十嵐の顔を見た。五十嵐の顔がとても色っぽかった。その色っぽさに風間の心拍数は上がりっぱなしだった。
すると、五十嵐が風間の顔を見上げてきた。風間は胸が、
ドキン!
として、思わず飛び退いた。五十嵐は驚いた表情で風間の方を見ていた。
「ご……ごめん!ちょっとビックリして……」
「いえ……私こそ……」
五十嵐の顔が寂しそうに下を向いた。外の木々が
ザワ……ザワ……
という音を立てて揺れる。それに伴い風間の心臓も
ドクン……ドクン……
となる。風間は口にたまったつばを、
ゴクリ……
と飲み込む。そして……
「五十嵐!!」
と叫び肩を掴んだ。五十嵐のつぶらな瞳に吸い込まれそうになる。2人の距離が縮まる。唇がそっと触れる。
…………チュッ……
音のない部屋に綺麗な恋の音が響く。そして、覚悟を決めた風間は五十嵐の顔を見てこう告げた。
「好きだ。五十嵐……いや、優子!!」
その言葉を聞いた瞬間五十嵐の目から涙があふれた。
「私も…………風間くんのことが……嵐のことが好きだったの!!出会ったときから……ずっと!!」
どうやら2人は両想いのようで、それに気づかずにいたのだった。
両想いということを知った2人は頭をあわせ、お互いに笑顔で話し始めた。
「そうか……うれしい……本当にうれしいよ!」
「私も!嵐が好き!!別れるのは……寂しいよぉ……」
「大丈夫……俺の思いはどんなに強い風が吹こうが変わらないよ……」
「私もよ……」
それから2人は唇を重ねる。回数を重ねるごとに2人の口づけは激しさを増した。
先ほどから力強く吹いていた風も、2人を祝福してか、2人の行動を静かに眺めていた。
風間の手が五十嵐を抱き寄せ、それに五十嵐も答える。自分の胸が相手の胸に押し当てられていることを知らずに抱き寄せる。そして、そのまま2人は倒れ込んだ。
倒れ込んだのと同時に風間の体が起き上がる。五十嵐の顔の両サイドに手をつき、五十嵐にまたがった状態で彼女の綺麗な顔を見つめた。
それを確認した五十嵐はゆっくりと彼の顔に手を伸ばし、自分の元に少し近づけた。そして、一言、彼に告げる。
「……いいよ。あなたが私を好きという証をちょうだい。」
そのまま2人は折り重なり、誰もいない部屋に音と吐息を残し、体を重ねるのであった。
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- 10 : 2017/08/31(木) 13:19:01 :
- 2人が目を覚ますと辺りはすっかり暗くなっていた。
目を覚ました風間は五十嵐にシャワーを浴びるように言われたため、シャワーを浴びることにした。女の子らしいシャンプーの香りに心地が良くなっていた風間だった。風間がでた後に五十嵐もシャワーを浴びて、服もワンピースからシャツに着替えていた。
そして風呂から上がった風間と五十嵐はソファに座りお茶を飲んでいた。すると、風間は五十嵐の顔を見て話し始めた。
「……俺決めたよ!俺……優子についていく……」
五十嵐は目を細めた。そして、風間に顔を近づけた。
「私の言ったこと理解してる?」
その五十嵐の威圧にも動じず、風間は自分の思いを告げた。
「まだ、時間はあるんだ。それまでにやりたいことを見つける。というか、できるように努力する。夢は……あるんだ……」
「夢?」
五十嵐は風間の顔をのぞき込んだ。簡易のシャツに着替えたため、胸の谷間が風間の視線に入り込む。
風間は目をそらし、赤らめた顔を落ち着かせるように深呼吸した。
……フゥー…………
心が落ち着いた。そして、風間は夢について語り始めた。
「俺の夢は警察官なんだ。昔、助けられてさ。だからそれを目指せるような学力を身につけてそれから優子と一緒に行くよ!」
「そう!それならいいわ。がんばりましょう!」
そういうと五十嵐は立ち上がり、風間の手を取った。
「早く帰らないとご両親心配するよ!」
その言葉を聞いて風間は時計を見た。時計の針は8時を指していた。風間は飛び上がり上着を羽織った。
「そうだな……あ、シャワーありがとうな!」
「あのまま帰れないでしょ?」
五十嵐はにっこり笑った。それもそうだなと笑顔を見せた風間は五十嵐に近づき、おでこにキスをした。
「また明日な……優子!」
「えぇ……また明日ね……嵐!」
最後に軽めの口づけを交わし、風間は外に出た。月明かりが風間を照らし、心地いい風が吹いていた。
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- 11 : 2017/08/31(木) 19:33:11 :
- 翌日、学校へ行く道中に高島に昨日会ったことを全て話した。
自分の夢のことや五十嵐と付き合うことになったこと。そして、自分の夢の実現のために高島に勉強を教えて欲しいと言うこと。
その話を聴いていた高島はあることを風間に提案した。
「それなら、担任の先生にも協力してもらわないとな。」
「えぇ~、アイツかよ……」
「仕方ねぇだろ!成績が上がっても情報がないと行けないからよ……しかも、警察官なら警察学校に行かないといけねぇんだろ?」
「う……そうだな……」
風間は担任の先生に怒られてからあまり担任の先生のことが好きではなかった。
高島がついてきてくれることを約束に、今日の放課後担任に話をすることにした。
風間は学校に着いたらまず職員室にむかった。それで、担任の先生を呼び出し、放課後に高島と一緒に話したいことがあると告げた。担任は、
「分かった!ちょっと待ってろ!」
と言って職員室に戻った。
少しして、風間のところに戻ってきた担任は、相談室が開いてるからそこですると高島に伝えてくれと言うことを言ったので、風間は分かったといい、教室にもどった。
昼休みに五十嵐が昼ごはんを一緒に食べようと言ってきたので高島と3人で食べることにした。
「しかし、あの先公が話し合いの場をもってくれるとは思わなかったぜ!」
風間は食堂で買ったカレーをかきこみながら話を始めた。
「あの先生いい先生だよ!私も進路お世話になってるし……」
「マジか!!」
五十嵐の話に驚いていると、高島が話しかけた。
「あの先生は顔は厳ついけど、話したらよく分かる先生だ!自分の気持ちをしっかり伝えろよ!見届けてやるからよ!」
高島は風間の背中を、
バンバン!
と叩き、喝を入れた。風間はカレーを喉に詰めてもがいていた。風間は慌ててお茶を流し込む。すると、食堂の開いたトビラからさわやかな風が入ってきた。
その風を浴びながら風間は夢を叶える覚悟を伝える準備をした。
相談室での話は意外にスムーズに事が運んだ。風間が担任の先生に思いを伝えたら、担任の先生が、
「今の状況では厳しいが、お前ならやれる!そのサポートを俺がきっちり卒業までしてやる!」
と言ってくれた。実は高島も警察学校に行きたかったらしく、担任の先生は2人分の補習を組んでくれたり、情報をくれたりした。
そして、担任の先生は更に考慮してくれて、五十嵐も可能なときは一緒に補習に参加してもいいことになった。
そうこう話をしているうちに生徒の帰宅時間になったために、残りは追って連絡すると言うことを告げられ、風間達は学校を後にした。
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- 12 : 2017/08/31(木) 19:58:05 :
- 「あの先公、いいやつだな!」
「だから言っただろうが……」
風間は高島に当たり前のことを言うなと言う風に返された。しかし、未だに信じられないのが、成績の悪い俺が夢に向かっていいのかということだった。
まぁ、そんなに気にする問題でもないなと思い、高島とバカバカしい話をしながら家へと着いた。
その後高校三年生までの間、五十嵐、風間、高島の3人はクラス、担任とも変わることがなかった。
こんなことがあるのかと3人は笑っていた。そして、入試の日。警察学校の入試は筆記と実技がある。筆記の方は2人共自信があったが、問題は実技だ。
しかし、2人は夢のためにここをおとすわけにはいかず、死にものぐるいで取り組んだ。
試験が終わるころには2人共ヘトヘトになっていた。そして、家に着いた風間は夕食を食べた後風呂に入りベットに横になった。
すると、風間の携帯が鳴った。画面を見ると五十嵐からだ。
「もしもし……」
『あ、嵐!試験どうだった?』
「結果は分からねぇが、やれるだけのことはやったさ」
『そっかぁ……』
風間の声を聴いて安心したのか五十嵐は一息ついた。そして、風間は五十嵐の試験結果を聴いた。
『私?私は通ったよ!』
「本当か!?おめでとう!!」
ここからは2人の話で盛り上がっていた。そして、今度は風間と高島の番であった。
1週間後、風間達の試験結果が郵送で送られてきた。ポストをのぞきに行ったとき、風間に暖かい風が吹き込んできた。
その風を不思議そうな顔で受けながら。家の中へと入った。食卓に座り封を開けると、そこにあったのは、
『合格』
の二文字だった。
「やったぁぁぁぁ!!」
うれしさのあまり跳びはねた。何があったのかと両親が寄ってきたが、風間が紙をみせると家族全員で喜んだ。
風間はすぐに高島に電話した。
「おい!翔!受かったか?」
『おれ……おちた……』
「え?」
まさかの返答だった。高島は俺より自己採点の成績とかよかったはすだ……なんで……
『なんてな!』
「は?」
なんだよ、嘘かよ……と思っていたら、高島から真相が語られた。
『いや、落ちたのは本当なんだけど、滑り止めに引っかかってね。嵐とは別の学校だけど警察学校には受かったんだ。』
なんだと胸をなで下ろした風間は、電話をきり、五十嵐へと電話をかけることにした。
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- 13 : 2017/08/31(木) 20:30:26 :
- プルルルル……
携帯から呼び出し音が聞こえる。
『もしもし?』
「もしもし、優子か?」
『嵐?どうしたの?』
「話したいことがあるから、スーパーのベンチにきてくれないか?」
『えぇ?風強いよ?』
「だからだよ!頼むわ!」
風間の言ってることがよく分からなかった五十嵐だったが、今からむかうと言って電話をきった。
それを確認した風間はすぐに階段を降りて両親に伝えた。
「五十嵐に報告言ってくる!」
「気をつけて行ってらっしゃい!決めてくるのよ!」
母の檄に頷いて返すと、家を出た。風間はスーパーへとむかう道中、まさしく外は雨こそ降ってないが嵐のようだった。
しかし、この風もスーパーのベンチにつくころには収まっていた。そして、そこにはもう五十嵐がついていた。
「はやいな……」
「バイトだったの!それで、結果は?」
風間は五十嵐の横に座り、大きく一息ついた。
「俺……受かったよ!」
「本当!?おめでとう!!」
五十嵐は思わず風間を抱き寄せた。風間は五十嵐の胸に埋もれていたが、突然、五十嵐の手が緩んだ。
「どうしたんだ?」
風間は五十嵐の胸から顔を離して聞いた。五十嵐は風間に今思っていることを伝えた。
「合格発表だけなら電話で良くない?なんで、ここなの?」
確かにごもっともだ。何もこんな風が吹いているときに外で発表する意味が分からない。すると風間は口を開いた。
「2年前、初めて腹割って話した場所がこの天気でここだっただろ?」
五十嵐はハッとした。そうだ。風間が五十嵐にイタズラしたと勘違いして怒られたとき、ここでその話の釈明をしたんだった。
そして、五十嵐の家でデートの約束をした。
五十嵐に合点がいったらしく、そのまま風間の顔を静かに見ていた。
「それでさ……デートで優子に無駄にキレてしまってさ。それから今じゃん。付き合ってはいたけど、もう一回きっちりと伝えたくてここにしたんだ。」
五十嵐の表情が緩んでいく。目には涙がたまっていた。そんな五十嵐の顔を見ながら風間は伝えた。
「五十嵐優子…………さん……改めて言います。おれと、結婚を前提に……付き合って…………ください……」
風間の言葉の最後を聞いたときに、五十嵐の目から涙がこぼれた。そして、涙混じりに答えた。
「……はい……わたしで…………よければこれからも……お願い…………します……」
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- 14 : 2017/08/31(木) 20:38:31 :
- それから2人はそれぞれの学校卒業後、結婚することになった。五十嵐優子から風間優子に変わったが、今までとやることは変わらない。
風間嵐は警察学校を無事に卒業して警察官になった。その新しい赴任先は地元の警察署だった。なんとそこには高島もいたのだ。
風間夫婦も地元に戻り共働きとなったが、お互い仲がいい。喧嘩することもあるがすぐに仲直りする自慢の夫婦だ。
そして今日は風間夫婦の結婚記念日。お互い仕事先からご飯を食べに行くことになっていた。
嵐は警察署を出て待ち合わせ場所に行った。あのスーパーのベンチだ。その日は午前中から夕方まで雨が降っていた。
嵐が歩いているときは既に止んでいたが所々水たまりがある。
そして、スーパーに着くと、優子が既に座っていた。
「もう!遅い~!!」
「ご……ごめん……!仕事が片付かなくて……」
「全く……あ!!」
優子が指を指していたのでその方向を見ると虹が出ていた。綺麗な虹が2人の結婚記念日を祝っていた。
そして、2人の思いを伝えたこの場所には今日も風が2人の間を吹き抜けていた。
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- 15 : 2017/08/31(木) 21:06:10 :
- おつかれさまでした!最後まで読んでいただきありがとうございましたm(_ _)m
今回はかなり悩んで、色々考えました( ̄。 ̄;)
反省点としては最初からこれにしとけばよかったと思ってる次第です^^;
他の作者さんもこのイベントのために作品を投稿されていますのでそちらもご覧ください(っ´ω`c)
URL:URL:http://www.ssnote.net/groups/2275
では、また次回の作品でお会いしましょう(っ´ω`c)
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