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エレン「心に傷を負っていた最後の夜。」
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- 1 : 2017/08/16(水) 17:59:53 :
- 初のssになります!
比較的シリアスだと思います!
あてんそんぷりーず
・めちゃくちゃ短いです!
・亀投稿です!
・誤字、脱字も多分あります!
・エレアニです!
よろしくお願いします!
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- 2 : 2017/08/16(水) 18:03:51 :
- 「…何時だ…。」
硬く冷たいベッドの上で彼は夢と現実の狭間をさ迷いながら目を覚ました。
ああ、今日もあの口うるさい教官に怒鳴られなければいけないと思うと少しだけ憂鬱だった。
今の時刻を確かめるために起き上がって窓を開けて狭い空に浮かぶ太陽の位置を確認する。
「…まだ寝てられるな。」
彼はそう言ってまた硬いベッドの中に入って目を閉じた。
彼の部屋には他にも人がいた。
金髪ボブの親友。
ガタイの良い金髪。
長身ノッポ。
黒髪好きな馬面。
丸刈りのバカ。
そばかすのある馬面の親友。
彼らはまだ皆夢の中だった。
「…こいつらと一緒にいつか壁の外に出られたらな…。」
静かに彼は小さな希望を、幼き日の夢を呟いて夢の中に戻っていった。
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- 3 : 2017/08/16(水) 18:21:54 :
- 入団式の日。
俺達は初めて顔を合わせた。
顔を知らないどころか名前も出身地もどこだかわからない連中とこれからの生活を共にしていく。
希望と少なからず不安はあった。
しかし俺達はすぐに打ち解けた。
特別気が合う趣味があった訳では無い。
ただ、飯の時間に他愛もない話に花を咲かせていただけであった。
それでも俺達は何か引き合うものがあった。
偶には争った。
喧嘩だってした。
でもいつの間にか無かったことになっていた。
訓練を共にしていくにつれ、互いに認めあい、助け合い、より仲を深めていった。
今日のところはここまでで。
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- 4 : 2017/08/17(木) 13:43:56 :
- どれ位寝ただろうか。
目を開けると日差しが部屋の中に入ってきているのが見えた。
「あ、エレン起きたね。おはよう。さ、食堂に行こう。」
金髪ボブの親友が朝の挨拶を交わしてきた。
「ああ、おはよう。」
俺も返す。
見回すと既に殆どが起きて朝の支度をしていた。
1人の丸刈りを除いて。
「ほら、起きてコニー!朝ごはんがサシャに食べられるよ!」
ノッポがぐっすりの丸刈りに声をかける。
「…んー。飯は俺のだァ〜…。」
力のない声で反応する。
「ほら、さっさと起きて飯行くぞ。」
俺からも声をかける。
しかし一向に起きる気配がないので皆諦めて食堂へ向かう。
不味いスープ、水、硬いパン。
正直食べたくもないが、今ここは食糧問題にぶつかっている。
食べられるだけでも感謝しなくてはと考え、毎朝、毎晩の食事をこなす。
それに、皆と話すことが出来て俺も実はこの時間を楽しみにはしていた。
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- 5 : 2017/08/17(木) 13:58:45 :
- あの入団式から、あの朝からもう3年が経っているのかと思うと時の流れは無情だと感じる。
あの金髪足技女に蹴り倒され見上げた夕空。
幾度となく立ち向かったが結果は俺の全敗。
結局アイツには一度も勝つことが出来なかった。
俺は初めのうちはただアイツに勝ちたい一心だった。
いつからだろうか。
女というものがどんなものかも知らない俺が。
彼女に対してこんな感情を抱き始めたのは。
アイツが強いから?
アイツが綺麗だから?
何が好きなのかも分からない。
何に惹かれたのかも分からない。
ただ、俺は気がつくといつも彼女を目で負っていた。
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- 6 : 2017/08/17(木) 14:20:37 :
- 俺は試行錯誤していた。
どうすれば彼女を振り向かせることが出来るか。
それは、今まで敵を駆逐することしか眼中に無かった俺にとってはかなりの無理難題だった。
両手を顔に当て、毎日、毎晩考え続けた。
金髪ボブの親友にも色々と話した。
今日も、彼女と会話していた、昨日の名残を追いかけて。
彼女は憲兵団に入団した。
俺達の中の知り合いの中からは誰も志願しなかった憲兵団に、一つの影と共に向かっていった。
俺とは違う道を進む訳だけど、俺も幼き日からの夢のために俺はこの道を選んだ。
それからというもの、俺は彼女とはぱったりと会わなくなった。
仕事場の問題もあるだろう。
憲兵団は内地で仕事をする。会う機会はもうない。
彼女の記憶の中からも俺という存在は消え始めていただろう。
それでも、全く会えなくても俺は彼女を思い続けた。
金髪ボブの親友にも相談した。
彼は俺にとって一番信頼できる存在であったから、この思いを伝えるのも苦はなかった。
誰かに知られたらというような羞恥心は無かった。
でも、なにか、他の誰かに知られると、奪われるような気がしてはいた。
彼は俺のために熱心に相談に乗ってくれた。
しかし、これといった作戦も思いつかなかった。
彼の手にかかってこれではもうどうしようもないなと考え始めてもいた。
「…あの日に戻れたらな…。」
俺はまた、どうしようもないことをどうにかしようとして考えていた。
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- 7 : 2017/08/17(木) 14:40:16 :
- 一人俺は夜空の下を歩いていた。
「今日」という日はもう閉じられ、明日来る「今日」という存在への準備をこの空の下では行われていた。
この空はどこまで続くのか。
もしどこまでも続いているのなら。
どうか、彼女へこの思いを届けてくれないか。
雲になぞられたこの心の深い傷は。
どこまで続いていくのか。
君に伝わってはくれないか。
なんていうことを考えつつ歩いていた。
随分と女々しくなったものだな。と、自分を嘲笑していた。
しかし、その直後に頬を伝った一粒の雫は紛れもない、真実の液体だった。
あの日からどれだけの日が過ぎ去っただろうか。
俺はとある地下室の中にいる。
俺の前には大きな水晶体のような、結晶体のようなものの中に1人の女性が入っているものがある。
俺はあの日から毎日ここへ来るようになった。
今日こそはこの中から出てきてくれないか。
今日こそは。
と繰り返してもう10年になろうかとしていた。
勿論調査兵団としての仕事はこなしていた。
今となっては若くして分隊長となった期待の星として活動しているが、そんな肩書きは今の俺には必要ない。
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- 8 : 2017/08/19(土) 12:46:07 :
- そんなある日、夜遅くに俺がいつものように水晶体のところへ来た時、先客がいた。
そこには昔から目を合わせていた、祖父一人手で育てられ、俺の幼少期からの親友がいた。
いつかのボブはとうに面影もなくなっていた。
爽やかなセミロングを靡かせ、振り向いたその顔は、俺にとって悲痛以外の何者でもなかった。
「…久しぶりだね、エレン。」
「…ああ、久しぶりだな。アルミン。」
「…アルミン。お前、なんつー顔してんだよ。」
眉間に刻まれているシワは生まれてみてきた中でも一二を争うほどの量であった。
「…こっちの台詞だよ。」
アルミンの目つきが一層強くなった。
「君はアニを愛していたね?」
「何を当然の質問をするんだ。そうに決まっているだろ。だから俺は毎日ここに来て…。」
ここまで言った時だった。
「違うだろ!!!!」
アルミンが今まで聞いたこともないような大声で俺のことを怒鳴ってきた。
「君は言っていたよね!?『いつかアニと一緒に壁の外に出て自由に生きていきたい。』って!!!」
「ああ、確かに言った。でも今、俺にはもうなす術が無いんだよ…。」
「いや!!違う!!」
「っ!」
「君は今までのことを!!後悔して!!へこんでいる今日が!!」
「…。」
「君の望んでいた世界なのか!?アニが望んだ世界なのか!?違うだろ!!」
「…。」
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- 9 : 2017/08/19(土) 12:46:41 :
- 暫くアルミンの呼吸の音だけが流れる。
アルミンもここまで間髪入れずに叫んでいたお陰で少し呼吸が乱れていた。
「…そうだな。俺は少しだけ甘えていたようだ。」
「っ!エレン!!」
アルミンの顔が変わった。
「確かにこんな世界は俺が望んだ世界じゃない。アニは分からないけどな。それを知るためには、アニをここから出してやらないと。そのためのお前だったもんな。」
「ああ。研究は進んでいる方だよ。例のヒストリアがいた場所の鉱石と似ている物質であるからね。そろそろここから出せると思うよ。」
「ありがとな。アルミン。」
「いきなりどうしたんだい?エレン。」
俺は一呼吸置いてから話し始めた。
「俺はさ。覚悟が足りなかったんだよ。」
全てにおける勇気。自信。
「あの狭い空に浮かぶ太陽も。壁の外に広がる世界も。」
決断。判断。愛。希望。
「全部要らないと投げ捨ててさ。」
そして、アニに対するこの思い。
「それ位出来るくらいでないと、この思いは届けられないよな。」
「…それでこそエレンだ。じゃあ僕はお暇するよ。」
アルミンはそのまま地下室のドアを開け、上へと戻っていった。
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- 10 : 2017/08/19(土) 12:47:27 :
- ドアの閉まる鈍い音と共にまた静寂が流れる。
「アニ。聞こえるか?俺だ。エレンだ。」
勿論返事はない。
「よく昔お前に蹴っ飛ばされてた俺だよ。あの蹴り技は凄かったな。俺一回も勝てなかったよ。」
それでも俺は話し続ける。
「でもな。俺だって強くなってんだから。このまま勝ち逃げなんて許さねーぞ。」
もう俺は止まらない。逃げない。
「俺はさ。お前のことが好きだったんだ。だから気を引きたくてお前と対人格闘を組んでたんだ。」
この思いを、全部ぶつけてやる。
「だからさ…。もう1度だけでもいいから…出てきてくれよ…。その声を聞かせてくれよ…。その蒼い目を開いてくれよ…。」
「アニ…。」
最後にこの液を流したのはもういつだったか分からない。
あの日以来流した記憶はあるけど厳密には覚えていない。
きっと、沢山泣いたからだろう。
でも、今日のこれは永遠に忘れることがないだろう。
俺が生まれて初めて。
「…俺にとっての本当の愛について語ったから。」
その時、俺には気付かない程度ではあったが、水晶体にほんの僅かにヒビが入った。
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- 11 : 2017/08/19(土) 12:48:41 :
- それは壁外調査に俺達が出ていた時だった。
休憩ポイントで俺達が休息を取っていた時だっだ。
調査兵団の早馬だった。
「め、女型の巨人が!!」
「女型の巨人がどうした!?」
「水晶体の中から出てきました!!」
俺はこの言葉を聞いた途端、馬に飛び乗って走り去ったらしい。
らしい。というのは、俺の記憶の中にもう何をしていたのかが残っていなかったからだ。
周囲の制止も聞かずに俺はただただ馬を走らせていた。
しかし、俺についてきたやつもいた。
ミカサ。
アルミン。
コニー。
サシャ。
ジャン。
俺達は手を交わしあって、頷きあった。
そしてそのまま、壁の中へと飛び込んでいった。
絶対に伝える。
この一心で馬を走らせ続けた。
時間はもう夕暮れであった。
夕日が目に入ってきて俺は少しだけ目を細めた。
少し周りを見ると皆顔を夕日色に染めていた。
しかし、視界にはあの建物がしっかりと入ってきた。
あの時からかなり人がいなくなってしまった。
ライナー。
ベルトルト。
マルコ。
ヒストリア。
ユミル。
でも彼らはここにはいなくてもこの空の下には存在している。
それはもう共にいるも当然だ。
俺達は階段を駆け下り、何度も見た地下室のドアを開け放つ。
そこには金髪の、蒼い目を開いた。
憲兵団のジャケットとパーカーを着た。
俺の愛しの人がいた。
俺はゆっくり歩いて、近づいてからこういった。
「アニ。俺はお前が好きだ。俺はお前と明日を変えたい。だから俺と明日を変えに行こう。俺はお前と明日を生きたい。だから。」
「俺と、明日を生きて行こう。」
end
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- 12 : 2017/08/19(土) 17:26:44 :
- 以上となります。
gdgd&急展開になってしまった部分が殆どだと思います。
もっと力をつけて帰ってくるので!
では!
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