ssnote

x

新規登録する

作品にスターを付けるにはユーザー登録が必要です! 今ならすぐに登録可能!

この作品は執筆を終了しています。

日向「こんな未来を選んだって、良いんじゃないか?」

    • Good
    • 10

loupe をクリックすると、その人の書き込みとそれに関連した書き込みだけが表示されます。

▼一番下へ

表示を元に戻す

  1. 1 : : 2017/08/08(火) 01:10:49

    スーパーダンガンロンパ2、ダンガンロンパ3の超高校級の深刻なネタバレを含みます。

    IFの最果て。
    「日向創」が選び取る可能性の中で、最も異質かもしれない未来、その1つ。

    全ては、とある言葉を、口から吐き出す為に。

    原作改変ネタ、CPネタ等を含む可能性が非常に高いです。

    以上、ご確認の程……よろしくお願いいたします。
  2. 2 : : 2017/08/08(火) 01:21:55

    学級裁判が終わり。

    俺達は非日常の中の更に非日常から、非日常の中の日常へと戻ってきていた。
    すっかり広くなったレストラン。

    最初はここに多くの仲間がいた。
    仲間がいたんだと……思う。

    賑やかで。騒がしくて。
    楽しくて。ツマラナクて。
    暖かくて。妬ましくて。
    泣きたくて。嗤いたくて。

    そんな事があったのに、本当に。
    何も無かったように。誰もいなかったかのように。
    すっかりと。空間は広がってしまった。
    遠くに見える青空が、はっきりと視界を占拠する様になってしまった。

    それでも、だいぶマシだ。
    あの、ストロベリーだとかマスカットだとか、そんな名前に似つかわしくない閉鎖空間。
    あの場所の苦しみは、今思い返すだけでも吐き気がしてくる。

    空腹。焦燥。憤怒。絶望。不快。重圧。

    そうやって言葉に表すのは簡単だ。
    だが、実際のあの痛みは、やはりあの時でしか。
    同じ場所にいた俺達にしか、決して共有は出来ないだろう。

    喉元過ぎれば、何とやら。
    それとも、単純に身体がその感覚を思い出さない様セーフティでもかけているのか。


    どっちでも良い。
    あんなのは、二度と経験しないに限る。
  3. 3 : : 2017/08/08(火) 01:44:58

    耳鳴りがする。
    賑やかな仲間はまだいるというのに、それでもやはり最初に比べて大分数も減ってしまったからだろうか?
    耳鳴りが、たまにする。
    いや……原因は、大体、解ってる。

    九頭竜「所でよ、日向……そろそろ例の話、聞かせてくれねえか?」
    日向「え?例の話?」
    九頭竜「ほら、狛枝が裁判の時言ってたろ?『日向だけは別だ』って。ありゃどういう意味だ?」

    耳鳴りが、強くなる。
    気が滅入る。頭の中がぐらぐらと揺れる感覚。足元に力が入らず不安定になりそうになる。

    そう。
    あんまり、言いたい事ではない。
    だが言わないといけないだろうな。実際、左右田にまた疑われてしまってるんだし。

    日向「俺はその……希望ヶ峰学園本科の人間じゃないんだ。正確には、予備学科って場所らしくてさ。才能の無い、一般人なんだって」

    胸を張りたかった。
    自分にはこれがあるってしっかりとした支えが欲しかった。
    誰にも気兼ねなく、これが俺だ、って笑顔で言えるようになりたかった。

    なのに。
    なのに現実はどうだ。
    俺は何の才能も無い。思い出せなかったんじゃない、そもそもなかっただけ。
    何だよ。何だよそれ。
    憧れて憧れて仕方のなかった希望ヶ峰、その一員じゃ、俺は無かった。
    俺は、仲間外れ、だったんだ。
  4. 4 : : 2017/08/09(水) 01:29:06

    最後の島に立ち入れるようになった。

    正確には5番目の島、らしいけど……。
    その異様な雰囲気は、確かに最後、という形に相応しい気がした。
    近未来SFっぽさを漂わせる、いかにもな重苦しい雰囲気。
    七海じゃないけど、確かにゲームのラストダンジョン、と言われると納得は出来そうではあった。

    誰も人がいないという異常しかない屋台通りを九頭竜と共に歩き回って確認し。

    モノクマの等身大ぬいぐるみとかいうくだらないモノを作る工場を七海と一緒に捜索した挙句、押し売りをさせられそうになって逃げだし。

    軍事施設とか言うどう考えてもやばい場所で因縁しかないヘリを見つけたり、ソニアと一緒に未来機関の資料を見つけて頭を抱えそうになったり。

    ワダツミ・インダストリアルという機械部品生産の中規模企業でしかない筈の場所で、ロボットが作られているのを左右田と共に見て余計に謎が深まって。


    ……この島になら、脱出手段があるんじゃないかと、期待しなかったわけじゃない。
    だけど……いざこうなると、解らない事ばかりが増えて、それもまた圧し掛かってくる感覚に息苦しさばかりが募る。
  5. 5 : : 2017/08/09(水) 22:15:20

    気にする事無い、と七海は言った。
    何だそんな事か、と左右田は呆れた。
    一々気にしてねーよ、と九頭竜はぼやいた。
    んな事どうでも良い、と終里は一蹴した。
    大切な仲間ですから、とソニアは微笑んだ。


    優しい。解っていない。
    実際その通りじゃないか。くだらない。

    ここまで超高校級の皆と一緒に肩を並べて生き抜いてきたんだ。
    なら、超高校級の才能を持っていなくても、俺は立派に胸を張れるんじゃないか……?

    そんな訳がない。そう簡単に納得できるはずがない。
    あんなに憧れたのに。あんなに夢見たのに。あんなに……焦がれた、希望の光だったのに。

    ぐるぐると渦巻く脳内の情報と感情に思わず顔をしかめてしまいそうになる。

    『ボク達、希望ヶ峰学園には特別な感情を抱いている、仲間だもんね……?』

    日向「……ッ!」

    うるさい、と叫びたくなる。どうでもいい。
    お前なんかとは違うんだ、と怒鳴りたくなる。ツマラナイ。

    さっき、狛枝と面と向かってまた話した。
    相変わらずあいつは不気味で、捉えどころのない奴だ。
    正直言って、あまり関りたくはない。だけど、何も解らないまま狛枝の事を放置しているのも、怖い。
    ……ただでさえ、あいつはこの間から、様子がおかしいっていうのに。
    「裏切り者を見つけ出す」?どういう事だ……?

    ただでさえ俺だって色々思うところがあるっていうのに。
    そんな時に狛枝の事も考えないといけないせいか、あいつの言葉が、あの囁きが、脳内に反響して振り払えない。
  6. 6 : : 2017/08/09(水) 23:40:19

    あぁ、耳鳴りがうるさい。
    俺という存在。日向創という存在そのものに、まるで警告でもしているかの様なそれ。
    ……警告?何がどう危ないっていうんだ?
    そもそも危ないっていうんなら、この島に来てからずっとそんな調子じゃないか。
    コロシアイなんて異常な環境の中じゃ、俺はずっと生命の危機にさらされていると言って過言じゃない。

    いつ殺されるか解らない。
    裁判でクロを間違えれば俺も死ぬ。

    そんな理不尽な状況において、警告なんて本当に今更だ。
    もう散々苦しんできた今更になって、警告だって?
    冗談じゃない。笑わせるな。

    ……それとも?
    いや、本当を言うと、これに似た感覚に、覚えが無い訳じゃない。
    この感覚は……あの時。
    初めてこの島へ来た時、ウサミの言葉と周囲の状況があまりに荒唐無稽過ぎて、俺の思考が一時停止した時。

    『ねぇ……大丈夫?』

    あいつに初めて声を掛けられたのも、あの時だったか。
    そんなに時間は経ってない筈なのに……遠い、昔の事の様に感じるのは、何でだろう。
  7. 7 : : 2017/08/10(木) 23:46:02

    だけど、これもまた疑問だ。疑問ばかり増やさないでくれ、俺の頭だって万能じゃない。そもそも才能すらないのだから。
    何故このタイミングになって、最初に島に来た時と似た様な耳鳴りが聞こえるっていうんだ?

    ……まさか。
    最初に近付いているから?
    それはひょっとして、この島を出る時は近い、のか?

    そもそもこの耳鳴りだって確かなものじゃないし、それを当てにするっていうのもおかしな話だ。
    だけど、この地獄になってしまった島から出られる。
    そう思わせてくれる何かが、欲しかった。
    希望が欲しかったんだ。

    日向「……そうだ、ここで……くじけて何か、いられない」

    外に出たくてたまらなかっただろうに、死んでいった奴は、いる。
    大分広くなってしまった、レストラン。
    あそこで一緒に騒いだ多くの奴が、何らかの事情を抱えて、それを叫んで、そして……死んだ。

    ここで俺がくじけるわけにはいかないんだ。
    あいつ等の分も、頑張って、生きて……。
    生きて、ここを、出るんだ。
  8. 8 : : 2017/08/11(金) 01:25:12

    外へ出て、あいつらの分まで、生きなくちゃ。外へ出た処で、ツマラナイ事に変わりはないというのに。
    だってそうしないと、あいつらの想いが、叫びが、無駄になる。その思いを本当だと、どうして断言できる?

    意識して身体に力を入れる。
    脚を踏ん張る。
    息を吸い込む。
    頬を叩いて気合を入れる。

    ここまで学級裁判だって乗り越えてきたんだ。
    今更何を言ったってもう遅い。
    目の前だけを見て、俺達がやるべき事をやっていくだけだ。

    ……才能も無い俺1人じゃ間違いなくどうしようもないだろう。
    けど、俺には、皆がいる。
    才能に溢れた、頼れる仲間がいる。羨ましくてたまらない、仲間がいる。
    力を持ち、胸を張って一緒に前を見据えるあいつ等がいる。その在り方がどうしても眩しくて嫉妬してしまいそうな、あいつ等がいる。

    日向「……大丈夫」

    確信の持てない言葉を、それでも少しでも前向きになろうと、口に出す。

    日向「大丈夫、大丈夫だ。……終わりは、近いんですから」

    こじつけに過ぎない理由をいくつも頭に並べて。
    もうすぐ、もうすぐ終わるんじゃないかと、淡い希望に、ひたすらすがって。
    俺はため息をついた、その時だった。
  9. 9 : : 2017/08/11(金) 02:53:25

    ピンポーン!

    軽快な音が、俺のコテージに響き渡った。

    ……誰だ?
    まぁ確かに、今日は特に予定はない。皆は思い思いに最後の島を探索し始めているはずだ。

    俺はというと、これから狛枝の事を探そうかと思っていた所だ。
    あいつを、放っておいたらいけない気がするから。
    とはいえ、一体どこにいるのか、解ったもんじゃないけどな……。広い島が5つ、あても無く探すだけじゃ見つからないまま日も暮れそうだ。

    そんな時に、一体誰が俺を?
    左右田とか九頭竜が、一緒に探索しようって誘いに来てくれたのだろうか。
    ……あるいは、狛枝が直接来た?いやまさか。一昨日の……あの裁判とかの様子を見るに、流石にそれは無いだろう。
    ……いや。あいつの事だ、それは無い、をひっくり返してくる可能性だってある。

    日向「……今出る」

    警戒しつつ、ドアノブを掴み、ドアを開ける。いざとなりゃ、ダッシュする用意も一応しておいて。

    そんな心構えと共に、ゆっくりと開いたドアの前には。
    意外な人物が立っていた。
  10. 10 : : 2017/08/13(日) 00:37:13

    七海「おっす、日向君」
    日向「な、七海?」

    七海千秋が、いつも通りにそこに立っていた。
    相変わらずどこかぼーっとした感じの表情。相変わらず背中にバッグを背負っている。
    超高校級のゲーマー。
    その名に恥じず様々なゲームをこなしているらしい彼女は、実際この島に来てからも大抵ホテルのゲームエリアに入り浸ってプレイしているのを見かける。
    朝からやってる事も多く、驚くと同時、眠そうにあくびしたり立ったまま寝るという暴挙には思わずこちらが呆れそうになるが。

    ……裁判で、七海のマイペースさに救われる事も少なくない。
    ゲーマーとしての勘も働くのか、鋭い処を指摘してくれたり、上手く情報を見つけ出してくれる。幾度となく、俺は助けられた。

    ……助けて、貰ってしまっている。
    凄いと思う。才能はやはり偉大なんだって思う。
    ……嫉妬も、ある。

    彼女はそんな俺を知ってか知らずか、こうやって目の前で微笑んでくれているのだが。
    それが……どことなく、嬉しくて。そして、辛い。
  11. 11 : : 2017/08/14(月) 02:25:54

    七海「うん。今、暇かな?」
    日向「ん、んー……実を言うと、狛枝を探そうかなって、思ってる。あいつと一緒にいると、嫌な予感しかしないのは事実なんだけど……ほら、あいつをほっとくのも、怖くてさ」
    七海「んー……そっか。じゃあさ、それ、私も手伝うよ」
    日向「え?本当か!?」
    七海「うん。その代わり、日向君にお願いがあるんだけど……良いかな?」

    お願い……?
    何だろうか、勿論俺に出来る事なら可能な限り協力してあげたいけど。

    ……俺みたいな、才能の無い奴にそんな事が務まるのか?

    一瞬頭によぎるその言葉を、必死で脳内で打ち消す。
    気にしないで良いって七海は言ってくれたじゃないか。そんな彼女のお願いにそう考えるのは、流石に駄目だ。
    ……何も、出来ないって訳じゃ、ないんだから。元々、ツマラナイこの身体には何も無かったのだから。

    日向「えーっと、何だ?俺に出来る事なら」
    七海「うん、簡単な事だから。今から、私のコテージに来てほしいな。少し、話したい事があるんだ」

    話したい事?何だろう。
    というか七海のコテージって……男がそんなあっさりと女子の部屋に入って良いのか。

    そうも思ったが、七海の全然気にしていない雰囲気、そして出来る事なら、と言ってしまった事もあって、俺はそれを承諾した。
  12. 12 : : 2017/08/15(火) 20:41:19

    七海「どうぞー」
    日向「お、お邪魔します……?」

    入った七海のコテージでまず真っ先に目についたのは、ゲーム機の数々。
    中には俺がプレゼントしたのもある……プレイしてくれたんだろうか。喜んでもらえたら何よりだ。

    女子の部屋がどうなっているのかを具体的には俺は知らないから、七海の部屋についてもどうこう言える訳じゃない。
    だが、その部屋は、どちらかといえば殺風景に思えてしまって。それなのに、そこにはどことなく女の子の部屋という空気というか、雰囲気がはっきりと感じられて。

    ……結論を言えば、俺はかなり緊張していた。
    七海がこちらを見て、不思議そうに首を傾げている。
    ……今の俺、そんなに変な顔をしているのだろうか。……やはり、気付かれましたか?

    七海「ごめんね、とりあえず、好きな処に座れば良い……と、思うよ?」
    日向「お、おう……いや、別にいいや」

    七海がベッドに座ったのを見て、とりあえず俺は立っておくことにする。
    ずっと立ち続けた処で、問題無いし……。
    何より、床に座ると、ベッドに座る七海を見上げる事になる。
    その、あー、つまりだ、七海が無防備なせいで、スカートの事とか、俺が気にしなくちゃいけないって事だ。
    ……なんでこんな独白をしなくちゃいけないんだ!?
  13. 13 : : 2017/08/17(木) 01:16:32

    日向「で、えーっと……話ってのは、何なんだ?俺と話しても、あんまり解る事なんてないと思うんだけど……」
    七海「うーん……そうだね。あんまり回りくどくてもフラグ消えちゃうかもだし、思い切ってまっすぐ行っちゃおうか」

    フラグ?まっすぐ?
    何の事だか解らない俺を、しかし七海はまっすぐ見つめて。



    七海「ねぇ、日向君。もしかしてもう、『思い出してる』んじゃないの?」



    そんな言葉を、口にした。

    日向「思い出してるって……何をだよ。俺が予備学科って事なら、あれは狛枝から聞いてるだけで……」
    七海「日向君、覚えてる?あのドッキリハウスでの裁判の事……」

    ……忘れられるはずがない。
    まだ一週間だって経っていない。
    あいつが、あの田中が、最後に笑い、吼えた言葉を、忘れられる訳がない。
    俺には、今すぐにその考えに切り替えられるほど、割り切れていないけれど。

    日向「……あぁ、勿論」
    七海「あの時の日向君……凄かったんだよ?いつもなら狛枝君や私……他にも多くの皆の言葉があって、皆の考えがあって、そこから日向君は答えを導き出してたよね?」
    日向「まぁ、そうだな。俺は今思うと、皆に助けてもらってばっかりで……」

    ……今思うと、それもある意味、俺が予備学科って事の証明だったって事か。
    ……くそっ、また要らない事を考えてしまう。
  14. 14 : : 2017/08/17(木) 02:02:12

    七海「けどね、今回ばかりは違った。日向君、今回の推理……全部、『君が推理したんだよね』?」
    日向「……えっ?」

    何を言ってるんだ?
    俺はそんな事はしていない。
    俺は、ただ目の前の裁判を生き延びようと、ただクロを見つけ出そうと、それだけで……。

    七海「最初の頃から、私はずっとアドバイスの役目だった。勿論、私がゲーマーだから。っていう理由もあるんだけど、本当は……違うんだ。そういう風に、私は出来てるから」

    ……七海?
    何を……言ってるんだ?

    七海「……正直言うとね、狛枝君とか、すっごく手強いんだよ。こう、ゲームの難関をさ、普通難しくて誰もが敬遠するやり方を、さくっとやっちゃうんだ。あれって、幸運の恩恵……なのかな?難易度高いよね……」
    日向「な、七海?その、話の流れが見えないんだけど」
    七海「けど今回は、違った。狛枝君自身も何かおかしかったけど……日向君が、凄かった。日向君、まるで『どうすればどう答えるか』が解ってるみたいだったもん」

    ……耳鳴りが、する。
    頭痛が、する。
    解らない。
    七海が何を言いたいのか、さっぱりわからない。解りたくないだけではありませんか?
  15. 15 : : 2017/08/17(木) 02:46:32

    七海「……この場所は現在、モノミに見張って貰ってるから。管理者権限は奪われてるみたいだけど、それでもまだ使えるデータ領域があるらしいから、大丈夫だと思う」

    背筋を冷たい汗が伝う。
    意味も無く、呼吸が荒くなる。
    把握出来ていない筈なのに、かなり嫌な予感がする。

    耳鳴りが、強くて強くて。
    まるで、俺が俺でなくなってしまうかのようで。
    俺が七海の声をこれ以上聞くと、もう後戻りが出来ないような気がして。

    ……いや。
    信じよう。俺達の事を助けてくれた、マイペースなりにずっと俺達を支え、手伝ってくれた、七海を、信じよう。
    これ以上。
    これ以上、誰かを疑うのは、もう、ごめんだ。
    狛枝だけでも十分過ぎるっていうのに……これ以上、疑っていられるか。


    まったく。そんなだから、貴方はどうしようもなくツマラナイのです。


    そして、俺の意識はどことなくおかしくなり反転しいや元々おかしかったのかまるで何もかもが上書きされたかのようにいいやしかしそれは当然の事でだって俺はどうしようもなく無価値で空白でどうしようもなく何も無くて愚かで情けなくてどうしようもなくどうしようも無いままに何もつかめなくて


    俺の意識は、一気に真っ黒に飲み込まれた。
  16. 16 : : 2017/08/17(木) 23:46:04

    七海「ねぇ、日向君。『自分がどうしてこんな場所にいるのか』、なんて……もしかして、思い出しちゃってるんじゃないかな?」
    日向?「……えぇ、そうですね」

    自分でも思っていた以上に平坦な声。
    それでも自分が自分であると認識している人格が喋ることには成功しているらしい。

    七海「……やっぱり、か。じゃあ……ひょっとして、私の事も、気付いてたり、するのかな」
    日向?「……そうですね」

    状況を確認し。把握し。掌握し。推測し。理論を構築する。
    成程、確かに今この状況においてこの場所にはプロテクトが掛けられているらしい。
    「消えていた方が良い記憶が戻った」となると、モノクマへ格好の材料を与える事になる。それを防止する為にも。
    ……そして。
    僕という存在がいつ「行動を起こしても処分出来る」、閉じ込めている環境でもある訳だ。

    日向?「……ツマラナイ」
    七海「え?」
    日向?「いえ。……それより、その疑問を解決させた貴方は、どうするのですか。僕には、今の処何もしたい事はありませんが」

    僕の言葉に、七海千秋は顎に指先を当てて考えるそぶりを見せる。
  17. 17 : : 2017/08/18(金) 21:28:57

    七海「まずこっちでもう一度確認しておきたいんだけどね?日向君の事情についてなんだけど。予備学科、って場所で……才能が無い、というのは本当なのかな?」
    日向?「……はい」

    嘘は言っていない。
    事実、日向創という人間は予備学科に所属し、そして超高校級の才能が認められる事は無かった。
    ……別の素質を持っていたらしいのは事実だが、それはどうでも良い。

    日向?「日向創という人間に超高校級と認められる才能はありません。そして、今この場において、貴方を始めとした、他の人間を襲う能力も、僕は持ち合わせていません」
    七海「うーん……ごめんね?どうしてもってウサミが言うから、一応こういう形を取らせてもらったんだけど」
    ウサミ「当たり前でちゅ!絶望の残党としての記憶を取り戻している存在なんて、安心は出来まちぇん!それが、例えあの優しい日向君であったとしても!」

    向かい合って話し合う僕等の傍に、奇妙なウサギのぬいぐるみ……ツートンカラーによって更に奇妙さが増しているだろうそれは現れた。

    ……成程。こうやって見ると、確かに権限を奪われているのですね。今行使しているのは、本当に僅か。秘匿データでもあったのでしょうか?
  18. 18 : : 2017/08/19(土) 23:35:53

    日向?「安心できない、ですか。それを引率し、希望の未来へ導こうとする先生役がその心構えで良いんですか?」
    ウサミ「他の生徒さんの皆さんを、守る義務がありまちゅからね……!」
    日向?「ふーん……意外と教師らしい事を考えてるんですね」
    ウサミ「意外とって……!?」

    衝撃を受けて膝をついているらしいぬいぐるみは無視し、七海千秋へと視線を向ける。

    日向?「要するに、それの確認がしたかったんですよね?僕がこのコロシアイに加担しないか、という認識が」
    七海「まぁ……そういう事だね。絶望の残党……ってなると、そういう警戒はやっぱり必要みたいで」
    日向?「でしょうね。簡潔に言えば、僕は誰かを殺すつもりはありませんよ。もっと言えば……可能ではないんです」
    七海「可能じゃない?それは……どういう意味なのかな?」

    首を傾げて問う七海千秋に、僕は続ける。
    いつもの様に。コレマデノヨウニ。

    日向?「先程までの日向創の行動と現在の僕の行動を見比べたら解るかと。僕は今でこそこの様に行動出来ていますが、実際の行動はかなり制限されてしまっています……行動の主導権は、普段は僕にはない、という事ですね」
    七海「ふんふん?……それはつまり、操作してるプレイヤーが君じゃないって事で良いのかな?」
  19. 19 : : 2017/08/20(日) 22:09:21

    日向?「……そうですね。主導権は基本的に僕ではありません。二重人格、多重人格、解離性同一性障害を想像して頂けると解りやすいかもしれませんね。僕ではなく、『彼』が主人格の立場です」

    ……間違った事は言っていない。
    現に僕は現在こうして行動しているだけでも不安定だ。故に「日向創」という存在を殻とし、通常行動においては潜伏する事が強く推奨されるだろう。

    七海「……そっか。じゃあ……今は君の言葉を信じてみよう……と思う。ウサミも、それでいいよね?」
    ウサミ「千秋ちゃんが良いなら、あちしもそれで構いまちぇん。ただし、しっかりと日向君の同行は監視させてもらいまちゅからね!」
    日向?「……ご自由にどうぞ。ツマラナイ時間の使い方だとは思いますが」

    そう呟く僕を見て、七海千秋が首を傾げた。

    七海「……そう言えばね?君がもし、日向君とは違う人格……なら、何て呼べばいいのかな?君を、日向君って呼ぶのも、ちょっと違うかも……って、思うんだよね」
    日向「……僕に名前はありません。普通に日向創、で構いませんよ。僕も彼も、そう大きな差など無いのですから」

    そう。才能を持っているかいないか。それだけの違い。
    僕も日向創も。ツマラナイ人間である事に、変わりはない。
  20. 20 : : 2017/08/20(日) 23:16:13

    ……その後、俺は七海と一緒に狛枝の捜索がてら、最後の島の調査に回った。

    ……何というか、俺、七海と何を喋ってたっけ?
    いや、何か色々と、これからどうするのかとか、そういう話をしてた、気はするんだが……。
    七海に聞くと、最後には俺、話してる途中だっていうのに眠気に襲われて寝たっていうし……。
    流石に七海じゃあるまいし、と思わず言うと、七海に膨れっ面をされた挙句かえって俺自身の心配をされてしまう始末だった。

    ……まぁ、正直。
    俺自身、どこかマトモじゃない自覚は……ある。
    この島へきて、何度も仲間の死体を見せられて、何度も仲間の処刑される様子を見せられて。
    仲間だと思ってた皆は、俺の遠い憧れに過ぎなくて。俺だけが、仲間外れ。

    ……本当に?
    まだ何か裏があるんじゃないか?俺を予備学科だなんてことにかこつけて、何かしらまだその裏があるんじゃないか?
    今まで散々隠されてきた事を見つけ出して、そしてその度にその先の謎に混乱させられてきたんだ。
    ここから先にまたどんでん返しがあったって、もう不思議じゃないんだ。

    ……そう、例えば。
    俺が……やっぱり、裏切り者、だって。不思議じゃ……ない。
  21. 21 : : 2017/08/21(月) 00:24:20

    七海「日向君?どうしたの?」
    日向「えっ?あ、いや、どうした、七海?」
    七海「それはこっちのセリフ……だと思うよ?急に怖い顔して黙っちゃってさ」

    またもや膨れっ面である。
    ……申し訳なさもあるが、そのようにしていられる精神性が、羨ましくも、ある。

    七海が世間知らず……というか、結構知らない部分がある事には気付いていた。
    妙な処で常識知らず、っていうか。……例を挙げるとするなら、牛乳が出来るまでを知らない、とか。
    そんな彼女が、しかし誰よりもおそらくコロシアイを憂い、そのルールを嫌い、誰もが傷付かない事を願っているのも、知っている。
    いつものマイペースっぷりをそのままに、ある時は鋭い決意と共に、七海が裁判で要所を的確に射抜いてくるのを見てきた。
    ……そんな彼女に、いつだって、俺は助けられてきた。

    情けない話だ。
    そうやって彼女が知らない何かを教えてあげると、七海はびっくりし、そして感嘆する。
    その様子に、何とか自分の立ち位置を得ている気がしてほっとしているだけ。
    そんな、あまりに脆くてどうしようもない、感情。

    勿論それだけじゃない。
    俺は、生きて出て、七海にもっといろんなことを教えてやりたいって思う。
    それは、単なる俺の嫉妬や、僻みだけじゃなくて。
  22. 22 : : 2017/08/21(月) 01:15:37

    俺は、七海に、もっと多くの事を知ってほしいって思ってる。
    俺は、七海に、もっと笑って欲しいって思ってる。
    俺は、七海に、もっと色んな表情をしてほしいって思ってる。

    参ったな、まるでこれじゃあ、俺が……。
    けど、それだけ、七海は重要な位置にいるって事だろう。
    おそらく俺だけじゃなく、他の仲間からもきっと同じように信頼されているはずだ。
    あの時だってきっとそうだったんだろう。

    ……あの時って、いつだっけ?

    日向「……なぁ、七海」
    七海「うん?」

    一息吸って、俺は告げる。

    日向「絶対に、ここを出ような。絶対にここを出て……」
    七海「……うん、出ようね。約束、したもんね」
    日向「あぁ。お前に、色々なもの教えるって約束だったな。……そんで、俺からも、頼みがあるんだ」
    七海「……頼み?」
    日向「俺も、七海に、ゲームを教えて欲しいんだ。もっと一緒にゲームしたいし、俺だって七海にもっと追いつきたい」

    まるで告白の様だ、なんて馬鹿な事を考えると、顔が赤くなりそうで、思わず自分の口を手で塞ぐ。
    しょうがないじゃないか、だってあの時だって……。

    だから、あの時って、何なんだよ?
  23. 23 : : 2017/08/21(月) 21:26:43

    ……結局、その日は狛枝は見つからないままで。
    俺は七海と一緒に最後の島を探索しながら雑談するだけに終わった。

    本当に、歩きながら喋っただけだったりするが、それでも約束をしてしまえば、俺だってそれを護る為に頑張らないといけない気分になる。

    ネガティブになっててどうするっていうんだ、今は少しでも前を向け。
    他の皆だってコロシアイを乗り越えてきているんだ、俺だって頑張らないとやっていけない。
    俺だけがくよくよしている訳に行かないんだ。相変わらず、ツマラナイ思考ですね。



    そして、次の日。
    俺の昨日の考えはどこへやら、俺は狛枝を見つけ出せなかった事を強く後悔する羽目になった。

    何だよ爆弾って!
    何だよ裏切り者って!
    あぁもう、あいつがやる事なす事考える事が本当に解らねぇ!
    何なんだよお前は!
    何なんだよお前の言う希望って!
    絶対的な力を持つ不変のモノ!
    そんなもの!あったら今頃世界は……!


    ……本当に、変わると、思いますか?


    ……余計な事を考えている場合じゃない、急いで動かないと!
    どこの島だ、どこにある……!

    爆弾なんて、一体どこを探せばいいんだ!?
  24. 24 : : 2017/08/21(月) 22:42:20

    結論から言うと。
    それは、爆弾では無かった。
    一種の花火のようなもので。

    そして、狛枝の姿を探し求めた結果、俺達の前には今。

    左右田「くそっ、駄目だ!火が強過ぎてまともに進めねぇ!」
    九頭竜「狛枝ァ!てめぇここにいるんだったら返事しやがれェ!」

    解き放たれたグッズ倉庫の扉の中で、炎が激しく揺らめいていた。
    中にいるかもしれないあいつに叫んでも、何の声も帰ってはこない。

    終里「こんなんすぐには消えねーだろ!水持ってこい、水!」
    日向「流石にこの勢いじゃ、バケツとかでも厳しいぞ!?」
    ソニア「そ、そうです!確か、工場の給湯室の所に、消火弾があったはずです!」
    左右田「流石ソニアさん!うっし、お前等急いで取りに戻るるぞ!」

    ソニアのナイスアイデア。
    成程、そういう火を消す為の道具なら確かに効果は高いはず!

    猛ダッシュで工場の中に駆け込み給湯室の中へ。
    確かに上の部分においてある消火弾と思われる赤い容器を手に取り、それが消火弾かどうかを確認し、そして他の皆にも手渡してまた元の場所へ戻る。

    燃え盛る火事現場にたどり着くや否や、皆で一斉に消火弾を火へと放り投げた。
    容器が割れる音がする、これで中身が火を消してくれるはず……!

    ……って、あれ?

    左右田「……おい、全然、消えなくね?」
    九頭竜「ッチ、要するにそんだけ大きいって事だろ!仕方ねぇ、こっからはバケツでやるしか……!」

    そう、九頭竜がまた走りだそうとした瞬間。
  25. 25 : : 2017/08/21(月) 23:53:13

    けたたましい警報の様な音が鳴り響いた。

    左右田「うわぁぁぁ!?今度は何なんだよ!?」
    七海「……!皆、見て!」

    七海が指差したのは……天井。
    そこから、大量の液体が燃え盛る炎へと降り注いでいく……。

    日向「す、スプリンクラー……か?」
    モノクマ「そうだよ、僕が作動させたんだよ!全く、折角の全国展開していく僕のグッズが台無しだよ……ショボーン……」

    どうでも良いモノクマの戯言は無視して、まだ熱気と凄まじいまでの蒸気で視えないし入れない奥に目を凝らす。

    日向「……しばらくは入れないな。まだ危なくないとは言えないし、部屋の外で少し待とう」

    そうやって外で待つ事しばし。
    俺達は再び中へ入り、中の調査を始めた。

    酷く、頭痛が、する。
    耳鳴りが、酷い。
    何で悪寒がするんだ?なんで脚が震えてるんだ?
    これじゃあまるで、今までのあの感覚みたいな……。

    重苦しい空気。呼吸困難になりそうな張りつめた感覚。
    それを感じながら、カーテンを開け、そしてみた。


    四肢を縛られ。
    そのあちこちに肉を引き裂かれ抉られた血の跡を晒して。
    胴体は大きな槍がまるで裁きの様に串刺しにして地面に縫い止め。
    ガムテープで口を塞がれたその顔はあまりに歪んでいる。


    ……超高校級の幸運、狛枝凪斗の、変わりに変わり果てた、姿だった。
  26. 26 : : 2017/08/22(火) 00:36:52

    狛枝の死体の現場を調べ。
    狛枝の、コテージを調べ。
    そして色々な手がかりを得てもなお、はっきりとした確証は何も得られないまま。

    制限時間は訪れ、俺は仲間たちと共にモノクマロックの前に集合し、エレベーターに乗り込む事となった。

    ……このエレベーターも、随分広くなったな。
    最初の頃は、あんなにいたのに。
    俺の歯ががちがちいってしまっていたのが、ばれそうでばれそうで心配してたのが、ずっと遠い昔の事の様だ。

    あれから裁判も何回か乗り越え、ようやっとマシにはなったが……。

    ……いや。嘘だ。マシになんかなるものか。
    仲間が死んで。仲間が殺してしまって。
    そんな状況に慣れたくない。慣れてなんか、やりたくない。
    だけど、俺の脚は、またみっともなく震えそうで。歯も、気を抜けばすぐさまぶつかり合って音を出してしまいそうで。
    力を込めて噛みしめて我慢する。
    仲間が少なくなったらそれはそれで、俺の内心がばれてしまいそうで大変だと、今更になって気が付いた。

    やがて、エレベーターがゆっくりと止まる。
    もう、後戻りはできない。
    さぁ、始めよう。

    今までの様に。

    学級裁判を。
  27. 27 : : 2017/08/22(火) 01:12:31

    そうして、学級裁判は始まった。

    まずは、狛枝が死ななくてはならなかった理由。
    もっとも考えられるのは、狛枝が裏切り者を暴くとしきりに口にしていた事。
    だからこそ、裏切り者に殺されたというのは当然の論理。

    そして別の考えもあるという。
    狛枝がズタボロになっていた、即ち拷問された。
    そこまでして聞き出すべき情報は、爆弾の在り処。

    ……違う。
    ガムテープの内側に血痕は存在しなかった。
    そしてガムテープについた口の痕。
    間違いなく、あれは傷付けられる前から口を塞いでいたモノ。
    よって、拷問して情報を得るのは不可能。

    つまりあのガムテープは、狛枝の声を隠すためのものだった。
    となるとやはり、裏切り者が殺したという可能性が濃厚になる。

    しかしそうなると、今度は狛枝の身体に付いた数々の傷の意味が疑問視される。
    狛枝への憎しみ。狛枝への負の感情。

    ……違う。

    あそこで起きた火事は、証拠隠滅の為であるという。
    そもそもどうやってあの火事は起きてしまったのか。
    火事を目撃したのは倉庫の外にいた5人。
    他の新たな人間の存在は否定されてしまう以上、そこには何らかの仕掛けがあったと見るべきだ。
  28. 28 : : 2017/08/22(火) 01:47:02

    勿論仕掛けはあった。
    それも、案外単純なものだ。

    モノクマのパネルを一列に並べ、端を扉に。もう片方を火をつけたライターに近接状態で設置して負えば、扉を開けた衝撃でドミノ倒しが発生、ライターは倒れて簡単にカーテンに火が燃え移る。

    勿論、その仕掛けに気付かれない為だろう工作もあった。照明の電源は入っておらず、倉庫は暗いままで。そして、炎の音ですぐ聞こえにくくなったとはいえ、MP3プレーヤーで音楽を流し、パネルが倒れる音を誤魔化そうとしていた。

    ……もっとも、これには問題が存在する。
    扉にパネルをつっかえさせていたせいで、扉が開く隙間はほんの僅か、人間は通れない。
    そして、あの倉庫の出入り口はあの場所だけ。
    簡単な話、犯人は外に出られない。

    ならば、誰が引火の仕掛けを作ったのか。

    七海「まぁ……難しく考えなくても、それが可能なのが、1人だけいるんだけどね」
    日向「それって……あいつの事だよな」

    ここまで来ればだいぶ予想もつくでしょう。
    この裁判において、「死人は喋れこそしないが、指名される事は可能」なのですから。

    日向「狛枝、だったとしたら……どうだ?」
  29. 29 : : 2017/08/22(火) 02:14:23

    終里「お、おかしいだろ!?だってあいつは被害者なんだぞ!?」
    七海「彼は、ただの被害者じゃなかったのかも……しれない。……被害者であると同時に、加害者でもあったのかも……しれない」
    九頭竜「自殺って事か!?」

    そう。真相はおそらく自殺なんかよりもっと面倒な事を行っているでしょうが、自殺という認識で間違いは無いでしょう。
    あの狛枝凪斗がそう簡単にやられる性質ではないでしょう。そもそも彼、自分を殺すなら協力する、と自分から言ってしまう性格だったようですしね。

    もっとも、その精神もおそらくあの時に変化して、それが原因で……ツマラナイ話でしたね、今は良いでしょう。

    九頭竜「ふざけんな!それが確かなら、あの身体の傷も、自作自演だったって事になるじゃねーか……!」
    七海「けど、狛枝君なら、それ位やりかねないよね?」

    ……皆、ここで一様に納得したかのような微妙な表情。
    おい狛枝、お前は、もう、本当に、何というか……。

    九頭竜「いや、狛枝がそれをやらかす変態だったとしても、流石に1人で両手両足を縛るのは無理だろ!」

    ……うん、もう否定はしない。
    あいつは変態だった、それも、とんでもない曲者で、ただではやられない感じの。
  30. 30 : : 2017/08/22(火) 02:44:13

    さて、1人では両手両足を縛る事は無理、という話でしたが。

    終里「口を使うとか……糸とかか?後は、男の尻尾を使うとかさ!」
    左右田「下ネタかよ!下ネタなのかよ!」

    ツマラナイ言葉は無視しておくとして。
    両手両足全てを縛っていなかったとしたら、それは容易く解決できます。
    狛枝凪斗の右腕を縛っていた、燃やされたロープ。
    燃やされた範囲を見れば明らかに事前に燃やしたものだと解ります。
    その証拠に、燃えた範囲を考慮すると何らかの熱の影響が出た筈の右袖に、何の異常も見られませんしね。

    それでもおかしいという意見は、当然あるでしょう。
    狛枝凪斗の空いているはずの右手に、ナイフが突き刺さっていましたから。

    その方法もまた単純で。

    ソニア「ナイフを上に投げ、そして落ちてきたナイフを受け止めた、とかは……」
    左右田「受け止めれ……ます、かね!?」

    流石に無理があるでしょうね……いえ、幸運を使えば何とかなるかもしれませんが、彼が幸運を使うべき場所はもっと別であっただろう以上、それは違うと思われます。

    七海「じゃあ、何かにナイフを固定したとか……」
    日向「それに賛成だ!あの血が付いた、モノクマの等身大の人形だよ。あれ、穴も開いてただろ?」
  31. 31 : : 2017/08/23(水) 01:14:00

    九頭竜「そこにナイフを固定して手を振り下ろせば、いけるか……けどよ、一番重要なのが残ってるぞ。あの槍がおそらく死因の筈だろ、あれはどうやったんだ?」

    その問題がありますね。
    あの槍はあまりに目立つ。腹部貫通という明らかに致命的な事態になっているなら、なおさら。

    終里「先に腹に刺しておいて、んで、我慢しながら他の手足を傷付けたとか?」
    ソニア「さ、流石に我慢にも限度があります!あんな太くて大きいものが刺さったら、すぐに逝ってしまいますよ!」
    左右田「……ん?んん?」

    ソニアの発言を聞いて、左右田が思わず首を傾げた。
    そして顔を上げ、ソニアをまっすぐ見つめる。

    左右田「すいません、聞き取れなかったので、もう一度言ってもらえると嬉しいのですが」
    ソニア「だから、あんな太くて大きいものが刺さってしまえば、すぐに逝ってしまいますって!」
    左右田「あ、その、すいません、もう一度だけ!録音しておきたいんで!」
    日向「そこまでにしておけよ左右田」

    変態はここにもいたのか……おい頼むよ、お前ツッコみ役っていうか常識人ポジだったじゃないか。
  32. 32 : : 2017/08/23(水) 02:05:30

    しかし、普通に考えれば手足を損傷した状態で、槍をあの角度で腹部に突き立てるのは不可能に近い。
    それは事実でありながら、それでもやはり、誰かが狛枝を殺したという事実を、信じられないという思いが強いのだろう。
    実際、自殺であるのなら、現在ここにいる誰もが、お仕置きを受ける必要が無いのだから。

    そうやって、貴方達は何度も裏切られてきた。
    モノクマはそれを見る度にほくそ笑んでいた事だろう。そう言うのが大好きな性格だ。
    実際、これをただの自殺として片づけるのは、酷く簡単に過ぎる。ツマラナイ展開だ。

    それでも、と。
    声が、する。

    七海「確かに、私達はずっと騙されっぱなしだったけど……でもね、私はまた騙されたとしても、やっぱりみんなを信じたいんだよね」

    彼女は、それでも、と言う。
    やはり、彼女はそう口にする。

    七海「何度騙されたとしても……それでも私は、皆の事を信じたいんだよね」

    自殺の方法は難易度こそあれ、不可能ではない。
    その方法を探る為には、やはり皆で話し合うしかない。
    今までと同じように。

    それなら……。
    七海がそう言うなら、やるしかない。

    今までだって、やってきた事なんだ。
  33. 33 : : 2017/08/23(水) 02:59:11

    まぁ、言ってみればその槍を上手く自分へ刺す方法は簡単なもので。
    天井にあった梁を起点に、槍についていた鞭を渡し、槍を空中にぶら下げる様にして鞭を縛った左手に握り締めておけば、手を離すだけで良い。

    妙な感じに付着した血痕も、梁についていた血の線、そして鞭の部分に一部途切れていた血糊も、これで証明できるでしょう。

    故に、狛枝が自殺であるという立証が可能である。

    この時点で考えられるのは……ここにいる人間全てを、クロの指名ミスを犯させる事で全員お仕置きさせる為の犯行、という説。
    裏切り者も、纏めて始末してしまおうという考えも、あの狛枝なら、という思考が邪魔し、決して否定は出来ないでしょう。

    だからこそ、ここでの投票タイムを望む流れになるのも当然で。

    日向「ちょっと待ってくれ」

    ……そしてそれは、困る。
    このまま終わらせる訳にはいかないんですよ。

    日向「もう少しだけ待ってくれ。どうしても、気にかかる事がある」
    七海「実は私も、変だなって思う事があるんだ。……謎を残したまま、投票タイムに行くのは、不安だよね?」

    ナイスアシストです、七海。
    そう、この事件は、単なる自殺で終わらない。
    終わらせるわけにはいかない。
  34. 34 : : 2017/08/23(水) 21:06:59

    日向「変だなって思うっていうのは……もしかして、モノクマファイルの事か?」
    七海「そうなんだ……今回のモノクマファイル、明確な死因が書いてなかったよね?」
    左右田「そりゃー……凶器が明らかだからじゃねぇか?」
    ソニア「そうですよ、お腹に突き刺さった大きい槍、あれが死因に決まってますって」

    まぁ、あそこまで目立っているとそりゃあそうだと確信してしまいますよね。
    しかし……「あからさま過ぎる」と思いませんか?

    七海「今までのモノクマファイルに明記されてない部分ってさ、大抵そこに大きな謎が隠されていたよね?」

    つまり、今回もそうではないか、という事。
    大きな謎……そうだ。
    狛枝だぞ?
    コロシアイにおそらく誰よりも執着し、その結果を見ては希望の在り方に喜び、どうしても生まれる犠牲に悶え悲しむ。
    そんな、あいつだぞ?

    日向「狛枝の悪意が、こんなにあっさりと終わるなんて、俺には思えない……あいつが死んでおいて、あっさり終わる奴だとは思えない!」

    あいつの事なんて全然知らない。正直知るべきじゃないかもしれない。
    だが知らないままにするのはもっと怖い。
    今だってそうだ。

    ……嫌な話だが、狛枝のそういう部分、そういう場面においては、俺は信じざるを得ない。
  35. 35 : : 2017/08/24(木) 18:20:27

    ……あの死に方を見て、同情しなかったわけじゃない。
    しかしここまでのやり方を見る限り、あの死に方すら計算だったとすれば。
    最早この先さらに隠された謎があったっておかしくないんだ。

    モノクマ「うぷぷ……日向君は本当に、狛枝君を信頼しているんだね。狛枝君の悪意を信じてるからこそ、彼の更なる悪意を疑う。……新しい形の友情かもね?」

    何が友情だ。
    俺は、あいつを放っておけないだけだ。
    あいつにどことも知れない場所で笑われたくないだけだ。
    あいつの悪意の犠牲者なんか、増えて欲しくないだけだ。

    七海「……で、皆はどうするの?本当にこのまま投票しちゃうの?私は念の為だったとしても、全員納得するまで、通づけるべきだと思うけどな……」

    七海。

    ソニア「そう、ですよね……投票のチャンスは、一度きりですもんね……」

    ソニア・ネヴァーマインド。

    九頭竜「チッ、しゃーねーなぁ……こうなったら、とことん付き合ってやんよ」

    九頭竜冬彦。

    左右田「……だーもう。お前等がやるって言ってんのに、俺だけやらねーわけにいかねーだろうが」

    左右田和一。

    終里「悪いなモノクマ!聞いただろ、投票は延期だ!」

    終里赤音。

    七海「ここまで来たんだから最後まで頑張ろう?皆の力を合わせれば……きっと、大丈夫だよ。私は、そう信じてるから」

    ……七海千秋。
  36. 36 : : 2017/08/24(木) 18:58:25

    ……あぁ、頑張らなくちゃな。
    最後まで、しっかりやり遂げなきゃいけないよな。

    日向「今までだって、何だかんだやってこれたんだ。……もう少し、付き合ってくれ……きちんと、終わらせたいしな」



    よろしいのですか?貴方はずっと迷い続けているのかと思いましたが。
    しょうがないだろ、実際今でも迷ってるし信じられない部分だってある。
    先程貴方が発言してからも、変わらずそうでしたね。なので、僕が役割を担当しようと思ったのですが。
    いや、良い。この学園裁判には散々振り回されてきたんだ。だからせめて……俺が、ケリをつけたい。
    ……構いません。少しはツマラナクなりましたね。
    そりゃどーも。



    終里「で、力を合わせてまずは何から話すんだ?やっぱ死因の事か?」
    七海「うん。それなんだけど、まずは先入観は全部無しで行こう。槍が致命傷じゃなかった可能性を考えるべき……と思うんだよね」

    槍が致命傷ではないとする。
    その仮説が正しいのならば、真っ先に浮かぶのはその他外傷。
    しかし出血死の可能性こそ考えられるものの、それらが死因というのはどうも信憑性に欠ける。
    ならば考えられるものは。

    「外傷が残らない」殺害方法。
    この場合なら……。

    日向「……毒殺って方法があるんだったよな……!」
  37. 37 : : 2017/08/24(木) 20:04:36

    ソニア「確かにそうかもしれませんが……どうして、毒の話が出てくるのです?」
    日向「狛枝のコテージで、『モノクマ特製の毒』ってのを見つけたんだよ!」
    七海「しかも、『毒殺専用』だってさ……うん、あんな不吉なモノ、関ってない筈がないよね……」

    毒を体内へ取り込んだ場合、大抵はそれを示す特徴的な死斑が見られるそうですが……。
    狛枝の状況の様に、あそこまで血塗れであったならば、その判別も難しくなるでしょう。

    しかし肝心の狛枝は口にガムテープ。
    両手はナイフとロープで使いものにもなりません。ではどうやって毒を体内へ取り込んだのか。

    終里「ここで男の尻尾の登場だ!」
    左右田「おめーはその尻尾を過大評価し過ぎだ!」

    ……バカは放っておいていいから。
    とにかく、毒を体内へ入れた方法は簡単でしょう。

    毒の特徴を見れば解りきった事。
    「この毒は気化しやすい」。即ち、かの火災程度の炎でも簡単に多くの量が気化してしまうでしょう。

    そして、外にいた誰もがその気体の影響を受けていない。これは何故か。
    同じく毒の特徴より。
    「空気より重く、加水分解されやすい」。
    立っていた人間は無事で済み、寝転んでいた狛枝はその影響を色濃く受け。
    そしてスプリンクラーにより分解されて後には何も残らない。

    そういう事でしょうね。
  38. 38 : : 2017/08/25(金) 23:19:27

    左右田「で?それがどうしたってんだ?」
    日向「え?」
    左右田「死因が毒殺だって解った所で、結局は狛枝の自殺だろ?ならもう良いじゃねぇか」
    終里「狛枝は毒を持ち込んで、そんでそれを自分で吸う羽目になって死んだ……うん、自殺だな」

    一気に安心したかのような雰囲気が満ち始める。
    だが、まだだ。まだ終われない。
    まだ謎は、残されているんだ。

    日向「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
    九頭竜「あん?どうした、まだ何かあるってのか?」
    日向「あぁ、どうしても引っかかるし、気になる事だってまだある!七海も、そうだよな?」
    七海「うん……毒を持ち運んだのなら、その容器がどこかに無いとおかしいんだ……」

    そう、あの毒薬はすぐに気化する危険性もある以上、プラスチック、もしくはガラスの容器に入れた上で、日光に当てないような保管が必要となっていた。
    だがそれらしきものは倉庫に見当たらず。それが燃えた筈もない。

    それは、つまり。

    七海「だから、ひょっとしたら……共犯者がいたんじゃないかなって……」
    ソニア「きょ、共犯者、ですか……!?」
  39. 39 : : 2017/08/25(金) 23:32:30

    左右田「きょ、共犯者がいたってどうだっていいだろ!だって結局、狛枝の自殺には変わりはねぇんだし……!」
    九頭竜「共犯したところで、狛枝が結局主犯ってとこに変わりもねぇしな……そもそも、間違って容器を持ち出しちまったって事もあるかもしれねぇだろ?」

    ……もう裁判を終わらせてしまいたい気持ちは、解る。
    俺だって、今までずっとそうだった。
    人を疑いたく何てなかった。俺の憧れにも等しい、素晴らしい仲間たちを、疑いたくなんてなかった。
    コロシアイなんて関係なく、ただ普通に一緒に飯を食べて、ツマラナイ話題で笑い合って、ゲームで遊んで。

    そんな風に、生きていたかった。
    確固とした自分、その場所に確かにいる自分、が欲しかった。

    疑う事に、すっかり疲れ切ってしまっていても。
    これ以上、傷付きたくないって、怯えてしまっていても。
    真実を目にするのが、怖くてたまらなくても。

    ……俺は……。
    葛藤を引きずり続けるようでしたらいつでも変わりますが。
    うるさいな、これ位の感傷位許してくれよ。
    相変わらず非合理だと思っただけです。
  40. 40 : : 2017/08/26(土) 01:06:29

    日向「……それじゃ、駄目なんだ」
    左右田「……は?」
    日向「このままじゃダメだ……あいつが、あの狛枝が、まぎれもなく幸運だったあいつが、自分の命を使ってまでやった事だ!このままで、あっさり終わるとは思えない……!」
    九頭竜「んな事言ったってよ……このまま考えたって、どう足掻いても自殺としか考えられねぇだろうが」
    終里「知らない方が良い事もあるっていうしな!大体、その容器だってもしかしたら消火弾の破片にまぎれてるかもしれねぇしさ!」

    ……もう、解りますね?
    ……あぁ、解ってる。

    日向「……それだよ」
    七海「……え?」
    日向「消火弾……プラスチックの入れ物。狛枝はきっと、消火弾に毒薬を入れたんだ。持ち運んだんじゃなく、持ち運ぶ必要が無かったんだよ!」

    一気に緊張した空気が流れる。
    まだまだ続く。終わりまで、進めないといけないんだ。
    付き合ってくれているこいつらの為にも!

    日向「あの炎は、証拠を消すとか、そういうだけじゃなく……俺達に、消火弾を投げさせるのが、本当の目的だったんだ!」
    終里「あいつ……!そこまでお見通しだったのかよ!」
  41. 41 : : 2017/08/26(土) 01:37:26

    ソニア「し、しかし、以前消火弾を調べた事がありましたが……あれは、蓋の下に、更にアルミの蓋で厳重に占められていて、開けた痕跡なんて……」
    七海「アルミの蓋……!日向君、それって……」
    日向「なぁ、ソニア。それ、『青いアルミ』だったか?」
    ソニア「え、えぇ……そうですけど……」
    日向「狛枝の部屋にもあったよ。青いアルミが」
    七海「それに……ガスマスクと、手袋もね。危険な毒だから、かなり注意してたんだと思う」

    そう言った七海は、しかし珍しく声を震わせていた。
    ……まぁ、それも当然だよな。
    そして次に、九頭竜が荒げた声を上げる。

    九頭竜「待て待て待て待て!思わずスルーしそうになったが、じゃあ、なんだ!?俺達の中の、誰かが……あそこにすり替えられた、毒入り消火弾を投げたってのか!?」
    ソニア「そんな!それじゃあ、狛枝さんは……!」
    七海「自殺じゃなく、他殺……って事になるね」

    次々と皆が驚愕に顔を歪ませ、そして程度の差はあれ皆一様に落ち着きがなくなっていく。
    当たり前だ。こんなに、誰だって知りたくはないに決まっている。

    左右田「何だよ、それ。……おい、何だよそれ!自殺って言ったじゃねーか!」
  42. 42 : : 2017/08/26(土) 01:59:41

    七海「自殺みたいなものって言って良い……と思う。狛枝君は、私達に自分の自殺の計画を勝手に担がせたんだ……と思う。これは、誰かが故意にやった殺人じゃなく、狛枝君にさせられた殺人で……」
    日向「……正直、犯人が誰かなんて、まるで解らない。犯人自体にも、解っていないかもしれない。誰にも解らない犯人を仕立て上げる事、それが……狛枝の、目的だったんだ!」
    左右田「な、な、な……なんだそりゃあああああああ!!??」
    九頭竜「それが、あいつの罠だったって事か……!」

    例え毒で死んだか槍で死んだかも解らない状態であっても、それは毒が引き金で引き起こされたと言える以上。
    毒を投げた誰かが犯人で間違いは無いでしょうね。
    さて、犯人を明確にするのは……まだもう少し先にしましょうか。時間も必要ですし。

    モノクマ「きっと狛枝君は、自殺じゃないって事まではばれると思ってたんじゃないかな。結局はさ、解く事が出来る謎なんて、最後には解かれちゃう運命な訳。じゃあそこで、って事で、狛枝君は解けない謎を用意した、って事だね。今までオマエラはずっと謎を解いてきたから……解けないって、感じた事は無かったでしょ?今までの経験を利用した、凄いトリックだよね!」

    ……僕からしてみてもこれは中々に興味深い試みであると言えます。
    ツマラナイ才能だとばかり感じていましたが……こういう使い方もあったとはね。
  43. 43 : : 2017/08/27(日) 20:54:54

    ソニア「しかし、それでは……モノクマさんも犯人がどなたなのか、ひょっとして解らないのではないのですか?」
    左右田「そ、そうだよな!モノクマにすらわかんねーんだったら、この裁判は無効だよな!?」
    モノクマ「あのねぇ……ボクは希望ヶ峰学園の学園長で、この修学旅行の実行委員会だよ?この島で何が起きたかなんてお見通しなんだ!」

    ……それだけの権限は「掌握済み」と。
    そういう行動は面倒に感じる性質かとも思っていましたが、案外そうでもないようですね。

    モノクマ「とゆー訳で、頑張って犯人を見つけちゃってくださーい!」
    左右田「ま、マジかよ……こん中から勘で誰か当てろってか!?」
    ソニア「私が……私が、消火弾について皆さんに言ってしまったから……!すいません、私の責任です!私を犯人にしてください!」
    九頭竜「そういう問題じゃねぇだろ!」
    左右田「そうっすよソニアさん!ソニアさんは悪くないんです、悪いのは、全部狛枝なんすから……!」

    ……そんな騒ぎの中、七海だけが何かを考え込んでいた。
    もう、おそらく手が届きそうなレベルには至ってるんだろう。
    この殺人事件の、本質に。
  44. 44 : : 2017/08/28(月) 23:50:26

    七海「ううん、諦めるのは、まだ早いよ」
    九頭竜「あ、あんのか?犯人を突き止める方法が!」
    七海「まだ、何となく、だけど。……もしかしたら、あるんじゃないかっていうのが、1つだけある……かも」
    終里「ほ、ほんとか!?」

    あぁ、終わりが、近づいてくる。
    怖くて聞きたくないような、言いたくないような。
    そんな終わりが、近づいてくる。



    ……震えているのですか、日向創。
    当たり前だ、覚悟決めたって怖いのは怖いんだよ……。
    ……それほどまでに、彼女と過ごした時間は、大切でしたか。
    ……あぁ、そうに決まってるだろ。



    七海「ねぇ、もう一度事件を振り返ってみても良いかな?何となく浮かんだ私のアイデアが本当に正しいか、確かめてみたいんだ」

    ……もう、後戻りはできない。
    狛枝の好きにこれ以上させてたまるかってのもある。
    終わりは近い、けど目はもうこれ以上逸らせない。
    やるしかない、そこに絶望しかなかったとしても!

    日向「……よし、それじゃあ……やるぞ!」
  45. 45 : : 2017/08/29(火) 01:15:45

    狛枝の死因は毒に起因する。
    その毒はモノクマの特性であり、「気化しやすく加水分解されやすい」。これがこのトリックの肝の1つ。
    その毒はどう使われたか。狛枝の部屋で消火弾の1つに入れられ、そして他の消火弾に混ぜられた。
    狛枝は俺達に爆弾があると伝え、俺達が探し回っている間にグッズ倉庫へ。
    そこでパネルやライターと言った準備をし、自分の手足をロープで縛り、そして槍の鞭を天井を通して左手に握り、右手を最初から燃えていたロープで縛る。
    そしてガムテープで口を塞ぎ、後は空いている手足をナイフで、そしてモノクマ人形を土台にして右手を傷付け、これで準備は良い。
    後は俺達が来るのを待てばいい。
    俺達がドアを開ければパネルのドミノ倒しでライターが倒れ。火事が発生。
    そしてそのタイミングで俺達は消火弾を取りに行き、「誰か」が毒入り消火弾を投げてしまった。
    そうすれば割れた中身から気化した毒が漏れ、空気より重いので下に溜まる。
    狛枝は効率よく毒の影響を受け、槍を持っていられずに手放し、槍は身体を貫通。
    最初の傷と合わさり、多くの血が流れ、それは毒殺の可能性を覆い隠す事となった。

    ……これが事件の、全て。
    いや。
    「狛枝が死ぬまでの全て」。
    事件の真相は、まだ、先にある。
  46. 46 : : 2017/08/29(火) 01:37:02

    終里「で、どうなんだ、七海!お前のアイデアとやらは、使えそうか!?」

    七海は、黙ったままだった。

    ソニア「あの、七海、さん?」
    九頭竜「くっそ、やっぱ駄目なのか……!」
    左右田「やっぱ勘で当てるしかねぇってか!?」

    皆の言葉に、彼女は首を振って。

    七海「狛枝君の罠の仕組みは、間違ってない……と思う。けど、少し不思議なんだよね。狛枝君は、本当に犯人は誰でも良かったのかなってさ」

    皆が困惑する。
    まぁ、それはそうだ。「誰がやったか、おそらく狛枝にさえ解らない犯行」こそ、狛枝の悪意、その表れの中核だと思っていたから。

    七海「前にも狛枝君は言ってたけど……彼は私達を、希望を信じてた。彼のトリックを担っているのは、信じるって気持ちだったんだよ」

    俺達ならきっと消火弾に気付くはずだ。
    俺達ならきっと消火活動をするはずだ。
    俺達ならきっと、罠に堕ちるはずだ。

    ……それは、そうであってくれという、一種の願いにも等しいでしょうね。

    左右田「な、何が信じるだ、ここまでやらかしやがって……!」
    九頭竜「で?それがどうしたんだよ」
    七海「ほら、もう一つあったよね?狛枝君が、心の底から信じてたものが」
  47. 47 : : 2017/08/29(火) 02:06:05

    日向「超高校級の幸運……あいつの才能だな」
    左右田「最後の最後に信じられるのは、自分の才能だけしかねーって事だったのかな……」
    九頭竜「別に珍しい事じゃねーだろ。ここにいる『ほとんど』がそうなんだからな」

    ……。
    今更傷付く事でもないでしょう。
    うるさいな、どうしようもないんだよ、こういうのは……。
    ツマラナイ寂寥ですね。

    七海「ただ、彼の場合は、それが顕著じゃなかった?殆ど妄信的、なレベルだった……よね?」
    日向「あぁ、確かにな……」

    最初の事件の時もそう。
    この前のファイナルデッドルームの時もそう。
    あいつの運は……確かに、凄かった。

    終里「けどよ、今回の事件……アイツの運が絡んでたようなの、あったか?」
    七海「絡んでないのが、おかしい、って思ってさ……私達を信じる気持ちはトリックに、使ったのに」

    その言葉に、一気に皆の顔が緊張した。
    ここまでやっておいて、更に狛枝は何かを仕組んでいるのではないか。そう思うのも無理はないだろう。

    七海「そんな訳、無かったんだ。だって……あの、狛枝君だもんね」
    九頭竜「あ、あいつは……何をやったんだ?」
    七海「あのね、誰でもよかったわけじゃないんだ。彼にはちゃんと標的がいたんだよ。犯人に仕立て上げる為の、標的がね」
  48. 48 : : 2017/08/29(火) 02:38:34

    終里「それって……誰だよ?」
    七海「その正体はきっと、狛枝君自身にも解っていなかったんだ。だから、彼は超高校級の幸運の才能に頼って、幸運も計画に取り込んだんだよ。幸運で、狙った標的が、毒入り消火弾を手にするように、ってね……」

    運任せ。
    最初の時と、同じように。
    いや、今までと、同じように。

    日向「狙ってた標的は……裏切り者、だよな?あいつは、裏切り者を、狙っていた、そうだよな?」
    九頭竜「じゃあ、あいつは……裏切り者を炙り出す為に、自分の運に頼ったってのか!?」
    七海「狛枝君は、裏切り者の正体を知らなかったから……自分の運を頼るしかなかったんだろうね」

    そうなると、1つ問題がある。
    狛枝のPCによるビデオメッセージ……あいつは、裏切り者が誰かを生徒手帳を覗いて理解した、と言っていたが。
    まぁ解りやすい事ですが、あれはハッタリでしょうね。あのメッセージを残していた時点で、既に計画は動いていたでしょうし。

    終里「くそ、何も炙り出す為に犯人に仕立て上げなくたって良いだろ!お陰でオレ等大ピンチじゃねーか!」
    九頭竜「……裏切り者を乗り越えて見せろ、って事だろ」
    左右田「裏切り者の正体を暴いて、その絶望を乗り越えてこそ俺達っていう希望が輝く。……あぁそうだな、あいつなら言いそうだよな」
  49. 49 : : 2017/08/29(火) 21:47:31

    七海「これで、私の推理は終わりだよ。狛枝君の目的は、裏切り者に自分を殺させ、犯人に仕立て上げる事。どうする?皆は私の推理を信じる?」

    ありがとう、七海。
    本当に、お前には敵わないなぁ、って思うよ。
    七海千秋。
    俺は本当に……お前に会えて、良かったよ。
    嬉しかった。楽しかった。
    どうしようもない劣等感も感じちゃったけど……。
    それでも、あの時からずっと。
    お前には、感謝しっぱなし、だよな。

    日向「……信じるしかないだろ?」
    終里「ここで信じなきゃ、こっちが運任せで投票する羽目になっちまうからな……」
    左右田「で、でも信じても……それでどうすりゃいいんだ?裏切り者が結局解らないんだったら、投票のしようがねーじゃんか……」
    ソニア「そうですよね……今更名乗り出てくるとは考えにくいですし……」

    その言葉に、七海は顔を伏せた。
    眼を閉じ……それからゆっくりと開けて、彼女は言葉を口にする。

    七海「もし、あの爆弾騒ぎの時にさ……裏切り者が名乗り出てたらどうなったのかな?狛枝君も……こんな無茶まで、しなかったのかな?」

    ……それは、どうだろう。
    あいつの事だ、裏切り者に対してはまた別の無茶をやらかしていただろう。
    いや、俺たち全員に対して、かな。
  50. 50 : : 2017/08/29(火) 22:29:53

    七海「でもね、仕方ないんだよ……名乗り出たくても……出来なかったんだよ……」

    そうだな、きっと出来なかった。
    こういう状況じゃなきゃ、下手をすると、こういう状況でさえ。
    名乗り出る事が出来たかどうかは……解らない。

    七海「だって……そういう風に、出来てないから」

    怖いんだ。
    裏切り者が、どんな末路を迎えるかなんて、もう、解りきってしまっているから。
    あぁ、本当に……今この場所から逃げ出せてしまえばどんなに気が楽か。

    七海「だからね、私は、皆に当てて貰いたいんだ」

    そうすればもう、覚悟が決まるからだろうか。
    そうすればもう、逃げ場はないからだろうか。
    ……どっちも似たようなものかもしれないし、そもそもどっちでもないのかもしれないけれど。

    七海「……ね、日向君は、誰だと思う?未来機関の一員として、皆の中に送り込まれた裏切り者って……誰だと、思う?」
    日向「……七海」

    七海「皆とは違う、だなんてことに、疑問を持つ事すら許されなくて」
    日向「……なぁ、七海」

    七海「裏切り者としてしか、皆と接する事が出来なかった」
    日向「そうじゃないんだ、七海」

    七海「ううん、そうなんだ。その人は、そういう存在だから。そういう存在としか、生きていられないから」
    日向「違うんだよ、七海……!」

    七海「違わないよ?もう一度聞くよ、日向君。……裏切り者って、誰だと、思う?」

    ……。
    ここまで、だよな。
    えぇ、そしてここからです。もういい加減大丈夫ですか?
    ……正直言って、俺はまだ怖いから……手を、貸してくれ。たまにで、良いから。
    ……仕方ありませんね。

    七海「……お願い、日向君」



    日向「それは、違うぞ!七海!お前は……!」



    日向「お前は、犯人なんかじゃないんだ!」
  51. 51 : : 2017/08/29(火) 23:05:34

    七海「……え?な、何言ってるの……?」
    日向「お前は犯人じゃない。俺が言ってるのはそれだけだ」

    ……目をここまで見開いて呆気にとられた七海の顔なんて、そうそう見れないんじゃないだろうか。
    こんな顔もするんだな、こいつ。
    ほんと、俺はまだまだ七海の事を知らなかったんだな……。

    七海「何で、そんな事が言えるのさ……?」
    日向「……まぁ、気付いちゃった事があってさ。それを元に考えたら、そういう結論になったってだけだ」
    七海「……ううん。違う、その結論は間違ってる。おかしいよ、だって……!」

    だって、に言葉は続かない。
    七海は悔しそうに口を紡ぎ、こちらを鋭い目で睨んでくる。
    ……仕方の無い事とは言え、こう。来るものがあるな……こんな表情も、俺はまだ見てなかったのか。いや、あんまり好き好んで見たいものでもないけど。

    左右田「ひょ、ひょっとして……おい日向、お前、解ったのか!?裏切り者が誰なのか!」
    ソニア「な、七海さんが、何か言いかけてましたけど……」
    日向「あぁ、悪いんだけど、七海のはちょっと後にしてもらって良いか?……重要な事、思い出しちゃったからさ」

    俺の言葉を聞いて、七海とモノミはハッとしたかのように身を乗り出した。

    モノミ「日向君!?貴方はまちゃか!」
    七海「……どういうつもり?」
    日向「いや、安心してくれ。たぶん、そういうんじゃないはずだ」
    九頭竜「何であいつ等が反応してんのかも気になるが……何なんだよ、重要な事って」

    九頭竜の質問に、軽く息を吸い込んでから、答える。



    日向「俺の才能はさ……『超高校級の幸運』なんだ」
  52. 52 : : 2017/08/30(水) 00:36:38

    左右田「……は?はぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
    終里「おい待てよ!?だっておめー、この前予備学科だった、って狛枝から聞かされてたんじゃねーのかよ!?」

    案の定、議論の場が一気に混乱した。
    まぁ、それはそうだろう。俺自身、一度自分はただの一般人です、って宣言もしちゃってたしな。

    日向「あぁ、確かに聞かされたし、俺もそう思ってた。だけど思い出したんだよ。……俺が本当は何だったのか。俺がこの学園に来た理由は何だったのか……」
    ソニア「つまり、狛枝さんの情報は間違っていた、という事ですか?」
    日向「あぁ、そうなるな」



    七海「それは違うよ!」



    唐突に突き刺さってきた言葉。
    見れば、七海が先程と同じ表情のままで、俺を見つめていた。

    日向「な、七海?何が違うんだよ?」
    七海「日向君……嘘吐きだね。日向君は予備学科だったっていうのは、正しかったでしょ?」
    九頭竜「お前は、知ってんのか?」
    七海「うん、知ってるよ。私と日向君は、狛枝君のコテージを一緒に調べて……そこで見たんだよ。希望ヶ峰学園77期生の名簿一覧をね……日向君も、忘れてないよね?」

    まぁ、そりゃそういう反論が来るのも仕方ないよな。
    しかしここにはきちんとした言い訳と嘘が用意されてあります。それを使いこなせば、造作もないでしょう。
    ……解ってる、ここまで来たらとことんやってやるさ。
  53. 53 : : 2017/08/30(水) 01:12:24

    日向「確かに、俺の名簿の部分は予備学科としてしか登録されてなかった。そうだったよな、七海」
    七海「うん、そうだよ。……でもなんで、そんな解りやすい嘘を……?」
    日向「いや、嘘なんかじゃないんだよ。俺は実際に超高校級の幸運で、だけど予備学科にいたんだ」
    九頭竜「あぁ?てめぇ何言ってやがる。そもそも超高校級の幸運っつうのは、1年に1度、全国の高校生から1人だけ抽選で選ばれた奴の事だろ?既に幸運は狛枝の奴がいるじゃねーか」

    その疑問も、またもっともだ。
    しかしこれもまだ対処可能でしょう。冷静に、ゆっくりと対応してください。

    日向「俺だったんだよ。……最初に、幸運の抽選に選ばれてたのは……日向創、俺だったんだ」
    ソニア「……そ、それでは、なぜ狛枝さんが超高校級の幸運として、そして日向さんは予備学科として希望ヶ峰学園にいたんですか?」
    日向「俺が幸運として抽選で選ばれた後……狛枝が、たまたまスカウトの目に留まったらしいんだ。ほら、あいつの幸運の力が凄いのは、皆ももう知ってるだろ?」
    左右田「ずっとあんな調子だったのかよあいつ……」
  54. 54 : : 2017/08/30(水) 19:20:53

    日向「で……狛枝自身も言ってたけど、希望ヶ峰学園は幸運って才能は特に興味を持って研究してた分野の1つらしくてさ。狛枝の幸運は本当に魅力的だったんだろうな」

    正確には、狛枝の幸運の強さがそれだけ、研究するに値すると認識されたんでしょうね。まぁ、ツマラナイ話ですが。

    日向「希望ヶ峰学園は、どうしても狛枝の幸運を研究したかった。だから……俺の所に、話がやってきた」
    九頭竜「……どんな取引だったんだ?」

    九頭竜の声に、静かに答える。

    日向「狛枝は超高校級の幸運として迎えられ、そして俺は予備学科として希望ヶ峰学園に入る事になった」
    ソニア「そんな……最初に選ばれたのは、日向さんだったのに……」
    日向「まぁ、悪い話ばっかでもなくてさ。予備学科って、結構学費は高いらしいんだ。だけど俺は、最初に幸運に選ばれただけあって、学費は免除されたし。幸運の研究にも、俺は参加してたんだぜ?」
    九頭竜「……お前の幸運の才能も調べたかったのもあったって訳か。ったく、学園も結構やらかしてんな……」
    日向「まぁ、な……流石に1年に1回、1人だけって条件をその年だけ捻じ曲げる訳にもいかなかったんだろう……そうなると、それはそれで問題だしな」
  55. 55 : : 2017/08/30(水) 19:48:54

    終里「どうなんだよ、モノクマ!日向が言ってるのは、正しいのか!?」
    モノクマ「えーっと……正直な話、そこまでの話だってことはおそらく資料にすら残せない話だよね。うん、狛枝君が資料を見て勘違いしてもしょうがない話じゃないかな?なんだって、決して知られてはいけない情報なんだもんね。いやー、希望の名が聞いて笑っちゃうよね!」

    げらげらと笑い転げるモノクマを前に、ぐっと押し黙るのが感じられた。
    ……七海、モノミ。
    悪いな、もう少し、待ってくれよ。
    終わるのは、そう遠くないんだ。

    左右田「で?お前が超高校級の幸運だとしてよ、それがどうしたんだよ。そもそも裏切り者が解んねぇって話だったろ?」
    終里「ひょっとして、お前の幸運で裏切り者を当てちまえるんじゃねーのか!?」
    九頭竜「馬鹿か、そんなの結局運任せに変わんねぇだろうが」

    皆の声に、眼を閉じる。
    深呼吸し、そして力を抜く。
    せめて、気を抜いて、とも思ったけど……はは、やっぱ上手くいかないな。

    日向「裏切り者が、解った。……って言ったら?」
    九頭竜「な!?」
    左右田「マジかよ、解ったのか?!」
    ソニア「い、一体、誰なのです?」
    終里「おめーはさっき、七海じゃないって言ったよな?じゃあ、誰なんだ!?」

    七海「……日向君」

    まっすぐ見つめてくる七海。
    その瞳が、揺れているのに気がついた。
  56. 56 : : 2017/08/30(水) 20:10:41

    日向「……なぁ左右田、お前言ってたよな。裏切り者は俺なんじゃないかって。あれって、どうしてだ?」
    左右田「あ?いや、あれは……その、悪かったよ、俺だってマトモじゃなかったんだ……」
    日向「良いから。何で、そう思ったんだ?」
    左右田「そりゃあ……ここにいる連中で、お前だけ自分の才能が思い出せないとか、そりゃ疑うだろ?それに、今はともかく、最初はお前、いかにも馴染めてなさそうで、浮いてたしよ……」

    っはは、そういやそうだったな。
    あの時は、本当に何も解らないままで、怖くて仕方なかったっけ。
    俺だけがそこにいるのが間違っている様な……そんな疎外感も、あったな。

    日向「……七海の言う通りだ。名乗り出たかったとしても、出られなかったんだよ」
    七海「……日向、君?」

    日向「そういう風に、出来てない。……そういう風に、自分自身の事が解ってなかったんだ」
    九頭竜「……日向?おい、どうしたんだお前?」

    日向「皆とは違うって事に、疑問を持つ事は許されてなかった、というより……そんなの、信じたくなかったんだよな、きっと」
    左右田「……おい。おい、お前まさか……!」

    日向「……そういう存在、ですからね。そういう存在としか存在できない、ツマラナイ存在だったのでしょう」
    終里「おい、お前どうしちまったんだよ?」

    日向「狛枝の幸運はツマラナイモノでしたが……素直にこればかりは賞賛すべきでしょうね」
    ソニア「日向……さん?」



    日向「えぇ……この事件の犯人」



    日向「そして、裏切り者の正体は……俺、なんだ」
  57. 57 : : 2017/08/30(水) 22:19:26

    空気が、凍る感覚というのは。
    こういうものなのだろうかと、ぼんやりと考える。
    言ってしまえばこうも落ち着いてしまうというか、達観してしまうというか。
    妙に気の抜けた感覚で、俺は皆の表情を眺めていた。

    左右田「……おい、日向」
    日向「どうした?」
    左右田「……最初から、騙してたのか。この変な修学旅行が始まって、コロシアイが始まって。あん時からずっと……俺達を騙してたのか?」
    日向「……」
    左右田「答えろ、日向!俺と話した時も!他の連中と話した時も!裁判で今までずっと何だかんだやって来た時も!今までのはずっと、嘘だったのかよ!」

    日向「……それは、違う」

    口に出たのは、思ったよりも静かで、低い声だった。

    日向「ツマラナイ事を口に出さないでください、左右田和一。日向創という存在が、そのような嘘を抱えながら今まで平然としていられるはずがないでしょう?」
    九頭竜「……思い出した、ってのは、自分が超高校級の幸運である事だけじゃなくて、自分が裏切り者だった、って事もだった、って事か」
    日向「その認識で正解です、九頭竜冬彦」

    全く。
    話を長引かせるのも悪くはないですが、モノクマが余計な事を考えてしまう懸念がありますし。
    いえ、懸念というより、この場合は限りなく確信に近いので、ツマラナイ会話はさっさと進めるに限るでしょうしね。

    終里「なんかおめー……キャラ変わってねぇか?何か変なものでも食ったか?それか、頭をぶつけたとか……」
    日向「ツマラナイ事を言わないでください、終里赤音。変わるも何も、貴方達は日向創という存在の一部分しか知らなかった。それだけの事です」
  58. 58 : : 2017/08/31(木) 00:33:25


    ソニア「そんな……!だって日向さんは、今まであんなに私達と一緒に、必死に考えて、悩んで、それでも皆さんと一緒に生きようと、クロを暴くのに一生懸命でしたのに……!」
    日向「それも、記憶を失っていただけの事。その頃はコロシアイに巻き込まれた、ツマラナイ学生でしかありませんでしたからね」
    七海「……違う」

    声が、聞こえる。
    目線を向ければ、そこには、しっかりとこちらを睨みつけている七海千秋の姿。

    七海「違うよ……日向君は、ツマラナクなんかない!日向君は、きっとずっと、誰かの事を心配して!そしてその度に、裏切られたりもして!それでも、必死に誰かを信じようと、必死に前を向いて、生きていようとしてたよ!」

    ……七海。

    七海「日向君は、ツマラナクなんか、ない!」

    七海千秋。
    言わなきゃ。
    ずっと言えなかった事なんだ。
    俺が、僕が、俺が、言わなくちゃダメだって、ずっと思ってた事なんだ。



    日向「……ありがとう、七海」
  59. 59 : : 2017/08/31(木) 01:00:50

    七海「……え?」
    日向「お前には、ずっと、助けてもらってばっかだったから。ここで……言っておかないと、ってさ。本当にずっと……」
    七海「な、何言ってるのさ。日向君は、ずっと頑張ってたじゃん……私なんて、大したことは、してないのに……!」

    きっと、あの時もお前は、そういう事を言ったんだろうな。
    さて、時間としては頃合か。そろそろ決めていかないとな。

    九頭竜「……おい、一応確認しておくが。お前が裏切り者だったとして、お前が犯人だと確定できる根拠はあんのか?」
    日向「そうだな……実を言うと、俺が手に取った消火弾はさ、少しだけ蓋がずれてたんだよ」
    終里「それって、狛枝が中身を入れ替えた証拠って事じゃねーか!?」
    日向「あぁ……狛枝がそんな見え透いたのを残すかなって思うんだけど……あの時、他の消火弾の蓋も少しだけ見たんだけど、少しだけずれてそうなのは、これだけだった。はは、ひょっとしたら俺の幸運が発動しちまったのかもな」
    七海「笑い事じゃないよ!どうして……!」
  60. 60 : : 2017/08/31(木) 01:10:49

    ソニア「そうですよ、日向さん!こんなの、酷過ぎます……貴方自身は、犯人になるなんて、望んでいなかったはずなのに……貴方は、だって……!」
    左右田「ソニアさん……」

    ……こうやって、俺の事をまだ心配してくれるのか。
    俺は……裏切り者なのに。
    それは、本当の事で……許されない事なのに。

    日向「俺さ、楽しかったよ」

    ここまで散々嫌な事ばかりで。
    何度も何度も仲間の死を見せられてきて。
    本当に、何度もくじけそうになったけど。

    日向「九頭竜とも色々話し合ってちょっとは解り合えたし……」

    日向「左右田とも、バカな話を一杯したけど、将来の夢とか話せたし」

    日向「終里も、飯とか、変な話だったけど、良い処を教えてもらったし」

    日向「ソニアとなんて、王女様だぞ?俺なんかとは遠い世界で、けどそんな世界の事が間近で見えて、嬉しかった」
    左右田「おい日向テメェ!」
    日向「お前相変わらずぶれないなー……ほら、お前ももうちょっとソニアを気にする時はさ、相手を王女って以前に、1人の女性としてしっかり見ろよ?そんなままじゃ、ずっと変わらないぞ?」
    左右田「んなっ!」
    ソニア「気にする……?」
    左右田「ななな、何でもありませんよソニアさん!」
  61. 61 : : 2017/08/31(木) 01:22:39

    日向「だからさ、七海」

    無言のまま。
    こっちをじっと見たまま。
    肩を震わせている、彼女。

    日向「最後は、俺の事。信じてくれないか?」
    七海「……信じ、る?」
    日向「お前が言ったんだぞ?自分は皆を信じてるって。俺は、七海を信じてる。皆を、信じてる。……だから、さ。俺を、信じてくれ」

    俺の言葉に、また七海は俯いてしまう。
    ……モノクマの様子を推察するに、そろそろ飽きてきている状況ですね。さっさと纏めてしまいましょう。
    もう日向創も覚悟は済ませている事でしょうしね。
    あぁ、勿論だ。

    日向「皆。信じてくれ。……俺は、狛枝の思い通りなんか、絶対にごめんだ」

    そうだ。
    あいつの思い通りにしてたまるか。
    あいつの悪意の犠牲者をこれ以上出してたまるか。
    そんなのが、断じて希望であってたまるか!

    日向「良いですか。僕に絶対に投票してください。それでこの裁判は終わる。……これが、最後の学級裁判です。後は皆さんの意思で、全てが決まります」



    日向「ここから先、何が起こるかは俺にも解らない。ひょっとしたらもっとひどい絶望もあるのかもしれない」



    日向「故に……貴方方の健闘を、期待しています。それは予定調和なのか。それとも……誰も知らない、未来なのか」



    日向「始めよう。……モノクマ!」
    モノクマ「はいはい、それじゃ始めるよー!投票ターイム!」
  62. 62 : : 2017/08/31(木) 01:41:21

    モノクマ「はーい、だいせいかーい!今回のこの事件、狛枝君が仕組んだ毒入り消火弾で狛枝君を殺害した犯人は、日向創君なのでしたー!」

    ……決まった。
    決まってしまった。
    まぁ、何度も何度も覚悟したんだ。
    今更怖くて怖くて仕方なくたってどうしようもないのは解ってる。

    左右田「……なぁ、聞かせろ日向。裏切り者って何なんだ?お前は一体、何の目的で、どうして、俺達の中に送りこまれて来たんだよ!」
    モノクマ「うぷぷぷ、それはね……」
    モノミ「うるちゃい!あんたは黙ってて!」

    ……ありがとうございます、モノミ。
    迂闊に変な事を言われてしまうと、かえって疑心暗鬼に陥りかねませんからね……。

    日向「……悪い。そこまでは思い出せて無いし……おそらく、覚えてても、言えないんだと思う」
    左右田「……くそっ!」
    日向「……ごめんな」
    九頭竜「あやまんじゃねーよ、こんな時に。もうどうしようもねぇ事なんだ……てめーも顔面歪ませてんじゃねぇよ左右田」
    左右田「うっせうっせ!……ソウルフレンドの前で……んな顔してる訳ねぇだろ……!」

    ……ソウルフレンド、ってまだ言ってくれるのか。

    日向「……ありがとな」
    左右田「うっせうっせ、知らねーよ!礼なんて言ってんじゃねぇ!」

    ……後は。
    そこでまだ俯いたままの、大事な、女の子。
  63. 63 : : 2017/08/31(木) 01:48:51

    日向「七海」
    七海「ねぇ……日向君。私の事情、知ってるって……言ったよね」
    日向「……はい」
    七海「じゃあどうして……。だって、私が……!」
    日向「貴方がそれを言えないのは把握済みです、七海千秋。僕に幸運の才能があるのは事実なので……こうなるのはおそらく確定だったでしょう。仮定は不必要です」

    俺を見上げる七海の頬を、液体が伝っていた。
    これは、涙。彼女の瞳を濡らし、零れている体液。
    僕は、それを知っている。よく、知っている。

    七海「……約束、したのに。一杯、色んなこと、教えてくれるって、約束したじゃん……」
    日向「……いずれにせよ、この約束は破綻するのが見えていた。そこはお互い様という事です。何より……」



    日向「貴方が目の前で二度死ぬ、なんて……ツマラナイにも、程があるでしょう?」



    僕の言葉に、彼女は面食らったような顔をするだけだった。
    まぁ、彼女は知らなくて良い事だ。この事は僕だけが、知っておけばいい。
    俺が文字通り墓場まで持っていきましょう。あまりにもどうしようもなくツ■ラ■カッタあの過去の出来事は。
  64. 64 : : 2017/08/31(木) 01:56:58

    日向「大丈夫だよ、七海。きっと、他の皆が、お前に教えてくれる。俺なんかは知らない、もっともっと沢山、色んな事をさ。だから……それで、勘弁してくれ」
    七海「……日向君に、教えて欲しかったのに」

    涙で濡れた頬を、膨らませる七海千秋。
    愛おしい、と素直に思う。
    あぁ、この気持ちに、気付くのが、遅かった。
    これがそうなんだって、気付くのが……遅かったんですね。

    俺も、七海に教えたかったよ、なんて言うと。
    これ以上動きにくくなりそうで。
    だから、その言葉は、飲み込みました。

    日向「……ウサミ!」
    ウサミ「はい、なんでちょーか、日向君!」
    日向「先生、なんだろ?……皆の事、しっかり頼みますよ」
    ウサミ「……はい。……日向君。無力な先生で、ごめんなちゃい」
    日向「良いんだよ。……ツマラナクはありますが、他に頼む相手もいませんし」
    ウサミ「最後の最後でそれでちゅか!?」

    さて、と。
    時間稼ぎは……そろそろ限界ですかね。
  65. 65 : : 2017/08/31(木) 02:13:06

    元々。
    始まりはあのファイナルデッドルームの前でした。

    飢餓感と生命の危機にさらされた日向創は、とっさにあそこまで移動し、中に入って行動を起こせば生還への手口が見つかると考えました。
    内心彼はそれはあり得ないと、理解はしていたのでしょう。

    しかしそこで予想外の出来事が発生しました。
    彼の生命への危機により、脳へかかっていたリミッターは一時的に解除されました。
    火事場の馬鹿力という例え話がある様に、しばし人間は何らかの危機的状況に陥るにあたり、脳の身体への無意識によるセーブ、それを解除するという能力を発揮します。

    今回の場合、この「新世界プログラム」によって日向創は入学時の記憶というリミッターを掛けられていた条件に会ったのですが、それを彼は自力で解除。
    数々の才能を、日向創が扱えるという状態になったのです。

    当然ながら、彼は彼自身の才能など全然知りません。
    故に加減も知らぬまま、彼は無意識に与えられていた様々な才能を振り回し、限界まで一瞬であるとはいえ酷使したのです。

    例えば……あの時、「幸運にも」七海千秋がたった一人で出歩き、ファイナルデッドルームに入ろうとした日向創を止めた様に。

    そして、その才能の酷使の影響はそれだけに留まりませんでした。

    「新世界プログラム」により消去されたはずの人格をも彼は強引に取り戻し、結果として僕という人格が彼の中に乱入する事となりました。
    ここで問題なのが、「上書き」ではなく「乱入」であるという事。

    「新世界プログラム」により、日向創という人格は既に固定されている。
    その為、ただでさえ「日向創というフォルダ」に、彼だけではなく「僕というデータ」まで無理やり詰め込んだ形になってしまったわけです。

    ただでさえ「予備学科である日向創を想定されたフォルダ」であるその容量に、莫大な才能データを詰め込めばどうなるか。

    エラーしか発生しません。
    彼が才能を使う度。僕が表に出る度に。
    エラーは発生し、データは不具合によってどんどん異常をきたしていきます。
  66. 66 : : 2017/08/31(木) 02:26:09

    この状況に陥っても、あくまで僕は傍観を決め込むつもりでした。

    彼の才能の酷使は、「予備学科である日向創の記憶」、「カ■■■として目覚めてから未来機関に出会うまでの記憶」をも甦らせたのです。

    日向創は「新世界プログラム」のおかげで人格を固定されており、そのままであれば何も知らぬままでいたでしょう。
    僕はそのまま何もせず、「希望と絶望、そのどちらが勝つか」を見極めるつもりでした。

    しかし……そこでふと、考え付きました。

    「希望と絶望のどちらが勝つかをハッキリさせたいならば、そのどちらにも予想していなかったであろうことを起こすべきだ」と。

    故に、この事件において、幸運の才能を使用し、狛枝の事件の犯人となりました。

    日向創は毒入り消火弾の事を止めようと思えばできたでしょう。
    しかし彼はそうはしませんでした。
    何故かは聞いていません。どうせツマラナイ事でしょう。



    俺は、予備学科にしかなれず、超高校級の皆みたいな世界は見られなかった。
    僕は才能を手にした挙句、ツマラナイ世界しか見られなかった。



    ……それじゃあ後は。
    終わりの、その先でも、見てみないと。
  67. 67 : : 2017/08/31(木) 02:38:11

    才能を使用し、僕も本格的に表に出てしまっている以上、不具合は深刻化していますね。

    日向創と僕の人格に境界が亡くなり、意識の混濁が発生しています。
    程なくして、僕というデータもエラーの果て、動作すらおぼつかなくなり、ただの文字列となり果てるでしょう。

    だからこそ、やるべき事を。

    才能をフル稼働させ、この場からでも干渉できるデータを洗いざらい検索を掛け。
    モノクマに怪しまれないそれを炙り出し、そこから可能な範囲をハッキングしプログラムを構築していく。
    この場所を、この状況を知っている今だからこそ、可能な芸当。
    有り余る才能に手助けされながら、「僕」とやらに手伝ってもらいながら、皆と会話し、時間を稼ぎながら、俺はこうして少しでも足掻いていました。

    もう、ごめんだ。
    あいつに何かをしてやれないまま、いなくなってしまうのは、嫌なんだ。

    七海にだって、希望は、未来はあって当然なんだ!

    プログラムに保護を。バックアップ。防壁展開。コードを記録しスイッチ式に登録。
    様々な条件を考慮し。可能性を拾い上げ。
    少しでも、残せるものを見つけ出しおいていく。

    俺が、ここにいたって、証拠を、おいていく。



    モノクマ「さーて、そろそろ良いかな?ぶっちゃけもう蛇足だろうし、さっさと始めちゃうよ!日向創君にはスペシャルなオシオキをご用意しました!!」

    ……時間切れ、か。
    まぁ良いでしょう。やれるだけの事は、やりました。

    モノクマ「張り切っていきましょう!!」

    ……俺、しっかり胸を、張れたよな?ここに、日向創は、しっかりと生きて、誰かの為に戦えたって、言えるなら。

    ……今まで散々ツマラナイものばかり見てきましたが……最後の最後で。ツマラナクはないと、思えたのならば。

    モノクマ「オシオキターイムッ!!」



    こんな未来を選んだって、良いんじゃないか?
  68. 68 : : 2017/08/31(木) 02:45:31



    ヒナナミだけかと思ったか!
    カムナナもだよ!

    という訳で、おそらく異質なIFエンド、これにて終了となります。
    日向はカムクラというチートの塊の元、というかこの状況においては一側面ではあるのですが。

    「もし日向がカムクラの才能で何かをひっくり返そうとするとしたらどこだろう?」と考えた結果、この物語を書く事となりました。

    ありがとうと、それだけを言うならどのタイミングが良いか。
    きっとこの裁判の時に間違いなく言いたかっただろうと、俺は考えています。

    最後の方、何だか駆け足になってしまった感が否めず、所々不備があるとは思います。
    正直勢いだけで最後は書いてしまったのは事実ですが……。

    そして、重要な話ですが、オシオキに関しては省略とさせていただきます。
    ダンガンロンパ本編ならばあってしかるべき要素ではありますが……この物語に関してだけは、間違いなく余韻をぶち壊す蛇足と判断しましたので。

    そんな作品ではありますが、何かしら楽しんで頂ければ幸いでございます。
    読んで頂いた方々、お付き合いいただき、ありがとうございました。
  69. 69 : : 2017/08/31(木) 17:11:16
    お疲れ様です。日向くんとカムクラくんが混ざり合っているという描写、そして二人の七海さんへの思い…それらの要素に強く惹きつけられました。面白かったです
  70. 70 : : 2017/09/01(金) 18:32:44

    コメントありがとうございます。
    日向とカムクラを両方いっぺんに出すんだし混ぜてやろうぜ!というとんでもなくいきなりな発想がこの物語の原典だったりします。
    その要素、そして七海に対する微妙な見解の差異なども含め、愉しんで頂けたら幸いです。

▲一番上へ

名前
#

名前は最大20文字までで、記号は([]_+-)が使えます。また、トリップを使用することができます。詳しくはガイドをご確認ください。
トリップを付けておくと、あなたの書き込みのみ表示などのオプションが有効になります。
執筆者の方は、偽防止のためにトリップを付けておくことを強くおすすめします。

本文

2000文字以内で投稿できます。

0

投稿時に確認ウィンドウを表示する

著者情報
ArmoredMUGENin

重武装連射

@ArmoredMUGENin

「ダンガンロンパ 」カテゴリの最新記事
「ダンガンロンパ 」SSの交流広場
【sn公式】ダンガンロンパ交流広場