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未来への咆哮 前編

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  1. 1 : : 2017/07/14(金) 23:29:42
    ※想いで未来を切り開く物語

    ※安価なし

    ※登場人物は無印のみ

    ※設定改編あり

    ※かなり長くなります

    ※亀走行必須

    では、いきます!
  2. 2 : : 2017/07/14(金) 23:30:36



      ドゴォォォォン


    「こちら、エリア1564!エリアを制圧しました!って、なんだアレは!?」







     ピピピピピ……ドゴォォォォン!!





           「うわぁぁぁぁ!」






    「こちらエリア3780!巨大兵器によりエリア制圧不可!撤退するから補給求む!」




     ドドドドドド!!





    「くそ!ここまでなのか……」








    キュイィィィィィン!!






          「我々に……」





                  「希望は……」






    「ないのか……」












    「この絶望を終わらせてくれる戦士よ……」



















             「早く目覚めてくれ……」



















    「ウププププ……」
  3. 3 : : 2017/07/14(金) 23:36:17
     ここは、The hope worrier schoolだ。主に希望が峰学園を卒業したものが、入る未来機関の養成所だ。

     そして、この学校が、1人1人の未来への始まりであるとともに、絶望の始まりでもある。ことは言うまでも無い。

     希望が峰学園78期生の彼らも例外ではない。それぞれの能力の伸びしろを伸ばし、それを実戦で生かすために、1人1人この学校で闘っていたのだ。


    「そのままストレートに未来機関には入れなかったの?」


     食堂で昼食を食べながら、アンテナ髪の男が不満をたれている。


    「ムリだべ!そんなんできたら俺だってこんなところに来てないって!」


     ドレッドヘアの男が、話を続ける。


    「広報課であろうと、事務課であろうとかり出されるので、それ相応の戦闘力が必要っていってましたね!」


     これから仕事なのか、アイドルの衣装を着て身支度をしている少女が話しに入った。

     そう、彼らの言うとおり、未来期間は絶望を断ち切る場所である。

     そのために日夜トレーニングを積んでいるのだ。

     なので、一番低い戦闘力の持ち主でもそれ相応に闘える力は持っているのだ。
  4. 4 : : 2017/07/14(金) 23:41:17
    「超高校級の絶望も全員捕まったのによ~!だりぃなぁ……」

    「それって、私たちのことかな?」


     リーゼント頭の男と、見たまんまにギャルの女が話を進める。

     そう、超高校級の絶望総勢17名は未来機関がつかまえ、更正させた。

     しかし、それでもまだ、残党が残っているらしく、それを倒さないといけない。

     そのために、彼らにも協力してもらっている。77期生の元超高校級の絶望のメンバーはチームDのメンバーとして、78期生の2人の元超高校級の絶望はチームHのメンバーとしてそれぞれ活動している。

     いま、食堂にいるのはチームHのメンバー達である。

     すると、校内に放送が響く。


    『チームHは予定を変更して、ブリーフィングを行います。昼食後教室に待機しておきなさい!』

    「スクランブルだべ……」


     ドレッドヘアの男がそう告げると皆席を立ち、教室へと戻っていった。
  5. 5 : : 2017/07/14(金) 23:42:25
    期待です
  6. 6 : : 2017/07/14(金) 23:44:43
     スクランブル……それは、緊急発進を意味する。
    「(また、絶望の残党がでたのかな……)」

     アンテナ髪の男はそう考えながらも、急いでブリーフィングルームへと走る。部屋に入ると全員が揃っていた。

     教室には学園長がいた。この学園の学園長、霧切仁はこの国の軍隊の大将クラスの実力を持っている。

     一人で一軍隊を滅ぼしたなどの噂も上げられるぐらいの実力の持ち主だ。


    「みんなそろったか!今からブリーフィングを始める!」


     みんなは静かに前のモニターを見た。普段チャラけている生徒も真剣な表情でモニターを見つめる。

     先ほど食堂にいたアイドル、ギャルは仕事があるので参加していない。

     ということは、スクランブルとは違うのか……

     そう考えていると、モニターにマップが映し出された。


    「絶望の残党が潜んでいる基地を見つけた!その場所はエリア999999(シックスナイン)


    999999(シックスナイン)?聴いたことねぇぞ?」


     リーゼント頭の男が答える。


    「皆目見当がつきませんわ……」


     ゴスロリの服を着た少女が答える。


    「エリア999999(シックスナイン)は地下にある。それまでに、エリア1564~3780までを制圧する必要がある!」


     と、学園長は地図の西の端から東の端までを指し棒でなぞった。


    「そして、エリア999999(シックスナイン)へはこのジャパウォック島中心にある遺跡から地下に潜ることでつく。」

    「そこにいる、絶望の残党を叩いて終わりだ!」


     それからの作戦内容は単純だった。フォーマンセル3チームと特殊部隊2つで動くという指示が学園長から下された。
  7. 7 : : 2017/07/14(金) 23:45:00
    >>5期待ありです!
  8. 8 : : 2017/07/14(金) 23:48:08
    「まず、グループAのメンバーは苗木、霧切、桑田、舞園!リーダーは苗木!お前がやれ!」


     それぞれしっかり返事をして、グループで固まった。

     同じように他のグループも発表される。


    「グループBは十神、腐川、朝日奈、葉隠!リーダーは十神!グループCは石丸、山田、大和田、セレス!リーダーは石丸だ!」


     ここまでは普通部隊の配置だ。次は特別部隊の配置である。


    「大神と戦刃!君たちは中央で戦力を集める役割をして欲しい!一番危険な場所だが、こちら側も援護する!よろしくたのむ!」


     ここで、名前の出た大神さくらと戦刃むくろは、戦闘力ではこの中で一番強く、たびたび未来機関の任務にも同行している。戦いには慣れている。

     だから、学園長も彼女らに一番危険なポジションを任せたのだろう。


    「そして、不二咲と江ノ島はここで、戦力分析と指示をお願いしたい!」


     不二咲千尋はプログラマーとハッカーとして、未来機関の仕事に携わることもすくなくない。

     江ノ島盾子はギャルながら、人間観察能力や情報分析能力に長けていることから不二咲とコンビを組むことが多い。


    「最後に伝えておくことがある。」


     みんなは起立して学園長の方を見た。


    「今までで一番大変なミッションになる。今までの訓練で受けた全ての知識でも足りないくらいのことが起こる。基本現場判断だが、ムリだと判断したら絶対に退いてくれ!」

    「はい!」


     その言葉に全員で応えた。


    「よし!出陣は3日後だ!それまでの間、チーム毎のブリーフィングを複数回開くこと!では、解散!!」


     ブリーフィングが終わった。

     みんな、敬礼をしてそれぞれグループごとに解散した。

     おそらく、これが最後の絶望との戦いになるだろう。

     このブリーフィングのあと、それぞれのリーダー陣が早速動いた。
  9. 9 : : 2017/07/14(金) 23:51:29
    「なんで、ボクがリーダーなの?」


     チームAのリーダーの苗木誠はなぜか首をかしげていた。

     それもそうだ。かれは、戦闘能力は下から数える方がはやいからだ。


    「お前の統率能力を学園長は見たんじゃね?」


     赤い髪の毛の桑田怜恩が答えた。

     確かに、桑田の言うとおり、苗木は戦闘能力は低いものの、統率力やチームの士気を上げる能力に関しては秀でている。

     それは、十神や石丸、セレスと同等、いやそれ以上といってもいいぐらいだ。

     現に彼は、一番戦闘力の低い部隊を率いて、その統率力で、四天王と言われる部隊に対して勝利を収めた。

     苗木本人はまぐれだと言っているが、その指揮能力は本物だと言える。

     一方、桑田は野球で鍛えた運動能力や、動体視力で、近距離戦闘と遠距離戦闘のマルチプレイヤーとして鍛えられている。

     主な武器は金属バットだが、いつでも、ボールが投げられるようにスクーターの乗り方を大和田から教わり、その背中の箱に野球ボールを詰め込んでいる。

     桑田の投げる野球ボールは銃弾の速さを超え、ロボットや人間なら貫通する球威がある。


    「そうですよ!私たちもついています!」


     彼女はアイドルの舞園さやかだ。先ほど、仕事から戻ってきたようで、いつもの学生服になっていた。

     舞園は力こそ無いが、スナイプ能力は戦刃から教わったと言うこともあり、校内2位の成績を持っており、戦刃からの折り紙付きだ。

     なお、柔らかい筋肉の持ち主で、様々な場所を動き回りながらスナイプできることから、未来機関の数少ない超長距離機動スナイパーとして、期待されている。


    「気楽にやりましょう……冷静な判断をしないと命取りになるわよ……」


     この苗木に発破をかける人物は霧切響子である。学園長の霧切仁の娘で、武道は一通りかじっているが、実力は全て師範代。2回ほど、大神と戦刃にギリギリで勝利しており、彼女たちの組み手の相手もそつなくこなす。

     銃撃戦にも長けており、近距離戦闘と中距離戦闘を使い分けて闘うことが出来る。

     人一倍負けず嫌いで、組み手で負けた日には、その理由を究明して、次に生かすという努力家でもある。
  10. 10 : : 2017/07/14(金) 23:55:50
    「それにしても今回のミッション……」

    「明らかに怪しいわね……」


     霧切と舞園は何かを察知したようだ。確かに、学園長の様子を見れば火を見るより明らかだが……


    「確かに今回のミッションはまるで、軍隊のするような内容だよな?」


     どうやら、桑田は何かを掴んでいるようだがつかみきれていない様子だった。

     苗木は考えていた…そうですわね

     確かに、今回のミッションは未来機関の任務の中でもトップレベルの任務のはず。

     しかしながら、そこら辺の詳しい説明はない。

     それに、チームH……78期生のみの参加も気になるところだ。チームD……いわゆる苗木達の先輩の77期生にあたってもおかしくないはずだ。

     戦闘能力では彼らの方が上だからだ。

     彼らは超高校級の絶望と言われ、その戦闘力は群を抜いていた。

     だが、その彼らを使わずに僕たちを使うのは何故なんだろう?

     そう考えながら、残り3日の1日目を過ごしていた。


    「苗木くん……」


     霧切が口を開いた。


    「今回のこと、父は私に何も話してくれなかったの。いつも、ミッションに関しては事前に通達が入っていたの……だけど、今回はそれがなかったの……」

     
     普段伝わってるものが伝わってない?

     なぜだろう……


    「だけどそれは、霧切さんのことを……」

    「わかっているわ!!だからこそよ……」

    「だからこそ伝えて欲しかったのよ……大事な娘なら……」


     苗木がすかさず話しかけたが、霧切はそれどころではない様子だった。

     それからは、皆口を開くことはなかった。


    「明日もう一度ミーティングしよう!」


     苗木の口からそれだけが伝えられ、彼らは別れた。

     心を落ち着かせる時間が欲しかった。

     冷静に話が出来る時間が……

     明日には皆冷静になってる……

     そう信じながら、リーダーは眠りについた。
  11. 11 : : 2017/07/14(金) 23:59:15
     グループBの面々は、戦闘特化というわけではない。

     それは、リーダーである十神白夜は知っていた。彼らとは何度も出撃しているからだ。

     十神は超高校級の御曹司といわれる、世界を統べる十神財閥の御曹司だ。

     そのリーダーシップで様々な部隊を勝利に導いてきた。

     しかし、自分は後衛でどっしりと構えて動くことはない。

     ただこのチームBは、戦闘力の低い人物が集まってるように見えるが、未知数な能力を持っているメンバーが集まっているのだと言うことも十神は理解している。

     まずは、朝日奈葵。超高校級のスイマーとして鍛えられた体のしなやかさと、様々な部活を兼部したことによりついたスタミナも合わさり、長期的に攻撃を受け流すことができる。

     さらには、肉弾戦やナイフ戦闘もお手の物で、柔らかい体つきが功を奏し、自分の力を常に限界まで引き上げて闘うことが出来る。

     これが長く続けばはっきりいってかなりコワイ戦力になる。

     そして、腐川冬子。彼女は、超高校級の文学少女として鍛えられた力で、十神のサポートをするとともに、超高校級の殺人鬼のジェノサイダー翔として、グループB唯一の戦闘狂として闘っている。

     最後に一番の未知数な人物。それがさっき食堂にいた、超高校級の占い師である葉隠康比呂だ。

     彼は、戦闘訓練の成績全て最低ランクでクリアしているが、なぜか未来機関のミッションに呼ばれるという変わり者だった。

     ただ、十神としては彼が気にくわない。理由としては、彼自身が本気を出していないと言うことだ。


    「そういえば、やつがミッションを本気でやったところを見たところがないな……」


     そう考えながら、フォーメーションを決めていた。
  12. 12 : : 2017/07/15(土) 00:03:51
    「よし……これでいくか……」


     十神は全ての作戦(オーダー)を頭に放り込み、勝つためのチームブリーフィングを行うために自室を出た。

     ブリーフィングルームには全員が揃っていた。それもそうだ。十神がついたときには5分も時間が過ぎていたからだ。


    「十神っち!おそいべ!」

    「うるさい!ギリギリまで作戦(オーダー)を練っていたんだ!」


     葉隠からの注意を受け流し、十神は椅子に座った。

     そして、いつものように足を組みながら話し始めた。


    「作戦を伝える。まず、朝日奈は中衛だ。」

    「え!?」


     この場にいた全員が驚いた。そう……朝日奈は前衛専門だったからだ。ただ、朝日奈は全てにおいて万能である。べつに他のポジションが苦手なわけではない。


    「ま、やってみるよ~!」


     いつもの笑顔で答えた。……てまてよ?ということは……

     全てのメンバーが固唾をのむと……


    「前衛は腐川、葉隠、そして俺だ!」

    「は!?」


     今までで一番驚いた。まず、今までとフォーメーションが明らかに違う。

     何回かこのメンバーでの出撃もあったが、その時は十神は絶対後衛で動かなかったからだ。

     それにもまして驚いたのが葉隠の前衛だ。葉隠が前に出ようものなら、絶対に十神が後ろに引きずり戻していたからだ。


    「みんな腹くくってるべということか、勝率は?」

     葉隠は勝率を聴いた。

    「ふ……俺に敗北の文字はない!あと何回かブリーフィングをする!今は解散だ!作戦(オーダー)の変更もあればその時に伝える。」


     そう言い残し十神はその場を去った。すると朝日奈が、


    「十神がいつもと違ったね?」

    「朝日奈っちもきづいたか?」

    「命がかかれば人間かわるわよ……」


     それに呼応して3人の会話が始まる。

     この3人は脳天気だった。しかし、意外にも冷静なのが葉隠だった。


    「ここは年長者として頑張らないとな……」


     彼はそう心に決めた。その決意を表したからだろうか……かれはドレッドヘアを後ろで束ねた。

     彼も心に決めたようだ。

     生きて帰ると……
  13. 13 : : 2017/07/15(土) 00:06:39
     チームCのリーダー石丸清多夏は、迷っていた。


    「ボクは皆をまとめきれるのであろうか……それも勝つための戦いで……」


     それもそうだ。このチームには石丸以外にも人を動かすのに適した人物がいることを彼自身気づいていた。

     その中でなぜ自分なのかが、ずっとモヤモヤしたものとして残っている。

     それは、セレスティア・ルーデンベルクである。

     みんなからはセレスと言われているが、彼女はギャンブラーとして名高く、裏社会でも知らぬものはいない。

     そんな彼女が表舞台であるここで生きて来れた理由の一つが駆け引きの強さだ。

     ここで動かすべきかそうでないかを判断する能力がずば抜けて高い。

     以前、彼女とこのような話をしたことを石丸は思い出した。


    「私は、軍隊というものはチェスとか将棋と同じだと思いますわ……」

    「1人1人兵隊が一国の王を守るために動く……そして、彼らを動かすのは参謀……つまり、プレイヤーですわ!」

    「ですから、私はここで動くべきではない時は動きません。それが、駆け引きですわ……」


     石丸はこの彼女の考えに感銘を受けた。だが、そしてこの言葉は彼の弱点を的確についた彼女なりのアドバイスなのかも知れないと思い始めた。

     そんなことを考えながら、彼は食堂へと歩を進めた。

     すると、入り口で彼が兄弟と慕う大和田紋土とであった。


    「おう!兄弟!顔色が悪いようだが何かあったのか?」

    「いや、少し悩んでいたのだ……」

    「そうか……まぁ、茶でもしばくぞ!」


     そう言うと、大和田は中へと入っていったので、石丸もついていくことにした。

     大和田紋土は戦闘力では言うことは無い。特にカウンター攻撃の威力と正確性に関してはチームH随一の成績を誇る。

     現に、大神との組み手でカウンターをしたときに大神を10mほど吹っ飛ばしたのだ。

     その技術を買われ、戦闘では最前線で闘うことが多いのが大和田だ。

     食堂の中に入ると、見たことのあるゴスロリ服を見かけた。そう……セレスだ。

     その横にいるのは山田一二三である。

     この山田に関してはトラップの製造などに関しては人一倍長けているが、他の戦闘はまったく駄目である。本人は、


    「クラフトワークが得意なのは同人作家としては当たり前!」


     と豪語しているが、その早さは尋常じゃない。素材があれば、毒薬やしびれ薬なども一瞬で作ってしまうほどだ。
  14. 14 : : 2017/07/15(土) 00:13:41
    「どうされましたか?石丸清多夏殿?」

    「……そうだな……皆いるし話させてもらおう……実は、リーダーに関してなのだが……」


     そう言いかけると、セレスがため息をついた。そのため息はどこか色っぽく見えた。


    「石丸くん?なんで、今回学園長があなたをリーダーにしたか分かっていますか?」


     学園長がボクをリーダーにする理由?そんなもの……分からない……


    「あなたの才能はなんですか?風紀委員でしょ?」

    「超高校級の風紀委員が風紀を正さずして、なんと言うんですか?」


     その言葉にハッとした!

     そうだ……僕は超高校級の風紀委員だ。

     乱れた風紀を正すのが僕の仕事であり僕の才能の原点ていうことを忘れていた。


    「まったく、そんなしょうもねぇこときにすんな兄弟!俺たちがついてる!」

    「拙者も微力ながら力を貸しますぞ!!」

    「これだけたくさんのチェスの駒があるのです。しっかり使ってくださいな……」


     彼らの言葉が心に刺さった。

     世の中の風紀を正すためにはボクの力が必要と言うことか……

     ならばその命……捧げようではないか……


    「ありがとう……みんな……」


     石丸は男泣きにくれた……





     その後、解散した彼らはそれぞれ心に刻んだことだろう。

     人のぬくもり……友情の暖かさを……






     その晩、石丸はセレスに、呼ばれていたために彼女の部屋を訪れた。セレスのウィッグは外れており、服装もネグリジェを着ていた。


    「まったく、乙女の就寝前の部屋に来るなんて、積極的なんですね……」

    「き……君が呼んだのではないか!?」

    「ふふ……そうでしたわね!」


     すると石丸が彼女に頭を下げた。


    「今日はたすかった!ありがとう!」


     すると彼女はクスッと笑い、


    「お顔を上げてくださいな……」


     というと石丸の前でひざまずき、彼の手の甲に口づけをした。

     石丸は何が起きているのか分からなかった。


    「な……なにを……」

    「忠誠を誓うキスですわ……あとは、抱いてくだされば文句はないのですが、それはお預けにしておきましょう。」


     石丸はビックリした表情を浮かべたが、冷静さを取り戻し、


    「抱きしめるのは生きて帰ってからにとっておくか……」

    「フフフ……そうですわね!」


     セレスの笑顔で吹っ切れた石丸は、夜中になるまで戦略会議を行った。

     その後、部屋で眠った石丸は肩の荷が下りてホッとしたからか翌日、いつもより30分ほど寝過ごしたという……
  15. 15 : : 2017/07/15(土) 00:17:33
    ドゴゴゴゴォン!!

    ダン!    バキィ!


     武道場からすさまじい音が聞こえている。

     組み手をしているのは、大神さくらと戦刃むくろである。

     この2人の本気の組み手は、常人には止められない。お互いの気が済むまで打ち合う。


    「ぬぉぉぉ!!」


     大神の大きな拳が戦刃の顔面めがけてとんでくる。まさしくその拳は音速でとんでくる鉄塊と同じように見える。

     しかし、それをものともせず、戦刃は地面を蹴り、大神の腕を足蹴にして大きく飛び上がった。

     すると、大神は上半身をひねり、大きく腕を回転させて、戦刃の腹にクリーンヒットさせ、そのまま壁にたたきつけた。


    「カハァ……」


     戦刃は吐血した。しかし、戦刃の野生の目はまだ衰えていない。すぐさま模擬銃を構え、大神の肩めがけて打ち込んだ。

     その痛みを感じると大神はバク転をしながら戦刃から離れ、すぐに戦闘態勢をとり、スカートの腰部分に手をかけた。

     戦刃は脱兎のごとく突っ込んだが、大神の異変に気づきブレーキをかけた。が、それに間に合わず、大神のヌンチャクの餌食となった。


    ボコォォ……


     大神のヌンチャクが腹に突き刺さる。戦刃は吐血をし、その場に膝をついた。

     それを見た、大神はヌンチャクをしまい、大きく息を吐いた。それに応じて、戦刃もモデルガンをしまい、ストレッチをする。


    「……少し休もう…………」

    「……そうだね」


     2人は近くのベンチに腰をかけた。
  16. 16 : : 2017/07/15(土) 00:20:18
    「大神さん、強すぎるよ……」

    「戦刃、お主の身のこなしもすばらしいものだ。」


     お互いがお互いを褒め合う。これが一番の武士道である。

     しかしながら、戦刃の表情が暗い。


    「大神さん……今回の敵はかなり強いよ……」

    「あぁ……分かっている……残党といえどももう人間はいないと聞く……数的には問題ないと踏んでいるのだが……実力は強いのだろうな……」


     戦刃は首を横に振った。大神は驚いた。確かに、彼女は元々超高校級の絶望だ。内情を知ってるが故か……


    「実はね……今回、向こうの軍隊の数はほぼ無限と言ってもいいの……」

    「な……!?」


     その言葉に大神が絶句した。あの超高校級の格闘家と言われた大神さくらがたじろいだのだ。冷や汗が体中を流れる……


    「私たち超高校級の絶望はジャパウォック島の工場でね、モノクマと言われるロボットを大量生産していたの。」

    「その数は那由多を越えたわ……」

    「な……那由多とな……?」


     那由多の軍勢に我々16人は戦いを挑もうとしていたのか……


    「なぜ、それをブリーフィングで言わなかった?」

    「仕方ないじゃない……言える空気と思ったの?」


     確かに言える空気ではなかった。大神がそう確認したときだった。


    「けど、安心して……いざとなったら私がけりをつけるから……」


    その言葉を聞いた大神は戦刃の顔を見た。

     その目はまっすぐ向いていた……誰かを守るために覚悟を決めた目だ。


    「……その覚悟は閉まっておけ……」


     大神はすかさず、戦刃をとめた。


    「我がさせない。我等全員で勝つんだ!!」

    「そっか……わかったよ……」


     戦刃むくろはそう言うと優しくほほえんだ。


    「組み手再開しようか。今回は真剣で組み手させてよ。」

    「バカ言うな……模擬刀でガマンしろ!」


    カキィィン!    キィィン!


     この音は日が沈んでも鳴り止むことはなく、夕食時間前まで鳴り響いた。
  17. 17 : : 2017/07/15(土) 00:24:25
     ある個室のベット……そこには裸の男女がお互いの欲望を満たしていた……

     女性が上にまたがっているようだ。スタイルも良い。激しく男性の上で腰を振っている。

     下で寝ている男性は体が細く、胸の痛も薄い。

     お互いの喘ぎ声とともに、絶頂を迎えた二つの陰はお互いに重なり一つになる。

     その二つの陰の正体は、不二咲千尋と江ノ島盾子だ……


    「今日も最高だったよ!ちぃたん!」

    「もう……戦いの3日前に必ずこれするの疲れるんだけど……」


     そう……これは、彼らにとってはいわゆる闘う前の儀式みたいなものだ。

     これが常習化している分、不二咲にとってはつらい。シャワールームにむかいながら文句をたれるのもムリは無い。

     しかし、江ノ島にも言い分がある。


    「これが、私が絶望を手放すための条件ということをお忘れ無く!」


     そう……苗木に対して、絶望を捨てる代わりに不二咲千尋を彼氏にするという条件を建てたのだ。

     不二咲は渋々のんだが、まぁ、彼としても嫌な気持ちはない。

     あの超高校級のギャルと言われる江ノ島盾子と彼女関係になれてこのようなことも出来るのだ。

     と言う考えはあるのだが、流石に闘う3日前はやめてくれと思う不二咲だった。
  18. 18 : : 2017/07/15(土) 00:30:57
     不二咲はシャワーを浴びながら考えた。


    「今回の敵は強大すぎる……ボクの技術で追いつくか……」


     そう……不二咲は大体の全貌は見えていた。だから、不安だった。

     江ノ島から聴かされたあのクマ型ロボット、モノクマの全貌。

     それがどうしても引っかかる。そして、『アレ』の存在も気になる。


    「その不安を解消するために私がいるんだろ?」


     江ノ島がシャワールームの扉を

    バン!!

     と開けた。不二咲は一瞬ビックリしたが、すぐさま彼女をこちら側に引き寄せて、


    「もちろん、期待してるよ……」


     と言いながら、江ノ島の胸に顔を埋めた。


    「駄目だこりゃ……可愛くてやみつきになる……」


     彼女たちはシャワールームの中でもお互いの欲望を満たし、更に新たな欲望を求めた。


     勝利への欲望を……


     そして、シャワールームからベッドに移り、渇望する勝利のために、互いに腰を振るのであった。


     だが、幸せの時間はそう長くは続かなかった……




























    ビービービー……


     不二咲のスーパーコンピュータが警報音を鳴らす。


    「え!?なに!?」


     クタクタだった体をたたき起こし、コンピュータに駆け寄る。

     江ノ島も気だるそうに駆け寄った。


    「これは……」


     そこで2人が目にしたもの……それは……

     那由多の軍勢のモノクマによる未来機関への宣戦布告だった……























    『我々、絶望の残党のモノクマ軍は3日後に君たちを迎え撃つ準備をしておく!』

    『場所はジャパウォック島全区域!』

    『オマエらを討ち取ることが、絶望の第一歩となるんだ!』

    『吐いたつば、のまんでおけよ!往生せぇや!!』







    プツン……
  19. 19 : : 2017/07/15(土) 00:31:23
    取り敢えず今日はここまで(っ´ω`c)
    残りは明日移植します(っ´ω`c)
  20. 20 : : 2017/07/15(土) 06:31:16
     朝起きた苗木達は全体ブリーフィングのため、教室へと向かっていた。

     朝おきたら部屋の前に全体ブリーフィングの連絡が届いていたのだ。

     どうやら、不二咲と江ノ島からの招集らしい。

     苗木は時間ギリギリに教室に着いてしまった。しかし、不二咲と江ノ島はいない。

    さらには時間が過ぎても2人が来る気配がない。


    「おい!どうなってるんだ!俺たちを呼び出した張本人はまだか!」


     十神があらぶっていた。


    「どうせ、2人がアンアンしてる映像が流されたから動揺してこれないんだべ!」


     葉隠も冗談交じりの発言をしたが、下ネタだったため決まりが悪い。

     すると、教室の扉が勢いよく開いた。不二咲と江ノ島だ。不二咲にいつもの笑顔はなかった。


    「ごめん、またせたね!」

    「悪かった。私との話が長引いてな……」


     不二咲とともに学園長が入ってきたので、全員が慌てて席を立ち敬礼をした。

     それを見た学園長が敬礼を返し着席を促し皆座る。


    「まずはこれを見てください!」


     江ノ島は眼鏡をかけていた。あれ?眼鏡してたっけ?

     そんな思いをよそに、話を進めようとする江ノ島が指し示すところを苗木達は見た。するとそこにはたくさんのモノクマがいた。

     そのモノクマにより宣戦布告がされる。


    「この映像がねぇ~!2人で楽しんでいるときにいきなり送られてきたんだよ~!は!言ってしまった!」


     今度はぶりっ子……相変わらずだなと一同はため息をついた。


    「ま、真面目に話すとね、内容を簡潔にまとめると、私たちに対する宣戦布告なわけ!」

    「宣戦布告って、映像を見る限り、こっちにいちゃもんつけてただろうが!」


     大和田が声を荒げ、机を蹴り上げて立ち上がったが、石丸が制止した。


    「大和田君の言うとおりなんだよ。文章的に、ボクもその印象を受けたから、今日の朝に学園長に確認したんだ。」


     その声に皆疑問を感じ視線を学園長に向ける。


    「いままで、絶望の残党と闘うためには宣戦布告という手段をとってきた。今回もその方法をとった。それだけだ。」


     なるほど……と皆納得した表情を見せた。


    「なら、楽勝だべ!」

    「楽勝じゃない。」


     葉隠の発言に戦刃が反論した。


    「問題なのは戦力だね……そうだよね?盾子ちゃん?」


     さらに、戦刃さんが発言した。


    「そう!残ねぇの言うとおり、私たちの戦力ではかなり厳しい戦いになるの!」

    「何故言い切れる?」


     江ノ島の説明に十神を返す。その問に戦刃がすかさず答えた。


    「私たちは元々超高校級の絶望だよ?」


     その言葉に背筋が凍った。そうだ……この戦いの元凶は彼女らだ……

     その彼女らが言う情報が嘘な訳がない。


    「今回の相手は那由多のモノクマだ!」

    「は!?」


     学園長からのまさかの言葉に全員の頭にハテナが並んだ。


    「那由多って……非現実的すぎるじゃない!?」

    「まさかの展開ですぞ!?」


     腐川、山田を初めに慌てる者が出始めた。しかし……


    「落ち着きなさい!」


     セレスが喝を入れる。


    「そんなことでばたついていては勝てるものも勝てませんわよ……」

    「そう言うことだ!最後まで話を聴いてくれ!」


     学園長とセレスの言葉にみな落ち着きを取り戻し、話を聴く姿勢を作った。

     それを確認した不二咲達が話を続けた。
  21. 21 : : 2017/07/15(土) 06:56:26
    「江ノ島さんから話を聴いたんだけどね……絶望だったときに、アルターエゴを作ってたらしいんだ……そのアルターエゴの指示でモノクマの大量生産をジャパウォック島で行ってたみたい。」


     アルターエゴ……簡単に言うと人工知能……いわゆる最新型AI……

     江ノ島は、アルターエゴをつくって、もしものことがあったら、アルターエゴを中心に絶望を植え続けることを計画していたのだ。


    「あ、そうそう……今回なんだけど、アルターエゴの動きを1日止めることに成功したんだ!」


     不二咲が付け加えた。がしかし……


    「ちょっとまってくれたまえ!そのアルターエゴを亡き者にすることは出来ないのかね?」


     もっともだ……動きを止めるよりこっちの方がはやい気がする……


    「あのね!悪いけど、私の作った人工知能は1日でつぶせるほど甘くないの!不二咲がいるの分かっててそんなちゃちぃもの作るかって!」


     江ノ島がすかさず答える。これもまたごもっともだ。


    「だから、1日止めることでもスゴいことなの!わかった?」


     石丸を初め頷いた。しかし、納得してないものがいた。十神だ。


    「俺は納得できないな!最終的には潰すのだろう?そうでなければ話は進まないからな?」

    「もちろん、そのつもり!だから、これをしかけてきて欲しいんだ!」


     不二咲はポケットの中からマウスをとりだした。全長1センチほどのマウスを5体ほど持っていた。


    「これは、マウスなんだ。どこにアルターエゴがあるかを見つけ出して、ウイルスを送り込む。このウイルスがドンドン広がっていくことで、徐々にだけど、アルターエゴを弱らせる。」

    「ちょっとまつべ!弱らせるって、倒すんじゃねぇのか!?」

    「だから、話を最後まで聴いてよ!僕は倒すって言ったよね?」


     葉隠の発言に不二咲は頭をかきむしりながら答えた。相当イライラしているようだ。

     さらにメンバーは気づいてしまった。珍しく不二咲の口調が荒いことを……。不二咲は根は優しくて戦闘にも抵抗をみせているが、一度キレると、大神と大和田の2人がかりでも止められない。

     不二咲を止めるのに大神が全力戦闘で5分間戦い続けて大神自身もぼろぼろになるぐらいの戦闘力を発揮する。

     そうなっては困るので、メンバーは最後まで話を聴くことにした。


    「マウスのウイルスの残量がなくなったらそこから僕がハッキングをして倒す。そうすると、モノクマの動きは止まると思うんだ。」


     これが、不二咲の作戦だった。江ノ島が付け加える。


    「ま、モノクマの動きは止まらなくても、生産は止まるからゴールは見えるよね!」


     モノクマの動きを止める……それが勝機に変わるのか……

     そう、全員が思っていた。
  22. 22 : : 2017/07/15(土) 07:05:04
     学園長がブリーフィングの席へと動く。


    「聴いての通りだ!君たちのミッションは、アルターエゴが動いていない今のうちに、このマウスをしかけ、かつ、辺りを調査してきて欲しい!」

    「質問です。」


     霧切がすっと手を上げた。その顔は真剣そのものだ。


    「質問は二つです。これは、私たち全員でむかうのですか?それとも、メンバーは選抜するのですか?」

    「もちろん、選抜する。というか、してある。全員でまわると目立つし、人が多い分ムダな動きが増える。ナンセンスだ。」

    「それと、もう一つ、モノクマは動いてないのですか?」

    「その心配は無いと思われる。マザーであるアルターエゴが止まっている以上彼らが動くことはないはずだ。だが、最低限の準備はしておいた方がいい。」

    「わかりました。」


     霧切さんは納得したようだ。そして、学園長は続ける。


    「さっきも言ったとおり、選抜メンバーで行ってもらうのだが、そのメンバーは、霧切、大神、戦刃だ!ミッション開始時刻は1000。それまでに滑走路のヘリコプター前に集合するように!」


    「「「了解!」」」


     3人は声をそろえて返事をした。


    「以上解散!!」


     みんなは学園長に敬礼をし、それぞれの部屋に戻った。
  23. 23 : : 2017/07/15(土) 07:16:54
    ー滑走路ー
     そこにはたくさんのヘリコプター及び小型機が並んでいた。

     かの有名な零戦もある。ここにあるかず多くの飛行機及びヘリコプターは全て整備済みであり、装備も積んでいる。

     大きなアパッチと言われるヘリコプターに霧切、大神、戦刃の3人は搭乗し、そして飛び立った。


    「まったく、面倒なこと頼んでくれましたね……」


     霧切がパイロット役を務めた学園長に話し掛けた。すると、学園長は高らかに笑い、


    「すまないね!君たちしか浮かばなかったんだ!」

    「いえ、別に気にしてないですよ……」


     いつもの親子の会話だろう。ただ違うと言えば、仕事上はお互いの役職を守れという教育を彼女は受けてきたため、父であろうと上官と言うことを守っているようだ。

     それに感心していた大神は問いかける。


    「アルターエゴを止めているといえど、着陸するのは危険そうだな……」


     それに対して、学園長がまさに、今思い出したかのように、答えた。


    「そうなんだ!だから、君たちは島の上空からとんでもらい、中央の島に降りてもらう。」

    「そんなことだろうと思ったわ。」


     霧切はため息をこぼした。

     大神はわずかながら笑みをこぼした。さすが、は霧切家当主とそのご息女と言うことだろう……息がぴったりだ……

     すると学園長が、


    「君たちなら大丈夫だと思うが、警戒は怠るなよ。」


     と言葉を告げた。全員力強く頷き、結束を高めた。


    「そろそろつくぞ!」


     ヘリコプターの扉が勢いよく開けられた!


    「私から行くね!」


     そう言い残すと戦刃はすぐに飛び立った。大神、霧切もその後に続く。

     高度がドンドン低くなる。その高度が低くなるにつれ、戦刃からハンドサインが出た。パラシュートが開く……

     そして、彼女たちは中央の島に降り立った。
  24. 24 : : 2017/07/15(土) 07:21:40
    『聞こえるか!こちらコード000(トリプルオー)!こちらコード000(トリプルオー)!』


     学園長からの無線だ!


    「聞こえた。コード001(ダブルオーワン)002(ダブルオーツー)003(ダブルオースリー)ともに着陸成功。現在の地点を頼む。」


     戦刃が無線応答に答えた。さすがは軍人。手慣れている。


    『OK!地点コード999999(シックスナイン)までの案内は任せろ!現在は地点コード888888(シックスエイト)そのままEN方向に進んでくれ!辺りに気をつけて進めよ!』


    「ラジャー!EN方向ですね!」


     無線を一旦おとした戦刃は、皆に行動の作戦を伝えた。


    「今からEN方向へと進んでいく。私が先頭で殿(しんがり)は大神さん。霧切さんは間に入って。戦闘は私と大神さんで基本的に行う。」

    「まって。私だって闘えるわ。」


     霧切は戦刃の作戦に反論した。自分だけ何もしないのはいやなのだろう。


    「勘違いしないで。あなたが闘えない人だとは誰も言ってない。」


     戦刃は霧切に近づき、伝えた。


    「あなたがマウスを持って。探偵だから隠密行動は得意でしょ?」


     そう告げられると霧切は渋々とマウスの入った袋を受け取り、フォーメーションについた。


    「しかし、どう進む?」

    「出来れば木の上を進んでいきたいんだけど、そうも行かないよね……」

    「私は木の上は走ったことは無いわ。」

    「最悪、我が担ぐが……」

    「まぁ、緊急事態までは下を進もう。」


     その言葉で、そのまま私たちは歩き始めた。
  25. 25 : : 2017/07/15(土) 07:25:33
     学園長の指示通り草むらをかき分けて進んでいた。


    「戦刃よ。気になっていたことがあるのだが……」

    「なに?」

    「お主はアジトの場所は分からないのか?」


     大神の質問はもっともだ。戦刃はもともと超高校級の絶望。しかも、フェンリルという傭兵部隊出身の軍人だ。

     その場所の警備ぐらいは任されていたはず。


    「知らない。確かにこの島は警備したことはあるけど、私の警備範囲は島全体だから細かいところまで見てる暇はないの……」


    「なるほどな……」


     とその時、戦刃から制止の合図があった。どうやら、ここがポイント999999(シックスナイン)……


    「敵襲よ……」


     そこには10体ほどのモノクマがいた。


    「こちらチームH!応答求む!絶望の残党がいる。こちらに好戦的なので、これから戦闘に入る。指示を……」


     すると、すぐさま応答があった。不二咲の声だ。


    『戦刃さん!学園長から戦闘許可が出たよ!あと、マウスを持っている人に変わって!時間はとらないから!』


     戦刃はそれを聴くと、すぐに霧切に無線を渡した。


    「霧切よ。」

    『霧切さんが持ってるんだね!マウスをここで解き放って!』

    「ちょっとまって!まだ目的地には……」

    『ここから距離が近いからマウスが勝手にいくんだ!潰されないうちに早く!』


     霧切は不二咲の指示通りマウスを解き放った。すると、マウスは音速の早さで、走りだした。
  26. 26 : : 2017/07/15(土) 07:28:04
     そのマウスの方向を目で追っていると、無線から声が聞こえた。


    『よし!これでOK!それじゃぁ、チームH戦闘開始(オープンファイヤー)だよ!ヘリが来るまで持ちこたえて!』

    「それを待っていた……」


     戦闘開始(オープンファイヤー)の合図を聴いた大神は、すぐさま闘気を前面に押し出した。

     闘気とは、この学校に通っている生徒は全員身につけている力である。

     しかし、それを見た戦刃に


    「まって!」


     と注意を受けてしまった。


    「闘気を表に出さないで!実力の3割で闘うの。」

    「なぜ、そんなまどろっこしいことを……」

    「彼らがデータをとるための伏兵の可能性があるからね?」


     戦刃からの説明に霧切も反応した。戦刃は頷く。大神も了解したようで、闘気を抑えた。


    「いくよ!こちら、戦刃むくろ。ミッションを遂行する。」

    「大神さくら。奴らを駆逐する。」

    「霧切響子……敵を殲滅するわ!」


     こうして、彼女らの3対10の戦いが始まった。
  27. 27 : : 2017/07/15(土) 07:45:03
    「闘気を抑えるか……難しいな……」


     そうつぶやきながら戦闘をしていた大神さくらは、なるべく闘気は出さずに闘っていた。

     大神のパンチ速度は音速を超える。威力も、本気を出せば拳の一撃で人が殺せるほどだ。

     なので、戦闘では凶器を使うことは少ないのだが、唯一持ってる武器として、ヌンチャクとタガーナイフがある。

     これらの武器も、つかうことは珍しい。だが、今回の戦闘に限っては、ヌンチャクを持って闘っていた。


    「(拳の破壊力が押さえ込まれた今、我にはこれしかない。)」


     そう……拳とスピードを抑えられた大神は、相手が懐に入ってくるのを伺っていた。それをあざ笑うかのようにモノクマが3方向から位置を入れ替えながら攻めてくる。

     木を利用しての攻撃で、その姿は忍者だ。大神はそれを見かけると、


    「スピードで勝負か……なら!」


     と大神が言うと間もなく、モノクマがつっこんできた。

     大神は腕をクロスにしてそれを受ける。そして、モノクマ達をはじき飛ばした!

     モノクマの攻撃が間髪を入れずにとんでくる。一体ずつきたとおもったら、三体まとめてきたりその攻撃方法は多彩だ。

     大神の体から血しぶきが上がる。セーラー服もいつも以上にぼろぼろだ……

     まさに、防戦一方……このままじゃ……ヤバイ……
  28. 28 : : 2017/07/15(土) 07:47:56
     この闘いの負けは死を意味する。それを知っていた大神は、


    「少しだけ、闘気を入れさせてもらうか……」


     と闘気を込める決意をした。

     大神は思いきり踏ん張り、ヌンチャクを持った右手を左肩の上に乗せた。

     すると、大神の足下の草が少し揺れた。

     それを見たモノクマが動きを止めようとブレーキをする。しかし、それをさせる前に、大神は動く!


    「ヌン!!」

     そのかけごえとともにヌンチャクを体ごと振り抜いた。

     すると、大きな鎌状のものが森を駆け巡る。その闘気が大神が相手していた3体のモノクマに直撃しバラバラになった。


    「この戦いを見てるもの……間違えるなよ……我の闘気は108式まである。せいぜい今のは1式程度だ。」


     そういうと、木の根元に腰かけ、残りの彼女たちの闘いを見守ることにした。


    「(我は闘気を込めた闘いしか分からぬ……闘気を込めない闘い方……見させてもらおう……)」


     そう心に刻みながら、持ってきていたプロテインの容器と粉末を使いプロテインを作っていた。


    「うむ。いつも以上にうまい!」


     そういうと、草むらの上に座禅の姿勢で座り、闘いを見守った。
  29. 29 : : 2017/07/15(土) 13:55:24
     霧切は考えていた。このモノクマ達の奇襲をやり過ごすための武道があるのかどうか。

     テコンドー、太極拳、空手、ボクシング……

     いや、ここでは攻めるより受け流す方がいいのでは?そうなれば絞れる……

     今まで経験した武道の方法で受けながらカウンターを……


      シュパッ……


     服が斬られた!考えてる余裕はない!モノクマは間髪を入れずに攻撃をしかけてくる。三体が木をプロレスのサイドロープのように利用して攻めてくる。

     相手をしている三体のうち一体が攻めてきた。霧切はその一体に向けて小銃を放った。その弾は目に直撃しモノクマは機能を停止した。

     しかし、その2体によって、今度は服の両腕が斬られた。

     後2体……どう倒すか……

     霧切がそう考えている間にもモノクマのラッシュは続く。霧切も紙一重でかわしていくが、2体の猛攻は止むことを知らず、次第に服のダメージが増えていく。

     そして、モノクマからのラッシュの最後の攻撃でついには上半身があらわになり、下半身も、膝上のスカートが更に短くなっていた。

     だが、そんな状況でもモノクマはいっこうに攻撃をやめなかった。いや、やめるどころかますます攻撃の勢いは増していた。

     霧切の呼吸も荒い。胸をかばいながらで防戦一方だ……

     すると、モノクマは一旦距離をとり、縦一列に並んだ。

     そして、モノクマが2体同時に突っ込んできた。それを見た霧切は片手で胸を隠しながら、分散させるために発砲した。

     しかし、予想外のことが起こった。発砲と同時に、更に加速してモノクマがつっこんできたのだ。一体は盾になって銃弾を目に受けてそのまま倒れたが、もう一体は後ろからジャンプして霧切に飛びかかった。

     しかし、そこで慌てないのが霧切だ。そのまま銃口をモノクマに向けた。安定させるために小銃を両手で持っていた。そして、モノクマとの接近をギリギリまで待った。


    「(ギリギリまで引きつけて目のところを狙えば動きが止まるはず……)」


     そう考えながら、霧切は待った。その間五秒。







     一秒……モノクマが、こちらに目を合わせた。爪の長さが5センチほど伸びた。

     二秒……霧切とモノクマが目が合う。霧切の頬に汗が流れる。

     三秒……モノクマの視線が下がる。霧切の胸の膨らみの辺りを見た。左胸に突き刺すようだ。

     四秒……胸を見られても霧切の表情は変わらない。モノクマの照準が定まる。

     そして、五秒……モノクマの腕が振りかぶられたと同時に、目めがけて発砲した。モノクマはそのまま霧切の足下に落ちた。




     霧切は大きく深呼吸をして息を整えた。
  30. 30 : : 2017/07/15(土) 14:01:00
     呼吸を整えた霧切はモノクマの元へと歩み寄った。


    「いい加減にして……」


     その言葉を残して、三体のモノクマを踏みつぶした。すると、モノクマからあるチップが出てきた。


    「チップ?遠隔操作用のチップかしら?」


     霧切はそのチップを回収して大神の元へと歩み始めた。


    「ごめんなさいね……私は負けられないの……」


     霧切の左胸から血が流れていることを彼女は分かっていたが、大神の元につくまでガマンすることにした。

     ふと、空を見上げた。


    「私たちが守る未来に絶望はいらないわ……」


     そういうと、長い髪をかき上げ、ぼろぼろになった上着を羽織り、堂々と歩いて行った。
  31. 31 : : 2017/07/15(土) 14:07:58
     その頃戦刃は2人とは少し離れたところで戦闘をしていた。そこは、地の利的にも勝機はあるということで、その場所を選んだのだが、そこは、断崖絶壁と言うには相応しいぐらいの崖だった。また、その場所には木が1本も無かったのだ。


    「(ここなら、こちら側は空間戦術が出来ないが、むこうも同じ。平面での闘いなら負けない!)」


     そう……モノクマは木を使って三次元空間を動いて攻撃を加えている。しかし、そのポイントを奪うことによって、平面戦に持ち込んだのだ。

     戦刃は背中に背負っていたショットガンを構えた。


    『M1014JSCSベネリM4スーパー90』


     彼女愛用のこのショットガンは、アメリカ海兵隊やイギリス陸軍も使ったといわれる戦闘用ショットガンである!

     今回の闘いでは、近・中距離戦闘のつもりだったので、アサルトライフルは置いてきた。

     もう一つの相棒である『RPG-7』はちゃんと持ってきていた。

     戦刃は手慣れた手つきで、ボルトハンドルをひく……

     ショットシェルが送り込まれた。

     引き金を引く。その間コンマ1秒!


    ドゴォォン!


     戦刃の放った銃弾が一体のモノクマを撃破する。

     四体を相手していたので、残りは三体……

     それでも攻撃の手を緩めないのが戦刃むくろである。地面を勢いよく蹴ると、まるで、獲物を見つけたチーターのごとく襲いかかる。

     そのまままっすぐ突っ込み、次の動作に移ろうとしたモノクマの赤い方の目にナイフを突き立てる。……爆発。

     それをチャンスと思ってとんできたモノクマに対してはナイフを返し、モノクマの方を見ずに刺す。モノクマの目を直撃。……爆発。

     闘志こそ隠しているが、相手の気配を感じる能力はまさに軍人を通り越して殺し屋の域に達している。


    「残り一匹……私の知ってるモノクマなら接近戦で狙ってくるはずだ……」

     
     そうつぶやいた戦刃は軽く目をつむり精神を落ち着かせた。
  32. 32 : : 2017/07/15(土) 14:14:43
     そして、最後の一体となった獲物に対して、戦刃は武器をしまった。

     ただ、いつでも出せる位置にナイフを持っておくのは忘れなかった。


    「(最後は近接で……)」


     そう思っていた戦刃だった。

     しかし……モノクマの様子がおかしい……

     口をあんぐり開けて待っているだけだった。

     戦刃は何かあるかも知れないと身構えたが、モノクマに動きがない。

     ならば……


    「そっちが来ないなら、こっちから行くよ!!」


     と勢いよく突っ込む戦刃。しかし、それを待ってたかのように、モノクマの開いた口が光り出した。


    「は!?」


     驚いた戦刃は、最高速度に達していた自分の体を足と手を使い止めて、横に飛び退いた。

     それと同時に、モノクマの口からレーザービームが飛び出した。

     戦刃は間一髪それをかわす。その距離1cm。


    「あんなの反則でしょ……」


     そういうと、戦刃はもう一つの相棒(RPG-7)を構え、横にとびながら的確に、モノクマの側頭部を打ち抜いた。

     打ち抜かれたモノクマは、爆発した。

     戦闘が終わると、戦刃はストレッチをした。

     その防弾チョッキや顔の汚れが戦闘の激しさを物語っていたが、やはり、超高校級の軍人はだてではない。あれほど激しい戦闘をしたにもかかわらず無傷だ……


    「お気に入りの防弾チョッキが汚れたじゃん……」


     そう言い放つと同時に、モノクマを一体ずつ、崖から蹴落とした。そして、少しイラッとした表情を浮かべながら、彼女はみなの元へと戻った。
  33. 33 : : 2017/07/15(土) 14:22:39
     大神は霧切の闘いを静かに見ていた。自分が闘えるギリギリまで気をおとして闘った霧切。


    「我との闘いでもあそこまでぼろぼろになったことはなかったな……」


     そこまで、気をおとした闘いは難しいと言うことか……

     大神自身も最初の方は気をおとしていたが、結局気を上げてしまった。

     そこが大神自身の弱さであると彼女は実感している。


    「(我も霧切みたいな強さが欲しい……)」


     そう思っていたら、霧切がやってきた。


    「厳しい戦いだったわ……」

    「あぁ……服で分かる……」

    「プロテインもらっても良いかしら?」

    「わかった。少し待ってろ。」


     大神はプロテインを作りながら、霧切のボディラインを見た。


    「いい、ボディラインだな……」

    「ありがとう……それなりに鍛えてるから。」


     確かに霧切は心なしかくびれていて肌も綺麗だ。腕の太さ、足の太さも申し分ない。女子の憧れる体型だ。

     更に霧切の筋肉は見るからにしなやかで、格闘家だけではなく、様々なスポーツでも通じるほどの筋肉の付き方をしている。

    「(超高校級の探偵と言われるだけのことはあるな……)」


     そう考えているうちにプロテインが出来たので、霧切に渡した。

     霧切はそのプロテインを一気に飲んだ。そして、ありがとうと言ってコップを返した。

     ふと、霧切は大神を見て何か気づいた。服があまり破れていない……


    「ところで、大神さんはそんなに苦戦しなかったのね……」

    「我は、最後の一瞬だけ気を上げてしまったからな……力を抜いていては勝ちきれなかった。」


     霧切はすぐに察した。大神さくらは超高校級の格闘家。常に全力で闘うのが礼儀である格闘技のチャンピオンは、気を抑えることになれていなかったのだ。


    「まぁ、仕方ないわ……」


     霧切にはそう言葉をかけるのがやっとだった。

     すると、霧切は続けて話し始めた。


    「それよりも、この調査は中止すべきね……」

    「なぜだ?」


     霧切からいきなり放たれた言葉に疑問を抱いた大神だったが、すかさず霧切が返す。


    「戦刃さんが来てからにしましょう!」

    「そうだな……」



     戦刃は勝っているだろうか。彼女は大神達よりも1人多い4人を相手にしている。

     そう心配していると、森の方から人影が現れた。
  34. 34 : : 2017/07/15(土) 14:32:02
     戦刃だ。勝ったのか!大神はすぐにプロテインを作って、戦刃に渡した。

     戦刃は喜んでプロテインをのんだ。

     しかし、大神はそれよりも驚いたことがある。


    「戦刃!おぬし、無傷なのか!?」


     そう、戦刃むくろは無傷だった。防弾チョッキですら、汚れてはいるが傷はついてない。


    「流石に今回ばかりは傷がつくかと思ったけどね!」


     戦刃も戦刃なりに苦戦していたらしい。すると、戦刃の目は霧切の方に向いた。


    「良い体……」


     そう言いながらほほえんだ戦刃は、霧切の胸や腹を触りだした。


    「ちょっ!?何してるの!?」


     流石の霧切もクールな表情を保てなかった。が、戦刃はしばらくやめなかった。そして……


    「うん!戦闘向けの筋肉だね!軍隊としてやれるよ!」

    「私は探偵よ!!」


     胸を揉みしだかれたあげく、職業を変えなさいって何?と言う表情で霧切は戦刃の顔を見た。


    「ハハ……ごめん、ジョークだよ!あ、戦闘向きのからだってことは本当だよ?あと、霧切さん……服……これ使って……」


     戦刃は霧切に防弾チョッキを渡した。霧切はその防弾チョッキを羽織ると、再び話し始めた。


    「今回の調査にはかなりのイレギュラーがあるから中止すべきだわ。」

    「そうだね!あらかたの任務はすんだしね!」

    「ならば、無線でヘリを呼ぶか……」


     大神がそういうと同時に、空から何かの音が聞こえた。


    「その必要はなさそうね……」


     空を見上げると、行きに乗ってきたヘリコプターが空から梯子を降ろして待っていた。

     大神達はヘリに乗り込み、学校の方へと帰って行った。
  35. 35 : : 2017/07/16(日) 11:27:35
     ヘリの中で霧切は学園長に怒っていた。


    「どういうこと?モノクマは動かないんじゃなかったの!?」

    「落ち着け!霧切!」


     大神さんが諭すも、霧切の怒りは止まらない。


    「しっかり説明してください!納得できません!」


     すると、学園長は口を開いた。


    「今回は我々も不測の事態だったんだ……その原因が、霧切……君の持っているチップだ!」


    「これのこと?」


     霧切はチップを出して、皆に見えるように見せた。


    「このチップがどうしたと言うんですか?」


     大神は疑問に思い聴いた。戦刃も言葉にしないが、学園長の方をジィーッと見ている。


    「不二咲から聴いたのだが、このチップはモノクマを自立的に動かすためのチップなんだ!」

    「なんと!」

    「つまりは、アルターエゴの干渉を受けないってこと?」


     霧切は学園長にきいたが、学園長は首を横に振った。


    「そう言うわけじゃ無い。簡単に言うと、インプットした仕事以外はしないように創られているんだ。おそらく、アルターエゴは彼らにこのエリアの防衛を頼んでいたのだろう。」

    「だから、私たちを襲ってきたのか。」


     戦刃の言葉に学園長は頷いた。そして、更に衝撃の言葉が学園長から伝わる。


    「今回は私も大神、戦刃とともに闘うことになった。」

    「え!?」


     全員が驚いた。総大将が前線に!?過去の闘いでも学園長がスタートから前線に立ったことはなかった。


    「大神、戦刃!私がでるからって緊張しないように君たちの組み手に私も参加させてもらおう!」

    「は……はい!」


     2人はもちろん、霧切も驚いていた。この危険な闘いに父もでるとは、それほどなのか……

     改めて、今回の敵の恐ろしさが分かった1日だった。
  36. 36 : : 2017/07/17(月) 10:25:40
     学校に帰ると、大神と戦刃は学園長と軽めの組み手をすることになったので、霧切は自室に戻った。

     何か引っかかる……探偵の勘なのか……

     よく分からないが、シャワーを浴びることにした。

     防弾チョッキを脱ぐ……霧切の澄んだ肌があらわになっていく……

     そして、霧切はシャワールームへと歩いて行く……

     体が熱くなっていたこと、出血していることを踏まえて、冷水でシャワーを浴びることにした。

     冷たい水が霧切の肌にあたる。その水が肩から胸の緩やかな角度に合わせて流れていく。

     水が肌を流れていく感覚……それは霧切が一番好きな感覚だ。自分の考えている雑念など全てが流れるからだ。

     シャワーが終わると、決まってすること、それは服を着る前にベッドに座りミネラルウォーターをのむ。

     そこまでのルーティーンがあるのが霧切だ……が、そのとき、


     ピーンポーン……


     チャイムが鳴った。霧切はタオルを体にまいた状態だったが、仕方なく、扉に手をかけて少し開けた。

     そこには1人の男が立っていた。


    「霧切さ……うわぁっ!?」


     ……苗木だ。
  37. 37 : : 2017/07/18(火) 16:26:24
    「ごごごごご……ごめん!出直す!」

    「いいわ……中に入って……」


     霧切はため息をついて、苗木を招き入れた。霧切の部屋は整っていて、捜査の資料と思われるファイルがずらりと並べられている以外は普通の部屋だった。

     苗木はベッドに腰かけた。


    「私は浴室で着替えるから……」


     下着や服を持って、霧切はシャワールームへと歩を進めた。

     苗木は部屋をキョロキョロしていると、浴室の扉が半開きになっていた。

     そこから霧切の着替える様子が見えないかと頑張っていたが、霧切がそれに気づいたのか、無情にも扉が閉まってしまった。


    「(というか、それどころじゃないんだけどな……)」


     苗木がそのように考えていると、霧切がシャワールームから出てきた。

     上着がなかったが、ほぼほぼいつもの格好だった。


    「それで?なんのよう?」

    「今日の1500からブリーフィングをしたいんだ!いけそう?」

    「えぇ……大丈夫よ……」


     そんなことのために来たのね……とため息をついていたら、苗木が話し始めた。


    「モノクマは強かった?」

    「気を抑えて闘ってたから強く感じたけど、全快ならそこまでだと思うわ……」


     苗木はメモをとっている。そして、何かを確信したようにほほえみながら、メモを閉じて、


    「ありがとう!それじゃぁ、ブリーフィングのときに!」


     と去って行った。1500までは時間がある……

     霧切はそのままベッドに倒れ込み、眠りについた……
  38. 38 : : 2017/07/20(木) 08:55:11
     一方、大神と戦刃は学園長と組み手をするために道場にいた。

     戦刃はいつものようにストレッチ、大神は精神を集中させるために座禅を組んでいる。

     そこに、学園長が現れた。大神と戦刃は起立をし、敬礼をした。


    「今日の組み手は2対1でやってみるか!君たちの実力を知りたいのでね!」


     ふつうなら、笑うところなのだろうが、大神達は逆であった。彼の発言が、おぞましく見えたのだ。

     霧切仁……全ての闘いにおいて敗北を知らない男……前回の絶望の残党との闘いでは、10万の兵隊を1人で倒したと言われている。

     さらには、その体の細さから想像もつかないほどのパワーと柔軟さが備わっている。いわゆる最強中の最強だ。


    「おれを、殺す気で来ないと勝てないぞ……」


     学園長が闘気を込める。だが、その闘気は大神達には感じない……

     戦刃は一歩たじろぎ、大神はその威圧から冷や汗をかいていた。


    「大神さん、私たちも全開で行くよ……」

    「あぁ……」

    「リミッター解除……出力……オーバードライブ!はぁぁぁぁぁぁ!!」


     戦刃が叫ぶと、戦刃のからだから闘気があふれ出した。そして、それが殺気に変わる。


    「これは、『野獣の闘気(ビースト・ソウル)』……素晴らしい!」


     野獣の闘気(ビースト・ソウル)……肉に飢えたけものが獲物を襲うために身にまとう闘気であり、いわゆる『野生』だ。

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
    戦刃
    野獣の闘気(ビースト・ソウル)

    使用したものの素早さ、攻撃力、スタミナが急上昇する。あまりに素早く、並の人間では肉眼で捉えきれない。
    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

     戦刃はフェンリルでの数多くの闘いで、この闘気を自分のものにした。


    「色即是空……我が闘気よ……その力を示せ!!大神さくら、推して参る!!」


     その号令とともに大神は闘気を爆発させた。それは、戦刃のそれに比べても段違いにスゴい。その闘気の量と質はすばらしいものだ。


    「ほう……これは、『破壊神の闘気(バーサーク・ソウル)』……これほどまでのものを見たのは初めてだ……」

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
    大神
    破壊神の闘気(バーサーク・ソウル)

    闘気の中では最強の部類に入る。その闘気の種類は108式まであるが、大抵は50式までしか習得できない。闘気習得難易度が最も高い3つのうちの1つ。攻撃力、素早さ、防御力が上がる。
    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

    「さぁ、いくよ!」


     いま、最強の組み手のゴングが鳴った!
  39. 39 : : 2017/07/21(金) 12:06:03
     まずは、2人同時に学園長に突っ込んだ!そのスピードは速すぎて見えない。

     そのスピードのまま、戦刃は立体的に動いた。空間戦術だ。

     一方大神は学園長に対しパンチを放っているところだった。

     しかし、学園長に受け流され、首にけりを浴びせられる。

     その時、一瞬だけ学園長に隙が出来た。その隙は軍人は見逃さない。一気に畳みかける。

     いくら学園長といえども、ラッシュの最中に体勢を立て直すことは不可能だ。そして、後ろから近づく仁王(大神)の存在に気づかなかった。

     大神さくらの渾身の拳が学園長にヒットする。それがヒットしたのを確認したら、戦刃はすぐに飛び退いた。そして、大神はそのまま腕を振り抜いた。

     ドゴォォン!

     けたたましい轟音の後に、土煙が舞った。ゆらゆらと揺れる土煙……


    「やったか……?」


     手応えはあった。おそらく、気絶ぐらいはしているだろう……


    しかし……


     ゆらゆら揺れる黒い影は……





























     直立していた……
  40. 40 : : 2017/07/26(水) 21:55:39
    「それが君たちの本気かね?」


     そこには、体に傷一つない学園長がいた。




     傷一つ……ない?




     大神達は青ざめていた。あの攻撃は大神、戦刃の中で最高のコンビネーションアタックだった。

     その攻撃がまったくもって通用していない。大神は分析した。


    「(あれほどの重い攻撃や、急所を的確に突いた攻撃がまったく効いてない……)」

    「(そして、学園長の服はあのYシャツのみ……)」


     大神は目を見開いた。まさか……あの闘気を……


    「学園長……まさか、あなたの闘気は……」

    「そう……俺の闘気は『絶対防御(パーフェクト・ガーディアン)』だよ!」

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
    学園長
    絶対防御(パーフェクト・ガーディアン)

    鉄骨顔負けの防御力を誇る。攻撃と防御が最大限に活かせるもののみが得ることのできる高難易度の闘気。
    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


     学園長は称賛の拍手を送った。その顔は笑顔だった。


    「ただ、防御と思って嘗めるなよ……」


     すると学園長は構え、戦刃むかって突っ込んだ。振り下ろされる拳を戦刃は避けきれなかった。直撃して10m先の壁に体がめり込まれた。


    「俺の闘気は『絶対防御(パーフェクト・ガーディアン)』のなかでも、最高の能力……『復讐の闘気(アヴェンジャー・ソウル)』!」


     大神は驚いていた。あの伝説の闘気を身につけていたとは……

     部隊を丸々一つ壊滅させた実力はだてじゃないと言うことか……


    「ということで、大神!組み手の続きだ!」

    「なら、我も本気で行かせてもらおう。」


     気合いを入れた。闘気のリミッターを外し……


    「108式!『阿修羅』!」


     大神の周りに闘気が集まる。それは闘気の渦を描き大神の体を覆った。



    「行くぞ!」


     第2Rのゴングが鳴った!
  41. 41 : : 2017/07/30(日) 14:58:52
     学園長は大神の闘気の圧に押されていた。


    「(破壊神のその先……阿修羅まで極めたか……こりゃ……少しキツいかもな……)」


     そう考えて前を見ると大神の姿はそこにはなかった。そして……声が聞こえる……


    「どこを見ている?」


     ハッと後ろを見ると、大神の腕が既に振り下ろされていた。首に直撃し、壁まで吹っ飛ぶ……


    「っつ……」


     首に激痛が走った……かろうじて闘気で防御したが、ガードが間に合わなかった。

     学園長が立ち上がろうとしたとき、今度は腹部に激痛が走った。大神の足が腹にめり込んでいた。こちらも防御が間に合わない……

     そのまま上に吹っ飛ぶ。もうすぐ天井というところで(大神)の顔が現れた……そのまま、両腕が腰にぶつかる。そのまま学園長は地面にめり込んだ。

     大神は闘気を解除して、倒れている学園長を見た。すると、学園長はフラフラと立ち上がった。そして、両手を挙げた。


    「ギブだ……これ以上は体に応える……」

    「すみません……お怪我は……」


     大神はすぐに駆け寄った。戦刃も気づいたようで、駆け寄る。


    「大丈夫だ……問題ない……それより戦刃……なぜ手出しをしない?」


     そう……この闘いの間戦刃はまったく動いていなかった。大神の戦闘を眺めているようだった。


    「我の指示です。我が100%でやるときは我と同じ敵を狙うなと言ってありますので……」


     学園長はなるほどという表情をして少し考えてこう助言した。


    「お互いがしっかりコンビネーションをとっているときの力ははっきりいって弱い。おそらく、10秒で最大3体のモノクマしか倒せない。しかし、君たちの最大限の力でコンビネーションアタックが出来れば、10秒で10体のモノクマを倒せるようになる。」


     戦刃と大神は顔を見合わせた。お互いのマックスパワーでの連携……それは『未知の領域』……

     ただ、チャレンジする価値はある。


    「学園長……組み手の相手をお願いしても?」

    「元々そのつもりだ……が、俺が相手だと体が保たないから場所を変えよう……」


     すると、学園長は歩き始めた。2人はついていく。


    「おっと……食堂に寄ろうか……ティータイムだ。」


     3人は食堂で30分ほど休憩した後、研究棟にむかった。
  42. 42 : : 2017/08/14(月) 10:56:08
     十神達は体育館で4人でのバトルロワイヤルをしていた。

     体育館に銃声が鳴り響く。銃を使っているのは十神だ。

     ハンドガン二丁で闘っている。だが、ハンドガンだと弾数の関係で、あまり長時間の闘いは難しい。

     それを知っていた朝日奈が、十神に対してタガーナイフで一気に攻め立てる。朝日奈の得意技は相手の体を利用して闘う戦闘方法だ。今回も十神を利用しながら闘っている。


    「十神!逃げてばっかじゃ勝てないよ!!」

    「ふん!計算しているんだ!逃げているわけじゃない!!」


     その言葉と同時に十神の蹴りが朝日奈にヒットした。

     朝日奈は急所を外すことには成功したが、体は後に吹っ飛んだ。

     それを見た葉隠が突っ込んでくる。しかし、十神には勝ちしか見えなかった。葉隠は今まで戦闘に関しては素手で行っていた。その戦い方はまるで喧嘩だった。


    「(フン……プランクトン並みの力しかないということか……ならば……)」


     十神は銃をしまいボクサーのように構えた。どうやらカウンター狙いということだ。

     だが、それを見た葉隠はにやりとほほえんだ。


    「十神っち、俺を嘗めてんだろ!」 

    「嘗めてないさ……嘗めて欲しくなかったら全力で潰しにこい!」

    「そうさしてもらうべ……」


     そういうと、葉隠はさらに相手を威嚇するために叫んだ。


    「みてろ、十神っち……いや、十神!これが俺の戦い方だべ!!」
  43. 43 : : 2017/08/14(月) 22:30:17
     すると、葉隠は腕をクロスさせて、手のひらを体側に持ってきた。

     十神はそれに気づき、バク転をした。しかし葉隠の手が動くことはない。


    「(どういうことだ!何を考えているんだ……)」


     十神との距離が10mぐらいになった。十神の手が地面につこうとする。


    「(いまだべ……)」


     そうすると、十神の手のひらにめがけてパチンコ玉を投げ飛ばした。空中にいる十神は対応できず、そのままパチンコ玉の影響でバランスを崩しこける。


    「……つぅ…………」


     痛みに気づいた十神が手のひらを見るとパチンコ玉の痕がクッキリついていた。手を握るのも痛いぐらいだ……

     しかし、葉隠は手を緩めない。すぐさま、日本刀と小太刀を両手に持った。どちらも模擬刀だが、もちろん十神も見たことのない戦法だった。


    「(小太刀二刀流だと!?)」


     葉隠はまず、日本刀を振りにいった。十神がそれをギリギリで交わす。しかし……


    「なに!?」


     十神の逃げた先に葉隠が立っていた。十神は勿論対応できない!そして、葉隠は全力で十神の心臓に向けて小太刀を振り下ろした。





































     そして、十神の心臓の前で模擬刀が止まる。

     
    「十神っちの負けだべ!」


     十神が敗北を知った初めての瞬間だった。
  44. 44 : : 2017/08/15(火) 15:59:25
     葉隠は十神に向けた小太刀を十神からひいた。そして、朝日奈の元へ駆け寄りアドバイスを送ろうとした。しかし、十神は納得してないようで、葉隠を呼び止めた。


    「おい!葉隠!貴様闘気を使っただろ!!」

    「使ってないベ!使ってたら瞬殺だったベ……いや、マジで……十神っちは自分のことしか見えてないんだべ!周りが見えてないからやられるんだべ!」


     そう告げると葉隠は朝日奈の元へ行き、アドバイスをした。朝日奈は真面目に聞いていた。そこはやはりアスリートだからか、周りの声をしっかりと聴いていた。

     十神は少し気になっていることがあった。

     今回の組み手では闘気を全員使わないという約束の下行われていた。普通なら自分は葉隠に倒されることはないと考えていた。

     しかし今現在、自分は葉隠に倒されていた。それに、葉隠の身体能力は訓練で見るものより明らかに高かった。

     これが、葉隠の基礎能力とでも言うのか……

     十神はあっけにとられていた。そこに特に何もしていなかった腐川……いや、ジェノサイダーが十神の元に来た。


    「ゲラゲラゲラゲラ……やられてやんの!!」

    「うるさい!」


     ジェノサイダーが悪態をついたが、十神は一言口から吐き出してその場に立ち上がり、もう一度1対3の闘いを申し込む。この闘いは夕方まで続いた。
  45. 45 : : 2017/08/19(土) 17:52:22
     十神たちが組み手をしているとき、石丸達が夕方から夕食時まで体育館を借りていたために、体育館前に集まっていた。


    「そろそろ時間だな。」


     そういうと、扉を開き中にいた十神に交替を要求した。十神はタオルを首に掛けてドリンクを口にしている最中だった。

     石丸の声を聴いた十神は、


    「……ブリーフィングだ」


     という言葉を残しその場から去った。それに朝日奈達もついてでていった。すると、大和田が葉隠の異変に気づいた。


    「おい、葉隠!髪型変えたか?」


     大和田の声を聴いた聞いた葉隠は彼の顔を見て、


    「おう!本気出すには少し邪魔な髪なんだべ……だから、くくった!」


     そういうと、急いで体育館を後にする。大和田は葉隠のことを気にしながら、石丸のところに歩んでいった。


    「よし!今から組み手だ!ボクは山田くんと組み手をするから、セレスくんは兄弟と頼む!」

    「はぁ!?なんで、俺が女と組み手なんか……!」


     大和田はすぐにくってかかった。それもそうだ。大和田は女子に手をあげることに関してかなりのプライドを持っている。しかし、石丸の狙いはそこだった。


    「戦場では何が起こるか分からない!女性に手を上げることも起こるかも知れないんだ!」

    「け……けどよぉ……」


     だからといって女子に手を上げるのは……とセレスの方を見ると、セレスは微笑みながら大和田に告げた。


    「私はよろしくてよ!あなたのお相手をさせていただいても……」


     戦闘には似合わないゴスロリの衣装を身にまといながらセレスは大和田に告げた。


    「なら……やるしかねぇか……」


     大和田はセレスに対して戦闘の構えをとった。その構えに対して、セレスも構えはとっていないが大和田に対して目で合図をした。


    「よし!ボクたちもやろうではないか!」

    「やらせて頂きますぞ!」


     石丸達も構える。最後に石丸から注意事項が話された。


    「いいか!闘気の使用は禁止だ!!あくまで組み手!怪我をさせる前にやめるのだぞ!」

    「わかってらぁ!」

    「かしこまりました。」

    「拙者はいつでもいいですぞ!」


     4人は臨戦態勢になった。そして、石丸から号令がかかる。


    「よし!始めだ!!」


     その声を聴いたと同時に4人が一斉に体育館のフロアを力強く蹴った。
  46. 46 : : 2017/08/20(日) 16:14:29
     石丸は山田との距離を詰めている最中だった。それは、山田の絶対的弱点を知っていたからだ。


    「(山田くんはトラップ戦闘が得意だが、近接戦は苦手なはずだ。)」


     そう考えながら必死に前に詰めた。山田との距離がゼロになり、石丸の連撃が始まる。

     拳を2・3発相手に打ち込む。それをよんでいたのか、山田は頭の前に腕でクロスをつくり、それを受ける。

     それから、山田はカウンターをしようと体をひねった。そして、石丸の首元に裏拳を決める。


    「チェストーー!!」


     山田の声が体育館に響く。石丸はあまりの一撃の重さに、視界がよろけてしまった。両者お互いを見つめる。


    「近接戦の苦手を克服していたのだな。」

    「拙者を嘗めないでくれますかな。石丸清多夏殿。」


     石丸はなら、自分の本気の戦い方をしようと心に決め、石丸は指に擬似クナイをしこんだ。


    「なるほど、遠距離戦ですか……」


     山田は石丸を見つけると、指の間に小さな玉を挟んだ。それを地面に投げる。


    モクモクモク……


     と煙幕が2人を包んだ。


    「(っく……動けない……)」


     石丸は擬似クナイをしまい、短刀に持ち替えた。石丸は耳を澄ませた。













    ……ガサッ


    「後ろか!?」



















     石丸は叫び声を上げ自分の背後に斬りかかったが、そこにあったのは木でできた人形だった。

     石丸はあっけにとられていると、首筋にひんやりとした感覚があった。


    「ジ・エンドですな……」


     後ろを振り返ると日本刀が首筋にあった。山田がいつの間にか背後をとっていたのだ。石丸は冷や汗をかいた。すると、あきらめがついたのか短刀をしまい、


    「……降参だ」


     と両手を挙げて降参した。それを見て山田は日本刀を引っ込めた。


    「やはり、僕は闘気がないと闘えないよ……」


     石丸はそうつぶやいた。そして、


    「山田くん!向こうは長引きそうだからもう一戦頼むよ!」

    「了解ですぞ!」


     もう一度組み手を申し込んだ。
  47. 47 : : 2017/08/20(日) 16:35:43
     他のみんなが地面を前方向に蹴ったのに対して大和田は右方向に蹴り出した。

     勢いよく突っ込んでいたセレスは目標を失い立ち止まった。


    「(はて?どこに行ったのでしょう……)」


     セレスがキョロキョロと辺りを見渡していると、急に後ろから殺気が漂ってきたのを感じた。それと同時に、


    「ここだ!!」


     と大和田が叫び、手に持ったパイプ椅子をなぎ払った。そのなぎ払ったパイプ椅子がセレスのみぞおちめがけてクリーンヒットする。セレスは5m程吹っ飛び、四つん這いになった。


    「……ッ……ガハァ…………こ……殺す気…………か……テメェ…………」


     あまりの衝撃的なできごとにセレスの口調も荒れた。しかし、それを見て大和田が近づいてきて、セレスを見下ろした。


    「悪ぃなぁ……勝負には負けられねぇんだわ……あぁ、心配すんな……闘気はまったく使ってねぇからよ!!」


     大和田はそう言い終わると、セレスの腹めがけて蹴りを打ち込んだ。

     セレスは体育館内を5mほど転がり起きあがった。みぞおちの痛みはひいたようだ。


    「(不覚ですわ……大和田くんの力がこれほどまでとは……私も本気を出さざるを得ませんね。)」


     セレスはそう言うと、大和田目がけて突っ込んだ。


    「へ!懲りずに来るかよ!!」


     また、大和田は地面を横に蹴り、セレスの後ろに回り込む……はずだった。

     セレスは大和田が右に跳んだときに足を止めたが、そのままゆっくりと歩き始めた。


    1歩……2歩……3歩……


    「おい!観念したのか!この(アマ)ァ!」


     その言葉とともに大和田がセレスにむかってパイプ椅子をなぎ払おうとしたその時、


    「チェック……」


     セレスが一言言い放つ。そのとき、地面が爆発した。


    「のわぁぁ!!」


     大和田は後ろに吹っ飛んで壁に背中をぶつけた。何が起こったのか。セレスの周りを遠目から分析する。すると、プラスチック片が辺りに落ちていることに気づいた。


    「プラスチック爆弾か……物騒な(アマ)だなぁ!!」


     大和田はセレスの方を向いて吠えた。すると、セレスは大和田の方にほほえみかけて答える。


    「大丈夫ですわよ……模擬戦用ですので死にはしません。」


     そう告げるセレスの顔はまさに勝利を確信した女の顔だった。大和田はそういう顔のやつをひれ伏せさせるのが非常に好きな性格だ。


    「面白ぇ……最高だ!!」


     そういうと、また地面を蹴りセレスへと突っ込むのであった。
  48. 48 : : 2017/08/26(土) 14:02:30
    「そこまでだ!!」


     その声とともに、大和田とセレスの動きが止まった。声の主は石丸だ。


    「なんでとめんだ!兄弟だからといって許さねぇぞ!!」

    「本当空気を読みませんわね……」


     2人は石丸を責め立てたが、石丸はぶれない。


    「これ以上やったら君たちは怪我をしてしまうだろう。」

    「そうですぞ!パイプ椅子とプラスチック爆弾は怪我の元ですぞ!」


     2人に話をされて、要約落ち着いた様子の2人だった。その後ドリンクを飲み、今度はバトルロワイヤル形式での闘いになった。

     大和田とセレスはパイプ椅子とプラスチック爆弾を使わずに闘った。そして、4人はお互いにしっかりとアドバイスを送った。
     
     そして、この組み手でお互いのスキルを熟知することができた石丸は作戦を告げる。

     といっても、作戦は1つだけ……全力戦闘だ。

     そして、最後にこう告げる。


    「全員で生きて戻るぞ!!」


     その声とともに、4人は少し早めの夕食を食べるために食堂へと向かった。
  49. 49 : : 2017/08/26(土) 14:18:05
     夕食後、苗木達が体育館へと向かっていた。

     1500から始まったブリーフィングの時、みんなへ苗木から話があるといってつげられた言葉。それに霧切は驚いた。


    「みんなに3対1での闘いを申し込むよ。」


     その言葉を聞いて一番最初に反応したのは舞園だ。


    「そんな!無茶ですよ!!苗木くんの戦闘力では……」


     舞園がそういいかけたとき、苗木は叫んだ。


    「だからやるんだよ!僕だけ足手まといになりたくないんだ!!」


     その言葉を聞いてか、桑田が発言した。


    「いいぜ!やろうや!その決意……へし折ってやる。」


     そう言うと、桑田は部屋を出た。体育館での闘気を交えた闘い。それをやるのは初めてだ。

     なお、この体育館の壁は学園長が闘気を使っても壊れないぐらい強く作られている。だが、苗木の体が保たない可能性もあった。

     霧切と舞園も準備のために部屋を出た。ここで死ぬわけにはいかない。苗木はそう心に誓い、ベッドに横になり目を閉じた。


     そして、今苗木は体育館にいる。戦闘準備が整った仲間達はウォーミングアップに余念がない。

     舞園は銃身とドットサイトのチェック。桑田は肩のストレッチと素振り。霧切は体操をしていた。

     みんな本気だ。苗木は闘気を解放するために気を高めていた。

     そして、気を高め終わった瞬間、みんなの元に歩み寄った。それに気づいた全員は動きを止めて苗木の顔を見た。


    「よし、やろう!」
  50. 50 : : 2017/09/17(日) 13:13:25
     彼らはそれぞれの布陣に並んだ。桑田・霧切・舞園は、前衛に霧切、後衛に桑田と舞園が配置された。桑田のとなりにはスクーターがおいてあったが、中のボールは模擬戦用である。

     一方、苗木は霧切と対する形で立ち、獲物はない。霧切は小銃、舞園はマイク、桑田はバットを持ってるのに対して、苗木にはそれがない。


    「どういうこと?なんで獲物がないの?」


     霧切は苗木にきいた。そして苗木は笑顔になり答える。


    「それがボクの闘いかだからね……」

    「……なめられたものね」


     霧切はそう言うと闘気を爆発させた。霧切の闘気は『密偵(スパイ・オペレーション)』である。

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
    霧切
    密偵(スパイ・オペレーション)

    相手に気づかれることなく全ての行動をとることができる。素早さが上がるが、その代償として防御力が下がる。
    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

     すると、苗木はにやりと笑った。


    「(そうくるとおもったよ……そして……)」

    「ボクの後ろに来ることもね!!」


     苗木はすぐさま後ろを振り向き霧切のみぞおちに拳を入れた。霧切は後ろに吹っ飛び、体育館の壁に背中を打ち付けた。


    「後ろがお留守だぜ……」


     そうつぶやく人物がいた。桑田だ。大きく振りかぶり、闘気をボールに込めた。


    「いくぜ!『野球の神様(ベースボール・オブ・ゴッド)』!!」

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
    桑田
    野球の神様(ベースボール・オブ・ゴッド)

    投げるもの全てが砲丸の重さになる。バッドを振るとその衝撃波で相手を広範囲で吹っ飛ばすことができる。なお、放たれる気弾や砲弾の速度はプレイヤースキルに準じる。
    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

     すると、160km超えの弾丸が苗木の元に飛んできた。


    「ボクがわかってないとでも?」


     苗木はすぐにかがんだ。その先にいたのは……







































    霧切だ。
























    「霧切!あぶねぇ!!」


     桑田がそう叫んだのと同時に、霧切の腹に桑田の投げたボールが食い込んだ。


    「……カハァ…………」


     霧切はその場に完全に倒れてしまった。桑田は青ざめていた。マイクを持った舞園の手も震えていた。


    「うん……これなら闘えそうだね……」


     苗木はそう言うと、組み手を終わろうと声をかけて霧切を体育館の隅に運ぼうとした。


    「触らないで!!」


     叫んだのは舞園だった。あまりの声量に苗木の動きは止まった。


    「まだ、私達がいる。私の歌をきけぇぇぇ!!」


     すると、舞園は歌い出した。これは、舞園の闘気の『天使の歌声(エンジェルボイス)』である。

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
    舞園
    天使の歌声(エンジェルボイス)

    この歌を聴くと、味方はテンションが上がる。そして、その歌声は癒やしの効果もあり体力も回復する。広範囲の味方に有効である。デメリットは敵に対する攻撃の闘気ではないため、いわゆる支援戦闘という形になる。
    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

     すると、桑田も元気を取り戻し、バットを構えた。そして、なんと霧切も立ち上がる。


    「死ぬかと思ったわ……」


     そう言葉を残し、また闘気を爆発させる。そして、苗木も構えた。


    「ボクの『絶対幸運(ラッキー・ボーイ)』の力を試す絶好の機会だね……」


     と更に気合いを込めた。
    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
    苗木

    絶対幸運(ラッキー・ボーイ)

    苗木の統率力がかなり上がり、相手の弱点、攻撃手順などが見えるようになる。なお、自分の攻撃力も上がる代わりに防御は激減する。
    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
  51. 51 : : 2017/09/19(火) 23:33:14
     苗木は分析をしていた。というより攻撃手順を見ていた。


    「(まずは桑田くんがバットをなぎ払う……)」


     桑田は既にバットを振りかぶっていた。桑田の遠距離範囲攻撃である。


    「(しゃがむタイミングは三秒後……)」


    ……3……2……1


    「(今だ!!)」


     しゃがんだ苗木の上を空気の塊が飛ぶ。すると、舞園がほほえんだ。


    「そこは私の罠ですよ!!」


     舞園はマイクスタンドを地面に押さえつけると、苗木の体を地面に貼り付けた。

     しかし、これも苗木は読んでいた。


    「(確かにこれなら僕は動けない……だが……)」


     苗木は体を左右に大きく動かした。するとなぜか舞園も左右に大きく揺れていた。


    「ちょっ……ちょっとまって!!」


     舞園は慌てた様子でマイクスタンドを両手で押さえつけた。すると苗木はほほえんだ。


    「やはり舞園さんのその能力は僕の動きに比例するんだな!!」


     苗木はそう言うとさらに大きく揺れた。すると舞園は横に倒れてしまった。


    「(これで動ける!)」


     そう思っていた苗木はあることを忘れていた。そう……それは……


    「チェックメイトね……苗木くん!」


     霧切の存在だった。苗木は首をもたれていた。これも苗木の悪い癖……

     苗木の能力は全体が見える能力なのだが、一点に集中すると周りが見えなくなってしまい予測ができなくなってしまう。

     霧切に首をもたれてナイフを突きつけられた苗木は降参した。


    「みんなありがとう!これで十分だ。」


     そう言うと苗木はベンチにおいてあったスポーツドリンクを口にした。


    「しかし苗木、お前よく1人で耐えれたよな?」

    「僕だって訓練は積んでるからね……」


     桑田の話に答えた苗木だが、正直疲れていた。なので、今日はもう練習を終わり部屋で寝ることを提案した。

     みんな賛成して、体育館を出る。

     来るべき闘いに備えて戦士達は床についた。
  52. 52 : : 2017/10/11(水) 00:17:08
     そして、時が過ぎ……決戦当日を迎えた。それぞれ戦士達は準備に取りかかる。

     戦刃、大神の2人は学園長と最後の調整に入っていた。


    「2人の力は十分に上がった。最後に一つだけ話をしておこう。」


     学園長の話をしっかりと聞く大神と戦刃だったが、2人とも途中から気づいた。


    「すみません……学園長……」

    「なんだね?」


     大神が学園長の話を遮った。本来ならば上官の話を遮るのは御法度なのだが、この学園長はその考えはないということが救いだ。

     それを確認した大神はゆっくりと口を開く……


    「もしかして……」

    「おっと……そこまでだ!」


     今度は学園長が大神の作戦を遮った。この作戦には相当のリスクがかかる。


    「俺は……戦場で死ぬ覚悟はできている。君たちにはこの覚悟を持つのは早すぎる。」


     そう彼はほほえむと、ゆっくりと歩き出した。


    「ブリーフィングだ!2人ともブリーフィングルームに来るように!」


     そう告げると早足で部屋を後にした。その学園長の背中を2人はじっと見つめた。


    「……覚悟か…………」


     大神は天を仰いだ。そして思う。


    「(その覚悟を持たねば今回の敵には勝てぬのか……)」

    「私は覚悟できてるから問題ない……あとは大神さんの覚悟だけ……」


     そう言うと戦刃はブリーフィングルームに向けて歩き始めた。大神は少し考え事をしてから戦刃の後を小走りで追いかけた 
  53. 53 : : 2017/10/22(日) 12:00:38
     最後の全体ブリーフィング……

     部屋には全員が揃っていた。それぞれが自分に合った軍服を着ている。もちろん靴は特製の軍靴だ。軍服の方は、長袖長ズボンであるが、服が違うのも何人かいる。

     葉隠、大和田、セレス、大神、不二咲の5人だ。

     まずは葉隠の服装だが、服装が違うと言うよりは、長袖の軍服を肩に羽織り、足にはいつものサンダルを履いていた。軍靴を履くのは割に合わないらしい。

     大和田の服は特攻服のような形になっている。背中には学生服に刻まれていた紋章つきだ。軍靴にも他の人達と作りは違い、軍靴の先に鉄板が入っていた。

     セレスは軍服と言うより見た目はいつものゴスロリ衣装と変わらない。普段の衣装で闘えるように軍服性能がついた服になっている。

     大神は上半身は軍服だが、下半身はいつものミニスカートをはいていた。彼女はその方が動きやすいと常にそうしてきたらしい。

     不二咲はパソコンをいじりやすくするために、ノースリーブ型の軍服を着ていた。後、彼は今回の作戦司令もかねているため司令官しか被ることのできない帽子を被っていた。

     場に緊張が走る。武器を手入れする戦刃と大神。瞑想する石丸。トラップを早く作るためか知恵の輪をしている山田。

     全員がそれぞれの時間を過ごしていると、学園長が入ってきた。そして、演台へと立ち、話し始める。演台に立った瞬間その場にいた全員は気配に気づき立ち上がった。


    「よし……これから最後の闘いが始まる。モノクマの動きを止め、発生源の拠点をたたきつぶす。これが任務だ。ただ、今回モノクマは全ての島に彼らを放っているらしい。そのため、チームDにも協力してもらうことになった。」


     どうやら彼らは先に出撃しているらしく、チームHが抑えられないところを制圧しているらしい……


    「さて、それでは我々の配置を今回の作戦司令から発表してもらおうか……」

    「イエスサー!」


     不二咲は力強く返事をすると、司令台の前にたって話し始めた。


    「え~と……それでは、配置を言うね……」


     いつもの通りの話し口調に戻った不二咲をみて全員は何だかホッとした。

     不二咲は話を続けた。


    「まず、一の島から三の島まではチームDに既に行ってもらってるんだ……そして、これから言う配置について欲しいんだけど……」


     ブリーフィングルームの空気が引き締まる。その空気に不二咲がのまれかけていた。その後の言葉が出ない。

     すると、親友から助け船がでた。


    「おい!飲まれてんじゃねぇよ!総司令官!」


     そう言うと大和田からぶたれる。不二咲は頬を抑えながら大和田を見た。そして、大和田をはたき返す。

     その光景を見た全員が驚いた。しかし、大和田だけは笑っていた。


    「緊張解けたかよ……総司令!」

    「うん!ありがとう!」


     するとその光景を見た学園長は不二咲に話しかけた。


    「不二咲くん!びしっと頼むよ!私がいつもやってるように名前を呼べばいい!」


     すると、それに乗って桑田や葉隠がはやし立てる。


    「もうこの際、君とかさんとかなしでいいぜ!フルネームでバシッと言ってくれ!!」

    「そうだべ!その方が全員身が入るベ!全員!不二咲司令に敬礼だべ!!」


     葉隠の言葉で全員が敬礼した。十神もセレスも学園長もみんなが彼に敬礼した。

     それを見た不二咲は涙をこらえながら敬礼を返し、降ろすように促した。そして彼の口から作戦(オペレーション)が発表された。

  54. 54 : : 2017/11/15(水) 22:24:39
    長らく放置いたしまして申し訳ありませんm(_ _)mこの話はゆっくり書きたいので、日曜から編集再開しますm(_ _)m(見てる人はいるのだろうか……)
  55. 55 : : 2017/11/19(日) 11:35:21
    「今回の作戦『ジ・ホープ』はこの世界に希望をもたらすために立てた作戦なんだ。かなり危険な作戦になるかもしれない……ボクに命を預けてくれるかな?」


     不二咲がみんなに言うと、全員が心臓に拳を当てた。それを確認すると不二咲は小さく頷き、


    「それでは配置を伝えます。」


     と前を見た。


    「チームA!苗木誠、霧切響子、舞園さやか、桑田怜恩の4人は、中央の島南部、ポイント1800~1900をお願いします!」

    「イエスサー!!不二咲司令!我がチームの霧切響子を先遣隊として派遣してもよろしいでしょうか!!」

    「許可します!」


     苗木と不二咲のやりとりを聴いた霧切は頷くとブリーフィングルームを後にした。


    「次に、チームB、十神白夜、朝日奈葵、葉隠康比呂、腐川冬子の4名は第4の島全域をお願いします!」

    「イエスサー!ならばここは先遣隊は俺がやろう……必要だろう……」

    「まって!十神くんに行かせるわけにはいかない!腐川さん、お願い!」

    「え?それって、まだ殺ちゃだめなの?」

    「うん!情報を集めることに専念して!」

    「チッ……なら、根暗に戻っとくか……」


     そういうと、ジェノサイダーは腐川に戻り、不二咲から改めて説明を聞いた後、ブリーフィングルームを後にした。


    「そして、チームC、石丸清多夏、安広多恵子、大和田紋土、山田一二三の4名は第5の島全域をお願いします。」

    「イエスサー!それでは、先遣隊は山田くんにお願いしようか……」

    「え?ぼくですか?」


     山田は唐突の石丸の発言に驚いていた。しかし、これも石丸の策だ。


    「山田くん、先に向かってトラップをしかけて欲しい。島全域だから大変だと思うが、これは君にしかできない。」

    「なるほど……」

    「それと、罠をはったら例の結界を頼む。」

    「了解しましたぞ!」


     そう言うと山田は出発した。不二咲はそれを見送るとオーダーをつづけた。


    「特別部隊、霧切仁、大神さくら、戦刃むくろは中央の島の中部から北部、特に999999(シックスナイン)を中心にお願いします!」

    「わかった。先遣隊の役目は響子に頼んでいる。私らは出発時間に出発させて貰おう。」

    「作戦司令室は不二咲千尋、江ノ島盾子で行います。どんな状況になるかわからないけど、こちらでおこったことはこちらで処理するよ……そして……ここにいる全員の闘気の使用を認めます。」

    「イエスサー!」


     全ての作戦を伝え終えると学園長が前に立ち、作戦の時間を伝えた。


    「作戦決行は一時間後、ヘリポート集合だ!それまで準備をしておきなさい!」

    「イエスサー!」


     その声とともに全員部屋を出た。そして、それを確認した不二咲江ノ島が学園長を呼び止めた。
  56. 56 : : 2017/11/21(火) 17:05:11
    「どうしたんだ2人とも……それよりも、私が伝えていたオーダーとは少し違うみたいだが?」

    「そんなもん、変えようが変えまいがこっちの権限でしょ?いまさら、何言ってんの?」

    「ちょっと……江ノ島さん!」

    「ハハ……確かにそうだ……それで、用はなんだ?」


     学園長は不思議そうに2人の顔を見た。そして、江ノ島がゆっくりと話し始めた。


    「この施設に裏切り者がいるんだよ……」

    「裏切り者だと!?」


     学園長は目を丸くした。それはどういう意味なのか、学園長ですらわかっていなかった。そして不二咲は証拠の品を渡した。


    「これが証拠です……」


     不二咲が渡したのは一枚の書類だった。管理パソコンに入っていたものを印刷してきたらしい。

     そこに書かれていたのは今日行われる作戦の書類である。それに、名前を見ると……


    「江ノ島……盾子……?」

    「ところがどっこい……それが違うんだなぁ」

    「それはボクが証人です。つまりこれは……なりすまし……そして、そのなりすました人物は恐らく……」

    「カムクライズルだね!」


     その名前を聞いた瞬間学園長は驚いた表情を見せた。


    「まて!それは日向くんから切り離したはずだろ!?」

    「確かに切り離したよ!データチップに入れて廃棄するように頼んだんだけど、ここ何日も保管されっぱなしだったんです。」

    「しかし、それがつい最近盗まれてしまったわけですね……」

    「……ということは……」

    「そう……こちらの戦闘力も丸わかり……だからオーダーを変えたのです。」


     江ノ島は眼鏡をくいっとあげて話を終えた。それで納得した学園長は気をつけろとだけ言い残して部屋を後にした。
  57. 57 : : 2018/02/17(土) 23:24:21
    「それで……これからどうするの?」


     不二咲は江ノ島にそっと耳打ちした。それを受けて江ノ島は不二咲に耳打ちで返した。


    「おそらく、この施設の中に絶望の残党が紛れている気がする……」

    「身体検査する?」

    「バカ?怪しまれるだろ!」


     江ノ島はそう言うと不二咲の頭を小突いた。そして不二咲に耳打ちした。


    「いったん泳がせて、ボロが出るのをまつ。」

    「もしでたら?」

    「私たちで止めれるでしょ?」


     不二咲は静かに頷いてパソコンの席に腰掛けた。

     パソコンのレーダーを確認した不二咲は全員のヘリが順調に現場にむかっているのを見てホッとした。


    「まだ攻撃はしてこないのか……」

    「あいつら、意外と時間に厳しいのです」


     現場にヘリが着くとそこからゾクゾクとひとが降りてきて準備が始まった。
  58. 58 : : 2018/03/27(火) 17:04:19
     島に降り立った全員が身の毛もよだつ思いがしていた。




     この島で何かが起こるかもしれない……




     全員の命を懸けた……




     戦いの幕が切って落とされた。
  59. 59 : : 2018/03/27(火) 17:09:24
    最後まで読んでいただき、ありがとうございました( *´艸`)このストーリーはこれから先頭のほうへと進んでいきます(´っ・ω・)っ

    宣戦布告をしてきたモノクマと彼らを取り巻く謎の人物たち……真の正義はどちらなのか……身の毛もよだつ楽しさです( *´艸`)

    とここで告知です……皆さんの作ったオリキャラをここに登場させたいと思います(´っ・ω・)っ事前に作ったキャラやお借りしたキャラなどもあるので、そのキャラの人数が把握したら、僕のグループで募集をかけたいと思うので、その時はよろしくです( *´艸`)

    それではみなさん、また次回の作品でお会いしましょう(´っ・ω・)っ

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