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最原「春川魔姫は殺せない」

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  1. 1 : : 2017/07/07(金) 21:31:27

    七夕ネタです(なお七夕中に終わるとは言ってません。

    最原×春川、所謂最春です。苦手な方はご注意を。

    時系列は本編終了後。
    即ち、ニューダンガンロンパV3のネタバレが多数含まれます。
    ご注意の程……よろしくお願い申し上げます。
  2. 2 : : 2017/07/07(金) 22:02:58

    最原「……あれ?春川さん、それって?」
    春川「……最原か、お帰り。これは……貰っちゃっただけだよ。余ったし折角だからどうぞ、だって」

    へぇ……と顎に手を当てながら春川さんの持つそれを眺める。
    温い夕暮れの風に軽い音を立てて揺れる緑。そして少し太い中心部。

    所謂、笹だった。

    最原「そっか、今日は七夕だもんね。保育園で飾ったりしたんだね」
    春川「うん。子供達皆で色々短冊に書いたりしてたんだよ。……子供って、なんであぁも沢山願い事が思い浮かぶんだろうね」

    短冊の裏までびっしり書き込む奴が多くってさ。
    そう言う春川さんは呆れた顔でありながら、口元はほんの僅かに微笑みを見せていて。
    彼女が「保育士」として在れている事は、僕にとってもとても嬉しい事だ。

    春川「……何。私の顔に何かついてる?」
    最原「ううん、別に。それで、その笹どうしよっか。折角貰ったんだし……」
    春川「場所を取るし、素直に捨てて問題無いと思うけど」

    うーんと考え込む。
    これほど大きいとなると捨てるのだって手間がかかる筈だ。
    ……いや、春川さんなら簡単かもしれないのだけれど。
  3. 3 : : 2017/07/07(金) 23:26:22

    最原「……折角だし、今日だけは飾ってみない?短冊も貰っちゃったんでしょ?」
    春川「何?願い事書くの?あんたって結構子供っぽいんだね」
    最原「そこは……ほら。ロマンチストって言ってよ。折角の探偵なんだしさ」
    春川「……推理小説の読み過ぎじゃない?探偵こそリアリストじゃないと駄目でしょ」

    ごもっともです。
    けど、こういうのって結構重要だと思うんだ。

    以前、コロシアイだなんておかしくてたまらない世界にいた僕等には、きっと出来なかった事だから。

    春川「まぁ……良いよ。どうせ、この後やる事も無かったし」
    最原「そっか……ありがとう、春川さん」
    春川「お礼なんて言わなくていいよ。暇潰しってだけだし。後で夢野が帰ってきたら一緒にやろう」


    ――――その後、何だかんだ騒ぎながら願い事を書いて笹に吊るす事となった。
    実際に書いてみると、何を書こうか悩むものなんだと実感した。当たり障りの無い普通の事を書くべきか、それとももう少し奇をてらってみるべきなのか。

    流石に春川さんの言っていた子供の様に沢山書くわけにもいかないだろうし。

    悩んだ結果、本当に単純な一文に終わった。
  4. 4 : : 2017/07/08(土) 00:05:31

    その夜。

    僕は上手く眠れないまま、事務所の外に出てきていた。

    「最原探偵事務所」

    この世界へ足を踏み入れた僕達の、新たな拠点。
    この場所で、僕と、春川さん、夢野さんは生活している。

    そもそも「探偵」としてまだまだ未熟だった僕は、まずは一から勉強し直さないといけなかった。
    他の人に頭を下げ、探偵をやっている人に教えを請い……。
    元からあったのかどうか解らない「探偵の才能」のおかげで、比較的早い期間を以てこの場所を手に入れるに至った訳だ。

    ……その道のりは、決してやさしいものではなかったけど。
    共にいてくれた人がいたからこそ、頑張れた。

    保育士の勉強をしていた春川さん。
    マジックショーでお金を稼ぎ、僕らを支えてくれた夢野さん。
    共にいた、彼女達。
    共に、楽しくて泣きそうになって。
    共に、辛くて笑いそうになって。
    共に、コロシアイを生き延びた僕の仲間。
    大切な、仲間。
  5. 5 : : 2017/07/08(土) 01:14:20

    そんな仲間と共についさっき騒ぎながら書いた短冊が、目の前に。
    ほんの一日だけという制限付きであるものの、玄関先、門の手前に設置された笹に吊るされた短冊。

    ふと、どんな願いを書いたのか気になってきた。
    試しに聞いてみたは良いけど、見事にはぐらかされたし。
    誰もいない今なら……。


    ??「人の願い事を覗き見?あんたって結構趣味悪いね」
    最原「うわぁっ!?」


    思わず身体が震えた。
    身体を捻り、後ろを振り返れば。

    最原「は、春川、さん。ど、どうしたの?」
    春川「それはこっちのセリフ。こんな時間に外に出るなんてどうしたの?探偵の仕事も無いだろうし」

    笹からとりあえず距離を取り、春川さんに向き直って苦笑する。
    覗き見と言われるだけで感じるこの申し訳なさと罪悪感は何なんだろう。

    最原「その……ちょっと、眠れなくて、さ。だからこうやって、外の空気を吸いに」
    春川「……あんたも?」
  6. 6 : : 2017/07/08(土) 14:35:52

    最原「あんたもって……春川さんも」
    春川「……別に。何でもない。あんたが出ていく気配と音がしたから、来ただけだし」
    最原「そ、そっか」

    顔を俯かせながらそう言われては流石に何も言えない。
    とはいえ……間違いなく、春川さんも眠れなかったのだろう。
    そこには理由がある筈だ。

    例えば……「あの学園」の事、とか。

    最原「ねぇ、春川さん」

    もしそうだとしたら、それは辛い事だ。
    同じく忘れられない僕には、その全てとはいかなくても、一部は理解出来るつもりだから。
    だから……。

    最原「ちょっと、ランニングでもしてみない?」

    少しでも、僕に出来る事をしたいんだって思うんだ。

    春川「ランニング?」
    最原「ほら、身体を動かすと、その後すぐ眠れたりするでしょ?久々のトレーニングだし、良かったらどうかなって……」
    春川「……そっか。トレーニング、最近してなかったもんね」
    最原「今は涼しいし、やりやすいかなって。その、勿論春川さんが良ければ、だけど」
  7. 7 : : 2017/07/09(日) 03:03:44

    春川「そうだね。久しぶりに……やってみようか。私、動き易い服に着替えてくる。あんたは?」
    最原「僕はこの服で良いよ。ここで待ってるね」

    ……そう言って中に音も無く入っていく春川さん。
    探偵としての仕事を始めたばかりの頃はあの隠密性にどれほどお世話になったか。
    彼女自身も勉強するべき事があったっていうのに、それでも僕の仕事を手伝ってくれた。

    最初こそ、僕はそれを断った。彼女の保育士を目指す勉強を邪魔するのは悪かったし、それに……。
    それに、彼女に手伝ってもらう事は即ち、彼女の「暗殺者としての才能」を利用する事になってしまうからだ。

    それを説明したら、鼻で笑われたものだ。
    「まだしっかりしていない僕なんかに任せておけない」だっけ?「殺されたいの?」のおまけ付。

    最原「……あぁ、やっぱり」

    春川さんは、本当に面倒見の良い、普通の女の子なんだって。そう思う。
    愛想が無い?隠し事を普通にする?
    馬鹿馬鹿しい。子供に好かれて当然だ。
  8. 8 : : 2017/07/10(月) 00:29:36

    彼女は否定するだろうし、直接言った所で睨むか髪を弄っていじけるかのどちらかと勝手に予想しているけれど。
    それでも、彼女はただの女の子なのだと僕は確信している。

    その手は血に塗れていると言うけれど。その身体はどうしようもなく汚れているというけれど。
    そう、「彼女」の言う通り、春川さんその根底の部分は、心優しい普通の女の子で――――。

    そこで、胸にズキリ、と鈍い痛みが走った。
    よりによって。
    よりによって、「彼女」の事をここで明確に思い出してしまったから。

    やめろ。止まれ。
    思い出すな。彼女の言葉を。
    優しさを。温もりを。

    何で。何でまた、今になって……!

    春川「……酷い顔。どうしたの?」

    気が付けば、春川さんが着替えて出てきた所だった。

    最原「えぇっと、その、ほら。さっき眠れないって言ったでしょ?酷い夢を見て、さ。だから、その内容をつい、思い出しちゃって……」
    春川「……。調子が悪いのなら、無理しない方が良い。そんなトレーニングは無意味だから」
  9. 9 : : 2017/07/10(月) 04:46:55

    最原「大丈夫。ほら、嫌な夢の内容を思い出して気分が変なだけだからさ」
    春川「……」

    嘘をつく。
    僕に。春川さんに。
    嘘をつく。

    最原「ほら、春川さんが言ってたじゃない。ランニングしてる時はそれに集中して、嫌な事は忘れられるって。だから、なおさらランニングしたい気分なんだ」
    春川「……解った。じゃあ、この辺りを軽く10周だね」

    ……僕の聞き間違えだろうか?
    10周を軽く、と言ったのだろうか?
    この辺りと言っても結構ある気がするんだけど。

    春川「何?あんたから誘って来たんだから、これ位きっちり付き合ってよ?」
    最原「は、はは……えっと、お手柔らかに頼むよ、春川さん……」
    春川「本当に嫌な事忘れたいんなら、結構ギリギリを目指さないとね。さっきも言ったけど、誘ったのはあんた。覚悟は良い?」

    ……参った。
    そんな風に、口元を若干緩ませた顔を見せられたら、頑張らざるを得ないじゃないか。
  10. 10 : : 2017/07/10(月) 22:18:24

    結論から言うと。

    最原「……」
    春川「ほら水」

    僕は10周を走り切ったは良いモノの、僕の体力は限界を迎え。
    身体は見事に悲鳴を上げて。

    探偵事務所の前でへたってしまった所に、春川さんがすぐ近くの自動販売機でミネラルウォーターを買って僕に渡してくれたのだった。
    ありがとう、と頭を下げつつ、その中身をがぶ飲みする。
    水の冷たさが喉を通って身体の内部を冷却していく感覚が心地いい。
    焼けつくような感覚が潤され、ようやっとまともな言葉が出るようになったと同時、深いため息が僕の口から洩れた。

    春川「そんなんじゃ、まだまだ私もお手伝い脱却は出来ないかな」
    最原「う、うーん……最近はマシになってきたつもり、なんだけどなぁ……」
    春川「多少仕事で夜更かしする事が多くても平気だっていうのは自慢にならないから」
    最原「うぐっ」

    相変わらず彼女はズバズバとモノを言う。
    いや、それでも。その在り方に、心地よさを感じている僕がいる。
  11. 11 : : 2017/07/10(月) 23:37:46

    断っておくが、決してなじられたり強い語調で喋られるのが気持ち良い訳じゃない。
    彼女が、春川さんが、遠慮なしに、気を遣わずに、普通にこうやって喋ってくれている事が嬉しいんだ。……遠慮が無いのは、前からだっけ?

    春川「どう?変な事は忘れられた?」
    最原「え、あ、うん……おかげで、何とか」

    ようやく身体の調子が戻ってきた。
    軽く手、足を動かしてみてから、改めてありがとうと春川さんに告げる。

    春川「良いよ、別に。辛気臭いあんたの顔って、見るの苦手なんだよね」
    最原「そ、そっか」

    ……うん。遠慮が無いっていうのは、良い事なんですよ?本当だよ?

    春川「あぁ、けどなんか、悔しい、かな」
    最原「く、悔しい?」
    春川「最原はなんとか気を紛れさせたみたいだけど、私は……そうも、いかなくってさ」

    それって。
    春川さんが言いそびれた、眠れなかった、原因。
    それはもしかすると。

    最原「春川さん……君も、変な夢を、見ちゃったの?」
  12. 12 : : 2017/07/11(火) 01:15:18

    春川「……ねぇ、最原」

    僕の質問に答えないまま、春川さんは上を見上げる。

    春川「空、綺麗だね」
    最原「……うん、そうだね」
    春川「雲一つない空なんて久々に見た気がする」
    最原「うん、そうだね。梅雨の時期で結構天気も不安定だったしね」
    春川「……百田が見たら、大喜びだったんだろうね」
    最原「……春川さん」

    それは。
    その、記憶は。
    君にとって、かなりの傷痕の筈だ。

    春川「うん、解ってる。もう泣かないって、もう振り返らないって、何度も思ってるんだけど……中々上手くいかない、ね」

    コロシアイ生活が終わった最初の頃は、我ながら酷かったと記憶している。
    誰もが寝ては泣き喚いて起きて。
    そして目が覚めたらその場所が「あの個室じゃない」事に安堵するけど、それがまた何故か辛くて泣いてしまう日々。

    あの学園の個室にいい思い出なんて無かったって?
    あぁ、勿論だ。

    だけど。
    だけど、最初は。

    あの学園に、「みんな」がいたんだ。
  13. 13 : : 2017/07/11(火) 16:33:02

    春川「あんたの言うとおりだよ、最原。私も……嫌な夢を見ちゃった」
    最原「……百田君の夢、だね?」
    春川「そうだよ。……うぅん、ちょっと、違うかな」

    違う?
    違うとは、どういう……?

    春川「あんたと、百田、私。その3人で、トレーニングしてる夢」
    最原「あぁ……」

    懐かしいなぁ。
    最初の頃は、全然僕体力が無くて。百田君はしょっちゅう数をごまかして。

    そして春川さんを百田君が半ば強引に連れてきて。
    彼女の身体能力に驚いたりして。
    ……百田君。君、自分の決めた数字通りにやったこと、一度でもあったっけ?

    春川「そうやってトレーニングして、百田の鯖読みを私とあんたで数えて阻止したりして……」
    最原「百田君が言い出しっぺだったのにね……」
    春川「ほんとだよ。人を引きずって行っといて、本人がそれだもんね」

    お互いに苦笑しあう。
    こうやって、少しずつ。
    お互いの傷跡を、塞いでいく。

    春川「……でね。百田が、途中でいなくなるんだ」

    ……それが、ほんの軽傷であれば、それでよかったのだけれど。
  14. 14 : : 2017/07/11(火) 17:16:50

    春川「途中でいなくなっても、あんたは……私と一緒に、トレーニングに付き合ってくれるんだ。誘った張本人が消えても、あんたが、そうやって」

    丁度、今みたいに。

    そう呟く彼女の表情に、違和感。
    何故だろう?何か、違うような。

    春川「それでね……今度は、あんたがいなくなる。急に、私の目の前で、どんどん身体が崩れていく」
    最原「……僕、が?」

    過去の傷跡だと思っていただけに、この言葉は予想外だった。
    僕?僕が、春川さんの目の前から、消える、夢?

    春川「粘土細工って言ったらいいのかな……なんだろう。まるで、溶けていくみたいに、最原の輪郭が消えていくんだ。私の目の前で、あんたが、どんどん、血だらけになって、血、だけになって……」
    最原「は、春川、さん!?」

    震えている。
    春川さんの様子のおかしさは夜の暗闇の中でも明確に理解できた。
    顔が青ざめ、ゆがんで、目が見開かれている。

    春川「そこで、目が覚めたら、あんたが、あんた、よりによって、外に、出ていくから……!こっそり、1人で、出ていくから、私……!」
  15. 15 : : 2017/07/11(火) 17:25:51

    最原「だ、大丈夫だよ、春川さん!僕はここにいる!ここにいるから!」

    思わず肩を抱くようにしながら、春川さんの身体を支える。
    震えるその身体は、どこからその力が出ているのか分からない位に細くて。

    春川「……いる、よね。急に、いなくなったり、しない、よね……?」
    最原「うん、いるよ。いなくなったり、する訳ないじゃないか」

    久々に大きな発作、というべきだろうか。
    春川さんの過去の傷跡は、予想外の方向に広がってしまったかのような状態だと僕は感じた。

    いずれにせよ。
    夢で見たにしろ、その原因が僕だというのなら。
    僕はここでこうやって、彼女を支える義務と責任があるだろう。
    急に誰かが、大切な誰かがいなくなる。
    その喪失感と、言葉に出来ない苦痛は、僕だって知っているからだ。

    春川「……ごめん。信じたいけど、そんな言葉じゃ、信じ、きれない」
    最原「……それじゃあ。どうしたら、信じて、もらえるかな。僕に出来る事なら、それで証明したい、けど」
  16. 16 : : 2017/07/11(火) 17:39:25

    優しく、肩を撫でる様に。
    少しでも落ち着いてもらえるよう、身を寄せて。
    お互いの傷跡を隠すように。舐め合う様に。暖めるかのように。

    春川「……約束、覚えてる?」
    最原「約束……?」
    春川「……ちょっと。あれだけはっきり言い切っておいて、忘れるってどういう事」

    顔を上げた春川さんが、むっとした顔で僕を睨んでくる。
    相変わらず顔色も良くはないけど、少しはいつもの調子が出てきたかな?

    春川「あんたが言ったんだよ。私が、これ以上暗殺者として活動する事の無いよう、あんたが探偵を頑張るって」
    最原「……!」

    あぁ、確かに。
    僕は約束した。

    彼女の過去を聞いて。
    彼女の本音を垣間見て。
    彼女の在り方を知って。
    同情ではなく、本心から。
    百田君のようにこそ出来ないけれど、僕にやれる事で、春川さんに、少しでも、普通に笑ってほしいと感じて。

    だけど。
    だけどそれは。

    春川「……うん、そうだよ。確かに設定だったかもしれない。私の記憶も、感覚も、全部押し付けられた錯覚かもしれない」

    僕の思考を読んだかのように、彼女は呟いて。
    僕の服をゆっくりと掴む。
  17. 17 : : 2017/07/11(火) 19:00:20

    春川「だけどね。……怖いんだ。私が今まで人を殺してなかったんだとしたら。それはそれで喜ぶべきだけど……私はもう、完全に暗殺者として振る舞えなくなる」
    最原「……それは」

    良い事じゃないか。
    春川さんは決して望んで人を殺したいわけじゃない。
    暗殺者でなくなるというのは、僕だって……百田君だって、望んでいる事のはずだ。彼の代弁を、僕なんかが務めて良いのかは別として。

    春川「駄目だよ。私が、あんたを護れなくなる。いざって時に自分の手を汚せないと、何も出来なくなる……!」

    僕の服を掴む力が強くなる。
    声が、震えている。

    僕の、為に。
    僕を護れないのが、怖い、と。
    彼女はそう言っているのか?

    春川「世界は何事も無く平和だっていうのは聞いてる。私も薄々感じてる。けど、駄目なんだ。気を抜いたら、私は、また、いや、本当に暗殺者としてしか生きられないようになるんじゃないかって。平和だからって、信用、出来る訳ない」
    最原「春川、さん」
  18. 18 : : 2017/07/11(火) 19:15:02

    だから、と彼女は僕を見つめる。
    紅に揺らぐ瞳が。
    潤んだ瞳が、僕を真っ直ぐ捉えて離さない。
    服を掴んでいたはずの手は、いつの間にか僕の肩へ移動していた。

    僕にしがみつくかの様に。
    震えながらも、それでいてかなりの力で僕を離さない。

    結構な痛みはあるけど……それだけ。
    それだけ、彼女の心の苦痛が、あるという事だ。
    だから、黙って受け止める。

    春川「だから、約束して、最原。あんたが、探偵として、立派になって。私が、人を殺さないで良い様になるまで、強くなって。それまで、お願いだから……お願い、だから……!」



    傍に、いて。



    最後の言葉は、掠れて、本当にか細い声で。
    でもそれは確かに、僕の耳に届いた。

    最原「……解った」

    ここまで言われてしまうとどうしようもない。
    僕も男だ。腹を括るしかないという奴だ。

    春川さんを、そっと抱き締める。
    彼女の身体を、頼りにならないかもしれない僕の身体が全身で支える。
  19. 19 : : 2017/07/11(火) 19:22:40

    最原「約束、するよ。まだまだ未熟だし、頼りないし、弱いし。春川さんの何度も助けてもらわないといけないかもしれない。一杯、迷惑をかけるかもしれない」

    だけど。
    それでも。
    僕にこうやって心を打ち明けて。
    真正面から来てくれた君を。

    最原「だけど、諦めない。絶対に、君の傍にいる。春川さんの手を、血で汚させたりなんか、させるもんか」

    護りたいんだ。
    この温もりは、失いたくないんだ。

    最原「……約束だ。僕と君との、約束だよ」



    最原「春川魔姫に、人は殺させない」



    最原「春川魔姫は、殺せない」
  20. 20 : : 2017/07/11(火) 19:27:24

    七夕をオーバーしまくりましたが、これにてこの作品は終了です。

    最春というジャンルではありましたが、いかがでしたでしょうか?

    まだまだ未熟の身であり、色々と自身の至らなさを痛感しておりますが……。
    書きたい事は何だかんだ描けたとは思うので、満足はしております。

    読んで頂いた読者の皆様には、感謝を。
    何かしら楽しんで頂ければ幸いです。
  21. 21 : : 2017/07/11(火) 20:31:31
    儚い雰囲気に惹かれました!! お疲れ様でした!!
  22. 22 : : 2017/07/11(火) 21:12:06

    ありがとうございます。
    儚さを上手く出せていたとしたら、とてもうれしい限りです。
  23. 23 : : 2017/07/12(水) 01:28:42
    原作の雰囲気が上手く再現されていて良かった
  24. 24 : : 2017/07/12(水) 01:29:17
    原作の雰囲気が上手く再現されていて良かった
  25. 25 : : 2017/07/12(水) 11:31:02
    お疲れ様です。本編エピローグ後の雰囲気を思い出す、哀愁ただよう印象的な作品でした
  26. 26 : : 2017/07/13(木) 18:04:20

    ありがとうございます。
    エピローグの可能性と同時にどこか空虚さを感じさせる感覚は中々良いモノだと認識しておりますので
    その様に表現して頂けること、嬉しく思います。

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ArmoredMUGENin

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