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13段目の死と罪の記憶
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- 1 : 2017/06/08(木) 15:18:10 :
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྿ダンガンロンパV3のネタバレ含みます。
྿短編(の予定)です。
྿更新スピードは果てしなく遅いです。
྿拙い文章ですが、お許し下さい。
྿誤字脱字を見かけたらご指摘ください。
٩( ᐛ )و
あるアパートに、もう何年も人が住んでいない部屋があった
その部屋は、アパート出入り口の正面にある階段を上ってすぐ真向かいのところに位置している
特に老朽化している訳でも、過去に残虐な殺人事件が起きた訳でもない
しかし、何故だかそこには人が寄り付かなかった
そんないわくありげな部屋に私、白銀つむぎは二週間のあいだ、コスプレの仕事の都合で入居する事となった
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- 2 : 2017/06/08(木) 15:19:34 :
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開閉時に、ぎいぃー、と軋む扉に眉を顰 める
しかし、リビングに入ると、南向きの窓から差し込む日差しが私を暖かく迎え入れた
何年も住む人が居なかったと言うから荒れ果てているのではないかと危惧していたが、特に窮屈さを感じることは無く、掃除も行き届いていた
安堵の表情を浮かべながら、早速、家具を置き始める
テレビ、机、椅子、ベッド、本棚……そしてコスプレに使う衣装を収納してあるタンス
真っさらだった空き部屋が、私色に染まって行く
壁に立て掛けたアナログ式時計の短針は、既に12時を指していた
私はポツンと置かれた椅子に腰掛け、先日買ったライトノベルを読み始める
表紙に大きく写る黒髪赤目キャラに釣られ、最新刊である5巻まで衝動買いした物だ
ジャンルはファンタジー。見るのは初めてだが、主人公の少女が敵を倒していく様はなかなか愉快だった
暫く読み耽 っていたみたいで、気付けば外はすっかり薄暗くなっており、デスクライトの明かりがより一層強調されていた
明日は朝からすぐに仕事が始まる。私は寝る支度をして、布団の中でゆっくりと目を閉じる。そしてすぐに深い眠りに包まれた
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- 3 : 2017/06/08(木) 15:22:12 :
- 導入の引き込み具合と、綺麗な文章に惹かれます…
期待です!
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- 4 : 2017/06/08(木) 15:22:20 :
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̐
気付いた時には、すでに私は”其処”に居た。立ち込める古書の匂いから、図書室だと推測出来る
気付けば自分の身体は鉛のように重く、凍りついたかのように動かない
直後、後ろから誰かの気配を感じた
振り向くことすら儘 ならない私に、その”誰か”は語りかけてきた
『俺は君に殺された……』
『君さえ居なければ、俺は死なずに済んだ……』
『俺のことを、ずっと待っている人がいるのに……』
『俺はもう、誰も救えない、助けられない』
『君の所為で──────
͋
スイッチを入れられたかのように、私は不意に目覚めた
外はまだ闇が立ち込めている
寝起きで意識と肉体が上手に繋がって居ないのか、またしても体が思うように動かない
しかし今の私はそれ以上に、先ほど見た夢の内容が気になっていた
見ず知らずの人が、自分を殺したなどと怒気を帯びた声で責め立ててくるという夢
意味が解らなかった。私はそもそも人を殺めた事なんてないし、あの人と会ったことすらない
当然、誰かに恨まれるような事をした覚えもない。私は出来るだけ波風を立てずに、今までの人生を送ってきたつもりだ
「……って、たかが夢ごときに何を大真面目に考えてるんだろ、私」
考えてみれば、あれは単なる夢だ。現実とは一切交わることの無い錯覚。考察すること自体が無意味である
時計の針は、日付を跨 いで深夜2時を指している。私は毛布を被り、再び眠りに落ちた
目を閉じる直前、ふと、外から階段を一段上る音が聞こえた気がした
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- 5 : 2017/06/08(木) 15:29:32 :
- >>3
ありがとうございます。
汚い文章にならないように精進します。
越してきて2日目、仕事を終えた私はすぐさま帰途につき、昨日のライトノベルを読み始める
1巻も既に終盤に差し掛かる頃、予想だにしない展開が起きた
主人公が殺されたのだ
その後、彼女に勇気付けられ、ついてきた少年が2人目の主人公となった
”彼女の死”に、私は名状しがたい悲しさを覚えるとともに、よく出来た内容に感服していた
「続きは明日かな…それじゃあ今日はもう寝よっと」
部屋に私の独り言だけが響く。照明を落とし、沈み込むように寝入った
ྃ
まただ。またこの感覚だ
五感はハッキリしているのに、金縛りにあったかのように身体が言うことを聞かない
目の前に大きなグランドピアノが備え付けられており、そこから曲が流れている。おそらくここは音楽室だろう
私は目を閉じ、心を包み込むような穏やかなメロディーを耳で追った
優しい音色が、教室中を駆け巡る
そんな幻想的な時間は、突如として終わりを告げた
不意打ちのように音は止み、美しい音色を奏でていた人影が、ピアノの裏から立ち上がった
そして、濁った瞳を私に向け、地の底から湧くような声で語り始める…
『みんなと友達に成りたかった……』
『なのに、貴女なんかに利用されて、真実を捻じ曲げられて殺された……』
『貴女が居なければ、みんな苦しむ事はなかった』
『あそこで、貴女が死んでいれば────
ྈ
-
- 6 : 2017/06/08(木) 15:33:09 :
-
またしても不思議な夢だった
夢に出てきたのは、昨日とは別の見知らぬ少女だった
ただ、『私を恨んでいる』、『私に殺されたと述べている』という奇妙な共通点があった。
いくら考えても、答えは見えない
時刻は深夜2時。流石に眠たく、思考は働かない
朦朧 とした聴覚が、”その音”を微かに聞き取った
コツン...
コツン...
階段を2段、登る音だ
昨日の夜中の記憶が呼び起こされる。同時にあの音は聞き間違いでは無いと言うことが分かった
私は、こんな夜中に帰ってくる隣人のことが少し気になった
フラフラと立ち上がり、扉の覗き穴から階段を見る
そこで、私は自分の目を疑った
そこには、誰の姿も見えなかった
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- 7 : 2017/06/08(木) 15:40:40 :
-
2巻、3巻と物語が進むにつれて、主人公の少年は成長していった。信頼出来る友を得て、自信を持つことを学んでいった
そして、あの悪夢も形を変えて私を苦しめ続けていた
̐
『俺が何をしたって言うんだ……?』
『なぁ、教えてくれよ。何故俺だけがこんな辛い人生を歩まなくちゃならないんだ……?』
ཀ
『こんな所で、死ぬわけにはいかないの……』
『国民の皆様の為にも……私は生きなくてはならないのよ……!』
ೣ
『人がこれ以上死ぬ所なんて見たくなかったのに……』
『どうしてみんな神さまの言う通りにしてくれないのぉ……?』
࿆
『痛い……苦しい……死にたくない……』
『まだ、夢野さん達と一緒に生きていたいのに……』
ཽ
『違う、あんなの姉さんじゃ無い……!』
『姉さんは僕を責めたりしない……突き放したりしない……見捨てたりしない!』
ೣ
『もう嫌だ……何で天才である俺様が怯えなくちゃならねぇんだよ……』
『誰も信じられない……信じられるのは自分の才能だけ……』
『俺様は強い……こんな檻の中で閉じこもってる場合じゃねぇんだ……』
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- 16 : 2017/06/09(金) 17:44:30 :
- >>10>>11>>12>>13>>14>>15
ありがとうございます。
ここに越してきてもう8日になるが、あの悪夢を見ない日は無かった
毎日、夢の世界に浸 る度に聞こえてくる”誰か”の声が耳に残り、苦悩の顔が目に焼きつく
更に1日、1日と進む毎に階段を上る音が増え、だんだんこの部屋に近づいているということが、私の不安感を煽っていた
そして、6日目に出て来た青いセーラー服の少女が放った言葉が頭をよぎる
「夢野さんって、誰なの……?」
恐らく人の苗字だろう。しかし、私はその苗字を何処かで聞いたことがある気がした
学校の友人ということはまず無いだろう。特徴的な苗字であるが故に、いたら流石に覚えている筈だ
次に有名人や二次元のキャラクターではないかと考えた。しかしネットで検索しても知らない小説家の名前しか出てこない
いつ、どこで聞いたのかも思い出せない。でも、私は確かにその苗字を聞いたことがある、そして呼んだことがある。そんな気がしてならなかった
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- 17 : 2017/06/09(金) 19:33:31 :
- 文章の綺麗さと表現力の高さに引き込まれます。期待です!
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- 18 : 2017/06/10(土) 01:39:57 :
- >>17
ありがとうございます!
更新遅くてすみません。
9日目、私は既に日課になっている読書を始める
現在読んでいる4巻は、今まで主人公を支えて来た仲間との対立やトリックスターの台頭など、物語も佳境に迎えていることを感じさせられる
時刻は夜12時、4巻を読み終えるのと同時に、私の意識は途切れる
気を張っていたにも関わらず、そのまま眠ってしまった
͙
私が立っていたのは、建物の屋上だった。外は降り積もる雪に覆われ、一面銀世界となっている
そしてやはりそこには人がいた。眼鏡とたすき掛けした虫かごが特徴の大柄の男の子だ
相変わらず手足を動かすことは出来ない。ただ、昨夜までと違い、言葉を発することが出来ることに気付いた
「あ、貴方は、誰なの……?」
『あれ、忘れちゃったの?白銀さん。ゴン太は、獄原ゴン太だよ』
「獄原ゴン太……くん?」
彼の名前にも聞き覚えがあった。しかしどんなに記憶を探っても答えを導き出すことは叶わない
「ねぇ、ここって何処なの?私たちはどうしてこんな所にいるの?」
他にも質問したい事はたくさんあるが、積もった雪の中、裸足で立っている彼の事を考慮し、最低限の疑問に絞り込んだ
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- 19 : 2017/06/10(土) 01:45:37 :
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『ここはゴン太が道を踏み外した場所だよ。自分で決めた事とはいえ、悔やんでも悔やみきれないよ……』
「道を踏み外したって……何?」
『たくさんあるんだけど、まず、大切な仲間を殺しちゃった事……』
獄原くんは目に涙を浮かべながら続けた
『それと、ゴン太の所為で、最原君たちがバラバラになっちゃった事……』
例の如く、私の思考は最原くんという言葉に反応する。しかし大粒の涙を流す獄原くんを前に、私は声をかけられなかった
『ゴン太は皆んなを救いたかったんだ。でも馬鹿だから裁判では役に立てないし、唯一の取り柄の力さえも敵には歯が立たない……』
獄原くんは大きな手で握りこぶしをつくり、しっかりと私を見据えて話す
『でも、その後ゴン太は思い出したんだ。もう地球は滅んでて、人類の生き残りがゴン太達だけだって……』
「いやいや、ちょっと待って!地球が滅んでるってどういう事!?」
『ゴン太にもよく分からないんだけど、隕石とかウイルスの所為で地球はもう住める状況じゃないって……』
少し呆れてしまった。同時にこれは夢なのだと思い出した。何でもアリなのが、夢の興味深いところであり、恐ろしい所だ
『ゴン太は外の世界の真実を知っちゃって……中にいても外に出ても生き地獄なら、ゴン太が1人でその苦しみを引き受けるべきだって思ったんだ……』
そう語る彼の顔は既に悲しみに包まれており、逞 しかった声は嗚咽 へと変わっていた
『これが、ゴン太が犯した罪なんだよね。みんなを守りたいと誓ったのに、みんなを苦しめて引き裂いちゃって、ごめんなさい……』
辺りの景色が朧 げに見えていく。この夢がもうすぐ覚めることの合図だ
「ま、まって!獄原くん!」
⑅
まだまだ謎はたくさんあった。しかしそれを彼に問いかける事なく、私は眠りから覚めた
聞こえてくる階段の音の数は9段。今日も一段、私の元に近づいてきていた
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- 21 : 2017/06/17(土) 23:28:45 :
- >>20
ありがとうございます。企業秘密です。
更新遅くなってしまい申し訳ありません。
ここでの生活ももう10日目。今日も机上で文字を追う作業に没頭する。ページをめくれば、言葉は私を面倒な世界から隔離してくれる
今まで以上にファンタジー要素が強かった5巻を半分まで読み終え、フラフラとした足取りで定位置の本棚に押し込む
夜中によく目覚める所為か、最近どうも体調が優れない
私は閉店前のドラッグストアで薬を買い、すぐにマンションへと戻った
出入り口の扉を開き、目の前に連なる段差を見据えた瞬間、私は気付いてしまった
このマンションの階段の数は、全部で13段
昨夜の時点で既に階段を上る音は9段だった
あと4日で、”誰か”は階段を上りきる。そして私の部屋に到達するはずだ
その”誰か”が、あの悪夢に出てきた”誰か”だったら…
「13日目の夜に、何かが起こる?」
元来『13』と言う数字は、西洋では『忌 み数 』と呼ばれ忌避されるような不吉な数字だ
月や時間、方位などを用いる時に使われる『12』を”基数”とすれば、『12』より一つ大きく、素数である『13』は調和を乱す不吉な数字と考えられてきた
昨日までにこの事実に勘付いていれば、私はすぐさまマンションから逃げ出していただろう
しかし、昨日の夢の獄原君は、私に敵意など持っていなかった。ただ純粋に、何かを悔やんでいた
彼の涙は嘘じゃない。根拠も何も無いが、私の本能はそう告げるのだ。”獄原ゴン太は、優しい少年だ”と
込み上げる恐ろしさは尋常ではなかった
13段目の先に待っているものは、今までの悪夢のように、きっと私を苦しめるだろう
しかし、同時にあの夢の続きを見てみたいという思いもあった
獄原君の涙の理由、そして偶然とは思えない超自然の怪異の真相の答えがそこにある気がした
勇敢な好奇心と臆病な恐怖心を胸に秘め、私は暗闇の中で瞳を閉じた
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- 22 : 2017/07/22(土) 22:17:15 :
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気味の悪い翠緑の壁。立ち並ぶ謎の巨大兵器 。そして見る者を圧倒させるプレス機
今まで見てきた部屋とは一線を画す異様な雰囲気に満ち溢れた部屋が、今日の夢の舞台の様だ
意識がハッキリした途端、誰かの声が微かに耳に入って来る
『───が、俺が終わらせる。俺がコロシアイを……』
聞き取れたのはそれだけだった
俺という一人称に反して、少し幼さを感じさせる声
発生源はプレス機の辺り、私は恐る恐る近づく
一歩踏み出すたびに強さを増す大きな悪意と
次第に、ブラックホールの様に真っ黒で邪悪な闇が人の体を形成していった
小柄な男の子だ。相変わらず塗りつぶされた様な黒い姿で目や口などの部位は視認出来ないため、表情が確認出来ない
『こんな嘘だらけの世界、早く終わらせようよ……白銀ちゃん』
「な、何で私の名前を知ってるの?」
私の問いに答える事なく、男の子の人影は消滅した
「え、消えた……?」
今まで途中で人が消える事など一度も無かった。つまり今回は過去のものとは毛色の違うイレギュラーな夢なのだと悟った
そして、それはすぐに立証される
『何で知ってるかだって?俺らは仲間だろ?白銀』
さっきとは全く別の、髪が真上に逆立っている黒い影が、巨大兵器の上で構成されていた
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- 23 : 2017/08/15(火) 04:16:48 :
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今まで、登場人物は私と“誰か”の2人だけだった。しかし私の背後からは先ほどの男の子とは明らかに違う声が聴こえてくる
「仲間……どういう事?」
『俺もお前も、同じ苦しみを分かち合う仲間だろ?地下道から脱出する事が出来なかった時も、他の奴らが死んだ時も、お互い励ましあったじゃねーか』
当然記憶に無い、しかし昨日、獄原君が言ったように私の夢の中では、私の預かり知らぬところで人の命が亡くなっている様だ
『なぁ白銀。お前はみんなを閉じ込めて苦しめて、死に至らせた首謀者は誰だと思う?』
最初の強気な口調を感じさせない、もっと悪意と猜疑の入り混じった冷たい言葉だった
「え、いや……よく分からないよ」
『ふーん、でも俺は君を疑ってるよ。白銀ちゃんが首謀者だって』
それは私の背後から聞こえた。振り向けばさっきの男の子の影。私はそこで漸く理解した
影は2人じゃなかった。逆立った髪の男も、目の前の少年も、同じ思考を共有している
2つの姿を使って私を化かす、嘘の天才
『俺らが夢や、青春、未来を奪われて苦しむ姿を誰かに見せてるんでしょ?』
「ちょっと待って!えっと…何が何だか……」
『つまらない言い逃れは辞めてよね。首謀者さん』
「ちがっ、私は首謀者なんかじゃ……」
なら、首謀者とは何なのだろう。この夢を産み出しているのは私自身だ。その私が首謀者とやらじゃ無いのだとしたら、本当の首謀者とは一体何なのだろうか
『早くこのつまらなくて下らない嘘塗れの殺し合いを終わらせようよ。お前らみたいな奴らの為に、何で俺たち超高校級が命を懸けなきゃならないんだ』
彼は私への憎しみを遺憾なく含んだ声で叫ぶ。多分、これは嘘なんかじゃ無い、彼の本心なんだ
『天海ちゃんも赤松ちゃんも星ちゃんも東条ちゃんもアンジーちゃんも茶柱ちゃんも……真宮寺ちゃんも入間ちゃんも、ゴン太も、皆んな死にたくなんか無かったんだよ!まだまだ続いてく長い人生を歩んで行くはずだったのに、お前が……』
真っ黒で表情が読めない。でも彼が怒っている事は喋り声で分かった
今までの悪夢がフラッシュバックする
きっと彼が言う、若くして命を落とした天才たちの怨み、憎しみの言葉だったのだ
じゃあ、
私は、一体何をしたの?
こんなにまで恨まれるような罪を、私は何故覚えていないの?
「私は、何でこんな事をしたの…?」
誰に言うでもなくぼそりと呟く
『答えなら、生き残ってる人たちが見つけてくれるんじゃない?』
その言葉を最後に、彼は消えた。この夢も時期に覚めるだろう
「答えは、明日判るってことだよね……」
༸
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- 24 : 2017/09/02(土) 20:43:49 :
-
11日目がやって来た
何故だか解らないが、この部屋から逃げるという選択肢は私の頭の中に無かった
ただ純粋に、あの脳内妄想 の続きが知りたかった
夜。引き違い窓を開けて、黒に塗りつぶされた空を見上げる。ひんやりとした夜風が心地よい
時計の短針は10と11の中間で止まっている
「時間だね」
少ししてから、昼頃に読み終えたライトノベルを本棚に押し込み、夢の世界へと赴いた
༧
円形に並べられた16の席、私の背後にそびえ立つ大きな玉座と5つの台
多くの席には、見覚えのある顔に血塗りのバツ印を施してある遺影がポツンと建てられている
「白銀さん、ここがどこだか、判る?」
黒い服に白い肌の男の子が、声質は女性っぽいのに力強い印象を持った声で問いかけてくる
「……知ってる。ここは、裁判場。6人の仲間の死の原因を擦りつけ合い、5人の罪を裁いた場所…」
「そう、ここは罪を裁く場所だよ」
「お主は、自分の罪を覚えているか?」
今度は大きな三角帽子が特徴的な少女が私に質問する
「罪……」
記憶の糸を辿る
そうだ、私の罪は……
「コロシアイ新学期の首謀者として、超高校級の生徒たちの明日を奪った……」
「そうじゃ、それがお主の罪の記憶じゃ」
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- 25 : 2017/09/03(日) 01:38:15 :
-
「これでアイツは全部思い出したの?」
「それを確かめるために、これから最後の質問をするよ。白銀さん。君の超高校級の才能は?」
才能
超高校級
何故か忘れていたコロシアイの記憶が私の中で蘇っている
私は、白銀つむぎの才能は────
「超高校級の、“模倣犯 ”」
「………全部、思い出してるみたいだね」
黒服の少年…『最原君』は目を閉じて、少し微笑みながらそう言った
「それじゃあ白銀さん。ここからはただ覚えていることを口に出すだけじゃなくて、君の本心を教えて欲しい」
「え?教えるって…どういうこと?」
彼は一呼吸してから告げた
「君は殺された赤松さんたちの声を聞いて、どう思った?」
それを聞いた瞬間、全てを悟った
私が毎夜、眠るたびに見続けていたあの夢は犠牲になった超高校級達の怨念の叫びだった
首謀者である私への怒りと憎しみと後悔を込めた心の声。あれを記憶を無くした私に聞かせていたのだ
「辛かった。罵詈雑言を浴びせられたこともだけど、彼らの人生を滅茶苦茶にした張本人が私なんだって思うと尚更……」
気付けば私は泣いていた。瞳からポロポロと涙が零れ落ちていく
「あれ、私、なんで泣いてるんだろ。首謀者だってのにね」
「………やっぱりだ。やっぱり君は、本当は首謀者なんかじゃないんだ」
「………え?」
最原君は自信満々に断言した。"私 は首謀者では無い”と
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- 26 : 2017/09/04(月) 01:24:12 :
-
「どういうこと?私は首謀者だよ…!」
「ううん。本当に殺し合いを計画した首謀者なら、彼らの理不尽な死に悲しんで涙を流す訳がない。君は、元は僕らと同じだったんだ」
「同じ?」
思わず私は聞き返す。最原君は今度は自信なさげに俯いていたが、やがて顔を上げて語り始める
「ここからは僕の推理なんだけど、白銀さんも最初は僕たち14人と1体と同じくただの参加者に過ぎなかったんだ」
さりげなくロボット差別をする最原君
そこで始めてキーボ君の姿が見えないことを認識したが、今は彼の推理を聞くことに集中することにした
「でも、コロシアイを裏で計画していた真の黒幕が、君に思い出しライトで首謀者の記憶を植え付けたんだ」
思い出しライト、対象者の無くなった記憶を取り戻させる……ように見せかけて偽りの記憶を植え付ける装置だ
「それで私を首謀者にしたの?じゃあ私は…」
「アンタも、被害者の一人ってことだよ。チームダンガンロンパのね」
春川さんが鋭い目つきでそう述べた
最原君の推理はきっと正しい。指摘すべき穴が見つからない
なら私は本当に……
「でも私は、この手で天海君を殺したんだよ。そしてその罪を赤松さんに擦りつけて命を奪ったんだよ」
震える手を見つめて呟く。間接的に二人も殺めた自分が恐ろしくてたまらない
「確かに君は二人を殺した。僕も許すつもりはないよ。でも、君はまだ死んでない。だから罪を償う時間がある」
彼はこちらに歩み寄り、私に手を差し伸べた
「同じコロシアイを生き延びた被害者として、チームダンガンロンパを倒す手伝いをして欲しい」
「え、手伝いって…?」
「コロシアイはもう終わったんだ。全員、投票を放棄するという結末でね」
「そしてウチらは瓦礫に潰されて死にかけてたお主を救出し、思い出しライトを当てて、首謀者じゃない普通の記憶を植え付けたんじゃ」
最原君に代わって、夢野さんが説明をする
今まで私が見てきた日常は、あの部屋は、あの小説は、全て思い出しライトによる嘘の記憶だった─────
形容し難い虚無感、これが自分たちの真相を知った最原君達が味わった絶望なのだろうか
「純粋な人間の記憶を得たお主に転子たちの悲痛の叫びを聞かせ、罪を認めてもらおうとしたというわけじゃ」
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- 27 : 2017/09/04(月) 02:15:35 :
-
「実際、効果覿面だったよね。お陰でアンタは自分の罪を自覚出来たんだし」
同意せざるを得なかった。私は犯した事の重大さを感じながら、今もなお震える手を最原君の前に差し出した
「……償い切れるか解らないけど、私にも手伝わせてくれないかな」
「うん。よろしく、白銀つむぎさん」
静寂に包まれた裁判場で、私と最原君の手が繋がれる。契約の握手が交わされた
「でも、倒すって具体的にどうするの?」
裁判場を出て、エレベーターで上へと昇っている最中、私は素朴な疑問を口にした
「今回のコロシアイはもう、視聴者が愛想を尽かしたことで終結したんだけど、問題が2つあるんだ」
最原君は指を二本立てて話を続けた
「裏で糸を引いている奴らがまだ野放しになっている事。それから視聴者が戻ってくるかもしれない、つまりコロシアイの再ブームが訪れるかもしれないという事」
「これらの問題を解決するには、チームダンガンロンパ自体をどうにかするしかないじゃろ」
「その為には、首謀者として多くの情報を持っている君の力が必要だったんだ」
チン、という場違いに高い音を鳴らしてエレベーターの扉は開いた。外からの眩い光が私たちを出迎える
「行こう、外の世界に」
はじめに最原君が歩みを進める。次いで春川さん、夢野さんもエレベーターの門をくぐっていく
ここから先は、小説じゃない。誰かが敷いたレールを走っただけじゃ、真実に辿り着けない
だけど、それでも私は自分の罪を償える道を探したい
もう誰かの模倣をするんじゃなくて、自分で答えを見つけていくんだ
「彼らと共になら、出来るかもしれないから」
決意を固めて、私は外の世界へ足を踏み入れた
The End of Cosplayer's Story
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- 28 : 2017/09/04(月) 02:29:55 :
- 反省点→書き終えてから投稿すべきでした。
因みに最初はバッドエンドにする予定でした。
やる気があればそちらのルートも書くかもしれません。
最後に、超亀更新でしたが、ここまで読んでくださった方、ありがとうございました。
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- 29 : 2017/09/04(月) 07:39:12 :
- 完結おめでとうございます!
感動した……
そして最原のさり気ないロボット差別にクスッとした
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- 30 : 2017/09/04(月) 16:26:59 :
- >>29
ありがとうございます。
キーボクンも出す予定だったんですがね…
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- 31 : 2023/08/02(水) 13:39:08 :
- http://www.ssnote.net/archives/90995
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2 : 2021年11月6日 : 2021/10/31(日) 16:43:56 このユーザーのレスのみ表示する
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16 : 2021年11月6日 : 2021/10/31(日) 19:01:59 このユーザーのレスのみ表示する
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36 : 2021年11月6日 : 2021/10/13(水) 19:43:59 このユーザーのレスのみ表示する
理想は登録ユーザーが20人ぐらい増えて、noteをカオスにしてくれて、管理人の手に負えなくなって最悪閉鎖に追い込まれたら嬉しいな
22 : 2021年11月6日 : 2021/10/04(月) 20:37:51 このユーザーのレスのみ表示する
以前未登録に垢あげた時は複数の他のユーザーに乗っ取られたりで面倒だったからね。
46 : 2021年11月6日 : 2021/10/04(月) 20:45:59 このユーザーのレスのみ表示する
ぶっちゃけグループ二個ぐらい潰した事あるからね
52 : 2021年11月6日 : 2021/10/04(月) 20:48:34 このユーザーのレスのみ表示する
一応、自分で名前つけてる未登録で、かつ「あ、コイツならもしかしたらnoteぶっ壊せるかも」て思った奴笑
89 : 2021年11月6日 : 2021/10/04(月) 21:17:27 このユーザーのレスのみ表示する
noteがよりカオスにって運営側の手に負えなくなって閉鎖されたら万々歳だからな、俺のning依存症を終わらせてくれ
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