この作品は執筆を終了しています。
愛とAIと青春
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- 1 : 2017/04/09(日) 18:42:57 :
- 大遅刻申し訳ないです
このSSはたけのこまんじゅうさん主催の2016年秋のコトダ祭りです。
お題
ジャンル 青春
テーマ 人間関係
キーワード 殺人
登場人物
日向創・七海千秋・罪木蜜柑・霧切仁
となっております
参加者
あげぴよさん
風邪は不治の病さん
スカイさん
シャガルT督さん
たけのこまんじゅうさん
作者咲紗さん
です
大遅刻&ほぼ思いつきの為お見苦しい点等ございますが
最後まで楽しんでいただければ幸いです
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- 2 : 2017/04/09(日) 18:44:25 :
- 「ふゆぅ…」
保健室の机の上にある書類をある程度整理して一息つきます。
今日も一日、なんとか過ごすことができた
放課後を知らせるチャイムの音を聞きながら私の口元は笑みを作る
何故ならこれから彼と会える
デートというわけではなく保健室で何気ない会話をするだけ
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- 3 : 2017/04/09(日) 18:44:52 :
- 現状はそれしかできない…
理由を説明するのには時間が足りませんし…
「それにしても・・・」
部屋にある時計をチラッと横目で見る
放課後を告げるチャイムがなって10分以上経過して入ることを示していた
「よいしょ」
わたしは彼を迎えに行こうと保健室のドアを開けた
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- 4 : 2017/04/09(日) 18:45:33 :
- 「…あれは」
ドアを開けてすぐ学園長と彼が話しているのを遠目に発見した
深刻な話では無さそうだ
2人とも口元に笑みを浮かべながら話している
特に彼は嬉しそうに時折大げさにうなづくような仕草もしている
取り敢えず一安心
彼が私の存在に気づく
そして学園長に一礼すると彼は私の元に駆け寄ってきた
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- 5 : 2017/04/09(日) 18:46:05 :
- 「ごめんごめん、遅くなっちゃったね」
保健室に入るなり謝罪の言葉を述べる彼
予備学科の制服をしっかりと着こなし少し息が上がっている彼の名前は日向創
「そんなことより日向さん、学園長と何を話していたのですか?」
そんな疑問を投げかけた時
「よく聞いてくれた!」
待ってましたとばかりに身を乗り出し彼は説明をはじめました
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- 6 : 2017/04/09(日) 18:46:25 :
- 話の内容は
現状は予備学科の生徒であるが
今後本科の生徒に欠員が出た場合には本科へと昇格するということ
そして、その期間中に本科の生徒が製作したAIプログラムが入った端末を貰ったということだった
彼はそれをまるで小さい子供が母親に話すかのように生き生きとした表情で話していた
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- 7 : 2017/04/09(日) 18:47:12 :
- そう…
あの日からだった
全てが狂いはじめたのは
あの時私が…いや私は何もすることはできなかった
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- 8 : 2017/04/09(日) 18:47:30 :
- あの日からは彼は私との約束を破るようになった
彼は学園長に指定された一室で1人AIと話し込んでいる
最初の頃は何度かチラチラと私の方にも彼はきてくれていた
なのに今となっては私の存在など忘れてしまったかのように
私の存在を認知していないかのように
彼は過ごしている
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- 9 : 2017/04/09(日) 18:47:56 :
- そして、私は気づいてしまった
いや、元々は知っていたこと
でも、彼がいたから麻痺していた感覚
それは
孤独
私はひとりぼっちに戻ってしまった
昔はそんなに苦に感じなかったこの孤独感も
彼がいたという思い出が私を苦しめていた
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- 10 : 2017/04/09(日) 18:48:22 :
- あれから2ヶ月経った
私はもう限界だった
髪の毛は艶がなくボロボロになっていて
噛みすぎた爪も
食事も喉を通りにくくなり
眠れず
生理でさえ来なくなった
暗闇の部屋の中
携帯が光る
目だけを動かしその内容を確認する
その目は大きく見開かれた
日向創
『明日いつも俺がいる教室に来てくれないか?』
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- 11 : 2017/04/09(日) 18:48:42 :
- 翌日私の心は様々な感情でぐちゃぐちゃになっていた
彼はなんのために私を呼び出したのだろう
別れを告げるため?
それとも、私の大切さに気がついたの?
ぐるぐるとそんな思考が渦巻いているうちに放課後まで残り30分となった
不安で押しつぶされそうな私は彼がいつもいた部屋に向かっていった
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- 12 : 2017/04/09(日) 18:49:04 :
- 部屋に入ると
整理された部屋だった
机、起動しているパソコン
それ以外には物といった物は何もなかった
机の椅子に腰掛けると
起動したパソコンのディスプレイには
パーカーを着た女の子がすやすやと寝ていた
もしかして、これが日向さんが私をほったらかしていた理由?
「そんなっ・・・」
ディスプレイの中に入っている現実でない女に私は負けたの?
私の声で反応してしまったのか
画面の中の女は目を覚まし
『だれ?』と首を傾げた
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- 13 : 2017/04/09(日) 18:49:26 :
- 私が答えられずにいると
画面の女は口元に手を当て
『あれ、もしかしてミュートになってるのかな?いや、なってないな…うーんここに女の人が来るのははじめてだし』
こいつが、こいつのせいで
無意識に私の手は口元に伸び爪を噛む
ボロボロになった髪が揺れる
『あ、わかった 罪木さんだね?』
私は自分の名前を呼ばれたのも気に留めずに
爪を噛み続ける
『だって、”創”が言ってたもん』
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- 14 : 2017/04/09(日) 18:49:47 :
- その時、私の中の何かが切れた
創…創だと・・・
「ふっ・・・ふざけんなぁああああああああああああああああああああああああ」
自分の鼓膜もつんざくような金切り声をあげる
何を言ってるんだこの画面の女は
私だって私は私の私が
私だって
私だって彼の名前なんて呼んだことなかったのに
「ぶっ殺す」
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- 15 : 2017/04/09(日) 18:50:07 :
- そう口に出し決意する
パソコンを操作する
彼女のデータを削除するための準備を
『何するの?罪木さんやめて』
必死に画面の中の女が叫ぶ
馬鹿かやめるもんか
お前さえいなくなれば彼は私を見てくれる
お前さえいなくなれば孤独じゃなくなる
「お前さえいなくなればっっ!」
Okをクリックする
パーセンテージが上がっていく
私の人差し指は1つのプログラムを終了させた
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- 16 : 2017/04/09(日) 18:50:33 :
「ふぅ…」
一息ついた時に
放課後を告げる鐘がなる
あぁ…そろそろ彼が来る
この部屋で彼と2人きりになれる
幸せな気分が心に流れ込んで来る
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- 17 : 2017/04/09(日) 18:51:17 :
- ガチャリと音を立てて開くドア
「日向さん」
彼は私の顔を見ると少し驚いた顔をして
「早かったな」
そう呟くと彼は肩に下げたバックの中から紙袋を取り出す
「ほら、これ」
そう言い紙袋を差し出す彼の顔はとても優しかった
紙袋を受け取り中身を確認すると
「ブローチ…」
オレンジ色のブローチだった
「今までほったらかしにしてごめんな」
彼の一言で私の瞳に涙が溢れる
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- 18 : 2017/04/09(日) 18:51:43 :
- 溢れた涙は頰を伝い床へポタポタと落ちる
「何かプレゼントしたかったんだけどさ、いつも支えてくれるお礼にさ」
彼は照れたように顔を赤くしながら呟く
「折角だし手作りで作ろうと思ったんだけど作るのはいいんだけど何を作っていいんだかわからなくてさ」
彼の言葉一つ一つが私の心に染み渡り
涙は床を濡らし続ける
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- 19 : 2017/04/09(日) 18:52:36 :
- 「七海がブローチを提案してくれなかったらもっと時間がかかってただろうなぁ」
呼吸が一瞬止まる
背中に冷たい棒を当てられたような感覚に陥る
手元に目を落としブローチを見る
これは彼女の提案で?
私のために
「あれ?そういや、七海は?」
彼はパソコンの方へ向かう
私のために考えてくれたの?
「あれ、起動してない」
荒い呼吸が口から漏れる
心臓が張り裂けんばかりに鼓動する
口の中は乾き耳鳴りがする
「きっと気があうと思ったんだけど」
なおも彼は操作を続ける
やめて、これ以上探さないで
彼の手が止まる
「消えてる…」
そう呟いた彼の言葉は私への死刑宣告だった
私はポケットに入っているカッターナイフの刃を出す
「まさか」
彼がゆっくりと振り返る
嫌だ、さっきのような優しい笑顔で見られたい
最期に悲しい顔で見られたくない
私は幸せのまま生きていきたい
私はカッターナイフを自分の首元にあてそのまま押し当て引いた
痛みなんて感じなかった
体がどんどん軽くなっていき
振り返った彼は驚きの顔のまま私を抱きとめる
「蜜柑!おい蜜柑!」
ああ、彼が初めてファストネームで呼んでくれた
私は最期に幸せを感じることができた
それだけでいいんだ
それだけで…
視界がどんどん暗くなる
ここで、1人の少女の人生は終わりを告げた
終わ
らないッッッ
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- 20 : 2017/04/09(日) 18:53:08 :
- 俺の腕の中にいる女の体がどんどん冷たくなっていく
瞳孔も開き
俺ではない虚空を見つめ固まっている
「はぁ…」
俺は立ち上がる
腕に抱えていたソレは鈍い音を立てて床に転がる
『終わったの?』
俺のポケットから声がする
「あぁ終わったよ七海」
ポケットから電子手帳を取り出すと
そのディスプレイには七海がうつっていた
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- 21 : 2017/04/09(日) 18:53:44 :
- 「ふふふふふ…」
自分の口から音が漏れる
「俺が、なんの警戒もせずにつけっぱなしで部屋を開けると思ったか」
心臓が高鳴り
もう聞こえてないはずの女に話しかける
「俺がデータを写さないわけないだろ」
これで俺が
俺が
本科の仲間入りなんだ
こいつはただただ自殺しだけ
やっと欠員がでた
「やったぞ、遂に、遂にやったんだ!」
達成感で身震いする体を強く抱きしめ
勝利の余韻に浸っていた
最初からこの女だと思っていた
いつも1人でいて、構えば構うほど図に乗って
本当に扱いやすかった
「本当に馬鹿な女だ」
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- 22 : 2017/04/09(日) 18:54:09 :
「あははははははははははははははは」
高笑いが部屋にこだまする
『バカハオマエダヒナタハジメ』
「あははは……は?」
今なんと言った
七海の声だったがそこにはなんの感情もなく
ただただ読み上げただけの合成音声だった
「俺が…馬鹿だと…?」
「その通りだよ」
部屋の扉が開く
「学園長…」
学園長は俺の後ろに転がる女を一瞥すると俺の目をまっすぐ見る
「馬鹿は君だよ日向創君」
先ほどの合成音声と同じことをいう
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- 23 : 2017/04/09(日) 18:54:35 :
- 「本当に彼女を殺して欠員を出すなんてね」
呆れたような表情で見る
俺は彼の言っている言葉を理解してはいるが
理解をしたくはなかった
「まぁ、欠員はでたのは出た」
「ただ、それで本当に君が本科の学生になれると?」
嘲笑をする学園長
この次の言葉を聞いたらダメだという
脳からの警告
ただ、俺の腕は力なく垂れ下がったまま
耳を塞ぐことができない
「なんの才能もない日向創君」
心臓をピストルで撃ち抜かれたかのように
心臓がいたい
思考が鈍くなる
「いや、なんの才能もない人殺しの日向創君かな?」
彼の発言でさえなんの感情も湧き出てこなくなっていた
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- 24 : 2017/04/09(日) 18:55:04 :
- 「それでは、なんの才能もない人殺しの日向創君に1つ提案しよう」
学園長は人差し指を立て口を開く
「この件に関して逮捕されるわけでもなく、更に本科の生徒にもなれる提案だ」
欲していたものだが俺の感情はなびかない
学園長は一枚の紙を胸ポケットから出し俺に手渡す
「カムクライズルプロジェクト…」
「どうだい?このまま逮捕されるのかこのプロジェクトを受け本科の生徒になるのか」
彼は手を差し伸べる
「さぁ、決断したまえ」
プリントの中に『自我の代わりに全ての才能』と書いてある
俺ではなくなる代わりに才能が
俺は…
彼の手を取った
「ちゃんとよく読んだかい?」
彼の問いかけに
「はい」
と短く返事をして歩き出した
ここで1人の日向創という人間の人生が終わった
完
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- 25 : 2017/04/09(日) 19:00:33 :
- ありがとうございました
いやー難しかったです
でも、秋のコトダ祭り書かずに次には進めないので書きました
今回は本当にありが
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「ふゆぅ…」
誰もいない部屋で1人目を覚ました私は
頭の痛みに耐えながら椅子に座った
そしてポケットから取り出した止血テープと錠剤を取り出し
「馬鹿な男ですねぇ」
そう呟く
「私は超高校級の保健委員なんですよぉ…」
立ち上がりドアに手をかけ誰もいない部屋に向かって
「仮死状態なんて目を瞑ってでもなれますぅ…それになんの才能もない日向さんのために死ねるほど私の命は安くありませんから」
そう呟くと誰もいない部屋を後にした
完
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- 26 : 2017/04/12(水) 23:30:24 :
- たたみかけるような展開!さすがです(;゚д゚)
お疲れ様でしたm(_ _)m
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