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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

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僕らは明日の夢を見る

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  1. 1 : : 2017/03/26(日) 22:44:14
    どうも、はじめましてシロガネと申します。
    この作品は調味料杯参加作品です。
    詳細はこちら↓
    http://www.ssnote.net/groups/2175


    期待コメント等は書き終えたあと返信します!ありがとうございます!
  2. 2 : : 2017/03/26(日) 22:45:19
    ---

    我々人類の科学は第二次高度経済成長によりさらに発達した。
    数ある科学の成功の中でも特に発展したものがある。

    人類はついに人間の記憶をデータ化することにより不死を手に入れることに成功したのだ。
    その方法は人間の記憶をデータ化し、携帯電話のSiMカードのように保存して映像化したりAI(人工知能)にアップロードすることにより記憶や感情を受け継いだ人間のAIができるのだ。これを発案者である葉山直樹(はやまなおき)氏は『SiM記憶データ保存維持装置』と名付け論文を発表し実現した。

    そのような形で永遠の命を実現した人類はさらなる高みを目指し葉山直樹氏を中心とした国の研究メンバーが日夜研究をしている。
    具体例をあげるとクローンの実現や記憶をデータ化したものを過去に飛ばし未来の記憶を持った人間を過去に存在させようとする実験が現在行われている。クローンを作ることに成功すれば100年先も200年先も人間は今のような形で生きることができるようになると葉山直樹氏は語った。

    ---
  3. 3 : : 2017/03/26(日) 22:46:09


    「ねぇ、君。いつも真剣になってその本を読んでるみたいだけど面白いの?」

    と、声が聞こえた。

    僕は本から顔を上げるとそこには青いスクールシャツを着た女の子が目の前に立っている。
    僕は思わず辺りを見回した。

    けれど、この図書館の中には僕と彼女だけのようで、その言葉はやっぱり僕に向けられていることがわかる。僕は少し躊躇いながらもその声に返事をした。

    「え、あぁ。うん、面白いよ」

    と、僕がいうと彼女は少しだけ不機嫌そうな顔をして言葉を続けた。

    「そう。いつも読んでいるみたいだけど、あなたは本が好きなの?」

    と、彼女が真剣な顔でいった。

    「うん、好きだよ」

    と、僕はその問いに対し肯いた。
    すると彼女は少し嬉しそうに僕の方をジーッと見ながら

    「私も本が好きなの」

    と、彼女はいった。


    それからというもの彼女とは色々な話をした。
    好きな本の話だったり好きな食べ物の話だったりとたわいもない話をたくさんと。
    もともと話すことが得意ではないし初対面の人と話すと緊張してしまう僕だったが彼女が放つ話しやすい雰囲気や彼女の聞き上手さのおかげでスムーズに楽しく話すことができた。
  4. 4 : : 2017/03/26(日) 23:06:46
    図書館が閉館の時間になり僕と彼女は近くの公園まで来ていた。

    辺りはすっかり明るさを失い、夕陽の光だけが真っ赤に辺りを照らしている。
    公園では近くでヒグラシが鳴く音が聞こえてくる。
    僕達は公園のベンチに並んで座った。

    僕は時間が気になり右手につけている腕時計をチラ見した。

    ____もう五時か。
    僕はこれといって門限というものはないが遅くなりすぎないように帰らなければいけない。

    話がちょうどよく切れたところで彼女に
    「いま五時だけどそろそろ時間、大丈夫?」

    と、僕は聞いた。

    すると彼女は
    「大丈夫だよ!でも、今日はもう帰ろうかな。心配してくれてありがとうね!」

    と、笑顔でいった。

    それに続けるように彼女が「今日は話してくれて楽しかったよ。明日も図書館には来るの?」

    と、おずおずとした様子で聞いてきた。


    「うん、明日も行くよ。図書館が好きだからね。君は?」

    「よかった。もちろん、私も行くよ!じゃあ、また明日、図書館で会おうね!」

    と、彼女が元気よくいいながら手を振った。
  5. 5 : : 2017/03/26(日) 23:08:50
    SFか
    面白そう期待
  6. 6 : : 2017/03/27(月) 13:37:40


    それからというもの、僕と彼女は毎日のように図書館で会っていた。

    また、しばらくすると彼女とは休館日や休日の日には一緒に出かけたりする仲になっていた。
    彼女のする話はとても面白く僕も興味を惹かれていき、僕は彼女との時間を楽しいと感じていた。

    彼女はとても不思議な人で自分の事はあまり話さない。
    けれど、わかったこともある。

    彼女の名前は鈴の音と書いて鈴音(すずね)というらしい。
    この近くの学校に通っているようで歳は同い年で彼女も僕と同じで本が好きだということだ。

    ____もう少しだけ彼女の事が知りたい。明日になったら聞いてみよう。

    布団に入りながら僕はそう決意した。
  7. 7 : : 2017/03/27(月) 13:39:33



    次の日になり僕は心を躍らせながら図書館に向かった。
    こうやってなにかを楽しみにしながらどこかへ行くということは今までの僕にはなかったことだ。
    僕自身も彼女に影響を受けているんじゃないかと思う。
    僕は図書館の一番端の席。彼女との待ち合わせの席へ向かった。

    今日も図書館は空いている。

    席の方を見るとまだ彼女はいないようだった。
    僕は彼女に初めて声をかけられていた時に読んでいた本を手に取り読むことにした。
  8. 8 : : 2017/03/27(月) 13:40:16
    ---

    高度経済成による現物資の変化

    第一次経済成長は1960年に起こった。
    具体例な例として、石炭から石油への転換が行われた『エネルギー革命』や合成繊維、プラスチック、家電機器などの『技術革命』モータリゼーションや、スーパーマーケットなどの『流通革命』などが代表的である。


    第二次高度経済成長について

    第二次高度経済成長は第一次高度経済成長が起こった約100年後の2060年に起こった。
    具体的な例として、石油から電気エネルギーへの転換が行われた『第二次エネルギー革命』とAI(人工知能)、SiM記憶データ保存維持装置といった『第二次技術革命』が代表的である。
    特にSiM記憶データ保存維持装置に関しては日本だけではなく海外に対しても大きな影響を与えている。


    ---
  9. 9 : : 2017/03/27(月) 18:22:53

    「また、その本を読んでいるの?」

    と、彼女の声が聞こえた。
    声のした方を向いてみると彼女がなんとも言えない顔で僕の方を見ていた。

    「うん、僕はこの本が好きなんだ。君はもしかして……この本、嫌いなの?」

    と、僕が聞いてみると彼女が凄い勢いで首を横に振った。

    「ううん、嫌いじゃないよ。なんでもない!」

    と、彼女はそれを否定した。

    「……そっか。今日は、ちょっと君に聞きたいことがあるんだ。天気もいいし公園にでも行かない?」

    と、僕が切り出してみると彼女は少し不安そうな顔をしながら

    「うん、わかった。いいよ」

    と、応じてくれた。

    僕と彼女は二人で図書館を出た。

    公園に移動してる途中、僕はさっき彼女になにかをしてしまったのか
    それだけが頭の中で反芻されていた。

    ____あの本が原因なのだろうか。
    ____それとも僕に原因があるのだろうか。
  10. 10 : : 2017/03/28(火) 23:49:54
    答えは出ないまま公園に到着してしまった僕は彼女に導かれるままベンチに座った。

    彼女が心配そうな顔で「どうしたの?大丈夫?」

    と、聞いてくる。

    「ごめんね。大丈夫だよ」

    と、僕は応える。
    そして言葉を続けた。

    「本題に入ろう、僕は君のことがもっと知りたいんだ。今までよく話したり遊んだりしてたけれど君のことを僕は全然知らないことに気づいたんだ。教えて欲しい」

    と、僕は自分の気持ちを素直に彼女に伝える。
    すると彼女は驚いたように一瞬、目を見開いてから僕から目線を逸した。

    ____嫌だったのかな。

    僕の心が不安でいっぱいになった頃

    「ねぇ、君は『SiM記憶データ保存維持装置』のこと、どう思ってる……?」

    と、彼女は泣きそうになりながら僕にいった。

    「えっ……?」

    僕は思わず呆気に取られてしまった。
    僕は彼女のことを聞いたはずだったのに世を賑わせている『SiM記憶データ保存維持装置』について聞かれたからだ。

    けれど、彼女の真剣な顔を見ているときっと大切な事なんだろうと思った。

    「僕はすごい装置だと思うよ。この技術がすべての人間に適応されたら誰も死なない。傷つかない世界ができると思う。今にも死にかけている人も死なないで済むということだし」

    と、僕が思う率直な感想を彼女の目を見ていった。

    「そっか。君もそう思うんだね」

    と、彼女は悲しそうにいった。

    「私の名前はね、葉山鈴音。『SiM記憶データ保存維持装置』を完成させた葉山直樹の一人娘よ」

    と、彼女は驚くことを僕に告げた。

    僕は声が出せなかった。
    驚きや彼女が僕のいった言葉に悲しそうな声で『君も』といったショックが僕の声を失わせる。

    「私はね、お父さんがした事を否定するつもりはないけど、私自身は反対なの」

    「私は記憶を保存していつでも見れるようにするよりも、今という瞬間がある、たった一度の記憶だから大切にしたいと思うんだと思うし、今という記憶をずっと心の中にしまっておきたいと思うの」

    「だから、私は記憶をまだデータ化して保存していないの。私は間違ってない。今までそう思ってた」

    と、一度も僕の方から顔を逸らさず真剣な顔で話している。
    彼女は泣きそうだ。


    僕はそんな彼女がいう言葉の一つ一つを噛み締めていた。
    ただ、黙って聞いていた。

    「私はあなたが好きだよ。私はずっとあなたを見てたの」

    彼女が僕に言った好きだという言葉で僕は身体が熱くなるのがわかった。
    けれど、僕の身体はまるで石にされてしまったかのように動かなかった。
    僕はただ彼女の言葉を聞くしかなかった。

    「データ化が進んで誰もが本を読まなくなった今の社会で君はずっと図書館で本を読んでいた。私は、そんな君に興味が湧いたの」

    と、彼女は言ってから一息ついてさらに言葉を続けた。

    「私が図書館で声をかけた時のこと覚えてる?あれね、君と話すきっかけが欲しくて君が好きな本のタイトルを見て、私のお父さんの事が書かれてる本だったから勇気を出して話しかけることができたの」

    「でも、やっぱりお父さんの実験のことを考えるとなんとも言えない気持ちになってしまって君にまで特別扱いされたくなくて、ずっと隠してた。君はもう私とは話してくれないのかな……?」

    と、彼女は泣きそうになりながらいうと、しばらく僕の顔を見て彼女はいつもみたいな優しい笑顔で笑った。けれど、その笑顔はどこかぎこちなかった。

    僕にはその笑顔が作られた笑顔だという事がわかる。
    彼女はきっと僕に心配をかけまいとして無理に笑っているのだろう。
    僕はそんな優しい彼女の問いに応えようと懸命に口を動かした。

    「ううん、変わらないよ。今までと同じだよ。君のことが知れてよかった」

    と、僕は彼女の目をしっかり見ていった。
    僕の本当の気持ち。僕は彼女の事が知れてよかった。

    「本当……?」

    と、彼女は心配そうな声で僕に問いかけた。
    その声を聞いた僕は心配させないように笑顔で告げる。

    「本当だよ。君がどんな人でも僕にとって君は、君だから」

    と、僕がいうと
    彼女はいつものような可愛らしい笑顔で僕の方を見ている。

    「あのね、さっき私は記憶をデータ化したくないって言ったけどいまはもうそんなこと思ってないんだよ」

    「私は君に恋してこれから先も君と一緒に色々な話をしたり色々な場所に行ったりしたいと思ってる。こんな気持ちにさせたのは、君なんだよ?」

    と、彼女はいたずらに笑いながらいった。
  11. 11 : : 2017/03/29(水) 11:17:49



    僕と彼女はその足でまた図書館へ向かった。
    彼女の気持ちを知ってしまった僕は彼女との距離感が掴めず、いつものように話すことができなかった。

    お互いに意識してしまい、その日はすぐに解散になった。



    僕は確かに彼女に対して惹かれている部分はある。
    けれど、その感情が友達としての好きなのか。
    それとも、恋愛としての好きなのか。
    圧倒的に経験不足の僕にはわからなかった。

    けれど、答えは出さなければいけない。


    僕は今日のほとんどを彼女のことばかり考えていた。
    そして、僕はそのままベッドの上で眠りについた。
  12. 12 : : 2017/04/03(月) 23:15:38



    次の日になり僕はまた図書館へ向かう。
    家を出ようとした時に辺りが少しいつもよりも暗く感じる。
    空を見上げてみると大きなたくさんの雲が太陽を覆っていた。
    僕は一度、家に戻り傘を二つ手にとり図書館への道を踏みしめるように歩いて行った。


    図書館の前に着くと、彼女は初めて会った時に着ていたと思われるスクールシャツを着てそこにいた。
    彼女は僕を見つけると小さく手を振り、手招きをしている。

    僕は躊躇いながらも彼女の前まで行くと
    彼女は全然昨日のことを気にしてないような感じで

    「おはよう!傘、二つは多くない?」

    と、笑顔で言った。
    その笑顔に偽りはなかった。

    僕はそれに動揺しつつもなんとか言葉を絞り出すように

    「今日は、雨が降りそうな天気だったからね。これ君の分だよ」

    と、傘を差し出しながら僕はいう。

    「あ、そっか。ありがとう。私傘もって来てなかったから助かったよ」

    と、彼女はなんとも言えないような感じで僕から目を逸らしながら礼をいった。


    僕は彼女にどんな言葉を返せばいいのかわからず、彼女も僕になにを言えばいいのかわからないといった様子で僕たちはお互いに黙ってしまった。

    少しの沈黙が僕らを包み込む。
    彼女の方を見てみると彼女は僕になにか言いたげな様子に見える。

    しかし、いくら待っても言葉がなく沈黙が続くばかりで
    それに耐えかねた僕は思いきって聞いてみようと彼女の方を向きおもむろに

    「昨日のこと、なんだけどさ。もう、少しだけ時間が欲しい」

    「僕は今まで誰かを好きになった事がない。でも、僕は君に出会ってから変わったところがたくさんある。だからもう少しだけ考えたいんだ」

    と、真剣な気持ちを彼女に伝えた。

    僕は今のようにお互いが気まずさを感じているのが嫌だった。
    今までみたいに彼女とは色んな話をして一緒に色んなことをしたいと思っている。

    ____僕はきっと彼女の事が好きなんだろう。

    けれど、それを認めるのには勇気がいることを僕は知っていた。
    関係を変えるということは今までとはまたどこかが"変わる"ということだからだ。
    僕は彼女と出会い少しずつだけど彼女の影響を受け、変わっている。
    今はまだこのままでもいいのかもしれないと思った。



    僕が気持ちを伝えると彼女は少し物悲しそうな表情をしたあとぎこちない笑みで

    「……まずは名前を呼ぶところからだね!」

    と、大きな声でいい
    無理な笑顔で、それを了承した。

    僕は気まづくなった。
    けれど、彼女がせっかく話してくれるんだと僕は精一杯言葉を絞り出して

    「僕は女の子を名前で呼んだことないんだけど……」

    と、戯けた声で言ってみた。



    彼女は笑顔だった。
  13. 13 : : 2017/04/03(月) 23:16:02

    僕たちが図書館の中に入ろうとした瞬間にその出来事は起きた。
    僕の背後から大きな黒い車がきて一瞬にして彼女の前に止まり中から数名の男がゾロゾロと出てきて彼女を拘束し始めた。
    僕は慌てて彼女に駆け寄った。
    しかし、男達は彼女を拘束し終えると僕の方を見て車に乗るように言ってきた。
    明らかな僕の力よりも大きな大人の男のいうことを僕はただ黙って聞くことしかできなかった。

    僕と彼女は手を縛られて車の中に入れられた。
    車の中は黒いカーテンで窓が覆われていて外を見ることができなかった。
    長い間ずっと車に揺られて僕たちは見たことのない廃墟まで連れてた。

    辺りの景色はさっきまではなかった青々とした草木が茂っていてここ山の中のようだった。
    いま思い返してみれば車に揺られている時も車体が飛んだり跳ねたりと、デコボコな道を通ってきたことがわかる。


    ____ここは一体どこだ。

    僕は男達に連れていかれながらまわりの景色を自分の行ったことがある場所を当てはめながら思った。
  14. 14 : : 2017/04/03(月) 23:56:41

    廃墟の中は案外綺麗でなんというか敵のアジトみたいだと思った。
    見ず知らずの男達に縛られ車で山奥の謎の廃墟に。

    僕のいま置かれてる状況が本物ではなく、小説だったならば僕はきっとその物語に引き込まれていくだろう。
    僕の脳内は恐怖や不安といった感情を麻痺させようと馬鹿なことを考えていた。

    けれど、僕はすぐに正気に戻った。
    拉致されたのは僕だけじゃない。
    今も僕の横で震えている彼女も一緒に拉致されているのだから。


    僕が彼女の方を見ていると奥から僕たちを連中のリーダーと思われる男が僕たちを見ながら出てきた。
    そして右腕を折り、左腕を背中に回しながらまるで客人を出迎える主人のように

    「いらっしゃいませ。私たちのアジトへようこそ!」

    と、生き生きとした顔をしているのにどこか歪んでる顔をしながら連中のリーダーと思われる男は言った。
    そして、縛られた僕と彼女を奥の部屋へと手招きした。




    奥の部屋へと招かれた僕と彼女は戸惑いながら男の方を見ると男は急に真面目な顔になり彼女の方をジーッと見ながら

    「なぜ、お前がここに呼ばれたかわかるか?」

    と、リーダーと思われる男が言うと、さっきまで見せていた歪んだ笑顔は消えた。



    そして、それに続けるように彼女を睨みながら怒鳴り声で




    「お前の親父の葉山直樹は偽善者だ。『SIM記憶データ保存維持装置』という大変なものを作りそれを政府に明け渡し莫大な金を貰っている」



    「葉山直樹はその金を使い自分の身の回りの人間の記憶だけをデータ化し、死なせないようにしている!お前らはどうして政府が本当『SIM記憶維持装置』が人間の記憶をデータ化しアップロードできる事がわかるか知っているか?」



    と、僕たちを拉致した連中のリーダーの男は自嘲げに言った。
    そして続けるように



    「簡単な話だ。政府はお前の親父が作り上げた悪魔の発明のせいで多くの人間が実験体にされたんだ。お前親父と政府は血も涙もない悪魔だ!お前の親父と政府の人間は我ら人類の敵だ!」


    と、僕たちを拉致した連中のリーダーの男は怒鳴り散らしながらいうと
    苛立ちからか近くにあった木製の小さな空き箱を蹴り飛ばした。

    そしてドアを開いて部屋の外へと出ていった。
  15. 15 : : 2017/04/03(月) 23:57:14
    横にいる彼女の震えが僕に伝わってくる。
    明らかに自分よりも歳が上の男性に本気で怒鳴られたのだ。
    僕だって、同じことをされたらきっと恐ろしくて震えてしまうと思う。

    そして、あの男のいうことが本当ならば彼女のお父さんは政府と協力して多くの人を実験体にしてきたという。本当の事なのだろうか……。

    ____あの男は本気で怒っていたように見えた。
    ____なんの確証もなしにそこまで怒れるのだろうか。

    僕はそんな雑念を吹き飛ばすために、彼女にしか聞こえないような小さな声で僕は彼女を励ました。

    「大丈夫だよ。きっと、助けは来る」

    「また一緒に図書館へ行こう。僕も君が好きだ」

    僕は彼女に自分の想いを告げた。
    僕がこういったのは自分自身がこの状況で無事に帰れるかのかどうかが不安だという気持ちを吹き飛ばすために、そして自分を奮い立たせるためにいった。

    彼女は僕の手を握り泣きそうな顔で無言で肯いた。
    そして、作戦を説明した。
  16. 16 : : 2017/04/03(月) 23:58:04
    僕は彼女の手を離した。そして、彼女が僕の親指につけられた結束バンドを歯で噛みちぎると僕は彼女の手首につけられている手錠の鍵を探しに行こうとおもった。

    そして、左の拳に力を込めると
    僕はリーダーと思われる男が出ていった扉の前に立ち大声で叫ぶ

    「葉山鈴音が逃げたぞおおお!!」

    と。



    すると、さっき僕たちを捕らえた男の一人が大慌てで部屋に確認をしに来た。
    僕はすかさず近くにあった空きビンを持ち柱の影に隠れ息を潜めた。


    油断をついてあの男たちの持ってる彼女の鍵を取り返さなければという気持ちだけが僕の中を巡っていた。



    僕をしようとしていることを彼女は知っている。
    そのため彼女は自分に注意を引き付けてその男の油断を誘った。
    そして僕は空きビンでその男の頭に殴りつけた。

    何度も。何度も。何度も。

    男はしばらくして動かなくなった。
    殺してしまったのではないかと思ったが息はあるようだ。
    僕は男のポケットから携帯電話を取り出し警察へと通報した。
    場所はわからないがこの携帯からの発信を逆探知すればきっと助けが来る。



    そう思った。



    けれど、それらすべてが奴らの思惑だった。
    男が一人で来たのも油断させるためだったんだ。
    僕が警察に連絡をしている時にさっきのリーダーの男はもう彼女の後ろにいた。
    そして、僕は固まった。
    彼女の胸に突き刺さるナイフを見た。
    素人でもわかる。

    その場所は……心臓だ。
    彼女はもうすぐ死んでしまう。

    僕は思わず叫んだ

    「どうしてこんなことをするんだよ!」


    向こうは平気そうな顔でそれを受け流すように

    「どうして殺しちゃいけないんだ?こいつ死なないんだろ?」

    と、笑いながら言った。



    僕はすべてを察した。

    彼女はここで死ぬ。
    彼女との時間はここで終わってしまう。
    僕の瞳に映った彼女の最後はどこか寂しげだった。



    ____鈴音。
    ___僕は彼女を死なせてしまった。
  17. 17 : : 2017/04/03(月) 23:58:30


    後に、過激派組織の一味は警察に逮捕された。
    彼女を殺害した容疑者は警察の取り調べにこう答えていたらしい

    「『SiM記憶データ保存維持装置』の開発者、葉山直樹の娘なら既にSiM記憶データのバックアップをとってあると思った」と。


    彼女は死がなくなったこの世界で死んだ。
    そして、彼女の死はこの国に様々な影響を与えた。

    彼女の死を憐れむ者。
    彼女の死を嘆く者。
    彼女の死を嘲笑う者。


    ____でも、僕は知っている。
    ____彼女がこの世界でまだ生きていたいと思っていたことを僕は知っている。



    彼女の死は今まで以上に、死に対するこの国の民衆の意識が高まった事件として深く人々の心の中に残っていった。
  18. 18 : : 2017/04/03(月) 23:59:35
    滑り込みで完成です!
    期待コメありがとうございました!
  19. 19 : : 2017/04/16(日) 23:09:49
    乙です!こういう話好きです笑笑
    なんか続きがありそう笑
    次作も期待です
  20. 20 : : 2023/07/11(火) 09:06:13
    http://www.ssnote.net/archives/90995
    ●トロのフリーアカウント(^ω^)●
    http://www.ssnote.net/archives/90991
    http://www.ssnote.net/groups/633/archives/3655
    http://www.ssnote.net/users/mikasaanti
    2 : 2021年11月6日 : 2021/10/31(日) 16:43:56 このユーザーのレスのみ表示する
    sex_shitai
    toyama3190

    oppai_jirou
    catlinlove

    sukebe_erotarou
    errenlove

    cherryboy
    momoyamanaoki
    16 : 2021年11月6日 : 2021/10/31(日) 19:01:59 このユーザーのレスのみ表示する
    ちょっと時間あったから3つだけ作った

    unko_chinchin
    shoheikingdom

    mikasatosex
    unko

    pantie_ero_sex
    unko

    http://www.ssnote.net/archives/90992
    アカウントの譲渡について
    http://www.ssnote.net/groups/633/archives/3654

    36 : 2021年11月6日 : 2021/10/13(水) 19:43:59 このユーザーのレスのみ表示する
    理想は登録ユーザーが20人ぐらい増えて、noteをカオスにしてくれて、管理人の手に負えなくなって最悪閉鎖に追い込まれたら嬉しいな

    22 : 2021年11月6日 : 2021/10/04(月) 20:37:51 このユーザーのレスのみ表示する
    以前未登録に垢あげた時は複数の他のユーザーに乗っ取られたりで面倒だったからね。

    46 : 2021年11月6日 : 2021/10/04(月) 20:45:59 このユーザーのレスのみ表示する
    ぶっちゃけグループ二個ぐらい潰した事あるからね

    52 : 2021年11月6日 : 2021/10/04(月) 20:48:34 このユーザーのレスのみ表示する
    一応、自分で名前つけてる未登録で、かつ「あ、コイツならもしかしたらnoteぶっ壊せるかも」て思った奴笑

    89 : 2021年11月6日 : 2021/10/04(月) 21:17:27 このユーザーのレスのみ表示する
    noteがよりカオスにって運営側の手に負えなくなって閉鎖されたら万々歳だからな、俺のning依存症を終わらせてくれ

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