このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。
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提督「着信」
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- 1 : 2017/01/29(日) 04:16:23 :
- 12月某日、夜。鎮守府から500メートル離れた丘で凍てつくような寒さの中、駆逐艦 菊月は狙撃銃を構えていた。狙う先は―――――鎮守府、提督室。
菊月「許さない。あの男を。絶対に!」
次の瞬間、海軍将校の服を着た人物が提督室に入ってきた。そして椅子に腰かけ、書類に目を通す。
菊月が銃のボルトを後退させると、ガチャンという金属音とともに5.56x45mmの実包が薬室に装填される。スコープをのぞき込み、十字のレティクルの中心より少し下に提督室の人物の頭を合わせ、トリガーに指をかける。菊月の心拍数が上がる。
菊月(殺れる。ついに殺れる。睦月姉さんや如月姉さんを子供が産めない体になるまで犯し、皐月姉さんや水無月姉さんが廃人になるまで拷問したあの男を!)
菊月は引き金を引いた。撃針が落ち、薬莢内の火薬が燃焼する。弾丸はライフリングによって高速回転をしながら勢いよく銃口を飛び出す。1000m/sの速さで進む弾丸は、目標に命中。純白の軍服を真っ赤に染め上げる。
菊月「や、やった。ついに成し遂げた!」
スコープのレンズに映った真っ赤な軍服を確認した菊月は喜びの声をあげた。
ヴヴヴヴ ヴヴヴヴ
そのとき、ふと菊月の携帯が鳴った。
菊月「なんだ?こんな時間に……はい。こちら菊月。」
提督『こ ん ば ん は 。 菊 月 。 』
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- 2 : 2017/03/02(木) 00:22:01 :
- 菊月は困惑した。当然である。自分の手で生命活動を終了させたはずの男が話しかけているのだから。
菊月「……は?」
菊月は思考停止した。
あり得ない。今、たった今、ほんの数十秒前に、銃弾が頭を貫通し盛大に血飛沫をあげて倒れたのだ。ピンク色の大脳皮質さえみえたのだ。生きているはずがない。
提督『どうしたんだい?僕を忘れちゃったかい?』
声だけでも頭に浮かんでくる。受話器の向こう側でほくそ笑む男の顔が。
忘れるはずがない。家族を廃人にした男だ。
菊月「何故…何故貴様が生きている…?貴様は…」
その瞬間。
提督「『私が殺したはず…そういいたいんだろ?』」ニヤ
目の前に。
菊月「う…うわあああああああああああああああああああ!」
菊月「どうして生きている?!どうしてここにいる?!お前は私が確かに殺した!間違いなく頭を貫通したのに!血飛沫だってあんなに出たんだ!生きてるはずがない!なんで!なんでかすり傷一つなくここにいるんだああああああああああああああああああああ!」
菊月は無傷の額目掛けて携帯を投げつけ、南部式小型拳銃を懐から取り出し発砲する。
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- 3 : 2017/03/30(木) 22:28:49 :
- 提督「おっと」パシ
携帯を捕らえる。
提督「菊月」
バン、バン、バンと菊月から放たれた7㎜南部弾を避ける。弾と弾の間を縫うように進み、菊月との距離を詰める。
菊月「あ、あ、あ、」
元々サイドアームとして所持していたもの。予備の弾倉もなく、弾切れの銃はホールドオープン。硝煙も発生源を失えば霧散し、残り香も薄れる。
提督「ゲームオーバーだ。」
提督「私に刃向かったのは君が初めてだ。冥土の土産と言っては何だが、面白いことを教えてやる」
菊月「……」
叫んで体力が無くなったのか、それとも心が壊れてしまったのか、菊月は虚ろな目を虚空に向けたまま、喋らない。
提督「返事もなしか。まあいい。一回、お前の主張する俺の死体とやらをじっくり観察しろ。」
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- 4 : 2017/06/06(火) 23:14:23 :
- 菊月は言われるがままスコープを覗く
見えるのは勿論血と肉塊。変わったところといえば血が黒く酸化したぐらいだ
菊月「なにも…おかしいとこなんて……!」
いや。明らかにおかしい。死体と周りの家具を比べると死体の背が低すぎる。
それだけではない。髪が長すぎる。しかも茶髪だ。
提督「わかったようだねぇ?」
この鎮守府で提督でなく、長髪で、かつ低身長の者___
菊月の妹、文月ただ一人である。
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- 5 : 2017/06/06(火) 23:33:12 :
- 菊月「そんな…私は…私はッ……」
提督「今日文月に制服を奪い取られてな。あとでお仕置きと思ったんだが、まさか姉自ら手を下すとは…」
菊月「私はやってない!そんなの信じない!認めないいいいいいいいい!」
妹を殺したという事実。困惑、後悔、現実からの逃避、罪悪感。
様々な感情が押し寄せる。受け止めきれず、正常な思考もできない。
提督「いい加減認めろ。お前が!自分の意志で!無残にも!自分の妹を殺したんだ!」
提督の放った言葉は刃より鋭く、鈍器より重く、菊月の心に突き刺さる
_______心、崩壊。 菊月、陥落。
また一人、鎮守府に廃人が増えるのであった。
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