この作品は執筆を終了しています。
たまには、
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- 1 : 2017/01/10(火) 21:15:01 :
- attention!
・これは突発的な一時間クオリティの5レス程度の短いssです
・星さんと斬美さんが好きな筆者による、それっぽくしようとしたけど不可能だった星斬(?)です
・上記の二人しか出てきません
・体験版未プレイ者なので口調や人称、設定等に違いがあるかもしれません
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- 2 : 2017/01/10(火) 21:15:41 :
- 瞼をベッドの上で開いてから一度足りとも無駄な動きを見せずに、そこにいる女性は髪を整え、顔を清め、部屋を美しくした。
そして隙も欠落も存在しない、完全で瀟洒…そう呼ぶに相応しいような制服を身に纏い、深呼吸をして一人、部屋の中で呟いた。
「…さて、行きましょう」
超高校級のメイド、東条斬美。
彼女はいつものようにモノクマの忌まわしいアナウンスよりも先に目を覚まし、道具を片手に寄宿舎の掃除を始める。
彼女による毎日の掃除のおかげでそこまで埃は溜まっていない。
もちろん、だからと言って手を抜くわけは…彼女の性質上絶対に無いのだが。
コロシアイと云う異常な状況下でも、彼女は自分の信条を崩さずに仕事を全うしていた。
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- 3 : 2017/01/10(火) 21:16:04 :
- だが今日だけは…違ったのだった。
掃除道具を手に持ったまま、ふらふらと揺れるように東条はその場に座り込んでしまったのだ。
「…私とした、ことが…」
頭を押さえ、自分の不甲斐無さを彼女は恨む。 今の状態の理由は明白だが、明白故に誰かに助けを求めようとは一切しなかった。
それと同時に、この時間帯には基本は自分以外の人間がいないことに感謝をした。
こんな自分の姿を見られるわけにはいかない。 それが彼女のプライドであり、超高校級のメイドとしての誇りだった。
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- 4 : 2017/01/10(火) 21:16:32 :
- 「…おい、大丈夫か?」
だが不運にも自らの背後から聞こえたその低く渋い男性の声に、東条はしまったと心の中で呟く。
それと同時に、声の持ち主もしまった、と頭にその文字を浮かばせた。
「大丈夫よ…。 ただ少し立ちくらみがしただけ…」
「…ただの立ちくらみには到底見えないがな」
「貴方には……関係無いでしょう? 貴方の方こそ、関わるなと言っておいて他人の心配だなんて…」
見られてしまった苛立ちからか、目の前の彼が触れられたくなかったであろう箇所にわざと彼女は触る。
僅かに顔を顰めた彼……超高校級のテニス選手、星竜馬は、再び自らの行動を悔やんだ。
それを極力表に出さないよう冷静に思考をまとめながら、諦めがちに東条をその瞳で射抜きながら会話を続けた。
「そんな風に顔を真っ青にしてる奴…ましてや女を無視するなんて、今の俺には不可能だった…それだけの話だ」
「構わないで…」
「いいや、構うさ」
高校生には到底思えない…そんな印象を受ける眼差しから逃げるように顔を伏せながら、東条は拒絶の言葉を吐き出す。
だが、それを息を吸う間もなく星は否定する。
顔を歪める彼女に悪いとは思いながらも、星はその場から離れようとはしない。
「それはたまたまのもんじゃないだろうな…。 理由は考えなくてもわかる…。昨日のモノクマからの動機…そうだろう?」
彼の言う通り、東条が滅入っているのはその動機の所為なのだ。
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- 5 : 2017/01/10(火) 21:16:58 :
- 昨晩、才囚学園に集められている超高校級の生徒たちに向け、モノクマが殺人を促すための物を用意したのだ。
それは二分もしない程度の短い映像でありながらも生徒たちの心を深く深く沈め、顔面蒼白にさせる程のものだった。
当然、そうなったのは東条斬美も例外では無いのである。
静かでありながらも的確で、重みを一言一言に持たせる星の言葉に観念したのか、彼女は口を開く。
「…そう、よ…。 むしろ、あんな物を見せられて…正気でいられる方がおかしいのよ…」
「だったら何故、あんたは掃除をしようとしてたんだ?」
「それは…」
「メイドとしての義務か?滅私奉公という信条か? その顔を見る限りは…その通りみたいだが」
普段の落ち着きを無くしてしまっている東条は、揺れることの無い星のその声のトーンに言われるがままに圧倒されていた。
「…馬鹿馬鹿しいな。 才能に囚われていやがる…。 将来も希望も才能も何もかも捨てた俺からすれば、尚更見ていられねー…」
星は冷たく言葉を並べながら、視線を僅かに逸らす。
「…だから、今日くらいは…、たまには大人しくしてろ。 いつも通り装ってるつもりでもそんなふらふらじゃ見てるこっちが困る…。
どうせ俺や王馬みたいなの以外はあんたと同じか、それ以上になってんだ…。誰だって気にも留めねーよ」
「………ありがとう」
どこか安心したような感謝の言葉をポツリ、と東条は空間に落とす。
「なんで礼を言われなきゃいけないんだか…。 俺は独り言を言ってただけだ」
「…そう」
それ以上お互い何も続けず、東条はさっと道具を抱えて自らの部屋の前へと戻った。
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- 6 : 2017/01/10(火) 21:17:22 :
- 「…休むことは嫌いだけれど…体調管理も仕事のうちだというものね」
自分が部屋の中に道具をしまう姿を見届ける星に向かって、彼女はお淑やかに微かに微笑みながらそう言った。
「おいおい、早速仕事に関連付けてるんじゃねーか…」
「ただ、言ってみたかっただけよ。 …そんな顔しなくたって、たまの今日くらい…キチンと休息を取らせてもらうわ」
東条は呆れている星を背にそう言うと、静かに部屋の扉を閉めたのだった。
それを見届けると、星はため息を一つ吐き、自らを笑うように誰もいないその空間で呟いた。
「…ほんと、人殺しなんかが何やってんだか…。 なんで部屋から出たのかも忘れちまったしな…」
彼は目を伏せながら、それでもほんの少し口元に笑みを浮かべながら心の中に言葉を落とす。
「それでも、まあ…」
奇しくも同じ瞬間、部屋に居る東条斬美もまた、同じ事を考えていた。
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- 7 : 2017/01/10(火) 21:18:15 :
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‘____たまには、良いか’
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- 8 : 2017/01/10(火) 21:21:57 :
非常に短かったですが、読んでくださりありがとうございます。
対して長い文章では無いのですが、面白いと思ってくださっていたら幸いです。
V3の発売まで残り僅か…とっても楽しみです!
それでは、また。
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- 9 : 2017/01/16(月) 02:34:41 :
- 綺麗な文章で見やすく、面白かったです!
V3発売後の今、発売前にここまでの作品があったことを驚いています。お疲れさまでした!
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- 10 : 2017/01/16(月) 08:03:13 :
- >>9
私には勿体無いほどのお言葉…誠にありがとうございます。
キチンと筆を執ったのは久しい事だったので少々不安だったのですが…そう言っていただけると非常に嬉しいです。
また、短い日数にも関わらず、閲覧数の上がるペースが早く、本日数字を見たときは思わず驚愕してしまいました…。
何度感謝しても感謝しきれません。 改めて、今作を読んでくださりありがとうございます。
まだまだ未熟者ですが、筆を再び執る時にまた読んでくださると幸いです。
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- 11 : 2017/01/20(金) 12:50:53 :
- 言い回しがすっごく好きです!
是非とも続きを書いて欲しいです…!
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- 12 : 2017/01/21(土) 00:40:04 :
- >>11
感想、ありがとうございます。 回りくどくなってしまっていないか気掛かりでしたが、その言葉で安心いたしました。
私は未だに時間の都合で一章までしか出来ていないのですが…短い物で良ければゆるりと想像を重ねて書きたいと思います。
きちんと続きになれるかは保証できませんが。
関係の無い話ですが、二章でどちらかが退場してしまいそうで非常に不安です…。同時退場されたらと考えると…涙しか出ませんね(笑)
プレイを経て、秘密子とアンジーの二人もお気に入りになったので、いつか二人の話も書いてみたいです。
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- 13 : 2017/06/24(土) 21:58:15 :
- >>12
私はなんでこんなこと書いてしまったんだろう………辛い…
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