幸福を望む
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- 1 : 2017/01/06(金) 22:38:50 :
- 初投稿です。拙い文ですがどうぞよろしくお願いします。
ユミルメインのお話です。
ほんのりとベルユミが含まれておりますのでご注意ください。
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- 2 : 2017/01/06(金) 22:39:19 :
ただ存在するだけで世界から沢山の人から憎まれた。だから私は死んであげた。大勢の人の幸せを祈りながら。
…その時、心から願ったことがある。
もし生まれ変わることが出来たのなら…今度は自分のためだけに生きたい。心から強く願って私は死んでいった。
そこからは何もわからない。理解できるのはずっと悪夢を見ているそれだけは理解できた。苦しくて辛くて堪らない。逃れることはできなく受け入れるしかない。
長い長い悪夢から解き放たれた時はあまりの嬉しさで涙が零れた。神様の贈り物なのかとも思えるほど。悪夢から解放され、やっと自由を手に入れたのだから。
「綺麗…」
見上げた空には無数の星がちりばめられ華々しく輝く。
星空を見てこんなにも感動するなんて思いもしなかった。
ユミル、それが私の名前。
嫌いで嫌いで堪らない、私の人生を苦しめたものだ。
運良く第2の人生を得ることができた。“ユミル”の名で定められた運命なんて人生なんて関係ない。私は復讐するんだ。“ユミル”として最高にイカした人生を送ってやるんだ。それが私の人生に対する復讐。
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- 3 : 2017/01/06(金) 23:17:22 :
- なんとか生きるために潜り込んだ場所は一言で言えば凄絶だった。詳しいことはわからないが、超大型巨人と鎧の巨人が長年巨人から防衛していた壁を壊したのが事の始まりらしい。
人々は絶望的な面をしていた。
当然のことだと理解できる。巨人からの恐怖は決して逃れられるものではないから。
しかし、壁の外出身である私には壁の中のことが不思議であった。謎に包まれている。
壁の中で過ごすために教会へ駆け込んだ。孤児ということもあり渋々であったが受け入れてもらった。
しかし、私との言葉が全然違く字も違う。話も全然通じなくて会話もままならない。筆談も試みたが使っている言語が違うせいで無理だった。結局慣れるまでには2年も掛かってしまった。
教会での生活に慣れて言葉も理解し始めた頃、ある話が小耳に入った。
この不思議に包まれている壁について重要な鍵を握る少女がいることを。その少女はある貴族の妾の子で誰も望まれずに生きていたらしい。名を変えて別人のように過ごしている。
司祭達はそんな会話をしていた。
会いたい。
真っ先にそう思った。
今の私は相当恵まれている。その少女は今年に訓練兵団に入団するらしい。なら私も訓練兵団に入ってその子を探す。
生まれ変わって初めてこんなにも楽しい気分になったのだ。
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- 4 : 2017/01/07(土) 13:27:18 :
- 「なあ…お前…いいことしようとしてるだろ」
「え…?」
会いたくてたまらなかった少女の目星は着いた。
今、初日からへまをして死ぬほど走らされてた芋女にパンと水を与える少女。
--名はクリスタ・レンズ。
金髪碧眼で小さく愛らしい容姿の少女。こいつが妾の子に違いない。司祭が話していた容姿と一致している。
会えて嬉しいはずなのに心の中で渦巻く感情はイラつき、腹立ちと言った悪い方向ばかりである。
「それは芋女のためにやったのか?お前の得た物はその労力に見合ったか?」
「……」
私の問いに答えずただ見つめくるばかりだった。
この目が気に入らない。
「…まあいい、とにかくこいつをベッドに運ぶぞ」
膝元で倒れている芋女を肩に担ぎ立ち上がる。
「貴女も…いいことをするの?」
「こいつに貸しを作って恩に着せるためだ。こいつの馬鹿さには期待できる」
お前と私は違う。
お前の目的は知らないが私はお前みたいに無償で優しくするわけじゃない。労力に見合ったものを礼に返させる。
私と似ていると思ったがそうでもないんだな。
「ねえ…貴女は教官の通過儀礼を受けてないよね?名前は何ていうの?」
「…ユミルだ」
「ユミル…これから仲良くしてね」
「…ああ、よろしくなクリスタ」
「うん!!」
悪いなクリスタ、お前の事利用させてもらうぞ。
興味本位で近づいたがやっぱりお前はこの壁の中秘密を握る鍵なんだって本能でわかるんだ。
私はこの壁の事をこの世界の事を知らなくてはいけないんだ。
「明日から本格的に訓練が始まるね。そのためにも今日はたっぷり休まなくちゃ!」
「はいはい、さっさと部屋に戻ろうか」
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- 5 : 2017/01/07(土) 16:45:52 :
- 【クリスタside】
初めての訓練は立体機動装置に慣れるための基本的な姿勢を出来るかどうかの訓練。ベルトだけで姿勢を維持するのが難しく皆苦戦している様子が窺えた。
でも…これを達成できないと開拓地に送られる。
それだけは何としても阻止したい。
自分の番が回り、大きく深呼吸をして臨む。
「あ…っ!」
持ち上げられ支える場がなくなり一瞬だけふらついたけどなんとか持ちこたえてぎりぎり合格することが出来た。
ユミル…ユミルは大丈夫かな。
背が高く、整った顔立ちの大人びた子。昨日の事で第一印象はよくないけど悪い人じゃないと思う。言い方は悪いけど心優しい子だと思える。
だって、サシャを自ら運んだのは私の体格じゃ無理だと判断してのことだもの。
ユミルの目は私の中を見透かしてそうで怖くなるけどもし、もしも許されるならありのままの私と仲良くしてほしい。
ユミルの事もっと知りたいって思い始めたんだ。
「女神いいいいいいいぃぃぃいいい!」
「え!?サシャ、どうしたの?」
「今日のパン半分でいいのでお恵みをおおお」
「ええ…うーん……お腹いっぱいだったらね?」
サシャはテストの様子を見たところ運動神経がよくて教官からも讃頌されていた。
食い意地が張っていて朝食も皆からパンをねだるところ見かれたなぁ。ただ、ユミルに昨日の事で水汲みとか雑用任せられていたけど。
断らないのが不思議なんだよなぁ。
嫌なら嫌って言えばいいのに。
「サシャはユミルのことどう思う?」
「どう思うですか?…うーん、まだ親しくないので何とも言えませんが周りのことを考える人だと思いますよ」
「周りのことを?」
「勘なんですけどね!もっともっと親しくなっていきたいと思います!雑用とか任せられてもパンをくれるならいつでも歓迎ですし」
サシャはユミルにそういう印象を抱いてたんだ。
「あ、クリスタ。ユミルの番みたいですよ!」
サシャが指した方向を見れば余裕そうな表情を浮かべるユミルがいた。
ユミルも運動神経がいいんだ…。
合格を貰ったユミルは私達を見つけるとこっちの方へと来た。その表情は企んだような不敵なもので楽しそう。
「なあ…クリスタ、サシャ。エレンを見てみろよ」
「うわー、見事に逆さまです」
「あれじゃあ開拓地送りになっちゃうわ…っ」
「エレンは苦手なんでしょうかね?」
「…いや」
「…?ユミルは何なのかわかるの?」
先程まで楽しそうにしていた顔が何か考える顔となりエレンを見つめていた。…いや、エレンというよりはエレンのお腹あたりを真剣に。
私もつられてエレンのお腹を見るけど何もわからず仕舞い。
「なんでもねえよ…気にすんな」
エレンを見て周りの人達は次々と馬鹿にするようなことを小さな声呟き始めた。
(…貴方達だってこれといった才能がある訳でもないのに目立っている人間が失敗するとそうやって嘲笑うのね)
「め、女神が怖いです……」
「…え?ご、ごめん!色々考えてて……エレン開拓地に行っちゃうのかな…」
「明日再試験を行って合格したらいいみたいだ」
「そっか…よかった……」
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- 6 : 2017/01/08(日) 20:57:17 :
- 【クリスタside】
エレンのための再試験がある今日。
皆がエレンに注目を集める中、再試験が始まる。
昨日と打って変わり表情が硬いものとなっており昨日馬鹿にしていた人達にも緊張が走っている。皆が注目する最中ゆっくりとエレンの体が浮き、綺麗にバランスを取る。
歓声が沸き起こる。
「やった!エレンはこれで…」
「…いいや、見てみろ」
「どう見ても成功じゃ……あっ!」
訝しげに見つめるユミルの言いたいことがわかった。
“うああああっ!!”
エレンの叫び声と共に体がぐるりと逆さまになってしまった。まるで昨日と同じように。
(どうして…?)
拭えない疑問を必死に消し、ただ深々と見つめるユミルを見た。やっぱりユミルはエレンのお腹辺りを見つめているばかり。
キース教官がエレンに近づくと、エレンとトーマスのベルトを交換させた。
「んん?どういうことですかね?」
「ねぇ…ユミルはもしかして……」
「さぁ、なんのことかな」
エレンのベルトの金具が故障していて今までの試験に支障を下していたとのことらしかった。
……ユミルはこのことに気付いていたの?
後で聞いてみなくちゃ…だって物凄く気になるもの。
「…クリスタ、今は余計なこと考えないでエレンを祝いな」
「うん…」
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- 7 : 2017/01/08(日) 22:58:13 :
- 【クリスタside】
ユミルと一緒に夕食やお風呂をしていたのに気が付けばふらっといなくなってしまいベルトのことを聞けずにいた。
まるで猫みたいに気まぐれで掴み所がない。
捕まえようとすればするりと避け、気が付けばまたすり寄ってくる。もどかしい気分に苛まれる。
…見つけた。
男子よりも高い身長ですらりとした体系はユミルしかいない。
まだ14歳なのに身長が高めで羨ましい…。成長期が早いっていうのもあるけどユミルは格段に速い気がする。成長期の遅い男子はユミルより小さい人が多いし大きい人なんて少数。
って、こんなこと考えてる場合じゃない!
「ユミル!!」
「なんだ、いい子ちゃんは寝る時間だぞ」
「もうっ…私がユミルに聞きたいことがあるってわかってるでしょ…はぐらかさないで!」
「悪かったよ…んで、エレンのベルトのことだろ?聞きたいって言うのは」
「うん。ユミルはエレンのベルトが壊れてるって気づいてたの?」
「…まぁ、半信半疑だったがな」
じゃあユミルが真剣な顔でエレンのお腹を見ていたのはベルトが関係しているってわかったからなんだ。
…じゃあ、どうしてわかったの?
「どうして?…どうしてわかったの……?」
「答える義理は無い」
「!?どうして?」
「お前さ、私と…いや、皆と仲良くなる気なんてさらさらねえだろ?」
……は。
ユミルは何を言っているんだろうか。
意味わかんない。
私は皆と卒業するまでの3年間仲良く過ごしたいって思っているのに。会って間もないユミルになんでこんなこと言われなくちゃいけないの。
それに…ユミルだってそうじゃない。私と同じになるじゃない。
人を近づけない雰囲気を出して人を遠ざけているくせに。
「親しくしようとしないやつに私の意見を言うつもりはない」
「…待って、貴女だって……っ!」
「お前と同じだって言いたいのか?違うね、根本から」
「どこが違うの?」
「私は心から親しくなりたいと思ったやつがいる。私に歩み寄ってくれるやつがいるのなら私はそいつと仲良くなりたい。…けど、クリスタ…お前はただ“いい子”の仮面をつけた人形だ。周りにいい子っていう印象を与えれば満足なんだろ?」
違う。
いい子を被ってるんじゃない。
「お前の本質はまだ知らないが今私が見てるクリスタは本当のお前じゃないだろ?」
違う。
ユミル、貴女が今見ている私が本物なの。
「じゃあな」
待って、話はまだ終わってないの。
遠ざかろうとするユミルの腕を掴み歩む体を止める。お願い、私を見てよ。勝手にいなくなろうとしないで…まだ話は終わってないわ。
「わ、私は本当にユミルと仲良くなりたいわ…!!」
「…なら私に歩み寄ってくれ、待ってるからよ。話はそれからだ」
「ユミルは私のこと詳しく知ってるのね…っ」
ユミルはぽんぽんと優しく頭を撫でる。
「…私とお前は違うが…似ているんだよ私達は」
鼻の奥がツンと痛み、じわじわと涙が溢れてきた。視界を霞ませる涙のせいでユミルの顔がよく見えない。
ただ一つ、わかったことは私を撫でるユミルはとても優しい顔をしていたことだけ。
仲良くなったのなら、友達になれたのなら教えてくれるのだろうか。
ユミルのことを。
私が気になること全部全部。
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