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【短編集】アルミンのお夜食屋さん

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  1. 1 : : 2016/12/14(水) 17:01:30
    どうもお久しぶりです。
    砂味のぱふぇ(旧名:セレナ・ティレス)です。未熟ながら飯テロを書かせて頂きます。
    取り敢えずプロローグを投下























    〜プロローグ〜








    ここは対巨人用に作られた壁内。
    そして人類が巨人に抗う為の技術を学ぶ場、名を『訓練兵団』。
    この訓練兵団は様々な場所からやってきた若き兵士達が日に日に厳しい訓練を重ねている。
    お給金や休日は出るには出るのだが如何せん量が少ない。唯一の癒しである食も味付けが薄く、パンは硬い。
    兵士の鬱憤は日々溜まってゆく。故に休日に給金を散財させてしまう。
    この壁内では塩も肉も入手出来る量がとても少ない。塩は岩塩を、肉は牛や羊を。しかし肉は上流階級でも無いと出回らないという貴重な品。訓練兵に年一で支給される肉類は干し肉だけである。
    そんな不満を抱えた兵士達が夜な夜な抜け出してとある場へ向かうと言う情報を聞き入った。
    そこへ向かう一つの人影……
  2. 2 : : 2016/12/14(水) 17:02:54
    取り敢えず本編一つ目投下。













    第1話:訓練教官











    私はキース・シャーディス。
    訓練兵団を纏める総訓練教官である。
    私は元々、調査兵団の団長をしていた。だが、一人の若者の死、そして母の嘆きによって私は挫折してしまった。
    我ながらも心が弱いと思う。そして後にヤケ酒に走る自堕落な生活を送っていた。
    当日、団長補佐であった エルヴィン・スミス君はさぞ困っていただろう。
    だが、ふとして今期の兵士の父、そして私の旧友である彼は姿を晦ましたと言う。
    それはシガンシナの悲劇が起こる以前の出来事。母と息子、義理の娘を置いて医師の仕事だと言って結局として帰って来なかった。
    彼が今何をしているのかも分からない。だが、彼の失踪を目の当たりにして目が覚めた。
    息子達は母と父を失ったが、決して絶望をしきってはいなかった。
    そこから、彼の息子は巨人を殺す為の技術を磨く為に訓練兵団に入ると知った。
    当時、調査兵団の団長だった私は憲兵団の管理局に無理を言って訓練兵団の教官になった。





    昔話は兎も角として、今は訓練兵団の教官として職務をしている。
    最近夜な夜な訓練兵達が抜け出していると聞いた。
    もしも危険な行為や自暴自棄に走って幻惑剤や快楽剤などを摂取しているのなら私の落ち度だ。責任を重んじて受けよう。





    ………さて、着いたのは小さめの小屋。
    何やらこの中から匂いが漂ってきている。
    この中で何が起きているのだろうか。私は取り敢えず扉を開けてみることにした。
    すると、驚きの光景を目の当たりにした。






    ギイィ………



    「……」




    思わず言葉を失ってしまった。
    その目先に居るのは、訓練兵団きっての優等生、『アルミン・アルレルト』訓練兵だった。
    だが、彼は髪を後ろに結い、清潔感の溢れる服装をしている。彼は中性的であるため、よく見なければ女性と間違えるだろう。

    そして、彼は私と目が合って固まっている。
    何故、アルレルト訓練兵がこんな所に居るのだろうか?私は不思議でたまらない。思わず彼に問いただしてみた。


    「…アルレルト訓練兵、この状況を説明せよ」

    しばらく固まった後、敬礼の姿勢を取り、声を上げた。

    「はっ、自分はここで食事処を開業しています!」

    「食事処…?解せんな。何故、訓練兵である貴様が食事処など開くのだ…? 」

    「…何故と聞かれれば、返答にお困りします。
    自分は、イェーガー訓練兵の母に、料理を教わっていました。そして、自分に遺言を託しました。その内容は『私がもしも居なくなってしまったら、その料理の腕を腐らせない様に腕を振るいなさい。もしも、訓練兵団の中で作るとすると、確実に懲罰があるから見つからないようにね』と。」


    ………カルラからの言葉…か。
    だが、解せない。それだけで訓練兵団で規則を守らずに料理をしているとは。
    大きな規則違反であり、懲罰を加えなければならない。最悪、追放であろう。

    「これをしていたからには、見つかった際の懲罰を受ける覚悟は出来ているのだろう?」

    「……はい。承知の上です。
    ですが、一度料理を振るわせて下さい。その後に懲罰は必ず受けますので。」

    ほう、覚悟はあるようだ。
    ここは、カルラの腕を信じて試させて貰う事にしよう。もしも、私の舌を満足させられなかった場合………

    「いいか、その料理が舌に合わなかった場合……即刻として訓練兵団を辞めろ。わかったな?」

    「……はい。では失礼します。その前に、この手紙を。イェーガー訓練兵の母からに遺言に、バレた時には渡す様にと書かれてありました。」


    アルレルト訓練兵からは一通の手紙が手渡された。その内容を確認してみると、思わず言葉を失ってしまった。

  3. 3 : : 2016/12/14(水) 17:03:43
    キースへ


    訓練兵団の教官職、こなせているかしら?
    貴方が最後に壁外調査から戻って来た時にはとても暗い顔をしていたわね。
    やっぱり、あの団員の事を抱えているのでしょう?
    ……そうそう、私が最初に言った通り、訓練兵団の教官をしているかしら?
    私とグリシャで貴方の今後の事を予想し合ってたのよ。
    グリシャは『彼ならば私達の息子を、より強く、優しくしてくれるだろう』と言っていたわ。グリシャは第100期訓練兵の中でも体力や力が無くて、体術はダメだったけど、持ち前の頭脳があったわね。
    今で言うなら……アルミン辺りね。
    キースは、入団当初から調査兵団を志望していたわね。
    それで結局、主席卒業して調査兵になるだなんて前代未聞でしょうね。
    ともかくとして、この手紙を読んでいるという事は、私はこの世に居なくて、アルミンの料理の事がバレちゃったのね。
    あの子の事は、友人の嘉で懲罰を軽く……はしてくれないか。
    アルミンの事だから、料理させてくれって頼む筈よ。ここは料理の腕前を見てから決めても良いんじゃないかしら?

    ともあれ、そろそろ羊皮紙のスペースが無くなってきたから最後にお願いするわね。

    息子達をお願いね。強いていうなら、アルミンの料理を続けさせて欲しいわ。
    わがままでごめんなさいね。


    カルラより
  4. 4 : : 2016/12/14(水) 17:05:14

    思わず私は黙り込んだ。
    寧ろの話、カルラの予知能力に驚かされた。
    何故私が教官をやると、そして今こうしていると予測出来たのだろうか。
    先程アルレルト訓練兵から渡された封筒に手紙を入れ直す。

    「教官、お水をどうぞ。」

    私は出された水で喉を潤した。
    この水はどうやら果汁を搾り、純度の高い水に入れて味を付け足した物だ。
    恐らくはあの酸味のある黄色の果実だろう。
    味わいはしつこくなく、爽やかな酸味が口の中に広がる。
    …これは素晴らしいな。最近は蒸し暑い日が続いている。冷えた水とあの果実の酸味で水分を補給するにはうってつけだろう。
    確か…『びたみん』や『みねらる』と言っただろうか?

    何やら、良い匂いが漂ってくる。
    それも懐かしい様な、良い香りだ。だが、記憶の断片に挟まっていて出てこない。
    頭を悩ませていると、奥の調理場からアルレルト訓練兵が皿を持って出てきた。


    ――挟まっていた記憶が分かった。


    アルレルト訓練兵の持つ皿の中の物はグリシャとカルラとハンネスと私で卒業記念に行った料理屋での料理だ。
    名前は『シチュー』と言っていただろうか。
    白いソースに様々な野菜、そして大きめの肉が入った料理、私にとって一番の思い出である料理だった。

    「お待たせしました、こちらは『クリームシチュー』で御座います。」


    私は思わず涙腺が緩みそうになったが、必死に堪えた。


    「ふむ、良い香りだ。だが、味はどうだ?」


    一口、たった一口で分かった。


    あの時の味と全く同じだ。
    トロトロとしたソースに加え、肉や野菜の旨みや甘みが溶けだしている。
    ソースには牛乳等が使われており、味わいは深く、濃厚。
    牛乳をベースにしているからか、ほんのりと甘みのあるソースに仕上がっている。
    次に具の野菜。そして肉。

    野菜は芋や人参、玉ねぎやブロッコリーと行ったオーソドックスな具材。
    だからこそ味に馴染みがあり抵抗なく食せるし、味わいもいつもとは別段違った物を見せてくれる。
    次に柔らかい肉だ。
    これは恐らく鳥の肉なのだろうが、どの肉にも当てはまらない。
    鴨にしてはクセがなく、キジにしては柔らかい。まるで、穢れを知らぬ姫のように繊細な味わいだ。
    野性味も硬さも無く、口の中でほろりと崩れるような肉だ。


    思わず私は口に出して言う。

    「旨い」

    それ以外の言葉は何一つとして思い浮かばない。この料理を飾るにはこの言葉で良いのだ。

    あまりの懐かしさについつい涙腺が緩み、涙を流してしまう。
    アルレルト訓練兵はクスりと笑い、私に清潔な布を渡してきた。
    涙を拭うと、アルレルト訓練兵に向かって一言言った。


    「アルレルト訓練兵、少しばかり昔話をしても良いか?」

    「ええ、良いですよ。」


    その後、私は語り続けた。
    昔の頃のシガンシナ、幼い頃のグリシャやカルラ、ハンネス達の話。
    そして、私の教官になった頃の話。

    彼は私の話を静かに聞いていてくれた。


    そして、話に目を輝かせていてくれた。


    まるで、英雄の物語を聞いている子供のように。





    ―――――




    「アルレルト訓練兵、長居して悪かったな。
    料理、大変美味であった。だが、懲罰は受けるように。」

    「……はい。」

    アルレルト訓練兵はしょんぼりとした顔になり、片付けを始めた。

    「懲罰は、ここ周辺の掃除を念入りに。そして、書庫の掃除を1ヶ月言い渡そう。」

    アルレルト訓練兵の顔はぱあっと明るくなり、私に心臓を捧げる姿勢をとった。

    「教官、ありがとうございました!またお越しください!」


    我ながらも甘くなったと思う。

    だが、彼の能力は腐らせる訳にもいかないだろう。





    カルラよ、またもお前の勝ちのようだな。


  5. 5 : : 2016/12/19(月) 19:35:41







    第2話:馬鹿と芋女








    「…おい、サシャ。本当にこんな所にあんのかよ?」

    声を潜めて私に問う彼はコニー。
    今、私達はとあるお店へと行こうとしている。

    「はい、間違いありません。ここから匂いが漂ってきましたから。」

    そう、それは料理屋。
    ひっそりとこの森の中腹部に経営しているお店です。
    この森は訓練兵団の訓練所に近く、時折訓練から逃げ出したくなった訓練兵が行方不明になるそうです。

    「おや、何やら匂いが強くなって来ましたね…」

    「そうか?俺は分からないな…」

    コニーは狩猟民族さながら、嗅覚が私のように優れていないようです。
    ……!?この匂いは……肉っ!
    肉の匂いです!しかも猪の様に獣臭くない匂い…何やら上等な肉を使っているようです。
    それも肉をメインにした料理です…思わず涎が垂れてきてしまいます。

    「おい、サシャ。汚いぞ」

    「あっ、すいません。つい……」

    涎を拭い森の奥へ進むと、小さめの小屋が見えてきた。ここから匂いが漂っていたのですね。

    「ここか…確かに良い匂いがするな…」

    「ええ、きっとお肉ですよ。」

    「肉っ!?肉ってあの…?」

    「はい、それも上等なお肉ですよ。一体誰がそんな物を仕入れているんでしょうか…」

    「だがよ、金は足りるのか?」

    「うっ……値段を見て決めましょう?」

    恐らく相当高価な料理でしょう…
    もし払えなかったらどうしましょう…?

    ガチャリ…

    「いらっしゃいませー!」

    高めの声が聞こえてきました。
    しかし、女性にしては低いような…男性の声ですかね?それに何だか聞き慣れたような……

    「あっ!アルミンか!」

    「えっ!?アルミンですか!?」

    「んえっ!?」

    奥の扉から金髪がひょっこりと顔を出しました。やっぱりアルミンです。

    「サシャとコニーか!いらっしゃい!」


    まさか、料理をしていたのは104期の頭脳さんとは……しかし何故こんな所で?

    「アルミン、何でこんな所で料理をしているのですか?」

    「あぁ、エレンのお母さんから教わったんだ。それで腕が鈍らない様にここで料理屋をやってるんだ。」

    そうだったんですか……夜な夜な誰かが抜け出すって聞いていましたがアルミン何ですか。

    「なぁ、アルミン。この匂いって何なんだ?」

    「これは『ローストビーフ』っていう料理だよ。牛肉をじっくりと外から焼くから柔わらかくて、噛む度に肉汁が溢れるんだけど、まだ研究中で…良かったら試食してってくれるかな?僕だけじゃ食べきれなくてね…」

    牛肉!?それも食べきれないほど!?
    アルミンにそんな財力あったんでしょうか…いや、アルミンは頭が良いですしお金の稼ぎ方なんていくらでも考えられそうですが…

    「是非!!」

    「お、俺も!」

    「ふふ、ちょっと待っててね。」


    アルミンが再度調理場へと向かっていきました。少し待たせて頂きましょう。


    「しっかし、まさかアルミンが料理できるとはなぁ……」

    「ですね。頭良いだけではなく料理も出来るとは……これが本当の女子力ってやつですかね?」

    コニーと他愛ない会話をしながら5分間くらい経過した所でアルミンがトレイを持って戻ってきました。

    「お待たせ、『ローストビーフ丼』だよ。」

    おおっ、肉です!しかし、丼?
    聞きなれない言葉なのですが…それに下にある白い物は一体?

    「おぉ、旨そうだな!」

    「ですね!」

    「熱いから気をつけて食べてね。」

    んんっ……良い香りです。
    一番上に乗っている緑色のペーストはあの辛い食べ物に似ていますが……
    取り敢えず一口…

    「美味しいです!!」

    肉自体は凄く柔らかく、肉厚なので弾力がありジューシーです。
    その上から掛けられているソースはにんにくの香りがたまりませんね…
    何より素晴らしいの下の白いもちもちですね!
    肉とソースに良く絡んで、ほんのりと甘くもちもちとした食感が面白いです。

    次に緑色のペーストを溶かしつつ……んぅ…香ばしいにんにくソースに辛めのペーストが絡んで更に食欲を掻き立てますね…!

    空きっ腹にダイレクトに刺激するこの丼は中々素晴らしいですね。もうアルミン大好きです!

    「ほんとうめぇな。アルミンは何で肉とかこの白いやつとかを持ってるんだ?」

    「んーとね、眼鏡をかけた人が色々と安く譲ってくれるんだよ。色々な珍しい食材をね。そんな料理を知ってるカルラさんもどうかと思うけど…」

    何やらアルミンが難しい顔をしています。
    何を考えているのか私は良く分かりませんが…


    「アルミン、大好きです!」

    思わずアルミンに抱き着いてしまいました。アルミンが顔真っ赤です。

    「あわわっ、サシャ!急にどうしたの!?」


    ふふ、アルミンって可愛いですね。

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著者情報
ryou-ss

砂味のぱふぇ(旧名:セレナ・ティレス)

@ryou-ss

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