このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。
この作品は執筆を終了しています。
ザイル
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                  - 1 : : 2016/12/01(木) 00:34:11
- 昼に開いたならこんにちは! 
 夜に開いたらならこんばんは!
 
 シャガルT督と申します!
 
 この度はあげぴよさんが企画なされました『冬のコトダ祭り』に参加させて頂きます!
 
 
 今回のテーマは『罪と罰』
 
 登場人物は
 苗木、大和田、山田、セレス、江ノ島、狛枝、九頭龍、小泉、罪木、七海
 の中から1人以上。
 
 参加者は
 ・あげぴよさん
 ・風邪は不治の病さん
 ・縁縄さん
 ・たけのこまんじゅうさん
 ・パムーンにも花は咲くさん
 ・シャガルT督
 ・ベータさん
 ・ノエルさん
 ・祭壇の地縛霊さん
 ・きゃんでろろさん
 ・Deさん
 となっております!
 
 今回はキーワードの設定はありません!
 
 以下より本編をお楽しみください!
 
- 
                  - 2 : : 2016/12/01(木) 00:36:39
- もし、君が山を登るなら。
 山と行ってもハイキングに行くような山じゃあない。
 断崖を、氷壁を、亀裂を乗り越え、頂に立てば天に瞬く星でさえ掴めそうな高い高い山の話だ。
 もし、そんな山で君のパートナーが足を滑らせ
 君の命縄 に宙吊りになったとしたら。
 君のやるべき事は一つ。パートナーが繋がったザイルを切ることだ。
 「残酷だ」って?
 だって仕方がないだろう?
 そのザイルに繋がっているのは君とその足を滑らせたヤツだけじゃないかも知れないんだ。
 そう。「仕方のない」事なんだ。
 
- 
                  - 3 : : 2016/12/01(木) 00:39:45
- 希望ヶ峰学園 1-A
 ぽつんとした灯りが教室に灯っている。
 苗木「ふぅ…」
 1人の青年は黙々と作業をこなしていく。
 思えば全てが始まったのはこの席からだ。
 この席で目覚めて…始まったんだ。
 霧切「精が出るわね。」
 苗木「霧切さん!」
 霧切「はい。コレ」
 苗木「ありがとう。霧切さん…」
 差し出されたマグカップからは芳ばしい薫りが立ち上る。
 苗木「はぁーーー…」
 仕事の緊張から暫し解き放たれ、情けないほどのため息が溢れる。
 霧切「お疲れ様。何か手伝いましょうか?」
 苗木「いや、大丈夫だよ。あともう少しで終るし…」
 霧切「ミスがないか見てあげるって言ってるのよ。苗木くんのくせに生意気よ。」
 
- 
                  - 4 : : 2016/12/01(木) 00:46:52
- 苗木「あ…はは…ゴメン…」
 吐息でコーヒーを冷まし、一口啜る。
 苗木「あっちち…」
 苗木「それにしても… 配給でコーヒーを出せるまでになるとはね…」
 霧切「コーヒー以外にもお菓子なんかの嗜好品の供給も…安定するようになってきたわ。」
 霧切「まぁ、逆を言えばまだまだ配給から抜け出せない状態でもあるのだけれど…」
 苗木「だけど…よく立て直したと思うよ。絶望の残党の件もほぼ片付いたし…あと少しで日本政府をもう一度開けるし… 産業ももうじき復活できる。」
 霧切「その『もうじき』はいったいどのくらいかかるのかしらね?」
 苗木「きっと…そう時間はかからないよ。」
 苗木「みんながいてくれるし…『彼ら』もいるからね。」
 霧切「あい変わらず前向きなのね…」
 霧切「ねぇ。」
 苗木「なに?霧切さん」
 霧切「あなたはどうして… そこまで熱心なのかしら?」
 苗木「熱心……?」
 霧切「絶望の残党がほぼ殲滅状態にあるとはいえ… 未だにあなたを快く思わない者は大勢いるわ。 この未来機関…いえ、学園でさえね。」
 霧切「それに…この一件は江ノ島盾子と元絶望の残党である77期生により引き起こされたものよ。」
 
- 
                  - 5 : : 2016/12/01(木) 00:49:12
- 霧切「贖罪のつもりなのかしら?」
 霧切「そんな浮わついた気持ちでいるようなら…」
 苗木「ボクだって浮わついた気分でやってるわけじゃ…ない…と思うけど……」
 苗木「やっぱ…霧切さんには敵わないな…」
 苗木「確かに…『贖罪か?』って聞かれてもハッキリ『違う』とは言えないかな…」
 苗木「確かにこの事件は江ノ島によって引き起こされたものだし…ボクなんかが贖罪なんておかしな話だけど…」
 苗木「元はと言えば… この学園から始まった事だしさ。」
 苗木「それに、この世界にはまだまだボク達の力を必要としている人達が沢山いる。」
 苗木「そんな人達を放ってボクだけ安全なところに身を潜めてるわけにはいかないよ。」
 霧切「…………そう。」
 
- 
                  - 6 : : 2016/12/01(木) 01:04:21
- 霧切「……………」
 苗木「だから… その… まだ当分ゆっくりするわけにはいかないんだけどさ……」
 苗木「もし、復興の目処が立ったらさ…!」
 霧切「そんなに自分を危険に晒したければ勝手にしたらいいわ。」
 霧切「わたしはどうなっても知らないから……!」
 苗木「え? ちょ! 霧切さん!」
 教室の扉をピシャリと閉め、苗木だけが1人残された。
 苗木「霧切さん………」
 朝日奈「な~え~ぎ!」
 どこに隠れていたのかひょっこりと朝日奈が現れた。
 苗木「あ…朝日奈さん… いたんだ…」
 朝日奈「『いたんだ』はないでしょ~ いたんだは…」
 苗木「あ…はは… ゴメン…」
 朝日奈「ねぇねぇ! さっき響子ちゃんになんて言おうとしたの?」
 苗木「えぇ… 聞いてたの?朝日奈さん…」
 朝日奈「『復興の目処がついたら』なんちゃら~って」
 朝日奈「ねぇねぇ! この事件に決着がついたらどうするの!」
 苗木「もう…放っておいてよ…」
 まさに興味津々といったところだ。
 朝日奈「……まだ…響子ちゃんのこと名前で呼ばないの?」
 苗木「別にそれは… ただボクが呼び慣れてるってだけで…」
 朝日奈「ふぅ~ん。そうなんだ…」
 朝日奈(こりゃ当分ムリだわ… 苗木らしいっちゃ苗木らしいけど…)
 朝日奈「あ、手伝うよ。書類まだあるでしょ?」
 苗木「ありがとう。朝日奈さん」
 
- 
                  - 7 : : 2016/12/05(月) 20:03:28
- 朝日奈「苗木もわたし達がいるんだからあんまり根詰めちゃダメだよ?」
 苗木「わかってるよ。いつでもみんなの事頼ってるし…」
 苗木「それはそうと…明日は77期生のみんなと面会だったね。」
 朝日奈「わたし達の1個上の先輩なんだよね~」
 朝日奈「なんか…面会って言われると不思議な気分だね…」
 苗木「そうだね… まぁ、ボク達は一応、未来機関っていう体だし…」
 苗木「77期生のみんなもまだ『監視対象』って扱いだからね…」
 洗脳から解放されたとはいえ、元は江ノ島盾子に加担し、世界を破滅に追い込んだ面々だ。
 未来機関内にも彼らの命を狙う者も少なくない。
 民間人から買った怨みはそれこそ山積するものであり、連日「殺せ」とデモが起こる。
 しかし、それは皮肉にも「デモができる 」にまで世界が復興した証しとも言える。
 苗木(まぁ、明日はあの人も来てくれるし…大丈夫だとは思うんだけど…)
 
- 
                  - 8 : : 2016/12/05(月) 20:04:58
- 翌日
 校庭に「H」と書いただけの仮設ヘリポート。
 そこが待ち合わせ場所であった。
 苗木「そろそろ時間だね…」
 葉隠「なんかまぁ…しゃーないっちゃしゃーないんだろうけど…」
 葉隠「ずいぶん仰々しい光景だなぁ…」
 ヘリポートには重武装を施した警備員が配置されている。
 十神「これからここに来るのは本来であればその場で銃殺されても文句ない国際指名手配犯だからな。」
 葉隠「え゛ぇ…!じゃあ ここにこんなに警備がいるってことは…」
 葉隠「っていうか! それなら俺たちはどうなるんだべーーっ!!」
 十神「ハァ… もはや何も言うまい。」
 霧切「まったくもう…」
 霧切「そろそろお客さんの登場みたいよ?」
 バタバタと風を切る音を立てて「客人」は空からやってきた。
 件の77期生である。
 苗木「みんなようこそ…希望ヶ峰学園へ」
 日向「あぁ…ありがとう。」
 苗木「お久しぶりです。宗方さん。」
 宗方「…………」
 
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                  - 9 : : 2016/12/05(月) 20:06:28
- 苗木「急に空輸で来るって聞いたときは驚きましたよ」
 宗方「この連中の買った怨みは相当なものだ。道中良からぬ事を企む奴等に事を起こされては敵わんからな…」
 苗木「宗方さんが居れば大丈夫ですよ。」
 かつて己の命を奪い合った者同士が同じヘリに同乗し、やって来た。
 霧切「呉越同舟ってところかしら。」
 宗方「フン…」
 苗木「さぁ、精密検査も控えてますから…」
 
- 
                  - 10 : : 2016/12/08(木) 10:16:50
- 77期生の面々はそれぞれ個々に精密検査を受ける。
 皮肉にも「あのプロジェクト」に向けられた機材が役に立ったため、何よりセキリュティにおいて、この旧校舎が今の苗木達の活動拠点である。
 宗方「なんとも不思議なものだな… 全てが始まり…崩壊した
 場所にこうしてお前と77期生が集まっている。」
 苗木「そんな事もないですよ。」
 苗木「彼らにとっても…ボクらにとっても…この場所は母校なんですから…」
 苗木「もちろん。それは宗方さんにとっても…」
 宗方「そうか…」
 宗方「やはりお前は変わらないな…」
 精密検査の結果も特に問題はなく、77期生は面会となる。
 辺古山「わたし達のした事が消えるわけではありませんが…我々もこの世界の為に尽力する事こそ償いと存じています。」
 九頭龍「ま、分かっちゃいるさ…俺が明日にはブッ殺されてても仕方ねぇ存在って事はよ…」
 九頭龍「けど、ただブッ殺されるより…少しでも償いってヤツはしておきてぇよな」
 霧切「みんなそれぞれ目標を持って行動しているのね…」
 霧切「わたしの立場から無責任な事は言えないけど… みんながその目標を達成できるように…わたし達も精いっぱい応援するわ。」
 
- 
                  - 11 : : 2016/12/08(木) 10:17:56
- 苗木「あれから…どうかな?日向クン。」
 日向「まぁ、何もかも順調ってわけにはいかないかな…」
 日向「けど…みんなこうしてまた戻ってきてくれた。」
 日向「人から与えられたもんで何を今さらって話だけど…」
 日向「この力が少しでもこの先の世界の役に立てばって…今は思う。」
 苗木「ありがとう。ボクらも君たちの努力が実を結ぶように頑張るから…」
 日向「こちらこそ… あの時助けてくれなかったら…今の俺たちはなかった…」
 日向「もっとこの力を世間に活かして見せるよ…!」
 苗木「うん。ボクも期待してる。」
 面会、検査は驚くほど何も問題なく終えられた。
 
- 
                  - 12 : : 2016/12/08(木) 10:19:24
- 日向「それじゃあ…また。」
 苗木「うん。」
 苗木「宗方さん。道中はお願いします。」
 宗方「分かっている。」
 77期生は校庭に停められたヘリに向かう。
 するとその時。
 警備員「やめろ! この先は立ち入り禁止だ!」
 ??「どきやがれ!! あそこに……!あそこに……ッ!!」
 警備員「うわッ!! 逃げろ! 早くヘリを!!」
 苗木「何だろう…」
 宗方「……全員をヘリに移せ。」
 苗木「え…?」
 宗方「早くしろ!」
 苗木「分かりました…!」
 苗木「全員急いで乗って!」
 左右田「なんだ…? 何かあったのか……?」
 その答えがありありと映し出される。
 民衆「ウォォオオオオオオオオ!!」
 雑多な武器。農具から果ては調理器具まで持ち出した民衆が校門を乗り越えてごった返す。
 
- 
                  - 13 : : 2016/12/08(木) 10:30:46
- 「死ね!!クソッタレ!!」
 「妻を返せ!!」
 「孫の仇だ!!」
 目を血走らせた民衆がヘリに向かって突撃する。
 苗木「なっ…!」
 宗方「クソッ…!」
 腰に差した刀を抜き払う。
 苗木「宗方さん!」
 腹部に直撃を受けた民衆の1人はがっくりと膝を折った。
 宗方「峰打ちだ… 殺しはしない。」
 弐大「ぬぅぅ……致し方あるまい!!」
 辺古山「助太刀致します。」
 いくら数の利があるとはいえ警備に77期生では相手が悪い。
 世界を破滅に追い込んだ15人ともなればなおさらである。
 宗方(これも折り込み済み…いや、自分がどうなろうと構わないという事か……)
 宗方(皮肉な……!)
 宗方と77期生の活躍もあって、民衆は全員殺さずに捕らえられた。
 「離せ!!ふざけんな!!」
 「呪い殺してやる!!」
 「八つ裂きだァーーッ!!」
 まるで、一つの呪詛であるかのような民衆の叫び。
 宗方「苗木。」
 宗方「前にお前は言ったな…
 絶望の残党がこの世から居なくなったとしても…」
 宗方「絶望は消えないと…」
 宗方「コイツらにこの先…希望はあるのか?」
 苗木「それは……」
 
- 
                  - 14 : : 2016/12/08(木) 10:44:22
- 日向「その…すいませんでした…」
 宗方「俺は俺の仕事をしただけだ。早くヘリに戻れ。」
 苗木「日向クン…!」
 苗木「その…挫けないで…」
 日向「分かってる… 俺はもう止まってるわけにはいかない…」
 民衆はひとまず未来機関引き取りとなり、ヘリは上空へ去っていく。
 苗木「ハァ……」
 思わず、大きなため息が出る。
 霧切「魂の抜けそうなため息ね。」
 霧切「あなたらしくもない…」
 苗木「ゴメン。霧切さん…無事でよかった…」
 霧切「まだまだ問題は山積みってところね…」
 苗木「書類も山積み書かされるのかもね…」
 苗木「まだ道半ば……か。」
 遠くなるヘリを苗木は見つめた。
 ヘリ機内
 機内には鬱々とした空気が流れる。
 澪田「な…なんていうか…びっくりしたっすね…」
 小泉「びっくりしたなんてもんじゃなかったよ…」
 九頭龍「あの場で俺らは全員イカれちまった…自分から罠に飛び込んでな。」
 九頭龍「………全くの無責任ってわけにゃいかねーだろうよ。」
 日向「……………」
 復興しつつはあるというものの、眼下に広がる光景は自分が
 知る日本のそれとは全く異なる物であった。
 日向(これを…俺たちがやったのか……)
 
- 
                  - 15 : : 2016/12/10(土) 01:59:22
- 「こんなの予想してなかった?」
 日向「……!」
 「こんな筈じゃなかったって?」
 「けど、い~じゃん。面白いじゃんコレ」
 日向(やめろ……!)
 「どうせアンタなんてただの予備…」
 日向(引っ込んでろ……ッ!!)
 よく、自分の中の善の心が天使。
 悪の心が悪魔として出てきて自分の中で言い合いしてるなんて例えがあるが……
 彼の場合、「天使」は自分自身であり、悪魔は「奴」である。
 自らを天使だと自覚しているわけではないが。
 日向(もう二度と誰にも決めさせない……!!)
 日向(手綱を握るのは俺自身だ…!)
 
- 
                  - 16 : : 2016/12/10(土) 12:42:19
- その夜…
 始末書の整理に苗木は追われていた。
 苗木「全然終わんな……」
 書類の山はまだゴールは遥か遠くと言うことを確実に物語る。
 苗木(そう言えばなんでボクってこんなに必死になってるんだっけ……)
 今更ながらに、霧切に言われた言葉を脳内で復唱していた。
 苗木(思えばなし崩し的に未来機関に入って…それで今まで巻き込まれる形で…)
 苗木(って…巻き込まれてばっかだなボク…)
 苗木(なんか……分かんなくなってきちゃった……)
 
- 
                  - 17 : : 2016/12/10(土) 16:39:55
- 背もたれに身体を預け、天井を眺める。
 苗木「結局どうしたいんだろう…ボク」
 霧切「だから言ったじゃない。なんでそんなにムキになるのかって」
 苗木「って…!霧切さん!?」
 霧切「何よ。人を幽霊みたいに…」
 霧切「未来機関だって能無しじゃないんだからあなた一人が気負う事はないんじゃないかしら?」
 苗木「……………」
 霧切「はぁ…」
 霧切「これ以上はぐらかしても気付かないだろうから単刀直入に言うわ。」
 霧切「………二人で未来機関を辞めない?」
 
- 
                  - 18 : : 2016/12/10(土) 17:19:32
- 苗木「………………なんとなく…」
 霧切「え?」
 苗木「なんとなくは気づいてたよ…霧切さんの言いたいこと……」
 霧切「………それなら…」
 苗木「確かに…ボク自身、分かんなくなる時はあるけどさ…」
 苗木「だけど、途中で投げ出すってことはやっぱしたくないんだ。」
 苗木「それに……」
 苗木「霧切さんの事も……いつか幸せにして見せるから…!」
 
- 
                  - 19 : : 2016/12/10(土) 17:51:50
- 霧切「そう……」
 霧切「そこまで言い切るのにまだ名前では呼ばないのね。」
 苗木「そ…そんなこと言うなら霧切さんだって…!」
 霧切「そ れ に」
 霧切「わたし『も』と言うのは気に入らないわ。」
 苗木「それは……」
 苗木「ゴメン…」
 霧切「けど、何だかホッとしたわ……」
 霧切「ま、せいぜい後悔するがいいわ。」
 霧切「誠くん。」
 苗木「え?今なんて…」
 霧切「さぁ?何の事かしら?」
 
- 
                  - 20 : : 2016/12/10(土) 18:41:05
- 十神「……………おい。」
 苗木「あっ……」
 半ば呆れ顔で彼は入ってきた。
 苗木「と…十神クン……」
 十神「のろけてる所悪いが耳に入れておかなくてはならん事があるのでな。」
 苗木「ち…ちが!」
 霧切「それは…」
 十神「77期生の検査データだ。」
 十神「そいつを今、洗い直したところ……」
 苗木「そんな……!」
 十神「『懸念事項』と言うには十分過ぎるだろう。」
 苗木「とにかく……宗方さんにも連絡を…!」
 苗木が連絡を取ろうとしたその時。
 
- 
                  - 21 : : 2016/12/10(土) 18:50:44
- 宗方「苗木……!!」
 苗木「宗方さん!! それが今…」
 宗方「お前の言いたい事などもう察しがつく……!!」
 宗方「日向創が逃げ出した……!!」
 苗木「そんな……!」
 宗方「怪我人が居ないのが不幸中の幸いと言うところだが……」
 宗方「それも何時まで続くか……!!」
 宗方「そちらの検査はよほど精度が良かったと見えるな!!」
 苗木「すい……ません…」
 宗方「すまん。 俺も焦りすぎた……」
 宗方「だが、放置していても状況は好転しない…!」
 宗方「苗木………。
 今一度だけ……お前の希望を信じる。
 だが、もしムリだと言うなら… 俺の手で処分させて貰う……!」
 宗方「俺を失望させるなよ……!」
 苗木「勿論です……!」
 
- 
                  - 22 : : 2016/12/10(土) 19:29:58
- 苗木「日向クンを探しに行こう…!!」
 霧切「待ちなさい!」
 霧切「この検査結果を信用するなら…彼の向かう場所はおおよそ想像できるわ…」
 苗木「確かに……」
 苗木「確かに…『洗脳』が抜けきってない…
 いや、彼がまた絶望側として覚醒しかけてるなら…」
 苗木「ここに来る可能性は高いって言えるけど…」
 苗木「だけど…万が一って事もあるし…」
 苗木「やっぱりボク行ってくる!!」
 出口へ向かって彼は走り出した。
 霧切「あっ! ちょっと…!」
 霧切「まったくもう……!」
 十神「やむを得ん。何人か援護を付ける。」
 苗木(日向クン……頼むから…!)
 苗木(なんとか……持ちこたえて…!)
 
- 
                  - 23 : : 2016/12/10(土) 19:45:16
- 某所。
 日向「……………」
 日向(希望は予定調和……)
 日向(絶望は混沌……)
 日向(犯した罪は購えない……)
 「「ならば全て混沌に陥れてしまえ。」」
 日向(世界の誰もが予測も付かぬ混沌を……)
 日向「絶望を……」
 
- 
                  - 24 : : 2016/12/10(土) 19:53:49
 ここで再び苗木側に移る。
 苗木「ハァー…ハァー…やっぱり……あそこで待ち伏せてた方が…」
 未来機関1「苗木さん!!」
 未来機関1「無茶です…!宛もなく徒歩で探しに行くなど…! せめて車両なりお使いを…!」
 苗木「ご…ゴメン……」
 未来機関1「まったく……あの人達の事となると…言い出したら聞かないのは相変わらずですね…」
 苗木「それより……」
 苗木「いくらカムクライズルの才能を使いこなす事ができたとはいえ…どうやって外部から隔離された施設から脱出を……」
 苗木「あそこにはヘリコプターしか移動手段は…」
 未来機関1「それこそ……ヘリでも使わなければ脱出は……」
 不可能と言いかけたその時。
 苗木「まさか……!」
 『来客』は再び空から来たれり。
 
- 
                  - 25 : : 2016/12/10(土) 20:05:38
 来客の姿を霧切も確認していた。
 霧切「やっぱり………」
 轟音を立て、来客は校舎に突っ込んだ。
 かつてのように、煌々と紅い眼を輝かせ、
 大破したヘリから降り立った。
 日向「俺は………っ!」
 「なんだ!?」
 「ヘリが突っ込んだぞ!!」
 未来機関内はまさに蜂の巣をつついた騒ぎである。
 「お前を殺そうとした奴らだろう?」
 「それなら別にいいじゃん。」
 「同じ事をやり返してやるだけじゃん!」
 「罪は裁かなきゃ!」
 「その『才能』でブッ潰してやりなよ!」
 
- 
                  - 26 : : 2016/12/10(土) 20:13:51
- 日向「予測不可能な絶望……」
 彼の足は自然と地下へ進んでいく。
 「そういう奴ら」は大抵地下に幽閉されるものだと才能が告げる。
 霧切「早く止めないと……!」
 十神「警備班を1階に回せ!」
 十神「ただし、殺すなよ……!」
 「ハッ!」
 霧切「なんとか…時間を稼げれば…」
 霧切「こんな時に……っ!」
 
- 
                  - 27 : : 2016/12/10(土) 20:20:59
- 収監室。
 彼のときの民衆は今、ここに収容されている。
 民衆1「クソッ…」
 民衆2「やっぱマズかったんじゃ……」
 民衆3「バカ野郎! こんなところまで来て怖じ気づいたか!」
 すると、階段の奥から足音がした。
 民衆3「なんだ…?メシか…?」
 民衆4「いや、まだ時間が早すぎる…」
 日向「…………………。」
 その煌々とした瞳と目が合わさる時。
 民衆は思い出す。
 
- 
                  - 28 : : 2016/12/10(土) 20:29:37
- 民衆2「て…テメェは……!」
 民衆1「コイツ! あのときは雰囲気が違っていたがやはり……!」
 民衆1「カムクライズル!!」
 日向「……………。」
 「ホラ!殺せよ!!」
 「また世界中ひっちゃかめっちゃかのカオスにしてやろーじゃん!」
 民衆2「テメェ!! ここで会ったが百年目だ!! 今すぐブッ殺してや……!」
 霧切「待ちなさい!!」
 霧切「出入口は塞いであるわ…! いくらカムクライズルを持っている貴方でも…… ここを突破するのは不可能よ…!」
 霧切「早く両手を上げなさい!!」
 
- 
                  - 29 : : 2016/12/10(土) 20:43:19
- 警備班1「今撃てば必ず殺せます!なぜ撃たないのですか!!」
 十神「いいから静かにしていろ…!」
 十神「今は…信じるより他あるまい…」
 十神(何をしているんだ……こっちはお前待ちだぞ……!!)
 霧切「どうやってあの検査をくぐり抜けたかは分からないけど…」
 霧切「一体なぜ再び寝返ったのかしら…?」
 日向「…………」
 霧切「答えなさい!!」
 日向「そんなもん…より予測不可能だから……」
 日向「…に決まってんじゃーーん!」
 霧切「……っ!」
 霧切(やっぱり……!)
 霧切(希望更正プログラムがハッキングを受けたとき…「あいつ」は完全に消えたわけじゃなかったんだわ…!)
 霧切(まるで……悪霊ね…)
 日向「や………めろ!」
 霧切「…………っ!?」
 日向「お………れは!!」
 日向「ぐぁあああああああああああッ!!」
 霧切(くっ…!)
 霧切(ここまで……なのかしら…)
 「すいません!通して! 通してください!!」
 
- 
                  - 30 : : 2016/12/10(土) 20:47:36
- 警備班を避けて、通る人影と聞き覚えのあるこえ。
 十神「まったく… 待ちくたびれたぞ…!」
 苗木「ハァー…ハァー…!」
 苗木「霧切さん…下がって。」
 苗木「あとは……ボクがやる!」
 霧切「まったく……来るのが遅すぎよ。」
 苗木「ゴメン…」
 日向「にげろ…! 苗木…! 俺は………ッ!!」
 苗木「日向クン……!」
 
- 
                  - 31 : : 2016/12/10(土) 20:56:46
- 苗木「日向クン。聞こえるかな?」
 日向「ダメ…だ! はや……」
 苗木「君たちに会ったのは… あの裁判が初めてだっけ……」
 苗木「まぁ、あれが初めてってわけじゃなかったんだろうけど…」
 苗木「残念ながら…… 今でもその記憶は取り戻せないんだ……」
 苗木「だけど日向クン。ボクはあの裁判の事ははっきり覚えてる。」
 苗木「君たちは……自分から楽ではない道を選んでくれた。」
 苗木「『自分達の未来は…自分達で創る』って…」
 苗木「奇跡を起こすことだってわけないって!」
 苗木「あの時。君は… 彼女にそう誓ったんじゃないか…?」
 日向「…………!」
 苗木「答えろ!! 日向創!!」
 苗木「その絶望が君が創りたかった未来か!」
 苗木「七海さんに見てもらいたかった自分か!」
 苗木「君はそれでいいのか!!」
 苗木「答えろ!! 日向創ッ!!」
 
- 
                  - 32 : : 2016/12/10(土) 20:59:28
- 日向(俺……は…)
 日向(はっ……笑えねー…)
 日向(まーたカッコわりぃとこ見せちまった……)
 日向(サイコーにカッコ悪いな……)
 日向(そうだよな……?)
 日向(お前が生きた証の『未来』………!)
 日向(もう……二度と……!!)
 
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                  - 33 : : 2016/12/10(土) 21:04:41
- 日向「………………………………………」
 苗木「………!」
 日向「すま…ない。苗木。」
 日向「ホント…カッコ悪いよな……」
 苗木「日向クン……!」
 煌々とした不気味な瞳の灯は
 いつのまにか消えていた。
 日向「うぐっ……」
 糸が切れた操り人形のように、日向はその場に身を投げ出した。
 苗木「日向クン!!」
 霧切「…………」
 霧切「心配ないわ。 気力を使い果たして気絶したみたい。」
 苗木「…………ハァ」
 魂が抜けたようにその場にへたりこんだ。
 苗木「よかった………本当に…」
 
- 
                  - 34 : : 2016/12/10(土) 21:13:41
 数日後。
 苗木「結局……カムクライズルの才能は消えちゃったんだね」
 日向「まぁ…そう言われると損した気がしないでもないな…」
 霧切「仕方ないわ。あのカムクライズルに『アレ』が寄生してたと言っても過言じゃなかったんだから…」
 狛枝「まぁ、結局は身に合わないモノなんて最初から身に付けるべきじゃなかったって事だよ。」
 日向「はいはい。分かりましたよ。」
 狛枝「君には君にしか出来ない事があるでしょ? そんなモノ無くても……」
 日向「あぁ。 俺は…やんなくちゃならないからな。」
 苗木「未来は自分達の手で…か。」
 霧切「ところで。ちゃんと約束は守って貰うわよ? ま……」
 苗木「もちろん。分かってるよ。」
 苗木「響子さん。」
 
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                  - 35 : : 2016/12/10(土) 21:21:22
- いつだったか。誰かに言われた事がある。
 登山家がパートナーのハーケンが外れ、パートナーが宙吊りになった時は。命綱 を切るしかないって。
 自分や他のパートナーを守るには仕方ない事だって。
 けど、ボクは諦めない。
 その命綱 を離したりしない。
 これはボクの勝手な思い込みだけど…
 きっと、あの非日常で「思い出せなかった」事もボクの罪。
 だからこそ、今回のこともボクへの罰。
 ならボクは罰を途中で投げ出さない。
 この罰も、守りたいものも、忘れちゃダメな事も。
 その綱全てを離さずに、ボクは登って行こうと思う。
 この世界の夜明けまで。
 End
 
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                  - 36 : : 2016/12/10(土) 21:23:59
- くぅ疲。
 色々ご都合主義詰め合わせとなってしまいましたが、なんとか完結まで導くことができました…!
 ここまでお付き合いありがとうございました!
 
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                  - 37 : : 2016/12/10(土) 21:28:36
- 私様しぶとすぎィ!
 お疲れ様でした
 
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                  - 38 : : 2016/12/10(土) 21:35:21
- とても面白かったです!
 絶望は無くならない……の所であぁ確かにそうだなと納得しました。
 お疲れ様です!
 
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                  - 39 : : 2016/12/10(土) 22:13:35
- キャラクター1人ひとりの感情的な部分が画面に刻まれるように描写されていてグッときますね。
 参加ありがとうございました!
 
- 
                  - 40 : : 2016/12/10(土) 22:58:59
- コメントありがとうございます!
 書きながら「ここは変更しよう」と考えた場面も多々ありましたが、キャラの心情はしっかり伝えたかったので、そこが達成できたのは幸いです!
 
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