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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

この作品は執筆を終了しています。

薄荷飴

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  1. 1 : : 2016/12/01(木) 00:05:58
    どうも!たけのこまんじゅうです!

    この度あげぴよさんが企画されました『冬のコトダ祭り』に参加させて頂きます!


    《コトダ祭り》とは
    主催者が定めたテーマ、ジャンル、キーワード等に沿ってssを書く企画のこと。


    今回のテーマは『罪と罰』

    登場人物は
    「苗木」「大和田」「山田」「セレス」「江ノ島」「狛枝」「九頭龍」「小泉」「罪木」「七海」
    の中から誰か1人以上を登場させていればOK

    参加者は
    ・あげぴよさん
    ・風邪は不治の病さん
    ・縁縄さん
    ・たけのこまんじゅう
    ・パムーンにも花は咲くさん
    ・シャガルマガラさん
    ・ベータさん
    ・ノエルさん
    ・祭壇の地縛霊さん
    ・きゃんでろろさん
    ・Deさん
    となっております!

    今回はキーワードの設定はありません!


    この企画は「読み比べて」なおのこと価値が高まる企画です!是非、参加されている方々のssを余すことなく読まれてくださいね!

    それではどうぞお付き合いくださいませ。
  2. 2 : : 2016/12/01(木) 00:06:38

    目覚めたら真っ暗な世界だった。


    漆で塗り固められたかのような、そのぐらいにひたすら黒。漆黒。


    ただ漆黒が広がるだけの空間で、ボクという存在だけがそこにいた。


    そもそも何故こんなところにいるのかすら検討もつかない。思い出せない。



    苗木「…」



    動くことをせず、ただ辺りを見回してみる。


    やはり真っ暗。何も見えない。



    苗木「うーん…」



    ここでただ立ち尽くしているのはいけない気がして、右も左も分からない道を歩くことにした。


    足音が周囲に反響し、寂しかったボクの耳は一気に騒がしくなる。



    苗木(足音が反響してるってことはそこまで広い空間じゃないのか?)



    そんな考えを見透かされたように、目の前に小さな白い点が現れる。


    ここからじゃ米粒程度だけどこれは…



    苗木「…光?」



    そう認識したボクの足は、体は、光を求めるように前傾姿勢をとる。


    そうか、ボクは闇が恐ろしかったのか。


    段々と速度を上げる足に比例して光は大きくなってゆく。



    苗木「はっ…はっ…はっ…」



    聞こえてくるのは相も変わらず反響する足音とボクの呼吸の二重奏。


    光に導かれるようにして奏でられているから、これは光がコンダクターかな?


    なんてことを考えていると、いよいよ光がボクの体を包み込んだ。


    闇を抜けた安心感、そして走ったことによる疲弊がボクを瞬時に蝕む。



    苗木「はぁ…はぁ…はぁ…」



    額から頬を伝った汗を拭い、今度は真っ白なその空間を見回そうとすると



    桑田「よお、苗木」


    苗木「あれ?」



    今度は誰かがそこにいた。



  3. 3 : : 2016/12/01(木) 00:07:06

    苗木「えーと、桑田クン?」


    桑田「よお、久しぶりじゃねぇか苗木」



    おかしいな?桑田クンはここにいるのはおかしいんじゃないかな?あれ?


    だって桑田クンは…


    桑田クンは?



    苗木「久しぶり…?
    どうしてこんなところにいるの?」


    桑田「こんなところ…か」


    苗木「え?」


    桑田「なあ苗木、お前には今ここがどう見える?お前はこの空間をどう捉えてる?」


    苗木「どうって…」



    その不可思議な問いにボクは再び周りを見渡す。


    さっきまでとは対照に、今度は真っ白。夏の青空に浮かぶ入道雲のように。純白。


    ただひたすらに、白いだけ。そんな感じ。



    苗木「真っ白…だけど?」


    桑田「だよな、そう見えてるよなお前には」


    苗木「え?」


    苗木(お前には?)


    桑田「オレにはな、この空間は真っ赤に見えるんだよ」


    苗木「え?」


    桑田「お前に白く見えてんのはさ、お前が目を逸らしてるからだとオレは思うぜ」



    理解不能。意味不明。支離滅裂。


    桑田クンは何を言ってるんだ?全く意味が分からない。



    桑田「それにお前は忘れてるもんな、そりゃあ白だよな…シロだよな」


    苗木「何が言いた…」



    いよいよ感情の蓋を抑えきれなくなったその時、今度は違う人が奥から出てきた。



    苗木「…大和田クン」


    大和田「よォ、元気してたか?」


    苗木「あれ?なんだかおかしいな?」



    桑田クンと大和田クンがどうしてここにいるんだろう?


    いや、そうじゃない。おかしいのはそこじゃない。


    なんで桑田クンと大和田クンが…



    苗木「生き…?」
  4. 4 : : 2016/12/01(木) 00:07:29

    苗木「……!」



    そうだ。そうだよ。なんで?なんで2人が平気な顔してボクの目の前にいるんだよ?


    おかしいだろ?2人はオシオキされたんだよ?なんで?



    桑田「んだよ今更そんな事で驚きやがって…
    つーか、それすらも忘れてたのかよ」


    苗木「忘れてた…のかな、ボク」


    大和田「さっき桑田もいってたけどよ、目ェ逸らしてただけだろ」


    苗木「そっか…」


    大和田「ところでよォ苗木、オメェにはここ真っ白に見えるンだってな?」


    苗木「え?…またそれ?」



    なんなんだよその質問は…なんでまたそんなこと聞くんだよ…



    大和田「オレにもここは真っ赤に見えるぜ?
    正直こんな所居座りたくねェよ」


    苗木「どうして2人には真っ赤に見えるの?」


    桑田「そりゃアレだろ、意識してるからだろ」


    苗木「え?」



    さっきから会話が要領を得ない…噛み合ってるけど噛み合ってない…


    気持ち悪くなってきた。



    大和田「ホントならオメェにも赤く見えてねェとダメなんだがな?」


    苗木「それはどうして?」


    セレス「それは貴方とわたくし達が同じだから、ですわ」


    苗木「……セレスさん」



    動じはせずとも、この異常事態に嫌悪感を覚え始めた。


    だってこれじゃあまるでボクが死んでしまったみたいじゃないか。


    死んだ旧友に死んで会いにきた、みたいな。


    いや、どうなんだろう?ホントにそうだったりして?



  5. 5 : : 2016/12/01(木) 00:08:02

    セレス「まず、苗木君を除くわたくし達3人の共通点を挙げて頂けますか?」


    苗木「3人の共通点?」



    桑田クン、大和田クン、セレスさんの共通点…それは…



    苗木「…オシオキされた3人?」


    セレス「ご名答!うふふふふ、流石ですわね苗木君」


    苗木「…」


    セレス「さて、そんな聡明な苗木君に更に質問です。オシオキされたということはつまりどういう事でしょう?」


    苗木「オシオキされたということは?」


    セレス「ええ、単純な問いです」



    単純な…ってことはそのまま率直に答えていいのかな?



    苗木「クロだった…つまり、人を、仲間を殺した3人」


    セレス「その通り」


    苗木「で、ボクがキミたちと同じなの?」


    セレス「ええ」


    苗木「は?」


    大和田「ったくよォ、簡単なコトだろ」


    桑田「オレたちと同じってことはつまり?」


    苗木「つまり…」



    つまりなんだ?この3人は何が言いたい?



  6. 6 : : 2016/12/01(木) 00:08:26

    大和田「ンだよ、まだわかんねぇか?」



    痺れを切らしたように大和田クンが急かす。


    正直、ボクはこのやり取りに辟易してきたところだ。


    大和田クンが痺れを切らす前にボクの感情が爆発しそうだ。



    苗木「分からせようとしてるっていう事だけは分かったよ」


    セレス「つまり、苗木君が理解するまでこの問答は続きます」


    桑田「スッゲェ単純だぜ?」


    苗木「……」




    伏せ目がちになり、心の中で悪態をつく。



    苗木(どこが単純だよ…ボクとキミたちの共通点なんてどこにも…)



    …ん?



    共通点?この3人と?同じ?




    苗木「……そっか、分かった」




    全てを理解して再び顔を見上げた時、ボクの視界は真っ赤に染め上げられていた。


    真っ白な空間なんてもうどこにもない、あるはずもない。


    だってボクはシロじゃない。


    ボクはむしろクロなんだから。


  7. 7 : : 2016/12/01(木) 00:08:44



    ーーーーーーーーー


  8. 8 : : 2016/12/01(木) 00:09:01

    目を覚ますとゴミ処理場だった。


    鼻をつんざくような悪臭が辺りを漂う。



    苗木「…夢、か」



    そっか…ボクは確かオシオキされかけた所をアルターエゴに助けてもらって、それでここに落ちたのか。


    あー、身体中が痛む。特に頭が痛い。頭打っちゃったかな?



    苗木「さて、どうしようかな…」



    ここに落ちてからどのぐらい時間が経ったのかすら分からない。しばらく寝てた気はするけど…


    ……寝てた。


    寝て、夢を見てた。



    苗木「夢にしちゃ悪趣味だったけど…はぁ…」



    確かにそうだった。ボクは桑田クン、大和田クン、セレスさんを殺したクロだ。


    ボクが暴き、モノクマが殺した。手を下したのはモノクマでも、大体ボクのせいだろう。


    そりゃあボクにも主張がある。シロであるみんなのため、何より自分も生き残るためにクロを暴いたんだから仕方ないだろっていう主張が。


    けど、3人に言わせればそれは言い訳だよね、多分。真意は確かめようもないけど。


    まあつまり、ボクはクロだ。しかも3人も殺してるんだから15人の中でもダントツで。



    苗木「……なんて考えてる暇あったら体動かせよ苗木誠」



    そうだよ、前向きが取り柄なんだろ?アルターエゴが繋いでくれたんだ。ボクも必死になって生き残らなきゃ!
  9. 9 : : 2016/12/01(木) 00:09:52


    ……




    …なんっもない!嘘だろ!?


    食べられそうな食料も、飲めそうな水もない!そりゃあゴミ処理場だけどさ!


    うわ、どうしよう…困り果てた…


    食料も水もないんじゃ、余計な体力を使わないっていうのが得策だよな…



    苗木(ジッとしてるか…)



    座り込む。黙る。動かない。



    苗木「…」


    苗木「……」


    苗木「………」


    苗木「……」


    苗木「……………」


    苗木「………………………ヒマだな」



    ヒマだった。


    何もできないけど、ていうか何もしないって決めたけど暇だった。


    やる事ないからな…うーん…


    ………寝るか?


    えー、また寝る?だってしばらく寝てたよねボクさ?寝るのがベストかもだけど。



    苗木「…」



    何て事を考えているうちに、ボクの意識はいつの間にかまどろみの中にいた。






  10. 10 : : 2016/12/01(木) 00:10:12



    ーーーーーーーーー


  11. 11 : : 2016/12/01(木) 00:10:29

    真っ赤な部屋にいた。


    今度はボクにも真っ赤に見えた。シロになんて見えるわけがなかった。



    苗木「…うぷっ」



    ただただ赤く塗られたその空間は吐き気を催すぐらいにはグロテスクで、頭がどうにかなりそうなぐらい狂気じみてて。


    ただただ闇の中にいた時よりもずっとずっと恐ろしかった。


    冷や汗が頬を伝い、それが更に肝を冷やす。


    ここから出なきゃ、と。そう訴える。



    苗木(出口は…)



    辺りを見回しても出口らしいものはなく、のっぺりとした壁に脂肪を取り囲まれてるだけ。窓もない。もちろん赤。


    落胆して視線を元あった場所に戻す。


    すると、少し先に桑田クンがいた。



    苗木「……あれ?」


    桑田「…」



    いたんだけど。いたんだけどさ。



    苗木「何なんだよこれ…!」



    桑田クンは、いつか見た格好をしていた。


    棒にくくりつけられて、身動きが取れない状態されて。そのまま暴行を加えられたみたいな、そんな格好。


    …何が暴行を加えられた、だよ。


    硬式野球ボールを1000球、全身に打ちつけられた…あの時の姿見だった。


    この前みたいに桑田クンが喋ることはないって、それだけで分かった。
  12. 12 : : 2016/12/01(木) 00:11:02

    苗木「な、なんで…こんな…!」



    気が動転して尻餅をついた。


    その時、右目の端で何かを捉えた。白い何か。


    嫌な予感はしつつ、顔を右にゆっくりと向ける。



    苗木「………」



    骨。あとは学ラン。そして、その場所だけ油類が溶け出してた。


    いよいよ頭が追いつかなくなってくる。訳がわからない。分かりたくない。


    いよいよ吐き気を抑えられなくなってくる。吐きたい。吐くか?吐こう。



    苗木「……つっ!?」


    とか何とか思って吐こうとしたら後ろから熱気。熱い。暑い。あつい。


    ある程度予想はつく。というか彼女しかいないだろう。


    振り向きたくない。


    振り向いたらそこには焼けただれたセレスさんがいるのだから。


    振り向きたくない。振り向きたくない。振り向きたく。


    なのに、ボクの意思とは相反して顔は後ろを向いてゆく。視界に捉えようとする。



    苗木「…やだ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ」



    なんて口だけの抵抗は虚しく、あっさりとボクの両目はソレを捉えた。



    苗木「…」



    結論だけ言うと、焼けただれたセレスさんはいなかった。


    最初に目に入ってきたのは弱々しい火。


    あと焼け焦げたような、違うような異臭。


    そして遅れて、火がくすぶってるグズグズの肉塊。それに混ざる白と黒の布切れ。



    苗木「……は、ははは、ははははは」



    そうだった。セレスさんは最期、消防車に押し潰されたんだったっけ?
  13. 13 : : 2016/12/01(木) 00:11:38


    苗木「何なんだよ3人とも、何が言いたいんだよ!」



    死体は喋らない。いや、喋ることができない。



    苗木「ボクがキミたちを殺した犯人だって言いたいの?そうなんだろ?」



    耳に届くのは反響したボクの声。


    そして桑田クンの方から液体の滴る音。



    苗木「何とか言えよ!この前はあんなにベラベラ喋ってたくせに!ねえ!」



    三方を取り囲まれてる。この死体たちから離れたい。けど動けなかった。怖くて。



    苗木「だからボクもオシオキされろっていうの!?キミたちが悪いんだろう!人を殺したんだから!それをボクが暴いただけだ!」


    苗木「それなのになんで報復みたいなことしに来たんだよ!ボクは悪くないのに!」


    苗木「ボクは悪くない…ボクは悪くないんだ……!」



    言い聞かせる。ただただ言い聞かせる。


    言い聞かせても無駄だった。


    何も語らずとも死体は語りかけてくる。


    『お前が殺したんだ』と。



    苗木「……んでだよ、なんなんだよ…!」



    頭を抑え、うずくまる。死体を見ないようにするため。


    けど。



    「苗木……苗木……」


    苗木「っ!?」



    今度は声が聞こえた。喋れないはずなのに。


    ズリズリと、何かが這い寄る音も聞こえた。


    三方向から。



    苗木「や、やめろ…やめてよ…!」


    「苗木……苗木……苗木……」


    苗木「ご、ごめん…謝るから!謝るから…!」


    「苗木……苗木……苗木…な」


    苗木「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんな」


    苗木「さいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさ」


    「…ぎくん……なえ…く…な………」


    苗木「いごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめ」


    「苗木くん!」



  14. 14 : : 2016/12/01(木) 00:12:06



    ーーーーーーーーー


  15. 15 : : 2016/12/01(木) 00:12:27


    霧切「苗木君!しっかりして!」


    苗木「うぅっ…き、霧切さん……?」


    霧切「……!」




    目を開けたら霧切さんの顔がすごく近くにあった。





    霧切さん?




    苗木「…あれ?なんで……」


    霧切「なんでって…
    貴方を救出しに来たのよ、苗木君」


    苗木「救出……あー…」



    やっと頭が働いてきたボクは、霧切さんの言葉の意味を理解した。


    理解すると同時に、こんな所まで来てもらったことを何だか申し訳なくなってくる。



    苗木「ごめんね、霧切さん」


    霧切「…どうして謝るのかしら?謝るのは私の方なのに」


    苗木「だって、ボクみたいは人殺しを助けるためにこんなところに来てさ…」



    ……あれ?人殺し?ボクが?



    霧切「人殺しって……貴方どうしたの?
    ずっとうなされてたみたいだし」


    苗木「う、うん…それが…」グゥゥゥウ


    苗木「…」


    霧切「……パンと水、持って来てるの」


    苗木「…ありがとう、食べたら話すね」

  16. 16 : : 2016/12/01(木) 00:12:51

    一瞬でパンと水を平らげたボクは、一言霧切さんにお礼を言ってからさっきのことについて話した。



    霧切「そう、そんな夢を…」


    苗木「そうなんだ…目覚めてからずっとそれが気がかりでさ」


    霧切「気にする必要なんてないと思うわよ、誰も苗木君を責められないわ」


    苗木「そうかもしれないけど…」


    霧切「…」


    苗木「分かってるんだ、こんな事気にしたって仕方がないことなんてさ
    …でも、目覚めてからずっとあの夢が忘れられなくて、3人に謝らなきゃいけない気がして…」



    それを聞いた霧切さんは、顎に手を置いてしばらく考え込んだ後



    霧切「つまり苗木は今、3人がオシオキされたことについて責任を感じて、罪の意識に囚われている」


    霧切「できることならその意識を緩和したい、と思っているのね」



    と、冷静に分析した。



    苗木「まあ、そういうことなのかな?」


    霧切「できることなら私にその気持ちを分け与えてくれていいのだけど、そんなことできないわよね」


    苗木「そんなの技術的にもできないし、ボクがやるわけないじゃないか!」


    霧切「ふふっ、分かってるわよ」


    苗木「!」



    霧切さんが笑った…



    霧切「……何かしら?人の顔をそんなにジロジロ見て」


    苗木「ああいや!その、霧切さんの笑顔って珍しいなって…」


    霧切「…!苗木君のくせに生意気よ」


    苗木「あ、あはははは…ごめん…」


    霧切「…と、とにかくここから出るわよ」



    確かにそうだ。こんな所に長居する理由なんて、万に一つもありはしない。



    苗木「でもどうやって帰るの?」


    霧切「あのハシゴを登るわよ、衰弱してて少しキツいかもしれないけど頑張って」



    霧切さんが指差した先には天井まで続くながーいハシゴ。少し気が滅入った。
  17. 17 : : 2016/12/01(木) 00:14:05


    ーーー


    何とか地上に這い出たボクたちは、みんなに生存報告を済ませたり何たりをした後倉庫に向かっていた。


    でも倉庫って…どうしてなんだろう?



    霧切「さて…」



    倉庫に着くなり、霧切さんは物を物色し始めた。流石に着いて行けなくて声をかける。



    苗木「え、ちょっと待ってちょっと待って」


    霧切「なに、どうしたの苗木君」



    視線はこちらに向けずに変わらず何かを探す霧切さんの背中を見ながら、ボクは言葉を紡ぐ。



    苗木「いや、どうしたのじゃなくてさ!
    霧切さん何探してるの?手伝うよ?」


    霧切「その必要はないわ」


    苗木「え、なんで?
    あ、ボクじゃ届かないところにあるってこと?」


    霧切「早とちりしないで…
    たった今見つかったからよ」



    と、言いながら振り向く霧切さんは両手で大きな瓶を抱えていた。


    中には白色の…飴玉?かな?瓶いっぱいに詰まっている。


    ボクは霧切さんに必要とされなかったわけじゃなかったことを心の片隅で安堵しながら、瓶について尋ねた。



    苗木「それを探してたの?飴玉?」


    霧切「ええ、そうよ
    …舐める?」



    瓶の蓋を開けてその1つをボクに差し出す。


    受け取って口に入れると



    苗木「……これ薄荷じゃん」



    スースーする。ミント。甘い飴を期待していた手前、少し残念な気持ちになった。



    霧切「そうよ、ここに入っている飴玉は全部薄荷飴」


    苗木「そっか…生ゴミのせいで嗅覚がおかしくなってたから薄荷の匂いに気づかなかったのか…
    …でもどうして薄荷飴?」


    霧切「苗木君に持っていく食料の候補をここで探している時に偶然見つけたの」


    苗木「そうなんだ…
    …それで、どうして薄荷飴?」


    霧切「苗木君が苦手かと思って反応を楽しみにしていたのだけれど」


    苗木「別に苦手ではないかな…」


    霧切「そう」



    こうやって冗談を言ってくれるようになった事を少し嬉しく思いながら、ボクは口の中で飴玉を転がした。


  18. 18 : : 2016/12/01(木) 00:14:35

    霧切「ところで苗木君、知っているかしら?
    薄荷はある国では『罰』の象徴なのよ?」


    苗木「え、そうなの?」


    霧切「嘘よ」


    苗木「嘘なんだ…」


    霧切「でも、そう思って飴をなめたら少しは罪の意識も和らぐんじゃない?」


    苗木「え?」


    霧切「だからその…甘くない飴をなめることで罰を受けるっていうか…」



    そうか…霧切さんボクのために…


    カッコ悪いな、男として。



    苗木「そうだね、そう思ったら確かに罪の意識も和らいできたかも」


    霧切「…」


    苗木「ありがとね、霧切さん」


    霧切「いいのよ…私、貴方に謝っても謝りきれないことしたんだし」



    そして霧切さんは飴を1つ、口に放り込んだ。



    霧切「……甘くないわね」


    苗木「『罰』だからね」


    霧切「…ふふっ」


    苗木「あはははっ」


    モノクマ「うふふふふ」


    苗木「帰れ」


    モノクマ「やけに辛辣だね!?」


    苗木「そりゃあそうだろ、お前のせいで散々な目に遭ったんだから」


    モノクマ「うぷぷ、苗木クンったら全くもって【超高校級の不運】なんだから」


    苗木「確かに、お前に目をつけられてしまったことは【不運】かも」


    モノクマ「…目をつけられた、ねぇ」


    苗木「?」



    なんだ今の含みのある言い方…?



    モノクマ「そうそう言い忘れてた!
    最後の学級裁判について!」


    霧切「…最後の学級裁判?」


    モノクマ「うん、正真正銘最後の学級裁判さ!
    この学園の秘密を解き明かせたらキミたちの勝ち、それができなきゃみんなバイバーイ!」


    苗木「なっ…!そんな」


    霧切「良いわね、やってやろうじゃない」


    苗木「き、霧切さん!?」


    モノクマ「……へぇ?」



    なんていうか…やけに好戦的だな、霧切さん…


    勝てる自信でもあるかのような…



    霧切「さ、行きましょう苗木君」


    苗木「え?あ、ちょっと待ってよ霧切さん!」



    半ば強引に霧切さんに引っ張られるように、ボクたちは倉庫を後にした。



    モノクマ「裁判をより公平にするため、今まで封鎖してた所は全部解放したから!操作はご自由にー!」



    なんていう声を聞き届けながら。
  19. 19 : : 2016/12/01(木) 00:15:04

    新しく解放された場所は、今まで知ることができなかった情報に溢れていた。


    超高校級の絶望、人類史上最大最悪の絶望的事件、失われた記憶、そして霧切さんのお父さん…学園長の所在。


    本当かどうか疑いたくなるような情報も沢山あったけど、それを全て鵜呑みにすることしかボクにはできなかった。


    そして一通り調べ終えた頃



    『いつもの扉へお集まりくださーい』



    というアナウンスが聞こえて…


    そしてボクらは今、地下へと続くエレベーターの中にいた。



    朝日奈「緊張するね…」


    腐川「…」


    十神「貴様ら、今のうちに精々情報を頭の中で整理しておくんだな」


    葉隠「これが最後なんかな…ホントに」


    苗木「最後にするんだよ、ボクたちで」


    霧切「そうね、終わらせましょう」


    葉隠「………だな」


    十神「…ふん」


    朝日奈「うん!そうだね!終わらせよう!」


    腐川「な、なによ…一致団結しちゃって…!」


    苗木「…」



    扉が開く。終わりへ向かう扉が。


    終わる。ボクらの旅路が。


    そして始めるんだ。


    また、ゼロから。何もないところから。


    ボクは薄荷飴を噛み砕いた。

  20. 20 : : 2016/12/01(木) 00:15:24





    ーーーーーーーーー



  21. 21 : : 2016/12/01(木) 00:21:10

    ボクの名前は苗木誠。【超高校級の幸運】


    荒廃した街で薄荷飴を舐め続けている。


    瓶いっぱいに詰められた薄荷飴は、まだまだ無くなりそうにない。


    でも、ボクが罪の意識に囚われる限りはいずれ無くなるのだろう。


    だってボクは、14人もの仲間を殺しているのだから。


    ……あれ?話飛びすぎ?


    流石に順を追って説明したほうがいいかな?


    さて。


    黒幕が江ノ島さんだということも、学園の秘密も、何もかもが暴かれたときに江ノ島さんが言ったんだ。



    江ノ島「誰がお姉ちゃんを殺したでしょーか」



    って。


    もちろん、ボク含めたみんなが「江ノ島だ」って答えたよ?見せしめのために殺したんだって。


    そうしたら何と、江ノ島さんは投票タイムを設けたんだ。


    みんな嫌な予感はしていたけど、江ノ島さんに投票した。


    そして、違った。


    だからみんなオシオキされて、死んだ。


    じゃあ誰が戦刃さんを殺したかって?


    ボクがこうやって学園の外に出てるってことは…


    …ここまで言えば分かるよね?


    そ、ボクが戦刃さんを殺した本当のクロ。

  22. 22 : : 2016/12/01(木) 00:29:20

    江ノ島さんと計画を練ってる時にさ、こっそりそういうシステムを作ってもらったんだよ。


    『モノクマを踏んづけたら槍が飛んできて踏んだ奴をメッタ刺しにする』っていうやつ。


    ボタン式落とし穴をあらかじめ作ってたぐらいだったからね。槍の射出位置を調節しておいて、あとは戦刃さんがモノクマを踏んづけるその日を待つだけ。


    まあ、ついさっきまでそんな事忘れてたんだけど。


    みんなのオシオキが済んでボクが絶望してる時に頭イジられてさ、こうして元どおり。


    じゃあ一体ボクは何人殺してんだよって…


    桑田クンたちどころじゃないじゃんって。


    罪に囚われて罰を望む、それこそがボクにとっての絶望だから。



    …だからまあ、霧切さんが慰めのためにくれた薄荷飴の瓶は今はボクのお気に入りのアイテムになってる。


    最近は倒壊したビルなんかを眺めながら薄荷飴を舐めるのが好きだ。


    ……。


    こんなオチじゃつまらない?


    そう?割とアリだと自分では思うんだけど…


    あ、そうだキミも薄荷飴舐めてみなよ。


    『罰』を受けてる気分でさ、舐めてみてよ。


    きっと気持ちいいから。きっと。


    だからさ、



    苗木「はい、薄荷飴」


    江ノ島「いらね、勝手に舐めてろ」

  23. 23 : : 2016/12/01(木) 00:29:38









    おわり
  24. 24 : : 2016/12/01(木) 00:31:02
    終わりです!
    ここまで読んで下さった方、ありがとうございました!
    >>1でも言いましたが「読み比べて」くださいね!必ず!

    それではまたいつか!来世までアデュー!
  25. 25 : : 2016/12/01(木) 00:44:29

    まことに(苗木だけに)たけまんさんらしい急展開の連続で一節一節が楽しかったです
    参加ありがとうございました!
  26. 26 : : 2016/12/04(日) 16:58:58
    甘くないハッカ飴をなめながら廃れた街を見るのが好きとかなんかカッコいいですね!←

    なめきっても、口の中から中々消えない薄荷の味が、償いようもない罪の意識を引きずり続けるみたいな…なんか深い感じしますねぇ。

    慰められて笑いあった相手を『殺した』思い出の飴をなめて、罪を受ける気持ちになれて気持ちがいい…とか、絶望感あります。
  27. 29 : : 2020/10/26(月) 23:04:39
    http://www.ssnote.net/users/homo
    ↑害悪登録ユーザー・提督のアカウント⚠️

    http://www.ssnote.net/groups/2536/archives/8
    ↑⚠️神威団・恋中騒動⚠️
    ⚠️提督とみかぱん謝罪⚠️

    ⚠️害悪登録ユーザー提督・にゃる・墓場⚠️
    ⚠️害悪グループ・神威団メンバー主犯格⚠️
    10 : 提督 : 2018/02/02(金) 13:30:50 このユーザーのレスのみ表示する
    みかぱん氏に代わり私が謝罪させていただきます
    今回は誠にすみませんでした。


    13 : 提督 : 2018/02/02(金) 13:59:46 このユーザーのレスのみ表示する
    >>12
    みかぱん氏がしくんだことに対しての謝罪でしたので
    現在みかぱん氏は謹慎中であり、代わりに謝罪をさせていただきました

    私自身の謝罪を忘れていました。すいません

    改めまして、今回は多大なるご迷惑をおかけし、誠にすみませんでした。
    今回の事に対し、カムイ団を解散したのも貴方への謝罪を含めてです
    あなたの心に深い傷を負わせてしまった事、本当にすみませんでした
    SS活動、頑張ってください。応援できるという立場ではございませんが、貴方のSSを陰ながら応援しています
    本当に今回はすみませんでした。




    ⚠️提督のサブ垢・墓場⚠️

    http://www.ssnote.net/users/taiyouakiyosi

    ⚠️害悪グループ・神威団メンバー主犯格⚠️

    56 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:53:40 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    ごめんなさい。


    58 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:54:10 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    ずっとここ見てました。
    怖くて怖くてたまらないんです。


    61 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:55:00 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    今までにしたことは謝りますし、近々このサイトからも消える予定なんです。
    お願いです、やめてください。


    65 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:56:26 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    元はといえば私の責任なんです。
    お願いです、許してください


    67 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:57:18 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    アカウントは消します。サブ垢もです。
    もう金輪際このサイトには関わりませんし、貴方に対しても何もいたしません。
    どうかお許しください…


    68 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:57:42 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    これは嘘じゃないです。
    本当にお願いします…



    79 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:01:54 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    ホントにやめてください…お願いします…


    85 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:04:18 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    それに関しては本当に申し訳ありません。
    若気の至りで、謎の万能感がそのころにはあったんです。
    お願いですから今回だけはお慈悲をください


    89 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:05:34 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    もう二度としませんから…
    お願いです、許してください…

    5 : 墓場 : 2018/12/02(日) 10:28:43 このユーザーのレスのみ表示する
    ストレス発散とは言え、他ユーザーを巻き込みストレス発散に利用したこと、それに加えて荒らしをしてしまったこと、皆様にご迷惑をおかけししたことを謝罪します。
    本当に申し訳ございませんでした。
    元はと言えば、私が方々に火種を撒き散らしたのが原因であり、自制の効かない状態であったのは否定できません。
    私としましては、今後このようなことがないようにアカウントを消し、そのままこのnoteを去ろうと思います。
    今までご迷惑をおかけした皆様、改めまして誠に申し訳ございませんでした。

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