父を愛していました。
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- 1 : 2016/10/05(水) 19:46:29 :
- はいっ、どうもherthです!
ダンロンアニメ3が終わったので、霧切さんのお話を書いていきたいと思います。
コメントとかジャンジャンお願いしますね!
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- 2 : 2016/10/05(水) 19:47:26 :
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- 3 : 2016/10/05(水) 19:55:02 :
- 私は祖父二人と両親が大好きだった。
探偵をやる不比等は尊敬していたし、棟八郎は豪快で強くて好きだった。
母の優しい目が好きで、白い手のぬくもりに触れていると幸せだった。
父の鋭い目は格好良くて、大きな手で抱き上げられるのが気に入っていた。
あの頃の私は、どこにでもいる幸せな少女だった。
-
- 4 : 2016/10/05(水) 20:26:12 :
- 「『悪いオオカミはお腹に石を詰められ、井戸に落ち、そのまま上がってきませんでした。
ヤギの親子はオオカミに恐れることなく、幸せに暮らしましたとさ』…おしまい」
母はよく、本を読み聞かせてくれた。
幼き日の響子は、優しい声で読まれる物語が大好きだった。
でもこの日は少し不満げだった。
それに気づいた母は、響子に問いかけた。
「面白くなかった?」
「いいえ、おかあさま。でも、なんだかひっかかるなあとおもったの」
「そう…お母さまに聞かせて?」
「オオカミはいきるためにたべたのではないの?だれでもたべないとしんでしまうもの。
じぶんのこどもをたべられたらかなしいわ。ゆるせないとおもうわ。でも、だからって『わるいオオカミ』というのはおかしい」
「なぜ?」
「これを書いたのはヒトだから。ためらわずにどうぶつをころしてたべて、つごうのわるい生きものはころす。そんなみがってでつごうのいいヒトが、がんばって生きてるどうぶつのゆうれつよしあしをきめたらいけない」
「響子は難しい言葉をたくさん知ってるわね。…そうね、言い分はわかるわ。でもこういわれたらあなたはどう考えるかしら。
響子はお父さまは好きよね?そのお父さまが人をたくさん殺している人に殺されてしまう。犯人は人肉を食べなくては生きてはいけなかった。
私たちは人なんか食べなくても生きていけるのに、ね。
そんな私たちからすれば、犯人は異常よ。間違いなく悪い人。
この人が死んだら、人を食べる人はいない、犠牲者は出ない、間違いなく平和な日がやってくるの。
ほら、オオカミが殺されたのは仕方のないことのように思えてくるでしょう」
響子は黙って聞いていたが、不満そうな顔は変わらなかった。しかし、しぶしぶ納得し、こくりとうなずいた。
「本当に悪いことなのか、本当の犯人は誰か、見極めるのは難しいわ。でも響子、貴方はそれをきっぱり見極められるようになるよう、訓練するの。
灰色の霧を切り開いて、唯一の真実をつかめるようになりなさい。探偵とはそういうものよ。
…霧切という名を誇れるように、立派な探偵になってね」
不満げな顔は一変し、笑みが広がった。
「はい、おかあさま!」
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- 5 : 2016/10/05(水) 20:41:35 :
響子の銀髪と白い肌は母譲りだった。
大好きな母と、瓜二つだと言われるととてもうれしかった。
銀髪は彼女の自慢だった。
響子の切れ長な目は父譲りだった。
根の張った、力強く、芯のある目は父と同じだと言われれば、響子は誇らしかった。
色素の薄い瞳は彼女の自信だった。
-
- 6 : 2016/10/05(水) 20:55:13 :
- 「おかあさま、かぜですか?大じょうぶ?」
「こほっ…ええ、平気よ。ちょっと…こじらせただけ。心配しないで」
心配そうな響子の声に、母は苦し気に答える。
やっぱり心配そうな顔をしたままの彼女に母は無理に笑いかけた。
「ほら。もう棟八郎おじいさまに合気道を教わりに行く時間よ。お話なら今日もちゃんとしてあげるから、もう行きなさい」
響子は納得のいかない顔で椅子から飛び降りると、扉へと歩いて行った。戸の手をかけ、そこで母を振り返る。
「きょうはおはなしはいいわ。あったかくして、ねてね。行ってきます」
「ええ。がんばってね、いってらっしゃい」
母は微笑むと控えめに手を振った。
響子はお辞儀で返し、部屋を出て行った。
-
- 7 : 2016/10/05(水) 21:03:51 :
- 期待です!
-
- 8 : 2016/10/05(水) 21:04:40 :
- 頑張ってください!!
-
- 10 : 2016/10/05(水) 21:26:28 :
「おかあさま、ねつはまだひかないの?」
「ええ、そうなの。ずっと微熱が続いているのよ…ごめんなさい、今日もお話は無理そうなの」
「そんなの全ぜんかまわないわ。しっかりえいようをとって、きょうはもうねてください」
「そうするわ、ありがとう。優しい子ね」
・・・・・・・・・
「ねえおかあさま、ねつのせいかしら。かおが赤いわ」
「きっとそうね」
「でもぜんぶじゃないの、まるでちょうちょみたいよ」
「蝶?…なにかしら」
「それにね、もう春なのに手にしもやけができてるわ」
「そう、しもやけができちゃったのよ、不思議よね。……っ」
「だ、大じょうぶですか?そんなにフラフラするならもうねたほうがいいわ。用があったら電話で呼んで」
「ええ…ありがとうね、響子」
・・・・・・・・・
「お水をもってきたわ。今日も、うごけそうにないの?」
「ありがとう。…とてもだるいの、今日も無理そうだわ。ごめんなさい」
「いいえ」
「それより、今日は学校で何をしたか聞かせて」
「今日はかんじをならったわ。『今日』ってかけるようになったの、ほら」
「とても上手にかけているわ」
「ふふふ…」
-
- 11 : 2016/10/05(水) 22:02:36 :
「ただ今もどりました。…お母さま?いらっしゃらないの?」
「おお、響子!ようやく帰ったか」
「お祖父さま、お母さまがいらっしゃらないんです」
「母上なら、棟八郎じいさまと仁と病院だ。さ、私たちも行くぞ、車に乗りなさい」
「びょういん…?わ、分かりました、すぐに行きます」
家に帰った響子をむかえたのはベッドに寝た母ではなく、不比等だった。
急かされた響子は着替えもせず、慌てて車に乗り込む。
病院には十分程度でついた。自動ドアを抜けると、血気迫った表情で仁が駆け寄ってきた。
「父様!響子!やっと来ましたか、早く先生の所へ…!」
「仁、彼女に何があったんだね?」
早歩きをする彼に、響子の手を引きながら不比等は尋ねた。
「仕事から帰ったら、厨房に倒れていたんです。コップが近くにあったので、恐らく水を飲もうとしたところ、患っていた病気により気を失なったのかと。毒物が塗られていた可能性はありません。調べましたから」
「うむ、おおむね良いと言えるだろう」
「お父さま、お母さまは大じょうぶなの?」
一生懸命歩きながら、心配そうに尋ねる。
それに対し、仁は苦々しく言った。
「今は何とも言えない。先生に指示を仰がないと…。ここだ」
仁の足が404号室で止まった。
-
- 12 : 2016/10/05(水) 23:13:14 :
- 病室に入ると、白衣を着た医者と棟八郎、そしてベッドに寝る母の姿が響子の目に映った。
「先生、そろいました」
「分かりました。では病名をお伝えするので、椅子に腰かけ、落ち着いて聞いてください」
椅子が高く、響子は座るのに苦労した。
全員が座り、医者の顔を見つめる。
そして、ようやく…重い口を開いた。
「では、お伝えします。患者の病名は__」
__全身性エリテマトーデス。
「…決してなおらない病気ではありません。すこし珍しいですが…。しかし、彼女はもともと体が弱いのもあり、今まで診療にもこなかったのもあり、…完治は難しいと思われます。すでに、免疫力が落ちてることにより、感染病にもかかっています。体力も非常に落ちていますし、命も残り短いでしょう」
「エリテマトーデス…ですか」
そう繰り返した棟八郎の目は衝撃と悲しみに染まっていたが、表情は全く変えなかった。
そして、沈黙する不比等と仁もまた、表情は一切乱さない。
響子は表情を悟られまいとうつむいていた。
医者は、この場にいる者たちが息をのむものだと思っていたが、全くそうならないので不気味に感じたようだった。
「…で、では私はこれで。何かあったらナースコールで呼んでください」
「ええ、ありがとうございます」
ガラガラと戸が引かれ、医者の姿は見えなくなった。
「響子、言いつけをしっかり守れたな。偉いぞ」
「……お母さま、は、死んでしまうのですか?」
棟八郎が_恐らく感情を隠すことについてだが_ほめたが、それを意にも留めず、かすれた声で響子が聞いた。
「…遠回しな言い方だったが、恐らくそうだ……死ぬ。__そんな顔をするんじゃない、仁。みっともないぞ」
「…っ、貴方の一人娘が、私の妻が、この子の母親が死ぬって、そんなことをよくも軽く言えたものですね。探偵の僕よりよほど向いているのではないですか?」
珍しく目に怒りを浮かばせ、仁は皮肉った。
「きっと生き延びますよ。その可能性があるのにそれを信じないなんて__」
「私はその『可能性』の話をしているのだがね、仁。探偵が一つの考えにしがみつくようではいけないな。君はやはり、よほど探偵にはむいとらん」
仁の言葉をさえぎり、冷たい表情で棟八郎は仁を見た。
「仁、棟八郎さん、両者とも落ち着きなさい」
響子は困ったように二人を見ていたが、不比等がそれを止めた。
「それに、病人の前で騒ぐのは考え物だ。一度家に戻ろう」
「僕は少し残ります。響子、お前もここに残りなさい。話があるんだ」
食い気味にそういうと、仁は二人を家に戻らせた。
-
- 13 : 2016/10/06(木) 23:24:13 :
病室には、三人の親子のみが残った。
仁と響子は、母親を挟んで向かい側に椅子に座っていた。
病室は飾り気がなく、すべてが白く、味気ないものだった。
そんな部屋の中で静かな寝息は、周りの白に吸収されるかのように、しかしわずかながら響いている。
たまに遠くから自動車の走る音も聞こえた。
彼らは、母の顔をぼーっと眺めていた。
しばらくした後で、仁はようやく口を開いた。
「…響子、いつも仕事ばっかりで会えなくてごめんな。もっと団欒を大事にしていれば、お母さまの病気にも気づいてやれたろうに」
響子はふるふると首を振った。
「お父さまのせいではないわ。いらいをこなすのは最優先じこうだと、家訓もあるのだし…。第一、終わったことに対して『こうしていたら、ああしていれば』と考えたって過去にもどれはしない」
仁はしばらく娘の顔を見つめていたが、唐突に尋ねた。
「…将来は……探偵になるのか?」
「しょうらい、ではないわ。私は霧切として生まれた時からたんていなのよ、お父さま。おかしなことを聞くのね」
「そうか…うん、そうだよなぁ」
ちょっと笑って答える響子の顔から今度は目を伏せる。
「…どうしたのお父さま。なんか、変」
「……変か。うん、変だな。でも、聞いてくれ。
あのな、我々は霧切の名に縛られてるって思うんだよ。代々続く誇り高い探偵一家…だからってほかの何か夢をつぶしてまで全うしなくていいと、そう思ってる。
血なまぐさい仕事だよ、探偵というのは。それを小学二年生がやっているというのは世間から見たら異常だ。
かわいそうだ、とかほかの夢を持たせてあげないのか、とか、そういう人は少なくない。
そして私もそう思っている一人だ。
響子、お前は使命感からほかの夢をあきらめていたりしてないか?
何も探偵に縛られることなんかないんだ。自分がなりたいと思うものを望みなさい。
私情を表に出すなと言われても、笑いたければ笑えばいいし、腹が立てば怒ればいい。
まだ子供だ、選択肢はたくさんあるんだから__じっくり考えるんだぞ」
響子は黙って聞いていたが、終わると少し怒ったように言った。
「どうしてそんなことを言い出すの、お父さま?私は私がこの道を生きたいからえらんだの。ほかに何かうわついた気持ちがあるわけでもないわ。
それに、教えにそむくことを言わないで。霧切家の長いあいだのやり方を否定しているように聞こえて、嫌。
そんなことを言うのは、お父さま、あなた自身がたんていという仕事にふまんを感じているからではないの?
……ご、ごめんなさい。こんなことは親に言うべきことばではありませんでした」
「いや、かまわない。…うん、お前は根っからの探偵らしいな。
実を言えばそうだ、私は探偵業に嫌気がさしている。人を追い詰めるのが好きなわけでもないのに『やらされている』のが嫌だし、跡取りだ何だと重圧をかけられるのもうんざりだ。私には…探偵の『才能』などないというのに。お前のほうがよっぽど探偵らしくて才能にあふれているよ、響子。
感情を出さないだなんて、そんなのは動物同然だ。人間のあるべき姿とは言えない。
家族の死に目より依頼を優先せよ…。こんなばかばかしいことまで守るだなんて、やっぱりおかしいんだ」
盛り上がった布団をきつい目で見返しながら仁は言った。
それに対し、響子は冷たい目で言葉を返す。
「そう、お父さまはたんていがキライなの。私はたんていをやるお父さまが好きだった。でも、そんなことをいうお父さまは好きじゃないわ。
いくらあなたがたんていになるなと言ったところで私は止まったりしないんだから」
「人前で泣いたり笑ったりしちゃダメなんだぞ」
「わかってる」
「危ないことも避けられない」
「わかってる」
「常に油断できないし、仕事上友達も作れなくなる」
「そんなのかまわないわ」
「…家族の最期を看取れない」
「……しかたのないことよ」
「…そうか。それが響子の選んだ道なんだな。じゃあ、何があっても諦めたりしちゃ駄目だぞ。言いつけや教えをしっかり守って、稽古や訓練も一生懸命やりなさい」
「はい。……ありがとうございます、お父さま」
そのあともしばらくその場にいたが、仁が帰ろう、と言い出し、そして響子はそれに従った。
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- 14 : 2016/10/07(金) 18:36:07 :
- 霧切さん…(>_<)
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- 15 : 2016/10/08(土) 16:36:14 :
- >>14
コメントありがとうございます!
ね、もうほんと、……霧切さーーんっ!!
-
- 16 : 2016/10/09(日) 23:57:01 :
響子の母が目を覚ましたのは数日後であった。
彼女は衰弱していたために立ち上がることすらままならないまであった。
そして入退院を数か月間繰り返し、その末に結局はまた病室に送り込まれ、あたりは紅葉に染まり始める中真っ白な景色を眺めることとなったのだ。
一人お見舞いに来た仁に、久々に彼女は重たい口を開いた。
「…お花…ありがとう…。懐かしいわ、イン・ビトロ・ローズ…」
「…ああ。学生のころ、君に上げた時のこと、ふと思い出したんだ。喜ぶかと思ってね」
「私も、思い…出してたの…。すごく、うれしい」
「……そうか」
思い出にふけるように二人は、窓の外をぼうっと眺めていた。
暫くしてから口を開いたのは、またしても彼女のほうだった。
「そういえば…もうすぐ響子の誕生日、ね。次で、何歳になるんだったかしら」
「八歳だ。二週間後には、もう」
「そう、もうそんなに…。じゃあ、私たちが結ばれてからもう7年半に、なるのね」
「うん。…はは、君のお父さまにどえらく怒られたことを思い出したよ。まだこんなにも若いのに__ってさ。恐怖したなぁ、一瞬逃げようかと思ったくらいだ。厳粛な人だよ、あの人は」
仁が苦笑すると、彼女のほうもちょっと笑った。
「私は、あなたに会えてよかった。今こうして話せることを…幸せに思うわ」
「ああ、私もだよ」
「響子にもいつか…そんな人ができたら……」
彼女は口をつぐむと少し目を細め、唇をかんだ。
そして、その言葉の続きの代わりにというように、唐突に言った。
「…あの子に、プレゼントを渡したいの」
「何を渡すんだ?」
「…手紙」
「……字は、書けるのか」
「無理かもしれない。だから、ね、手伝ってほしいの…仁」
「…君が私の名前を呼んだのはいつぶりだろうな。分かった。協力しよう」
仁はベッドの上に机を組み立て、彼女の体を起こしてやった。
そして隣に腰かけ、寄り添うように彼女の手に優しく手を置き、ペンを握る。
彼女はそのぬくもりを楽しむように目を薄く閉じ、微笑んだ。
紙にインクが走ってゆく。
これが二人が行った、最後の共同作業となった。
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- 17 : 2016/10/10(月) 00:15:58 :
- Oh……
-
- 18 : 2016/10/10(月) 00:25:10 :
- >>17
くっ…わたしもね、幸せにしてあげたいんですよ…ッ
でもできないのですっ、残念ッ!
-
- 19 : 2016/10/15(土) 22:41:39 :
響子の胸は久々に高まっていた。
というのも、不比等が、ワシントンに住む探偵の知り合いに会わせてくれるというからである。
探偵の仕事について勉強熱心な響子にとって、尊敬するに値する探偵に会わせてもらうというのはとても心が躍るのだ。
まだ英語は不自由なく使えるほどには上達していなかったものの、意思疎通は十分に行えるので問題ない。
準備を進めるこの日は、響子の誕生日の二日前である。
まだ少し早いが、これは最高の誕生日プレゼントだと思っていた。
あとは__母が元気になってくれれば言うことないのだが。
…いや、それはきっと、求めすぎなのだろう。
幼いものの、響子は年齢相応に物をねだることは無いのである。
はたから見ればそれはかわいげない、とか子供らしくない、かわいそう、とそういうのであろうが、響子はそう言った言葉は無視していた。
少し頭を振って気分を入れ替えて荷物をまとめ上げ、ついに空港へいこうと、不比等とタクシーに乗りかけた時だった。
『prrrrr…prrrrr…』
携帯電話が唐突になった。
不比等はそれを無視しようとしたが、あまりにしつこく鳴り続けるのでイライラとそれを取り出し、電話を受けた。
「あー…発車、少し待ってくれるか。響子、早く乗りなさい。
不比等だ、何だ、…仁か?おい、取り乱して話すな。うまく聴き取れん……む、そうか…分かった。すぐに響子を連れて行こう。
おい、行き先変更だ。すぐに病院へ向かえ」
不比等に言われるがまま後部座席に乗り込んだ響子は、訳の分からないという表情を浮かべて控えめに祖父のほうを見た。
「アメリカへ向かう前に寄り道せねばならん。…おまえの母様の容態が芳しくないようだからな」
響子の小さな心臓がドクンとはねる。
徐々に脳に理解がしみこみ、それとともに頭の中がしびれていくように感じた。
そんな中で響子は冷静に、こんなことを思ったのだった。
__今年の誕生日は今までの中でも最悪になるだろう、と
-
- 20 : 2017/01/20(金) 00:35:01 :
-
- 21 : 2017/01/20(金) 00:49:09 :
- 間に合わなかった。
彼女…響子の母は死んでいた。
ついたころにはすでに遅く、しかし生きていた証拠を残すようにまだ少し暖かかった。
死んでから間もない、という事だ。
それなのに……
それにもかかわらず、間に合わなかったのだ。最期を看取ることができなかった。
大好きな母が。
愛していた母が。
そんな存在を幼いながらに、響子は失ってしまったのだ。
ただただ、呆然とした。
涙すら出てこない。
「……遅かったか」
「ええ、遅かったんです」
「この子には…悪いことをしたな」
「……もう遅いです」
仁の声はどこまでも冷たかった。
そして、無言で響子へと歩いて行った。
普段温和な父の冷たい声を聴いて、響子は少し震えたが、逃げはしなかった。
唐突に、目の前に紙が差し出される。
「手紙…?」
「そうだ、手紙だ。君のお母さまが君あてに書いたものだ。本当は誕生日当日に渡したかったらしいが、今となってはそうはできない。…受け取りなさい。そして、今この場で読みなさい。時間がない」
母の前で母の手紙を読むのは気が引けたが、逆らいもできずその場で封を開けた。
-
- 22 : 2017/02/10(金) 22:17:19 :
響子へ
八歳のお誕生日おめでとう。いつの間にか大きく成長していたのだと思い、
とてもうれしく思います。
さて、また一つ大きくなったところで、夢の話でもしようかと思います。
響子は、探偵になるために毎日一生懸命勉強しているわね。そこであなたに問
いたいことがあります。
あなたには、本当に探偵になるという自分の意思はありますか?
本当に自分が望んでのことですか?
生まれが霧切家だから。だから探偵になるほかない、と夢を閉ざしてはいま
せんか?
もしほかに、やりたいことがあったなら家名など気にせず、やりたいことを
やってほしい。
そう強く願います。
自分の心に問いかけなさい。本当に探偵になるのか、ほかに追いたい夢はないか。
もし聞いた結果、自分はこのままでいいのだと思ったなら、とことん努力なさい。
どんなことにも耐えなさい。決して途中であきらめてはいけません。
がんばってがんばって努力して、その名に恥じない立派な…
立派な、探偵になりなさいね。
あなたの未来を、ずっと応援しているわ。
あなたの人生は、あなたが選択するのよ。
最後にもう一度。お誕生日おめでとう。
心から、心から愛しています。
母より
-
- 23 : 2017/02/10(金) 22:49:41 :
「………」
読み終えて、母の遺体を見た時にはあふれなかった涙が目に浮かぶのが分かった。
しかし響子はぐっと息を詰まらすと、目元をこすって手紙を丁寧にたたみ、とうとう泣きはしなかった。
この手紙を読み終えたその瞬間から、響子は決意したのである。
「さあ、もう時間がない。他の道を選ぶというならここに残り、私につきなさい。そして…今の道を選ぶなら、お祖父さまについて空港に向かいなさい。今が、選択の時だ」
生涯を、探偵業に捧げると。
「そんなもの…決まっているわ。私は探偵よ。探偵として、私はお祖父さまについてアメリカへ行く」
響子は半ば挑戦的に言い放つと、不比等のそばに寄った。
仁は一瞬寂しそうな顔をしたが、すぐに無表情になった。
「そうか。では、今から私たちは親子ではなくなる。…私は探偵をやめる。次会うときは、『キミ』の身長が30センチは伸びるころだろうね」
「いえ、むしろもう会わなくなるかもしれないわね」
「そう…だな。では、『霧切家の皆さん』お元気で。ご健勝を祈っています」
言い残し、仁は静かに病室を後にする。
響子と仁、二人が最後に交わした言葉は淡々としていて味気ない、ただの挨拶のようであった。
しかし、もう挨拶以上の言葉は必要ではない。
パタンと閉じられた戸の音の余韻が、彼の存在をかすかににおわせる。
そして響子はいない相手につぶやいた。
「さようなら、『霧切仁』。…あなたを愛していました」
目は、当分乾きそうにない。
-
- 24 : 2017/03/28(火) 12:08:34 :
時は流れ、今ここはアメリカのワシントン。
の、射撃場。
初めて彼に会ってから、そう日はたっていない。精々二間間程度である。
彼とは祖父の知り合いの探偵、ジョニィ・アープである。
銃の扱いが唯一許される探偵だという。
そんなすごい探偵に会え、こうして銃の打ち方を直々に教わるのは、響子にとっては光栄で素晴らしく貴重な体験であるはずだった。
勿論そのような念は抱いてはいる。が、決して心から嬉しく思えているかといえばそうではないのだ。
ワシントンに来たのが二週間前なのならば、そう…母が死んだのも、父を失ったのも二週間前。
そのゆるぎない事実が響子の胸を締め付けた。
自分は二人を愛していた。だからこそ。
一度に大切な人を二人も失ったその苦痛は、幸せだったあの日々の長さに比例し、肥大して、重く響子の小さな背中にのしかかる。
なんでこんなことになったのだろうか。
もう少し何か行動をしていれば、この状況を少しは改善できていたのではないだろうか。
二人に対す、様々な後悔が胸をよぎる。
もっと早くに病院に連れていっていれば。
家族の時間がもう少しあれば。
父が探偵であることに誇りを持っていれば。
母がもう少し体が強ければ。
祖父がここまで有能でなければ。
祖父が重圧をかけなければ。
もっと早くに連絡が来ていれば。
もっと速くタクシーが走れていれば__
『パンッ!!』
鋭い銃声。火薬のにおい。
ハッと目が覚め、隣に目をやるとジョニィがいた。
「やぁ、キョーコ。集中できてないだろー?」
「…ごめんなさい。Mr.アープ」
「おっと、別に謝ってほしいわけじゃない!ただ、ちゃんと的を見て撃たないと__」
彼は銃を置くと指で銃をかたどり、響子に向けてパン、と打つふりをした。
「__的外れ。なところに当たってしまう。な?ちゃんと見てさえいれば10メートル先の動かない的なんかバーンと打ち抜くなんてイージーだぜ!」
白い歯を見せてニッと笑って見せた。
遠くの人型の的をスコープで見やると、見事に脳点的中だった。
飲み物を買いに行く、と言って銃をくるくる回しながら歩いていくジョニィを見ながら、響子はため息をついた。
それから再度的に向かい、構える。
見据え、狙い、それから打つ。
鋭い銃声が聞こえ、銃をどけて的の頭部を見ると、当たっていなかった。
頭からは十数センチ離れた肩に当たった。
「……はぁ」
またため息をつく。
10メートルという距離は、幼い響子にとっては遠すぎた。
-
- 25 : 2017/03/29(水) 00:14:18 :
「響子。いつまで二人のことを引きずるつもりだね?」
暫くの住居であるホテルで夕食をとっていると、祖父が静かな食卓で唐突に口を開いた。
それに驚いたことで、思わず響子は千切ったパンを取り落とした。
「……どういうことですか?」
「ふむ、分からんか?お前は最近、心が定まっとらん。いつもぶれている。それではやっていけないぞ。母様が死んで、悲しいのはわかるが、いくら悔もうが生き返りはしないのだ。だからいくらかは割り切らねばいかん。遺されたものができるのは、死んだ者の思いを引き継ぐことだけだよ。だからもう、そんなに引きずるんじゃない」
「…はい……」
「それから…あやつ、霧切仁のことだが…」
「?」
「あやつのことは……忘れろ」
「……!」
響子は目を見開いて、祖父の目から視線を外し、膝の上の自分の手を見た。
「…あんな名を穢すような男に同情を寄せる価値はないし、思い出を懐かしむ必要もあるまい」
「…しかし、やはり忘れることなどできません。あの人のかげは、私が成長するうえで必ずつきまといます」
「そうか。ならば憎むことだ。あの男は自分のために一人娘を捨てた最低な奴だ。お前の誇りに思う、探偵業を嫌がった男だ。霧切家を貶めたやつだ。そういうやつだ。そう思いなさい。実際そうなのだから」
「………」
そうだっただろうか。彼はそんな人物だっただろうか。
思い返す。
彼との思い出を。
記憶を。
そして、結論に至った。
確かにそういう人だった。
自分の父は、先程祖父が言ったことから何一つ外れちゃいない。
「…分かりました。お祖父さま」
短くそういうと、響子は先程千切ったパンを口に放り込み、咀嚼した。
ひたすらに噛んだ。
そして噛みしめた。
父は……霧切仁は、探偵として最低だった。
霧切の名を穢した奴だ。
そんな奴は、霧切家の人間ではない。
自分の父親ですらない。
自分は捨てられたんじゃない。
霧切家にふさわしくないものが、勝手に出て行っただけだ。
自分に父親などなかったのだ。
だから、そんな男がどこへ行こうが何をしようが知ったことか。
口の奥でほとんど食感を失っても尚、言葉と一緒に噛み続ける。
段々とあふれ出る憎悪の味に、顔をしかめる気もなかった。
むしろ受容的に飲み込んだ。
しかし渦巻く悪感情の中で、どうしても思ってしまうのだった。
彼が私を切り離したのは、私の将来を思ってのことだった。それは、まぎれもなく彼の優しさである。彼なりの父親としての想いで、私から離れていったのだ、と。
これはきっと、言い訳の利かない事実だ。
私が彼を愛したように、彼も私を愛していた。
-
- 26 : 2017/03/29(水) 23:21:12 :
見慣れない街並みにも、多少の馴染みを覚え始めた滞在二ヶ月目。
冬の澄んだ空気が肺にたまり、この上なく心地よい。
青く広がる頭上の空は、日本で見たものと変わらない。
やわらかな陽光をあびつつ、響子は今日も探偵業に励む。
彼女の祖父、探偵の不比等に寄せられる依頼は、血なまぐさいものから比較的平和なもの、難解なもの、不可解な事件まで様々だ。
それを理解することは響子にとってはまだ難しい事であったが、それでも必死に努力した。
次から次へと飛び込んでくる依頼に、不比等は必ず響子を連れて行ってくれた。
流石に不比等の腕にははるか遠く、自分一人で事件を解決させてもらったこともまだ無いが、しかし確実に力をつけていった。
学業は通信教育で補っている。問題はない。
そんな忙しい毎日で、ふとした隙間はやはりある。
その隙間で、休憩をとったりご飯を食べたりするわけだ。
大体その時も先程当たった事件のことについて考えているのだが、たまに考えがそれる。
遠くに見える、手をつないで公園を歩く親子の影。
それに一瞬目を止め、そんな自分が嫌になって眉を顰める。
もう関係ないのに。どうでもいい事なのに。
もうあの男がいたらとも考えないし、むしろいなくてよかったとも思う。
憎らしく思う気持ちすらある。
それに祖父に忘れるよう言いつけられているのだ。
それなのにふとした時に考えてしまう自分が本当に嫌だ。
こんなことを思いつくのは目の前のことに集中できてないという事だろう。
ああ…本当に馬鹿馬鹿しい。
こんなくだらない思想に気を取られていることが。
まだまだ修行が足りないな、とそう思って響子は自分に冷たく笑った。
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- 27 : 2020/09/13(日) 21:26:49 :
不比等による探偵の訓練は、月が経つごとにその厳しさを増していた。何度か、一歩間違えたら大怪我を置いかねない状況に追い込まれたことすらある。
そうして鍛えられた響子の『危機回避能力』は、元々の彼女のセンスもあり、非常に鋭く精密になっていった。
国を変え題を変え与えられる課題を、響子は泣き言も言わず食らいついた。
そして身についた能力がある。
響子は祖父が受けた依頼に助手としてついて行く際、不比等に自分の現状を打ち明けた。
「あの、お祖父さま」
「……うん?何だ」
「今回の依頼、とても嫌な予感がします。すぐ側に危険があるような、そしてそれは回避できない、確実に迫っている危険のような気がするんです」
「ふぅむ?」
「……その、実際のところ、今回に限った事ではなくて。こういった依頼を受ける度、とても胸騒ぎがするの。……お祖父さま、これはなんなのでしょうか」
困り顔でそういった響子に対し、不比等はなんのことは無いとばかりに答えて見せた。
「ああ、それは『死神の足音』のことだろう」
「……し、死神、ですか……?」
「うむ、とは言っても実際に死神が歩いているのではない。勿論比喩だ。我々探偵は事件が起こる事前に、忍び寄るその危機を感じとるのだよ。まぁ一般的には第六感と呼ばれるかもしれないが、とにかく『足音』が聞こえねば一人前ではないと私は思っている。響子は探偵としての能力はまだまだだが、光るものがあるな。この調子で励みなさい」
「……!はい、お祖父さま。早く一人前になれるよう、努力します」
普段そうそう褒め言葉を口にすることはない祖父の言葉に感動した響子は、その日も真剣に探偵業をこなした。
そして、これまで会ってきた数いる素晴らしい探偵達は皆、自分の未熟な勘程度よりよほど卓越したところに『足音』を聞いているだろうと思うと、やはり尊敬の念は増すばかりであった。
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- 28 : 2020/09/13(日) 21:52:43 :
響子は、海外で修行や訓練、助手をストイックにこなす生活が気に入っていた。楽ではないが、霧切の名に恥じない立派な探偵になるためと思えばいくらでも自分に非情になれた。
彼女がここまで探偵に固執するのは、生まれた時からの刷り込みもあるだろうが、彼女自身が選択した道であるからでもあった。
今でも覚えている。
あの日、自分に与えられた二つの選択。『霧切』
として生き、探偵を目指すか。はたまたそれ以外の道を探すのか。
(それ以外の道……って、一体何があったかしら)
世の中には職が、一度には思い浮かべられないほど溢れている。例えば、教師はどうだ?パティシエールは?同年代の他の『一般的な女子』は一体何になることを望むのだろう?
自分の姿をあらゆる職にはめて考えてみようにも、全て違和感があって途中で辞めてしまう。響子にとっては探偵でいることが生きている上で最も自然なことで、それ以外を考える余地など無かった。
でも、一度はそれらを考える機会が与えられたのは事実だ。
それは、優しい母が与えてくれた。
そして仁が選択の時間を設けた。
『本当に探偵になるのか、ほかに追いたい夢はないか。
聞いた結果、自分はこのままでいいのだと思ったなら──────』
他に追いたい夢は、無い。
自分はこのままでいい。
そう思ったから……
私はとことん、全身全霊努力をしなければならない。そのために、目下しなければならないことは。
今でもチラつく仁の影を断ち切ることだ。
8歳の時に道を違えてから12歳の今まで、自分があの時祖父について行ったことを後悔したことは無い。後悔していないことを証明したい。
仁は自分の親でないことを証明したい。
そういう思いが、ここ最近の響子の胸にはあった。
自分で割り切れないのなら、本人に認めさせるしかないのだと信じている。
丁度来年夏には日本に帰らなければならないのだ。チャンスはある。
この手でしっかり終わらせる。彼女は無表情に決心していた。
彼は希望ヶ峰学園にいることはもう知っている。
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- 29 : 2020/09/13(日) 22:24:20 :
「さて、響子。お前は今年、こちらの通信学校は卒業して日本の中学校に行くことになっているな」
「はい。私が日本人である以上は、日本での学歴を最低限積んだ方が良いからですね」
「ああ、そうだ。全く煩わしいことに、世の中は脳の出来より学歴だなんて無意味なものをことさら重要視するのでな。その間は棟八郎さんの屋敷で生活するんだ。生活に必要なことは全て請け負ってくれることになっている。それに棟八郎さんは、お前が霧切家の人間として立派に探偵業に務めることを手放しで応援してくれるだろう」
「ありがとうございます。おじいさまのお言いつけは守って、日本でも自分で探偵業に励めるのですね」
「あっちの治安で妙なことはそう起こらんだろうが、まぁ気をつけることだ。ああ、そう、基本的に、自分の直面する事件以外に関わりは持つのではないぞ。とは言っても、お前が熱心に登録を考えている探偵図書館に情報が乗れば、嫌でも事件は舞い込むだろうが」
響子は自分が一度も探偵図書館に登録するつもりがあることを表面化したつもりはなかったので、そのことを知られているのに少し驚いたが、すぐに尊敬する祖父に対し申し訳ない気持ちが上回った。
「ごめんなさい、お祖父さま。私は、勝手に探偵図書館に登録するつもりでいました。そのようなことは霧切がやるものでは無いとお祖父さまが仰るでしょうことは分かっていたのに……」
どことなくしょんぼりと反省を示した響子に、不比等は意外な返答をした。
「いや、登録する分には構わんよ。そこで実戦を積むのも、まぁ手っ取り早い。日本にいる間はそれで探偵業をしなさい。いい練習台になるだろう」
その言葉に、響子は思わず目をしばたく。
「……お祖父さまは、あのような施設で名を見せびらかすようなことは反対なさると思っていたわ」
「うん?私は個人的には好かんよ。特にあのくだらない能力査定、DSCとやらはな。私はあんなもので探偵を記号化することなど反対したというのに」
なにやら色々言ってはいるが、一応響子が図書館に登録することは許して貰えたらしい。
「それには棟八郎さんが手を割いてくれるというから、響子、お前はそんなものは考えなくて良い」
「はい。お祖父さま、4年半、未熟な私に様々な知恵と技術を教えてくださって、ありがとうございました。すぐにでも私は一人前になり、名に恥じぬ探偵になれるよう、弛まぬ努力をするわ」
「ああ、期待しているぞ。さぁ、少しでも早く荷は作っておきなさい」
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- 30 : 2020/09/13(日) 22:48:48 :
まったく、日本の夏はジメジメと暑くていけない。
おまけにそこらじゅうをセミがとまって鳴いているので騒音も馬鹿にならない。コンクリートもやたら多くて、照り返しが暑くて堪らない。
響子は全く無表情に、今住んでいる国をそう評価した。幼少にとっての4年半はとても長いもので、その期間を海外で過ごしていた彼女は日本の季節の特徴がすっかり抜け落ちてしまっていたようだ。
棟八郎が回してくれるというタクシーを、空港外で立って待つのは些か下手な選択だったかもしれない。日に少し焼けて赤くヒリヒリ痛む腕をそっと擦りながら、響子は遠くを見た。
猛暑に体力を削られるとは言っても、この程度で倒れるような軟弱では無い。とはいえ、やはり不快なものは不快なので無表情に不機嫌さを少しずつ滲ませているところに一台のタクシーがようやくとまった。
「霧切響子様ですね。お待たせしたようで大変申し訳ありません」
「フライトと到着の予定時間は、伝わっていたはずよね」
何故予め停まっておかないのか、と思わず婉曲に非難してしまい、運転手は青くなった顔で謝罪を再度した。
反省を自分にしつつ、頷いて席に乗り込んだ私を見、ホッとしたように運転手は業務に入る。
棟八郎の邸宅に着くまで、タクシーで揺られ運ばれながら、これまでの数年で書き留めてきた不比等の助言や叱咤、それにあとから振り替えれるよう簡潔に事件、と様々な内容の詰まった、皮の表紙の手帳を広げる。時間が空いた時はいつもこれを読み、しっかり復習をしているのだった。
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- 31 : 2020/09/14(月) 08:37:36 :
- ×今住んでいる
○これから住む
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- 32 : 2020/10/25(日) 21:29:44 :
- http://www.ssnote.net/users/homo
↑害悪登録ユーザー・提督のアカウント⚠️
http://www.ssnote.net/groups/2536/archives/8
↑⚠️神威団・恋中騒動⚠️
⚠️提督とみかぱん謝罪⚠️
⚠️害悪登録ユーザー提督・にゃる・墓場⚠️
⚠️害悪グループ・神威団メンバー主犯格⚠️
10 : 提督 : 2018/02/02(金) 13:30:50 このユーザーのレスのみ表示する
みかぱん氏に代わり私が謝罪させていただきます
今回は誠にすみませんでした。
13 : 提督 : 2018/02/02(金) 13:59:46 このユーザーのレスのみ表示する
>>12
みかぱん氏がしくんだことに対しての謝罪でしたので
現在みかぱん氏は謹慎中であり、代わりに謝罪をさせていただきました
私自身の謝罪を忘れていました。すいません
改めまして、今回は多大なるご迷惑をおかけし、誠にすみませんでした。
今回の事に対し、カムイ団を解散したのも貴方への謝罪を含めてです
あなたの心に深い傷を負わせてしまった事、本当にすみませんでした
SS活動、頑張ってください。応援できるという立場ではございませんが、貴方のSSを陰ながら応援しています
本当に今回はすみませんでした。
⚠️提督のサブ垢・墓場⚠️
http://www.ssnote.net/users/taiyouakiyosi
⚠️害悪グループ・神威団メンバー主犯格⚠️
56 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:53:40 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
ごめんなさい。
58 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:54:10 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
ずっとここ見てました。
怖くて怖くてたまらないんです。
61 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:55:00 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
今までにしたことは謝りますし、近々このサイトからも消える予定なんです。
お願いです、やめてください。
65 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:56:26 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
元はといえば私の責任なんです。
お願いです、許してください
67 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:57:18 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
アカウントは消します。サブ垢もです。
もう金輪際このサイトには関わりませんし、貴方に対しても何もいたしません。
どうかお許しください…
68 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:57:42 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
これは嘘じゃないです。
本当にお願いします…
72 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:59:38 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
お願いです
本当に辞めてください
79 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:01:54 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
ホントにやめてください…お願いします…
85 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:04:18 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
それに関しては本当に申し訳ありません。
若気の至りで、謎の万能感がそのころにはあったんです。
お願いですから今回だけはお慈悲をください
89 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:05:34 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
もう二度としませんから…
お願いです、許してください…
5 : 墓場 : 2018/12/02(日) 10:28:43 このユーザーのレスのみ表示する
ストレス発散とは言え、他ユーザーを巻き込みストレス発散に利用したこと、それに加えて荒らしをしてしまったこと、皆様にご迷惑をおかけししたことを謝罪します。
本当に申し訳ございませんでした。
元はと言えば、私が方々に火種を撒き散らしたのが原因であり、自制の効かない状態であったのは否定できません。
私としましては、今後このようなことがないようにアカウントを消し、そのままこのnoteを去ろうと思います。
今までご迷惑をおかけした皆様、改めまして誠に申し訳ございませんでした。
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- 33 : 2024/02/11(日) 22:45:13 :
「おお、響子!暑い中よく来たな」
「お久しぶりです、おじいさま。迎えもありがとうございました」
「いやいや。聞いてた時間より少し遅かったようだが、もしやタクシーに待たされたのでは無いだろうな?全く、うちの孫娘に新人なぞ付けおって…。とにかく、ロスからは随分遠かったろう?お前の部屋は整えさせてあるから、とりあえず荷物は置いて少し休むと良い。積もる話は夕食の際にでもしようじゃないか」
「はい、そうします。私もおじいさまとお話したいことが沢山あるの」
屋敷について裏口から入ると、丁度棟八郎が出てきて出迎えてくれた。
快活な祖父の声。日本式な庭園に荘厳な玄関。懐かしい家だ。響子は久しぶりの光景に胸が熱くなると同時に、少しだけ緊張を覚えていた。
この屋敷での勝手は分かるが、そこではなく、棟八郎に会ったのはあの時の別れ以来ということと、彼の艶やかな銀髪が薄れかけていた当時の記憶を撫でていたのだ。
「お荷物をお運びします」
見覚えのない顔のお手伝いさんが断りを入れてから響子の荷物を取り上げる。響子は無言で僅かに頷き、チラリと横に目をやったが、棟八郎は既に中に戻ったようだ。相変わらずの機敏さだと思いながら、かつての自室へと向かった。
ガチャ、とドアノブをひねり、洋室に入ると、幼少期に使っていた家具は一新されており、知らない部屋のようになっていた。
深い色調の木製机とクローゼットは記憶の中の通りだったが、綺麗に磨かれていて、先程まで誰かが使っていたかのように感じられる。
「こちらへ。今、冷たいお茶をお持ちしますね。お荷物は我々が解いて整理させていただきますが、宜しいですか?」
「ありがとう、でも荷解きは自分でやるわ。お茶だけお願い」
お手伝いさんが言ってくれたが、響子は断った。これまでの人生で自分の荷物を人に触らせるのに抵抗感が芽生えていた為、癖で用心してしまう。
「かしこまりました。───あの、響子お嬢様」
「なに」
「お嬢様は覚えておいでではないかもしれませんが……。以前、まだお嬢様がこのお屋敷にいらした際、私の母がこちらでお世話になっておりました。今は足を悪くしましてお仕えが出来ませんが、代わりに私が週に何度か家政婦を務めさせていただきます。名前は と申します。何卒宜しくお願いいたします」
「……そう、親子ともに、うちに勤めてくれてありがとう。これからお願いね」
彼女は響子の言葉に嬉しそうな顔をして、頭を下げて退出した。
そして響子は椅子に腰掛け、この家もあの頃のままな訳では無いことを実感していた。
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