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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

狛枝「ボクの名前は狛枝凪斗。超高校級の幸運で…痴漢かな」

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  1. 1 : : 2016/09/03(土) 22:21:34
    またエロというか下ネタかよ!下ネタなのかよ!

    …とお思いでしょうがご容赦ください

    また、ラストが頭に浮かんでいないのでどうなることやら。

    ちなみに、
    ダンガンロンパ3-The End of 希望ヶ峰学園- 絶望編

    のお話です。
  2. 2 : : 2016/09/03(土) 22:41:54
    「は…?」

    クラスの担任、黄桜先生がぽかんと口を開け、ボクの方を見ている。

    まぁ、それもそうか…ボクの情報は、「幸運」に関することだけだからね。

    「だから言ってるじゃないですか。ボクは超高校級の幸運で、痴漢ですって」

    「き、キモい…」

    「あはっ、超高校級の日本舞踊家の西園寺さんに罵られるなんて…ボクは本当にツイてるよ…」

    無意識に息が荒くなる。だってかわいいじゃない、彼女。

    筋肉質な大男に肉感的な野生児…野生女子?

    お洒落な元気っ子にオドオド系男子…

    アハッ、他にも選り取りみどりだよ!ボクはなんてツイてるんだ!

    「せ、セクハラはよくないよ…」

    小さな声を震わせて、御手洗クンが喋る。

    「でも、それが才能なんだから仕方がないよね?アハハ…」

    「……オレ、人選間違えたかな?」

    帽子で目元を隠しながら小さな声で呟く。

    「そうですね、ボクみたいなクズが超高校級の幸運としてこのクラスにいるなんて、おかしいんですよね…」

    「痴漢…なのがよくないんじゃないかな」

    ゲーム画面に目を落としたまま七海さんがぼんやりと言う。

    「そうだね…だから、せいぜい気持ちよくさせるよ」

    「そういうことじゃねーよ!何堂々と痴漢宣言してるんだよ!」

    思わず席を立って、ボクを指さしながらキレっキレのツッコミを左右田クンがしてくる。

    素晴らしいよ!彼は超高校級のツッコミでもあるんだね!

    「なるほど!これがジャパニーズ変態さんなのですね!ソニ…アッ!と驚く為三郎ですわ」

    超高校級の王女、ソニアさんがどこか間違った言葉で場を変な空気に包む。

    「た、為五郎じゃない?」

    「さ…さすがは黄桜先生ぇ!昔のことには詳しいんですねぇ…」

    おどおどと罪木が大きめの声で言う。

    「ひゃあっ!す、すびばせん…私なんかが喋ってしまって…ごめんなさぁい…」

    謝らなくていいのに…

    「昔って…ま、俺はおじさんか。狛枝くん、とりあえず座って」

    「はい」

    さて…ここからワクワクドキドキの学園生活が、始まるんだねぇ!
  3. 3 : : 2016/09/03(土) 23:06:31
    そんなこんなで自己紹介は終わり…

    すぐに自由時間になった。

    本当に自由時間。才能さえ磨いていれば、授業に出る必要はない。

    ボクとしては皆の希望が輝けばそれでいいんだけど…

    皆の脂肪も気になるんだよね。

    ふと思い立って胸ポケットに入れていた電子生徒手帳を見る。

    「…はぁ」

    やっぱりね、皆のプロフィールなんて書いてないよね。ゲームじゃないんだからさ。

    そんな事をしているうちに…教室にはボクと罪木さんしか残っていなかった。

    「あ、あれ…みなさん、授業は…?」

    罪木さんがイスに座りながらキョロキョロ周りを見渡している。

    かわいいなぁ…

    「こっ、狛枝…さん…ですよね…えへへ…狛枝さんは…授業、受けるんですかぁ…?」

    「うーん…」

    ボクが近づいていくと、彼女が緊張しているのがわかった。

    ボクがたまたま仕入れた情報によると…罪木さんはいじめられっ子らしいね。

    髪の毛がざんばらなのもそのせい…とか。

    「ボクは皆の希望が見られればそれでいいんだけどね…授業はあまり興味がないんだ」

    適当に椅子を拝借して罪木さんのすぐ隣に座る。

    病院みたいな匂いがする。さすがは超高校級の保険委員だね!薬とかはいつも持ってるのかな?そのバッグの中身は救急箱?

    「そう、ですかぁ…ふゆぅ…」

    目に涙を浮かべて下を向いてしまった。

    「授業、したかった?」

    顔を罪木さんの前に出してそう聞くと、ひゃんっ!とか叫びながら背筋が伸びた。

    「い、いえその…ほら…私…安心して授業受けられると思っていたのでぇ…」

    「高校の頃は…いじめられてたんだっけ?」

    彼女の顔が青ざめていくのがわかる。

    それは絶望?ここでもいじめられるのかと思ってる?

    「ど、どうしてそれを…」

    息を荒くしながら、それでも平静を保とうとしながらボクに聞いてくる。

    「たまたま知ったんだよ」

    「そ、そう…ですかぁ…あ、あの…狛枝さんは…私を…いじめたり…しないですよねぇ…?」

    「さぁ、どうだろうねぇ…」

    「うっ、うえぇ…っ」

    よほどショックだったのか、泣き出してしまった。

    あーあ、ダメだよボク。女の子を泣かせちゃ…

    「ごめんごめん、いじめなんかしないよ。その証拠に…」

    「な、なんですかぁ…」
  4. 4 : : 2016/09/03(土) 23:37:33
    「……えっ、な…何を…」

    罪木さんが両手で口を抑え、目をぱちくりさせながら言う。

    「何って…キスだけど?」

    痴漢と言っても本当にただの痴漢なら捕まるよ。

    それでもボクはやってない…なんて言いたくないよ。いや、ただの痴漢ならそれならボクがやってますだけどさ。

    でもね、過程を踏めば…痴漢だって立派な愛情表現に…なるのかな?よくわからないね。

    ボクは皆の希望と皆の脂肪が見たいだけなんだから!

    「き、キス…」

    あわわわ…そんな声が聞こえてきそうな顔をしている。

    「ボクは皆を…超高校級の皆を、希望の象徴を…愛してるんだよ…いじめるなんて…」

    罪木さんの表情がだんだん明るくなっていく。

    「ご、ごめんなさぁい…私なんかのために…狛枝さんの唇を汚させてしまって…」

    「汚れるなんてそんな…むしろ汚しちゃったのはボクの方だよ…」

    バッグから消毒液を取り出してガーゼを用意している罪木さんの手を握り、止める。

    「…あ、あの…」

    顔を赤くしてもじもじしながら、人差し指をどこかに向けている。

    「狛枝さん、あの、お友達から始めさせてください…ふつつつ…ふつちゅか!ふ…」

    「ちょっと待ってよ。キスしたくらいで彼女ヅラ?」

    あえて冷たく突き放す。

    だって…希望は絶望を乗り越えてこそ輝くんだよ?

    …って、絶望ってほどのものでもないけど。

    「え…でも…」

    「ハァ…キスやハグは挨拶なんだよ。知らないの?」

    でも、ここは日本なんだよ。

    彼女にとっては特別な行為。それは充分わかってる。でも…合法的に痴漢できる状況を作るには、まだ足りないんだよ…

    「す、すみませぇん…私なんかが…ごめんなさぁい…」

    「泣かないで罪木さん。彼女ヅラ?とか言ったけど…キミのことが嫌いなわけじゃないんだよ」

    頭を撫でてあげると、彼女がピクリと動いて、力が抜けていくのがわかった。安心してるのかな?

    「じゃあ…また後でね……罪木さん」

    「え、あ…はい…」

    はううぅ…と言いながら胸のあたりに両手を押し当てている。かわいいなぁ

    とりあえず罪木さんとは第一段階に入れたかな?

    さてと…次は誰に会いに行こうかな…

    男相手だと恋愛は使えないしね…

    でも、男同士なら触っても友達のノリとかそういうのになるよね!大丈夫だよ!うん!ボクは幸運だからね!
  5. 5 : : 2016/09/04(日) 00:15:26
    廊下に出てしばらく歩くと、西園寺さんに出会った。

    「うわ…クソキモい痴漢男がきた…」

    まるでゴミでも見るかのような顔でボクを見てる…!アハァ…最高だよ…

    「そこまで言われると落ち込んじゃうな…ね、よかったら一緒にこの校舎を見て回らない?」

    「お断りだよ!誰がお前なんかと行くか!」

    ひどいこと言われてるんだろうけど、上目遣いだからね…かわいいだけだよ

    「でも、さ…西園寺さん、1人だよね」

    周りを見渡す動きを大げさにして、大きめな声で言う。

    「う、うるさいなぁ…あんな奴らと仲良くする必要ないし…」

    強がりながら言うが、小さくなっていく声が心情を物語っていた。

    「そうなんだ…ボクはもう友達を作ったけどね。しかも…女の子の」

    何一つ間違いじゃない。

    「女の子…!?なに…身体に触って…それで…?」

    「そんな怯えないでよ…痴漢だなんて…ジョークなのにさ」

    「ジョーク…?」

    きょとんとした西園寺さんを尻目に、ボクは言い訳を始める。

    「花村クンが自己紹介で言ってたことがあるよね。「カワイイ子がいっぱいで下半身も大喜びだよ!」ってさ」

    「…だから?」

    「あの時、場の空気が一つになったよね!だからボクも皆には一つになってもらいたかったんだよ」

    理由はどうあれ、皆には一つになってもらいたい…ボクはボクで出来ることをしますよ。

    「あれ、反応に困ってただけだろ…」

    うん。会話してくれるようになったね

    「でもさ、そんな彼でも料理の腕はピカイチらしいよ。食堂にいるかもしれないから、一緒に行かない?」

    「…いぃ」

    ま、そうだよね…

    「ああそう、それじゃあまた。西園寺さん」

    「うるさい!クソキモい痴漢宣言男!」

    宣言が付いちゃったか…これは傑作だね
  6. 6 : : 2016/09/04(日) 00:48:57
    食堂に着くと、終里さんがガツガツご飯を食べていた。

    すごい食べっぷり…

    「おかわりー!」

    食堂中に声が響き渡る。

    「おかわりっつってんだろー!」

    再度、声が響き渡る。

    「花村ー?」

    終里さんが立ち上がり、厨房へと向かう…

    それに便乗して、ボクも後ろから付いていく。

    幸運にも、彼女には気づかれていない…

    厨房に入ると…

    「お、おい花村!花村!」

    うつ伏せに倒れ込む、花村クンの姿が…!

    絶望汚染ノイズなんとかが流れちゃうよ…

    「…花村クン、過労で倒れたのかな?」

    「ん?なんだオメー?」

    「…あれ?ボクはさっき自己紹介したはずだけど?」

    流石にボクでもこの記憶力のなさには驚いたよ。

    「ははっ!わりぃ、わりぃ!ただでさえ人の名前覚えんのが苦手なのに、やけに登場人物多いからさー」

    満面の笑みで答えられる。今、そんな場合じゃあ…ないよね。

    でも、こんなところで死ぬようじゃ希望の象徴としてふさわしくないってことだし、大丈夫だよね

    「ボクは狛枝凪斗だよ。できれば、もう忘れないで欲しいな…」

    「おっす!オレは終里…」

    「知ってるよ」

    「ん?そうか?」

    この顔…本気で「なんで知ってんだ?」って感じだな…

    「…それより花村だ!おい、起きろよ!そして飯を作ってくれよ!」

    第一にご飯なんだ…その食欲がその肉感的なボディーを作っているのかな

    でも…

    「終里さん、花村クンは疲れすぎたんだよ…休ませてあげようよ」

    「…そう言うなら仕方ねーか……じゃあな、狛抱!」

    ボクは…狛「枝」凪斗だよ…

    さてと…終里さんは走ってどこかに行っちゃったし…

    花村クンは…ボクの寮に連れていくかな
  7. 7 : : 2016/09/04(日) 08:59:07
    「う、う…ん…」

    「やぁ、気がついた?ようこそ、ボクの部屋へ」

    事態を飲み込めていないのか、花村クンが再び目を閉じようとする。

    起きてよ…

    「夢なんかじゃないよ。ほら起きて」

    「え、えーと…なんですか?まさか!自宅に連れ込んで昏睡レイプ!?」

    さすがは花村クン、そういう反応か…

    「まさか!そんなことしないよ…痴漢だなんて、ジョークなんだからさ」

    「ジョ、ジョーク…なの?ふぅあ…」

    ベッドから起き上がりつつ、あくびを漏らした。

    「もちろん!ボクはね、痴漢は痴漢でも合法的な痴漢を目指してるんだよ!」

    …そう、ボクは確かに触りたい。でも、それがやってはいけないことなのはわかってるんだ

    初めて痴漢したのは満員電車の中だった…

    人が沢山いて、全く動けなくてさ。

    手だけでもなんとか動かせないかと試していたら…あったんだよね。OLのお尻がさ。

    お察しのとおり、その人のお尻をまさぐることになってしまって…痴漢だと間違われたんだよ

    まぁ、その女体の柔らかさを知ってしまったわけだから、今度触ったとしたら間違いじゃなくて確信犯だよね

    その人はとても強くてね…電車から何とか降りた時もボクに付いてきて、駅員に突き出すと言ってきたんだ。

    その時…急に大きな地震が起きたんだ。

    その影響で天井が崩れて…OLさんの頭にガレキが落ちて…死んでしまったんだ

    そう、ボクは「痴漢として通報されない」幸運のために「通報する人が亡くなる」という不幸が襲ったんだ。

    ボクは昔からそうだ。何かのために何かが犠牲になる…

    おっと、花村クンを放置しちゃってたね。

    「合法的なら、それは痴漢じゃないんじゃ…」

    「そうかもね!でも…スレタイで釣るには必要でしょ?」

    「何の話をしているのかな?」
  8. 8 : : 2016/09/04(日) 09:47:46
    「ところで、花村クン…この学園の生徒、どう思う?」

    「え?うーん…かわいい子揃いだよね。男の子も女の子も」

    やっばりね、彼はそういうタイプか

    「花村クン…キミってさ…なんだかんだ言って手は出さないタイプだよね」

    「えっ?」

    身体をてるてると震えさせながら目を泳がせている。

    「下ネタを言って周りを困らせる割には、何もしない…そんなタイプだよね」

    そ、そんなことないよ…と言いそうになるのをボクの指を口に当てて静止して、話を続ける。

    「そういうのもキャラとしては悪くないけど…それじゃツマラナイよ花村クン…」

    唖然としてる花村クンのほっぺたに唇を付ける。

    「!?」

    「…ね?言うだけじゃなくてされたりした方が…よりファンタスティックで…希望が輝くと思わない?」

    「!?!?」

    完全に固まっちゃってるね…

    「花村クン、ボクは本気だよ。本気で皆に合法的な痴漢をするつもりだからね!」

    我ながら、言ってることの意味がわからないよ!

    「またね、花村クン…じゃないや。ここボクの部屋だったね。どうする?泊まってく?」

    答えはわかってる。もちろんNGだよ

    「え、えーと…ごめん、帰るね…」

    すっくと立ち上がって、そそくさと花村クンがボクの部屋を出ていく。

    やっぱりね…でも、これで明日からボクを少し意識しちゃうかな?

    今日は罪木さん、西園寺さん、花村クンと交流が図れたよ!全員とまではいかなくても…もっとターゲットを捕捉したいね…
  9. 9 : : 2016/09/04(日) 16:24:42
    「……」

    朝か…希望の朝だね。

    えーと、ホームルームは…っと

    8時からだね。うん、余裕で着くよ。















    「えー…うっぷ…ホームルームを…うえっ…始めるぞ…」

    口をおさえながら弱々しい声で黄桜先生が話す。

    恐らく、二日酔いだろうね

    「あの、大丈夫ですか…?」

    「へーきへーきソニアちゃん…あはは…今日も静子ちゃんから薬貰わなきゃね…」

    …静子ちゃん?

    あぁ…超高校級の薬剤師の。

    「しっかし、ソニアちゃん、真昼ちゃん、日寄子ちゃん、蜜柑ちゃん、ペコちゃん、狛枝くん、九頭龍くん…7人しかホームルームに来ないなんてねぇ…」

    「そりゃ、超高校級の痴漢がいる教室なんか来たくないでしょー?」

    西園寺さんがボクの方を見ながら嫌味ったらしく言う。

    困ったねぇ…ジョークだって言ったのに…

    「ハハッ、そうかもね」

    とりあえず乗っておくよ。

    「ま、花村くんや狛枝くんの言動くらいで臆する人たちじゃないよ…多分、面倒くさいとか…忘れてるとか…そんな…うぷっ!…ぐっ…」

    「えっ、エチケット袋なら私が…ひゃあああんっ!!!」

    勢いよく立ち上がった罪木さんがコケて…

    何が絡まったのかな?手は縛られ…足はV字開脚…

    「……皆ごめん。ホームルームここまで…うえっぷ…」

    黄桜先生が勢いなく扉を開けて、どこかへと帰っていった。

    「…ったく、来るだけ無駄だったな」

    「そうだな…」

    「ちょ、ちょっと九頭龍!ペコちゃん!どこ行くの?」

    「あ?ホームルームは終わりだ。あとは自由だろうが!」

    やれやれ、クラスはバラバラだよ…

    超高校級の皆が希望として輝くには、まだ早いのかな?
  10. 10 : : 2016/09/04(日) 17:42:27
    さて…まずは罪木さんを助けないとね。

    「罪木さん、大丈夫?その…何?包帯かな?解いてあげるよ」

    そう言って手をかけようとすると、誰かにその手を払いのけられた。

    「アンタさ…そんな事言って、セクハラするつもりなんでしょ?」

    小泉さん、確かやけに男に突っかかってくるんだっけ…まぁいいか。

    「ひどいなぁ小泉さん…ボクは友達を助けたいだけだよ…ほら、立てる?」

    罪木さんに絡まった包帯を解きながらボクはそう言った。

    「と、友達…えへ、えへへ…」

    罪木さんが嬉しそうに笑う。

    本当にかわいい…素晴らしいよ!

    ボクなんかが幸せを求めるなんて図々しいのはわかってるけど、この気持ちは抑えられないよ!

    抑えるけどね。

    「そっか…昨日言ってた友達って…」

    「その通りだよ西園寺さん。ボクは罪木さんと友達になったんだよ」

    「……蜜柑ちゃん嬉しそうだし…本当みたいね。ごめんね狛枝」

    小泉さんが胸に手を当てながら視線を斜め下へと向ける。

    「気にしないでいいよ。ねぇ…それより小泉さん、このまま皆がバラバラで集合しないなんてよくないよねぇ…皆を迎えにいかない?」

    「それは…うーん…どうかな。アタシは写真撮りに行きたいし…他の皆も才能を磨くためになにかしてると思うし…」

    「ふーん…」

    ボクは幸運ってだけだからあれだけど…皆にはやる事があるんだね

    だったら作戦変更だよ

    「小泉さん、だったらその写真を撮りにいくのを手伝わせてよ」

    意外だなと言わんばかりの表情で小泉さんが目をぱちくりさせる。

    「ボクは幸運なんだよ!珍しい瞬間とか、見られるかもしれないよ…」

    少し考えてから…

    「うん…まぁいいよ。ただし…変な事はしないこと!」

    「やだなぁ、痴漢なんて…ただのジョークだよ…」

    …えーと、罪木さんはどうしようかな

    「罪木さん」

    「ひゃいっ!」

    「お昼は一緒に食べない?12時に食堂、どう?」

    罪木さんがにこり…いや、にやりと口角を上げる。

    「は、はいぃ…是非…!」

    よし。

    「そんなことしなくても…蜜柑ちゃんも一緒に来ればいいのに」

    「私は、そのぉ…保健室を見ておきたいのでぇ…」

    「そっか、残念…ソニアちゃんはどうする?」

    「わたくしは校内を散策いたします。無知は恥ですから」

    さすがは超高校級の王女!情報収集に抜かりがないね…

    「西園寺さん…キミは?」

    「わたしは…お、お前が変なことしないように見張っててやる!」

    「アハハ、怖いなぁ」

    今日はよく女の子と絡める日だなぁ…

    花村クン以外の男の子は、どうやって近づこうかな…
  11. 11 : : 2016/09/04(日) 19:07:13
    写真を撮るためにボクたちは中庭に繰り出した。

    「うん…なかなかいい写真が撮れそうだね…日寄子ちゃん、こっち向いて」

    「え?わたしを撮るの?」

    確か小泉さんは…人物写真が評価されてるんだっけ。

    その人の持ついい表情を引き出すとかなんとか。

    「西園寺さん、ひとりが嫌ならボクも一緒に写ってあげるよ?」

    「冗談でもキモいこと言うな!このクソキモい痴漢宣言男!」

    「痴漢宣言はジョークなのに…参ったなぁ…」

    「アンタ、冗談言うにしても誤解されるようなこと言ったらダメでしょ…」

    ため息をつきながら冷静に突っ込まれる。

    ま、超高校級の痴漢ってのは嘘じゃないけどね。いつかするし。

    「…じゃあ小泉おねぇ!撮って!」

    「お、おねぇ…?」

    ボクは「クソキモい痴漢宣言男」なのに小泉さんはおねぇか…よし、狛枝おにぃって呼ばせることを目標にするか…

    「じゃあ、撮るよ…ハイ、チーズ!」

    …なるほどね。

    「もう一枚いくよー!」

    人のいい表情を引き出す事が出来るのは、彼女自身が笑顔だからだね。

    屈託のない笑顔。

    だから自然と笑顔になる。笑顔じゃなくても、何かしら反応してしまう…

    「ハイ、チーズ!」

    「ねぇ小泉さん…自撮りとかはしないの?」

    やってしまったと思った。明らかに小泉さんの表情が険しくなる。

    「…アタシは人が撮る写真にこだわってるの。セルフタイマーだって嫌よ」

    「そっか…ごめんね変なこと聞いて」

    「別にいいわよ。一度は聞かれるし…」

    「それじゃあ、小泉さんの写真は全然ないんだ」

    「…そうね」

    「だったらわたしが撮ってあげるー!……クソキモい痴漢宣言男!三脚組み立てろ!」

    口は悪いけどすごく嬉しそうに話してる…よっぽど小泉さんが気に入ったんだね彼女。

    「いや、アタシはいいよ…皆の写真が撮れればそれで…」

    「ねぇ、こんな話があるんだ…ある家族は旅行と写真が大好きで…いつもお父さんが娘と母親の写真を撮ってたんだ。
    だけど幸せはあまり長く続かなくてね…娘が成人したと同時に亡くなってしまったんだ。
    お葬式の時に写真を貼ったりするよね?だからお父さんの写真を探したんだけど…なかったんだ」

    「なかったの?1枚も?」

    西園寺さんが珍しく真剣にボクの話を聞いてくれている!嬉しいな…

    「そう。なかったんだ。他の人を撮ってばかりいて、自分の存在は物として残せなかったんだよ」

    「つまりアンタは…アタシをそのお父さんみたいにさせたくないってこと?」

    「そうだよ…超高校級の写真家として輝いている君自身の姿を…フィルムに収められないなんてかわいそうだよ…」

    「かわいそう…?」

    「だって、こんなに美しい今のキミを残す手段が、ボクたちの記憶だけなんて…」

    「おいクソキモい痴漢宣言男…小泉おねぇを美人だとか言って口説いてんじゃねーよ」

    ゴミでも見るような目でボクを睨んでくる…さっきは真剣に話を聞いていてくれたのに…

    「美人だとは言ってないよ。美しいって言ったんだ。希望が輝いている瞬間っていうのは、最高に美しいからね…ボクはそんな小泉さんの今…美しく輝いている姿を残したいんだよ!」

    「褒めても何も出ないわよ…でも…そ…そ、そこまで言うなら…撮れば?でも、アタシ写真写り…悪いわよ…」

    手を後ろで組んで、顔を少し赤くして言う。

    照れてるんだね!

    「やった!西園寺さん、三脚の準備が出来たら最高の写真を撮ろう!」

    「いいから早くしろ」

    あはは、ご機嫌だねぇ…
  12. 12 : : 2016/09/04(日) 22:22:27
    お互いに写真を撮り合っているうちに12時近くになった。

    才能を磨くという点では無意味な時間だったかもしれないけれど、小泉さんにとってとても有意義な時間にはなっていたと思うよ。

    ボクは罪木さんとの約束の事を告げて、食堂に行こうとした所で…

    「アタシもアンタと一緒に行くわ。蜜柑ちゃんとお昼食べるんでしょ?」

    「2人きりとか絶対なんかするよねー」

    案の定2人がついてきた。ボクはやっぱり幸運だねぇ…

    この先にどんな不幸があるんだろう…アハハ、怖いなぁ
  13. 13 : : 2016/09/04(日) 22:45:53
    「はうあっ!狛枝さぁん!」

    ボクたちが食堂に入るやいなや、椅子から立ち上がって罪木さんが手を振る。

    「やぁ、罪木さん…」

    「狛…えーと…小泉さんと西園寺さんも連れてきたんですねぇ…」

    わかりやすくがっかりしてるね…

    「蜜柑ちゃんとも仲良くなりたいからね…来ちゃった」

    「わたしは小泉おねぇを守りに来ただけだよ…」

    所詮私は、友達の1人でしかない…

    そう、罪木さんは思ってるかな?

    だとしたら成功だよ。物事には緩急があった方がいいんだ

    「とにかく、ご飯を食べようか…おーい!花村クーン!」

    ………………。

    「いらっしゃいませ」

    ちょっと間があったね…昨日のこと、気にしてるのかな?

    「花村おにぃ、なんか適当に持ってきてー」

    「オ・カピートォ かしこまりました」

    ボクは突っ込まないよ。

    「さて、と…罪木さん、保健室はどうだった?」

    ふええっ!?と漏らしてから慌てて話し出す。

    「え、えーとぉ…ごく普通の保健室でしたけどぉ…輸血用パックとか、お薬とか…結構すごいものもありましたよぉ…」

    「ふーん、保健委員だからそんなとこ見てたのー?」

    「は、はいぃ…あ、あと、あとぉ…病院もありましたぁ…」

    そんな話をしてるうちに料理が来て…

    食べ終わったあと、小泉さんは西園寺さんと音楽室に行き…

    罪木さんとボクだけがここに残った。
  14. 14 : : 2016/09/04(日) 23:11:59
    「罪木さん」

    「はい…」

    「楽しかった?」

    「も、もちろんですぅ!小泉さんも…西園寺さんもいい人…ですから…もちろん、狛枝さんも…」

    だったらボクの目を見て言ってよ…

    「でもよかったよ…ボクが二人を連れてきたから怒ってるのかと思ったよ」

    「な、なんで怒るんですかぁ…」

    「だってさ、せっかく二人きりになるチャンスだったんだよ?ボクだってちょっと残念だったんだ…罪木さんと二人きりでランチ…したかったな…」

    「あ、あわわわ…うゅ…う…え…えぇーとぉ…」

    手をわちゃわちゃ動かして動揺を隠そうとしつつ、罪木さんが言語ではない何かを発する。

    「ふ、二人きり…今は…二人きりですよぉ…」

    「そうだね…デートみたいだよね」

    「デ…!?」

    言葉を失ってる罪木さんのほっぺたを両手で触って、顔を近づけていく。

    「こ、狛枝さぁん!?あの、あの…これって…挨拶…挨拶ですよねぇ!?」

    「もちろん」

    にこやかに微笑んでボクはそう言った。

    「ふゅ、う…ん…っ!」

    そのままさらに顔を近づけて…ボクの口で罪木さんの口を塞ぐ。

    本当は舌を入れようとするとか、何回も離れてはくっついてとかしたいところだけど…まだだよ

    「ぷひゃ…あ、あのあのあのあの…う、うえぇ…」

    目に涙を浮かべてボクを見てる…嫌だったかな?

    まぁ、会って2日の男にキスされたら嫌だよね…

    「ご、ごめんなさぁい…その、ただの挨拶…なのに…私…その…」

    「ん?どうかした?」

    「勘違い…しちゃいそうですよぉ…だって…だって、狛枝さんは私なんかにも優しいし…虐めないし…何でも受け入れてくれてるし…」

    受け入れたっけ…?

    「狛枝さん…私のこと、好きなのかなぁって…勘違いしちゃいます…」

    意外と早く堕ちたね…

    ま、罪木さんはちょっと簡単だったかな?

    「もちろん大好きだよ?」

    希望と痴漢がね。

    「は、はう…う…だ、ダメです…まだ、まだ、あの、えーと…その…」

    顔を真っ赤にして目玉をぐるぐるさせながら必死に言葉を探している。

    「……罪木さん」

    「はいっ!」

    「またね。ボクはもう行くから」

    「…は…?」

    予想外だよね!大好きって言われたのに「お付き合い」の話じゃないなんてね!

    でも、まだその段階じゃないよ…

    罪木さんがちょろすぎたとはいえ…焦らしがないと想いが弱いからさ

    「は、はい…また…明日…」

    「明日?やだなぁ…まだ校内で会うかもしれないんだよ?」

    「うゅう…そう…ですけどぉ…ふえぇ…ごめんなさぁい…」

    「謝らなくていいよ、罪木さん…ボクはキミの全てを許すからさ」

    「!」

    「じゃ、また後でね」

    許すって言った時の反応…この言葉に何か思い入れとかあるのかな?

    よし、とりあえず罪木さんはOKとして…次は…御手洗クン辺りにアタックしようかな…
  15. 15 : : 2016/09/05(月) 22:20:16
    …と思ったけど、どれだけ捜しても、御手洗クンは見つからなかった。

    どこに行ったのかを確かめるために、ボクは黄桜先生のところへ行くことにした。

    「御手洗くん?…来てる様子はないよ」

    「やっぱりそうですか…貴重なお時間を割いていただいてありがとうございます」

    「別にいいけど…で、どう?痴漢はやっちゃった?もししてるんだとしたら先生としては困るんだけど…」

    「嫌ですよ先生…痴漢なんてジョークですってば」

    「あっそう…ならそう言ってくれればいいのに」

    「ところで…黄桜先生。二日酔いは治ったんですか?」

    「あぁ」

    答えると同時にポケットから何かを取り出してボクの前へと差し出した。

    「静子ちゃん…忌村さんのお薬だよ。これが効くんだ」

    確かに朝とは打って変わって健康そのものって印象を受ける。その効果の高さは誰が見ても明らかだった。

    「へぇ…やっぱり超高校級の生徒は素晴らしいんですね!」

    「ま、そうだな…なんたってオレがスカウトしてるんだから」

    そっか…黄桜先生は希望ヶ峰学園のスカウト担当でもあるんだっけ。

    「来年度も期待してますよ!かわいくて素晴らしい才能を持つ希望たちを!」

    「はいはい、わかってるよ…」

    呆れた様子の黄桜先生に別れを告げ、ボクは御手洗クンの部屋へと向かうことにした。
  16. 16 : : 2016/09/06(火) 00:26:09
    御手洗クンの部屋のベルを鳴らす。

    …音沙汰無し。

    無視でもされてるのかな?

    いないのかな?だとしたら…仕方がないか。別の誰かを捜そう。













    しばらく歩くと、前から見慣れた人が歩いてきた。

    「……」

    彼女はゲーム画面に視線を落としていて、ボクには気付いていない。

    ゲームをしながら歩いてきて、ついに…

    「……」

    ボクにぶつかっても、やめる気配はなかった。
  17. 17 : : 2016/09/06(火) 07:34:22
    「……七海さん?」

    「え?…あっ」

    七海さんは無言で画面を見つめた後…

    「むぅ…」

    ボクを睨んできた。ボクのせいでゲームオーバーになったのかな?

    超高校級のゲーマーでもミスをすることはあるんだね!

    いや、むしろ…ボクが七海さんと話せる幸運のために、七海さんが犠牲になったのかな?

    それはないか。他人を犠牲にして幸運を得られるなら今まであんな目にはあってないよね。

    「もしかして…怒ってる?」

    「うん…声をかけられたくらいでミスをした自分に怒ってる」

    「アハハ…だったらボクを睨まないでよ」

    しばらく黙り込んだ後、それもそうだと頷きながら、七海さんはまた歩きゲームを始めた。

    危ないよ?

    …よし、ちょっと強引だけど…

    「七海さん」

    そう言うとボクは腕を七海さんのお腹に回し、そのまま抱きしめた。

    「ひっ!?…あ…残機減った…」

    ゲームの画面を消すと、七海さんがボクの方を向いて…今度こそボクを怒っていた。

    「こんなの、セクハラだよ…」

    「ごめんごめん、でも…こうでもしないと七海さん止まらないでしょ?歩きながらのゲームは危ないよ?」

    そう言ってボクは手を離す。

    またしばらく黙り込んだ後、それもそうだと頷いて、七海さんは近くのベンチに座った。

    七海さんの隣にボクが座る。

    「隣、いい?って…もう座ってるけど」

    「……」

    黙ってゲームに打ち込んでいる。特に嫌がる様子はないし、このままいることにしようか。

    …というより、ボクが声をかけたことに気付いていないかもしれない。
  18. 18 : : 2016/09/06(火) 22:48:45
    それから何分、何十分、何時間と過ぎていった。

    「…ふぅ」

    ゲームの電源を落とし、七海さんが立ち上がる。

    「…あれ?狛枝くんいたの?」

    どうやらボクの存在は忘れられてたらしい。

    「ずっといたよ…七海さんのゲームを見てたんだ」

    「ふぅん……それじゃ、また」

    それだけ言うと七海さんはどこかへ(恐らく寮へ)帰っていった。

    いちゃダメとは言われてないよね…

    よし。とりあえず七海さんも狙えるかな。

    明日は男の子にアタックしよう。そうしよう…
  19. 19 : : 2016/09/07(水) 19:46:55
    次の日、ボクは彼に話しかけてみることにした。

    「ねぇ、御手洗クン…」

    「なっ…何?えーと…」

    「狛枝凪斗だよ」

    「狛枝くん!で…何?」

    やっぱり、妙な気がするけど…どう見ても御手洗クンだよね

    「ねぇ…太った?」

    「い、いや!まぁ…ちょっとね」

    ま、いいか。御手洗クンには変わりないよ

    「ねぇ、御手洗クンってさ…どんなアニメを作りたいの?」

    「…希望のアニメだよ」

    …なん、だって…?

    「ボクは…アニメで皆に希望を与えたいんだ!かつてアニメが…ボクに希望を与えてくれたように!」

    「そうなんだ!…アハハッ…全力で…全力でその夢を応援するよ!」

    こんな立派な目標を持ってる人に痴漢なんて恐れ多いよ!

    おっと、他の皆に失礼かな?

    でも彼は違うんだ!希望のために動いているんだよ!

    じゃあ…

    「ねぇ、九頭龍クン」

    「あ?んだよゴラ」

    「そう構えないでよ…ボクはキミと話がしたいだけなんだ」

    ボクを睨んだまま何も喋らない…

    参ったな…顔が可愛いから興奮しちゃうよ…

    なんて、口に出したら殺されるかな

    「ちっ、しゃーねーな…話くらいならしてやる」

    「本当!?ありがとう!それじゃあ…食堂にでも行こうか」

    「あぁ、あそこは居心地いいからな…花村がいるのを除けばよ…」

    「花村クンが嫌なの?」

    そう聞くと、九頭龍クンがため息をついた。

    「嫌というか…あいつの言動が気味悪いんだよ…牛乳が飲めないならぼくのミルクを飲め…とかわけわからないこと言いやがるしよ」

    ボクがいないとそうなのかな?

    まぁいいか。ボクが会いに行けばそんなことは言われないだろうし…
  20. 20 : : 2016/09/09(金) 00:13:56
    「で…何を話したいんだ?」

    食堂に着くと、九頭龍クンが椅子に座りながらそう問いかけてきた。

    「ちょっと聞きたいことがあってね…九頭龍クンは辺古山さんとはどういう関係なの?」

    「あ?」

    「入学したばかりにしては親しすぎる気がしてね…ま、ボクが言えたことじゃないけど」

    「別に…なんでもねえよ。あいつは…クラスメイトだ」

    なんか隠してるよねぇ…

    ま、それはそのうちなんとかなるとして…

    「ねぇ…九頭龍クンには彼女いるの?」

    「お前、そういう話しかしないのな…」

    「アハハ、ちょっと気になってね…」

    そんなこんなで九頭龍クンと会話を楽しんで…

    他の人とも話してるうちに放課後になり…

    次の日も誰かと話して放課後になり…

    なんて日々が何日も過ぎて、遂にその日はやって来たんだ

    「おはようございまーす!」

    「あれー?なんか知らない女が来たよー?」
  21. 21 : : 2016/09/10(土) 19:49:38
    「私の名前は雪染ちさ!今日からあなた達の先生よー!」

    「つーか黄桜はどうした!担任はあいつだろーが!」

    「黄桜先生なら二日酔いで寝てるわ」

    「…またかよっ」

    へぇ、先生…

    うん、黄桜先生と違ってスカウトを兼任してるわけじゃなさそうだね…

    それに…ふーん…

    スタイルも良くて顔も整ってる…

    なるほどね。

    「で、…これだけなの?生徒は…」

    「今日は、これだけかもしれません」

    「え?」

    「この学園って、授業に出る義務ないですよね?」

    あっ…先生の顔色が変わったね

    「そう…あなた達はそういう残念な関係なのね…」

    そう言うと雪染先生はエプロンを取り出し…

    着た!

    「皆を集めるわよ!失われた青春を取り戻すのよー!」

    「えー…めんどくさいよ…」

    ボクもそう思うよ。

    希望の皆を一同に介しての授業をしたいんだろうけど…

    そうされると…困るんだよ。

    授業なんかに縛られてたら、ボクが皆と2人きりで接触できないからね…

    あ、そうそう。急に時間が進んだのはボクと皆の馴れ初めをカットする為だよ。

    ボクは皆と仲良くなったんだ!

    …話を続けるよ。

    だから…雪染先生。あなたには今、協力はできない…

    「あなた達はそんな関係のままでいいの!?」

    「だって別にいいし…」

    西園寺さんが口を尖らせる。

    「…あなた達は腐ったみかんよ!」

    「ひいっ!?ず、ずびばぜん…」

    …ありがとう、先生。ベタなセリフを言ってくれて

    「先生、ボクの罪木さんになんて事を言うんですか?」

    「え?」

    雪染先生が目を丸くする。

    と同時に、小泉、ソニア、西園寺、九頭龍も目を丸くする。

    皆が思っている事は「ボクのってなんだ…?」である

    「腐った「蜜柑」だなんて…まるで罪木さんが元々悪い人みたいじゃないですか」

    「ち、違うの…罪木さんの下の名前の蜜柑じゃなくって…」

    「蜜柑違い…?そんな言い訳で許されると思ってるんですか?ボクはともかく、罪木さんたち超高校級の生徒の先生をやる以上は…どんな可能性も予測して、対抗策を考えておかなくてはいけないんですよ」

    「ご、ごめんなさい…」

    「わかってくれればいいんですよ、先生」

    …あーあ、これからどうしようかな
  22. 22 : : 2016/09/15(木) 23:17:39
    「え、えーと…ごめんね、先生、あの…職員室に帰るね…」

    それだけ言うと雪染先生は教室を出ていった。

    後で挨拶に行かなきゃね。

    「な、なぁ…「ボクの」罪木さんってのはどういうことだ…?」

    苦い顔をしながら九頭龍クンがボクに聞いてくる。

    「別に…「クラスの」って言い忘れただけだよ」

    「が〜ん…」

    「口に出すなゲロ豚!」

    「…うゆぅ…」

    「あ、あれ…?いつもなら「す、すびばぜえぇん…!」って来るのに…」

    「日寄子ちゃん、いじめないの」

    「はーい…」

    さて…

    「じゃあボクは職員室に行ってくるよ。ちょっと失礼な事言ったからね…」

    「狛枝さん…ありがとうございます!わたくし、褒めてつかわします!」

    「ありがとう、ソニアさん…」

    それじゃあ、行きますか…
  23. 23 : : 2016/09/25(日) 02:25:01
    期待っす!
  24. 24 : : 2016/09/28(水) 19:18:05
    職員室に着くと、雪染先生が落ち込んでいた。

    …黄桜先生もいないか。これはチャンスかもねぇ…

    「先生」

    「はい!…狛枝くん…あの…さっきは…」

    言葉に詰まる先生に大丈夫ですよと告げる。

    「でも…ほら…軽率に発言しちゃって…はぁ、初日からこんなんじゃ…京助に怒られちゃうよ…」

    京助…?

    「京助…って、誰ですか?」

    「う、ううん!なんでもないの!それより…用は何!?私はあなた達の先生よ!出来ることならなんだってするわ!」

    ここでセクハラするなんて、馬鹿なことはしないよ…

    「それなら…授業を行うのは1週間のうち1日だけにできないですか?」

    「い…1日だけ?」

    「はい!ボクは…いやボクたちは今のままでも十分に才能を伸ばしています。けれど授業が全く必要ないというのもおかしな話です。だから、1日だけ全員が集まる機会を作りたいんですよ」

    雪染先生がしばらく考え込んだ後、口を開いた。

    「…わかったわ。皆でいる事の楽しさに気付いたら、自ずと毎日集まるわよね…1日だけなら、皆来てくれるだろうし…うん!始まりにはいいかもしれないわ!」

    「よかった…ありがとうございます!先生」

    「いいのよ」

    話のわかる人でよかったよ…

    「あと先生。一ついいですか?」

    「ん?何?」

    「先生って…かわいいですね」

    「え?…もう、大人をからかわないの」

    驚いたり、嫌な顔をしたりすることなく笑顔でそう言った。

    なるほど…余裕があるね…京助って人は彼氏さんなのかな?

    「事実ですよ。少なくとも、花村クンあたりは先生が声をかければすぐに授業に出てくれますよ」

    「そう…まぁ…ありがとうね。見た目を褒められて嬉しくない人はいないわ」

    「そうですね。アハハ…それじゃ、失礼しました」

    ……。

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