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ユミル「進撃の」クリスタ「ハイカラ」

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  1. 1 : : 2016/08/16(火) 23:38:52

    初めまして!

    そうじゃない人はこんにちは(・∀・)ノ。

    連夜です!!

    他の作品が出来てないのに執筆するのは心苦しいですが、書きたいのでかきます。(笑)

    今回は短編なので現パロです!

    しかも大正時代がテーマです!

    見ていただけたら幸いなことです。(ジャンルは恋愛・・・?なのかな・・・。)

    それでは投下します。


  2. 2 : : 2016/08/17(水) 00:34:43

    ユミル「はあっ!?クリスタ!!お前舞踏会に行くだと!?あの死に急ぎ野郎と!?」

    ユミルの声がミルクホーム全体に響き渡った。

    その声に思わず驚いた他の老若男女たちは、手にしているカップを口にすることも忘れ、何事かとこちらを振り返ってきている。

    クリスタ「ユ、ユミル。声が大きいよ」

    従者で有り、自分の親友でもあるユミルをクリスタは必死になってなだめた。

    しかし、ユミルは彼女の言葉にホイホイと従うわけにはいかないのだった。むしろ従者で有り、親友でもあるからこそ、彼女の愚行を全力で止めると考えてもいるのだから。

    ユミル「いくら恋人同士でもなぁ、あんな悪人面の野郎と進撃館の舞踏会だ何てなぁ・・・。社交界中に『これが私の婚約者です』って言ってるようなもんだぞ。そこ考えてんのか?」

    クリスタ「・・・だ、だから、しょうがないんだって、お父様にもそうしろって言われてるんだし・・・。」

    しかしユミルは納得せず、目の前の少女を半目で凝視し始めた。





  3. 3 : : 2016/08/17(水) 22:00:26

    淡く薄い水色の瞳に、目が覚めるようなほど美しい黄金色の髪。そして、何よりもその端正な顔立ちは憂えば他者を寄せ付けぬ雰囲気を醸し出し、笑えば見るもの全てに幸福感を与える。
    『女神』....。ユミルはそう思った。さらにクリスタの華奢な体を包むのは、椿模様の着物に袴とハーフブーツ。頭に着けた赤いリボンと相まって彼女は流行りのハイカラさんだ。世間に良家の子女は多いがクリスタほど美しく魅力的な娘は絶対にいない。ユミルはそう信じて疑わない。ーーこんな女神のようなクリスタがあの死に急ぎ野郎と一緒に舞踏会に行かなきゃならない何て....。

    パートナーを伴って舞踏会に出席することは、資産階級の人間にとってある種、婚約のお披露目のようなものなのである。もしクリスタとあの男がそんな事をしようものなら、世間は絶対に二人の関係をもてはやすに決まっている。
    朝刊の一面に大きく『レンズ家の令嬢、ご結婚!?』の文字が躍り合う事だろう。冗談じゃないーーあの死に急ぎ野郎がクリスタの夫だと....?絶対に認めてたまるか!! ユミルは舌打ち交じりに、エプロンの裾を握り締めた。
  4. 4 : : 2016/08/17(水) 22:01:35
    面白いけど行間開けようぜ。


    期待
  5. 5 : : 2016/08/18(木) 01:07:13
    もっくんさん!

    意見をありがとうございます。

    行間を開けないのは説明を分かりやすく書くためにしました。

    申し訳ありませんが、人物がしゃべたりする時は行間を開けますので後は勘弁してください....。

    でもアドバイスありがとうございます。
  6. 6 : : 2016/08/18(木) 02:46:50

    時は大正。浪漫の時代。

    ガス灯煌めく煉瓦道には百貨店が立ち並び、洋装纏う人々がにぎやかな光景を見せている。オペラや活動写真など珍しいものが人々の人気を集めている。
    欧米諸国から様々な人やモノが流入し始め、文化が一気に花開き始めたときだ。

    レンズ家もまた、そんな時流に乗って
    海外からこの街にやって来た家のひとつである。始めの頃は街の名家、イェーガー家との間で戦慄を走らせあったものの、互いの家の子供同士...。クリスタ・レンズとエレン・イェーガー...が恋仲であるという衝撃の事実が発覚して以来、
    両家は友好な関係を築いているのだ。


    ―ただ一人、クリスタの従者で親友のユミルを除いては....。

    ユミル「かくなるうえには、舞踏会の前にあの死に急ぎ野郎を始末するか...。」

    ユミルは長いスカートに隠した軍用ナイフに手を触れ、密かに強い決意を持つ。

    クリスタに付いた悪い虫を叩き潰すのも、自分の役割だ。いかに本人や両親が納得しようが、その恋愛ごとがクリスタに悪い影響がでるなら、自分が断固として止める――。

    そんなユミルの考えが表情にでたのか、
    クリスタが心配そうにこちらを上目遣いで、覗きこんでくる。
  7. 7 : : 2016/08/18(木) 10:54:43

    女神に上目遣いで見られてしまえば、流石のユミルでも不味い。
    クリスタの大きな瞳や仕草に、思わず
    鼻の奥から熱いものが攻めてきたが、それをぐっとこらえ落ち着かせる。
    そんなユミルの努力を露知らす、クリスタは取り繕うように話始めた。

    クリスタ「だ、大丈夫だよ!別に一緒に舞踏会に行くだけなんだし、本当に結婚するわけじゃないんだよ?」

    そう言われても、それで納得するようなユミルではない。舞踏会がキッカケで、
    二人の仲が進展し、本当に結婚するかも
    しれないのだからな。

    ユミル「大体なぁ、クリスタ。お前まだ十六じゃないか、結婚はおいといて、
    まだ異性との交際何て早すぎんだよ!
    だったら勉学に励め、勉学に!!」

    クリスタ「あははは....。本当に交際してる訳じゃないんだけど...。」

    ユミル「あっ?何か言ったか?」

    クリスタ「あ、いや!?な、なんでもないよ!エレンとは目下滞りなく熱愛中だよ。うん!」

    あはは、とクリスタは誤魔化すような笑顔を浮かべていた。

    ユミル「....だから、熱愛中は困るんだよ...。」

    ユミルは大きなため息を吐いた。
    彼女のこんな所は子供の頃と変わって
    いないのである...。
  8. 8 : : 2016/08/18(木) 13:18:22
    期待!
  9. 9 : : 2016/08/19(金) 07:35:29

    ごほん、とユミルは咳払いし、クリスタに語りかけるように言い始めた。

    ユミル「いいか、クリスタ。女が活躍できなかった時代に比べたら、今の時代は
    女性社会進出が目覚ましいんだよ。
    クリスタも女学生ならなぁ、脇目も振らずに勉学に励むべきなんだよ。恋愛や結婚だけが女の人生じゃないんだと、平塚らいてう先生も言ってなーー。」クドクド

    クリスタ「だから結婚とかそんなんじゃないんだってば!...もう、ユミルはあの人のことになると頭が固過ぎるよ....。
    こっちは舞踏会に行くって話しただけ
    なのに...。」
    むぅ、と不満そうにむくれるクリスタを説得するために、ユミルが口が言葉をかけようと思った刹那....。

    ???「....舞踏会?なぁ、クリスタ。それって、あの進撃館の舞踏会かい...?」

    席の近くを通りかかった給仕の少女が、
    トレイを片手に興味深そうに見てきた。
    長めの金髪は後ろにきつめに纏めた髪形であり、藍色を基調にした和装のエプロン姿。一見無愛想な表情をしているけれど、整った顔立ちで、空の
    ように青い色をした瞳を持っていた。
    彼女の名は確か、アニ・レオンハート。
    クリスタやユミルとほとんど変わらない年齢の持ち主ながら、彼女はこのミルクホールで、働く立派な少女である。
    女学院の帰り道、クリスタが何度か通っているうちに仲良くなったらしい。

    ユミルが軽い会釈をすると、給仕の少女は笑顔を返した。

    ユミルはチャンスだと思い、アニに話を振った。

  10. 10 : : 2016/08/19(金) 22:56:13

    ユミル「なぁ、アニさんよぉ。あんたからも言ってくれないか?こんなに若くて女神な女学生が、舞踏会だなんて...。」

    クールそうで、意外なほど真面目なアニならばきっと自分の味方となってくれるはずだ、と、私情が入ってしまうが、これもクリスタの為、とアニに話を振る。

    しかし、当のアニ本人の反応は、ユミルの予想の斜め上にいった。

    アニ「別にいいんじゃないかい?舞踏会位....。私も楽しみだし....。」

    ユミルは「えっ...。」と思わず本音が、
    口から出た。あのアニが、そんなことを言うとは、意外過ぎるのだ...。

    はっと、ユミルはひとつの可能に考えを至らせる。ユミルは、恐る恐る、アニに
    声をかける...。


    ユミル「まさかアニ...。あんたも舞踏会に行くのか...?」オドロキ

    アニ「きらびやかなホール、生まれて始めての綺麗なドレス。美しい旋律に身を乗せて、あいつと私は軽やかにワルツを踊る....フフっ」

    普段のアニからでは、想像もつかないほど、うっとりと夢見がちな表情を浮かべていた。まるで本当に進撃館の舞踏会で踊っているかのように、トレイを抱きながらくるくるとその場で回転を始める。


    ユミル「おっ...おい、アニ....?」

    アニ「――燃え上がる身分違いの恋..。
    自由恋愛を叫びつつ、私の手を取り逃げ出すあの人...。二人は汽車に飛び乗り、
    新天地を目指して旅立つの......」

    ユミルが怪訝な表情をしながら見ていても、それすら視界に入ってないように、
    アニはぶつぶつと妄想を垂れ流すばかりであった。

    すると、彼女の様子を見るに見かねた為か、近くにいた同僚の給仕が、ため息交じりに呟いた。

    ミーナ「いや~~ごめんね~~。ちょっとアニはのぼせ上がっちゃてね。――ずっと前から片想いしてた人に、舞踏会に誘われてね。ーーほらアニ!恋と仕事は、
    別々だよ。しっかりして!」

    その給仕ーーおさげが特徴の活発そうな
    少女が、アニの背中思い切りを叩く。

    するとアニは「はぅ!?」と間が抜けた悲鳴を上げ、やっと我に返ったのだ。
  11. 11 : : 2016/08/19(金) 23:07:45
    間違えました!すいません!!

    「アニの背中を思い切り叩く」

    な・の・に・!!

    「アニの背中思い切りを叩く」

    になってしまった・・・。(涙)

    どうか読んでくれる人は最初に書いた方で、読んでください。


    また、間違えがあったら、指摘お願いします。では続きを行きます!!
  12. 12 : : 2016/08/20(土) 09:30:34

    アニ「あ、ああ、ミーナか悪いね。」

    そんなやり取りを見ていたクリスタが、
    カップを片手に持ち、「へぇ~~~!!」
    とキラキラした眼差しを向けていた。

    クリスタ「アニって、想い人いるんだ」

    すると、それを聞いたミーナが楽しそうな顔をして言い始めた。

    ミーナ「ええっと、確か高等部の学生さんだったかな。かっこよくて、わりと優しくて一本気な性格の男の子だね。名前は確か....エ」モゴモゴ

    アニ「ミーナ?....それを話したら命に
    関わるからね。」ゴゴゴゴゴ

    ミーナ「あ、あははは。じ、冗談だよ?
    だから、拳を下げて....。」

    顔を赤らめたアニは、あわてておさげの
    少女の口を塞いだ。アニの話からすると、よほど想い人に、アニは夢中なのだろう。

    ユミル「恋に憧れているのは、クリスタだけじゃないんだな....。」

    ユミルが深いため息をつくと、少し後ろの席から声がした。

    ???「あら、皆さん奇遇ですね。進撃館の舞踏会には、私も誘われているんですよ。許嫁からね」

    慌てて、皆が声のする方え目を向けると
    そこにいたのは、つばの広い装飾品の帽子をかぶる、黒髪の美少女だったのだ。





  13. 13 : : 2016/08/20(土) 09:42:06

    読んでくださる人に、報告が、実は今打ってる、文で最後にしばらく、このssが書けません。最低でも4ヶ月後には書けますので、読んでて下さる人は、本当にごめんなさい。
  14. 14 : : 2016/12/28(水) 00:51:36

    ユミル「あんたはーー」

    確か彼女は、クリスタの女学院のクラスメートだったはず。確か名前は...。

    クリスタ「い、許嫁!?ミカサ、あなた、許嫁がいたの!?」

    クリスタの驚愕にまみれた声に、ユミルは、はっと思い出した。

    彼女の名前は、ミカサ・アッカーマン。

    肩にまで掛かる、光沢のある黒髪。

    黒い瞳の切れ長の双眸。

    聖女のような微笑みを持つ、顔立ち。

    それらの魅力をより引き立てる、シルク製のドレスとつばの広い帽子。

    ユミルの印象では、そんな所だった。

    他に知っているとすれば、クリスタとミカサは、他校の男子から同レベルの人気を博している、と言うぐらいだった。






  15. 15 : : 2016/12/28(水) 22:16:28

    ユミルが心の中でそう思っている間にも、ミカサは穏やかに微笑みながら、クリスタの疑問に答えた。


    ミカサ「ええ。幼い頃からお慕いしている男性がいるの。その人との婚約のお披露目を兼ねて、舞踏会に出席するの」

    そう言うミカサの表情は、幸せそのものだった。よほどその婚約者の事が好きなのだろう。

    クリスタ「はぁ...。婚約かぁ。ミカサはすごいなぁ…。もう婚約だなんて...。」

    クリスタは、心の底から感嘆したように口を開いて言った。

    ミカサはその言葉に頬を赤らめながらも、まんざらでもないご様子だ。

    そう思うのは、ユミルやアニも同じだ。

    すると、ミカサはイタズラぽく笑った。

    ミカサ「でも、それを言うならクリスタやアニも同じのはず、ーー恋人と舞踏会に参加するのだから」

    その言葉に動揺したのは、クリスタではなく、意外にもアニであった。

    アニ「こ、ここここ、恋人!?別に、アイツとはそんな関係じゃないし!!だいたい私なんかじゃ、釣り合わないから!容姿も家柄も別格だし...。誘ってもらった事が、奇跡だし...。」ゴニョゴニョ

    アニは顔を赤らめてながら、手に持っているトレイをぶんぶんと振りまわした。


















  16. 16 : : 2016/12/30(金) 01:30:24

    あまりのアニの動揺振りに、ユミルは唖然としたが、その反応を見て、なぜかミカサが、対抗心を燃やしていた。


    ミカサ「むっ...。アニの相手は余程素晴らしい男性なのだろう。...なら、私の許嫁も負けてはいない。文武両道で、目も眩むような美男子、学生とは思えない位正義感に溢れていて、凄く男らしい人」


    よくわからないが、なぜかお互いの恋人を自慢するだけになっている。そんな二人を見た、クリスタ苦笑したような、そんな表情を浮かべていた。


    クリスタ「二人の相手に比べちゃうと私の恋人は、ちょっと...。無鉄砲な所があるし...。子供ぽいんだけど、根は優しくて、友達を大切にする人かな...?」

    ユミル「クリスタ.....」


    クリスタが、エレン・イェーガーを語る姿に、ユミルは危機感を覚えた。


    ーーなんだかんだ言ってクリスタも、あの死に急ぎ野郎の事を気にいっているじゃないか。


    このままでは他の女性陣たちと、恋ばなに華を咲かせてしまい、舞踏会を断念させるには、説得が難しくなる。


    ユミル「おいクリスタ、そろそろーー」


    帰宅を促すために、ユミルがクリスタに声をかけたその瞬間だった。


    カランコロン


    ミルクホールの入り口に付けられている、鈴が鳴り響き、人が入って来る。


    ミーナ「いらっしゃいませ!....あっ」


    おさげの給仕は、戸口に入ってきた新しい客を見て、きょとんとした表情を浮かべた。


    入ってきたのは詰襟の学ランに黒い帽子マントを羽織った二人の少年だった。



  17. 17 : : 2016/12/31(土) 23:16:27

    入って来た少年達に、ユミルは見覚えがあった。


    片方は中肉中背で、鋭い金色の瞳を持つ、整った顔の黒髪の少年。


    もう片方は、男子にしては低めの身長で、水色の瞳を持ち、女の子の服を着せたら、女子に見えそうな金髪の少年。


    最悪だ‥‥とユミルは心で思った。


    そう思ったのは、先ほどクリスタと舞踏会に行く、行かないで話をした時の、話題にしたクリスタの相手がいたからである‥‥。


    そんなユミルの心情を知ってか知らぬか、店に入って来た少年の一人を見て、ユミルの周りの三人の少女は突如色めきだった。


    クリスタ「あ、エレン」


    アニ「エ、エレン!?」


    ミカサ「エレン!」


    親しげにその少年の名を呼ぶ少女達は、その瞬間、「「「え?」」」とお互いの顔を見合わせた。


    クリスタ「アニにミカサ、どうしてエレンの事知ってるの?」


    アニ「それを言うんならクリスタ、アンタだって」


    ミカサ「知っているも何も、エレンは私の許婚だから…」


    うーん、と少女達が首をひねる事数十秒後、彼女達はほぼ同時に、一つの答えに到達したのであった。


    クリスタ「もしかして私たち、エレンに三股かけられた…?」


    アニ「舞踏会に誘ったのは、私だけじゃないだって…?」プルプル


    ミカサ「ひどい、エレン…!舞踏会で婚約発表をするつもりだったのに…!」


    背中の後ろに、不穏な空気を纏う袴姿の女学生。


    額に青筋を浮かべ、手に持つトレイを握り潰すエプロンの給仕。


    そして絶望に遭遇したように、地面に崩れ落ちるドレスの令嬢。


    そんな三人の険悪な雰囲気などをつゆ知らず、ーー学生服を着た片割れの少年ーーエレン・イェーガーは三人の少女達の姿を見るなり、手をあげてこちらのテーブルにやってきたのである。










  18. 18 : : 2017/01/05(木) 00:54:38

    エレン「よう、お前ら!…って、あれ?お前ら三人とも知り合いだったのか?」


    にっこり、と満面の笑みを浮かべる少年に、少女達は恨みがましい視線で文句を言い付けた。


    クリスタ「ねぇエレン?これはどういうことなのかな?」ゴゴゴ


    アニ「アンタが舞踏会に私を誘ってくれて、本当に嬉しかったのに…。私だけじゃ駄目だって言うのかい」メリメリ


    ミカサ「エレン…。舞踏会に行くのに三人に声をかけるなんて…。私では物足りないとでも言うの…?」ズウーン


    そんな少女達の様子を見たエレンは、ようやくその場の様子がただごとではないのだと気づいた。


    エレンは、ぽん、と納得したように手を叩いてこう言った。


    エレン「あー。もしかして進撃館の舞踏会の事か?俺的には、みんなで楽しみたいと思っててな。三人に声をかけたんだよ。ーーなんか俺、マズイことでもしたか?」


    エレンは不安そうに彼女達に問い掛けた。しかし、そんなエレンの問いに笑みを浮かべて応える者はいなかった。


    クリスタ「エレン、そんな玉虫色の回答が聞きたいわけじゃないの!ーー結局、エレンは誰が本命なの?」


    アニ「そうだよエレン。アンタ結局、この中の三人で誰が一番だって言うんだい!」


    ミカサ「もちろんエレン、私に決まっているでしょう?」


    気がつけば、三人の少女達は互い目で牽制しあい、一触即発の空気に陥っていた。このままではミルクホールで血を見るような乱闘が起こりえる雰囲気だった。


    アルミン「……あーあ。これって、エレンが誰か一人を選ばなければ納得出来ないーーそんな空気だね。」ゴクゴク


    ミーナ「確かに、そんな雰囲気になってるわね」ウンウン


    少し離れたカウンターの席からは、コーヒーを飲みながらも、そんな風に冷静に指摘する親友と、傍らで納得したような顔で頷く、おさげ髪の給仕の少女の呟きが響くのだった。


    そんなことを言われたエレンは思わず慌ててしまうのだ。
  19. 19 : : 2017/01/07(土) 23:33:29

    エレン「えっ、選べったって、そんないきなり……。そ、そうだ!ユミル!頼む!手を貸してくれよ!」


    エレンはすぐ近くで、ことの詳細を見ていたユミルに助け船を要請した。すると、ユミルは鋭い目付きで睨んできた。


    ユミル「はっ…?手を貸してくれだと…?」


    エレン「お前はクリスタと親友同士だろ!?だからせめてアイツのことだけでも説得してくれ…」


    そう言われたユミルは、自分の親友である人物を見やる。


    恋人のあまりの不誠実さに対して余程頭にきたのだろう。
    彼女のにこやかに浮かべる笑顔に対して、その後ろからは阿修羅のような、恐ろしいオーラを纏うものさえ見えてきてしまった。


    ユミルは深呼吸をし、静かに、己の瞳に目の前の男を写した。


    ユミル「断る。死に急ぎ野郎。私はお前の意見なんざぁ、露ほども聞くつもりなんてねえぞ」


    ユミルの言葉に、エレンは驚きを隠せなかった。


    エレン「な、なんでなんだ!このままじゃ怪我人どころか、人死にが出ちまうかもしれねんだぞ!?」


    ユミル「元々、クリスタの恋人でありながら、他の女に声をかけていたことーーこれは本来許されることじゃねえが、千歩譲って見逃してやるよ。『皆で楽しむ』と言う心意気自体は悪いものじゃないからな。けどなーー」


    カチッ


    ユミルはスカートの中に忍びこませていた軍用ナイフを取りだし、構えた。


    その姿を見て、思わず息を呑むエレン。










    ユミル「ーーだったら、なんで私も誘ってくれなかったんだ?」






  20. 20 : : 2017/01/08(日) 02:29:47

    エレン「はっ?」




    ブンッ



    瞬間、呆然とするエレンに、ユミルは躊躇なく投げつけた。
  21. 21 : : 2017/01/08(日) 02:58:21

    空気を切る音がエレンの耳元に響いたと同時に、ナイフはエレンの頬を掠め背中の壁に刺さり込んだ。


    その時、エレンは全力でその場から、逃げた。


    その後を、ナイフを持ったままユミルは全力で追いかた。


    エレン「うぎゃゃゃゃゃっ!?待て!待ってくれ!落ち着け、ユミルゥゥゥゥッ!」


    ユミル「うるせえ!クリスタや他の奴も誘ったくせして、なんで私は誘わないんだ!?私だって…私だってなぁ、ドレスや舞踏会に憧れくらいあるんだぁぁぁっ!」


    エレン「ひ、ひいいいいっ!?」







    アルミン「あーあ、結局こうなったね~。」モグモグ


    クリスタ「なんか、怒る気なくしちゃうね」


    アニ「同感だよ」ウンウン


    ミカサ「同じく」


    ミーナ「まぁ、エレンは鈍いからね。納得するしかないよ」


    クリスタ「そういえばアルミン、何食べてるの?」


    アルミン「ああ、新作のケーキだよ。クリスタ達も食べよう!」


    アニ「食べるなら、運んで来るよ。」ガタッ


    ミカサ「私も食べる。…。」


    ミーナ「じゃあ、ケーキ運んで来るからね~!」



    (エレン、ユミル除く)「「「ハーーイ!!」」」

  22. 22 : : 2017/01/08(日) 09:15:50

    結局この日、ミルクホールは一人の男の悲鳴とナイフが飛び交うという、カオスな地獄と化したのであった。


    少女達の争いは、ケーキを食べることで和解へと持ち込まれた。



    その後、その男がどうなったのかは、神のみぞ知ることだった。



    ~終わり~

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