このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。
この作品は執筆を終了しています。
蝶の籠
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- 1 : 2016/07/26(火) 00:04:30 :
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チムコ祭
Cチームカマボコです
いよいよ大将戦ですねみなぎってまいりました
テーマは「フリー『時間』」
恐らくはかなり被りそうですがSFものです。
エグい表現から入ります。ご注意
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- 2 : 2016/07/26(火) 00:07:26 :
503247.
繰り返す。
繰り返す。
繰り返す。
それは遥か昔から、この宇宙に概念が生まれてから、或いはそれよりも以前なのか。
刻々と、
無機質に、
酷々と、
無慈悲に、回 り、廻 り、過 り、流れる。
『時間 』は決して、止まろうとも、遡ろうともしない。
──────蝶の籠は、破れない。
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- 3 : 2016/07/26(火) 00:09:53 :
13.
「……ハァ……ハァ!」
「な……んで、あんた……が……!」
少女にとっての予測の外にある事象だった。
最早、未来予知の領域に届きうる少女の分析力にとって唯一にして最大の欠点は『乱数という摩擦に対処が出来ない』という点。それに、それは彼女にとって最も『予測不可能』にして『理解不能』な出来事だった。
「お前さえ死ねば」
少年の行き着いた答えはそれだった。
『それしか』なかった。
少女の腹部に深々と刺さる、曇りの無い真新しいナイフ。
鮮血が刃を伝い、床に滴り、血溜まりとなって拡がっていく。
「かっ……はっ……ははっ……なん、で、私……が……絶望、的……」
自らの血溜まりへと膝を突き、少女は斃 れた。
「……」
少年は無機質に、少女の遺体を侮蔑し、ソレをシャワールームまで引き摺り、手慣れた様子で『解体 』し始めた。
金槌で関節部の骨を砕き、鋸 でその部位を切断し、それを繰り返し。
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- 4 : 2016/07/26(火) 00:11:54 :
丁寧に、丁寧に。
狂人の様に、しかし、冷静に。
シャワーの音と、肉を裂き、骨を砕く音。
丁寧に肉を腑を骨を分け、ソレは少しづつ、少しづつ、小さく、小さく、分かれていく。
苗木誠は江ノ島盾子を『解体』する。
小分けし、数十にも及ぶ細分化された『江ノ島盾子の屍肉 』を、少しづつ、少しづつ、なるべく一点に集まらないように念入りに、遠くに運び出し、苛性ソーダ系の洗浄剤に漬け、溶かし、埋めて、二度と掘り起こされる事の無いように。
丁寧に、丁寧に。
『遺体無き殺人』を完遂したのだ。
────────
0.絶望と混乱 は過ぎ去り、世界は落ち着きを取り戻し、再び、陽の当たる時世。
新しい政府が動き出し、未来機関も役目を終えかけていた。
そんな時、ある『誰かの遺産』に大して一悶着があった。
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- 5 : 2016/07/26(火) 00:14:38 :
-
誰かというのは最早、彼なのか彼女なのか不明であり、戸籍も、名前すらも残っていない、そんな『誰か』。
ただひとつ解るのはその『誰か』は元希望ヶ峰学園の生徒であり、そして『量子力学』の専門家であったという事だけである。
戯れなのか、それとも真摯に取り組んでいたのか、『誰か』は『情報の時間遡行』をノートに纏めていた。
特殊相対性理論を基にし、質量を持たない電子情報を専用の加速機に掛けて、座標の調整をしつつ高光速で周回を繰り返し、時間を遡行 させる。
要は『タイムリープ』の方法だ。
この専用の加速機というものの原型は既に存在し、ノートの理論を基軸に実験と実証を積み重ね、そうして、脳の神経細胞 の電気信号を過去へと飛ばす
機械が今際の未来機関で試作されてしまったのだ。
最後の実証実験は『時間経過によるアトラクタの変動の立証』。
即ち、バタフライ・エフェクト。
それに対して苗木誠は揺らいだ。
『IF』という可能性に対して、彼は揺らいでしまったのだ。
もしも、あの時、ああすれば、彼女は、彼は、死ななかった。
そんな『IF』に。
彼は、過去に戻る道を選んでしまった
。
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- 6 : 2016/07/26(火) 00:18:00 :
1.
「……そんな、本当に」
頭を万力で締め付ける拷問器具の様な装置に身を預け、目を閉じ、そして今、彼は目を覚ました。
正確には『未来の自分の記憶を保有した過去の自分』であるが。
数年前の情景、そう、これは希望ヶ峰学園の入学式の日、校舎の前で仰いだ瞬間だった。
平穏な世の中、ただの少年だった頃の苗木誠は、これから起こる惨劇の悲哀も、それを乗り越えた精神も、何もかもを未来から引き継いで、この場からリスタートする。
「あ……くぅ……!」
急な頭痛に、こめかみを押さえた。『未来の記憶』が脳裏を巡り、脳の神経を圧迫させる。立ち眩みに似た軽微なものではあるが。
「大丈夫ですか?」
知った声が聴こえた。
あの時、いや、『この時』に沢山聴いた。
テレビから、ラジオから、CDから、有りとあらゆるメディアと、そして『これから』沢山の言葉を交わす『あの声』を。
「苗木、君ですよね?」
「舞園、さやか……さん?」
二度と聴くことは不可能だと思っていた。
超高校級のアイドルにして憧れた大切な友人、そして未来の苗木誠が『希望』と成り果てる為の起点。
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- 7 : 2016/07/26(火) 00:19:41 :
そして、未来には存在しない、あの絶望的なコロシアイ学園生活の最初の犠牲者。
涙を流しそうだった、懐かしいその姿に。
「も、勿論知ってるよ。むしろ知らない人の方が少ないんじゃないかな?」
苗木は流れそうな涙を拭い、舞園に応える。彼女は今の芸能界でも指折りの有名人だ。トップアイドルグループのセンターという輝かしい肩書きを持っている。
そして、交流こそは無かったが、中学時代の同級生だ。
「でも良かったです。知ってる人が一緒で」
苗木は覚えている、舞園が苗木の事を何故知っているのかを。だが、苗木は敢えて訊ねる。道筋を辿るように、かつての自分を演じるのだ。
「舞園さんはボクの事を知ってるの?」
「ええ、同じ中学でしたよね。私達」
その時が来るまで、苗木誠は『苗木誠』を演じる。
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- 8 : 2016/07/26(火) 00:20:57 :
*
あの入学式から幾ばくか月日が流れる。
希望ヶ峰学園78期生は、その月日と比例してその仲を深めていく。
二度と無い、二度目の思い出。
苗木はその二度目の思い出を噛み締めるように、しかし、あくまで『この時代の苗木誠』として過ごし、心に刻んでいく。
そうして、あの時、学園史上最大最悪の事件も、大男に襲われそうになって、戦刃に助けられた事も、予備学科の蜂起から集団自殺も、何もかも『二度目』を辿る。
そうして『あの時』が来るのだ。
*
「この学園に籠城する。充分な食糧も確保し、ライフラインに関しても問題は無い。この学園に残った君達だけでも、どうか希望を繋ぐ為に生きて欲しい」
人類史上最大最悪の事件、そして、残った78期生の籠城生活が始まった。
『あの女』は動く。もとより、この籠城生活を見透していた、いや、或いはそうなるように『仕向けて』いたのだろう。
この当時、人類史上最大最悪の事件を追い、目星をつけていた人物が居る。
やはり協力を仰ぐなら、彼女だろうと、苗木は思った。
「話……というのは、何かしら、苗木君」
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- 9 : 2016/07/26(火) 00:22:45 :
「率直に、協力をして欲しい。霧切さん、これから起こる惨劇を防ぐ為に」
この籠城生活の内に、昏倒され、記憶を弄られてしまう前に、解決する必要がある。
「協力、って、何をすればいいのかしら」
「これから1週間後に、あの『2人』が動き出す。その前に止めたいんだ」
霧切は表情こそ崩さないが、目を少し見開いた。
あの絶望的事件に最も無関係そうな少年は、己が推察と調査によってようやく辿り着いた『あの2人』を知っているという事に。
「何故……1週間後だと?」
霧切は苗木が『あの2人』を知っているという事はこの際、疑問から切り捨てた。最も疑問に感じた『1週間後』という言葉に焦点を当てる。
「信じてはくれないとは思うけど、ボクはこれから起こる事を『知っている』んだ」
「……確証が持てないわ。そんな突拍子も無い話、それとも貴方は占い師にでもなったのかしら?」
「確証は持てなくていい、そしてこれは占いじゃなくて『史実』なんだ。頼れるのは『絶望の姉妹』に目星をつけている霧切さんだけだ」
訝しげに思いながらも、苗木の言う言葉には真実味があった。
霧切はもう1つ、質問をする。
「例えば、未来の私は、この手袋を貴方の前で外したのかしら?」
「うん……外した」
生涯、人前で外すことは無いと思っていたこの手袋の中の自身の両の手を苗木は『知っている』といった。
苗木の未来云々という言葉が狂言ならば、霧切の手袋の中がどの様になっているかなど『知らない』で片付けてしまえばいいのに、彼は知っているといったのだ。
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- 10 : 2016/07/26(火) 00:24:05 :
「……そう、因みに、どうなってたのかしら?」
「……酷い火傷だった」
苗木はそれだけを言って口を紡ぐ。
霧切はそれを聞いて、親指に顎置いて、考える仕草を取った。
「本当、のようね」
本当、とは言ったが、それでも未だ半信半疑ではある。だが、苗木が下らない嘘をつくような人物ではないと、霧切は知っている。
「唐突な話でごめん。でも、協力して欲しい」
「兎に角、その辺りは父……学園長と話を繋いでみましょう」
*
寄宿舎の2階、人類史上最大最悪の事件の余波によって若干崩壊しているが、幾つかの部屋はまだ使用ができた。
そこに、学園長の私室がある。
「……つまり、苗木君は未来から来たと?」
学園長は、そんな突拍子も無い話を笑いもせず、ただ、真摯にそう返した。
「学園長は信じてくれるんですか?」
「信じ難くはあるが、1つ、信じるに足る情報があってね。この学園の量子力学のプロフェッショナルが『過去に干渉する方法』を論文に纏めていた事があった。ただ、専用の加速機が当時では未完に終わったと聞く」
「将来、その加速機は完成され、論文……というか、その量子力学者の走り書きのノートを基軸に、こうやって『過去に干渉する方法』が確立されました」
「成程、そうして君は過去を改変しようと」
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- 11 : 2016/07/26(火) 00:26:23 :
「……そうですね」
学園長、霧切仁は席を立ち、苗木と霧切響子に背を向ける。
「この絶望を止める、未来からの希望、か。苗木君、1週間後に何が起こる?」
「史実であれば、学園長……あなたは殺され、78期生は記憶を消されて殺し合いを強要されます」
「そうか……つまり、このシェルター化した旧校舎は、かえって彼女らにとって都合が良くなる、と」
「そうですね。そして……」
生き残るのは半分以下、絶望的な状況下が待っている。
「では、どうする?彼女らに悟られれば終わりだ」
「戦刃さんと江ノ島さんを分断する必要があります……そして……」
彼女らの計画潰すための計画を、苗木はずっと考えてきた。
いかにして誰も死なずに終えられるのか。
考え抜いて、考え尽くした。
──────蝶の一片 が、やがて嵐となる為に。
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- 12 : 2016/07/26(火) 00:27:52 :
*
それは驚く程にスマートに、事なきを得る。
江ノ島盾子と戦刃むくろを分断し、そして孤立した江ノ島を捕らえるまで、実にあっさりと成した。
霧切と学園長は戦刃へ、そして苗木は江ノ島を抑える事に成功したのだ。
「……で、あたしをふん縛って、どうすんのさ?」
「どうもしない、キミは『機関』に引き渡す」
江ノ島は眉をピクリと動かし、苗木を睨みながら口を開く。
「……苗木、あんたさ……『何者』?」
「何者でもない、ボクはボクだ。ただ、本当なら『これからキミにこっぴどくやられる予定だった筈』の苗木誠ではあるけど」
江ノ島は「ああ」とそれに対して応え。
「あれか、あんたはつまり『未来の苗木誠』ってわけか」
いとも容易く看破したのだ。
「知ってる知ってる、希望ヶ峰学園に量子力学者が居たことも、そいつが時間の遡行の方法を探って居たこともね」
「……」
「私様を抑えた所で無駄よ無駄」
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- 13 : 2016/07/26(火) 00:29:12 :
苗木は江ノ島の言葉を黙って聴く。
「過去への干渉なんてそんな便利なもん、あたしが目を付けない訳が無いじゃない?でも『目を付けなかった』のよ。これ、なんでか解る?」
「無駄な事だからよ、未来は変えれるけど、過去は変えられない。私様的な分析でもそれは絶対なの」
そんなことはない。と苗木は自身の内で叫ぶ。
苗木は確かに、あっさりと江ノ島を捕らえ、あの絶望的なコロシアイ学園生活を『予防』したのだ。
今、未来は分岐し、それは確実にいい方向だと、苗木は信じている。
蝶の一片になれたと、信じている。
*
「外部の様子は変わらない。だが、絶望の元凶を捕らえた今、外部と接触する必要がある。完全に外との交流を遮断して大分経ったが……」
外部には絶望に対する希望ヶ峰学園のOB達が設立した未来機関が既に存在する。史実ならば、コロシアイ学園生活で生き残った者らが初めて接触するのだが、この改変によってそれは無くなった。
全員でこのシェルターを出る、苗木が思い描いた過去改変はこうして、着々と『思い』ではなく『現実』として描かれていく。
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- 14 : 2016/07/26(火) 00:30:32 :
*
78期生は一同にエントランスに立つ。
「……本当に、このシェルターを出るんですね」
舞園は不安気に、だが、真っ直ぐとシェルターの扉を見る。
「はぁー、つーかさ、マジで体が鈍ってしょーがねーぜ。外に出たら、思いっきり体動かしてーな」
桑田が背伸びをしながら、いまいち緊張感の無い様子で呟いた。
「……」
江ノ島と戦刃は縛られたまま、依然として黙っていた。
「外部が今、どんな状況にあるかわからない。皆、気をしっかり持って周囲を警戒して欲しい」
学園長はそういって、シェルターの扉の遠隔ボタンに指を置く。苗木誠が望んだ78期生全員で、この学園を出るという夢は今、ここに叶おうとしていた。
扉は仰々しく開き、外の眩しさが、まるで明るい未来の様で。
そして開ききり、
「がっ!!?」
1発の銃声を聴くまでは、
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- 15 : 2016/07/26(火) 00:31:28 :
「何?……なにが、え……?」
それは瞬く間の出来事、
「い、いや………」
「いやあああああ!!!」
声を上げたのが意外な事に霧切響子で、
「な……んで!」
斃れたのが霧切仁であった。
眉間を貫かれ、即死したのだ。
「に、逃げろ!!囲まれてやがる!やべえぞ!!」
大和田の一声に、全員が周囲を見渡す。
そう、そこには『あの忌まわしい顔』が多数見えたのだ。
「モノクマ……ヘッド!」
苗木がそう呟き、江ノ島がそれに対して応える。
「ああ、あんたなら知ってるよね。そう、外はもうこんな状態、それなのにあんたらと来たら呑気に外に出ようとした。勿論、こうなるよなぁ?」
そう、知っていた筈だ。
なのに、これは『知らなかった』のだ。
「なんで……!」
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- 16 : 2016/07/26(火) 00:34:29 :
そう言って苗木はハッとする。
自分が学園から脱出した時の記憶は、未来機関がすぐに保護に来てくれた。
そう、この時、苗木誠は思い違いをしていた。
『未来機関が既に校外寸出の所まで駆け付けていて、己らを保護してくれる』等と思い違えていた、そんな訳が無いのに。
未来機関が駆け付けるのは、あのコロシアイ学園生活が始まり、その様子が全国中継されてからなのだから。
「あっ、ああ……!!」
「き、霧切さん!!」
間近に居た呆然とする霧切響子の手を引き、苗木は走り出す。
あの忌々しい面が、そこらじゅうに跋扈している。
蜘蛛の子を散らすように、78期生が各々逃げ出した。
「あー、つまらんつまらん。ねえ、お姉ちゃん……お姉ちゃん?」
戦刃むくろは、縄に縛られたままいつの間にか事切れていた。
「あ~……そっか、まあ、そうだな……そういや、アンタもいるんだったな」
黒い予備学科の制服の、長い長い黒髪の男が、硝煙を吐く消音器のついた拳銃を握り、江ノ島の前に立っていた。
この男が戦刃むくろの眉間を撃ち抜いたのは明らか。
深い絶望に浸されながらも、この元凶に復讐の機会を伺っていた『造られた希望』の男が、今度は江ノ島へと拳銃を向ける。
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- 17 : 2016/07/26(火) 00:39:18 :
「あーとても、絶望的で呆気ない最期だっ」
言い終わる前に男は拳銃の引き金を引く。
逃げていった78期生に目もくれず、ただ、機械的に、そしてその場を後にする。
*
「逃げよ……朝日奈……」
「いや!……嫌だよ……!!さくらちゃん!!」
モノクマヘッド達を薙ぎ倒せど、次から次へと、何処からか沸いて出てきては容赦なく拳銃に機関銃と振りかざし、引き金を引き、その弾丸を大神さくらに浴びせ続けた。
大神さくらは身を呈して朝日奈を庇い、退路を作る。
立ち往生し、絶命する瞬間まで。
「不二咲!!不二咲……!!」
「不二、咲君……!」
「ご、め……お、おわだ、く……ん……いし、まる、く」
「クソッタレが……クソがぁあああああ!!!」
「よせ!!兄弟!!」
不二咲もまた、逃げる背中を弾丸に貫かれ、激昂した大和田と石丸らにもまた、無慈悲な弾雨が降り注ぐ。
抗う術もなく、ただ、死に絶えるまで。
「こんな、ことが……び、ちぐそ、が」
「やす、ひろ……殿……」
誰もが、撃ち抜かれていく。
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- 18 : 2016/07/26(火) 00:40:02 :
山田も、セレスも、
「は、は……そう、だ、こりゃ………きっと、……タチ、のワリィ……悪夢……」
桑田も、
「……舞、園、さん」
「な、えぎ、くん……たすけ………」
舞園も、
皆、死んだ。
-
- 19 : 2016/07/26(火) 00:40:50 :
-
*
結局、原因こそは変えられても、結果を変えることが出来なかった。
コロシアイ学園生活こそは無くなったが、それはただ虐殺という記録に変わっただけだった。
そうして生き残った面子は、駆け付けた未来機関に保護され、そうして苗木誠はまったく同じ様に史実を辿り、そうしてまた、
あの拷問器具の様な椅子の前に立つのだ。
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- 20 : 2016/07/26(火) 00:42:20 :
2.
あの日を繰り返した。
3.
あの日の繰り返した。
4.
あの日を繰り返した。
5.
何度も、
6.
何度も、
7.
なのに、
8.
なのに、
9.
なのに、
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- 21 : 2016/07/26(火) 00:43:03 :
10.
それは変わらない。
幾度なくアトラクタの変動の為に過去へと干渉し続けたのに、何一つ結果は変わらない。
11.
殺した。
12.
殺した。
13.
殺した。
14.
殺した殺した殺した殺した殺した殺した。
15.
何一つ、変わらない。
16.
17.
18.
・
・
・
-
- 22 : 2016/07/26(火) 00:45:45 :
・
・
・
0.
「……ねえ、盾子ちゃん、そのノートは?」
「あー?なんだよ残姉、興味あんの?」
「少し」
「これは、まあ、簡単に言うとタイムスリップ出来るって事を書いた夢みたいな実験方法の仕方を記したノートよ」
「へえ、凄い。本当だったらノーベル賞とか取れちゃうね」
「そんな事あるわけねーだろ、時間遡行なんて絶望的に良いもんじゃないよ」
「なんで?」
「いいか、時間を遡った所で、史実を大きく変えることは出来ない。原因は違えど、結果的に今に帰結するからだ。束ねた紐が1本の括りで1つに集束するのが時間の概念だから」
「バタフライ効果なんて、実のところ在りはしないのさ。蝶の一片が嵐になるには、世界は些か頑固過ぎる」
「……?よく分からない、ごめんね」
「んじゃ聴くなよ……まあ、このノートが『見つかる』か『見つからない』ってパラレルは存在するかもね。でも、その分岐点から先はどう足掻いても変えることは出来ない。それこそ何千何万、何兆何京とやった所でね」
「どうがんばっても?」
「ムリだね、数多の原因があれど、結果は集束して同じ未来が訪れる。幾分かの改変は出来ても人の生き死になんかの大きな改変は到底不可能さ」
-
- 23 : 2016/07/26(火) 00:51:09 :
「そもそも、そのノートはどうしたの?」
「超高校級の量子力学者……なんてのは確かに居たけど、このノートを書いたの私。まあそうね。これを『見つけて実行した』奴にちょっとした絶望を与える為に書いたんだけどね」
「絶望?」
「これを基に機械を作ったら最後、その被験者の
『個』は確実に絶望する、どんなに諦めの悪い奴でもね」
「欲に駆られ、希望を求めたら最後、ソイツの記憶はそこを永遠にループし続ける」
「機械が作られればきっと、何度も何度もソコに座ってしまう。次はきっと、次こそ必ず……というより、それを何百と繰り返す内にパブロフの犬になっちまうのさ」
「条件反射ってこと?」
「そ、何千と繰り返した後に『なぜ過去を繰り返すのか』という当初の目的すら忘れるだろうね。人間の記憶容量なんて、140年ぽっちなんだし」
「『最後の無い最期』……永遠に矛盾していく記憶の交錯、とても素敵な絶望だと思わない?」
-
- 24 : 2016/07/26(火) 00:52:40 :
503248.
年数にしてもう幾つになるのか、もう解らない。
きっと、このタイムリープなんて無かった未来もあるのだろう。そっちの苗木誠は生きているだろうか。
……苗木誠は、
ボクは、このずっと繰り返す時間の中に取り残されてしまった。
何の為に、この時間を繰り返すのかすら忘れた。
それでも、あの拷問器具の様な椅子が、ボクを掴んで離さない。
過去を繰り返すことこそ、ボクのルーチンワーク。
籠に捕らえられた蝶は、自由を奪われ、羽ばたきを忘れ。
唯、籠の中で永久を彷徨う。
終
-
- 25 : 2016/07/26(火) 00:57:28 :
- ここまで読んでくださって有難うございます。
1度やってみたかったのがBAD ENDなんです。
チムコ執筆陣の参加者様方お疲れさまでした。
そして審査の方々、頑張って下さい(ง ˙ω˙)ว
-
- 26 : 2016/07/29(金) 12:11:14 :
- なんか…「俺新訳ダンガンロンパ」の縮小版みたいだな。
めっちゃ世界観似てんだけど。
-
- 27 : 2016/07/29(金) 23:01:55 :
- >>26い、一応あれはハッピーエンドだし(震え)
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