曖言葉
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- 1 : 2016/07/22(金) 06:59:59 :
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※結京
※百合
結衣ちゃんのキャラソンのあいまいセルフを聴いて感動した勢いで書くつもりです
よろしくお願い致します
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- 2 : 2016/07/24(日) 19:01:38 :
『歳納京子です!』
本当驚いた。
耳を疑った。
『情熱の牡羊座!マイペースのB型!好きなものはミラクるんとラムレーズンアイスです!気軽にキョッピーって呼んでね!』
『皆よろしくねん!』
クラスの視線が京子に釘付けだった。
京子が謎の決めポーズをキメて自己紹介を終了すると、 クラスのざわめきが大きくなった。
"面白い子" だとか、
"明るい子" だとか、
"仲良くなれそう" だとか。
聞こえてくる。
自分を見てくるクラスの子に京子はいちいちピースやら変顔やらを返している。
そんな京子を見て私は暫く放心状態だった。
目を疑った。
本当に、京子、なのか?
泣き虫で、弱虫で、恥ずかしがり屋で、大人しくて、静かな…
それが京子だったはずだ。
今朝だって私に"同じクラスになれるか" "友達出来なかったらどうしよう" なんて泣きついてきたんだ。
とても本人とは思えない。
思う事がありすぎて頭真っ白状態の私は自己紹介が自分の番だった事に気付き、名前や好きなものなどを適当に述べてさっさと済ませた。
そして再び錯乱状態に陥る。
クラス全員の自己紹介が終わり、視線が担任の先生へと集まると、京子は隣で溜め息をついた。
私はまた驚いた。
京子の手がカタカタと震えていた事に気が付いたのだ。
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- 3 : 2016/07/25(月) 16:19:00 :
京子は今にも泣きそうだった。
ていうか、本当泣くんじゃないかと思った。
私は京子に「おい────」と言い掛けて、気付いた。
もしかして京子は、彼女は今"変わろうと"しているんじゃないか、って。
今ここで声を掛けたら────私は京子の成長の邪魔をする事になるんじゃないのかと、気付いた。
非情だと思いながら、私は京子に声を掛けるのをやめた。
なんだか、辛かった。
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- 4 : 2016/07/25(月) 16:38:54 :
それから京子は、変わっていった。
あれから担任の先生の話が終わって休み時間になると、京子の周りには数人の女子が集っていた。
京子は数人の女子の問い掛けに訳のわからないポーズで応えていたり、たまに変顔を見せていた。
私はそれを、隣から見ていた。
『友達、いーっぱい出来ちゃったぜー、結衣っ!』
帰り道、京子は私に誇らしげな笑顔で自慢をしてきた。
どうやらあの様子だと、クラスのほとんどと友達になれたようだ。
私は京子が一人でどんどん友達を作っていく事に驚いた。
…話し方や口調が変わった事にも驚いた。
顔付き、というか面持ちが変わった事にも。
京子に言いたいことは沢山あった。
訊きたいことばかりある。
『ん?おいどうしたよ結衣、今日はコサックダンスしながら帰んないの?』
…"変わろうとしている"、"成長の邪魔"。
『いつもしてねえだろ。』
と、京子に軽くチョップをした。
あえて私は訊かなかった。
触れないようにした。
京子もそれを望んでいるように感じたから。
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- 5 : 2016/07/25(月) 16:43:35 :
でも、なんでだろうな。
京子は今、変わろうと頑張っている。
それは本当に素晴らしくて、誇らしい事だよ。
応援、しなくちゃいけないのに。
なんだろうな。
なんだか昔のことがまるで無かったことにされてるようで。
少し… 寂しいんだ。
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- 6 : 2016/07/25(月) 16:59:45 :
それからは毎日が新鮮だったけど、次第に慣れていった。
放っておくとすぐ暴走する自由人な京子に、程よくストップをかけて程よくツッコミを入れる私。
あかりは最初は凄く驚いていたけれど、徐々に空気を読んだのか、普通に受け入れてくれた。こんなに空気の読める小学生、どこにもいねえよ。
確か入学して間もなく、京子が廊下で鍵を拾ったんだっけ。
懐かしいな…京子が勝手に校長室を開けようとしたときは本当、ヒヤヒヤしたな。
それで結局は茶道部に行き着いて、
『結衣、作ろうぜ。私たちのごらく部を』
なんて訳のわからない事を言ってさ。
当の私は結構面白そうだなんて思っちゃったりして。
『…しょうがないな、京子は。』
なんて言葉でどうしようもない京子を結局は止められないんだよ。
本当にどうしようもない奴だよ…。
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- 7 : 2016/07/25(月) 17:12:18 :
─────────
─────
───・・・
「────おい、結衣ってば、起きろよ」
「あ…?」
パンダのパジャマに、目の前にはテレビのゲーム画面、隣には京子が私の背中を揺さぶっていた。
「あれ、私いつから…」
「ちょっと仮眠とるって言って40分くらい寝てたよ?疲れてた?」
「いや…そんなんじゃない、はずだけど」
「結衣が寝てる間にボスに4回倒されたよ。 お詫びとして何か食わせろ!腹減った!」
「いや、色々おかしいだろ…まあいいか、私もお腹空いたし。 何がいい?」
「ラムレーz 「却下で」
「…オムライス」
「はいはい」
夜の8時、って事は7時過ぎくらいから寝てたのか、私…。
なんだかとても長い夢だったな。
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- 8 : 2016/07/25(月) 17:18:44 :
「そろそろ寝よっか」
「そうだな」
オムライスを食べ終えて、ゲームをしたり漫画を読んだりして日付がもう変わってしまった頃、部屋の灯りを消す。
そして私たちは、布団に入ってしばらく黙る。
毎回これを繰り返す。
「…なあ京子」
「なんだね?」
「私さっきさ、夢見たんだ」
「乙女だね」
「違うわ」
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- 9 : 2016/07/25(月) 17:21:53 :
「で、何の夢さ」
「昔の夢」
「昔?」
「私たちが、中学に入学した頃の夢」
「ふうん。 …ねえ、どんな夢だった?」
「普通だった」
「普通?」
「うん。 普通に、 …寂しかった」
「え?」
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- 10 : 2016/07/25(月) 17:31:40 :
「京子、あのさ」
「うん」
「今だけの話だよ」
「うん」
京子はこういう時らしくもなく優しく返事をするんだ。
「…どうしてあの時、自己紹介の時に、無理、したんだよ」
「!」
「私知ってるよ。 京子の手震えてた」
「…」
「泣き出すんじゃないかって、心配だった」
「声…掛けてあげたかった。 でも…京子の邪魔なんて出来ない」
「京子は変わろうとしてるのに…"大丈夫か"、なんて慰めたら、京子の為にならない」
「…」
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- 11 : 2016/07/25(月) 17:44:12 :
「応援しなくちゃ…って思うんだ」
「京子はどんどん友達作っていくし、皆のムードメーカーって感じになっていってさ」
「もう私だけが知ってる京子じゃなくなって」
「皆の知ってる京子になっていくんだ」
「…」
「それが逆に不安なんだよ」
「本当は泣き虫で、誰よりもいちばん傷つきやすくて、弱いのに…。」
「私はそーゆーとこ、本当は変わってないんじゃないかって思うんだよ」
「…」
「なのにお前は過去 をなかったことにしようとしてるんじゃないかってたまに思うんだ」
「守ってやらなくちゃ 、って思うのは、私の、わがままかな」
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- 12 : 2016/07/25(月) 17:50:54 :
「なあ京子、どうしてあんなに勇気を出してまで自分を変えようとしたんだよ」
なんだか京子を責めるような言い方をしてしまった。
京子、聞き飽きて寝てるかな…。
すると、もぞもぞと京子は私の方を向いてようやく口を開いた。
「やっと結衣、話してくれた」
暗くてよくわからないけれど、なんだかとても優しい表情をしていた。
まるで昔のような。
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- 13 : 2016/07/25(月) 19:44:59 :
「京子…。」
「理由なんて単純だよ、結衣に守られてばかりじゃ迷惑だって思ったんだよ」
「え…」
「でもさ、結衣がそんな風に思ってくれてて…わ、たし…っ」
京子は泣いた。
"らしくもなく" 泣いた。
「わがままなんて言わないでよ、結衣ぃ…っ」
「迷惑だなんて思ってないよ、京子」
やっと吐いてくれた。
そんじょそこらの子なんかじゃ、絶対に気付けないんだ、こーゆーとこ。
「わかって、ほしか、ったの…」
「ちゃんとわかってるよ」
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