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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

この作品はオリジナルキャラクターを含みます。

機動戦士ガンダム ダーク・クロウ

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  1. 1 : : 2016/07/13(水) 01:23:32
    今までそこそこ温めてきた、機動戦士ガンダムのサイドストーリーです。
    時代は一年戦争です、SEED勢の方はお帰り下さい。
    随時更新していきます。
  2. 2 : : 2016/07/13(水) 01:37:23
    宇宙世紀0079、11月末にジオン軍によって決行された「ジャブロー強襲作戦」

    その地、ジャブローで補給を受けていたホワイトベース隊のモビルスーツ
    RX-78-2「ガンダム」の活躍によってジオン軍は撤退、ジャブローが制圧されることは無かった。

    しかし……

    それはガンダム一機だけの活躍ではなかった。
  3. 3 : : 2016/07/13(水) 08:26:12
    宇宙世紀0079、12月、ジャブローにて。

    地球連邦軍で少尉を務める、ヘンゼル・ヘルツは上官であるウィリアム少佐に呼び出されていた。

    「なぜ呼び出されたか、分かるか?」

    「いえ、検討もつきません」

    ヘンゼルはただ訳も分からず、ソファに座っていた。

    少佐は向かいのソファに座っている。

    ここは少佐の部屋だ。

    「では……つい先週、ジオン軍迎撃の指令が下されたのは覚えてるな?」

    「はい」

    「君がジオンに『斬撃の悪魔』と呼ばれたのもか?」

    「……はい」

    先週の事だ。

    ヘンゼルはジオン迎撃の際に、彼専用の真紅のジム・コマンドに乗り、敵を倒し続けた。

    主にビームサーベルを使っての戦いだった。

    ジオン兵士はその戦法に翻弄され、次々と命を落とした。

    更に、後の計測でガンダムに次ぐ撃破数だった事が判明したのだ。

    「実を言うと、君に託したい物がある」

    「それはなんですか?」

    「見せた方がはやい、付いてきてくれ」

    席を立った少佐に、ヘンゼルは付いて行った。
  4. 4 : : 2016/07/13(水) 08:45:09
    少佐に付いていく途中、ヘンゼルはあの時のことを思い出した。


    ビュイィン!!

    ビームサーベルを抜いた音が洞窟に響き、

    それに対抗するように、ザクマシンガンの音も響いた。

    しかし、その弾丸は一向に当たる気配がない。

    ヘンゼルは相手がどこを狙うかを見越し、正反対の方向に避けながら距離を詰めていた。

    距離が短くなると相手のモビルスーツ――ザクⅡ S型、指揮官機だ――との距離を一気に詰めて

    ビームサーベルでコックピットを突き刺した。

    「うがああぁああ!」

    為す術もなく命を落とした兵士は、モビルスーツの爆発によって、自分がさっきまで生きていた証さえ奪われた。

    それを支援射撃していた……それでも助ける事が出来なかった狙撃兵は、

    「真紅の悪魔……!真紅の……『斬撃の悪魔』!」

    そう言って撤退したのだ。

    しばらくしてジオンが撤退していることを無線で知らされた。

    相手はジオンだ、慈悲はない。

    逃げようとするジオンのモビルスーツ隊にヘンゼルが追撃をすると、

    「真紅!『斬撃の悪魔』だ!」

    とジオンは恐れて逃げてしまった。

    既にヘンゼルはガンダムに次ぐジオン中の噂となっていた。


    「着いたぞ」

    「え?」

    少佐の声で我に返ったヘンゼルがいたのは、格納庫だった。

    「これは……」

    「君なら扱えるだろう、と言っても予備パーツの流用だが」

    ヘンゼルの前には、ジオンに白い悪魔と恐れられたモビルスーツがあった。

    しかし、そのモビルスーツは白色ではなく真紅に染まっていた。
  5. 6 : : 2016/07/20(水) 02:37:37
    「乗り心地はどうだ?」

    「何か、あんまり変わらないような……」

    整備士が笑った。

    「そりゃ当然さ、予備パーツの流用なんだからな。
    コックピットはおろか胴体はまんまジム・コマンドの物さ」

    「そうですか……ガンダムなら違うと思ってたんですが」

    「まあ、仕方ないさ。その分の性能は、追加バックパックが補ってくれる」

    『ガンダム、カタパルトにどうぞ』

    「おっ、時間だ。初陣頑張れよ!」

    「分かってますよ」

    ガンダムがカタパルトに足を載せた。

    数時間前、ガンダムのテスト運用も兼ねて、
    ジオン基地の襲撃を命じられたヘンゼルは、コックピットの中で悩んでいた。

    「俺なんかに……ガンダムのパイロットが務まるのかよ?」

    ホワイトベース隊のガンダムのパイロットは少年と聞いていた。

    連邦最強のモビルスーツを扱っているのが少年だとは到底信じられないが、

    自分がそれに近い立場になって責任感が沸く。

    「上手く操縦してみせる…!」

    ガンダムのバックパックに、大型ビームライフルが取り付けられ、カタパルトがロックされた。

    『3』

    斜面型カタパルトのゲートが開いた。

    『2』

    外の空気が地下深くに流れ込む。

    『1』

    ガンダムの追加ブースターが起動し――

    『0!ガンダム出撃!!』

    「ヘンゼル・ヘルツ、ガンダム出ます!」

    瞬く間にガンダムの姿が消える。

    数秒もしない内に、地下から地上、そして空へ飛び上がったヘンゼルは、ジオンの基地へとブースターをフル稼働させた。
  6. 7 : : 2016/07/20(水) 02:51:24
    数時間後、ヘンゼルはブースターの燃料が底を尽きると同時に、目的に着いた。

    「ここを押すんだな」

    彼が、指先にある操縦レバーに付けられたボタンを、決められた順番で押すとブースターがパージされた。

    「画期的だ、ただ覚えるのが難しいな……」

    そう言っている間にも、ヘンゼルは操作をする。

    装備換装が行われ、大型ビームライフルを装備したガンダムは崖の上に待機した。

    ここからは基地が一望出来る。

    狙撃にはもってこいだ。

    「そろそろ爆撃が始まるな……」

    作戦内容は「ガンダムが専用装備で狙撃準備をし、その間に上空からミデアで爆撃。

    敵が混乱している隙に稼働中のモビルスーツを全て狙撃し、残りの歩兵を制圧。直後にミデアで脱出」といった感じだ。

    しばらく待つと、連邦のミデアが大量に来た。

    間もなくミデアから高性能爆弾が降ってくる。

    同時にヘンゼルもスコープを狙う。

    今彼が使っているライフルは、複数ロックオン、0.5秒に射撃。

    更に着弾までのタイムラグが短縮された物だった。

    故に重さが常識を逸しており、移動用ブースターを改良してようやく持ち運べるようになったのである。
  7. 8 : : 2016/07/20(水) 13:15:00
    ヘンゼルはスコープ機能を使わずに、サブカメラで基地をロックオンした。

    パッと見てガンダムには目がついているが、これはサブカメラである。

    基本はスコープに内蔵された機械で狙う――この際メインカメラのモニターが使われる――のだが、

    基地の状況を常時確認するためにも横のサブカメラ用モニターを使うことにした。

    この方が基地全体を見渡せる。

    実際メインモニターが基地全体を映している為、彼のやり方は正しいとも言えた。

    爆撃が終わってから、ヘンゼルは射撃を開始した。

    20秒もかからなかった。

    「凄い武器だな……だが」

    ビームライフルは追加エネルギーパックをも使い切っていた。

    「……捨てるか、本部、後で回収をお願いします」

    『承知した、引き続き基地を頼む』

    「了解」

    ヘンゼルはスラスターを噴射させ、崖から飛び上がった。

    そして追加バックパックに取り付けられた100mmマシンガンで基地を射撃しながら着地した。


    「爆撃までして来るとは、既に気付かれていたのか……!?」

    「どうしたらいいんですか!」

    「……仕方ない。アリス、ジャバウォックを使え」

    「無理ですよ、未完成です!」

    「構わん!この基地にあるMSはあれだけだ!あれを使う以外に手があるとしたら、それは降伏だけだ!」

    確かに言う通りだ。

    アリスは格納庫へと走った。


    途端に地面が揺れた。地震などの自然現象ではない。

    衝撃で転んだアリスが、後ろを振り向くと

    「あ、あぁ……連邦のモビルスーツ……!!」

    禍々しい雰囲気を放つそのモビルスーツは、V字型のアンテナを頭部に付けていた。

    あれは紛れもなく連邦の「白い悪魔」だ。

    ただその機体が真紅に染まり、白い悪魔と形が違うところが頭に引っかかった。

    しかしアリスは格納庫に走った。

    そこにあるのは、蒼いザクだった。
  8. 9 : : 2016/07/28(木) 04:53:46
    「OS起動……起動してよ!」

    彼女の問いかけにジャバウォックは答えない。

    「やっぱり未完成は……ん?」

    違和感を感じたアリスがコックピットから出ると、

    そこにはザクともグフともドムとも言えそうなモビルスーツがあった。

    「……何よこれ」

    それは異様な雰囲気を放っていた。

    濃い朱に塗られた機体は武士のような出で立ちだ。

    肩に付けられたナイフは使い捨てだろうか。

    ("これ"の事を聞きに戻る暇もないわね……)

    迷わずアリスはそのモビルスーツに近寄った。

    ハッチは開いている。

    中も普通のコックピットだった。

    「……これで性能がザク並だったらキレるわよ」

    彼女が中に入ると、待っていたかのようにモビルスーツが起動した。

    「え!?」

    『イフリート・ナハト改、スタンバイ』

    真紅の機体が胸部のダクトから排熱する。

    その姿は、『白い悪魔』に負けない禍々しさを放っていた。

    (す、凄い……!!OSがザクなんかとは全く違う!)

    『武装リスト、確認』

    「……はあ、ナイフとブレード2丁ね」

    アリスはボタン操作をして、MNP-80マシンガンを取った。

    (本当はジャバウォックのだけど……仕方が無いよね)

    その時だった。

    ガシャン!

    格納庫のドアが破られた。

    ガンダムがマシンガンを向けてきた。

    「……!!」

    撃ってきた。

    刹那、イフリートは横に避けてナイフを投げた。

    ガンダムの動きがピタリと止まる。

    このナイフは電気を纏っているようだ。

    「うわあああああああ!!」

    アリスはイフリートのスラスターを全力で稼働させ、
    機体ごとガンダムにぶつかった。

    「グッ!……」

    止まらないまま、二機は格納庫の外に出た。


    「このパイロット、上手い……!」

    謎のモビルスーツに圧倒されながらも、

    ヘンゼルはスラスターの向きを変えて、上手く相手だけを転倒させた。

    しかしそれも束の間、敵はすぐに立ち上がり

    ブレードを二本、背中から抜いた。

    「マシンガンじゃ物足りないか」

    ヘンゼルもマシンガンを捨てて、ビームサーベルを抜いた。

    しかし刀身は出さない。

    「いつでも来い……!!」

    「ああああああー!!」

    接触回線から聞こえた声は女だった。

    敵がガンダム一直線に刀を振り下ろす瞬間、

    ヘンゼルはビームサーベルを起動し、刀を弾いた。

    弾みで相手は刀を一つ落とした。

    すかさずヘンゼルはビームサーベルをしまい、

    刀を取った。

    「武装登録……サーベル!」

    『登録完了、使用可能です』

    刀の刀身が光る。

    「…………」

    「…………」

    両者無言のまま立ち尽くした。


    先手を切ったのはイフリートだ。

    ナイフを二本同時に投げて、どちらかを避けられない様にする。

    だがガンダムは刀で片方を弾き、もう片方を避けた。

    そしてその流れのまま敵に近づき、

    刀でイフリートの肩の一部を斬る。

    その瞬間、アリスの脳裏に少し前の記憶が再生された。

    真紅のモビルスーツが仲間を切り刻む。

    支援機に乗る自分はその瞬間を助けられず、ただライフルを覗くだけ。

    思い出した。

    奴は……

    「斬撃の悪魔ッ!」「…!!」

    背中に隠したナイフを後ろ手でガンダムに投げる。

    当たった。勝った。

    「仲間の仇ィ!!」

    刀身を横にして、ガンダムの腹部に振る。


    「!!」

    もう少しで斬られる、という所でガンダムの様子が変わった。

    『HADES スタンバイ』

    機体が一瞬にして赤い粒子を纏い、イフリートの刀を紙一重で避けた。

    途端にスラスターがフル稼働して、

    ガンダムはイフリートの背後に回り込んだ。

    「は、速……」

    「そこだッ!!」

    ヘンゼルは刀を大きく振った。

    アリスもまた、避けようとするが頭部アンテナを削り取られた。

    「あの時も今も…よくも仲間を……!!」

    両者は離れ、再び対峙した。
  9. 10 : : 2016/07/28(木) 05:02:27
    朝日が登り始めていた。

    ガンダムとイフリートはボロボロになりながらも戦い続けた。

    ガンダムはイフリートの左腕を削ぎ、

    イフリートはガンダムの顔部分を潰した。

    「少尉!作戦終了時間です、撤退してください!」

    「……了解」

    ガンダムはイフリートの隙を見て、ナイフを拾い相手に投げた。

    偶然にもイフリートのモノアイに命中し、イフリートは動かなくなった。

    「ヘンゼル・ヘルツ、撤退します」

    上空に迎えのミデアが来る。

    狙撃した崖の上に戻り、バックパックを付け直してからスラスターを稼働させ、ミデアに乗り込んだ。

    「ボロボロじゃないか、派手にやったな?」

    「申し訳ありません、少佐。
    ただ敵に新型がいたので……」

    「例の刀使いか、まあ君は良くやったよ」

    「ありがとうございます」

    「しばらく休め、次の作戦がある」

    「データ収集ですか?……あ!」

    「HADESの事か?」

    「はい、何なんでしょうか?あのシステムは」

    「私にも分からんよ、ただハッキリ言える事は、」

    「……」

    「あれはモビルスーツにもパイロットにも影響を及ぼす。使い過ぎは禁物だ」

    「……肝に銘じておきます」



    プロローグ 終了
  10. 11 : : 2016/07/28(木) 05:10:00
    第1話『Thunderbolt』
  11. 12 : : 2016/07/28(木) 05:28:09
    ゴォォ……ゴォォ……

    絶えず放電現象が起きるこの宙域で。

    この宙域の為にカスタムされたザクが、巨大なビーム砲を構えてコロニーの残骸を睨んでいた。

    途端に雷が起きて、それがデブリを通してある装置へぶつかる。

    デブリに紛れた、巨大なジオン製の蓄電器だった。


    「なあ、ダリル。知ってるか?」

    「……??」

    「この宙域を守る理由は、ここが唯一の補給路だからってだけじゃないらしいな」

    「どういう事だ?」

    「ここには巨大な蓄電器があるらしい。同時に放電も出来るらしい。
    んで、それは地球のとある基地に放電する為の物なんだ」

    「……それが理由になるのか?」

    「さあな、だがその基地には何かあるはずだ」

    「……新型兵器とか?」

    「ま!噂程度に覚えておいてくれ」

    「ああ……おっと、敵のお出ましだ」

    大量のサンダーボルト宙域仕様のジムがこちらに向かってきていた。

    ゴォォ……

    2/3←8/10

    2/3←9/10
  12. 15 : : 2016/07/28(木) 13:47:37
    アリスは夢を見ていた。

    洞窟の中で、仲間が次々とやられていく。

    (またこの場面……)

    何かの因縁だろうか、二度も会ってしまうとは。

    あの時と違って相手はガンダムだったが、彼女には分かっていた。

    近接武器を主流に戦うスタイル、真紅が映える機体、斬撃の悪魔だった。

    自分が怖気づいて逃げたところで目が覚めた。

    (ガン……ダム……)

    『アリス?もう出発するぞ』

    「今起きました」


    あの基地を出てから、長い間進んできた。

    もうそろそろジオンの基地に着くはずだ。

    「なあ、凄い話があるんだ」

    「なんですか?また試作機の話ですか?」

    「す、すまん……あれは予想外だった。
    ナハトが動いた上に、それをアリスが上手く使った。
    本当に運が良かったとしか言えんよ」

    「……それで、その話というのは?」

    「これから行く基地は、ある宙域から放電される雷を受け取る場所なんだ」

    「……宇宙から地球に放電なんか出来るんですか?」

    「理論上はな、ただ凄い量を蓄電してからの放電らしい。確か宙域での放電30回分だ」

    「それは凄いですね」

    まったく、この人はいつも噂話が得意だ。

    今回に限っては本当かもしれないが。


    「見えてきたな!」

    (本当に運がいい……地球にジオンの基地は少ないというのに)

    その基地にはアンテナの形をした蓄電器があった。

    ゴォォ

    2/3←9/10

    3/3←0/10
    ゴゴゴゴ

    宙域にて、蓄電器の放電機能が稼働した。

    同時に起きていた戦闘では。

    「トドメだ……!」

    「見えたッ!!」

    カチッ

    トリガーの音が鳴ると、ビーム砲が発射された。

    それはコロニーの残骸を通り抜けていき、

    「……!!」

    今にも仲間を襲おうとしているガンダムに……


    ズガァァァン!!


    当たらなかった。

    雷がビームを湾曲させた。

    「あ……!?」


    永遠とも思える一瞬のあと、

    「別格に遠いな……この距離で狙撃するとは……
    間違いねえな、お前だろう!」


    『義足野郎!!』

    狙撃に失敗した、有り得ない。

    「雷がビームを歪めるなんて、なんて強運なんだ!」

    ガンダムを救った雷はそのまま地球へと降りていき……


    「アリス、来たぞ!」

    「あ!」

    空から雷が降ってくる、勢いが少しづつ小さくなっているが、それでも来ている。


    ズガァァァン!!


    雷は基地にあった蓄電器に当たった。

    「本当だったろ!」

    「……凄い」

    これは気になる、トラックに載せたジャバウォックとイフリート・ナハト改の整備のためにも、一刻も早く基地に行かなくては。

    トラックはスピードを増した。


    『さて、次の任務だ。ヘンゼル少尉』

    「……はい」

    ヘンゼルはこの上ない恐怖を感じていた。

    (HADES……何なんだ……)

    あのシステムが作動すると、ガンダムは異様に能力を上げた。

    あたかも封印していた力を解放したかのように。

    『今回は宇宙に兵力を届けようとしているジオンの追撃だ』

    「その為にこんな物が?」

    ガンダムのバックパックにはガトリングが取り付けられ、

    手持ちのビームライフルは出力が強化されていた。

    『そうだ、ガトリングは敵の牽制。
    ビームライフルはロケットエンジン破壊のためだ』

    「……分かりました」

    昨日戦った新型はヘンゼルの乗るクリムゾンガンダム同様に、真紅に染まっていた。

    相手は『仲間の仇』とも言っていた。

    「……何を、忘れているんだ」

    『ガンダム、カタパルトへどうぞ』

    「ガンダム、出撃します」

    真紅が青空に飛び出した。


    「アリス……頼めるか?」

    「何をですか」

    「同志が宇宙に行こうとしているが……
    ガンダムが近づいているらしい」

    「……!!まさかあの時の……」

    「そうだろうな、ジャバウォックの調整はされているが……
    ガンダム相手ならイフリートがいいかもしれん」

    「……行きます!」

    アリスは立ち上がり、格納庫へ向かった。
  13. 16 : : 2016/07/28(木) 14:14:42
    先に着いたのはアリスだった。

    間もなくガンダムも着いた。

    「……昨日の新型か」

    『ジャブローでの仇は取るッ!』

    イフリートはブレードを抜いた。

    ガンダムもビームサーベルを抜き、

    刀身を形成した。

    『HADES スタンバイ』

    「「!?」」


    途端にイフリートとガンダムの両者は赤い粒子を纏い、ダクトから大量に排熱をした。

    『アリス!無事だな!?』

    「何が起きているんですか……!?」

    『……その機体はイフリート・ナハト"改"だ。
    少し特別なシステムを搭載している。
    もっとも連邦を買収して手に入れた物だが……』

    両者の真紅がより一層紅くなる。

    「これならやれる!」

    イフリートは目にも留まらぬ速さでガンダムに接近する。

    ガンダムも上に跳び、突進を避ける。

    しかし、着地したところにナイフを投げられた。

    「貰ったぁ!!」

    イフリートはブレードでガンダムを薙ぎ払う。

    しかし、ガンダムを斬る事はなくブレードをぶつけただけであった。


    『少尉!大丈夫だな!?』

    「……なんとか」

    『HADESが無かったら、今頃コックピットは貫かれていた……』

    (実体を無効化しただと…そんな馬鹿な…)

    敵は動かなかった。

    あえて、待っているかのようだ。

    ヘンゼルは立ち上がるが……


    シュッ


    ナイフを投げられた。

    「機体が……動かない……」

    『もらったぁぁ!!』

    相手はブレードをコックピット一直線に振ってきた。

    「もう……無理か……」

    その時だった。

    『HADES サブシステム スタンバイ』

    「え?」


    ゴォォォォ!!


    ガンダムは全身のスラスターを稼働させ、後ろに飛ぶ。

    「少佐!一体何が……」

    『……分からない』

    敵が向かってくる。

    ガンダムは応戦するため、突進する。


    ガッ!


    ガンダムが圧倒する。

    敵を押しながら、頭部バルカンを撃ち続ける。

    『なんで……どうして!!』

    「うぉぉぉぉぉっ!!」

    相手を蹴り上げたガンダムは、ビームライフルで狙いをつけ……

    「落ちろ!!」


    撃った。
  14. 17 : : 2016/07/28(木) 14:28:01
    『アリス!!』

    「クッ!」

    イフリートはスラスターを稼働させ、紙一重で避ける。

    無事に着地した。

    『後一分、防ぎ切ればいい!!』

    「一分……!!」

    アリスは跳び、回転しながらありったけのナイフをガンダムに投げた。

    かなりの数のナイフが当たった。

    しかし、相手はガトリングを掃射してくる。

    イフリートもそれを避けながら近づき、ブレードを投げる。

    それはガンダムの右脚に命中し、内部から切り裂き大破させた。


    『少尉!脱出しろ!!』

    「チッ!」

    ハッチを緊急開放して、ヘンゼルは脱出した。

    途端にミデアの絨毯爆撃が始まった。

    『走れ!あと少しで川がある!!』

    ヘンゼルが走り続けると、そこには崖があり下には川が広がっていた。

    『そこに飛び込め!』

    後ろを振り向いた瞬間爆発が起き、爆風に押されながらも彼は飛んだ。


    『アリス、爆撃が始まった!ロケットはもう出た!撤退しろ!!』

    「悪魔め!!この世から消えろぉぉッ!!」

    イフリートはブレードでガンダムを何度も貫く。

    機体のスパークが止まると、大爆発した。

    『アリスーー!!』

    イフリートも巻き込まれ、大破した。


    絨毯爆撃が終わった後、連邦軍の基地から増援が来た。

    しかしそこには、ボロボロのイフリートしかなかった。

    ガンダムは既に持ち去られていた。
  15. 20 : : 2016/08/29(月) 21:58:13
    第1話 終了
  16. 21 : : 2016/08/29(月) 22:25:09
    それから長い月日が経った

    連邦軍とジオン軍の最終決戦となるア・バオア・クーでの戦いも、今まで繰り広げられてきた戦争も、連邦とジオンの和平という形で全て収束した。



    宇宙世紀 008X

    「くっ……」

    機械の音が響く、それは起きたばかりの彼には頭が痛くなる程うるさいものだった。

    また意識が遠のく、そしてそのまま眠りについてしまう。


    「…丈夫で…か…………起き…ください……」

    「ここは……」

    眠りから目覚めるとそこは白い部屋だった。

    一般的なテーブルなどの家具が配置されている。

    自分は少し傾いたベッドに寝ていた。

    ここは病院だろうか。

    「良かった……!大丈夫ですか?自分の名前は分かりますか?」

    「俺は……あぁ…ヘンゼルだ……」

    「……なるほど、重度の記憶障害はありませんね」

    「何があったんだ……ジオンは…」

    「戦争は終結しました、和平という形ですが……あとその話で大佐が」


    コンコン


    病室のドアがノックされる。

    「どうぞ」

    「失礼します」

    それはどこかで見た顔だった。

    「先輩……!!大丈夫でしたか!?」

    思い出した、軍内部で後輩だったオブライエンだ。

    「大佐!病室では静かにしてもらわなきゃ困ります!」

    大佐……?こいつが?俺の後輩が俺の階級を超えたのか?

    「あ、すいません。ヘルツ先輩、大丈夫ですか?気分はどうですか?」

    「……なんとも言えないよ、戦争は終わったんだって?」

    「その通りです」

    「じゃあ……今は一体いつなんだ?宇宙世紀何年なんだ?」


    『宇宙世紀……0082です』


    「008……2!?嘘だ!3年経ったのか!?」

    「細かく言うと2年です……先輩が気を失ったのが0079の12月、今は0082の1月です」

    「2年も寝たきりか……」

    その話に看護師が入った。

    「ヘルツ中佐、軽度の記憶障害の可能性があります。最後に何があったか覚えていますか?」
  17. 23 : : 2016/08/29(月) 22:53:01
    「最後に見たのは絨毯爆撃をするミデアと、爆発するガンダムだ」

    「……つまり後ろ向きに川に飛び込んだんですね?」

    「どっちかというと飛ばされた感じだった。後ろを確認した一瞬だ、目の前が爆発したんだ」

    「爆風でそのまま後ろ向きに?」

    「そうなる」


    「ありがとうございます、記憶障害はないようですね」

    「…俺はどうやって連邦に見つけられたんだ?
    ジオンと作戦区域が重なっていたなら捕虜になっていてもおかしくはなかった。
    川に飛び込んだ衝撃でGPSも壊れていただろう」

    「そうですね、確かに発見にGPSは使用できませんでした」

    「川全体を捜索するのにも時間が掛かるからな……どうやって見つけた……?」

    「えっと………」

    「先輩、それは俺が答えます」

    「あぁ、すまない。気を悪くしないでくれ、看護師が知ってるなんて思っていた俺が馬鹿だった」

    「いえお気になさらずに……」

    「先輩、言い難いんですがあなたはジオンに発見されました」

    「は……?」

    「すみません、早く発見できなくて……」

    「…俺は……ジオンに何をされた?」

    「戦争が終わり、先輩が帰って来た時は傷だらけでした、ジオンどもは躊躇いなしに暴行したんでしょうね。
    そのせいでこんな昏睡状態に……」

    「そうだったのか……そういやお前、大佐なんだって?」

    「恥ずかしながらも……あ、先輩の階級も上げてもらうように頼みました」

    「…じゃあ俺の今の階級は?」

    「中佐です」

    「なんでそんなに上がれたんだ?」

    「その話も含め、ガンダムについて話します」
  18. 24 : : 2016/08/29(月) 23:01:50
    あの後、敵の新型にボロボロにされながらもガンダムは、手持ちのビームガンを撃ったんです。

    そのおかげか、離陸中のロケットの中央エンジン部に上手く当たって、ロケットはそのまま傾きながらコントロールを失い、地面に衝突。

    辺りを火の海にしました。

    まぁ、実を言うとあのロケットには追加の兵力が乗ってたんです、大量のゲルググが。

    それを止めたおかげかア・バオア・クーでの戦いも、見事勝つ事が出来ました。
  19. 25 : : 2016/08/30(火) 00:18:45
    「ふむ……だが考えてみろ、あの大きさのロケットにそんな兵力が入るか?
    そもそもゲルググって何だ?」

    「えっとですね、まずゲルググというのは宇宙戦に特化したジオンの新型MSです。それの試作機が十数機と、量産型ゲルググの設計図と完成した物が数十機あったんです」

    「設計図か」

    「大した設計図ではないんです、ただ単にここをこうすると材料の削減になる、とかそういう物で。
    でもアレが宇宙に打ち上げられていたら、とてもじゃありませんが勝てなかったでしょうね」

    「量産型とは言ってもそんなに強くないだろ?」

    「それはそうなんですが、問題は試作機なんです。
    今もまだ数機見つかってないんですが、かなり強い兵装を積んだ特務仕様だったんですよ」

    「……ほう、なるほど」

    「さて……これからどうしますか?」

    「……そうだな、戦争が終わったなら俺に居場所はない」

    「あ、そうでもありませんよ」

    「え?」

    「実はジオン軍にはまだ残党がいるんです」

    「……はぁ、だろうと思ったよ」

    「まぁあれ以来たくさんMSが作られたんですが、それでも勢いは衰えないものです」
  20. 26 : : 2016/08/30(火) 22:03:34
    超今更な話ですが、ご都合主義もあるかもしれないので注意してください
  21. 29 : : 2017/04/07(金) 23:37:39
    やってしまった。

    怒りのあまり無線にも気づかなかった。

    ロケットの防衛は失敗したようだ。

    しかも怒りをぶつけすぎたせいかガンダムにスパークが見え始めた。


    モビルスーツは機械だ。機械には大抵エンジンがある。

    このエンジンに衝撃を加えすぎると当然ながら爆発する。

    イフリートと互角に戦えるスペックのモビルスーツだ。

    無事では帰れないだろう。

    閃光が見え始め、私は…
  22. 30 : : 2017/04/07(金) 23:49:02
    ここから第二話です
    その前にモビルスーツの説明挟みますね
  23. 31 : : 2017/04/07(金) 23:51:43
    RGM-79G
    ジム・コマンド

    ジオン軍によるジャブロー強襲の際にヘンゼルが乗ったモビルスーツです
    トレードカラーである真紅に塗られています
  24. 32 : : 2017/04/07(金) 23:59:38
    MS-06 FS
    ジャバウォック

    アリスの専用機でした
    蒼く塗られており、通常のFSより若干スペックが高いです
    兵装は
    ・ザクマシンガン
    ・クラッカー
    ・ヒートホーク×2

    追加兵装
    ・腰部ミサイルランチャー
    ・腕部小型ガトリング

    このように多いです
    後々再登場します
  25. 33 : : 2017/04/08(土) 01:45:53
    RX-78-CG
    クリムゾンガンダム

    新型ガンダム(低コスト)です
    ジムコマンドをベースにしているので、とてもメンテナンスがしやすいです
    頭部はガンダムパーツなので弄らないようにされていますが、実際はHADESが入っているためです
    ヘンゼルの初陣は機体の性能だけでなくHADESの能力も測定するものでした
    何故聞かされなかったかは、簡単に言うなら「極限状態のパイロットにHADESを与えるとどうなるか」を検証するためです
    これはひどい
    上層部はヘンゼルを一つの命と考えていなかったようですね

    兵装
    ビームライフル

    一般的なものですが出力はビームガンほどです
    このままだとビームガンを持って行った方が良いですが、出力を変更できるようになっています
    最大出力だとロケットのエンジンを撃ち抜くことが出来ます

    ビームサーベル
    一般的なものです

    バルカン
    歩兵掃討に使えます


    バックパックに関しては特徴はありませんが、兵装に合わせて追加できます

    大型ビームライフルは0.5秒で射撃をし、複数ロックオンが出来るので殲滅と支援射撃に使われます
    しかしながらエネルギーの消費が激しいです

    ガトリングは後方射撃で支援と歩兵殲滅が出来ます
    フルアーマー・スレイヴ・レイスにも同タイプのが付けられていたような気がしますね

    追加ブースターは長時間の航空が可能です
    地上のモビルスーツに見つからずに敵基地に行けるので長距離任務には必ず使われます


    この三つを取り付けるためには追加バックパックが必要で、全て取り付けることも可能ですが、重くなるので使い物になりません
    なので基本、武器一つとブースターで出撃します


    HADES
    メインです
    ペイルライダーシリーズに搭載されていたものを裏ルートで取り付けたものです
    基本的な性能はHADESそのものですが、さらに危険な状態に陥った時のためにサブシステムがあります
    このサブシステムは名称が無いもののEXAMシステムです
    両方を起動するとパイロットにとてつもない負荷がかかります
    ヘンゼルが眠っていたのはこれも原因ですね
  26. 34 : : 2017/04/08(土) 02:01:00
    追記
    このガンダムには武装登録機能があり、敵の兵装を奪って使うこともできます
    劇中ではイフリートのブレードをサーベル枠に登録していました
  27. 35 : : 2017/04/09(日) 19:56:21
    MS-08TX/NC
    イフリート・ナハト改

    襲撃された基地にて研究開発されていた機体です
    兵装が投げナイフとブレードしかない代わりにスペックが非常に高いです
    クリムゾンガンダム同様HADESが搭載されていますがサブシステム(EXAM)は入っていません
    ちなみに真紅に塗られています
  28. 36 : : 2017/04/09(日) 20:50:53
    第二話


    「うぅ…」

    目が覚めた。

    「おい…大丈夫か?」

    女の声が聞こえた。

    「ここは…っ!」

    腹部に痛みが走る。

    「無理するな。まだ完治してない」

    「一体…何が…」

    「ここはジオンの海中基地。あんたは大怪我をしてここに運ばれた。
    ガンダムと戦ったんだって?詳しく聞かせてくれよ」

    目がやっと開き、声の主を確認できた。

    「…あなたは?」

    そう聞くと、女は片手を自分の腰に当てて答えた。

    「ナオミ・モリンだ。よろしく」

    「…よろしく」

    上半身を起こす。ここは病室のようだ。

    「そんで?どうだったよ」

    「…え?」

    「ガンダム」

    ナオミは目を輝かせていた。

    「これでも整備兵でさ、一応衛生兵と兼ねてやってんだけど、
    ガンダムの武装とかが気になるんだよね」

    「あの赤色のガンダムのこと?」

    「赤色か…白い悪魔と呼ばれているものとは違うタイプみたいだね。
    実際にガンダムは世界各地で目撃されてるから珍しくはないけど、
    戦ったってのはあんたが初めて。大体死んじゃうからね」

    「速かった…あと赤い粒子みたいなものを放ってた」

    「うーん…"えぐざむ"しすてむ?そういうのがあるって噂だけど」

    ガンダムの情報量は少ないようだ。

    「違うと思う…"HADES"って言ってた」

    「ん~?どうやってそれを聞いたの?」

    「私はイフリートってモビルスーツで戦ってて―」

    「イフリート!?マジで!?そっちも聞かせて!」

    「はぁ…?」

    「あっ…ごめんごめん。熱くなっちゃった。
    イフリートってのは、数機しか試作されてないレアなモビルスーツなんだ。
    どれもスペックが高くて、密かに知られてるのは汎用型のイフリート、
    格闘型のイフリート・ナハト、イフリート改だけ。
    現地改修された紫色のイフリートもあるって噂だけどね」

    「私が乗ったのはイフリート・ナハト改」

    「へぇ~、初めて聞くモビルスーツだね。それで?」

    「二回目に戦ったとき、『HADES スタンバイ』って聞こえて…
    そしたらガンダムもイフリートも粒子を纏って…」

    「"えぐざむ"の上位互換かな?"えぐざむ"が共鳴して発動するってのは聞いたことあるけど」

    「だからEXAMとかじゃないと思う」

    「うんうん…戦いはどうなったの?」

    「こっちが勝った…けどパイロットは逃げたみたいで。
    私はガンダムの爆発に巻き込まれて、気付いたらここにいた」

    「うんうん…情報ありがと。ところでガンダムがどうなったか知ってる?」

    「いや…」

    「ジオンが回収して、今はこの基地にあるよ。今朝来たから私はまだ見たことないけど」

    意外だった。憎むべき存在が自軍にわたるとは。

    「ガンダムが…!?」

    「まぁね。でも大事な頭部が壊れちゃってて、HADESは使えそうにない」

    「…頭にあるの?」

    「うん。"えぐざむ"がそうだったからね…っと、動けるようになった?」

    「少し楽になった…多分大丈夫」

    「良かった。じゃあこの基地の案内するから、ついてきて」

    アリスはベッドから起き上がり、彼女についていくことにした。
  29. 37 : : 2017/04/09(日) 22:16:14
    部屋を出ると廊下に出た。

    「今のが医務室。向かいは見ての通り壁。
    この廊下の部屋はこっち側にしかないよ」

    「壁の向こうは?」

    「岩。もう少し上に行けば海が見れるよ」

    「海…」

    「ここは病棟だから、格納庫に行こうか」

    また歩き始める。

    突き当りのエレベーターに乗ると、ナオミがボタンを押した。

    「病棟からは上からじゃないと出れないんだ。
    海中が見れるからいいけどね。」

    目的の階に着くと、窓のある廊下に出た。

    「うわぁ…」

    広い空間が窓の向こうに広がっていた。

    生き物が宙を浮いている。

    「初めて見たの?海」

    「えぇ…」

    「じゃ今度海水浴でも行こうか」

    「かいすいよくって何?」

    聞き慣れない言葉である。

    「水着を着て海で泳ぐこと、かな?」

    「へぇ…楽しみ」

    「それは良かった」

    突き当りに着くと、自動ドアを通った。

    少し広いフロアに出た。

    「ここがメインフロア、ここから各フロアに行ける。
    トラムターミナルが出来れば格納庫にすぐ行けるけど、今はちと長いよ」

    上階に上がり、自動ドアを通った。

    「ここからしばらく海を見ながら歩くよ。
    その間にあんたが起きるまで何があったか説明するね」


    「と、いう訳さ。分かった?」

    「えぇ…まさかジオンが負けたとは…」

    「私達は残党って感じだね。でも私は近いうち抜ける予定。
    あんたもそうした方が良いよ」

    「…何故?」

    「また戦争に巻き込まれるのは御免でしょ?
    とある山奥にひっそりとしたロッジがあって、そこで余生を過ごそうと思うの。」

    「余生って…まだ早いでしょ」

    「ははっ、まあね。だけど、私は戦場を自分の居場所にしたくない。
    あんたにもそうなってほしくないから、こう言ってるの」

    「そうね…仲間の仇を打ち取った時、それが私の最後よ」

    「相変わらずだね…逃げられたから仕方ないけど、無理しないでね」

    「ありがとう」

    突き当りに着いた。

    「ここからまだ廊下があるけど、窓から格納庫が見えるからさっきよりはいいよ」


    「あれは…!」

    見慣れたモビルスーツがあった。

    「ジャバウォックね。整備中よ」

    「形が変ね?」

    「ゲルググのパーツを流用してるよ。試作機の中に失敗作があったみたいでね、
    もったいないからこのジャバウォックに付けてみようってことになったの」

    「兵装は?」

    「ビームライフルとナギナタ、MNP-80型マシンガンとか。
    試作機からはミサイルランチャーを取ってるよ」

    「普通ね」

    「まあね。ただしスペックはケタ違いだよ。自動照準機能も最新版だし、
    地形順応も良い。海中から出撃できるレベルだよ」

    「へぇ~」

    その時、ブザーが鳴り響いた。

    『警告:連邦軍の新型と思われるモビルスーツがこの基地に接近しています。
    直ちに迎撃してください』

    「敵襲!?不味いね…急ごう!」


    「あなたがアリスですか?」

    「ええ」

    白髪で小柄の指令兵だ。

    「私はノア・モリン、姉が基地を案内したようですね」

    「ええ。お世話になったわ」

    「それは良かったです。では早速出撃してもらいますね」

    「乗るモビルスーツは…」

    「現在出撃できるのは、ジャバウォックか特務仕様のゲルググです」

    「ジャバウォックで出るわ」

    「分かりました。出撃ゲートでお待ちください」


    出撃ゲートに着いた。どうやらモビルスーツが運ばれるらしい。

    『スロット04のジャバウォックを出撃ゲートへお願いします』

    ガタガタガタガタ

    『出撃ゲート、ロック解除』

    自動ドアが開くと、すぐコックピットに繋がっていた。

    「しょっと…」

    ≪聞こえますか?ノアです≫

    「感度良好。聞こえるわ」

    ≪少し操作系統が新しくなっています。大丈夫ですか?≫

    「コツはもう掴んだ」

    ≪分かりました。出撃準備完了までお待ちください≫

    メインモニターが付く、カタパルトまで運ばれるようだ。

    ゴトゴトゴトゴトゴト…ガタンッ

    到着すると目の前のゲートが開き始める。水が流れ込むが下にある排出口に落ちていく。

    ≪出撃準備OK。出撃まで3…2…1…射出!≫

    「っ!」

    とてつもないGが身体にかかる。久々の感覚だ。

    スラスターを吹かし、水のカーテンを潜った。
  30. 38 : : 2017/04/20(木) 23:24:43
    宇宙世紀0081

    『本当にこんな所に敵の基地があると思ってんですかねぇ。司令部は』

    アクア・ジム2機と新型モビルスーツが海底を泳ぐ。

    「油断は禁物だ。この地域はまだ調査されていない」

    『何かあっても新型ガンダムがあるでしょうよ』

    「性能は未知数、俺に扱えるかすら不明だ」

    『そうは言ってもね…』

    「敵機確認!全機Aフォーメーションに移行しろ!」

    『了解!』

    1人分しか聞こえなかった。

    『…了解』

    しばらく経ってグレーテルも無線を入れてきた。

    これでフォーメーションが形成できた。

    「グレーテル。敵機の種類は?」

    『…データベース検索完了。ザクとゲルググのハイブリット機です』

    「現地修理されたようだな」

    『つまりは本当に基地があると』

    「でかした。これより本隊は敵機との交戦を開始する!応援が来るより早く撃墜せよ!」

    「「了解!」」


    「ロックオン…」


    遠くからビームが飛んでくる。

    「全機!回避!」

    『う、うぐあああああああああっ』プツン

    マイケルの通信モニターが反応しなくなった。

    すぐ隣で爆発が起きる。

    「マイケル!クソッ!敵機にスナイパー!目視できるか!?」

    『…無理です。ここは引きましょう』

    「そうは言われても!仲間を無駄死にさせるわけにはいかん!」

    ガンダムが突貫する。


    「ガンダムなんて私の敵じゃない!」

    アリスの乗るジャバウォックはビームライフルを連射した。

    しかし、ガンダムはそれを避けた。

    「そのまま避けなさい…そろそろ…!」

    スナイパーの光をいち早く目視したガンダムは回避行動をとった

    「そこ!」

    途端にジャバウォックはビームナギナタを起動し、ガンダムに振りかざす。


    「くっ!」

    『消えろ!』

    こちら側にナギナタを振ってきた敵は後ろに飛び退いた。

    直後にビームが目の前を通る。

    『敵スナイパーの排除を開始…発見、撃ちます』

    ズガァァン!!

    スナイパーライフルの音が水の揺れる音とともに聞こえた。

    直後に遠くで爆発が起きる。

    『隊長、"PANDORA"を…』

    「駄目だ!まだ不安定で使えない!」

    『そんなことを言っている場合ではありません。
    早急に敵機を撃破しないと応援が来ます』

    「クッ…」

    距離を取ったザクがビームライフルを撃つ。

    「流石に辛いか…グレーテル、海上にミデアを頼む!」

    『本部、回収及び帰投のためミデアを要請します…了解』

    「何だって?!」

    『本部は"PANDORA"のデータを持ち帰ることを望んでいます』

    「やるしかないか…!」

    『ご武運を、援護に回ります』

    グレーテルが後退する。

    「ハァ…ハァ……CPU正常、自律制御システム正常、EXAM正常、HADES正常、"PANDORA"システム、スタンバイ!」

    途端にガンダムの目が緑から赤に変色する。


    「この感じ…HADESと同じ空気…!?」

    アリスは身構える。

    『危険です!相手は新型ですよ!撤退してください!』

    「ガンダムは敵…だから倒す!」

    ビームナギナタを2つに割り、二刀流にする。


    両者は対峙した。2年前のように。
  31. 39 : : 2017/05/24(水) 16:53:27
    先に仕掛けてきたのはガンダムだった。

    小型の盾を投げて、こちらの視界を遮ったのだ。

    「何を…!?」

    真上からビームサーベルを抜いたガンダムが迫る。

    HADESと似た何かだ。速すぎる。

    『帰還してください!』

    「無理よ!」

    ナギナタでそれを防ぐ。

    するとガンダムは自分のサーベルごとナギナタを吹き飛ばした。

    「ふざけんじゃないわよ!」

    アリスが蹴ろうと足を上げたその時、ガンダムに足元をすくわれた。

    「あ!?」

    海底に倒れる。すぐガンダムが来て、こちらを押さえつけた。

    『グ…ッ!!』

    「いつまでも私を苦しめて!この悪魔!」

    『ガンダムが恨めしいのか?』

    押さえつけながら相手は言う。

    「仲間の敵を絶対に取ってやる!斬撃の悪魔を殺してガンダムも壊し尽くす!」

    『ならせめて楽にしてやる』

    ガンダムはスラスターを噴射させ始めた。

    こちらの機体が押され始める。

    「何を…!」

    ガンダムがもう1つのビームサーベルを取り、コックピットに近づける。

    『どうか地獄ではなく天国に行ってくれ』

    「ふざけろ!」

    腰部に隠したミサイルランチャーを開く。自分もろとも破壊してやる。

    ボスッボスッボスッボスッボスッボスッ

    大量のミサイルがガンダムに当たる。

    『アリス!』

    ナオミの声が聞こえる。

    ふと横を見ると、ゲルググがこちらに来ていた。

    「ナオミ…?」

    『私達の英雄に気安く触れるな!』

    ナオミは大型ビームライフルを撃った。目標はガンダム。


    「増援か!」

    『十分なデータを取りました。帰投しましょう』

    「…ッ!」

    ゲルググから来たビームを避け、スラスターを噴射させる。

    「早く来い」

    『了解です』


    瞬く間にそこからいなくなった2機だが、海底には大破したジャバウォックと助けに来たゲルググが残された。


    海面から飛び出した2機は待機していたミデアに乗り込んだ。

    「よし…搭乗完了」

    『任務完了です』

    「そうだな、PANDORAのデータはどうするんだ?」

    『整備チームに任せてください』

    「分かった」

    システムの電源を切ったブルースはMSから降り、寝室へ向かった。

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レッドカッツェ(赤猫)

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