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  1. 1 : : 2016/07/10(日) 19:59:00
    チームコトダ祭の企画SSです!

    こちらBチームこと"高嶺のチム古参"の次鋒です! 公平に審査する為、匿名での投稿となります!

    お題は「ミステリー」 キーワードは「希望絶望」となります!

    >>2よりSSを開始します!
  2. 2 : : 2016/07/10(日) 20:02:28
    目覚めるとそこは教室だった。

    「…………」

    「……ここ……は……」

    見覚えのない教室。

    さっきまで授業していたという雰囲気でもない。

    「…………」

    何か胸騒ぎがする……。

    何かが起こる……直感的にそう感じた。

    とりあえず立ち上がって教室内を見回すが、何も変な物は見当たらない、至って普通の教室だ。

    そして歩き回っているうちに、外から声が聞こえた。

    ドアはもしかしたら鍵が掛かっているのではと思ったが杞憂だった。ドアはあっさり開き、明るい廊下が目に飛び込んで来る。

    教室を出て廊下を進み、人の声がする方へと歩いて行こうとする。

    ガラッ

    「あれ? 君は……?」

    隣の別教室から、一人の少年が現れた。

    「……あなたは?」

    苗木「あ、ボクの名前は苗木誠」

    目の前の少年はそう答えた。

    霧切「……霧切響子よ」

    霧切は一言で済ます。

    霧切「あなたも今目が覚めたの?」

    苗木「う、うん……。気付いたら教室で寝ててさ……」

    霧切「そう」

    苗木は自分と同じ境遇のようだ。ならばなにか情報を得られる可能性は低いだろう。霧切はそう判断して、さっさと声がする方向へ歩いて行った。

    苗木「あ、待ってよ霧切さん!」

    苗木も小走りでついてきた。


    【寄宿舎 1F】


    扉の向こうには、大勢の人が待ち構えていた。

    「……む? また誰か来たな?」

    「そろそろ波も治まってきたようですし、自己紹介を始めてもよろしい頃合いなのでは?」

    「……うむ、よし! いいだろう! これより自己紹介の開始を宣言する!」

    「……別にわざわざ宣言しなくてもいいわよ……」

    石丸「僕の名前は石丸清多夏! 座右の銘は質実剛健! よろしく頼むぞ!」

    大和田「大和田紋土だ。よろしくな」

    舞園「舞園さやかです。よろしくお願いいたします」

    桑田「オレは桑田怜恩だ! よろしくな!」

    山田「拙者、山田一二三と申す。もしくは、『全ての始まりにして終わりなる者』と呼んでいただいてもかまいませんぞ」

    大神「我は大神さくらだ」

    朝日奈「朝日奈葵っす! よろしくね!」

    江ノ島「江ノ島盾子。ってコトでヨロシク」

    戦刃「……戦刃むくろ」

    十神「俺の名は十神白夜だ。言っておくが、貴様らとなれ合うつもりはないからな」

    不二咲「え……えっと……あの……不二咲千尋ですぅ……」

    腐川「……どうせあたしの名前なんてすぐに忘れるんでしょうけど……腐川……冬子よ……」

    セレス「セレスティア・ルーデンベルクと申します」

    葉隠「オレは葉隠康比呂ってんだ。まあほどほどに頼むべ」

    苗木「ボクは苗木誠だ」

    霧切「……霧切響子よ」

    石丸「うむ! 総勢16名だな!」

    桑田「で? ここはどこなんだよ? オレ達はなんでこんなとこにいるんだ?」

    石丸「この建物の構造もよく分かっていないしな……。さっき階段を見つけた。きっと2階もあるんだろう!」

    大神「どうやらここはどこかの学校のようだ。であれば、3階以上もあると考えるのが自然であろうな……」

    石丸「よし! では、まずは我々の状況確認として、この建物を探索しようではないか!」

    石丸「しばらく探索したら、そこの食堂に集まって情報交換といこう! では一旦解散だ!」

    葉隠「十神っちとセレスっちはもうどっか行っちまったべ……」

    石丸「なんだと!?」

    朝日奈「……あの人達は自由だね」

    そしてそれぞれ行動を始めた。
  3. 3 : : 2016/07/10(日) 20:08:46
    【倉庫】


    霧切「……こんなところに倉庫が……」

    苗木「わっ!? ……あ、なんだ霧切さんか……」

    中に苗木がいた。

    霧切「苗木君? 何か探し物?」

    苗木「ああ……うん、何かないかなってね」

    苗木は倉庫の中を何やら探し回っているようだ。

    霧切「…………」

    苗木は身長が低めのようで、少し高い場所には背伸びしないと届かない。

    その時霧切は、苗木のポケットが若干縦に膨らんでいるのが見えた。

    おそらくペンかなにか入れているんだろうが……

    ポケットというものを意識した瞬間、霧切は自分のポケットにも何か入っていることに気が付いた。

    霧切「……何かしら……これ」

    ポケットを探ると、中には青い板のようなものが入っていた。

    スイッチらしきものを入れると、起動して大きく文字が表示される。

    『霧切 響子』

    そして、様々なことに使えるようだ。特にミニマップで建物全体を大雑把に知ることができる。

    ここは寄宿舎であり、人数分の部屋が用意されている。そして建物の名前は、希望ヶ峰学園というようだ。

    霧切「希望ヶ峰学園……」

    聞き覚えがある。あらゆる分野の超高校級生を集めた学園……。何故、どうやってここに来たのか、分からないことだらけだった。

    その手掛かりを掴む為にも、探索をすることが一番のようだ。

    霧切「……じゃあ、行くわね」

    苗木「うん」

    霧切は倉庫を出て行った。


    【脱衣所】


    霧切「あら、不二咲さん」

    不二咲「あ……こんにちはぁ……」

    霧切「不二咲さん、さっきみんなで自己紹介してたけど……それより前はしなかったの?」

    不二咲「えっと……うん。ちょっと混乱気味だったのもあるけど、どんどん人が集まって来て自己紹介する暇が無かったんだぁ……」

    霧切で波が止まったというわけだ。

    霧切「ありがとう。じゃ、頑張って」

    不二咲「うんっ」

    脱衣所を出る。


    【食堂】


    桑田「おう」

    桑田がいた。これから厨房に向かうようだ。

    桑田「ちょっと探索前に腹ごしらえってな。お前もか?」

    霧切「いえ。ちょっと寄っただけよ」

    桑田「そうか。んじゃあな」

    桑田は厨房に消えていった。


    【教室】


    最初自分がいた方じゃない教室。苗木が出てきた所だ。

    特に変わったところはないが……

    霧切「……これは……」

    1つだけ、机の上に赤い模様がついていた。

    血だ。

    一目見て分かった。

    霧切「……でも、出血量から見て致死量ではない……わね」

    血がついてるといってもあまり目立たない。それほど昔の血には見えないが、誰かがここで怪我でもしたのかあるいは……。

    霧切「…………」

    考えても仕方ないので霧切は教室を出る。

    その後軽く1階を回って、2階へ。


    【2階】


    2階に来てすぐ、朝日奈と大和田がいた。

    大和田「おう、えーっと……」

    霧切「霧切よ。ここは……プール?」

    朝日奈「うん。大和田体力ありそうだし、大和田と一緒にプールの中を探索しようって思って!」

    大和田「いや、プールの中に何があるっていうんだよ……」

    霧切「塩素かしら」

    大和田「あってるがそういうことじゃないだろ」

    ツッコミが早い。

    大和田「おら朝日奈。行くんなら早く行くぞ」

    朝日奈「うん。じゃあね、霧切ちゃん」

    2人はそれぞれ更衣室に入っていく。

    霧切は自分が泳げるかも分からないので、2人を見送って先に行く。


    【図書室】


    十神が本を読んでいた。

    十神「……何だ」

    霧切「……最初から探索する気がないのね」

    十神「自分の足でこの学園中を、何を探すわけでもないのに探索して回るなど、俺には合わないからな。後で貴様らの成果を聞いてやろう」

    教えてもらう態度ではない。

    十神「そういうことだからな、あいつらのように読書の邪魔だけはするなよ」

    十神は書庫を指しながら言った。

    霧切「?」


    【書庫】


    山田「おやこれは……またマニアックな本が置いてありますな」

    舞園「えっと……『異世界で無双しようとしたのに飛ばされた先は妹しかいない世界だった件』……?」

    山田「数々の奇を衒ったテーマのラノベが轟沈していく中、流行の斜め上をいった作品にも関わらずかなりの売り上げを記録した伝説の作品ですぞ。残念ながら出版数は少ないのですが……」

    舞園「へぇー。山田君ものしりですねっ」

    山田「グッフッフ。これくらいは常識の範囲内ですぞ」

    書庫なら何かしらの手掛かりは得られそうだが、ここは2人に任せて霧切は3階へ進んだ。
  4. 4 : : 2016/07/10(日) 20:16:41
    【3階】

    【娯楽室】


    セレス「雑誌があるのは良いのですが……これはまた次号が出るのでしょうか?」

    江ノ島「まぁ望み薄そうだよね。あんた何か雑誌とか読むの?」

    石丸「うむ。世の中の流れを知ることは大事だからな。時々購読しているぞ」

    江ノ島「へぇ~立ち読みとかしないんだぁ~。もしかしてぇ、エッチな雑誌とかこっそり買って読んでたりして! キャッ! 石丸クンのエッチ!」

    石丸「し、失敬な! そんな不謹慎な物は触れたこともない!」

    江ノ島「……そういう人がムッツリスケベだったりする世の中だから……もう何も信じられません……。はぁもぅマヂ無理。今DSの電源ぃれた。マリカしょ……ブォォォォォォン w w w w イイィィイイヤッヒィィィイイ w w w」

    石丸「待て江ノ島くん、戻ってこい! 人の話を聞けぇ!」

    セレス「ではわたくしは失礼しますわ。石丸君、江ノ島さんをよろしくお願いしますね」

    石丸「ま、まて! 置いていくな! 傍にいてくれ!」

    石丸の大声を背に、セレスと霧切は娯楽室を出る。

    霧切「セレスティア……さん? あの部屋には何かあった?」

    セレス「いいえ、特に。セレスで結構ですわ」

    霧切「そう、分かったわ」

    霧切「…………」

    突然、嫌な予感がした。何故だか胸騒ぎがする。

    下の階で……何かが起こる。

    霧切「……ちょっと見てくるわ」

    セレス「え? あの、霧切さん?」


    【1階】


    桑田「お?」

    保健室から、桑田が現れた。

    霧切「丁度良いわ。桑田君も来て」

    桑田「え? は?」

    セレス「道連れですわ。観念しなさい」

    桑田は訳も分からず連れられる。


    【脱衣所】


    苗木「……あ……み、みんな……」

    中には苗木と、イスの上で寝ている腐川がいた。

    桑田「ったく、一体何があるって……」

    脱衣所の床の上……


    不二咲が血まみれで倒れていた……


    桑田「……ッ!?」

    セレス「これは……」

    霧切「…………」

    霧切は不二咲に近寄る。

    凶器は何本もの鋭利なハサミ。まだ体は硬直しきっていない。血が広範囲にぶちまけられていた。かなり悲惨な状況だ。

    霧切「……不二咲さんは、ついさっき殺されたみたいね。犯人はそれほど遠くに行っていない。あるいは……」

    霧切「ここにいる誰かである可能性が高いわ」

    セレス「わたくし達の中に、人殺しがいる……と?」

    霧切「そういうことね」

    桑田「誰だ! 不二咲を殺したような奴は!」

    霧切「落ち着いて。まず、これまでに各自が何をしていたのか一旦整理しましょう」

    苗木「ボクはさっきまで倉庫にいて、次に脱衣所を少し調べようとして入ったら、既に不二咲さんがこんな状態で倒れていたんだ……。その後腐川さんが来たんだけど、不二咲さんをみるなり倒れちゃって……」

    苗木「それからしばらくして、霧切さんとセレスさん、桑田クンが来たんだよ」

    霧切「……倉庫から来た時、途中誰も見かけなかった?」

    苗木「えっと……白衣をまとった桑田クンが寄宿舎を出て行くのを見たけど……」

    桑田「なっ……!?」

    セレス「怪しいですわね」

    桑田「ち、ちょっと待て! オレはさっきまで食堂でメシ食ってたんだぞ!」

    セレス「あら。保健室から出てきたのはどちら様でしたっけ?」

    桑田「い……いや……食堂を出て、探索しながら進んでったら保健室に入るのは当然だろ!」

    霧切「不二咲さんのこの出血量からみて、犯人にも相当な返り血が付いたはずよ。苗木君が倉庫側から来たということは、個室で着替えることも、ランドリーで洗濯することも難しいでしょう」

    霧切「不二咲さんはさっき殺された。犯人がここから出た所で、苗木君に発見される可能性が高いわ」

    霧切「ということで、浴場とサウナを調べてみましょう」


    4人は浴場とサウナを調べたが、誰も見つからなかった。


    桑田「ち、ちょっと待てよ! そもそもここに苗木が最初に来たってんなら、苗木が一番怪しいじゃねえか!」

    苗木「うーん……。そうだな……。腐川さん、起きてくれる? 腐川さん」

    腐川「う……ぅん……?」

    苗木が起こすと、腐川が目を覚ました。

    腐川「あ……あれ? あたし……」

    苗木「不二咲さんの死体を見て気絶したんだよ」

    腐川「不二咲ぃ?」

    腐川「……!」

    腐川「お、思い出させないでよ!」

    理不尽だ。

    霧切「腐川さん。今まであなたが何をしていて、何を見たのか説明してくれるかしら?」

    腐川「わ、分かったわよ……」
  5. 5 : : 2016/07/10(日) 20:24:59
    腐川「……といっても、別に話すことなんかないわね……。探索が始まってからしばらく自分の部屋に引きこもってたわよ……」

    桑田「ニートめ」

    腐川「うっさい……!」

    霧切「続けて」

    腐川「それで……何もないし暇だったから……部屋から出て……ランドリーをちょっとだけ見て……」

    腐川「ランドリーから出たところで……なんか白い物が寄宿舎から出て行くのをみたけど……無視して、苗木もここに来てるのを見たから……便乗して調べに来て……」

    腐川「不二咲を……見て……気絶しちゃったのね……? あたし」

    桑田「いや聞かれても困るんだが」

    霧切「……でも、苗木君の話と一致するわ」

    セレス「その白い物が白衣だとしたら……」

    桑田「お……おい……」

    セレス「そういえば、白衣といえば保健室にありますわね?」

    桑田「い……いい加減にしろ!!」

    腐川「ひっ……!」

    桑田が急に怒鳴った。

    桑田「なんだよ! たまたま保健室にいたことが、そんなに悪いことかよ! っつーか今までの推理、全部全部ただの妄想じゃねーか! オレはなんもしてねーっつーの!! このアホ共が!」

    苗木「じゃあ、なんで白衣を着ていたの?」

    桑田「んなもん着てねーっつーの!! それに、このハサミはどうなんだ!!」

    苗木「保健室にハサミくらいあるはずだよ!」

    桑田「倉庫にだってあるんだろうが! しかもこの特殊な形状のハサミ、倉庫にしかありえねえ!」

    苗木「断言するよ、こんなハサミは倉庫には無かった! それに、ボクには返り血を処理する時間なんて無かったよ!」

    桑田「じ……じゃあ……霧切とセレスが……!」

    セレス「わたくし達が2階から来たのは、あなたも見たでしょう」

    霧切「それに、2階まで行ってわざわざここに戻るメリットなんてないわ」

    桑田「なら腐川が!」

    腐川「はぁ? ちょっと、人に罪をなすりつけないでよ……。出来るワケないでしょうが……。こんなハサミをどうやって個室から調達するのよ……」

    桑田「そうだ……! 苗木の奴が殺して、返り血のついた服は、その辺のロッカーに閉まってるんだろ!」

    苗木「調べてみる?」

    桑田は片っ端からロッカーを開けたが、何も出て来なかった。

    腐川「へ……へぶしっ!」

    腐川は大きくくしゃみをした。

    腐川「……ここ若干寒いわね。ロッカー開けて埃も舞ってるし……」

    セレス「さて、負け犬の遠吠えもここまでですか」

    桑田「く……くそ……!!」

    苗木「桑田クン……。もう分かっているんだ」

    苗木「これが……事件の全貌だよ」

    苗木「まず犯人は、食堂から保健室に向かったんだ。返り血を浴びても平気な……白衣を手に入れるためにね」

    苗木「保健室でハサミも入手し、脱衣所にいる不二咲さんを刺し殺し、犯人は急いでそこから出て、学園側へ向かった。だけど、犯人はミスをした。そこをボクと腐川さんに見られていたんだ。寄宿舎のホールは広いし、見通しがいいからね」

    苗木「その後、犯人は再び保健室に行って白衣を隠し、霧切さん達と合流したんだ……」

    苗木「そうだよね? 桑田怜恩クン」


    桑田「ち……違うって……! オレじゃ……!」

    セレス「これで終わり……ですわね」

    苗木「一応、桑田クンはボクが縛っておくよ。もう繰り返さないように」

    セレス「あら。都合良くロープならロッカーにありましたわね」

    抵抗する桑田の手足を縛り、不二咲の横に置く。

    桑田「お、おい! なんだよこれ!」

    セレス「不二咲さんの隣で反省しなさいな」

    桑田「お、おい! 冗談じゃねえぞ!」

    腐川「ふん……。良い気味よ……」

    霧切「じゃあ苗木君。見張りよろしく」

    苗木「あ、うん。分かった。桑田クンはボクが見張ってるからさ。みんなは学園の探索を続けてよ」

    セレス「そうしましょうか」

    霧切「……そうね」

    腐川「じゃ……頼んだわよ」

    セレス、霧切、腐川は脱衣所から出て行った。


    後でついでに調べてみると、保健室に血の付いた白衣は見つからなかった。

    しかし大したことも思いつかないまま言っても混乱させるだけなので、桑田には悪いが霧切は記憶に留めるだけにしておいた。

    あの少人数なら、いくらでも口裏合わせは通用する。腐川は狸寝入りしてたのかもしれない。桑田が本当に犯人かもしれない。セレスが罠でもしかけたのかもしれない。

    考えればどんなことでも通用してしまうため、霧切は無限に連なる考えを押し込めて、上へ進んでいった。
  6. 6 : : 2016/07/10(日) 20:28:08
    【2階】


    朝日奈「あ。おーい!」

    霧切、セレスが歩いていると(腐川は単独行動)、プール方面から朝日奈葵が現れた。

    霧切「朝日奈さん? どうしたの?」

    朝日奈「いやー、プールで泳いでたんだけど、大和田が筋トレし始めちゃってね。上に行くんでしょ? 一緒に行っていい?」

    霧切「ええ……。そうね、別に良いと思うわよ」

    朝日奈「?」

    多少危険かもしれなかったが、1人で歩き回るよりはお互いに安全だろうと思った。

    そして、3人は3階に行こうとするが……。

    「ゲラゲラゲラゲラ!!」

    霧切「ッ!?」

    セレス「!?」

    朝日奈「な、何!?」

    プール方面から響く、大きな叫び声に足を止める。

    「本当、いいオトコを殺るのって最っ高!! しかもあんな筋肉質な割に純情とか、もう殺るしかないって感じっしょ!! ゲラゲラゲラゲラ!!」

    声の持ち主が、姿を現した。

    霧切「……!?」

    朝日奈「あれ……? あの子……」

    「んあ? んだてめーらは。ナニモンだ?」

    現れたのは、性格はほぼ真逆だが、姿は腐川そのものだった。

    血だらけで、両手に細い金属……鋭利なハサミを持っていた。

    セレス「あのハサミは……」

    腐川?「あんたらみてーな対象外ウーマンズは相手するだけで面倒の極みっつーんだよ! さっさと視界から消え失せろ! 3分間待ってやる! ハイい~っぷん、に~ふん」

    霧切「朝日奈さん、セレスさん、逃げるわよ!」

    朝日奈「え、あ、うん!」

    セレス「…………」

    腐川?「さ~んっぷん!」

    ビュン!

    言い終わりと同時に、腐川のような人は腕を大きく降ってハサミを投げ始めた。

    3人の後を追うように、次々とハサミが壁に突き刺さっていく。

    腐川?「ゲラゲラゲラゲラ!!」


    【4階】


    1階違いは不安だったし、娯楽室だけは調べたのでもう4階まで行く事にした。

    霧切「はぁ……はぁ……」

    朝日奈「も、もう追ってこないよね……?」

    セレス「……霧切さん……今のは……不二咲さんを襲った……?」

    霧切「…………」

    霧切「……まだ決めるのは早いわ」

    朝日奈「ど、どういう事? 不二咲ちゃんが襲われた……?」

    セレス「説明するのは面倒ですので、後で自分で確認してください」

    朝日奈「ちょっと! すっごく気になんじゃん!」

    霧切「…………」

    霧切は再び、小さいが嫌な予感を感じた。

    下の階から感じるが、そこまで行くと再び狂った腐川に出会ってしまう。

    朝日奈「霧切ちゃーん! 早くー!」

    朝日奈とセレスは、また次の教室に向かおうとしていた。

    霧切「……ごめんなさい。ちょっと急ぐわ。私は先に上に行ってるから。お互い探索して後で合流しましょう」

    セレス「分かりました。ではわたくしは1人で結構ですので朝日奈さんは霧切さんについていってあげてください」

    朝日奈「うん! 分かった!」

    霧切「……まあいいわ。行きましょう」


    【5階】


    武道場、植物庭園、3つの教室に生物室。軽く見回るが、特に大した物は見当たらない。

    生物室がほとんど冷凍庫であるのは珍しいが、それ以外何も無い部屋だった。

    全ての部屋を調べ上げ、2人は下に下りていく。

    朝日奈「ねえ霧切ちゃん」

    霧切「何?」

    朝日奈「えっとさ、霧切ちゃんの名前って何だっけ?」

    霧切「響子……だけど」

    朝日奈「じゃあ、これから響子ちゃんって呼んでいいかな?」

    霧切「な、なんで……?」

    朝日奈「いやあ、ここに居る人達って癖の強い人ばかりでしょ? それはそれでいいんだけど……霧切ちゃん話しかけやすくて、これからも一緒に居ることが多くなりそうだからさ」

    霧切「……別に、好きにしたら?」

    朝日奈「うん! よろしくね、響子ちゃん!」

    霧切「…………」


    【4階】

    【3階】


    セレス「あら」

    セレスが階段の前で待っていた。

    霧切「ちゃんと探索した?」

    セレス「ええ。幸い部屋は少なかったので。ただ……」

    朝日奈「ただ?」

    セレス「鍵の掛かっている部屋1つだけあり、しかも先程、大神さんが科学室にいらっしゃったのですが……」

    セレス「あの腐川さんの事を話すと、制止も聞かずに去って行ってしまいました……」

    朝日奈「大神ちゃんが!? 大変! 怪我しちゃうよ!」

    霧切「どうかしらね……。それはともかく、様子を見に行った方が良さそうね……」
  7. 7 : : 2016/07/10(日) 20:37:13
    【3階】


    苗木「あ」

    朝日奈「あ、苗木だ」

    霧切「……苗木君? 桑田君はどうしたの?」

    苗木「いや……もう何も抵抗出来ないみたいだからいいかなって……」

    セレス「……まあ……いいでしょう」

    朝日奈「え? 何? 何のはなし?」

    セレス「そうですわ。苗木君、ここに来る途中に怪しい人はおりませんでした?」

    苗木「怪しい人? いや……見なかったけど」

    セレス「では、大神さんは?」

    苗木「大神さん? いなかったと思うよ」

    朝日奈「え? 大神ちゃんがいなかったの?」

    苗木「うん。一応全部の部屋を回ることにしてるんだけど……途中出会ったのは、葉隠クン、舞園さん、山田クン、江ノ島さん、石丸クン。それからそこにいる戦刃さん……かな」

    美術室から戦刃が顔を出していた。

    セレス「あら。ごきげんよう」

    戦刃「ご……きげんよう?」

    苗木「まあ、探索が終わったのなら、一旦食堂に集まって成果を話し合おうか。……今この学園で何が起きてるのかも知りたいし」

    霧切「……そうね」

    苗木「じゃあ、霧切さん達は手分けしてみんなを集めてきてくれるかな。戦刃さん。ボクらは先に食堂に行って準備してこよう」

    戦刃は頷いて、苗木と下に下りていった。

    霧切「時間かかりそうだし、2手に分かれましょうか」

    セレス「そうですわね」

    霧切「じゃあ、今度は朝日奈さんとセレスさんが一緒に行動していて。私は美術室の方を回ってるから、あなたたちの方が先に下に下りることになると思うから。念の為」

    朝日奈「うん、分かった」

    セレス「参りましょう」

    セレス達は娯楽室に入った。


    【美術室】

    【美術倉庫】


    中には誰も居ない。

    だが、誰かが探し物でもしたのかだいぶ荒れていた。

    霧切はついでに少し整理していく。

    霧切「……ん?」

    整理していると、紙が下敷きになっているのを見つけた。

    良く見ると、それは写真のようだ。

    それは、江ノ島が苗木にキスしている写真だった。

    霧切「……!?」

    背景として写っているのは、ここと変わらない学園……。ただ、2人とも同じ制服を着ていた。

    霧切「これは……一体……」

    とりあえず写真をしまって、

    美術室を出て行く。

    娯楽室をついでに覗くと、誰もいなかった。

    霧切「…………」

    霧切は何か小さな胸騒ぎ……というよりも、小さな不安を覚えた。

    2階に腐川がいるかもしれないという 恐怖心からだろうか。


    【2階】


    2階には誰も居なかった。男子更衣室やトイレなんかは見られなかったが、先にセレス達が全部回ったんだろう。

    一応霧切も一通り回り、食堂に向かう。


    【食堂】


    霧切「……意外と少ないわね」

    集まったのは苗木 腐川 葉隠 霧切 江ノ島 戦刃 セレス 朝日奈 石丸 舞園 山田の11人だ。

    朝日奈「いやーそれにしても良かったね。あの変な腐川ちゃんが居なくなってて!」

    腐川「……そ、そうね……」

    江ノ島「あーあ、アタシも見てみたかったなー。その狂人とやら」

    霧切「そういえば苗木君と戦刃さんは?」

    朝日奈「何か軽い食べ物を用意してくるって。戦刃ちゃんと厨房に行ったよ?」

    江ノ島「えー、あの残姉ちゃんが? 食べ物が真っ赤に染まるよ?」

    舞園「どうしてですか?」

    江ノ島「あの子、包丁持ったらまず指を切るから」

    セレス「それにしても、少ないですわね。死んでしまった桑田君や不二咲さんなどを抜いても、人数が少なすぎではありませんか?」

    朝日奈「しょうがないじゃん……どこ探してもいないんだから……」

    明らかに数が足りなかった。

    苗木「みんな、おまたせ」

    しばらくすると、苗木がリンゴや蜜柑などを持ってきた。

    江ノ島「あー果物かー残念。苗木君の手料理が食べられると思ったんだけどなー」

    石丸「さっきまで真っ赤な料理が出て来るなどと言っていた者のセリフとは思えんな……」

    石丸「……ん? 苗木くん。戦刃くんはどうしたのだ?」

    苗木「え? あとはもう運ぶだけだから、先に食堂に戻っててって言っておいたんだけど……」

    葉隠「いや、戦刃っちは来てないべ? まだ厨房にいんじゃねーのか?」

    石丸「よし、僕が見てこよう!」

    苗木「ボクも行くよ」

    2人は厨房に入っていく。


    【厨房】


    苗木「戦刃さーん?」

    石丸「戦刃くんどこにいるんだ! 早く出て来ないと、全部食べてしまうぞ!」

    ……しかし、いくら呼んでも探しても、戦刃は厨房にいなかった。

    石丸「……もしかしたら、我々が見ていなかっただけで、いつのまにか外に行ったのかもしれないな……」

    苗木「う、うん。じゃあちょっと探してみようか?」

    石丸「うむ! 何か意図がない限り、そう遠くへは行かないはずだ!」
  8. 8 : : 2016/07/10(日) 20:39:59
    【食堂】


    苗木「……というわけで、ちょっと戦刃さんを探しに行ってくるよ!」

    苗木と石丸とついでに葉隠と山田は、戦刃を探しに食堂を出て行った。

    朝日奈「……行っちゃったね。どうしようか?」

    セレス「思えば、この場にいるのは全員女子となりましたわね」

    江ノ島「葉隠と山田は完全にこの空気に耐えきれなくて出て行ったな」

    舞園「仕方ないので、私達だけで一旦報告会でも……」

    腐川「…………」

    霧切「…………」

    霧切は再び嫌な予感がした。不安になるのは当然といえば当然だが……。

    霧切「ちょっと行ってくるわ」

    様子を見に行くことにした。


    【2階】


    「うわぁぁあああああ!!」

    霧切「!」

    叫び声が聞こえて、一旦停止する。

    苗木「あ、霧切さん」

    苗木が霧切に気付いた。

    石丸の腕には小さな切り傷があり、苗木は左手にペンを持ち、右手にハサミを持っていた。

    ハサミは先端だけが赤くなっている。石丸は切り傷を追っているようだ。

    苗木「待ってて、すぐ終わるから」

    石丸「な……何がどうしたというんだ……!! 苗木くん!」

    バチッ

    バンッ!

    霧切「ッ!?」

    苗木のペンを石丸に向けると、石丸は一瞬の内に消え去ってしまった。

    少しすると、後ろから足音が聞こえてくる。

    苗木「……石丸クンの叫び声に集まって来たのかな」

    葉隠「どーすんだべ……? 中々めんどくせーぞ?」

    苗木「…………」

    苗木「霧切さん」

    霧切「……何?」

    苗木「これからボクが何を言おうが……ボクを信じて」

    霧切「…………」

    女子の集団が上がってきた。

    舞園「今……石丸君の悲鳴が聞こえましたが……大丈夫ですか!?」

    朝日奈「あれ? 石丸と山田は……?」

    苗木「みんな」

    苗木が少し大きな声で呼びかけると、辺りはしんとした。

    苗木「石丸クンと山田クンは……殺された」

    舞園「……こっ…………え?」

    朝日奈「な……何……言ってるの……?」

    江ノ島「説明してもらおうか?」

    苗木「男子更衣室の中でね。凶器はハンマー。犯人はどこからかハンマーを持ってきて、2人を殺したんだ」

    苗木「元々ボクらはここで2手に分かれて戦刃さんを探していたんだけど……。2人はプール方面を担当していたんだ。そうだよね? 葉隠クン」

    葉隠「あ、ああ。俺と苗木っちは一緒に図書室を回ることになったんだべ」

    苗木「扉を開けたまま中を調べてたみたいだから、声がよく聞こえたんだけど……」

    苗木「突然石丸クンの小さい悲鳴が聞こえて……慌てて様子を見に行ったんだ。すると……そこでは、既に山田クンが殺されそうになっているところだった」

    江ノ島「じゃあ、今から男子更衣室を見に行こうぜ」

    江ノ島はずんずん歩いていった。

    他の人達も、それに続く。


    【男子更衣室】


    中は血まみれになっていた。

    朝日奈「こ……これって……!?」

    苗木「2人が殺された痕だよ……」

    舞園「でも……血しかないですよ……。2人の……遺体は?」

    苗木「……分からない。ちょっと目を離した隙に消えちゃったんだ……。戦刃さんと同じように……」

    苗木「この更衣室を探索している間、2人は扉を開けっ放しだった。だから、女子でも入れたわけなんだ」

    苗木「犯人は最初から凶器を持っていた。それが、美術室から持ってきたハンマーだ。犯人は予めハンマーを隠しておいて、それを使ってさっき、2人を殺したんだよ……」

    苗木「そのような時間がある人……それを見られることは無かった人……。それは……」

    苗木「霧切さん。君だけなんだ!」

    霧切「……!」

    朝日奈「ま、待ってよ! おかしいって! だって……私と響子ちゃんは、さっきまで一緒に行動してたんだよ!」

    苗木「でも、食堂に来た時はセレスさんと2人だったよね? どこで分かれたの?」

    朝日奈「えっと…………美術室前……」

    苗木「つまり、霧切さんは2人と分かれた後、美術室のハンマーを持ち出し、誰にも見つからないように……多分女子トイレにでも置いたんだよ」

    霧切「……なるほどね」

    霧切「じゃあ、そのハンマーは今どこにあるの?」

    霧切には犯人は分かっている。

    ただの目撃を話しても信憑性は低いなら、まずは苗木の推理を崩す!
  9. 9 : : 2016/07/10(日) 20:48:27
    苗木「ハンマーは……消えちゃったんだろうね。戦刃さんや遺体と同じように……」

    霧切「消えたなんて……」

    苗木「無いとは言い切れないんだよ。みんなも知っている通り、戦刃さんも実際に消えちゃったんだ。犯人がそれを意図的にやったなら、消す方法というのも知っているはずなんだ」

    苗木「それとも、物を消せない証拠があるの?」

    霧切「…………」

    セレス「悪魔の証明ですか……これを提示するのは無理ですわ」

    霧切「……血よ」

    苗木「え?」

    霧切「物を消せるというのなら、なんで私はここにぶちまけられている血を消さなかったのかしら?」

    苗木「それは……男子更衣室を事件現場とすることで、自分を容疑者から外そうとしたんじゃないか!」

    霧切「ここに血が無ければ、そもそも苗木君の今までの話は全部嘘ってことになるわ。そこまで有効な手段を選ばないはずがないじゃない」

    BREAK!!

    霧切「それに……物を消せるなんてやっぱり非現実よ」

    葉隠「そいつは聞き捨てならねーべ!」 反論

    葉隠「……そうか、なるほど! 分かったぞ! これはつまり、UFOに連れ去られたんだべ!」

    朝日奈「はぁ? UFO?」

    葉隠「遺体もハンマーも……全部ミステリーによるものなんだ! 全ては宇宙の神秘的なパワーだべ!」

    セレス「くだらないですわね……」

    葉隠「100%無いとは言い切れねーべ!?」

    セレス「なんでもかんでも100%無いことは無いで通そうとすんな!!」

    霧切「……埒が明かないわ。一旦この件は保留ということにしましょう。まだ気になる点はあるのよ」

    霧切「返り血はどうするの? 私は全く血が付いてないわ」

    江ノ島「あっここに来る途中でこんなもん拾ったんだけどー」

    霧切「え?」

    江ノ島は、血で染まった白衣を掲げた。

    苗木「霧切さんは……それを着て、返り血を防いだんだね……!」

    BROKEN!!

    霧切「な……何を……そんなの全部デタラメよ……! 結局どれも、私がやったというしっかりした証拠にはならないわ!」

    苗木「やってない証拠もないんだ!」

    セレス「そればかりでは、一向に前に進みませんわ」

    苗木「じゃあ……みんなはどう思う?」

    苗木が、その他生徒に聞く。

    舞園「た……多数決……ですか!?」

    苗木「今までの話を踏まえて……怪しい方を選んで欲しいんだ。決められた方を……ここに拘束する。それでいい?」

    霧切「……分かったわ」

    霧切は分かっていた。自分が不利であることも、これら全て苗木の計算であることも。

    それでも、受けざるを得なかった。

    多数決の結果……

    腐川  霧切
    葉隠  霧切
    舞園  苗木
    セレス 苗木
    朝日奈 苗木
    江ノ島 霧切

    霧切だった。

    霧切は江ノ島によって即座に拘束された。

    苗木「じゃあ……舞園さん。霧切さんを見張っておいてくれる?」

    舞園「あ……は、はい」

    苗木「他のみんなは、食堂で報告会をしよう」

    苗木はみんなを引き連れて1階に下りていった。

    霧切「…………」

    舞園「あの……本当に霧切さんが……?」

    霧切「そんなわけないじゃない……」

    舞園「そう……ですよね」

    舞園「……苗木君は……何か企んでいるのでしょうか……」

    霧切「…………」

    さすがに勘づくようだ。霧切も大分勘づいていた。

    あんな推理戦のようなものは、ただの茶番だ。恐らく最初からあの結果は決まっていたのだろう。

    ただのパワープレイ。苗木が主導権を握り、周りの人々の人望を集めていた。よっぽどな証拠が無い限り、苗木の勝ちは決まっていた。

    ゴゴゴゴゴゴ…………

    突然地面が揺れ始める。

    舞園「揺れましたね。地震でしょうか」

    霧切「……さあね」

    霧切「………………」

    霧切は一旦落ち着く。

    この学園で何が起きているのか……誰が仲間なのか……

    記憶を掘り返し……頭で整理する……
  10. 10 : : 2016/07/10(日) 20:52:59


      隣の別教室から
         一人の少年が現れた
             あたしの名前なんて すぐに忘れるんでしょうけど……
    セレスティア       ルーデンベルクと申します
          この建物を探索しようではないか!           もうどっか行っちまったべ……
                    苗木君? 何してるの?           若干縦に膨らんでいる
            大和田と一緒にプールの中を探索しようと      
     異世界で無双しようとしたのに 飛ばされた先は妹しかいない 世界だった件
                         石丸クンのエッチ!     桑田怜恩クン
     んだテメーらは            響子ちゃん
            大和田が筋トレ  最っ高!!
                                   一旦食堂に集まろうか   
     江ノ島が苗木にキスしている写真         同じ制服
       ペン        ハサミ      パワープレイ      消す


    まず……さっきの苗木の行動から、苗木は他の生徒達を消そうとしている。そして、消す力を持っている。戦刃が消えたという話も、苗木の仕業なのだろう。人を消せるのは恐らく苗木だけ。それに苗木が人を消せる条件は、怪我している相手にペンのようなものを使うこと。

    恐らく怪我の規模は問わない。不二咲のように殺しても、石丸のように軽い切り傷でも、消すことは出来るのだろう。そうでなければ、次々と人を消してしまえばいい。

    戦刃は包丁を使えば自滅する。腐川似の狂人と大神をぶつければ、お互いにダメージを受ける。条件さえ分かれば、全ての辻褄が合うようだ。

    そして苗木には協力者がいた。それが恐らく腐川と葉隠だ。石丸も可能性はあったが今目の前で消された。江ノ島も、さっきの苗木への加担ぷりを見ると可能性はある。

    霧切達は最初、初対面だからこそ自己紹介をしあった。

    そしてこの3人は、知り合って数時間のみんなの名前を、あんな雑な自己紹介だったにも関わらず全員覚えていた。他の人達は、一緒に行動している人の名前をよく覚えているだけで、それ以外はうろ覚えの人が多かった。

    単に記憶力が良いのならいいが、葉隠はセレスのことを、そう呼んで欲しいと言われる前からセレスと呼んでいた。材料が少ないから多少強引だが、苗木と葉隠が一緒に石丸を消していたことからそれは裏付けられている。

    そして霧切は恐らくそれの対象外。何度か霧切を消すチャンスはあったが、霧切を消そうとはしなかった。今の霧切の状況はともかく、本気で消そうとは思ってないんだろう。
    きっと、霧切は苗木側の人間なんだろう。苗木が何をしているのかはしらないが、霧切は苗木の味方であるはずだと思えた。

    この学園や霧切自身にもまだ秘密があるように思えた。


    霧切「…………っ!」

    霧切は突然頭痛がした。

    舞園「だ、大丈夫ですか?」

    霧切「……ええ」

    すぐに頭痛は治まったが、最悪の気分だ。

    相変わらず地震は続く。

    霧切「ねぇ」

    舞園「はい?」

    霧切「これ、解いてくれる?」

    舞園「え……えっと……」

    期待はしなかったが、霧切は舞園に聞いた。

    霧切「…………」

    ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………!

    舞園「きゃっ」

    一際大きな地震が襲ってきた。

    舞園は横にゴロンと転がり、霧切はバランスを崩して前に倒れる。

    霧切「……あら?」

    見てみると、いつの間にか手がロープから離れて自由になっていた。

    舞園「いたた……。あれ、霧切さん? いつのまに抜け出したんですか!?」

    霧切「……分からないわ」

    さっきまで霧切を縛っていた物は、そのままの形で残っている。どんな手品だ。いつの間にか縄抜けの術を習得していたのか。

    ともかく霧切は脱出して、食堂に向かって走った。

    自分の考えを披露して、苗木に問い詰める。

    この不自然な地震や、殺人や、自分がここにいることさえ、苗木が原因である気がしてきた。
  11. 11 : : 2016/07/10(日) 20:59:46
    【食堂】


    食堂の中はかなり荒れていて、セレスと朝日奈が傷だらけでしゃがんでいた。

    そのすぐそばで二丁の包丁を構えた江ノ島、ハサミを構えた腐川が立っていた。

    見るに、腐川と江ノ島が、2人に危害を加えているようだった。

    霧切「あの腐川さんは……違う方の……? というより……」

    霧切「私が前に出会ったあの狂った腐川さんとも……普通の腐川さんとも……違う……別人……?」

    明らかに雰囲気が違った。いきなり暴れ狂うこともなく、服に血もついていなかった。

    葉隠「ったく、ジェノサイダーの奴が男ばっかし狙うから、最後に女ばっか残ってんじゃねーか……」

    霧切「……ジェノ……サイダー……?」

    ジェノ「だって、あのロリッ娘が男の娘であることを聞いたらもう殺っちゃうしかねーじゃん? なんか近くに野球少年がいたから殺るしかねーじゃん? 心が純情なムキムキ男とか最高じゃん? 殺るしかねーじゃん?」

    葉隠「そんな感覚の共有を俺に求めんなって!」

    ジェノ「っつーかさ、オーガちんを消したのはアタシじゃなくて、アタシのNPCだってーの! しかも消した張本人はまーくんであって、アタシ自身殺したのは、ちひろきゅんとモンキー君だけよ!」

    葉隠「大和田っちを猿みたいに言うなって! 分かりづれーじゃねーか! しかもやっぱ全員男だしよ!」

    ジェノ「うっせーアタシの美学に口出しすんな! 殺すぞ!」

    葉隠「すみませんでした! 許して下さい! なんでもするから!!」

    江ノ島「もうちょいプライド持てよ」

    苗木は、朝日奈にペンを向ける。

    朝日奈「な……苗木…………あ、あんた……一体……なんなの…………?」

    苗木「ただの、プレイヤーってとこかな?」

    バチッ

    バン!

    朝日奈は一瞬で消えた。

    セレス「…………」

    苗木「さて、次」

    セレス「……抵抗しても無駄……ですわね」

    苗木「そうだね」

    バチッ

    バン!

    セレスも一瞬の内に消える。

    苗木「それにしても、なんで江ノ島さんが協力してくれたのか謎なんだけど……」

    江ノ島「あんたらが霧切を潰そうとしてたから協力したまでよ。今までの流れから見て、他の人間共を消してるのって苗木っしょ?」

    苗木「……そこまで読めてた?」

    江ノ島「だってアンタ怪しいしね。まあ霧切残すより苗木残した方が面白いて思ったのよ」

    江ノ島は片方の包丁を捨てる。

    江ノ島「さーって、喋り飽きたし、最後はアタシってことかな?」

    苗木「え……?」

    江ノ島は持っていた包丁を首に当て……

    江ノ島「じゃ、ハッピーゼツボウバースデイ」

    包丁を強く引いた。

    苗木「…………」

    葉隠「……後味悪いべ……」

    真っ赤になって動かなくなった江ノ島にペンを向けると、江ノ島はバンッと消えたが、大きく血痕が残った。

    霧切「…………」

    苗木「……あっ。霧切さん? それに舞園さんも。ここに来ちゃったんだ。危ないから拘束されてれば良かったのに」

    入り口でずっと見ていた霧切に気付いた。

    舞園「あの……これは……」

    ジェノ「何? あの枕も殺す?」

    苗木「止めてよ……。もう充分でしょ。残りは2人なんだから」

    ジェノ「ふーん。おっすキリギリスちゃん。どーも初めましてージェノサイダー翔っていいまーす。ゲラゲラゲラゲラ!」

    霧切「やっぱり……私とあなたは初対面よね。あなたは本当に2人いたの」

    ジェノ「ま、アタシからしたら初対面なんかじゃねーけどな! そ・れ・にぃ、2人いたのはアタシだけじゃないよん!」

    葉隠「俺も苗木っちも、2人いたんだべ。多分霧切っちも2人いると思うんだが、霧切っちはそのルールを知らねーから、断定できねーんだよな……オメーはどっちなんだ?」

    霧切「……私は霧切よ」

    霧切は、苗木達に近づく。

    霧切「……苗木君……あなた……」

    霧切「……う……っ」

    目眩がする。

    頭がぼやける……。

    葉隠「おい、大丈夫か? 崩壊中は酔いやすいからな」

    霧切「え……ええ……」

    腐川「……何が酔いやすいよ。ただの地震じゃない」

    葉隠「っつーか、いつの間にかジェノサイダーが腐川っちになってるべ?」

    腐川「あいつ……この空気がメンドクセーとか言ってあたしと交代したのよ……。好きな時に変われるのはいいけど……やっぱここはあまり快適じゃないわね……」

    地震が続き、空間がひび割れている。たしかに快適とはいえない。

    霧切「…………」

    霧切は何も出来ず、何も理解出来なかった。

    苗木側であるはずが、自分だけなにか違うように感じた。

    霧切「……ッ」

    頭痛がする……

    周りが白くなっていく…………
  12. 12 : : 2016/07/10(日) 21:08:56
    苗木「とにかくさ……。もう写真の回収は諦めて……早くここから脱出しないと」

    霧切「……写真…………?」

    霧切「……それって……。苗木君と……江ノ島さんの……?」

    葉隠「お!? 霧切っち、見つけたんか!? どこだ!? 何処にあったんだ!?」

    霧切「これ……かしら……」

    苗木と江ノ島がキスしている写真。

    苗木「あ、これだ! 江ノ島さんが技術をフル活用して作った偽造写真!」

    葉隠「無駄に本気出してるべ! 全く違和感ねえ!」

    「そこにあったのね」

    苗木「え!?」

    食堂の入り口から声がした。

    そこには、霧切と葉隠がいた。

    苗木「……霧切さん……? 本物……?」

    霧切?「ええ。こっちの葉隠君を追ってたら大分時間がかかったわ……」

    もう1人の霧切が、もう1人の葉隠を捕まえながら言う。

    苗木「なんだ……やっぱりこっちの霧切さんはNPCの方だったんだ。なら別に助ける事も無かったなぁ」

    葉隠「まあ結果論だし、しゃーないべ。NPCは人と違うとはいえ、意識しないと分かりにくいもんなぁ」

    霧切?「写真を隠した場所に何も無かったから諦めようと思ったけど、そこにあったのね」

    もう1人の霧切は、葉隠に向けて言う。

    霧切?「あなたがなにを企んでいたのかは大体想像がつくわ。どうせ、苗木君の浮気写真を先に見つけて、売り飛ばして儲けようとしたんでしょ」

    苗木「え!?」

    葉隠「は……はは……」

    腐川「……やっぱクズだわ」

    霧切?「そんなくだらない理由で、いつまでも脱出しようとしないで……プログラム終了に抵抗して……この世界に閉じ込められたらどうする気? 反省しなさい」

    葉隠「はい……すみませんでした……」

    苗木「あ……あのさ……霧切さん……」

    霧切「う……っ」

    元々居た方の霧切が、頭痛でうずくまる。

    霧切?「……そろそろ時間ね」

    霧切?「防衛プログラムが復活する」

    防衛プログラム……?

    苗木「でも、残ったNPCは霧切さんと葉隠クンと舞園さんだけだから……大丈夫だよね?」

    NPC……?

    霧切?「一応、脱出する人数が防衛プログラムより多ければ問題ないわ」

    霧切?「まったく……葉隠君。いくら写真を先に見つけたいからって、防衛プログラムと協力するなんて。自殺行為よ?」

    葉隠「はは……まぁ……無事解決したんだから別にいいべ?」

    【防衛プログラム……修復89%】

    もう1人の霧切は食堂から出ようとした。

    霧切?「さ、帰るわよ」

    苗木「え? どこに行くの?」

    霧切?「玄関よ。ワープでも帰れるけど……また馬鹿が1人残らないようにね。玄関から強制ログオフするの」

    葉隠「もう流石に帰るって……」

    苗木、霧切、葉隠、腐川の4人は食堂から出て、玄関に向かう。

    苗木「あーお腹空いたぁ。こっち来てから何も食べてないもんなぁ」

    葉隠「だよなぁ。まー数時間程度で終わって良かったべ。でも、まあまあ楽しかったろ?」

    苗木「うん、ゲームみたいで面白かったよ!」

    葉隠「あっはっは! 俺が抵抗して無理矢理この世界を続けたおかげだべ!」

    霧切?「プログラム破壊銃でも撃ち込みましょうか?」

    葉隠「冗談! 冗談だべ!」

    腐川「まあ、苗木のNPCが開始直後に死んだのは面白かったわね……!」

    葉隠「あー、あれな! ここに来てすぐ、苗木っちが寝ているところに出たんだったな!」

    霧切?「苗木君の不幸があそこで炸裂したのかしらね。NPCも不幸で良かったわね」

    苗木「はは……あまり嬉しくないけど」

    葉隠「やっぱ苗木っちは不幸な星のもと産まれてきたんだな! そんな苗木っちに、運が良くなるパワーストーンを!」

    苗木「いや買わないから」

    楽しそうな4人の声が突然途切れた。脱出したようだ。
  13. 13 : : 2016/07/10(日) 21:17:02
    霧切「…………」

    残ったのは、崩壊していく空間に残された、NPCの霧切と葉隠と舞園だけ。

    【防衛プログラム……修復100%】

    防衛プログラムが復活した。

    防衛に抵抗されているのを霧切達は感じたが、それもすぐに消えた。どうやら4人は脱出に成功したようだ。

    【予期せぬ外部からの攻撃による問題を全て解決しました】

    【これより希望ヶ峰学園立体地図の修復を開始します】

    【希望ヶ峰学園……修復中……】

    ひびが治り、荒れた食堂が治っていく。扉が少しずつ修復されていく。

    葉隠「……う……」

    舞園「あ、おはようございます。葉隠君」

    NPCの葉隠が目覚める。

    葉隠「ああ……。ったく霧切っちめ……プログラム破壊銃を持ってないからって、普通に殺しにきたべ……」

    防衛プログラムは、いくら殺されても再び修復される。しかし苗木の持つ、プログラム破壊銃……小さなペンで分かりづらいものだが、あれに破壊されると修復が出来なくなり、しかも内部ではいつまでも修復し続けようとするため、処理が遅くなってしまう。

    そのせいで、霧切の記憶や才能が、NPCが破壊されるごとに上手く働かなくなっていったり、処理落ちが起きたりしてしまった。

    霧切「……まあ、破壊されたNPCは直らないだろうけど……学園が修復されるのを気長に待ちましょう」

    NPC……ノンプレイヤーキャラクター。

    ここは元々、希望ヶ峰学園立体地図にNPCを配置し、シミュレーションをするような場所だった。バグや処理落ちで上手く動かなかったが、防衛プログラムは後で急に埋め込まれたものだ。

    だから別に窓も玄関も封鎖されてはいない。廊下もそれぞれの教室も普通そのものだ。玄関からこの希望ヶ峰学園を抜け出せるが、霧切達はそれに気付かないように設定されていた。

    霧切「大分いなくなっちゃったけど……これでもう安全に過ごせるわね。しばらくしたらまた新しいNPCが配置されるでしょう」

    舞園「また、私達のような78期生が配置されるのでしょうか? 楽しみですね。今度こそちゃんと本来の役割を果たせたらいいですね!」

    修復されていく学園を見て……これはこれで、また新しく希望を持ってやっていけそうだった。

    葉隠「あーあ。しかしあの写真があれば、あっちの俺も今ごろ億万長者だったべ」

    霧切「さすがにそこまでの価値はないわよ」

    舞園「さっ。修復に乗じて、学園内を掃除したり整理しましょうか!」

    霧切「そうね。私達も私達で、学園内を修復しましょう」


    【現実世界】


    苗木「……!」

    苗木が目覚める。

    不二咲「あ、おかえり! 大丈夫だった?」

    苗木「うん」

    霧切「じゃあ、パソコンは帰して貰うわよ」

    苗木「あ、霧切さん!」

    霧切もいつの間にか目覚めて、希望ヶ峰学園立体地図のデータが入ったパソコンを持ち上げる。

    霧切「安心して。舞園さんには誤解のないように言っておくわ。江ノ島さんの悪ふざけで、苗木君は浮気なんてしてないって。ちゃんと依頼者には真実を伝えるわよ。探偵としてね」

    苗木「うん……よろしく」

    霧切「ただ」

    霧切「いくら舞園さんに見られたくないからって、写真を奪うためにパソコン内に侵入なんてことはもう止めなさい」

    苗木「うん……」

    霧切「不二咲さんも協力しない」

    不二咲「はぁい……」

    霧切「無事で良かったわ。じゃあね」

    霧切はパソコンを持って去って行った。

    苗木「……ふぅ」

    不二咲「お疲れ様、苗木君」

    苗木「うん、疲れたし……そうだ、お腹空いてたんだ」

    葉隠「お! んじゃー何か食べに行くべ! 苗木っちの奢りでな!」

    苗木「なんでボクの奢りなんだよ……。どっちかっていうと、年長者の葉隠クンじゃないの?」

    葉隠「じゃーこうなったら、十神っちにみんなで奢ってもらうべ!」

    苗木「はは……結局そうなるんだね」

    希望ヶ峰学園第78期生、苗木誠の騒がしい学園生活の一部分の話でした。


    【霧切の部屋】


    霧切「……やっぱりデータが壊れてるわね」

    霧切「希望ヶ峰学園マップ自体は問題ないけど……他のエラーが多すぎるわ……。やっぱり一度作り直した方がいいかしら」

    霧切「元々改善の余地はあったし、良い機会かもね」

    カチ

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    【消去完了しました】



    ダンガンストーリー 希望の崩壊
                  THE END
  14. 14 : : 2016/07/10(日) 21:19:08
    出来るだけ短くまとめようとしました。短すぎましたかね?

    ここまで呼んで頂き、ありがとうございました! 高嶺のチム古参でした!
  15. 15 : : 2016/07/10(日) 21:35:44
    面白かったです!お疲れさまでした!
    高嶺のチム古参万歳!!

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