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  1. 1 : : 2016/07/01(金) 06:49:46

    チームコトダ祭ssです。
    チーム別三つ巴戦ですってよ。

    こちら先鋒ジャンルはコメディ、テーマはインスタントらしいです。

    自分は、あげぴよさんチームことCチームこと射精バーサクです。(クドい)

    ジャンルに沿えているかはアレですが愛と希望をたっぷり込めて書きました。
    よろしくお願いします!
  2. 2 : : 2016/07/01(金) 06:51:37

    初日で大量に手に入ったモノクマメダル
    これも『幸運』の賜か、
    苗木誠はそう思いながら購買に佇んでいた。

    改めて自分の行動を思い返す。

    コロシアイの宣言をされた翌日。

    部屋で怪しいメダルを見つけモノクマから話を聞く。

    特に宛もなく校内をぶらぶらしているとすぐにメダルは手に入る。

    最初はびくびくしていた桑田も数時間すればケロッとしていて──それが彼のいいところなのかもしれないが──自分にメダルを押し付けてきた。

    その桑田は他の男子組からすでに良いように押し付けられて処分に困っていたという。

    皆、得体の知れないものに得体の知れない硬貨を使うのに臆病になっているようだ。

    そして極めつけは
    「あのガシャポンに何が入っているのか調べてくれ」
    なんて。

    そんなに自分がお人好しに見えるだろうか。苗木は肩を落とした。

    そういえば以前妹にも言われたことがあったかもしれない。

    思い出して溜息が出る。

    苗木「とりあえず、回そっか」

    そう言って苗木は、モノモノマシーンにメダルを入れた。
  3. 3 : : 2016/07/01(金) 06:52:34

    苗木「嘘でしょ……」

    両手に持っているのは最速カップラーメン。すぐに食べられるがすぐに伸びてしまうカップラーメン。

    目の前の山は最速カップラーメンだけでなく、聞き覚えのある即席麺から聞き覚えも見覚えのない即席麺が積み上がってできたものだ。

    苗木「どうしよう」

    まさか途中で面倒臭くなってメダルを全部一気に投入したらあたりが何回も出るとは。
    そしてあたりが全てラーメンとは。

    「いやあ、こんな幸運も一週回って不運だね」

    耳に残るダミ声。足元にはいつの間にかモノクマがいた。

    苗木「なんだよ」

    モノクマ「いやあ、この麺の山でカメラが埋まっちゃって。どけようと思ってきたらキミがいるじゃない」

    コイツはさておき。苗木は非常に困っていた。桑田を呼んで運んで貰うか?多分宛にはならないだろう。

    思考を巡らせているとモノクマが何やらよくわからないたとえ話を始めていた。

    モノクマ「それにしても、この学園で即席麺ばっかりなんて皮肉だねぇ……。即席の希望、即席の才能、うぷぷ、思い出すだけで脳汁だばだばですよ!」

    苗木「どういうことだ、モノクマ!?」

    苗木の叫びにおっと、とモノクマは口を押さえた。

    モノクマ「おっといっけなぁ~い。とりあえず、早くこの山なんとかしてよね!」

    緩い効果音と共にモノクマが消える。再び訪れた静寂の中、苗木は大きな溜息を吐いた。

    苗木「とりあえず外にだそう」

    購買の扉を大きく開け、地道に山を崩していった。
  4. 4 : : 2016/07/01(金) 06:53:16

    石丸「苗木君なんだねこれは!」

    苗木「あ、石丸クン丁度いいや。これ、食堂まで一緒に運んでくれないかな?」

    廊下にできた即席麺の山の向こうから暑苦しい声が聞こえた。

    石丸「それは構わないが、これはなんだね?」

    苗木「実はかくかくしかじかで」

    石丸「そうか!つまりはうまうままるまるだな!」

    そう言って石丸は懐から袋を出して広げた。

    苗木「え、なにその袋」

    石丸「風紀委員たるもの、常に校内が清潔であるか気を配るべきだと思ってな!こうして常にゴミ袋を携帯しているのだ!もちろん未使用だから心配はいらない!」

    苗木「あ、そう、助かるよ」

    石丸から袋を受け取って即席麺を詰め始める。
    丁度袋2枚分で事足り、ゆっくり食堂に向かって歩き始めた。

    苗木「これ、出たのはいいんだけどどうしようか?」

    石丸「賞味期限は書いていないのかね?」

    苗木「それが、なんも書いてなくてさ」

    石丸「ふむ。乾麺だから日持ちはするだろうが早めに食べ切ってしまいたいな。だが流石に即席麺ばかりでは偏りが…」

    葉隠「おー、苗木っちと、石丸っちだべ!なにしてんだ?」

    桑田「おーっす」

    寄宿舎に戻ってくると葉隠と桑田がいた。

    苗木「実はかくかくしかじかでさ」

    桑田葉隠「つまりアポアポだべだべだな」

    食堂の長テーブルに獲得品を並べていく。当然のように葉隠と桑田に手伝いを頼んだ。

    桑田「いやー、にしても苗木、ホントに回してくれるとは思わなかったぜ。お前イイヤツだな!」

    苗木「ど、どういたしまして」

    やっぱり自分はお人好しだな。自覚すると余計に来るものがあって、ただ引き攣った笑しか出なかった。
  5. 5 : : 2016/07/01(金) 06:53:58

    4人で腕を組み、この即席麺をどうするか考えていた。

    するとそこに、活発な少女と寡黙な少女が現れた。

    時刻は夕頃。夕食を取るために生徒が集まる頃合いだった。

    石丸「おお、朝日奈君と大神君ではないか!」

    朝日奈「おー、なんか珍しい組み合わせじゃん!」

    桑田「数日も経ってねーのに珍しいもクソもあるかっつーの」

    大神「して、テーブルの上にあるこれは何だ?」

    朝日奈「本当だ!すっごい量のラーメンだね!」

    苗木「実はかくかくしかじか」

    朝日奈大神「なるほど、ひなひなさくさくだね!(だな)」

    そう言って朝日奈と大神は袋麺を手に取ってまじまじと観察しだした。

    朝日奈「この量ならさ、パーティが開けるね!」

    石丸「パーティ、とな?」

    葉隠「朝日奈っちが考えそうなことだべ」

    やれやれと呆れる葉隠の脛に朝日奈は的確な蹴りを入れた。
    だべ!とその場で崩れ落ちる葉隠。鳴き声かよとツッコむ桑田をよそに石丸は最速カップラーメンを手に取った。
  6. 6 : : 2016/07/01(金) 06:54:25

    石丸「朝日奈君感謝する!これからパーティを開こう!」

    セレス「騒がしいですわね…一体何があったんですか?」

    石丸の大声に怪訝な表情を向けてセレスがやってきた。

    舞園「わあ、賑やかですね。苗木君、何があったんですか?」

    そのすぐあとに舞園が。にこやかに食堂を見渡す。

    苗木「実はかくかくしかじかでさ」

    セレス舞園「セレセレぞのぞのですわね(ですね)」

    納得した2人。舞園は朝日奈と石丸のところで準備を始めた。セレスはというと、丸テーブルの席に着いて行儀よく待ち始めた。

    セレス「そういえば…ラーメンを食べるのですからもちろん餃子はでるのですよね」

    前言撤回。セレスは問題を持ち上げた。

    朝日奈「確かに、ラーメンって言ったらギョーザだよね!」

    石丸「うむ。しかし今から用意するとなると時間がかかってしまうな」

    セレスの提示に真面目な2人は悩み始めた。

    葉隠「つーか、この量じゃさすがの俺達でも餃子までは食えねーべ」

    桑田「確かにな。セレス、今度餃子パーティ開こうぜ」

    舞園「セレスさんが餃子好きなんて初耳です!今度パーティしましょうね!ラー油作りならまかせてください!」

    セレス「そうですか。では、約束ですわね」

    大神「しばらくは中華中心になりそうだな」

    和気あいあいとした雰囲気。これで全員揃って卓を囲めばきっと楽しいだろう。苗木は思うのであった。
  7. 7 : : 2016/07/01(金) 06:55:14

    準備が終わり、15人が揃った。
    最初に集まった8人以外はこれから行われる催し物に心踊らせているようだった。

    1名を除いては。

    十神「なんだ、愚民共。お得意の馴れ合いというやつか?ならば俺は遠慮させてもらう」

    十神白夜。帝王としてのプライドはキリマンジャロより高い。

    桑田「そっけねーなー、御曹司さんよ!そんなんじゃ友達できねーぞ?」

    出ていこうとする十神を引き止める桑田。桑田は十神を出入り口の近くの椅子に無理やり座らせた。

    舞園「とりあえずこれ食べてから出ていきましょう。ね?」

    すかさず舞園がフォローに入る。

    桑田(舞園ちゃんが俺の為にフォローを!)

    もちろんそんなことはない。舞園は15人が揃った状態でパーティを開催したいのだ。

    石丸「それでは只今より!ラーメンパーティ略して麺パを開催したいと思う!」

    石丸が全員を見渡して叫んだ。

    石丸「それではまず皆この中から1つ、好きな麺を選んでくれ。その次にお湯を注いで各々好きな席に着席願う!」

    石丸が指さした麺の山に男2人は歓声をあげた。

    山田「久々の油っこい食品キタコレ!腹いっぱい食べますぞ!」

    大和田「まじかよ本当にいろいろあるじゃねーか!」

    カップ麺を手に取り早速お湯を注ぐ。

    一方女性陣は即席麺の山に訝しい視線を投げかけていた。

    不二咲「これは食べて大丈夫なの…?」

    腐川「毒が盛られてたりするんじゃないでしょうね」

    コロシアイ宣言の後故の疑問が飛ぶ。

    朝日奈「それなら大丈夫だよ!さくらちゃんと一緒に穴とか空いてないか調べたもん」

    大神「うむ」

    朝日奈と大神の言葉で皆納得したようで、早速各自で食べたいものを手に取った。
    全員が着席したところで、江ノ島が声を上げた。

    江ノ島「つーかさ、それはどっから出てきたワケ?」

    石丸「この度の催し物のきっかけは苗木誠君だ。持ち前の幸運でこうして親睦を深める場を与えてくれた彼に賞賛を送ろうじゃないか!」

    苗木「僕はガシャポンを回しただけだけどね」

    大和田「それでも結構だぜ!オメーの幸運も伊達じゃねーな!」

    バシバシと苗木の背中を叩く大和田。
    苗木は軽く咳をしながらも心から嬉しそうに笑った。
  8. 8 : : 2016/07/01(金) 06:55:42

    なんやかんやでメンパが始まった!

    皆が誰かと一緒にいるにも関わらず、セレスは1人でラーメンを食べていた。

    セレス(餃子ラーメン…美味しいのでしょうか)

    舞園「セレスさん、お隣よろしいですか?」

    そこには舞園。温かな微笑みでセレスに笑いかける。

    セレス「いいですけど……。てっきり苗木君のところへ行くもんだと思っていましたわ」

    舞園「私だって女の子なんですよ~。華やかな女子トークに憧れてるんですよ」

    セレス「そういうもんなんですか?」

    舞園「そういうもんなんですっ。あ、そうだ、コレ、どうぞ」

    舞園が取り出したのは、ひと皿の、餃子。

    セレス「餃子、ですか」

    舞園「セレスさん好きだと思って。冷凍ですが2人分焼いてみました。食べましょう?」

    セレス「生憎ですが、私宇都宮餃子しか食べませんの。……ですが、折角の好意、受け取っておきますわ」

    舞園「わあ、ありがとうございます!早速食べましょう。いただきます」

    2人は手を合わせて、ラーメンをすすり始めた。

    セレス「舞園さんのラーメンはなんですか?」

    舞園「坦々麺辣油倍プッシュです。美味しいですよ。セレスさんは?」

    セレス「餃子ラーメンですわ。なかなかいけますわね」

    セレス(こういうのも悪くないかもですわね。ならば本当に適応という手もありなのでしょうか)

    舞園「セレスさん?」

    セレス「あ、いえなんでもないですわ」

    舞園「うふふ、楽しいですね!」

    セレス「ええ、そうですね」

    セレスの心の変化に、舞園は気づくはずがなかった。
  9. 9 : : 2016/07/01(金) 06:56:09

    人類最強、大神さくらは困っていた。

    大神「むう……」

    朝日奈「さくらちゃんどうしたの?」

    大神「朝日奈か……実は割り箸が上手く割れないのだ」バキャ

    その強靭な力故に、力加減のほどが難しいのか割り箸を何度も粉砕していた。

    朝日奈「そっか、お箸用意してなかったんだっけ」

    大神「左様。上手く割れば後は普通に使える筈だが」

    朝日奈「そっか、じゃあ私が割ってあげるよ!」パキョッ

    さくらちゃんの為に、と朝日奈は張り切る。
    しかし、箸はうまく割れなかった。

    大神「……」

    朝日奈「……えへへ」

    大神「まあでも使えないことはないだろう。ありがとう。朝日奈よ」

    大神の女神の様な笑みに、朝日奈は大いに喜んだ。

    朝日奈「さくらちゃん……。どういたしまして!!さ、食べよっか。何選んだの?」

    大神「本格手打風拉麺だ。特にこだわりはないな。朝日奈は何を選んだのだ?」

    朝日奈「私は俺活拉麺!!ずっと食べたかったんだよね」

    大神「それは知っている銘柄のものなのか」

    朝日奈「うん!!すっごく美味しいんだよ。一口あげるね!」

    大神「ならば朝日奈にも我のをあげよう」

    朝日奈「ありがとう!私、こういうのに憧れてたんだよね~!!さくらちゃんみたいに話も合って一緒に運動できてっていう友達がいなかったから……」

    朝日奈はポニーテールをしゅんと下げて目を細めた。

    大神「それは我も同じだ。幼い頃からずっと、我は道場の者と手合わせをし、鍛錬のみの日々。朝日奈のような友達、ができて嬉しい」

    大神もまた、目を細めた。友達と言う時、仄かに頬を染めたようだった。

    朝日奈「さくらちゃん……。なんかしんみりしちゃったね。よーし!!元気出すためにももっと食べるぞ~!」

    少女2人は競うようにラーメンを食べ始めた。
  10. 10 : : 2016/07/01(金) 06:56:33

    大和田「なんでテメエが隣なんだよ」

    石丸「それは君に言いたいことだな!ここは元から僕が座っていた!そこに君が入ってきたんじゃないか!」

    男同士の暑苦しい言い争い。周囲の気温が上がっている。その証拠に2人のラーメンがグツグツと沸騰していた。

    大和田「あんだとぉ!?」ガタッ

    石丸「なんだね君は!そうやってすぐ怒鳴り散らし拳に頼る。もう少し落ち着けないのかね!?」ガタッ

    大和田「んだよ、このオレに説教か!センコーと同じこと言いやがってよ」

    石丸「ああそうだ。君に教えを説いているのだ!!」

    2人の怒りは徐々にヒートアップしていく。しかし、周囲は気にする様子はない。しかたないことだ。

    不二咲「2人とも、喧嘩はやめようよぉ……」

    そこに、1人の小動物。不幸なことに心優しい彼女が通りかかってしまった。

    大和田「あ゙あ゙ん??」

    不二咲「ご、ごめんなさい!ぐすっ」

    大和田がついいつもの調子で不二咲を睨みつけてしまった。

    石丸「君はそうやって女子にも大声を上げて脅すのかね!?」

    石丸が油を注ぐ。すかさず引火。

    大和田「ちげーよ!これはその、つい癖で。不二咲、わりい。こんな声の掛け方をするつもりじゃなかった」

    奇跡的なことに引火はしなかった。それどころか気温が下がっていく。

    不二咲「ううん、大丈夫。ごめんね。私が弱いから……」

    石丸「君に落ち度はない。むしろ僕達が謝る方だ。熱くなりすぎていたようだ。すまない」

    石丸が深々と頭を下げる。大和田もすまんと一言言って少し頭を下げた。

    不二咲「え!?頭を上げてよ……!ええと、じゃあ、仲直りの印に一緒にラーメン食べよ?」

    大和田「いいけど、いいのか?こんなむさ苦しい男2人と」

    石丸「むさ苦しいは余計だ!!だが、本当にいいのか?」

    不二咲「いいよ。ぼ、私が一緒に食べたい」

    石丸と大和田は不二咲を挟むように席に着いた。
    そしてラーメンをすすり始めた。
  11. 11 : : 2016/07/01(金) 06:57:30

    さて、1杯目のラーメンを食べ終えた3人は談笑を始めた。

    大和田「そしたらよ、塀の隙間から犬が顔出してんの。やー、あのアイシュウ漂う顔はオメーらに見せたかったな」

    不二咲「そうだったんだ、可愛いね!」

    石丸「君は実はいい人だったのだな。動物好きに悪い人間はいない!」

    石丸が急に立って涙を流して声を張り上げた。

    大和田「あんだよ。急に。まあでも、お前もイインチョだからってかたっくるしいだけじゃねーんだな。バカだけどよ」

    石丸「なっ!!バカとはなんだねバカとは!」バンッ

    不二咲「あっ……!!」

    石丸がカッとなって手を机についた時、石丸のカップ麺が倒れた。
    最悪なことに、残っていた汁が不二咲の方へ流れ、スカートを汚してしまった。

    石丸「すすすすまない不二咲君!すぐ拭こう!」

    不二咲「大丈夫、だから」

    石丸「…………!!!」

    ハンカチでスカートを拭い始めた石丸はすぐ硬直した。
    それが女子に躊躇いなく触れてしまったからなのか、それとも不二咲の秘密に触れてしまったからなのか。
    不二咲は前者であってほしいと願った。

    石丸「不二咲君」

    不二咲「ごめんね……。僕は」

    だがしかし、前者であることはなかった。
    不二咲はひどく狼狽え、泣きそうになった。

    不二咲「気持ち悪いよね。僕は、弱いから」

    石丸「それは違うと思うぞ。不二咲君」

    不二咲「え……?」

    石丸「不二咲君は、自らの秘密がバレた時に、言い訳をしなかった。不二咲君の事情は知らないし、無理に話す必要はない。だが、不二咲君は不二咲君が思っているほど弱くはないのかもしれない」

    不二咲「そう、なのかな」

    大和田「石丸オメー、良いこと言うじゃねーか。……不二咲、なんだアレだ。俺はジジョウとか難しいことはわかんねー。だけどよ、伊達に族まとめてねーんだ。俺にできることはあると思う。不二咲、オメーはなにがしたいんだ?俺にできることなら手伝うぜ」

    2人からの激励。コロシアイという非日常の中自分に湧き上がった密かな小さな思い。

    不二咲「僕は、強く、強くなりたい!男のくせにって言われないように、強くなりたい!」

    彼の叫びは、大和田に、石丸に響いた。2人の体がぐわんと揺れて、彼の意志の強さが、伝わった。

    石丸「そうかね。では僕もできる限りの応援をしよう!クラスメイトの願いを叶えるために!」

    大和田「強く、か。不二咲。強くなったら、俺の秘密も話してやる。いや、話さなきゃなんねーな。これは男の約束だ。絶対破るなよ」

    不二咲「うん!!」

    男の約束に、不二咲は笑顔で答えた。

    青春を謳歌する少年たちは、2杯目のラーメンに手を伸ばした。
  12. 12 : : 2016/07/01(金) 06:58:01

    同時刻、舞園とセレスは談笑をしていた。1杯目のラーメンは既に完食済みである。
    そこに巨大な影が落ちた。

    山田「舞園さやか殿、セレスティア殿、胡椒をくれませんかな」

    舞園「私はいいですよ」

    セレス「構いませんわ。さっさと取っていってくださいまし」

    山田「ありがとうございますですぞ!」

    山田がかしこまって胡椒の瓶を取った。イソイソと自席に戻ろうとする。

    セレス「あら」ガタン

    セレスが箸を落とす。拾いに行くと、タイルの継ぎ目に躓いてしまった。

    セレス「どっひゃーー!?」

    目の前の山田に突撃。

    山田「ぬわー!?」

    山田も転ぶ。その拍子に胡椒の瓶を落とす。

    ガシャン

    瓶は割れて、バウンドした山田の風圧で中身が舞い上がる。

    その被害を被るは

    十神「……なんで、貴様が同じ卓なんだ」

    腐川「た、たまたまです」

    山田が転がり、十神にぶつかる。

    腐川「白夜君!?あ、な、なんでこんな……ふぇっくしょん!!」

    最悪の事態だ。腐川はそう本能的に感じ取った。
    そして人格は、入れ替わる。

    「邪邪邪邪ーン!!」
  13. 13 : : 2016/07/01(金) 06:58:28

    その掛け声と下品な笑い声。

    異常な雰囲気に視線が1点に集まる。

    ジェノ「呼ばれて飛び出てジェノサイダー!!あららこれってアタシの独壇場??」

    桑田「あああ、あれって」

    不二咲「腐川さん……?」

    小さな声を殺人鬼は聞き逃さない。
    不二咲の喉元に冷たい刃の側面が当てられる。

    霧切「貴女が、ジェノサイダー翔」

    ジェノ「外野は引っ込んでろ!ボッチ切サァン!?不二咲、いやちーたぁん?アタシが表に出てる時は根暗の方の名前出さないでくれるぅ???」

    不二咲は声も出せずただ頷くのみ。するとジェノサイダーは満足気に笑う。鋏をしまった。

    桑田「ウソだろ、あの殺人鬼が、が、が、が、アポ……」

    葉隠「うわあああああ!!死にたくないべ!俺はまだ行きたいべ!」

    叫ぶ男たち。ジェノサイダーはイラつきを全面に出して振り向き、桑田と葉隠に向かって走り出す。

    桑田「」

    葉隠「南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏」

    桑田は息をしていない。葉隠は念仏を唱えた。
    しかし、ジェノサイダーは2人を素通りした。

    ジェノ「イケメンはっけーん!!誓いのキスで目覚めさせるべきかしらん!?」

    山田に突き飛ばされて気絶していた十神。殺人鬼の目についてしまったことは本当に運が無かったとしか言いようがない。

    十神「余計なことをするな」

    すぐに目覚めた御曹司は、あからさまな嫌悪を殺人鬼に向けた。
  14. 14 : : 2016/07/01(金) 06:58:53

    苗木「どうしよう。まさかこんなことになるなんて」

    苗木は後悔した。こんなことになるくらいだったら……。つくづく自分は運がないと思った。

    霧切「悲観することはないわ。苗木君」

    霧切が苗木の気持ちを汲んでか、励ましの言葉をかける。しかし、ジェノサイダーに言われたことを根に持っているのか、説得力はあまり無かった。

    苗木「霧切さん、ありがとう」

    霧切「お礼はいいわ。お陰で私も、久しぶりに楽しかったもの」

    やはり声音は暗い。

    十神「離れろと言っている!そんなことも理解出来ないのか?」

    十神の怒号に苗木は肩をすくめた。相変わらずジェノサイダーに手間取っているようだった。

    ジェノ「白夜様のいけず!アナタと添いとげられればもう殺すことはやめるのに!」

    十神「断るとさっきから言っているだろう?俺は貴様のような凡人と、それから変態と一緒になるつもりは毛頭ない!」

    ジェノ「あらあらそーですか!じゃあ殺っちまいましょー!!そーr、ぶぇっっくしょい!!!」

    ジェノサイダーが大きなくしゃみをした。
    十神と逆方向、苗木がいる方を向いて。
    振りかぶられた鋏は、くしゃみの反動で投げられた。

    苗木「うわ!?」

    間一髪後ろに仰け反って避けるも、そのまま尻もちをつく。

    山田「お許しをお許しを……」

    土下座をしている山田の背中にあたり、苗木がバウンドする。
    立ち上がると足元には胡椒の蓋。思い切り踏んずけて今度は前に転ぶ。蓋が宙を舞う。誰かが食べかけていたラーメンに当たり倒れる。中身はまだ熱く、テーブルに手をついていた朝日奈の手にかかる。

    朝日奈「熱っ!!」

    手を上げる。するとすぐ横のカップヌードルが打ち上げられた。
    水泳部の腕力で高くにうち上がったヌードルは落下する。

    さて落下した先は……。

    霧切「……」

    朝日奈「霧切ちゃん大丈夫!?ごめんね!」

    霧切「大丈夫よ。気にすることはないわ」

    霧切の頭の上。流石クールビューティと言ったところか、カップヌードルという装飾すら似合う。さながら妖精と言ったところか。

    しかし霧切はすぐカップヌードルを払い除けた。
  15. 15 : : 2016/07/01(金) 06:59:13

    江ノ島「久々の食事に夢中になってたらヤバイことになってるんですけど……」

    ようやく事の重大さに気づいた江ノ島。一気にラーメンをかきこみ、カーディガンの中に手を突っ込んだ。

    大神「江ノ島よ、大丈夫か?」

    江ノ島「ああ!?うん、ダイジョーブダイジョーブ!!びっくりしただけ」

    相手は大神だが、気づかれていないようで安堵の息を漏らした。

    いつの間にかやら袖に仕込んでおいたものをすぐ出せるように構える。腐川冬子に戻ったからと言って油断はできない。たがその注意する対象を間違えてしまったようだ。

    妖精、もとい霧切が払い除けたカップヌードルは、ありえない角度で加速した。
    真横ストレートに飛んだヌードルは江ノ島の後頭部へと直撃した。

    江ノ島「きゃうっ!」

    前のめりになる江ノ島。その時、何かが落ちた。

    ふぁさり

    今日がたまたまウィッグを止めるのが甘かっただけである。

    ただ、それが極めて大きな致命傷だった。

    大神「江ノ島?」

    一瞬眩んだ視界が戻り、目の前に落ちたそれを見た時、戦刃むくろは大いに焦った。

    この軍人は残念なことに、戦場以外のイレギュラーとなると適切な対処ができなくなる。

    戦刃「どうしよ」

    霧切「貴女は……?」

    苗木「江ノ島さん?」

    朝日奈「江ノ島ちゃんじゃない!?」

    桑田「はぁ!?ほんっと、次から次に何なんだよ……!」

    見知らぬ生徒は、ジェノサイダー翔という殺人鬼よりも強い衝撃と恐怖を与えた。
  16. 16 : : 2016/07/01(金) 06:59:41

    大神「そうか、お前が16人目の超高校級か」

    戦刃「ええ!?」

    十神「おい、大神どういうことだ説明しろ」

    大神は、自分が内通者であったこと、道場を人質に取られていたことを話した。

    朝日奈「さくらちゃんが、そんな……」

    葉隠「っていうことは、オーガも敵ってことか!?ひえええ!!もうお終いだべぇええ!!」

    大和田「テメーは何を聞いていたんだよ。オーガは人質取られてたって言ってんだろ」

    驚愕。楽しくラーメンを食べていただけなのに、このコロシアイ学園生活の核心に迫る事態に陥ろうとは誰が考えようか。いや、考えないだろう。

    石丸「ではまず自己紹介を頼もうか!」ビシィ!

    桑田「いやビシィ!じゃねーよ!アイツが黒幕なんだぜ?そんな簡単に教えてくれるわけ……」

    戦刃「戦刃むくろ、超高校級の軍人、です」

    桑田「えぇ……」

    石丸の威圧感に負けた戦刃はあっさり自分の名と才能をバラした。

    霧切「軍人……物騒な肩書きね。戦刃さん。貴女はこれからどうするのかしら?」

    戦刃「どうするって、なにが」

    戦刃はさも意味のわからない質問だと言いたいか如く首を傾げた。

    これには流石の霧切も同様と呆れを隠しきれない。

    霧切「貴女が黒幕っていう可能性はないわね」

    戦刃「私が黒幕?そんなわけない。私はじゅ__」

    モノクマ「はーい!そこまででーす。残念な軍人サン!」

    モノクマが出てきた瞬間、戦刃の顔が明るくなった。
  17. 17 : : 2016/07/01(金) 07:00:59

    苗木「モノクマ……!」

    モノクマ「苗木クンそんなに身構える必要ないよ。だって飽きちゃったもの」

    セレス「飽きたからミナゴロシとでも言いたいのですか?」

    モノクマ「それじゃあつまらないじゃん。おいでよ。真実が必ずしも希望とは限らないってことを教えてあげるよ」

    モノクマの導くまま、15人は本来使われるはずだった裁判所に訪れた。

    十神「この悪趣味な空間はなんだ」

    モノクマ「それではミナサン、お近くのモニターを見てくださいな」

    ブォンと駆動音を鳴らしてモニターがつく。

    真実の上映会が、始まった。







    自分たちが2年の時を共にした同級生であったこと。記憶を消されていたこと。学園長が既に亡くなっていること。外の世界が滅んでいること。この学園が自分たち希望ヶ峰学園生徒のシェルターであること。コロシアイ学園生活が世界に放送されていること。

    それらを知った彼らの顔は、皆青ざめたようであった。

    朝日奈「外の世界は、滅んでいる……?」

    不二咲「そんなぁ……」

    大和田「じゃあ、俺のチームは」

    モノクマ「生きている方もいるけどまあ死んでる方が確率は大きいよね」

    霧切「…………」

    皆、青ざめた顔をしている。

    桑田「おいモノクマァ!!これから俺らに何させようってんだよ!!」

    モノクマ「まだ終わってないでしょ」

    霧切「ええ、そうね」

    腐川「これ以上何があるってのよ!」

    十神「いいや、まだ終わってないな。そうだろう?」

    意味ありげな視線を戦刃に向ける十神。

    戦刃「え、もう教えることなんてないけど」

    モノクマ「あーもう本当に使えないな!あるでしょう?最高のメインディッシュである黒幕がさ!」

    インスタントラーメンから始まった終わりは、クライマックスに差し掛かるッ!
  18. 18 : : 2016/07/01(金) 07:01:20

    モノクマ「て言ってもすぐわかっちゃうかもね。じゃあさ、苗木クン、説明してよ」

    苗木「え、なんで?」

    モノクマ「だってこうなったのは君のせいじゃない。でも霧切さんが教えてあげてもいいよ。ただし、皆が納得できるように説明すること!」

    葉隠「そうだべ!こうなったのはもとはと言えば苗木っちがラーメンなんか持ってくるからだべ!」

    朝日奈「葉隠は黙ってて!」

    霧切が大きく咳払いをする。静まる裁判所。

    霧切「じゃあ苗木君。まずは黒幕である可能性のある人物をあげましょう」

    苗木「戦刃さんだけじゃないの?」

    十神「今この場にいない江ノ島と、黒幕が繋がりがあったとされる大神を合わせた3人だ」

    大神の名に、朝日奈がすかさず反応する。

    朝日奈「さくらちゃんが黒幕なわけないじゃん!言いがかりはよしてよね十神!」

    大神「朝日奈。これは当然の反応だ。主が怒る必要は無い」

    霧切「不二咲さん、モノクマは自立型ロボかしら?」

    不二咲「え!?見ただけじゃわからないけど、多分モノクマほど高度だと2年たった技術でも完全な自立型は無理だと、思う」

    できれば君づけがいいな、と付け足して不二咲は証言する。

    霧切「だとすると、操作に1人。敵状視察に1人最低でも必要になるわ。では大神さん、貴女に聞くわ。大神さんはモノクマを操る人物を知っている?」

    大神「すまないがわからない」

    腐川「大神の発言が嘘ってことはないわけ?」

    霧切「彼女の性格、自らの事情を話してくれたことから考えて、嘘を吐くことはないでしょう」

    苗木「だとしたら、考えられる人は1人だけだね」

    石丸「もとよりわかっていたような気がするがな!」

    山田「たまには空気読んでくださいよ石丸清多夏殿……」

    この状況で考えうる黒幕はただ1人。

    苗木「江ノ島さん、だよね。戦刃さんがこれを計画したようにはとても見えない」

    モノクマ「戦刃さんさり気なく貶されてんの」

    うぷぷ、と笑うモノクマに戦刃は悲しそうな目をした。まるでごめんと言いたいかのように。

    霧切「参考までに聞くけど、戦刃さんは江ノ島さんとどういう関係なのかしら?」

    戦刃「姉妹、です」

    桑田「じゃあ妹ってことだったんか」

    戦刃「いや、私が姉、なんだけど」

    戦刃は肩を落とした。
  19. 19 : : 2016/07/01(金) 07:01:49

    モノクマ「それではお披露目と行きましょうかクマー!」

    朝日奈「クマー?」

    モノクマの足元から煙が出る。いつの間にかやら人影。シルエットから察せるその絶望的なカリスマ。流石は超高校級のギャルと言ったところか。

    江ノ島「2年振りね親愛なるクラスメートたちよ!」

    苗木「お前が、江ノ島盾子……!」

    江ノ島「そうで~す!絶望的にかわいくて魅力的で絶望的な江ノ島盾子ちゃんとは私様のこと!」カパッ

    桑田「お前もカップ麺食ってたのかよ!」

    江ノ島は両手にカップ麺を携えて現れた。蓋を開けて後入れスープを入れて麺を啜り始めた。

    江ノ島がラーメンを食べる。

    いただく。

    味を噛み締める。

    貪る。

    山田「これは何待ちですかな!?」

    江ノ島「飽きたわ」

    山田のツッコミの直後、江ノ島はそう言ってカップ麺を投げ捨てた。

    霧切「……」

    霧切がカップ麺を被ってしまうのはお約束と言うべきか、妖精に憑かれているからと言うべきか。

    十神「で、江ノ島貴様はどうするんだ?」

    江ノ島「そうですね」

    江ノ島「もう飽きちゃったから外に出してあ・げ・る」

    江ノ島「ただし投票で決めてもらうがなぁ!!」

    セレス「投票ですか」

    江ノ島「卒業か留年の二択……卒業を選べば外の世界へ出ていってもらうよ。もちろん、学園には2度と戻れない」

    江ノ島「留年を選べば、この学園でずっと過ごしてもらいましょう。死んでもここに遺体を安置してあげますよ」

    江ノ島「さあ、どっちにするのかしら?」

    葉隠「そんなのもちろん留ね 霧切「待って、他にも条件はあるのでしょう?」

    江ノ島の思惑に気づいているのは、戦刃ただ1人。だてに姉はやっていない、ということか。

    江ノ島「もちろんよ霧切ちゃーん!この投票が有効になるのは、完全一致のみ!意見が割れた場合、全員には仲良く死んでもらうからね!」

    全員の死。その言葉に皆動揺が隠せない。

    江ノ島「もちろん公平にしたいから、私様は投票しないわ」

    江ノ島「もちろん考える時間はあげる。せいぜい絶望することだね。うぷぷぷぷ……」
  20. 20 : : 2016/07/01(金) 07:02:21

    石丸「ではまず多数決を取ろう!留年を選ぶ者は挙手したまえ!」

    その言葉どおりに挙手したのは、葉隠、桑田、腐川、不二咲、山田、朝日奈だった。

    石丸「では、留年の意見を聞かせてほしい」

    こういった場面において、石丸の能力はいかんなく発揮される。

    朝日奈「だって、外は危ないんでしょ?だったらやっぱり学園にいた方がいいんじゃないかな」

    桑田「朝日奈と同じだ。外出た瞬間殺されちまう可能性だってあるんだろ?だったら俺はここで一生を選ぶな」

    腐川「いやよ!アタシは元々外に出たくはなかった!ここで一生小説を書いて死ぬわ」

    不二咲「僕は、怖い。僕はまだ生きたいよ。ここなら一生の安全が保証されるんでしょ?」

    朝日奈「ここならドーナツ食べられるしさ、外はそんな安全じゃないんでしょ?」

    山田「拙者は断固反対ですぞ外なんて!だったら僕はここでずっとブー子への愛を形にしていますぞ!」

    葉隠「俺はただ、ここにいれば借金もチャラになんべなーって」

    葉隠の変わらなさに一同は呆れた。

    石丸「では、確認のために、卒業を選ぶ者は挙手したまえ」

    霧切、十神、セレス、石丸、大和田、大神、舞園が挙手した。

    石丸「苗木君はどちらにも手を挙げていないが……どうかしたのかね?」

    苗木「わからないんだ……ボクがどうしたいのか。みんなの意見を聞いてから決めるよ」

    戦刃「ところで……私もいれるの?」

    江ノ島「もちろんよお姉ちゃん!だって数日とは言え参加してたんだから」

    戦刃「じゃあ、私も卒業で」

    周囲がえっという顔をしたが、戦刃は気にしていなかった。

    石丸「僕から話していいだろうか?」

    セレス「お好きにどうぞ」
  21. 21 : : 2016/07/01(金) 07:02:48

    石丸「僕はここに一生いることは逃げだと感じた。僕の夢は総理大臣になることだ。祖父のように汚職に手を染めずに、清く正しくありたい。その為にはまずこの学園から卒業せねばなるまい」

    大神「次は我でいいだろうか。我は江ノ島に屈してしまった。しかしもう屈することは絶対にしない。例え外の世界が壊滅的であろうともだ。それに、我の力で皆を守れるだろう。我は力のみの人間。そういったことでしか手伝うことはできないからな」

    舞園「外の世界って、絶望的とは言え、人間がいるんですよね?絶望した人だけじゃなくて、まだ希望を持っている人も。だったら私は皆さんを元気づけるために外でアイドルをします。メンバーもきっと頑張っているでしょうから」

    大和田「チームのヤツらは結構ガッツあんだよ。ここで頭のオレが引きこもってどうすんだってんだ。それに、大工になるっていう夢になるチャンスじゃねーか。絶望だかなんだか知らねーけど、敵は全部ボコせばいいんだろ!」

    セレス「私はもとより出たかったですから。またとないチャンスですわ」

    十神「次期十神家が留年だと?笑わせるな。この俺が卒業以外ありえない」

    残すは霧切となった。父親である学園長を失った探偵の答えとは。

    霧切「苗木君は決まっていないようだけれど、どうしてかしら?」

    急に振られた質問に苗木は驚いた。

    苗木「ボクは、わからないんだ。ボクの才能は幸運。皆と違ってやれることが少ないから、どうしたらいいのかわからないんだ。卒業にしろ、留年にしろ」

    その答えに霧切はあからさまに鼻で笑った。

    霧切「人よりちょっと前向きなのが取り柄なのに、笑わせるわ。私たちは才能関係なしに自分の道を決めたのよ。貴方だけよ、そんなに悩んでいるのは」

    そう言うと、霧切は留年を選んだ者を1人1人見つめた。そして大きくため息を吐いた。
  22. 22 : : 2016/07/01(金) 07:04:58

    霧切「貴方たちは、本当にこの学園で一生を過ごせると思っているの?きっととても退屈よ」

    苗木「!」

    霧切「ここまで言えば、もうわかったでしょう?苗木君」

    今までの父が亡くなっていたことへの動揺と、苗木を励ます気持ちから来ていた饒舌な霧切はもうほぼ見られないだろう。

    苗木「ありがとう、霧切さん」

    後は苗木君が言うのよ、そう言いたげな視線を投げかけた霧切。それに苗木は大きく頷いた。

    苗木「皆、よく聴いて。留年を選んだら、もう絶対外には出られないんだよ。この学園って、何十年も暇を潰せるような施設かな?」

    霧切「それと江ノ島さん。貴女、留年を選んだら私たちを殺す気ね?」

    その言葉に、十神は納得したように言った。

    十神「生きて過ごすとは一言も言っていないからな」

    江ノ島「あららバレちゃった」

    江ノ島の発言は留年派の反感を大いに買った。

    朝日奈「そんなのって、騙したのねひどい!」

    江ノ島「おいおいおい、俺様が騙すなんて人聞きの悪い。ただ言ってなかっただけだぜ〜?」

    江ノ島「そんなの~、上手い条件だと思って素直に飲み込むアンタらが悪いんじゃーん!」

    腐川「そんなの一緒よ!」

    苗木「やめてよ皆!」

    石丸「だがこれで卒業を選ぶだろう皆!」

    沈黙。ただ霧切がようやくカップ麺を払い除けた音だけがひびいた。

    桑田「そんなの……もちろんに決まってんだろ!」

    朝日奈「そうだよ!ごめんねさくらちゃん、私さくらちゃんと一緒に外に行くよ!」

    不二咲「僕は死にたくないのもあるよ。だけど、石丸君と大和田君の言葉がもっと響いた!」

    腐川「死ぬのはごめんだもの、の、のふぇっくしょい!!」

    ジェノ「なになに~!?よくわかんねーけど選択肢?だったら白夜様一択よ!」

    葉隠「借金は嫌だが、死ぬのはもっとごめんだべ!」

    江ノ島「決まった?じゃあはい。お手元のスイッチで投票してちょーだいな」
  23. 23 : : 2016/07/01(金) 07:07:56

    卒業 卒業 卒業

    Congratulations!!

    モニターに表示された金色の文字。生徒たちは各々の方で喜んだ。

    江ノ島「あーあー、てっきり割れると思ったのに。つまんないの」

    戦刃「盾子ちゃん、私たちはどうするの?」

    江ノ島「このまま生きてても絶望的につまんないだけだしー。いっそ死のうかな」

    苗木「行こうよ、江ノ島さん」

    江ノ島「は?」

    驚いたのは、江ノ島だけではなかった。

    朝日奈「わかってんの苗木!コイツが私たちにあんなことさせたんだよ!」

    霧切「苗木君、貴方正気じゃないわ。焚きつけた私が言えたことじゃないけれど」

    苗木「僕たちは忘れているとはいえ、同じクラスメートだったんだからさ、一緒にいることならできるでしょ?」

    苗木の希望に溢れた瞳。それに江ノ島はもう1個、手にしていたラーメンを放り投げてあからさまに嫌がった。

    もちろん放られたラーメンは霧切の頭の上。

    江ノ島「あー!その目!私様がいっちばーん嫌いなやつ!ウザイウザイ!そういう馴れ合い私様きらいなの!じゃあさっさっと私様はおしおきされるから!」

    戦刃「盾子ちゃん!?」

    江ノ島「お姉ちゃんは好きにして!それでは逝きましょう!お仕置きターイム!」

    超高校級の絶望 江ノ島盾子 おしおき
    即席おしおき!インスタント三分クッキング!

    江ノ島盾子の目の前にある巨大な穴。
    それは巨大なカップ麺である。
    上から大量の熱湯が注がれる。

    江ノ島の立つ足場が無くなって……。

    ぼちゃん。

    江ノ島は熱湯の中に消えていった。

    戦刃「盾子ちゃん……」

    苗木(が出したカップ麺)によって、コロシアイ学園生活は終わりを告げた。
  24. 24 : : 2016/07/01(金) 07:09:10

    誰もいない希望ヶ峰学園

    戦刃「なにも死ぬ振りは必要なかったんじゃないの」

    体育館のステージに座っていた戦刃は横を向いた。

    江ノ島「最初で最後のコロシアイ死亡者って面白いじゃない。生きてるけど。それに、アイツらの絶望的な顔も久々に見れたし」

    戦刃「そっか」

    江ノ島「お姉ちゃんは行かなくてよかったの?」

    戦刃「盾子ちゃんがああいう死に方をするとは思えなかったし。皆より私は盾子ちゃんを選ぶよ」

    江ノ島「とことん残念なお姉ちゃんだわ。アンタ」

    戦刃「え、そうかな」

    本当に残念よ。江ノ島はそう言ってステージから降りた。

    江ノ島「残姉ちゃん行くよ!こんな湿気た学校に用はないでしょ?ラーメン片づけたらさっさと出てくわよ!」

    戦刃「え、あ、うん!」

    戦刃は駆けた。次の絶望に満面の笑みを貼り付けながら。
    江ノ島もまた、次はどうやって誰を絶望させようか笑んでいた。



















    「なんだよこれ……」

    「これって幸運と不運どっちだと思う?」

    青い海、白い砂浜、煌めく太陽。そこにできたインスタントラーメンの山。

    少年2人はお互いに顔をすくめた。

    What is the next despair…?
  25. 25 : : 2016/07/01(金) 07:11:43

    以上です。

    コメディというテーマに沿えていたでしょうか?

    少しでも面白いと感じていただければ幸いです。

    最後に、丸亀製麺のかしわ天はめっちゃ旨いです。

    ありがとうございました!

  26. 26 : : 2016/07/01(金) 16:28:45

    ※訂正とお詫び

    >>1で、Cチームと記載していましたが、正しくはAチームでした。
    とんでもねー間違いをしてしまい本当に申しわけないです。

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