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花村「ここ…何処なの」

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  1. 1 : : 2016/03/24(木) 19:18:07
    ネタバレ、キャラ崩壊注意。

















    目が覚めた時、ぼくは砂浜に倒れていた。

    見覚えのあるその風景は、ぼくの気分をひどく落とす。

    だが、建物は汚れ、色が落ちており、とてもみすぼらしく感じられた。

    両手のひらを砂に押し付け立ち上がる。

    あの時の鮮やかな青とは違い、暗い色をした海。

    落ちたら、名前や存在までも飲み込まれてしまいそうな、その色にぼくは身震いする。

    山を身近に育ってきたぼくだから、海なんて得体の知れない液体が溜まった場所になんら親しみも覚えない。

    歩く気力なんてなかった。

    ぼくは、もう一度砂の上に寝転がる。

    少し湿った砂の感触が気持ち悪い。

    見上げた空は、ぼくの気分をより鬱蒼とさせる曇り空だった。

    「お前、花村か!」

    大きな声が聞こえ、狼狽する。体がビクっと震えた。

    「うそだうそだうそだ、君がいる筈がないんだ、ありえない、君はもういない。」

    花村は、よろけながらも立ち上がり、海に向って走り出す。砂が足にくっつくから歩きづらい。

    「待て!花村!」

    「嫌だ!!ごめんなさい、謝るから来ないで!」

    服が濡れるのも構わずに黒い海へ逃げ込むが、その体型に似合わず足の速い彼は僕の腕を掴み離さない。

    「花村、何故逃げる」

    「そんなの君が1番わかってるだろ!!ぼくが君を殺したからだよ!!!」

    なんとかその手を振り払い、十神と向かい合った。

    「そもそもどうして近づいて来るんだよ!?復讐にでも来たのかい!?」

    「落ち着け花村」

    「落ち着いてられるわけないだろ!!何でそんな冷静なんだよ十神くんは…なんで」

    花村は涙を流しその場に崩れ落ちた。

    海水に熱を奪われ冷えた体は動きも鈍く、花村は立ち上がる動作もわざわざ両手を使った。

    「それは多分、ボクが十神白夜じゃないからかな」

    わずかな沈黙の後、怪訝に眉を寄せる花村に乾いた笑みを向けた。
  2. 2 : : 2016/03/24(木) 20:39:52


    超高校級の詐欺師として希望ヶ峰学園にスカウトされたボクは、十神白夜として入学することを条件に言われた通りの時間に学園へと向かった。

    入学式だそうだ。

    容姿、声をいつも以上に入念に鏡の前で確かめたのを覚えている。

    「みんな一緒にこの島を出るだなんて言っておきながら…ボクが最初に死んじゃうなんてね。ごめんね花村くん、君も死なせちゃったみたいだね」

    先程の自重気味な笑みとは違い、悔しそうに力のない笑みを見せた。

    南国な筈なのにいやに冷たい風が肌を撫で、チクチクと痛む。

    花村は理解ができなかった。

    自分を殺した相手が目の前にいるというのに、どうしてこんなにも穏やかな笑みを十神は浮かべているのだろうか。

    彼にとって自分の命は最も大切な物ではないとでもいうのか。

    いやな汗が背中を流れた。

    「花村くん、ボク学級裁判見てたよ。おしおきも…辛かったよね」

    死ぬ直前の状況を思い出しえずく。

    「動機だって…花村くんは悪くないよ。しょうがなかったんだからさ、コテージもそのままあるから一旦戻ろうよ」

    目の前のできごとが信じられない。

    死んだ筈の人間が動いて喋っていることもそうだ、穴だらけになって死んでいたというのに。

    「あれ、ぼくの方がおかしいのかな。てっきりぼくは君に責められるものかと」

    「まさか、そんなことしないよ!自分の発言を守ることができなかった自分を責めてはいるけれどね」

    十神は大きな手を差し伸べて柔らかな声を出す。

    「また、料理を作ってくれないかな。スーパーのレトルトもそろそろ食べ尽くしちゃってね、飽きそうなんだ」

    花村は嘔吐を落ち着くと、涙に汚れた顔で十神を見る。

    「ぼくの料理がどうして信用できるの」

    「当たり前だよ、パーティの料理だって毒なんか入っていなかったし」

    「ぼくは君を殺したんだよ!!わかってるの?!なんでそんな風に近づいてこられるの?!!」

    「悪かったのは狛枝くんでしょ?彼があんなことさえしなければ君だって」

    「ぼくは、君も憎いよ」

    十神の表情が固まり、視線が花村に据えられた。

    「パーティーが開かれなければ良かったとも思ってる。君が目立ったリーダーを演じなければ、クロになったのはぼくじゃなかったかもしれないとも思ってるよ」

    実にエゴイズムな考え方だ。

    以前の自分なら、もっと人に寄り添った思考ができていた筈なのに。

    「君に悪かったって思ってる、君に責められても仕方ないとも。だけど、その気がないならぼくは二度と十神くんに会いたくない」

    花村は十神の横を通り砂浜に戻る。

    「必要以上の事で近づかないで欲しい。十神くんだってその方が良いだろう?」

    語気を強めて言うと花村はコテージの方へとやや急ぎ足で向かった。

  3. 3 : : 2016/04/03(日) 10:00:15
    十神は海を上がりコテージへと歩いた。潮風が濡れたにあたり気持ち悪い。花村との会話を振り返り自分の行動を思い返すが、何か間違っていたとも思えない。
    不安定な精神の人間への対処の正解など簡単に分かる筈もないのだからしょうがないと結論づけると、前を向き直し歩き始める。

    十神が目を覚ましたのはパーティーを開かれていた筈の場所であった。目の前の景色が全く別の物に変わったことにひどく困惑し、静か過ぎる場所の所為か耳鳴りが騒々しかった。混濁した記憶を落ち着いて振り返ると、光ったナイフと胴の無数の痛みを鮮明に思い出す。
    誰もいないレストラン、誰もいないビーチ、誰もいないコテージ。久々に感じる孤独が自分に貼り付いて離れない。

    近くのモニターに砂嵐が入り、映像が流れ始めた。映ったのは自分以外のこの島の生徒達だった。

    ピリピリと肌が痛く、空気が重々しい。あの場には疑心暗鬼の粉が舞っており火を点けたら爆発してしまいそうだ。

    学級裁判…自分が死んだ時点で他のクラスメイトが死ぬことも決まっていた話なのだ。クラスメイトに宣言した…全員を導き生きて戻る…その言葉は嘘となってしまった。

    「本当に詐欺師のようだな」

    自嘲気味にそう呟くと十神は眼鏡を地面に落としその足で踏み潰した。

    詐欺師といっても法に触れ金銭を巻き上げるといったことはしたことがない。自分が人を騙し手に入れたいものは金ではなく唯一の『個』だ。

    戸籍はない、年齢も不明、親の存在すら確認できず、性別も知るのは己だけ。そんな自分が個を得るためには人の真似をする以外術がなかった。

    その人の真似を…その人の存在を食い潰す程に上達した頃には自分には二つ目の個を得る意外に術はないのだと絶望した。

  4. 4 : : 2019/10/17(木) 21:26:04
    続き楽しみにしてます
  5. 5 : : 2019/10/18(金) 16:28:43
    続き楽しみに待ってます

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Arute28

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