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『そして桑田 怜恩はギターを置いた』
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- 1 : 2015/11/08(日) 00:53:36 :
- 始めましてS1gumaと申します
初投稿の作品なので未熟な面もありますがどうかご容赦ください
短めの作品なので時間や過程が飛んで行ってしまっていると思いますが最後まで読んでくださると嬉しいです
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- 2 : 2015/11/08(日) 00:53:50 :
- 「♪~♪~」
ギターを軽く鳴らし鼻歌交じりに自室で趣味の時間を過ごす
この学園に入学してから1年間こうやって放課後に早めに帰り自室でギターを弾きながら消灯の間での時間を潰している
本来であればオレは…
小高く盛られた土 青い芝生 ぎらつく太陽
そして、相手のスイングと同時に快く吹く風
「・・・。」
頭を軽く振り先ほどの想像を打ち消すようにギターを強めにならす
オレは超高校級の野球選手として入学したが 俺は入学してから野球をしていない
『野球は嫌いなんだ』
皆の前で言った言葉を思い出す
少しだけ、自分が嫌いになりそうになったが本心も含まれていた
「俺は、野球が嫌いだ」
そうボソッと自分に言い聞かせるように呟いた
納得しようとしない自分に納得させるように
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- 3 : 2015/11/08(日) 00:54:07 :
- 『ピンポーーン』
自室の来客を知らせる鈴が鳴る
オープンフィンガーグローブをはめた手をギターから離しドアへと近寄る
「桑田ー!?いるー?」
ドアを隔てた向こう側から元気な甲高い声が響く
「いるよ、んだよ」
ドアを開きながらそう答えるとドアの前には案の定、超高校級のスイマーである朝日奈 葵が立っていた
「暇っしょ?暇ならドーナツ食べに行こうよー」
最近、よく誘われる彼女からの誘いを断ることなく俺は返事もせずに食堂へと向かう
「ギターどう?うまくなった?」
背後からぶつけられる質問
「まぁな、後数か月で武道館満員になるな」
「凄いじゃん!サイン貰っとこうかなー」
ドーナツをトレイに山盛りにしながらそう答える彼女は少し悲しそうにも見えた
席に着くと 先客がいた
「あら、今日も食堂にいらして?」
「まぁ、誘われたんでな」
超高校級のギャンブラー、セレスティア・ルーデンベルクはカップに手を書けながら作られた笑顔でオレに話しかけた
正直オレは彼女のことが少し苦手だった
何だかオレの心中を見透かされそうだったからだ
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- 4 : 2015/11/08(日) 00:54:36 :
- 現に俺が野球をやめるという発言をしたときに他のクラスメイトは驚きの表情だったが彼女は微笑んでいた
「そういや、朝日奈ちゃんは最近どうなん?水泳の方は」
先客の彼女から話しかけられないように隣でドーナツを頬張る彼女に話しかける
「そうだねー、あんまり調子よくはないかなー」
ドーナツを食べる手を休めることなく俺の質問に答える
「そんなこと言っても高校生でお前に勝てるやつなんていないだろ」
だからこその超高校級だ、そんなことはわかっている
「いるよ?勝てなかった人」
ドーナツを食べる手が止まり彼女の視線は自分の膝に落ちた
「あら、興味深い話ですわね。超高校級の貴方が負ける人物は誰の事でしょう」
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- 5 : 2015/11/08(日) 00:54:58 :
- 少しの沈黙がその場を支配する
オレは気づいてしまった
いや、知っていた
それは…
「昨日の自分だよ」
彼女の口からオレが考えていた言葉が漏れる
「いやー、私は別に1位になろーって水泳を頑張ったわけじゃなくてさ」
ポツリポツリと垂れ落ちる雫のように彼女は言葉を紡ぐ
「過去の自分に勝とうと思ってそれを続けてきた結果なの」
わかる
「周りは私が大会で泳いで天才だとか逸材だって騒ぐけど私はそんなこと全く思ってないんだよね」
そう・・・
『もっと体力をつけないと』
『もっと遠くに飛ばす為に』
『もっと速く!今日の試合の俺よりも!』
痛いほどわかる
「こういう挫折ってのは皆もあると思う、そう簡単にタイムは伸びないし辛い、でも・・・」
これ以上は聞きたくない
両耳を塞ごうとする両手を固く握る
聞かなきゃいけない・・・知っていてもオレは
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- 6 : 2015/11/08(日) 00:55:10 :
- 「水泳が好きだから」
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- 7 : 2015/11/08(日) 00:55:31 :
- 時が止まる
巨大なハンマーのようなもので後頭部を殴られたような衝撃
心で思っていた、心ではわかっていた
それでも、俺はその痛みを閉じ込めて過ごしてきた
でも、聞いてしまった
水泳が大好きで大好きでたまらない彼女の言葉
野球が大好きで大好きでたまらなかったオレの心の中に覆いかぶさり重ねていた”本当”を溶かし始める
ガタッ!
「ちょっと、トイレ行ってくるわ」
立ち上がり食堂を立ち去ろうとし、ティーカップを口元に持っていっている彼女とすれ違った時
彼女は微笑んでいるように見えた
ダメだ…俺はもう戻れない
オレは入学と同時に決めたんだ
早歩きが駆け足に変わっていく
自室のドアを乱暴に開け
ギターを手に取り叫ぶ
決心が揺るがぬように
これ以上、オレを傷つけないように
紛い物の好きを本物にするために…
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- 8 : 2015/11/08(日) 00:55:46 :
それからどれくらいの時間が経ったのだろう
叫び声は掠れた空気の音しか出ない
パチパチパチ
背後から拍手が聞こえる
「いやー・・・すごかったっすねー」
そこには1つ上の学年の超高校級の軽音部である澪田 唯吹が壁に背を預け拍手をしていた
「レオンちゃん」
拍手の形を崩さぬまま近寄る
そして、少し時間を空けると
口を開いた
「才能ないっすねー。やめたほうがいいっすよー」
挨拶を交わすが如くさらりと彼女はオレに言った
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- 9 : 2015/11/08(日) 00:56:06 :
- 「気づいてるはずっすよー」
彼女は口調こそ、くだけていはしたが何とも言えない威圧感があった
「うまいへたの話じゃなくレオンちゃんは”好き”じゃないんでしょ」
本心を突かれたオレは崩れ落ちないように足を踏ん張る
「そのグローブだって、最初はイカスーっておもったりしてたっすけど」
ギターを支える手に力がこもる
「それって、野球の努力を隠すため、本当に好きなことから目を背けるためにしてることなんっすよね」
そう、その通りだった
普通の男子高校生の綺麗な掌とはかけ離れた努力の結晶
それを俺は見たくなかったのだ
「まっ、唯吹は別に強制はしないっす」
オレの正面に立ち
真剣な顔になる彼女につられオレも真剣な顔になる
「本当に好きでやってる唯吹から言わせてもらえば迷惑っす」
その言葉を残し部屋を去って行った
「オレは…オレは…」
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- 10 : 2015/11/08(日) 00:56:25 :
- ~1年後~
『さぁ、1対0で迎えた9回裏、2アウトを取り今もマウンドにはこの男が立っております』
マウンド上の投手は片足を上げる
『追い込まれてからの投球は』
真っすぐ踏み出し放たれた球はバットをかいくぐり捕手のミットへとおさまった
『試合終了!!!!夏の甲子園を制したのは希望ヶ峰学園』
『エースで4番の桑田 怜恩選手、全試合完全試合の偉業を達成しました』
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- 11 : 2015/11/08(日) 00:56:39 :
- 『そして桑田 怜恩はギターを置いた』 完
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- 12 : 2015/11/08(日) 00:57:33 :
- ありがとうございました。
これから、作品を投稿していきたいと思いますので
よろしくお願いします
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- 13 : 2015/11/08(日) 01:01:16 :
- お疲れ様でした!!
凄く良かったです!!
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- 14 : 2015/11/08(日) 02:27:32 :
- >>13
ありがとうございます。今後スキルアップしたいと思いますのでよろしくお願いします
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- 15 : 2015/11/08(日) 02:51:51 :
- 面白かったです。話の組み立て方がお上手だと思いました!
お疲れさまでした!
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- 16 : 2015/11/08(日) 08:05:13 :
- お疲れ様です!ストーリーが良かったです!
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- 17 : 2015/11/08(日) 11:56:55 :
- >>15
ありがとうございます。今後も頑張りますのでよろしくお願いします
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- 18 : 2015/11/08(日) 11:57:21 :
- >>16
ありがとうございます。
そういっていただけると嬉しいです
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- 19 : 2015/11/08(日) 12:54:27 :
- 素晴らしかったです!本編でもこうなってたらいいなあと思いました!
私なんかが偉そうに言うのもあれですが
「本当に好きでやってる唯吹から言わせてもらえば迷惑っす」
1つ前の台詞を考えるとちょっと唐突過ぎる感じがするので
「でも、本当に好きでやってる唯吹から言わせてもらえば迷惑っす」
という方が自然かなーと思いました。すいません・・・
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- 20 : 2015/11/08(日) 16:54:49 :
- >>19
助言ありがとうございます
今後、言い回しとかも勉強していきます
ありがとうございました
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- 21 : 2015/11/16(月) 08:27:24 :
- 桑田くん大好きなんですが、このお話で更に好きになれました(*´∀`*)
お疲れ様です、読んでて気持ちよかったです!
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- 22 : 2020/05/27(水) 10:28:54 :
- この桑田はアポじゃなくていい桑田
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