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  1. 1 : : 2015/10/10(土) 22:58:35
    これはエレンがある日自分の能力に気付いて苦悩する的な話
    チート、ハーレムではありません
    どのスレ見てもチートチートハーレムハーレム……もううんざりだ!!
    と言うことで書かせて貰います
  2. 2 : : 2015/10/11(日) 00:28:08
    鐘が鳴る、木々に止まり羽を休めていた鳥達が一斉に飛び立つ。
    鐘が鳴る、訓練所中を響かせる、耳が痛くなるほどの轟音を。
    鐘が鳴る、俺の眠りを、妨げようとするかの如く。

    「…もう、朝か」
    男子多数との相部屋になっているこの部屋で、目を覚まし、独りごちる。
    隣で気持ちよさそうにイビキをかくライナーに腹が立ったが気持ちを抑える。
    隣でアルミンが行儀良くスースーと可愛い寝息を立てて寝ているのを見て心が落ち着く。
    だがライナーのイビキが部屋中に響く度にうぅ、と若干寝苦しそうな顔を浮かべるのを見て「フハッ」と笑ってしまう。

    「何朝っぱらから笑ってんだよ、気色悪い」
    横から馴染みのある声が聞こえてきたのでそちらの方へと首を動かす。
    見慣れた馬面の男が欠伸をかきながら頭を掻いていた。

    「起きてたのかよ、ジャン、一生寝てりゃいいのに」
    挑発混じりに軽口を叩く、ジャンは手を止め、

    「そんなお子様みてぇな挑発には乗らねえよ、ちったぁ学習しろよ死に急ぐ野郎」
    と、更に軽口を叩き返してくる。
    エレンは軽く呆然としていた。
    それに気づきジャンが、
    「んだよ、ジロジロ見んじゃねぇよ」
    心底気持ち悪いものを見るような目で返す。

    「いや、悪い…馬って以外と学習能力が高いんだなって事に気が付いただけだ」
    「へぇ、死に急ぎ野郎のポンコツな頭でもやっと理解出来るようになったのか、そりゃすげぇ、大発見だな」

    「二人とも、朝から喧嘩しちゃダメだよ」
    軽口を叩き合い、互いに睨みあい重くなっていた空気を一気に吹き飛ばされる。
    重たそうな目を擦り寝癖立った髪の毛を抑えるアルミン。

    「「アルミン、こいつが先に」」
    見事に重なったエレンとジャンが必死に弁解しようとするが、
    鐘の音が鳴り響く、朝食時間の合図だ。

    「ほら、もう行こうよ、早くしないとまたサシャに取られちゃうよ」

    壁に掛けてあった厚めの防寒着を手に取り、立ち上がったアルミンがトトトとベッドから降り部屋を出て行く。

    「やべっ、早く行かねぇと、おーい!待ってくれアルミーン!」
    「サシャに取られるのはコニーだけで十分だしな」

    2人も同じくして防寒着を手早く羽織り、素早くベッドから飛び降り部屋から足早に出て行く。
    まだまばらにしか人が居ないがもう少し経つと一気に人が押し寄せてくるので朝食は早めに出るのがベストだったりする。
    サシャは食欲旺盛で食には敏感だ、だが普段たくさん食べているせいなのか、睡眠も食事量に伴った分取らないといけないらしく大体この時間帯には起きてこない、とミカサが言っていたのを思い出し、歩く速度を緩める。

    「おはよう、エレン、アルミン…それとジャンも」
    他の訓練生、エレンらと同様に防寒着に身を包んだミカサが挨拶をする。

    「おっす」
    「おはよう、ミカサ」
    「お、おはよう、ミカサ…そのき今日も黒髪が…」

    上からエレン、アルミン、ジャンと挨拶を返していく。ジャンはいつもと変わらず緊張のせいか呂律が回っていない。

    食堂の扉を開け放つと中から香ばしく焼けたパンの匂いと熱々に熱せられたスープの匂いが鼻腔をくすぐる。
    なんら今までと変わらないメニューだが今現在冬の時期としては朝食時のスープは重宝するのだ。

    「今日は何の訓練だっけか」
    何気なく口にした、誰に問いかけるでもない疑問。
    「今日は午前に座学と立体機動…午後は対人格闘術に兵站行進」
    「座学は嬉しいけどなぁ…この時期は肌が乾燥してるから立体機動とか本当風に当たって痛いよね」

    「肌を気にするとか女子かよお前は」
    「でも乾燥してる時期とかワイヤー当たるととても痛いじゃん」
    頬を軽く膨らますアルミンを横目に見ながらエレンは別の事を考えていた。

    あの力は一体何だったんだ…、幻覚でも無ければ夢でもなかった…。じゃああれは一体…。

    エレンの考えている事の詳細、それは先月の雪山訓練にまで遡る。

    その日は風がとても強く吹雪き視界不良、訓練中止かと思われていた。
    だが教官の判断は続行だった。
    視界不良、それだけで訓練生達の不安を煽るのは容易かった、流石に危険だという事で参加者は挙手制となり、参加者は全体の5%にも満たなかった。
    不参加者には座学と教官からの叱責──もちろん今回の訓練に不参加しなかった腰抜け共に何時間も説教したという。
  3. 3 : : 2015/10/11(日) 01:15:07
    一班三人構成の班が6つ、たったそれだけの人数しか参加しなかった。
    だが無理もない、訓練兵団に入団してからあと数ヶ月で一年経つというのだ。
    こんな所で死にたくないという思いが強くなり尻込みしてしまう者がほとんどだった。
    流石に教官も危険だと判断し、教官らが先行し、中間地点──山の中腹で待機する事になった。
    そしていよいよ、104期史上初の最高難易度の訓練が始まった。

    ───


    寒い、身体が凍っちまいそうだ。

    風に煽られフードが翻り雪と暴風が顔を集中攻撃する。
    急いでフードを被り直し顔を保護する。
    ハァーと息を吐くと、白い湯気となり風と共に消えていく。
    先を行く仲間の背中を急いで追う、暴風に煽られ倒れないよう前屈みになって歩いていく。

    「風がとても強い、この洞穴で様子を見よう」
    ミカサが班員に向け提唱する。
    班員2人は頷く、3人は一先ず洞穴へと入り一息つく。

    「はぁ、はぁ…さみい、手が悴んで感覚がねぇよ…」
    手袋から手を抜き両手をこすり合わせ温める。
    ミカサが荷物入れから簡易火打ち石を取り出し素早く紙に火をつけ乾いた枝へ火を移す。

    トーマスが火にを手をかざしながら、
    「ミーナの奴…大丈夫かな…」
    顔には不安の色が濃く刻まれている。

    「大丈夫だ、あいつは強いからな」

    ミーナ、彼女とは途中で逸れてしまったのだ、その際エレンとトーマスが探しに行こうとしたが、ミカサが「ここで死人を増やしてしまっては意味がない、ミーナならきっと中間地点まで自力で行こうと考えるはず」とキツく言われてしまったのでミカサに従いここまで来たのだ。

    荷物入れから携帯食料を取り出し、端っこを齧る。
    美味くも不味くもない、味よりも長持ちを優先してあるものなので当然なのだがやはり味気ない、更に鉄を加工して作られた魔法瓶なる物を荷物入れから取り出す、それを小さいカップに半分程まで注ぎ火にかける。

    「アルミンは大丈夫…かな、あいつが一番心配だ、無理して追いつこうとするから途中で倒れたりしてなきゃいいんだが」
    やはり他の班の動向も気になる、それが幼馴染となれば尚更。

    「アルミンがそれを聞いたらきっと怒る、「僕をもうちょっと信じてよ」って言うと思う」
    「ああ、そうだな」

    火にかけたカップを口元まで運び啜る、長時間極寒の中を歩いてきたので手足の感覚が消えかかっていたが暖を取ってから感覚が戻ってきた。

    「あちっ!」
    暖を取る事ばかりに頭が働いていた為熱湯を少し冷ますという工程をすっ飛ばしていた。
    エレンの反応を見て2人が小さく笑う。
    改めて熱湯に息を吹きかけ粗熱を取る。
    もう一度口を付ける。

    「ふぅ…身体があったまる…」
    熱々のお湯が身体を通っていく感覚が鮮明に感じ取れ、そこからじんわりと身体が温まっていく。

    「エレン、私にも少し頂戴」
    「ほらよ、全部飲んでいいぞ」
    「…ありがとう」

    ミカサが両手を差し出す、ここで無視するのは流石に外道にも程があるかと思いカップをミカサの手に置く。
    ミカサはカップを両手でもちクルクルとカップを回転させる。

    ……何をしてるんだ?ミカサのやつ。

    カップを回転させ終え、口を付けお湯を飲み下す。

    男女でこんなに飲みかたって変わるもんなんだなぁ…。
    と感嘆してしまう。

    「なぁミカサ、さっきのカップを回してたのって何か意味でもあるの?」
    しばらく黙りこくってたトーマスが疑問を口にした。

    「これは昔両親に教わった…飲み物を飲む時の作法」
    「へぇ、そうなんだ…」
    ミカサの一言でエレンの脳裏に3年前の悲劇の場面が映し出される。
    それを無理やり外へ追いやり、少々曇った表情となる。

    「てっきり…間接キスかと思ったよ…」
    音量が小さかったので何を言っているのか鮮明には聞き取れずエレンが質問する。するとトーマスは慌てた様子で「何でもないよ」と苦笑いを浮かべるだけだった。

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