このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。
この作品は執筆を終了しています。
to15
- 東京喰種トーキョーグール
- 4870
- 42
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- 1 : 2015/08/10(月) 19:24:30 :
- どのような経緯で滝澤政道がオウルになったのか、自分なりに妄想を膨らまし、捏造したお話です。私が書いたにしてはグロいので、苦手な方は一応御注意を・・・
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- 2 : 2015/08/10(月) 19:29:27 :
-
驟雨の中での事だった。
「ここは俺が食い止める。退却しろ、政道・・・行け!!!」
「できませェェん!!!俺はッ喰種捜査官だ!!!」
「フェイの赫子・・・法寺のクインケか」
「お前アイツの部下?焔 は法寺がもっているのか?」
「がはっ・・・放ぜッ!!!」
「ああ、放す」
「ノロ」
「い・・・や・・・だ・・・・・・」
この日、俺の人生は終わった。
そして始まった。
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- 3 : 2015/08/10(月) 19:48:47 :
- 早速期待です!(っ`・ω・´)っフレーッ!フレーッ!
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- 4 : 2015/08/10(月) 19:50:01 :
- 「ここはどこだ?」
目醒めたのは、見知らぬ建物の一室にある粗末なベッドの上だった。部屋に一つだけある窓からは月光と思しき光が差し込んできており、今は夜であることが把握できた。
少しでも多くの現状を把握するため、上体を起こして周囲を見回してみる。
不気味な部屋だ。廃ビルの一室といったところだろうか・・・少なくとも、病院ではなさそうだ。
それにしても・・・静かだな。
「ようやく目が醒めたみたいだね。滝澤くん」
突然、横から少女の声が聞こえてきた。てっきり部屋には自分以外に誰もいないものだと思っていたので、その声に少し驚いてしまった。
この部屋には自分以外にも人がいたのか。取り敢えず、ここがどこか聞かないとな。あれ?でもさっき部屋を見回したときは、誰もいなかったよな?
胸の内に一つの疑問を持ったまま、俺は声のした方へと顔を向けた。
「・・・ひぃッ!」
この時の驚きようはさっきの比ではなかった。俺は思わず声を上げ、ベッドの上で後ずさりをする。そしてそのまま、ベッドから落ちた。
「いつつ・・・」
「何やってんの、滝澤くん」
無様に地面に仰け反る俺に、少女は冷静に突っ込みを入れた。情けない姿を見せてしまったと僅かに羞恥心を覚えたが、その前に一つ言い訳させてもらおう。恐らく大抵の人間はこうなると。
何故なら、不気味な廃ビルの一室に音も無く少女が・・・それも全身に包帯を巻いたミイラのような少女が現れたのだから!
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- 5 : 2015/08/10(月) 19:52:16 :
- >>3
早くもありがとうございます!(''◇'')ゞ
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- 6 : 2015/08/10(月) 20:30:14 :
- 「お、お前ッ、何者だ!?」
「その質問に答えるのもいいけど、あなたにはそんなことよりももっと訊くべきことがあるんじゃないの?」
お前のその訳の分からない格好以上に気になることなんて、あるわけないだろう・・・と、心の中で密かに突っ込みを入れる。彼女はそれに勘付いたのか、もっと大事なことがあるはずなんだけどと念押ししてきた。
「ここがどこかも気になるけど、お前の正体の方がよっぽど気になるね!」
しつこかったので、少し怒鳴り気味に言い放った。
「そういうことじゃなくて、もっと根本的なことだよ」
「根本的なこと?」
「それじゃあ逆に訊くけどさ・・・」
「滝澤くんはさぁ、どうしてまだ生きてるの?」
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- 7 : 2015/08/10(月) 21:01:43 :
- どうしてと言われても、生きていることに理由なんて・・・いや、待てよ。そもそも俺はどうしてここで寝ていたんだ?意識を失う前、俺は何をしていたんだ?
突如として湧き出た疑問の答えを思い出すため、半ば混乱している頭を必死で回転させる。
・・・そうだ。俺は喰種捜査官として梟討伐戦に参加して・・・それから、真戸の勘が気になって、亜門さんの所へ駆け付けて・・・・・・
「・・・うぁぁぁぁぁぁあああああああああああ!!!!!!」
俺は全てを思い出した。
雨の中、亜門さんが右腕を失くして倒れていたこと。そこにアオギリの樹の喰種が現れたこと。そして・・・
左腕を丸ごと喰われて、死んだこと。
「思い出したみたいだね」
少女の顔は包帯で覆われ表情を確認することは出来なかったが、その時彼女は明らかに笑っていた。ピエロの滑稽な劇を楽しむ観客のように・・・
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- 8 : 2015/08/10(月) 21:20:06 :
- 「どうして、俺は生きているんですか。教えてください・・・お願いします!」
彼女が自分の味方などではないことは十分理解していた。でも俺には、彼女に頼る以外に選択肢はなかった。
俺は出来うる限りの誠意を示して彼女に頼み込む。彼女はそれを見て「どうしようか」と呟き出した。それを見た俺が、あと一押しともう一度頭を下げようとしたとき・・・
『ググ~』
廃墟に流れる不気味な雰囲気を一気に吹き飛ばす程大きく情けない音が、部屋全体に響き渡った。それと共に、今まで気付かなかった空腹感がどっと押し寄せてきた。
「良いよ、教えてあげる。でもその前に、腹ごしらえをしないとね」
そう言って、彼女は部屋を後にした。
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- 9 : 2015/08/11(火) 19:36:57 :
- 少女が立ち去ると、部屋全体に静寂が蘇った。
その静けさに、俺は改めてここが廃ビルの一室であることを思い知らされた。空腹による腹の音で吹き飛んだ筈の不気味さも独りになる事で蘇ってしまったらしく、背筋には冷たいものが走り出す。
しかし、今は怖がっている場合ではない。彼女が食糧を持ってくるまでの間、少しでも今の状況を整理しなければ。
まず、俺がどうして生きているかだが、これに関してはあれこれ考えるよりも彼女の答えを聞くのが早いだろう。となると今考えるべきことは、彼女の正体か?
彼女はやはりアオギリの樹の喰種なのだろうか。しかし、そうであるならばどうして捜査官である俺を生かしているのだろう。奴等からしたら、俺が生きていることは百害あっても一利なしの筈だ。
いや、所詮次席の俺には百個も害はないか。
でも一利が無いのは変わらない・・・待てよ。奴等はCCGの情報を欲してるんじゃ。だとしたら俺はこれから・・・
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- 10 : 2015/08/11(火) 19:56:41 :
- 「そんな青い顔してどうしたの?」
いつの間にか、少女が部屋に戻っていた。
「そっか、お腹が空いてるんだったね」
惚けたような声で彼女は俺をからかった。しかしその声からは、敵意の類の感情は感じ取れなかった。そのことから一筋の光明を見た俺は、先程思い付いてしまった未来がただの妄想で終わってくれることを必死に願った。
「ご飯・・・」
おっと、必死で願うあまりに彼女が食糧を持ってきてくれたことを忘れていた。これからどうなるにしろ、体力は回復させておかないと・・・
「取り敢えずはありがとよ」
感謝の言葉を述べてから、食糧を受け取るために右手を前へと伸ばした。彼女は懐から持ってきた“食糧”を取り出すと、どういたしましてと一言添えて、差し出された掌に“それ”を載せた。
それを俺は早速口へと運ぼうとする。その時・・・
「ひ、ひぃッ!?」
俺は見てしまった。気付いてしまった。その食糧の正体に。
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- 11 : 2015/08/11(火) 20:51:56 :
- 「これって・・・人の指?」
宿主を失ったその指は、氷なんかよりもずっと冷たいように感じた。
「食べないの?」
食糧を口へと運ぶ手を止めた俺の顔を覗き込みながら、少女は先程と同じように惚けた声で尋ねて来た。
「こんなもの・・・食べられるわけがないだろ!俺は人間だぞッ!」
廃ビル全体に響き渡るような大声で叫んだ後、持っている指を放り投げた。その際に、妙な違和感を感じた。
指を投げようとする手が一瞬止まったのだ。
人の遺体の一部をぞんざいに扱う行為に躊躇したのだと、最初は思いたかった。しかし本当はもう分かっていた。
指を放り投げる時に、俺の頭をよぎった思考は・・・
『もったいない』
人間が、残飯や誤って地面に落としてしまった食べ物を捨てようとする時に抱く感情と同じだった。
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- 12 : 2015/08/11(火) 21:09:18 :
- 「あ~あ、勿体無いなあ」
少女は『もったいない』という感情を俺へと見せつけるかのように、先程床へと放り投げられた指を拾って食べた。それを見て、彼女が喰種であることをようやく確信すると共に、俺の頭に自分が喰種と同じ感情を持ってしまったという認識がよぎった。その認識を俺は即座に否定した。
否定の根拠は無かった。
「そんなの俺の知ったことか!人間の食べ物を持って来いよ!」
頭の中を支配し始めた一つの仮説を無理やりにでも吹き飛ばそうと、俺は少女に怒鳴った。
「え~、人間の食べ物か・・・」
そうだった。よくよく考えれば、喰種の彼女が人間の食べ物を持っている筈がないのだ。
「あるけど」
あるんかい。
「一週間前に、私達を付け回ってた捜査官の鞄から頂いて来たの」
「その捜査官はどうなったんだ」
「残念ながら・・・ね。でも私はそれには関わってないから、恨まないでよ」
少女のこの台詞は俺の怒りを鎮めようとしてのものだったのだろう。しかし、俺に言わせれば最初からそんな台詞など要らなかった。同僚とは言え誰だか判らない者の死に憤慨できる程、俺の心に余裕は無かった。
目の前に喰種が居て、しかもそいつの仲間は同僚の命を奪っているにも拘わらず、殺意や闘争心の類が全く湧いてこないとは、一体俺はどこまで堕ちたのだろうか。
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- 13 : 2015/08/11(火) 21:21:01 :
- 「とにかく、その飯をくれよ」
もう一度右手を伸ばし、食べ物を催促する。すると少女はあっさりと了承し、一つのビニール袋を手渡した。
袋の中にはあんパンが一個入っていた。
「消費期限が切れてから三日くらい経ってるけど、そこは大目に見てね」
言われなくても、この状況で消費期限がどうのこうの等と文句を垂れるつもりは毛頭ない。
俺は何も言わずに包装を開け、あんパンを手に取る。極度の空腹状態の中で、初めて対面した人間の食べ物は・・・
何だかとっても“不味そう”だった。
「どうしたの?早く食べなよ」
俺があんパンを見つめたまま静止したものだから、少女が早く食べるように催促してきた。
この躊躇いは、このパンが消費期限切れであるからなのだろうか。いや、それは恐らく違う。
確かに消費期限は切れてるし、俺自身、期限切れの食べ物を躊躇なく食べられるような人間ではない。だがこの状況ではそんな贅沢は言ってられないし、何より酷く空腹だ。つまり、目の前の食べ物には最高の調味料が振り掛けられているも同然である。
それなのに、食欲が雀の涙程も湧いてこない。
「食べないなら捨てるよ」
「うるせぇな。今食べるって!」
少女の再三の催促に痺れを切らした俺は、その勢いのままにあんパンを一齧りした。
「ゔ・・・ぅえええええええええええ!!!!!」
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- 14 : 2015/08/11(火) 21:41:26 :
- 不味い!今まで食べてきたどんな食べ物よりも!
パンは小麦粉ではなく粘土を練り固めて作ったような味で、中の餡子はヘドロか何かにしか例えようがないくらい不味くて、まるでまず味の塊。しかもそれが口内にへばり付いて離れず、絶え間なく吐き気を誘い続けてくる。兎にも角にも、とても食えたものではない。
俺は咄嗟に、あんパンが入っていたビニール袋へ嘔吐した。
「どうしたの?折角人間の食べ物をあげたのに・・・」
少女が心配そうに尋ねてくる。いや、心配そうなのは表向きだけで内心ではクスクス笑っている。証拠もないのにそう感じられた。
「それにしても、何で食べられなかったんだろうね。そんなに腐ってるようには見えなかったんだけどな~」
俺へと向けられた少女の独り言が、頭へ、脳味噌へ、深く突き刺さる。
喰種捜査官である俺はよく知っている。人間の食べ物を食べることができない、まさしく今の俺のような存在を・・・
「違う!俺は人間だッ!」
俺は叫んだ。叫ばずにはいられなかった。強い言葉を使うことでしか、否定することは出来なかった。だってもう、証拠はほとんど揃っているのだから。
「証拠なんて無い!飯が不味いと感じたのは、単に体調が悪いからだ!失くした腕があったのは、誰かが繋げてくれたからだ!!!」
「ふふふっ、やっぱり気付いてたんだ」
初めて少女が、明らかに笑った。
「それならもう分かってるよね?君がどうして生きているのか」
「違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う!!!」
「それは・・・」
「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!!」
「あなたが・・・」
「あり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ない!!!」
「喰種になったからだよ」
とうとう少女の口から、自分が一番聞きたくなかった“正解”が発せられた。いや・・・まだ判らないぞ。こいつは俺が絶望するのが見たくてこんな事を言っている可能性も・・・
「はい、鏡」
「ぇああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」
差し出された手鏡に映った俺の左眼は、血のように紅く染まっていた。
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- 15 : 2015/08/11(火) 22:00:24 :
- 受け入れ難い現実を突きつけられ、俺の頭の混乱はピークに達する。
一体どんな方法を使ったのか。誰がこんな事をしたのか。何のために行ったのか。自身の喰種化に対して様々な疑問が浮かび上がり、頭の中で音を立てて渦を巻く。その渦の中で、一際大きな音を発していた疑問は・・・
どうして・・・俺なんだ。
一体どれだけの時間が経っただろうか。頭の中の渦がようやくその勢いを緩め始め、俺は僅かに冷静さを取り戻し始めた。その冷えた頭で、自分が“捜査官として”答えを知るべき疑問が何かを整理し、それを尋ねた。
「お前らは・・・俺をどうするつもりなんだ」
最初に尋ねたのは喰種化実験の目的だ。出来るだけ警戒されないように、自分の身を第一に案ずる振りをしながら尋ねた。
「悪いようにはしないよ。ただ、最初にちょっと辛い仕事をしてもらうけど」
辛い仕事?
それが何かを訊こうとしたその時、部屋の外から足音が近づいて来た。そしてその足音は、俺と少女のいる部屋へと入り込んで来た。
「・・・!?」
足音の主が姿を現した瞬間、俺は絶句した。その直後、猛吹雪の中かと錯覚するような寒気に襲われると共に、全身が震え出した。
「エト、もう事情の説明は終わった?」
「半分くらいね」
「・・・遅い」
「ごめんなさい。タタラさん」
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- 16 : 2015/08/12(水) 19:32:31 :
- タタラという名のその男に、俺は見覚えがあった。そしてその“見覚え”の内容は最悪なものだった。
『お前アイツの部下?焔 は法寺がもっているのか?』
『ああ、放す』
『ノロ』
彼は、梟討伐戦第四隊隊長の千之睦准特等を殺害し、ノロという喰種に俺の殺害を指示した張本人なのだ。一度自分を殺した者に相対し、自分の身体からみるみる生気が抜けていくのが感じられた。
「喰種化したことはもう話した?」
「うん。さっきの滝澤くんの驚き様、タタラさんにも見て欲しかったなぁ」
「そういうのには興味は無い。それが済んでるならもう次に移って良いだろう」
「つ、次って何だよ!?さっき言ってた辛い仕事ってやつか!?」
「そっ」
少女はコクリと頷いた。喰種の言う辛い仕事が一体どれだけ恐ろしい仕事なのか、未知から来る恐怖に襲われ、俺は今日何度目かのパニックに陥る。
「待ってください!まだ訊きたいことがあるんです!それが済んでからじゃダメですか!?」
その仕事から少しでも逃れたいがために時間を稼ごうと、無我夢中で男に尋ねた。しかし、彼は一言「駄目だ」と告げて、その要求を拒んだ。
「どれだけ辛いものになるかはお前次第だ。素直に指示に従えば大したことはない。黙って着いて来い」
男はそう言うと俺の腕を掴み、部屋から引っ張り出そうとする。
「待ってください!一つだけ!一つだけでも良いです!」
「今は駄目だ。質問タイムなら後で幾らでも取ってやる」
「お、お願いします!!!どうして・・・・・・どうして俺なんですか!?」
パニックが頂点に達したことから、俺は“捜査官として答えを知るべき疑問”ではなく、自分の脳味噌の一番多くを占めていた疑念をそのまま吐き出してしまった。
・・・突然、俺を先刻感じたものを遥かに上回る途轍もない悪寒に襲った。その直後、腹部の激痛と共に俺は意識を失った。最後に見たのは、静かな・・・しかし今にも溢れ出んとする憎悪を顔に滲ませる男の姿だった。
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- 17 : 2015/08/12(水) 19:51:17 :
目が覚めると、俺は今までとは別の部屋に座らされていた。さっきまでの部屋とは違い、窓は無く、ベッドも無く、あるのは自分の座る椅子が一つ。それと、壁の至る所に備え付けられている拘束具のみである。
何となく立ち上がろうとして見ると、鎖の音と共にその動きを制止させられた。手足に目を向けてみれば、四本全てが鎖で拘束されていた。
「目、覚めた?」
意識の外から響いてきた声に、思わずぎょっとしてしまう。恐る恐る声がした方へと顔を向けると、そこにはさっきの男がいた。
「あ、ああ・・・・・・」
狼狽し、意味もなく声が出た。全身はさっき以上に震え上がり、拘束具の鎖の音がジャラジャラと響き渡る。
「そんなに怯えるな。さっきお前の腹を貫いたのは、腹が立ったからだ。お前を殺すつもりはない」
腹が立っただけって、逆に怖いんですけど・・・と心の中で突っ込みを入れる。そうやって心の中だけでもふざけていないと、気が保てそうにない。
「さて、早速だけど本題だ。お前にはこれから白鳩について、知っている限りの全ての情報を吐いてもらう。素直に答えれば痛い目は見なくて済む。言え」
命令の瞬間、男の白目が真っ黒に、瞳は血色に染まった。それと同時に強烈な悪寒が襲い掛かってくる。それを何度も浴びてきた経験から、俺は悪寒の正体が殺気であることを理解していた。
「10秒以内に言え。さもないと」
「言う訳ないだろ!俺はッ喰種捜査官だッ!!!」
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- 18 : 2015/08/12(水) 20:03:31 :
- 「
吵鬧 〈うるさい〉」
意味不明な言葉が放たれると同時に、俺の右の太腿に男の左手が刺し込まれた。
「・・・ぎゃあああああああああああああああ!!!!!」
身を割くほどの激痛に耐え兼ね、断末魔の如き叫び声を上げた。太腿から手が抜き取られるた途端、傷口から大量の血が流れ出したのを見て、俺はとっさに死を連想した。
「・・・し、死ぬ」
「君、馬鹿だろ。喰種がこの程度で死ぬわけない」
男の言葉を受けて、俺は改めて太腿を注視する。放っておけば失血死し兼ねない程の大きさの傷口が、小さく気味の悪い音を立てながら見る見るうちに塞がっていくのが見えた。
ああ、俺は本当に人間でなくなってしまったのだな。
改めて突きつけられた悲劇に、俺は只々絶望する。その様子を眺めながら、男は俺の目の前に座り込み、再び命令した。
「知っている事を吐け。もう痛い思いはしたくはないだろう?」
「誰が・・・話すか」
先刻感じた激痛を思い出すと、全身が震え上がる。もう一度味わえば、それだけで気が狂うかもしれない。だが、それでも、屈するわけにはいかない。俺は誇り高き喰種捜査官だ。
決意を固め、要求を拒む。それと同時に、再び襲い来るであろう激痛への恐怖が全身を支配する。しかし、先程のような鋭い痛みはやって来なかった。その代わりに襲ったのは・・・
呼吸困難。
男は俺の首を物凄い力で握り締めてきた。人間だったら、いとも容易く引き千切られていたに違いない。
「話す話さないは自由だ。だが、態度には気を付けろ。勢い余って殺してしまいそうだ」
そう言って、男は首を絞める手から力を抜いた。
「げほげほっ!すす・・・す・・・済みませんでした・・・」
ここで死んでは元も子もない。勿論、情報を漏らさないことが一番の義務だが、その次に俺がすべきことは、アオギリの樹が捜査官の喰種化を行っているという事実を報告だ。だから、俺は命を守るため男に屈した振りをした。
決して死への恐怖に怯えた訳ではないのだ。その筈だ。
謝罪に一先ず納得したのか、男から放たれる憎悪だとか殺意等の感情が弱まるのを感じた。
「・・・どうして、成功したのが法寺の部下のお前だったんだろうな。他の奴なら、誤って殺してしまう恐れも遥かに少なかっただろうに。全く、面倒だ」
彼の発言の全てを理解することは、混乱し、憔悴し切った頭では到底不可能であった。ただ一つ理解できたのは、彼にとって俺が特別憎むべき対象だということだけ。普段ならもう少し深く推察することも出来ただろうか、今の俺には適わない。
「今日はこれで終わりだ。夜が明けたらまたここに来る。話さないようならそれ相応の手段も取るつもりだ。一晩、自分にとって何が一番良い選択か考えておくといい」
男は部屋を後にした。
”一番”良い選択か・・・”二番”の俺に、果たしてそんな選択ができるのだろうか。
-
- 19 : 2015/08/12(水) 21:19:33 :
「あがああああああああああああああ!!!!!!!」
次の日、俺はただひたすらに、けたたましい叫び声を上げ続けていた。
その日の朝、と言っても窓のないこの部屋では本当に朝なのかは判らないが、宣言通り男は現れた。彼は、ペンチや大きなハサミが入られたケースを携えていた。そして一言「やぁ」と声を掛けられる。俺は彼の機嫌を少しでも損なわないよう「どうも」と挨拶を返そうとした。だが、その言葉を声に出す前に俺は顎を掴まれた。
それから間髪入れずに、彼は手に持っていた注射器を俺の眼球へと刺し込んだ。
灼けるような感覚だった。それは針を眼球に刺し込まれた痛みではなく、流し込まれた液体により引き起こされた感覚だった。彼はその液体をRc抑制液と言った。彼等が何故そんなものを持っているのかなんて、訊くことは疎か考えることすら出来なかった。
眼球の痛みが幾らか引け始めると、彼は俺に“ルール”を説明した。
「これからお前に一つずつCCGについての質問をする。答えたら何もしないが、回答を拒否する、若しくは十秒以上の沈黙で、お前の手足の指を一本切り落とす。嘘を吐いたら腹を貫く」
簡単なルールだった。
まず最初に、コクリアへ入る方法を問われた。俺は答えないと言った。右足の親指を切られた。
俺は堪らず泣き叫んだ。
次に、CCGの機密に関わる質問をされた。俺は知らないと言った。右足の人差し指を切られた。
数キロ先まで届きそうなほどの悲鳴を上げた。
それから、手足の指が無くなるまで質問は繰り返された。俺は一つも答えなかったので、質問の数は丁度二十。その一つ一つで俺は指を切断された。
その時の痛みは想像を絶するものだった。「堪らず泣き叫んだ」や「数キロ先まで届きそうなほどの悲鳴を上げた」というような言葉では足りない。だが俺はそれ以上痛みを言葉で表そうとはしなかった。もし痛みをおどろおどろしい言葉を連ねて表現しようとすれば、たちまち正気を保っていられなくなるような気がしたからだ。
そもそもこの痛みは、言語化しようとして何百語に渡っておぞましい言葉を連ねてみても、その挙句、結局言葉では表現し切れないと判る、そういうものだった。
男が尋ねて来た質問の中には、答えてもCCGに何ら支障が出ないような小さなものもあった。俺は最初、その質問に回答しようと思ったこともあった。しかし、それは罠だと気付いた。妥協と言うのは一度行ってしまえばどこまでも堕ちていく。其の内、CCGも大きな損害を与えかねない情報を、「これぐらいなら良いだろう」と妥協し、答えていくことになる。
今日の分の拷問が終了すると、男は俺に“食事”を与えた。指を補充するためだ。人肉であるそれを拒むと、彼は再び顎を掴み無理矢理俺の口に押し込んだ。
最悪なことに、美味しかった。
-
- 20 : 2015/08/12(水) 21:31:21 :
- それから毎日、魂が削られるような拷問が続けられた。一日二十回、身を引き裂かれるような痛みが襲い来る。次第に痛みに慣れていくのを感じると同時に、結局どれだけ慣れても耐え難いものであることを悟った。
ある時、俺は嘘の答えを発してみた。男がCCGの情報を知りたがっているということは、裏を返せばCCGについて無知であるということであり、情報の真偽を知る余地はないと推測したからだ。しかし、彼はその答えを聞くや否や躊躇なく腹を貫いてきた。
もしかしたら、質問の中には既に答えの分かっているものが、嘘を見抜くための罠として散りばめられているのかもしれない。これ以上嘘を吐き、信用性を失うのは得策ではないと、それからはひたすら回答の拒絶を続けた。
拷問が続く間、俺の指は男が来るまでに必ず生え揃っていた。毎日毎日トカゲの尻尾のように生え変わるその指を見ると、自分が本当の本当に化け物になってしまったことに気付かされる。
そして今日、拷問開始から十日前後が経過した。
頭髪は白髪が混じり始めていた。
もう・・・限界だった。
-
- 21 : 2015/08/12(水) 21:48:31 :
- 『話しちゃえば?』
どこからか、甘言が聞こえて来た。
『お前はもう十分頑張ったよ。地獄のような拷問に約十日間も耐えたんだ。普通の捜査官ならここまで出来ない。誇りに思えよ』
でも・・・
『話して解放されたら、CCGに戻ってここの情報を話せばいい。それで最悪でもプラスマイナス0、上手くいけばプラスだ』
・・・そうだな。もう、良いよな・・・
『滝澤』
俺を呼ぶ声は、さっきの甘言とは違い女性の声だった。それに、さっきと同じで聞き馴染みのある声だった。この声は・・・
「真戸?」
同期の彼女の名前を呼ぶと、眼前にある筈のない彼女の姿が浮かび上がってきた。幻覚まで見るなんて、身体だけじゃなく心までボロボロなようだ。それにしても、幻覚ぐらい正面を向いてくれても良いのに、また横顔とは。
いや、当たり前ではないか。俺は今捜査官にあるまじき行動を取ろうとしたのだ。そんな俺に、彼女が振り向いてくれる筈が無い。
その事実に気付かされると共に、さっきの甘言の主が誰なのかを思い出した。それは、紛れもなく俺だったのだ。全く、こんな事だから俺は次席なんだ。主席の真戸には到底敵わない。だけど、俺はまだ諦めない。俺は秘密を守り抜いたままここを脱出して、捜査官に戻る。そして、いつかお前を超える捜査官になってやる。
大切な人との遭遇が、捜査官としての固い決意を取り戻してくれた。だがその決意は、それ以上に大切な人との出逢いで揺るがされることになる。
-
- 22 : 2015/08/13(木) 14:18:15 :
- 「・・・君、思ったよりしぶといね」
拷問開始から三週間以上が経過した。一度は限界を迎えかけたが、今は気力で何とか心を保っていた。後どれくらい持つかは分からないが、俺は耐え抜いてみせる。そう、決意を固め直した。
しかし、男は俺が決意を固め直したのを見透かしたかのように、予想だにしていなかった言葉を発して来た。
「それじゃあ、そろそろ趣向を変えてみようか」
趣向を変える?それってどういう・・・
「タタラさん、連れてきましたよ」
今まで男が行き来する以外に開かれたことのなかった部屋の入り口の扉が、アオギリの一員と思しき喰種によって開かれた。
「ご苦労。早速寄こせ」
「どうぞ」
アオギリの一員が渡したものは、生きている人間だった。手足をロープで縛られ、顔には袋を被せられている。時折聞こえる鼻から出された声からは、口も塞がれていることが推測された。性別は、体型から見て女性と思われた。
それを受け取った男は、「帰って良いよ」と言ってその喰種を立ち去らせた。それと同時に、俺はあることが気になり始める。
「この人間が誰か気になる?」
男はまたしても、俺の核心を突いて来た。
「図星だろ?良いよ、今すぐ教えてあげる」
そう言って、男は女性の顔に被せられている袋を掴む。
わざわざこの男がこんなことを言ったということは、恐らく知り合いなのだろう。そして知り合いと言われ真っ先に思い付くのはCCGの同僚達、彼等を救う代わりに情報を吐けとでも言うのだろうか・・・
もし、仮にそれをされたら、俺はどうすべきなのだろうか・・・
俺の頭の中に、考え得る最悪の展開が浮かび上がる。一度固めた信念が揺らぎ始めると共に、袋の中身が何かを知るのが怖くなってきた。知れば情が湧き上がり、捜査官としての決断が出来なくなるかもしれない。折角ここまで耐えて来たのに、全てが崩されるかもしれない。
しかし、それらの想像は全て無駄だった。何故なら・・・
「母・・・ちゃん・・・?」
真実は、最悪よりも最悪だったからである。
-
- 23 : 2015/08/13(木) 14:35:40 :
「政・・・道・・・」
「何で・・・何で母ちゃんがぁあああああああああ!!!!!?」
受け入れ難い現実に、発狂紛いの叫び声を上げた。男はそんな俺の声とは対照的に、冷静な言葉を口にする。
「それ、答える必要ある?」
男の言う通りだ。ここに母が連れて来られた理由なんて、冷静に考えれば幾らでも思いつく。要は・・・俺のせい。
「ごめんね・・・母ちゃんが・・・鈍くさい・・・ばっかりに・・・」
母の口から紡がれる謝罪の言葉は、余りにか細く弱弱しいかった。身体には痛々しいあざが幾つもあり、ここへ来るより前に酷い暴行を受けていたことが察せられた。
彼女が受けたであろう仕打ちを想像し、俺は静かに男を睨み付ける。
「そんなに睨むなよ。俺はお前に選択肢を与えに来たんだ」
選択肢?
「このままお前に何をしても情報を漏らしそうに無いことは分かった。だから、お前が情報を吐かずに解放される道を用意してやる」
突如として示された、希望とも取れる一筋の光を前にして、俺は全ての神経を男の言葉へと向ける。
「これから先、お前ら二人をこの部屋に放置する。もう拷問を加える事はなくなるということだ。その代わり・・・母親の方には、すぐに死なれては困るから最低限の食事は与えるが、お前には食事も与えない。その状況下で、お前が助かる道は二つ。一つは、俺が今までして来た質問全てに正直に答える。もう一つは・・・
母親を喰うことだ」
-
- 24 : 2015/08/13(木) 14:51:01 :
- そんなこと・・・
「できるわけないだろ!!!」
選ぶ可能性の無い選択肢を提示され、半ば逆ギレ気味に激昂した。しかし、男はそんなことなど気にも留めず、話を続ける。
「さっきも言ったようにこれから先、俺がここに来ることは無くなる。もしどちらかを選ぶ気になったら、母親の食事を持ってくる係の奴に言え。その時は出向こう」
これを最後に説明が終わった。俺は「どちらも選ばない」と何度も吠え続けたが、男は一切こちらに顔を向けることなく部屋から立ち去った。宣言通り、彼が戻って来ることは無かった。
こうして、放置という形の拷問が始まった。指を切られ、腹を貫かれるよりは遥かに楽なのだが、身体を拘束され何もない部屋に置かれるというのはなかなかの苦痛である。しかし、今の俺には大きな救いがあった。母の存在である。
母は時折俺に話し掛けてくれた。一回の会話こそ短いが、その時間がどれだけ俺の心に安らぎを与えてくれたことか。しかし、それに甘えて話し込むわけにはいかなかった。何故なら、母には満足に話ができるほどの体力は殆ど残っていなかったからである。本当なら、少しでも休んで体力を回復させたいだろうに、彼女は息子のためにと一定時間置きに声を掛け続けた。
その所為か、母は少しずつ弱っていき、声を掛ける間隔がじわじわと長くなっているのが感じられた。俺は「無理しないで」と声を掛けるが、母は声を掛けるのを止めなかった。母親の意地というものなのだろう。しかし、このままでは母が死んでしまう・・・
だが、そんな心配もいつしか必要なくなった。
「にく・・・にぐ・・・ダメだ・・・にく・・・」
他人の事など、考えていられなくなったからである。
-
- 25 : 2015/08/13(木) 15:01:42 :
一体どれだけの時間が経過したのだろうか。一切の食事を与えられていない俺の頭を、食欲が占領し始めていた。
止むことのない空腹感に襲われ続け、数時間毎に食事への衝動により半狂乱になって暴れ、叫び、正常な思考は妨げられる。顔を上げ、母を見ると、唾液が止め処なく溢れ出してくる。目の前にいるのは母だと言い聞かせてみれば、“母”という言葉がいつの間にか“肉”に変わる。いつの間にか自分の脳内は食欲で埋め尽くされそうになり、それに気付いて俺は母の姿を視界から外す。その繰り返しだった。それもただの繰り返しではない。一回毎に発作の起きる間隔は短くなり、食欲は強まる。いつ自分の中の理性 が食欲 に呑まれるか、全く予想がつかなかった。
その様子を見兼ねた母は、時折「もしお前が望むなら、食べてもいいんだよ」とか「どっちも死んだら無駄死にだから、なんとか政道だけでも生き残って」と、自分を食べるように促すような言葉を口にした。純粋に子を思う気持ちから放たれるその甘言が、さらに自分の中の食欲を大きくする。それに呼応するかのように、『食べられる側が良いって言ってるんだから、遠慮することなんかないよ』と囁く声が頭の中に響き渡る。それでも俺は、その食欲に死に物狂いで抵抗した。
時間の経過は分からないが、発作の回数が十数回に達した。茶がかかった黒色だったはずの髪は、ほとんどが白に染まっていた。
「もう・・・食べちゃおうか」
俺の心は、とうとう折れた。
本当の本当に限界と訊かれれば、疑問符が付く。しかし俺は真の限界まで耐える覚悟が持てなかった。怖かったからだ。いずれ空腹に呑まれ、自分が本当に自分でなくなってしまう時が来ることを考えると恐ろしくなったのだ。
俺は次に給仕係の喰種が来たとき、この地獄を終わらせることを決意した。しかし、未だに真戸の幻影を前にして固めた決意は揺らいでいなかった。
それはつまり、母を喰らうという事だ。
-
- 26 : 2015/08/13(木) 15:18:28 :
- いつだ。いつなんだ。いつになったら来る。
早く。早くしろ。早く来てくれ。
一度堕ち始めた心は土砂崩れのように次々と崩れ堕ちていき、俺の心の全てが早く解放されることのみを望むようになっていた。
そうして深い闇の中に、落ちて、堕ちて、汚ちて、悪ちていった先で・・・
初老の男性が、一人コーヒーを嗜んでいた。
真戸と同じで、幻覚だろうか。でも、自身が創り出したものであるなら、それは自分が知っているものの筈だ。それなのに、俺はこの老人を思い出せない。否、本当に会ったことがないのだろう。その証拠に彼はこのように挨拶して来た。
『初めまして、コーヒーはお好きかな』
そう言われて差し出されたコーヒーからは、穏やかで心地の良い香りがした。俺は、それを受け取ることにした。
『ところで、君は今重大な選択を迫られているようだね』
カップの半分ぐらいを飲み終えたところで、老人が穏やかな表情で話し掛けて来た。どうして事情を知っているのか、何て事は今更気にならなかった。俺は黙って頷いた。
『そして君は、もうどちらを選ぶか決めてしまっている』
俺はもう一度頷いた。
『しかし、その選択は本当に悔いのないものなのかな』
「間違っているって言うんですか?」
どれだけの苦痛を受けて来たかを知らずに、自分の決断を否定されたことに腹が立って、俺は強い口調で訊き返した。
『間違っているとは言わない。だけど、正しいとも言えないんじゃないかな』
老人は穏やかな表情を崩さずにこう返した。
「そんなことは分かってますよ。でも・・・だったら、CCGの秘密を全て話せって言うんですか!?それこそ喰種捜査官として間違っている」
『その通りだ。母を喰らうという決断は、道徳的に間違っているが、白鳩の秘密を漏らすことは捜査官としてあってはならないことだ。この二択に、正解なんてものは存在しないだろう』
「だったら、どっちを選ぼうと俺の勝手でしょう」
『だから私は、君の決断に肯定も否定もするつもりはない。ただ、最後の決断をする前に、一つ考えて欲しいことがある』
『初心を、思い出してみてはどうかな』
「初心・・・?」
『そう。純粋で、真っ直ぐで、まだ何者にも染められていない、初めて抱いた心だ。それを思い出した上で決断しなさい。そうすれば、少しでも後悔のない選択ができると思うよ』
「・・・分かりました。ご忠告、ありがとうございます」
最後にお礼を告げると、一瞬にして視界が霧に包まれた。間もなく霧が晴れると、そこは今まで自分がいた部屋で、老人の姿も、さっきまで飲んでいたコーヒーもなかった。
ああ、どうせなら、全部飲んでおきたかったな・・・
-
- 27 : 2015/08/13(木) 15:21:37 :
- 老人との会話のお陰か、それともさっき飲んだコーヒーのお陰か、とにかく俺の頭は一時の落ち着きを取り戻していた。しかし、空腹から再び発狂し始めるのも時間の問題だろう。次に我を失うまでの決して長くはない時間ですべきことは、一つしか思い浮かばなかった。
初心を、思い出すこと。
一口に初心と言っても、初心を抱く瞬間というのは無数に存在する。もちろん、今の状況に関係するものに限定すれば数はかなり絞られるが、それを全て思い出す時間が残されている保証はどこにもない。だから最初に、どの初心を思い出すべきなのかを一心不乱に考えた。
拷問を受け始めたとき・・・違う。
自分が喰種になったことを自覚したとき・・・違う。
ここに来て初めて目を覚ましたとき・・・違う。
あんていく戦に参戦する事が決まったとき・・・違う。
違う、違う、違う、違う・・・
「あっ」
記憶を辿っていく中で、俺は答えを見つけ出した。根拠は無いが、それが正解であるという確信もあった。
その答えは・・・「自分が捜査官になる事を決意したときの心」だった。
-
- 28 : 2015/08/13(木) 15:27:27 :
「母ちゃん、大丈夫かな」
その日、母は父が慣れない手付きで作った夕御飯を一口も摘まむことなく、寝室へと引き籠っていた。
「まさか近所で喰種による被害者が出るなんて、思ってもみなかったからね。父ちゃんも、正直怖いよ」
今まで弱音を零したことがない父が、本心を漏らした。それでも父は、俺や妹を心配させまいと、笑顔を崩さなかった。
「あんなに優しかった、佐藤のおばちゃんが死んじゃうなんて・・・」
妹は、亡くなったおばさんを思い出して涙を流し始めた。
そんな家族の様子を目の当たりにした時だった。俺の中に、悲しみや喰種に対する怒りと共に、ヒーローに憧れる少年期特有の感情が湧き上がった。
「俺、喰種捜査官になる!それで、母ちゃん、父ちゃん、聖奈を守るんだ!」
あれから月日が経ち、忘れかけていた。遺書を書く際に一度思い返してはいたが、それはどこか他人行儀な記憶。だが、今は違う。
「母を守る」という明確な決意が自分の中に湧き上がった。
そして俺は決めた。もう少しだけ、頑張ってみることを。それでもやっぱりだめだったなら、CCGの情報を明け渡して、母と共に生き延びると。
それをすれば、もう喰種捜査官には戻れないだろう。だけど、そんな事はもうどうでも良くて、俺の中にあるのは少年が抱くような、身近な人を守りたいという純粋で単純な願望だけ。
この決断をして、俺はようやく、救われたような気がした。
-
- 29 : 2015/08/14(金) 12:11:12 :
- 最後の決断からある程度時間が経過してから、部屋の入り口の扉をノックする音が聞こえた。給仕係が来たようだ。もし、あの老人との会話が無ければ、俺はこの時、母を喰らうことを給仕係に伝えていたに違いない。そう思うと、怖くなると同時に何とか踏み止まれたことに安堵した。
しかし、この時俺はあることに疑問を抱いた。今まで給仕係が扉をノックしたことがあっただろうかと。
答えが出ぬまま、扉がゆっくりと開かれた。現れたのは、俺がここで最初に出遭ったあの少女だった。
「大丈夫、滝澤くん?」
「どうしてここへ?」と訊きたかったが、今の俺に声を出す体力は残されていなかった。しかし、少女は俺が何らかの疑問を抱いていることを感じ取ったようで、独りでに話し始めた。
「タタラさんから聞いたよ。滝澤くん、結局CCGの事を何も話さなかったんでしょ?それに、食糧を与えられなくなってからも、一カ月間何も食べずに我慢してる。目の前の母親を食べたくて仕方ないだろうに・・・頑張ったんだね」
彼女の言葉を聞き、初めて一カ月間も断食していたことに気付いた俺の目からは、それだけ凄惨な目にあったことに対する悲しみからか、はたまたそれ程の期間を耐え抜いたことに対する達成感による喜びからか、涙が溢れ出してきた。
「滝澤くんは本当に凄いよ。前の隻眼君だって、ここまでの地獄は味わってないよ。だから、あなたはそろそろ報われるべきだと思うんだ」
そう言うと彼女は、懐から二つのものを取り出した。一つは鍵であった。もう一つは・・・よく見えないが、何だかおいしそうな香りがした。
「滝澤くんの努力のご褒美に、あなたとあなたのお母さんを助けてあげる」
彼女の発言は、俺が喉から手が出る程求めてやまなかったものだった。
それは、極楽浄土から下ろされた一本の糸のようだった。かの「蜘蛛の糸」で例えるならば、少女はガンダタに蜘蛛の糸を下した釈迦であり、彼女の存在が急に神々しく思えた。俺はその糸をすぐさま掴み取ろうとした。
しかし、俺はその手を止めた。ここには後に続こうとする数多の罪人たちは居ない。無策で昇ったところで問題は無い筈だ。だが、問題は昇る側ではなく、糸を下ろす側にあった。
彼女は実際には釈迦ではないということだった。
今までの言動や男との会話から考えて、彼女はアオギリの樹の一員、下手をしたら幹部だ。そんな彼女がただ自分を助け出そうとする理由が全く見当たらないのだ。だが、その理由を聞くことも、今の自分には許されていなかった。また、この機を逃せばCCGの情報を漏らさずに自分達が助かる可能性が無いのも事実であった。
結局俺は、その蜘蛛の糸を昇ることを決めた。
-
- 30 : 2015/08/14(金) 12:24:54 :
彼女はそれから、拘束具の鍵を全て解除した。しかし、俺は体の自由を取り戻したにもかかわらず、立ち上がることすら出来なかった。
「やっぱり動けないよね。食べ物を持ってきてよかったよ」
彼女は先程取り出した二つの物のうち、鍵ではない方の物を俺の方へと差し出した。
「“肉”を食べるのはまだ抵抗があるだろうから、滝澤くんでも食べられそうなものを持って来たんだ」
俺は差し出された食糧を凝視した。先程までは不鮮明であったその姿が、少しずつ明瞭になっていく。その食糧の姿は・・・
「か・・・・・・に・・・クリ・・・ィム・・・・・・コロ・・・ケ・・・?」
「人間はこれのことをそういう風に呼ぶんだね。さっ、食べなよ」
彼女は食糧を、俺の掌へとそっと置いた。俺は最後の力を振り絞ってそれを口の近くへと持っていく。そして口を開き・・・それを齧った。
「う・・・うめぇええええええええ!!!!!」
余りの美味しさに、俺は叫び声を上げた。さっきまでは言葉を発することすら出来なかったにもかかわらずだ。
俺は堪らず大口を開け、残りを一気に口の中へと放り込んだ。そして初めに一回咀嚼すると、旨味が口内中に一気に広がった。夢中になって咀嚼している間、唾液腺からは唾液が止め処なく流れ続けた。最後にそれを呑み込んでから、俺は我に返った。
「夢中になって食べてたね」
食事を終えたのを見て、少女が話し掛けて来た。
「ああ。あんなに美味いもん、食ったことねぇよ」
「そっか・・・そんなに美味しかったんだ」
「お母さんの腎臓」
-
- 31 : 2015/08/14(金) 12:41:42 :
え、何を・・・言って・・・
俺が食べたのは、かにクリームコロッケで・・・
あれ、俺って・・・喰種だよな。
ということは・・・つまり・・・
空腹の余り・・・目の前にある人間の臓器を・・・かにクリームコロッケ だと誤認していたのか・・・?
頭の中をありとあらゆる思考が駆け巡る中、俺は、腰の辺りから大量の血を流して倒れている母の姿を捉えた。
「あ・・・ああ!!」
「泣き叫ぶのはまだ早いよ。滝澤くんにはまだやらなきゃいけないことがあるんじゃないかな」
「やらなきゃいけないこと?」
「あなたが喰べたのは腎臓。知っての通り人間には腎臓が二つあって、一つがなくなってもちゃんと治療をすれば生きることは出来る。でもその為には、止血してあげないとね」
彼女の言葉を受け、俺は無言のまま母の元へと歩き出した。
「治療器具は扉の裏に用意してあるから、好きに使うといいよ」
俺は入り口の扉を開けた。彼女の言った通り、そこには包帯等の応急処置のための道具が置いてあった。専門的な医学知識は無いが、アカデミーで負傷時の止血の方法は心得ている。俺が上手くやれば、母は助かるはずだ。俺は必要な治療器具を手に取り、再び母の傍へと歩み寄り、腰を下ろした。
その瞬間、芳醇な香りが鼻腔へと突き刺さり始めた。同時に、唾液が再び溢れ出してくる。一度味を知ってしまったが為に、込み上げる食欲は今までの比では無かった。
-
- 32 : 2015/08/14(金) 12:53:32 :
- 「早く治療しないと・・・俺が母さんを・・・食べてあげないと・・・食べてあげ!?な、何言ってんだああああ!!!!!治すんだよ!肉を!・・・違ァう!!!肉じゃない!母さんを調理・・・違うって言ってんダドォガ!!!」
呑まれる呑まれる呑まれる呑まれる呑まれる呑まれる呑まれる呑まれる呑まれる呑まれる呑まれる呑まれる呑まれる呑まれる呑まれる
「嫌だ!タベたくない!!!帰りたい!!!美味しそう!アホかぁああ!!!落ち着け・・・落ち着かないと、味わって包帯を。そうだ・・・ゆっくりと・・・一口ずつ・・・」
「・・ごに・どに・・たかった・・・」
もう、戻れない。
-
- 33 : 2015/08/14(金) 13:00:35 :
- 血と臓物の海の上に、彼は佇んでいた。
真っ白に染まった頭髪や、黒くなった爪からは、凄惨な拷問を受けたことが伺えた。
「母親を喰べた感想は?」
その様子を傍で見ていた少女が、彼に質問を投げ掛けた。
「感想?」
「アハッ、アハハハハハハハハハハハハハハハ!!!ヒャハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!」
彼はただ哄笑した。その笑いは、彼にとっては何の意味も含まぬものだった。
「ふ~ん。それじゃあ次の質問良いかな?」
少女は彼の哄笑のみの答えに納得したようだった。彼女の問いに、彼はコクリと頷いた。
「滝澤くん、アオギリに入る気はある?」
「アオギリに入れば、美味いもん喰えんのか?」
「約束するよ」
彼女の答えを聞き、彼はニンマリと笑った。
「それなら入ってやるよ」
「ありがとう。それなら早速、滝澤くんに喰種としての名前を与えないとね。滝澤くんの名前は・・・」
オウルだ。
-
- 34 : 2015/08/14(金) 13:07:49 :
11月11日。
「―フム・・・・・・戦局は大分動き出したようだ。エトさん!どうかな?そろそろ“オウル”を投入してみては?」
「そうだね」
「どーう?イケる?滝澤くん」
「早くしろ腹減ってんだ」
To:re…
-
- 35 : 2015/08/14(金) 13:16:22 :
- 【あとがき】
タイトルの意味なんですが、ネットで考察ページを読んでいらっしゃる方や、単行本を念入りに読み込んでいる方は御存じの通り、"15"というのは遺書を書き終えた後の滝澤の顔に隠されていた数字です(結構分かりやすいので隠されているとは言わないかもしれません)。
これはタロットでは"悪魔"に当たり、正位置の意味は裏切り、堕落、束縛、誘惑、嫉妬心、憎しみ、恨み、破滅等悪い事尽くしです。
最後に、読んでくださった皆様、ありがとうございました。
-
- 36 : 2016/01/01(金) 16:33:18 :
- Good!
-
- 40 : 2020/10/01(木) 14:38:20 :
- 高身長イケメン偏差値70代の生まれた時からnote民とは格が違って、黒帯で力も強くて身体能力も高いが、noteに個人情報を公開して引退まで追い込まれたラーメンマンの冒険
http://www.ssnote.net/archives/80410
恋中騒動 提督 みかぱん 絶賛恋仲 神威団
http://www.ssnote.net/archives/86931
害悪ユーザーカグラ
http://www.ssnote.net/archives/78041
害悪ユーザースルメ わたあめ
http://www.ssnote.net/archives/78042
害悪ユーザーエルドカエサル (カエサル)
http://www.ssnote.net/archives/80906
害悪ユーザー提督、にゃる、墓場
http://www.ssnote.net/archives/81672
害悪ユーザー墓場、提督の別アカ
http://www.ssnote.net/archives/81774
害悪ユーザー筋力
http://www.ssnote.net/archives/84057
害悪ユーザースルメ、カグラ、提督謝罪
http://www.ssnote.net/archives/85091
害悪ユーザー空山
http://www.ssnote.net/archives/81038
【キャロル様教団】
http://www.ssnote.net/archives/86972
何故、登録ユーザーは自演をするのだろうか??
コソコソ隠れて見てるのも知ってるぞ?
http://www.ssnote.net/archives/86986
-
- 41 : 2020/10/26(月) 14:58:13 :
- http://www.ssnote.net/users/homo
↑害悪登録ユーザー・提督のアカウント⚠️
http://www.ssnote.net/groups/2536/archives/8
↑⚠️神威団・恋中騒動⚠️
⚠️提督とみかぱん謝罪⚠️
⚠️害悪登録ユーザー提督・にゃる・墓場⚠️
⚠️害悪グループ・神威団メンバー主犯格⚠️
10 : 提督 : 2018/02/02(金) 13:30:50 このユーザーのレスのみ表示する
みかぱん氏に代わり私が謝罪させていただきます
今回は誠にすみませんでした。
13 : 提督 : 2018/02/02(金) 13:59:46 このユーザーのレスのみ表示する
>>12
みかぱん氏がしくんだことに対しての謝罪でしたので
現在みかぱん氏は謹慎中であり、代わりに謝罪をさせていただきました
私自身の謝罪を忘れていました。すいません
改めまして、今回は多大なるご迷惑をおかけし、誠にすみませんでした。
今回の事に対し、カムイ団を解散したのも貴方への謝罪を含めてです
あなたの心に深い傷を負わせてしまった事、本当にすみませんでした
SS活動、頑張ってください。応援できるという立場ではございませんが、貴方のSSを陰ながら応援しています
本当に今回はすみませんでした。
⚠️提督のサブ垢・墓場⚠️
http://www.ssnote.net/users/taiyouakiyosi
⚠️害悪グループ・神威団メンバー主犯格⚠️
56 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:53:40 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
ごめんなさい。
58 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:54:10 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
ずっとここ見てました。
怖くて怖くてたまらないんです。
61 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:55:00 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
今までにしたことは謝りますし、近々このサイトからも消える予定なんです。
お願いです、やめてください。
65 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:56:26 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
元はといえば私の責任なんです。
お願いです、許してください
67 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:57:18 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
アカウントは消します。サブ垢もです。
もう金輪際このサイトには関わりませんし、貴方に対しても何もいたしません。
どうかお許しください…
68 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:57:42 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
これは嘘じゃないです。
本当にお願いします…
79 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:01:54 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
ホントにやめてください…お願いします…
85 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:04:18 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
それに関しては本当に申し訳ありません。
若気の至りで、謎の万能感がそのころにはあったんです。
お願いですから今回だけはお慈悲をください
89 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:05:34 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
もう二度としませんから…
お願いです、許してください…
5 : 墓場 : 2018/12/02(日) 10:28:43 このユーザーのレスのみ表示する
ストレス発散とは言え、他ユーザーを巻き込みストレス発散に利用したこと、それに加えて荒らしをしてしまったこと、皆様にご迷惑をおかけししたことを謝罪します。
本当に申し訳ございませんでした。
元はと言えば、私が方々に火種を撒き散らしたのが原因であり、自制の効かない状態であったのは否定できません。
私としましては、今後このようなことがないようにアカウントを消し、そのままこのnoteを去ろうと思います。
今までご迷惑をおかけした皆様、改めまして誠に申し訳ございませんでした。
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