このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。
この作品は執筆を終了しています。
幻想神隠し
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- 1 : 2015/07/14(火) 21:30:19 :
- 注意
・低クオリティ
・文章がくどい
・東方を知らないと少し分かりにくいキャラの演出
・キャラが死ぬ
・シリアス
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- 2 : 2015/07/16(木) 11:51:29 :
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――2月13日
幻想郷にて異変発生――
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- 3 : 2015/07/16(木) 19:05:39 :
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――博麗神社
ひなびた神社の縁側に少女が2人。
「あー、ほんと、平和過ぎて死にそう」
「おいおい、平和なのはいいことだぜ? まぁ暇なのは同感だけどな」
1人はこの神社の巫女、博麗霊夢。
1人はその友人の魔法使い、霧雨魔理沙。
2人はいつも通りに此処、博麗神社で駄弁っている。
「なぁ、お前の博麗の勘は、これから起こること、例えば異変が起こるとか、そんなことを告げたりはしてないのかよ」
「無茶言わないでくれる? 私は異変予報士じゃないのよ」
「なんだよ、使えないなぁ」
「あんたねぇ…」
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- 4 : 2015/07/16(木) 19:08:30 :
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2人がたわいない会話を交わしていると、神社の境内に続く階段から足音が聞こえる。
「誰か来たみたいだぜ」
「そうみたいね」
コツコツという足音とともに鳥居をくぐってきたのは、この場には似合わない小綺麗なメイド服を着た銀髪の少女――十六夜咲夜である。
「あ、いたいた」
「何の用なの? あんたの仕事に定休日なんてなかったはずだけど」
「まぁまぁ。あ、お茶でも出してもらえない?」
「ちょっとは図々しいと思わないわけ?」
「紅魔館に来た時いつも出してあげてるのは誰だったかしらねぇ」
「…わかったわよ」
霊夢はふてくされながら、渋々台所の方へ向かっていく。
「おい、私が来た時は出してくれないのに、どういうことなんだ」
「あんたはしょっちゅう来るでしょうが。いちいち出してたら私が破産するわ」
「そんなに持ってないくせによく言うぜ」
「何か言った?」
「いや別に」
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- 5 : 2015/07/16(木) 19:15:07 :
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霊夢が人数分の茶碗を持ってきたところで、話が進む。
「で、用事って何よ」
「それなんだけど、ここ最近お嬢様を見かけなかった?」
「レミリアを? 何で私が」
「この前お出かけになってからまだお戻りになられないから、もしかしたらこっちに来てないかと思ってね」
咲夜が最後の言葉を一息で言い切りお茶を啜る。
「霊夢ってこんな美味しいお茶淹れられたんだ」
「ちょっとそれどういう意味?」
「こいつケチなくせに、お茶淹れるのはそこそこ上手いからなー」
「私に文句があるんなら飲まなくて結構よ」
「飲まないなんて一言も言ってないぜ?」
そう言って魔理沙もお茶を啜る。
「ほんとあんた達は一言多いんだから」
「その言葉、そっくりそのまま返すわ」
咲夜が少し笑みを浮かべながら、呆れたように返事をし話を遮る。
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- 6 : 2015/07/16(木) 19:17:04 :
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「まぁそんなことはどうでもいいんだけど、本当に知らないの?」
「そんな疑っても何も出ないわよ。第一、こんなことで嘘ついてどうするのって話よ」
「それは、例えば...お嬢様を匿ってるとか?」
「吸血鬼を匿わなきゃいけないとか何の罰ゲームなわけ?」
「はぁ...本当に知らないのね」
「だから最初からそう言ってるでしょ」
「正直、此処にいないとしたらもう心当たりがないのよ。ほら、お嬢様ってずっと館にいるし」
「おいおい、自分の主をニート扱いかよ。まぁ確かに、あいつはだいたい紅魔館にいるか、それじゃなきゃ此処に来るかだからな」
「そうでしょ? だから困っちゃって。あ、お茶ありがとう。美味しかったわ」
「はいはい、お粗末様でした。で? どうせそんなことを言いに来ただけじゃないんでしょ?」
「流石、博麗の巫女は察しがよくて助かるわ。そこで、いっしょに――」
「却下よ」
「ちょっと、まだ最後まで言い切ってないじゃない」
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- 7 : 2015/07/16(木) 19:20:54 :
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「どうせ、『いっしょにお嬢様を探して欲しいのよ~』とか言うに決まってるんだから」
「わかってるんなら手伝ってくれてもいいじゃない」
「嫌よ、めんどくさい」
「まぁまぁ、いいじゃねぇか。面白そうだからな、私は賛成だぜ」
「やるんなら勝手にやっときなさい。私は嫌よ」
「えぇー、霊夢もやろうぜ。どうせ暇なんだし」
「それとこれとは話が別」
「なぁ、いいだろ? 私も暇なんだよ。吸血鬼とかくれんぼなんてなかなか乙なものじゃねぇか。鬼が隠れる側なんて聞いたことないけどよ」
「ほら、魔理沙もこう言ってるんだし。ね? 今度来たとき美味しい物でも作ってあげるから」
「...仕方ないわね」
「お、食い物で釣られる辺り、流石霊夢だぜ」
「そこ、うるさい。さぁ、行くと決まったんならさっさと行って終わらせるわよ」
「ごめんね、霊夢がやる気になってくれたのは嬉しいんだけど、私今から妹様の食事を用意しないといけないから、先に行っててくれる?」
「ほんと、このメイドは人使いが荒いわね。主の顔が見てみたいわ」
「その主を今から探しに行くんでしょ?」
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- 8 : 2015/07/16(木) 19:25:31 :
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「あら、そうだったわね」
「...茶番はもうその辺でいいだろ? 早く行こうぜ」
魔理沙が堪えかねたように口を挟むと、それが合図になったかのように3人は動き始める。
「じゃあ、頼んだわよ」
そう言い残し、咲夜は紅魔館へと戻っていった。
「...ほんと、なんだったのあいつ」
「あ、そういえば、あいつにどこに探しに行くか言うの忘れてたな」
「...まぁ、勝手にどこか探しに行くでしょ」
「...それもそうだな」
残された2人は後片付けを済まし、神社を後にする。
「で、私達はどうする?」
「どうするって...とりあえず探しに行かないといけないけど、手掛かりが全くないわね」
「んー、そうだなぁ...魔法の森なんてどうだ? あそこなら日光もほとんど差さないし、居てもおかしくないんじゃないか?」
「そうね、じゃあ、そこに行ってみようかしら」
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- 9 : 2015/07/16(木) 22:39:12 :
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――魔法の森
「うわぁ...ここほんとにじめじめしてるわ...よくこんなところに住めるわね、魔理沙。」
「そうか? 慣れれば全然普通だぜ?」
「それが凄いって言ってんのよ」
「なんか褒められてる気がしないぜ」
「褒めてないわよ」
「だろうな」
2人は無駄口を叩きながら、薄暗い森の中を進んでいく。が、目標のレミリアは愚か、人もいなければ、妖怪すら出てくる気配がない。
「全然居そうにないじゃない。っていうか、あんた此処から神社まで来たんでしょ? レミリアらしき人とか見なかったの?」
「そうだな、少なくとも私は見てないぜ。あと、霊夢んとこに行く前にアリスの家にも寄ったんだが、珍しく外出してたぜ」
「ってことは、ほんとにこの森に誰もいないんじゃない」
「そうだな」
「あー、馬鹿馬鹿しくなってきたわ」
「したら此処出て別の場所行くか?」
「そうね、ここから一番近い出口まで連れてって」
「わかったぜ」
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- 10 : 2015/07/17(金) 22:41:30 :
森を進んで行き、木々が少し開けた、日の光が差し込む場所まで出たところで、霊夢は予想外の物を目にする。
「何よ...これ...」
霊夢の足元にあったのは、ひとかたまりの灰に、いつもレミリアが身に付けていた服と帽子だった。
「どういうことなの...」
それを呆然と眺めていた時間は一瞬とも、一生とも思えた。
「...とりあえず、一旦紅魔館に行ってみようぜ」
「ええ...そうね...」
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- 11 : 2015/07/17(金) 22:42:21 :
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2人が紅魔館へ出向いてみると、そこにはいつもいるはずの門番が...いない。
「美鈴がいないなんて珍しいな。あいつ、仕事してるかはおいといて、門の前に立っていなかったのは、私の知る限り初めてだぜ」
「私もよ...余計な事は考えないで、早く中に入りましょう」
「それもそうだな」
今さらあれこれ考えたところで、あの光景を目の当たりにしてしまっては、行き着く答えは1つしかない。
2人は門をくぐり、早足で庭を抜け、館の扉を開ける。
...偶然か、必然か、中には誰もいない。
2人を出迎えたのは、ただただ赤いだけの内装である。
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- 12 : 2015/07/17(金) 22:43:16 :
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「咲夜ー? 居たら返事しなさーい」
少し焦りを見せるかのように霊夢が呼び掛ける。
もちろん、返事はない。
「フランの部屋にいるんじゃねぇか? ほら、あいつフランのご飯作るって言ってたし」
「そうね」
2人はどんどん奥へ進んで行く。
やがて、突き当たりの部屋――フランドールの部屋に行き着く。
霊夢はその重い扉を開け、ある意味、予想通りの光景に口を閉ざす。
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- 13 : 2015/07/17(金) 22:44:42 :
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そこにあったのは、ひとかたまりの灰と、3体の人形 、そして、それを眺めながら呆然と立ち尽くすメイド長の姿だった。
霊夢はどう呼び掛けていいかわからず、ただ、トントンと咲夜の肩を叩いた。
咲夜は振り返ると、霊夢の表情から察したように、その場に泣き崩れた。
どれだけの間、俯き啜り泣く咲夜の姿を見ていただろうか...魔理沙が霊夢に耳打ちをし、2人は紅魔館を去った。
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- 14 : 2015/07/17(金) 22:45:51 :
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吸血鬼達の供養が行われたのは、それから1週間後の事である。
あの時いなかった門番は、レミリアがいなくなったことに不信感を抱き、探しに行っていたという。
使用人達は紅魔館を出ていき、他の住処を見つけたが、咲夜と美鈴、それと、いつも図書館にいる魔法使いのパチュリーとその使い魔の小悪魔だけは、紅魔館に残る決断をした。
...主を失った館は...今日も憎たらしい程紅く...哀しみと共に佇んでいる...
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- 15 : 2015/07/19(日) 01:15:03 :
知り合いを2人失ってから2週間、幻想卿では全く話題にはならず、ごく普通の生活が続く。
普通じゃないことと言えば、それは吸血鬼を見なくなったことだろうか。
それでも、人々に変わりはない。
確かに霊夢は心に深い哀しみを負った。
それでも、お腹は空くし、夜は眠りにつく。
日常生活は、何も変わらない。
それは、友人にとっても同じ。
「おーい霊夢ー、暇だろー? 私に付き合えよー」
「はぁ...また来たのね」
「なんだ? 私じゃ不満か?」
「あんたも飽きないのね」
「人と会うのに飽きるなんてあるか?」
「さぁね...っていうか、何しに来たの」
「あんなことがあった後でも、暇なもんは暇だからな。こればっかりはしょうがない」
何が起こっても、結局それが終われば、人は暇を持て余す。この2人にも、何もおかしいところはない。
いや、実は、既におかしかったのかもしれない。
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- 16 : 2015/07/19(日) 16:24:36 :
「やっぱり、不思議だよなぁ」
「何が?」
「だって、あの事件を、私達以外誰も知らないんだぜ」
確かにおかしい、レミリアの人間関係を全て知っているわけではないが、誰も知らない、誰にも伝わらないのはあり得るのか。
おそらく、無くはない。霊夢も、人里の人間が死んだとか、どこかの妖怪が死んだとか、そういうのはあまり聞かない。
だが、人里の人間の死は、人里の人間が知っているだろうし、妖怪の死も、そこら一帯にいる妖怪は知っているだろう。
では、紅魔館ではどうか。
基本的には閉ざされた館、だが、客人が全く来ないということはないだろう。
どちらかというと、少し近寄り難い雰囲気。この2週間ちょっとであれば、誰も来ていないというのもあり得る。
そうなると、考えれば考える程、誰も知らないのが普通に思えてくる。
「別に不思議でもないんじゃない? ほら、レミリアって基本紅魔館にいるんだし」
「んー、そう考えればそうか。 じゃあ別に、不思議でもなんでもないな」
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- 17 : 2015/07/20(月) 20:24:22 :
話が一段落つくと、ちょうど鳥居の方から2人の人影が見える。
「霊夢さーん」
声をかけてきたのは、妖怪の山にある守山神社の風祝――東風谷早苗、もう1人いるのは、自称幻想卿最強の氷の妖精――チルノである。
「またうるさいのが2人も来た」
「うるさいとはなんですか。私はちゃんと用事があって来たんですよ?」
「あたいは用事なんてないよ」
「あー、はいはい、わかったわかった。ってかなんでチルノも来たのよ」
「たまたま来る途中で見つけたんで、いっしょに連れてきたんですよ」
「あ、あたいこれから大ちゃんと遊ぶんだった」
「えぇ、さっきはそんなこと言ってなかったじゃないですかー」
「わかったから、チルノは大妖精のとこに行ってあげなさいよ。ここにいても邪魔だし」
「うん? じゃあ、そうするね」
そう言ってチルノは足早に博麗神社を出ていった。
「ほんと、なんだったのかしら」
「さぁ、なんだったんでしょうね。あ、魔理沙さんも来てたんですか」
「なんだよ、居ちゃいけないのか?」
「いやぁ、人は多い方がいいですからね、こういう時は」
「で、用事ってなんなのよ」
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- 18 : 2015/07/21(火) 00:05:44 :
「それなんですけど、ここ3日間くらい神奈子様と諏訪子様がお戻りになられないんですよ」
ここまで聞いた時点で、霊夢には嫌な予感しかしなかった。
「それで、いっしょに探してもらえませんか?」
それでも、霊夢の返事は決まっていた。
「...いいわよ」
「本当ですか!? ありがとうございます!」
「おっ、霊夢にしては珍しいじゃねぇか」
「そうかも...しれないわね」
霊夢は今、幻想卿で何が起こっているかを、自分の目で確かめたかった。
「じゃあ、私はもう一度妖怪の山を見てきますんで、霊夢さん達は他の場所を探してくださいね」
そう言って早苗は博麗神社を飛び出して行った。
「どうするんだ? 霊夢」
「...魔法の森に行ってみましょう」
「...わかったぜ」
霊夢は、何かが起こっているとすれば、魔法の森にその何かがあると思った。
事実、魔法の森に『それ』はあった。
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- 19 : 2015/07/21(火) 00:38:23 :
2人が魔法の森に着くと、ポツポツと雨が降りだしてきた。
「ちくしょう、雨が降ってきやがったな」
「どうするの? 魔理沙」
「んー、まぁせっかく来たんだし、とりあえず1通り見て回ろうぜ」
「わかったわ」
前と同じ、薄暗い森の中を進んで行く。前と違うところは、雨が降っているということだけだろうか。それでも2人は気にせず進んで行く。
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- 20 : 2015/07/21(火) 14:35:07 :
少し進んだところで、霊夢が何かにぶつかり躓く。
その『何か』が死体であるということに気づくのに、そう時間はかからなかった。
「………………」
前回と似たような境遇。覚悟はしていたものの、やはり慣れるものではない。
その死体は、言うまでもなく、霊夢達が探していた2人――八坂神奈子と洩矢諏訪子だった。
少しおかしい。
死体が溶けかかっている。
先に気づいたのは魔理沙だった。
「霊夢! 危ない!」
そう言って魔理沙は、霊夢を引っ張り、全速力でその場から離れる。
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- 21 : 2015/07/21(火) 23:38:18 :
「ちょっと、なんなのよ」
「あの溶けかたはおかしい。雨が溶かしてるみたいだった」
「だからなんなのよ」
「多分あれはホスゲンだ」
「ほすげん?」
「ああ、香霖堂にあった本に書いてあったんだが、なんでも、水と反応して塩酸になるらしい」
『塩酸』というものがどういうものか霊夢にはわからなかったが、さっきの様子から見て、人体に影響のあるものだということは安易に想像ができた。
「それがどうしたのよ」
「私の知る限りでは、ホスゲンはだいたい常温では気体だったはずだ。だから、あそこにいたら私達も危ない」
魔理沙の焦り様から見て、おそらく本当のことなんだろう。
「わかったから、離しなさいよ」
霊夢はそう言って、少し強引に魔理沙の手を振りほどく。
「ここまで来たら大丈夫だろう」
「でも...あれはどうするの?」
「雨が降ってる間は私達は近づけないし、どのみち、あんな状態じゃもう助からない」
わかってはいたことだが、魔理沙の一言は、心に重く突き刺さる。
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- 22 : 2015/07/22(水) 00:17:15 :
博麗神社へ戻ってみると、既に早苗が来ていた。
「どうでした? 霊夢さん」
霊夢は自分の見たものを全て話した。
途中、早苗の顔が蒼白に、必死に涙を堪えているのがわかるほど悲壮に、絶望しきっている程に目の光が失われていくのがわかったが、それでも、霊夢には話すのを止めることはできなかった。
「...すみません、霊夢さん。ご迷惑をおかけしました。私は一度、守矢神社に戻ってみますね...」
身体の底から絞り出した涙混じりの言葉に、霊夢は答えることができず、ただただ、早苗の背中を見つめるだけだった。
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- 23 : 2015/07/22(水) 22:50:41 :
雨は止む時を教えてはくれずに、ただただ降り続く。
日付感覚が曖昧になる程に日常は失われ、非日常へ浸かりきってしまった。それでも、眠たくはなるのだから余計に腹が立つ。
約1週間――正確には7日と1日、その間雨は止むことはなかった。
森の中にある『それ』は、もう既に人型だと認識できない程に爛れ、原型をとどめてはいない。
いつも賑やかな妖怪の山は、2柱を失ってさえもその賑やかさを絶やさず、霊夢にとっては、それが皮肉で堪らなかった。
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- 24 : 2015/07/22(水) 23:43:57 :
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4人を失って何日経ったかは、明確には覚えていない。
2週間かもしれないし、1ヶ月かもしれない、はたまた、それ以上の月日が経っているかもしれない。
感覚が麻痺する程に霊夢の神経は衰弱していた。
命ある物が生を果たし切るのは珍しいことではない。だが、この短期間に、知り合いを4人も失うことは今まで経験したことがなかった。
こんな状態の霊夢だが、1つ明確にわかっていることがある。
ここ1週間程だろうか、1度も魔理沙を見ていない。
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- 25 : 2015/07/22(水) 23:44:31 :
もう考えたくはないが、今の霊夢には、魔理沙が死んでいるとしか思えなかった。
魔理沙も毎日博麗神社に来るわけではないが、1週間に1度も来なかったのは、今までにもなかった。
霊夢は無気力な身体を無理矢理叩き起こし、友人の家がある場所――魔法の森へと向かう。
魔法の森はいつまで経っても薄気味悪く、遠くが見通せない程暗い。
初めて2度と入りたくないと思った場所。それでも、足を踏み入れるしかない。
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- 26 : 2015/07/22(水) 23:46:21 :
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久しぶりに来た友人の家は、以前と変わらず、ごく普通だ。
電気がついていない。
ドアを3回程ノックしてみる。
返事はない。
異臭がすることに気づく。
家の裏手へと回ってみる。
――5人目となる死体発見
――霧雨魔理沙
死んでからしばらく経ったであろうその死体は、虫の巣窟となっていて、腐りきっている。
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- 27 : 2015/07/23(木) 22:49:34 :
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霊夢は1週間ぶりに見た友人――の死体に涙を溢し、その場を去る。
神社へ戻り眠りにつく。
目が覚めても、見える景色は変わらない。
1度頭をリセットさせたところで、初めて深く考えてみる。
そもそもこの一連の異変は、どうして、誰が、何の為に行ったのか。
犯人の手がかりもなく、行く先には死体のみ。
全く推理は進まない。
いつも、異変が起こった時、どうやって解決しているかを考えてみる。
すると、今まで気づかなかった、1つの重大な事柄が見えてくる。
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- 28 : 2015/07/23(木) 22:50:43 :
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この一連の異変の中で、1度も霊夢の勘が働かなかった。
今までにこんなことは1度もなかった。
だとすると、考えられるのは、誰かが封じているか...
――私の勘を封じ込められる人物と言えば、かなり限られてくる
おそらく、八雲紫――
彼女はこの異変の間、1度も姿を見せなかった。
何の為に封じたかはわからないが、働かないのは働かないので理由は考えても仕方ない。
勘が働かないことを踏まえて考えてみる。
普段、ほとんど勘に頼っている霊夢は、『考える』という動作をあまりしたことがない。
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- 29 : 2015/07/23(木) 22:51:19 :
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それでも、緊急事態だからか、はたまた別の理由か、とても頭が冴える。
――まず1つ目の殺人...いや、工作。
咲夜の事前の説明と、灰と共に置かれたレミリアの服によって、あの状況で私はレミリアが死んだと思った。
錯覚させられていた。
そもそも吸血鬼が死ねば灰になるというのは説話でしかなく、実際に見たことはなかった。だから、あの灰に疑問を持たなかった。
もう1つ、私が見つけたときには灰はひとかたまりだったが、よく考えると、外にある灰が散らないのはおかしい。
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- 30 : 2015/07/23(木) 22:51:52 :
あの時、私達が来る直前にあの灰を用意できた人物といえば――十六夜咲夜。
彼女なら、私達が出口に着く直前にあそこに灰を置くことが可能性だ。
フランの件も同じ。
私がレミリアの死を見たことと、あの時の咲夜の反応から、フランが死んでいると錯覚した。
フォーオブアカインドの仕組みを知らない私は、あの状況に疑問を持たなかった。
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- 31 : 2015/07/23(木) 22:53:45 :
神奈子と諏訪子も同じだろうか。
魔理沙が言うには、ホスゲンという物質は気体、それも、水に反応する。
私はあの時死体にぶつかり躓いた。気体ならば、その時点で側にいた私が影響を受けなかったのはおかしいのではないか。
水は100℃で気体、それより温度が低くて液体、さらに冷たくなり個体。
それと同じ原理だとすると...
常温で気体、それ以下で液体又は個体。
あの時、ホスゲンを液体か個体にしておけたのは――チルノか。
それに水と反応するということは、私達が森にいる、死体を見つける前のタイミング、しかも、私達がギリギリ引き返さないタイミングで雨が降る必要があった。
そんな都合よく雨を降らせられるのは――東風谷早苗。
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- 32 : 2015/07/23(木) 22:54:18 :
最後の魔理沙の死体は、少し腐らせ放っておいて、私がおかしいと思ったタイミングで見にいけば、おそらくあの状況だったはずだ。
これらが全て仕組まれているとすると、死体は全て偽物。
実際、私はどの死体もしっかりと確認はしていない。
レミリアとフランのは置いておいて、フランのフォーオブアカインドとその他の死体の人形を用意できたのは――アリス・マーガトロイドか。
最初に魔法の森に入ったときには、わざわざ魔理沙はアリスが家にいないと伝えた。あれは、アリスの家に近づかれては不味かったからではないだろうか。
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- 33 : 2015/07/23(木) 22:54:52 :
そして、全てを仕組んだのは――霧雨魔理沙。
レミリアがいなくなったと聞いたとき、最初に魔法の森へ行こうと言ったのは誰だったか。
魔法の森を詳しく知らない私は、どこの出口に連れられても不思議に思わなかっただろう。
そしてその後、紅魔館へ行こうと言ったのは。
一番初めに、頑なに私を連れ出そうとしたのは――
よく考えると、異変が起こった日のあの質問の仕方もおかしかった。
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- 34 : 2015/07/23(木) 22:55:40 :
――なぁ、お前の博麗の勘は、これから起こること、例えば異変が起こるとか、そんなことを告げたりはしてないのかよ――
少し曖昧にしてあるが、この聞き方は、少なくともこれから異変が起こると知っていないとできない。
あれは私の勘が封じられていることの確認作業ではなかったのか。
魔理沙の提案だとすれば、アリスが手伝ったのも頷ける。
――すべてがよく出来ている
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- 35 : 2015/07/23(木) 22:56:21 :
霊夢は居ても立ってもいられなくなり、博麗神社を飛び出した。
行く先はもちろん魔理沙の家。
2度目の訪問、持ち主がいなくなったはずの家には明かりが灯っている。
ドアをノックする。
返事のノックが返ってくる。
ドアを開けると、そこには――
失っていたメンバーと、
『ドッキリ大成功』と書かれた立札が――
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- 36 : 2015/07/23(木) 22:57:00 :
「どうだ? 霊夢。驚いたか?」
1週間ぶりに聞いた友人の声と、予想通りの、しかし最高の光景に霊夢は何も言えなかった。
「いやー、まんまと引っ掛かってくれたからなー、こっちも面白かったぜ」
久しぶりに見た友人の笑顔に生気を取り戻し、やっとの思いで話す。
「どうして...こんなことをしたの?」
「霊夢に一泡吹かしたくてな、たまにはこういうのも面白いだろ?」
「本当に下らない...でも、本当に...良かった」
霊夢の目からは、数滴の涙が零れる。
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- 37 : 2015/07/23(木) 22:58:16 :
と、そこで、魔理沙の後ろの方からシャッター音が聞こえる。
「いやー、あの霊夢さんが涙を流すとは。『博麗の巫女、涙のわけは』これでいきましょう! これは発行部数3割、いや5割増しは硬いですね~」
そんなことを言いながら出てきたのは、鴉天狗の射命丸文だ。
「文、余計なことするとどうなるか、わかってるわね」
「おお、怖い怖い」
そんなやり取りの後、霊夢が思い出したかのように魔理沙に質問をする。
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- 38 : 2015/07/23(木) 22:59:21 :
「そういえば、どうしてあの日にしたの?」
「んー、ほんとはエイプリルフールにしようと思ったんだけどな。さすがにそれだとばれると思って日にちを変えたんだ」
「で、どうしてあの日だったの?」
「エイプリルフール――4月1日の旧暦は2月13日なんだぜ」
「そういうことだったの」
意外と考えられてると思い、霊夢は少し感心した。
「まぁ何はともあれ、これで一件落着だな」
「ほんと、魔理沙は都合良いんだから...」
-
- 39 : 2015/07/23(木) 23:00:09 :
-
再びシャッターの音が鳴り響く。
「そうですねぇ、言うなればこれは、『空嘘異変』とでもしましょうか」
切られたフィルムには、涙のあとが残る霊夢と満足げな魔理沙の、笑顔のツーショットが納められていた――
~ END ~
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- 42 : 2020/10/14(水) 14:32:57 :
- 高身長イケメン偏差値70代の生まれた時からnote民とは格が違って、黒帯で力も強くて身体能力も高いが、noteに個人情報を公開して引退まで追い込まれたラーメンマンの冒険
http://www.ssnote.net/archives/80410
恋中騒動 提督 みかぱん 絶賛恋仲 神威団
http://www.ssnote.net/archives/86931
害悪ユーザーカグラ
http://www.ssnote.net/archives/78041
害悪ユーザースルメ わたあめ
http://www.ssnote.net/archives/78042
害悪ユーザーエルドカエサル (カエサル)
http://www.ssnote.net/archives/80906
害悪ユーザー提督、にゃる、墓場
http://www.ssnote.net/archives/81672
害悪ユーザー墓場、提督の別アカ
http://www.ssnote.net/archives/81774
害悪ユーザー筋力
http://www.ssnote.net/archives/84057
害悪ユーザースルメ、カグラ、提督謝罪
http://www.ssnote.net/archives/85091
害悪ユーザー空山
http://www.ssnote.net/archives/81038
【キャロル様教団】
http://www.ssnote.net/archives/86972
何故、登録ユーザーは自演をするのだろうか??
コソコソ隠れて見てるのも知ってるぞ?
http://www.ssnote.net/archives/86986
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