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ベルトルト「猫だ」
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- 1 : : 2015/07/08(水) 22:17:11
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アニ「殺すか」
ベルトルト「！？ ア、アニ？」ｷﾞｮｯ
アニ「見な。あいつの腹」
ベルトルト「え…」ﾁﾗ
ベルトルト「…(痩せ細って、あばら骨が浮いている)」
アニ「どのみち死ぬよ」
ベルトルト「で…でも、殺すことはないんじゃないかな」
アニ「なんで？」
ベルトルト「なんで…？え、えっと」
ベルトルト「見たところ怪我や病気はしていないし…エサをくれる飼い主が見つかれば、十分生きられるよ」
アニ「ふーん。じゃ、あんた飼うの？」
ベルトルト「えっ」
アニ「それとも、そんなていのいい世話役を買って出てくれる人間が、あんたの知り合いにいるとでも？」
ベルトルト「…」
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- 2 : : 2015/07/08(水) 22:19:51
ベルトルト「いない…ね。はは」
アニ「笑い事じゃないよ」
ベルトルト「ご、ごめん」
アニ「ここは訓練所。猫を養える余裕なんて誰にもない」
ベルトルト「…じゃあ…ここから出してあげようか。この迷い猫、もしかしたら街に本当の飼い主がいるのかもしれない」
アニ「飼い猫だったら食べ物求めてこんなとこ来る前に、然るべき場所でさっさとエサ食べてるよ」
ベルトルト「…」
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- 3 : : 2015/07/08(水) 22:30:08
ベルトルト「…けれど、このままここにいるよりはいいと思う」ﾋｮｲ
ベルトルト「外の方が、まだ誰かに拾われる可能性もあるし…」ﾅﾃﾞ
ネコ「ミャー…」ﾓｿﾞﾓｿﾞ
アニ「…」
アニ「あんた、よっぽどその猫を助けたいんだね」
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- 4 : : 2015/07/08(水) 22:37:40
ベルトルト「そうじゃないよ」ｽｯ
ネコ「ニャ？」ｽﾀｯ
ベルトルト「ただ君の手を汚したくなかっただけだ」
アニ「…そう」
ベルトルト「ほら、その塀の穴をくぐれば外だよ。早く行きな」
ネコ「…」ｷｮﾛｷｮﾛ
ベルトルト「…外に飼い主がいるかもしれない、誰かが拾ってくれるかもしれない…」
ベルトルト「本当はこんな無責任なこと、言いたくなかった」
アニ「じゃあなんで言ったの」
ベルトルト「希望を持って欲しかったから…かな」
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- 5 : : 2015/07/10(金) 12:41:46
ベルトルト「”どのみち死ぬ”じゃなくて…」
ベルトルト「”みんなで飼おう”とか、”今頃飼い主が捜してるかもしれない”とか、言って欲しかった」
アニ「そんな薄っぺらい希望…絵空事だね」
ベルトルト「絵空事でもいい」
ベルトルト「僕達は…死をまっすぐ見つめてる」
アニ「目の前に立ちはだかってるんだ、仕方ないだろ。嫌でも視界に入るものさ」
ベルトルト「それでも、目を逸らしてほしかった。アニとライナーには…」
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- 6 : : 2015/07/10(金) 12:42:01
ベルトルト「僕は彼のこと、怒ってないんだ」
アニ「…そう」
ベルトルト「自分のせいでもあるから」
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- 7 : : 2015/07/10(金) 19:24:39
ベルトルト「アニは、優しいね」
アニ「急になにいってんの」
ベルトルト「…この猫はどのみち死ぬ」
ネコ「？」
ベルトルト「今日生き延びたとしても、明日には死ぬ」
ベルトルト「死ぬんだ、みんな」
ベルトルト「だからここで楽にしてあげるんだろう？」
アニ「…そうだね」
アニ「このまま生きてても、地獄だよ」
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- 8 : : 2015/07/10(金) 19:31:33
ベルトルト「…」ｽｯ
アニ「どこへ行くつもりだい」
ベルトルト「食料庫から少し食べ物を持ってこようかと思って」
アニ「盗みを働こうって？あんたサシャなの？」
ベルトルト「あ、うん…最期においしい思いをさせてあげたいんだ」
アニ「へえ。優しいね」
ベルトルト「…(本当の理由は…アニがその猫を助けたいみたいだから、だけど)」
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- 9 : : 2015/07/10(金) 20:09:39
ベルトルト「でも殺しはしない」
アニ「結局手を下すのは私かい…」
ベルトルト「ううん。君の手を汚すこともさせない」
アニ「見殺しにする気？」
ベルトルト「…もしかしたら、明日を迎えても、生き延びるかもしれないから」
ベルトルト「だから生かすんだ」
アニ「勝手だね…そんな可能性、小数点打たないとないよ」
ベルトルト「それでも、少しでもあるなら僕はそれにかけるよ」
アニ「あんたって楽天主義だっけ？」
ベルトルト「そう見える？」
アニ「もっと諦観した奴だと思ってた」
ベルトルト「間違ってないよ。それで合ってる……今の僕、疲れてるのかな」
アニ「…直前に怖気付くなんて、やめてよ」
ベルトルト「逃げることはしないよ」
ベルトルト「…(そもそも逃れられるものじゃないんだ)」
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- 10 : : 2015/07/10(金) 20:10:05
アニ「あの猫…まだ外に出ようとしないね」
ベルトルト「ライナーだったらどうしたかな」
ベルトルト「アニは殺して、僕は見なかったことにする。ライナーだったら…」
アニ「…”みんなで世話しよう”とか？」
ベルトルト「……いやだな、やっぱり」
ベルトルト「僕達が希望を口にしても、虚しいだけだ」
アニ「だろうね」
ベルトルト「せいぜい、”かわいそうに”ぐらいがいいな」
アニ「まあ、あいつもそこらへんは弁えてると思うよ。叶わない望みに夢見るようなキャラでもないし」
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- 11 : : 2015/07/10(金) 20:10:27
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ライナー「呼んだか？」ﾋｮｺ
ベルトルト「あ、ライナー」
アニ「噂をすれば、だね」
ライナー「俺の名前が聞こえた気がしたんだが…二人して何をしゃべってたんだ？」
ベルトルト「えーと、猫が…」
ライナー「猫？…うおっ、どうしたんだコイツ？今にも死にそうじゃねえか」
アニ「エサ求めてここに迷い込んできたんだ」
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- 12 : : 2015/07/10(金) 20:15:34
ベルトルト「…食料、分けるだけ無駄かな…」
ライナー「は？」
ベルトルト「動く元気もないってことは、すでに手遅れなのかもしれない……もう行こう。そのうちカラスのエサにでもなるよ」
アニ「だったら一思いにやった方が気分良いじゃないか。あんたがやらないなら私がやる」
ベルトルト「だめだ、汚れてしまうじゃないか」
ライナー「…ちょっと待て」
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- 13 : : 2015/07/22(水) 19:17:37
ライナー「おいお前ら…さっきから何を言ってやがる…？」
ベルトルト「え？」
ライナー「黙って聞いてりゃあカラスのエサにでもなるだの、一思いにやった方が気分が良いだの…どうかしてるぞ」
アニ「…」
ベルトルト「ラ、ライナー？」
ライナー「特にアニ。普段から何考えてんだか分からねえ奴だと思ってはいたが、まさか、気分で命を弄ぶとはな」
アニ「…フン」
ベルトルト「そうじゃないよ、アニは自らの手を汚してまでこの子を苦しみから解放してやろうと」
ライナー「なに？」
ベルトルト「彼女なりの…優しさなんだ、分かるだろ」
ライナー「…ああ、なるほどな」
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14 :
おしまい
:
2015/07/22(水) 19:41:19
- 期待
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14 :
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- 16 : : 2015/07/22(水) 19:52:14
- >>14
期待感謝です！
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- 17 : : 2015/07/22(水) 20:01:29
ベルトルト「ほら、ね？」
ライナー「分かった分かった。よーく理解できたぜ」
ベルトルト「ならよかった…」
ライナー「恋は盲目、とは言ったもんだ」
ベルトルト「え」
ライナー「だがな、是非を判断できねえようじゃ兵士失格だぞ？」
アニ「…」
ベルトルト「き、急にどうしたんだい、ライナー…僕はネコの話をしていたんだ。誰が恋愛の話なんか」
ライナー「そう意地はらなくていいだろ。お前がアニに想いを寄せてるのはバレてんだ」ｺｿ
ベルトルト「なっ！？」
ライナー「見過ぎだ。あんなの誰でも気付く」
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- 18 : : 2015/07/22(水) 20:01:55
ベルトルト「き、君は馬鹿なのか？僕達に恋に現を抜かす暇があるとでも？」
ライナー「まあまあ、いいじゃねえか」ﾊﾊ
ライナー「たしか…アニも憲兵団志望だったよな。そうしたらあっちでもほぼ毎日会えるだろ」
ベルトルト「たしか、って…」
ライナー「はっきり言ってお前の趣味は悪い。だが、俺は人の恋路に口出すような野暮な真似はしないつもりだ。応援してるぜ」
ベルトルト「…」
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- 19 : : 2015/07/22(水) 20:03:01
アニ「さっきから二人でこそこそと…気分悪いね」
ライナー「ああ、すまん。もう終わる」
ライナー「…そうだ。なんなら今、告白しちまっても…」
ベルトルト「うるさいな！これ以上余計な事言わないでくれ！」
ネコ「ミャア？」
ベルトルト「っ、失せろ！！」
ネコ「！？」ﾋﾞｸｯ
ベルトルト「お前なんかどっか行っちまえ！」ﾌﾞﾝｯ
ライナー「おい！？衰弱した動物に石を投げつける奴があるか！」ｶﾞｯ
ベルトルト「お前が！お前らがいるから！」ｸﾞｸﾞｸﾞ
ライナー「この…っ」ｸﾞｸﾞ
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- 20 : : 2015/07/22(水) 20:07:44
ベルトルト「だんだん僕達は僕達じゃなくなっていくんだ！毎日毎日毎日！」
ベルトルト「僕達に！笑いかけてくるから！」ﾌﾞﾝｯ
ライナー「聞け、ベルトルト！」
ベルトルト「頼むからやめてくれ！もう、これ以上僕達に…
ﾊﾞｼｯ！
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- 21 : : 2015/07/22(水) 20:12:24
ベルトルト「…」
アニ「みっともない醜態晒してんじゃないよ…」ﾌｳ…
ライナー「お、おぉアニ…助かった。ベルトルトも正気に戻ったみたいだ」
アニ「フン、頰を引っ叩いて礼を言われる日が来るなんてね…めずらしい事もあるもんだ」
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- 22 : : 2015/07/22(水) 20:32:26
ライナー「ふー、なんだってんだ…ったく」
ベルトルト「…」
ライナー「…俺の…冗談が過ぎたな。悪かった」
アニ「…ネコ、行ったみたいだね」
ライナー「…言っとくが、お前の残虐性に満ちた一連の言動を見過ごす気はねえぞ」
アニ「へえ。あんた、私を説教できるほど偉いっていうの？」
ライナー「少なくともお前よりかは上だと信じてるぜ」
ベルトルト「…もう、やめよう二人とも」
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- 23 : : 2015/07/22(水) 20:32:55
ベルトルト「ライナー、行こう。次の訓練が始まる…」ｽﾀｽﾀ
ライナー「ん、おう…」
ライナー「またな、仏頂面」ｽﾀｽﾀ
アニ「フン…」
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- 24 : : 2015/07/22(水) 20:34:35
ライナー「……なあ？さっき、口出しはしないと宣言した後であれだが…あいつとは少し距離をおいた方がいいんじゃねえか？」
ベルトルト「…」
ライナー「俺が思うに、お前はもう少し広く交友関係を持つべきだ。その方がお前の為にもなる…で、さっそくだが今度の日曜日、皆と一緒に出かけないか？エレン達にちょうど誘われててよ…な、損はねえだろ？えー、来るメンツは確か……
ベルトルト「ライナー…お願いがあるんだ」
ライナー「ん？」
ベルトルト「これ以上、光を当てないで」
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- 25 : : 2015/07/22(水) 20:38:36
- おしまい
なんだかクサくなってしまいました
普段はまともな人でも極限状態に陥ると人が変わりますよね
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26 :
おしまい
:
2015/07/22(水) 21:45:29
- 乙カレー
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26 :
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27 :
まいん
:
2015/07/25(土) 19:50:53
- 乙です！
ベルトルト...
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27 :
このSSは未登録ユーザーによる作品です。
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