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貴方に託すもの
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- 1 : 2015/06/24(水) 19:00:29 :
- 春市と栄純は女の子設定
御幸と春市は結婚してて栄純と倉持も結婚してます
シリアスな可能性大
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- 2 : 2015/06/24(水) 19:02:39 :
- 桜が舞い散る春の日。
俺達に待望の子供が産まれた。
病室に入ると、妻が横になっていた。
その隣には先程産まれたばかりの、息子がスヤスヤと寝ていた。
御幸 「春…」
俺の声に反応したのか、妻の身体がピクリと動いた。
春市 「一也さん…」
妻の声はとても弱々しかった。
御幸 「春、お疲れ様。そして、産んでくれてありがとう」
春市 「お礼を言うなら私ではなく、この子に言ってあげてください。無事元気に産まれてきてくれたのですから」
妻…いや、春は微笑みながら言った。だが、その表情はどこか哀しそうだった。
御幸 「どうした?なんか、嫌なことでもあったか?」
春市 「え?あっ…いや、なんでもありませんよ。ただ、少し疲れちゃって…」
御幸 「そう..だよな…なんか、ごめんな。疲れを溜めないためにももう行ったほうがいいよな」
そう言って俺は病室を出ていった。
春市「ごめんなさい...一也..さん…!!」ポロポロ
春市が一人で泣いてるのを知らずに。
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- 3 : 2015/06/24(水) 19:04:42 :
- 次の日、春の病室に行こうとすると医師に引き止められ、少し話しをすることになった。
しかし、その内容はあまりにも急すぎて、頭の整理が行かなかった。
「旦那さん。よく聞いてください。簡潔に言いますと、もう春市さんは長くはないでしょう…」
御幸 「は?」
春市の身体が弱かったことは充分に知っていた。
出産する時も、自分に負担がかかり過ぎて犠牲になるかもしれないという事も。
でも、春は「せっかく、宿ったわたし達の子供ですよ?命を犠牲にしてでも産みたいです。」と言った。
昨日、春の表情が暗かったのもこれで納得がついた。
そして、一番覚悟のいる事を聞いた。
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- 4 : 2015/06/24(水) 19:13:22 :
- 御幸 「春は…残りどれくらいなんですか?」
「春市さんは短くて1週間、長くて1ヶ月です。」
俺はショックを隠し切れなかった。
でも、一番哀しいのは春なんだ。
きっと、学校へ行く姿や、成人式、結婚式姿も見たかっただろう。
俺は複雑な心境で診察室を出た。
病室の前まで行くと何やら笑い声が聞こえた。
来る途中、何度も泣きかけたが一番辛いのは春なんだと自分に言い聞かせ、病室に入った。
病室では丁度、春が乳を飲ませてあげていたところであった。
そして、沢村や倉持、亮さん達がお見舞いに来てくれていた。
倉持「おっせーぞ!!御幸!奥さんを一人にしちゃ、駄目だろ!」
沢村「そうですよ、先輩!」
亮介「お仕置きだね。御幸」ニコッ
御幸「あはは…すみません。ごめんな?春。」
春市「大丈夫ですよ。一也さんこの子を抱いてあげて。」
正直どう、抱っこすればいいのかわからず、少し戸惑ったがなんとか抱くことができた。
赤ちゃんの肌はもちもちしていて、気持ち良かったし、とても可愛かった。
顔の輪郭や目元、全てが春市に似ていた。
御幸 「お前は本当に春にそっくりだな…」
春市 「そうですか?一也さんに似ているところもありますよ」
亮介「本当だ。この鼻とか」
沢村 「春っち!抱っこしてもいいか?」
亮介 「だーめ。お前何するかわかんないから」
春市 「ふふっ良いよ」
沢村が抱き上げた瞬間、赤ちゃんは泣き出してしまった。
動揺している沢村はめっちゃ面白かった。
春市 「タイミングが悪かったようだね。お腹すいたみたい。」
御幸 「なんなら、俺ら出た方がいいな。」
春市 「大丈夫よ!わざわざ、外に出なくても…」
倉持 「お前、今更見るのが恥ずかしいのか!?」
御幸 「そ、そういう意味じゃなくてな!」
俺らが言い合っている間に、春はすでに飲ませ終わっていた。
亮介 「さ、皆帰るよ。あんまりいたら春市も疲れちゃうし。」
倉持 「そうっすよね!んじゃあな!」
沢村 「春っちーまた来るからな!」
春市 「うん。ありがとう!」
二人は病室を後にした。
だが、一人だけ帰らない人がいた。
御幸 「あれ?亮さんは帰んないんすか?」
亮介 「まぁね。お前たちと話したいことが山程あるし」
亮介「まず、その1。その子の名前どうすんの?」
御幸 「んー色々と考えてるんすけどね…」
春市 「そうなんですか?」
御幸 「おう。えっと…遥哉はるや、遙斗はると、琴春こはる…」
春市 「全て、《はる》がつくじゃないですか!」
亮介 「それに、最後は完全に女の子だし。」
御幸 「いやぁなんとなく?」
本当は春市を忘れたくないとか誰にも言えないし…
御幸 「春は、気に入ったのあるか?」
春市 「うーん…3番目の琴春が良いです」
亮介 「女の子みたいな名前でもいいの?」
春市 「うん!」
御幸 「じゃあ、琴春で決定な。」
亮介 「それじゃあ、2つ目。春市はどうすんの?これから。」
春市 「…え?」
亮介 「だから、残り少ない時間をどうすんの?」
御幸 「亮さん!それは…!」
春市 「…」ポロッ
御幸 「ほら、泣いちゃった!春?心配するなよ?母親が泣いたら琴春が悲しくなるんだぞ?」
春市 「だけど…兄さんの言う通り…私には時間が無いの…!」ポロポロ
春市 「もっと、この子と暮らしたかった…もっと、遊んであげたかった…だけど、そんなことは叶わない…!」ポロポロ
春市 「身体が…持たないの…」ポロポロ
亮さんが変なことをいうから、春は泣き出してしまった。
御幸 「…」ギュッ
春市 「!」
御幸 「春…心配すんな。俺が作ってやるよ。お前と琴春の思い出をな。たとえ時間が少なとも。必ず!」
春市 「うん…うん…!」ポロポロ
亮介 「そういうことで決まりだね?父さんと母さんにも言っとくから。」
春市 「またね兄さん。」
亮介 「ああ。早く退院しなよ?」
そう言って亮さんは病室を後にした。
そして、その2日後春と琴春は無事退院し、俺達の家へ帰ってきた。
残り少ない時間をどう有効に使うかは、俺にかかっている。
俺はその日から、色々なプランを考えた。
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- 5 : 2015/06/24(水) 19:25:05 :
- 琴春が家に来て1日目。
俺は両親達に報告するため、家に招く事にした。
御幸 「春市ー今日家に俺の両親とお前の両親が来るから準備しとけよー」
春市 「え!?また、急に…じゃあ、沢山ごちそう作らなきゃ…「待った」
御幸「それは俺がやるから、春は琴春を見ててくれ」
春市 「わかりました。春ちゃん今日はねおじいちゃんとおばあちゃんとお兄さんが家に来るんだってー」ニコッ
御幸 「さてと…何作ろうかな…」
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- 6 : 2015/06/24(水) 19:28:58 :
俺は手際よく、赤飯やサラダ他にも色々作った。
準備を進めているとチャイムが鳴った。
ピーンポーン♩
春市 「私が出ます!」
春市 「はーい…お父さん、お母さん、兄さん!」
亮介 「元気そうでよかった。春ちゃんこんにちは。」ニコッ
春市父 「女の子じゃあないんだよな?」
春市 「う、うん…」
春市母 「でも、本当に春ちゃんに似てるわね!」
御幸 「お義父さん、お義母さん。こんにちは。」
春市母 「あら、一也さん!今日は呼んでくれてありがとうね」
御幸 「いえ!今日は来て頂きありがとうございます!どうぞごゆっくりしてください。」
亮介 「なに、改まって。変なの」
俺が、春の家族と話していると。春は俺に隠れて何か準備をしようとしていた。
だが、俺はそれを見逃さず春の手を止めた。
御幸 「はーる?駄目だろ?」
春市 「だってー!」
御幸 「ダメなものはダメ。春は琴春と休んでて」
春市 「むー!一也さんのケチ!…コホン..コホン...」
御幸 「ほらぁ、無茶するから…」
御幸 「俺が全部やるから、な?」
春市 「でも…」
亮介 「春、行こう」
御幸 「亮さん。すんません」
亮介 「どうってことないよ。」
俺の作業が終盤に近づいた頃、また、チャイムがなった。
俺は手を止め、玄関へ向かった。
ガチャ
御幸 「いらっしゃい。父さん、母さん」
御幸母 「遅くなってごめんなさいね。」
御幸 「まだ、始まってないから大丈夫だよ。さ、入って」
両親を中に入れ、俺は最後に仕上げをし、リビングへ持って行った。
そして、琴春の命名式が始まった。
御幸 「今日は忙しい中来てくださり、ありがとうございます。これから、この子の命名式を始めようと思います。春。」
春市 「この子の…ゴホッ…名前は、『琴春』と…コホンコホン…命名します。」
春は咳き込みながらも両親らに伝えた。
だが、あまりにも咳き込みすぎたのか倒れ込んでしまった。
春市 「…ゴホッ…ゴホッ…!…はぁはぁ…ゴホッ!」
御幸 「春、春!」
亮介 「御幸、救急車を」
数十分後…春は病院へ運ばれた。
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- 7 : 2015/06/24(水) 19:29:58 :
病院へ行くと春は先程とは打って変わって、スヤスヤと眠っていた。
しかし、医師に言われたことは、とても現実的に受け止められなかった。
「春市さんの、肺はとても弱ってきています。もう長くはないかと…」
御幸 「嘘…だろ?」
御幸 (俺はまだ、琴春と春の思い出を作ってやれてないんだぞ?このままだと、琴春は春のことを知らないまま生きていくことになってしまう…!)
御幸 「俺は…どうすれば…」
春市 「か…ずや…さん」
御幸 「春!大丈夫か?」
春市 「お願いが…あるの…」
春から出た言葉は1番やりたくないことだった。
御幸 「そんなお願い聞けるわけねーだろうが…」
春市 「お願い…します。私の最後の願いなの…」
春市 「もうどこも行かなくてもいい。でも、琴春の中から私が消えるのは嫌…だから…!」
御幸 「わかった。準備するから待ってろよ?」
春市 「ありがとう…」
俺は一度家に帰り、春の着替えや必要なものをカバンに詰め再び病院へ向かった。
そして、春の『お願い』を聞き入れた。
だが、3日後の夜……
春市 「か…ずや…さん……」
御幸 「俺はここにいるぞ?琴春もな」
俺は琴春を横になっている春の上に乗せてやった。
春は、か細い腕で琴春を抱きしめた。
春市 「琴春…ダメな…お母さんでごめんね……もっと一緒に遊びたかった……もっと一緒に暮らしたかった……だけどね…もうできないの…お母さんはね……今から遠いところに……行くから……もう会えないの……本当に…ごめんね……」
春市 「一也さん…今までありがとうございました……私のせいで…沢山迷惑掛けてごめんなさい……」
御幸 「迷惑なんかじゃなかったぞ?春と一緒に暮らせて楽しかった。あと、俺からも言わせてくれ。春、結婚してくれてありがとう。琴春を産んでくれてありがとう。俺と人生を歩んでくれてありがとう。俺はお前がいてくれて本当に良かった」
春市 「一也さん…私、本当は……死にたくない…….もっとあなたと一緒にいたかった。でも、もう叶わない。だから……」
琴春をよろしくおねがいします。
春はそういった途端、息を引き取った。
御幸 「春…お前が残してくれたもの…必ず立派に育ててみせる…!だから、この子が立派に育ってくれるまで見守っていてくれ……」ポロッ
俺は桃色の髪の毛をそっと撫でた。
春の表情は苦しそうではなく、ほんのりと微笑んでいる様子だった。
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- 8 : 2015/06/24(水) 19:31:22 :
春が亡くなって15年
あの時赤ちゃんだった琴春も、来年、高校生になる。
子供の成長は速いもんだとつくづく思う。
そんな俺は亡くなる前春が俺に頼んだ『お願い』を、琴春に見せることにした。
御幸 「琴春。見せいたものがあるんだが…」
琴春 「なに?」
御幸 「ここ、座って」
俺は琴春をテレビの前のソファーに座らせ、再生を押した。
琴春 「何これ?ビデオ?」
『琴春』
琴春 「母…さん?」
春市 『琴春がこれを見ているって事は、お母さんはもういないんだね。琴春は何歳になったのかな…?中学校は卒業したのかな?もしかして、彼女もいたりとかして』クスッ
琴春 「か、彼女って…////」
御幸 「え、居るのか?」
春市 『あんなに小さかった琴春がどの位大きくなったんだろう…見たかったな…』
春市 『ちゃんとカッコ良く育ってくれたかな?』
琴春 「カッコ良くって…//何言ってんだよ///」
春市 『お父さんが育ててくれたから、きっとカッコ良く育っているわね」クスッ
琴春 「ねえ、父さん。」
御幸 「なんだ?」
琴春 「母さんって本当にこんな人なのか?」
俺は少し戸惑った。
御幸 「う、うん?」
琴春 「曖昧だね笑」
それからしばらくビデオは流れた。
数分後、ビデオの中の春は容態が急変した。
春市『ゴホッ…ゴホッ……ごめんね……こんな姿は…見せたくなかったな……』
春市『ゴホッ…ゴホッ…琴春。元気でいてね……』ニコッ
そこでビデオは途切れた。
琴春 「え?このあとどうなったの?」
御幸 「……」
琴春 「父さん!!!」
御幸 「眠るように………死んだよ……」
琴春 「………母さんは……死ぬ前も笑ってたんだね……」
御幸 「ああ…死ぬ前までずっと琴春のこと抱き締めてたよ」
琴春 「母さん…母さん……俺、母さんに会ってみたかった……なんで、なんで母さんは死んだの?病気だったの?」
御幸 「………」
春市 『絶対にあの子に私が死んだ理由を教えないで下さいね。あの子が自分を責めてる姿を私は見たくありませんから』ニコッ
俺は春が言った言葉を思い出した。
御幸 「ごめん…春…」ボソッ
俺は琴春に打ち明ける事にした。
御幸 「母さんはな、身体が弱かったんだ。だから、お前を産むときも母さんは悩んだんだ。だけど母さんはお前を選んだ。自分の命が削れても必ず産みたいと言ったんだ。」
琴春「つまり、俺を産んだから母さんは死んだんだね?」
御幸「違う!そう言う事じゃ…「そういう事だろ!!!」
琴春「俺を産んだから母さんは死んだんだ…俺が産まれたから…」
御幸「琴春!!」
琴春は家を飛び出してしまった。
御幸(春はこの事を目に見えていたのか…)
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- 9 : 2015/06/24(水) 19:32:02 :
琴春「はぁ…はぁ…」
思わず家を飛び出してしまった…
父さんに反抗したのは初めてだった。
「琴春?」
偶然道中で会ったのは、彼女の栄夏だった。
琴春「栄夏…」
栄夏「とりあえず、家に来る?」
栄夏は何かを察したのか、家に入れてくれた
栄夏の家に行くとおばさんが快く迎えてくれた。
栄純「あら、春ちゃんいらっしゃい!」
琴春「おばさん……助けて下さい…」
栄純「え?!ど、どうしたの?」
俺は今まであった事を全て話した。
栄純「そう…春市は、春ちゃんにそんな物を残してくれたのね。でもね春ちゃん、自分が産まれたから春市が死んだって思っちゃ絶対にダメよ。あなたが産まれた時、春市に会いに行ったらあの子はずっと嬉しがって抱いていた。それほどあなたのことが大事だったの。だからね産んでくれたことを感謝しなさいね。」ニコッ
栄夏「琴春…いつまでも私がついているからね!」
琴春「おばさん、栄夏。ありがとうございます……」
その時
「琴春!」
琴春「父さん!なんでここに…」
御幸「倉持に聞いたんだ。ごめんな沢村、いきなりお邪魔して…」
栄純「大丈夫ですよ。その代わりしっかり仲直りしなよ?」
御幸「ああ!あと俺、先輩な!」
栄純「そんなの関係ないですー」
栄夏「あ、あの!」
栄夏「1つ報告してもいいですか?」
琴春「お、おい!言うのか?」
栄夏「うん!」
栄夏「あの……私達付き合ってるんです/////」
栄純「あら!やっと付き合ったのね!」
御幸「は!?ちょ、ちょっと待てよ!沢村、娘に彼氏できたのにその反応かよ!」
栄純「だって、いつもべったりなのに中々付き合わないから……」
琴春「と、とにかく!母さんが言ったことは本当の事になったな」
御幸「春…すげーな……」
栄純「よし!今日は家でお祝いしよう!」
栄夏「私も手伝う!琴春も食べて行って?」
琴春「そうだな…だろ?父さん」
御幸「ああ。今日はごちそうになろう」
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- 10 : 2015/06/24(水) 19:32:35 :
あれから一年…
琴春と栄夏は仲良く、かつて俺や倉持、沢村と春市が通った青道高校に行くことになった。
しばらくは寮生活になるから寂しい気もするが、子供達がここまで立派に育ってくれたのは微笑ましいことだ。
御幸「春、俺たちの子供はここまで立派に育ってくれたぞ。」
御幸「お前が残してくれたもの…必ず大切に大事に育てていくから…これからも見ていてくれよ。」
春市『一也さんありがとう。これからもよろしくおねがいします』
桜の舞い散るある春の日。
俺に語り掛けるように吹いた暖かい風は春市が言っているようだった。
END
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- 11 : 2015/06/24(水) 19:34:11 :
- えーっと、pixivに書いたものをssnoteにも投稿させて頂きました!
出来たら感想や、意見を言ってもらえたら嬉しいです!
- 著者情報
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