ご主人の過去を私が変えます
-
- 1 : 2015/04/08(水) 16:25:08 :
- 今回はギャグ少なめでいきます!
ちなみにだいたいエネsideです\(*∀*)/
あと
長いです!!
多分飽きます。
だけど一応一番の自信作になりそうです…
最近のご主人は、悪夢を見るようになりました。
毎日のように。
この前は「アヤノ」って呟いていたので、多分
アヤノちゃんとの過去が原因だと思うのですが…
昨日、私が
エネ「ご主人!最近ちゃんと寝れてますか?」
と聞いてみたんですけど、
ご主人は
シンタロー「え…まぁ、いつも通りだが?」
としか答えてくれません。
ご主人、私はそんなに無力ですか?
ご主人が辛い時の相談相手にもなれませんか?
確かに、体は無いけど、
私はあなたの力にはなれないのですか…?
もしも、私に体があれば、
あなたに手を差しのべることだって出来るのに。
おもいっきり、抱きしめてあげることも出来るのに。
画面越しじゃ、何も出来ない?
あなたを励ますことも、
この想いを伝えることも。
じゃあ、
私には、何が出来る?
-
- 2 : 2015/04/08(水) 16:26:53 :
- 期待です*^-^*/がんばっ
-
- 3 : 2015/04/08(水) 16:28:13 :
- >>2
ありがとうです、頑張ります!
-
- 4 : 2015/04/08(水) 16:47:35 :
- それから何日かが経ちました。
ご主人の様子に変化はありません。
メカクシ団の皆に相談してみようか。
そういえば、最近ご主人はアジトに行ってないです…。
私もずっとご主人のパソコンの中にいたので、
団員の皆さんと顔を合わせていません。
エネ「ご主人!アジトに行きませんか!?」
シンタロー「あ、あぁ…そのうちな」
やっぱり、アジトを避けている様な気が…
悪夢の原因は、
アヤノちゃんではないのでしょうか。
私も、メカクシ団の一員だから、
それで私にも話してくれないの?
なら、ずっと部屋に引きこもってるご主人は、
誰に相談するの?
妹さん?
でも絶対、「心配かけたくない」なんて綺麗事を考えて
本音を話さない。
もしかして、
私も?
私にも、心配かけないように、言わないだけ?
ご主人、
あなたに聞きたいことがあります。
ご主人にとって、
私は、
重荷ですか?
違うとしたら、
「私」という存在は
あなたにとって何ですか?
-
- 5 : 2015/04/08(水) 17:13:17 :
- ご主人は今、誰のことを考えているのだろう。
私には、解らないのかな。
じゃあ、つなぎさんにでも相談してみるか…
いや、能力を使うことを拒んできたつなぎさんに、能力を使わせるの?
アヤノちゃんのことを考えているのかもしれないのに?
つなぎさんにとっても、アヤノちゃんはきっとかけがえのない存在。
それを思い出させるのは駄目だ…
じゃあ、妹さんに相談する?
何て?
ご主人を助けてあげて、って?
私が悩んでも解らないことを、
妹さんにも悩ませる?
そんなこと出来ないよ…
あぁ、助けて、アヤノちゃん。
あなたなら、
ご主人のことを誰よりも
解ってるアヤノちゃんなら、
解決できるはずなのに…
…アヤノちゃんなら、
アヤノちゃんなら、こういうとき
どうする?
-
- 6 : 2015/04/08(水) 18:22:07 :
- 誰にも相談出来ない。
じゃあ私が解決しないt
カノ「ガチャッあっシンタロー君!」
シンタロー「えっ何で入ってきてんだよ!?どうやって入った!?」
カノ「ドアから…如月ちゃんが入れてくれたよ!」
エネ「狐目さん!!!」
これは相談するチャンス?
でも、いいのかな…。
カノ「あ、エネちゃん、ちょっといい?話があるんだけど…
シンタロー君!エネちゃん借りまーす」
シンタロー「え?あ、あぁ、分かった」
エネ「え、私ですか?わかりました…」
狐目さんのケータイに移動する。
なんだろう?話って…。
ついでに、ご主人のことも
相談していいかな………
狐目さんは無言で家を出て、黙々と
どこかに向かっている。
エネ「どこに行くんですか?狐目さん…」
カノ「?道で分からない?」
その道は、私がいつも見ている道。
でも、
最近は、通ることのなかった道だ…。
-
- 7 : 2015/04/08(水) 21:45:06 :
- カノ「はいっ、到着!!」
キド「早かったな、カノ」
セト「お帰りっス!」
マリー「エネちゃん、久しぶり~!!」
エネ「皆さん、お久しぶりです!!すみません、なかなか来れなくって…」
キド「いや、大丈夫だ。それで、用というのは…」
この『用』というのは、私が想像してなかった
内容だった。
というか、先を越された、というべきかもしれない…。
キド「シンタローに何かあったのか?」
エネ「…え?」
キド「気のせいならいいんだ。でも、最後にアジトに来た時はあまり調子が良くなかった
みたいだったし、最近は来てない」
カノ「如月ちゃんは、シンタロー君、家にいるって言ってたし」
皆は気づいていた。
ご主人の変化に。
私よりも、ずっと前から…
なのに、
私は気づけなかった。
同じ部屋で生活していて、
ずっと一緒に過ごしていたのに。
こんなの、
私って、
最悪だよ……
-
- 8 : 2015/04/09(木) 13:12:28 :
- マリー「エネちゃん、お願い、全部話して。皆心配なの」
エネ「…愛されてますね、ご主人は」
見てください、ご主人。
皆さんは、あなたのことを
こんなにも心配してくれてますよ?
気づけなかった
私には
無理して話さなくていいから
皆さんには
話してください…
あなたの本心を。
私は、これまでのことを全て話した。
最初から最後まで。
でも、一つだけ言わなかった。
ご主人が、『アヤノ』と呟いていたことを。
皆さんに、アヤノちゃんのことを
思い出させたくなかった…
いや、違う。
本当は
私だけの秘密にしておきたかったんだ。
ご主人と過ごしていた私しか知らないことだということを
実感したかった。
キド「エネ、こうなったことに心当たりはないのか?」
エネ「はい、それで困っていて…」
2つ目の嘘。
気づかれてしまうかな、
心を読めるつなぎさんには。
自分を欺いてきた狐目さんには。
団員の変化を見逃さなかった団長さんには。
そんな三人に囲まれて過ごしてきたマリーちゃんには。
キド「なんか過去のことなのか…」
さすがに鋭い。
セト「それって…」
あぁ、もう駄目だな。
皆気づいているだろう。
マリー「過去?あ…カノ!!エネちゃんにあれ、あげれば?使えるかもしれないし!」
カノ「え?何を?」
マリー「ほら、カノの携帯に…」
指を差していたのは、狐目さんの携帯に入っていた
謎のアプリの体験版だった。
-
- 9 : 2015/04/09(木) 14:47:56 :
- エネ「何ですか?これ。初めて見ました」
キド「これは、俺とマリーで作ったアプリだ。二回しか使えないけどな」
エネ「…作った?」
マリー「ちょっとキドがカゲロウデイズの性質を調べてたの…
その性質と私の能力の性質を組み合わせたら、タイムスリップ
できることがわかって…」
キド「そしたらセトがそれをアプリにしてみたらどうだと提案してきたんだ」
セト「でも一番携帯の容量が空いてるカノでも、二回分しか入らなかったっス」
マリー「未来版はキドの携帯にあるよ!!」
キド「こっちの方が容量3分の1で済むからな…」
エネ「え…、逆だと思ってました」
カノ「未来は変えられないんだけど、過去は変えられるから、
それが原因かな」
え…
過去が変えられる…?
私の過去も、
あなたの過去も?
私に
変えることができる?
…ご主人を、ここから救える?
-
- 10 : 2015/04/09(木) 15:18:04 :
- エネ「それ、もしだったら一回分使ってもいいですか…?」
カノ「もちろん、エネちゃんなら使いこなせるだろうし!」
エネ「狐目さん…。他の皆さんは…」
キド「あぁ、お前が使ってくれ」
セト「もちろんっスよ!」
マリー「うん!………」
エネ「…?どうかしましたか……?」
セト「マリー?」
マリー「うっううん!!何でもないの!!気にしないで…!」
カノ「じゃあ、はいこれ、説明が書いてあるから…」
エネ「…ありがとうございます!」
エネ「あの、団長さん…」
キド「どうかしたか?」
エネ「はい、ここに書いてある、『事実は変えられないが、記憶は変えられる』、って
どういう意味ですか?」
キド「あぁ、そのままだよ。例えば、誰かが転んで怪我をしたとか、
何かを食べたとか、死んだとか、そういう『事実』は変えることが出来ないんだ」
カノ「でも、この場合はシンタロー君だとして、制限時間内にエネちゃんが起こした行動について
変わったことは、そのままシンタロー君の記憶にも反映されるんだ」
マリー「でも、例えばシンタローをメカクシ団に入れないように
説得したとしても、シンタローの記憶はメカクシ団に
入らなかったってことになるけど、メカクシ団に
入ったっていう事実は変わらないから…」
エネ「え、そしたら、現実とご主人の記憶が違うものになるって
ことですよね。それって大丈夫なんですか?」
セト「そのために二回分用意しといたんで、
ズレが生じたらもう一回やり直すっス」
キド「とりあえず、過去を変えたことで
シンタローの現在にも影響が及ばないように気をつけろ」
エネ「は、はい!あれ、そういえば…」
エネ「狐目さん、さっき、制限時間内って言いましたよね。」
カノ「あれ、さっきの説明に書いてなかった?確か下の方に…」
エネ「あ、ありました!えっと、時間は…」
1時間半…。
この時間で、
私は…
ご主人を救うんだ。
-
- 11 : 2015/04/09(木) 15:43:08 :
- エネ「それでは、行ってきます!!」
キド「あぁ、事故とかに遭っても無傷で戻ってこれるが、一応、気をつけろよ。」
カノ「頑張ってね!」
エネ「はい!行ってきます!」
画面の中に吸い込まれていく。
不思議な感覚だ。
初めてエネになった時とはまた違うような…
シンタロー「エネ!!ここにいるのか、カノは…
え?ご主じ……
-
- 12 : 2015/04/09(木) 16:27:03 :
- ずっとエネsideの予定でしたが
ちょっとマリーsideに変わります。
シンタロー「エネ!!ここにいるのか、カノは、カノのケータイにいるのか!?」
えっ、シンタロー?
急いでいるからか、言葉が変になってる。
息切れもしてるし…
あの運動嫌いなシンタローが、走ってきたの?
もしかして、
エネちゃんのために?
エネちゃんを心配して?
カノ「えっ!?」
セト「シンタロー、久しぶりっス!」
シンタロー「あ、あぁ…って、そんなことより!!」
シンタローがアジトに来なかったのは、
何か大きな問題を抱えてたからだと思う。
エネちゃんのことを観察してた甲斐があったのかな。
『過去を変えられる』というカノの言葉で、エネちゃんの表情は変わった。
そこで、やっぱり、過去に原因があるのかと思って。
それに、エネちゃんがシンタローのことを話してた時、
どうして、
それだけで悪夢を見たってわかるんだろうって思った。
他にも、
何か隠してるんじゃないかって。
そして、それは
シンタローの大切な人、
そして、
キドと、セトと、カノの
お姉さん。
そう、楯山文乃さんだ…。
そう考えれば、辻褄が合う。
エネちゃんが、3人のことを気遣って
言わなかったってことも。
シンタローが悪夢を見ていたのも。
アジトに来なかったのだって。
キドも、セトも、カノも、シンタローと同じくらい
悲しんだはずだから、
自分だけが苦しんじゃダメだ、って。
でも、アジトに行って、
思い出すのが辛かったんだよね?
それで、
相談できずに
エネちゃんと2人で、引きこもってたんだよね?
…多分だけど、全部わたしの予測だけど、
エネちゃんもシンタローも、
お互いのことが本当に大切だったんだよね……。
-
- 13 : 2015/04/09(木) 17:52:45 :
- こんなに深く考えるようになったのは、
キドとセトとカノがいたからだ。
この3人からは、色々なことを学んだ。
『1つ1つの言葉を聞き逃さず、深く理解する。そこから
相手の本心を読み取るんだ…』
これはキドから聞いたこと。
『一度相手の喋ったことを全部一度整理するんス。
そうすれば必ず矛盾点が1つは見つけられるはずっス。
そこから先を読み取れば、相手のことがまた少しわかるはず…』
これはセトから聞いたこと。
『相手がいつもより少しでも感情の起伏が激しかったり、その逆だったりすれば
何かあるってこと。喋り方とかもね。あとは、そのあとの行動とかから
判断するしかないんじゃない?』
これはカノから聞いたこと。
わたしがこの3人から大切なことを教わったみたいに、
わたしも、
シンタローに…
-
- 14 : 2015/04/09(木) 18:25:06 :
- エネsideに戻ります!
エネ「いったたたたぁ…ここは?」
体が重い。
何で…?
自分自身の体を見て、驚いた。
エネじゃない。
『榎本貴音』だ。
この姿でどうしろと?
貴音「あ…で、過去って…」
あ、遠くで何かが光ってる。
もしかしてあそこに?
これは…大画面の様な。
アヤノちゃんが自殺する前あたりの出来事が
すごい速さで映像として流れていく。
画面に触れてみる。
それと同時に映像が止まる。
貴音「…これで、いつに戻るか、探せってこと?」
何度か同じ動作を繰り返す。
貴音「あれ、何これ?」
私とアヤノちゃんが二人で会話をしている。
…記憶に無い。
貴音「何だったっけなぁ…」
そう言うと、画面が普通の速さで流れ出す。
アヤノ『あの、貴音さん…』
貴音『あれ、アヤノちゃん、どうしたの?』
アヤノ『ちょっと、相談に乗ってもらいたくて…今大丈夫ですか?』
貴音『うん。相談て?』
アヤノ『あ…、場所を変えていいですか?』
貴音『もちろんだよ…』
アヤノ『相談というか、質問なんですけど、もしも貴音さんが明日死ぬとしたら…』
アヤノ『自分の一番大切な人に何をしますか?』
貴音『うーん、難しいね…ちょっと考えていい?』
アヤノ『はい、もちろんですよ。すいません、変な質も
画面を止めた。
私は、その画面に釘付けになった。
-
- 15 : 2015/04/09(木) 19:30:57 :
- 貴音「えっ、も、もう一回。」
そう言うと、もう一度、さっきと同じところから画面が流れ出す。
また同じところで止めた。
恐らく、アヤノちゃんはこの時から自分が自殺すると決心していたのだろう。
それで、最後にシンタローに何をするかを考えていたのだ。
これで、私はなんて答えたのだろうか。
画面に触れる。
続きが流れ出した。
貴音『…ごめん、 アヤノちゃん。分からないや』
アヤノ『そうですか、わざわざすみませんでした』
貴音『…力になれなくて、ごめんね?』
アヤノ『いえ!またよろしくです!!それでは。』
……これが原因?
これで、アヤノちゃんは、シンタローに何もしなくて、
そのまま死んじゃったの?
私のせいだったの?
だったら、
貴音「お願い、ここに戻して」
ここで私がうまくやれば
シンタローを、
ご主人を救える。
謎の強い光に包まれる。
ここから始まる、
ご主人のための1時間半が。
-
- 16 : 2015/04/09(木) 20:03:41 :
- 今度はキドsideです
シンタロー「あれ、エネは…いない!?」
カノ「あぁ、エネちゃんは…」
マリー「アプリの中。」
キド「えっ、マリー…!?」
マリー「シンタローが苦しんでいるからって、エネちゃんは、
安全の保証も無いアプリに入っていったの。シンタローのせいで」
何を考えているんだ、マリーは…!?
でも、いつになくマリーの眼は真剣な眼差しをしていた。
マリーなりの考えがあるのか…?
シンタロー「オレの…せい?」
マリー「そうだよ。心当たりはあるでしょ?」
シンタロー「…え、マリー、どうしたんだよ!?」
マリー「はぐらかさないで、ちゃんと答えて」
シンタロー「……」
カノ「え、ちょ、…マリー?」
マリー「文乃さんのことでしょう!?」
マリーは気づいてたのか…
セトは何も喋らない。
でも、目は赤い…
その目は、マリーの方を向いている。
セトが止めないってことは、大丈夫ってことなのだろう。
カノも今は平然としている。
ここはマリーに任せてみるしかない…
シンタロー「な、何でそれを?」
マリー「エネちゃんの態度で解るよ…」
マリー「エネちゃんはアジトに来ようと思えばモモちゃんの携帯に入ることだって
できたのに…、ずっとシンタローの部屋で過ごしてきたのは何でかわかる!?」
シンタロー「えっ……?」
マリー、いつの間にそんなことを考えていたのか…
そのことに俺は全然気づけなかった。
駄目だな……、団長として。
マリー「エネちゃんはこんなにシンタローのことを考えているのに…」
マリー「どうして本当のことを言わないの!?」
マリーの声が掠れている。
少し泣いている。
俺も、セトも、カノも、そしてシンタローも、
マリーから目を離すことは無かった。
-
- 17 : 2015/04/09(木) 21:17:51 :
- シンタローside
マリー…
オレの目の前にいるのは、
マリーなのか?
本当はカノじゃないのかと思うくらい
迫力がある。
少し…というか、すごく…
怖い。
そして、全てが正論だ。
エネ…。
オレはお前に
何を伝えればよかったんだ?
最近
エネの様子がおかしかったのは、
オレのせいなのか?
エネは
『アジトに行こう』と言っていたのに
オレは、団長たちと会うのが
嫌で、
怖くて。
コイツらはもう前を向いて歩き出しているのに
オレだけが悲しんで。
悔やんで。
それは皆同じのはずなのに。
何も言われなくても、
責められてる気がして。
アジトにいると
『オレの心』が
死んでしまう様な気がして。
エネなんて、
いるのが当たり前で
悩んでいることも気づかずに
しかも、オレのことで。
それで、今日
いきなりカノが現れて
エネを連れ去ってしまって。
時間が経てば経つほど
心に穴が空いて、
広がっていく様な感覚で。
今まで、エネがいたことの
一緒に過ごしてきたことの大切さを
全く解ってなかったんだなって。
オレにとって、
大切な人を亡くしたオレにとっての、
一番の味方だったのに。
今のオレにとって、
一番、
大切な人だったのに。
気づくのは遅すぎて。
そんなことを考えていたら、
いつの間にか走っていたんだ。
この、しばらく走っていない
. .
体力のないはずの足で。
エネのもとへと向かって……
-
- 18 : 2015/04/09(木) 21:43:18 :
- マリー「どうして本当のことを言わないの!?」
シンタロー「…怖い………」
カノ「『怖い』?」
シンタロー「オレは…アジトに行かないで…、家にいる間…ずっと」
シンタロー「怖かった…お前らに会うのが…、お前らが」
キド「……っ!!……え…………」
カノ「キド……?シンタロー君、どういうこと?」
シンタロー「オレが…アヤノのことで、こうなってるって知ったら、
責められる。そんな…そんな気がして…家から出るのも怖くて……怖くて」
これは、オレの、本当の、本音の、本心だ。
アジトのことを考えていると、
食事もまともに出来なかった。
キド「……」
セト「何で、そんなことを思…って、キド…!!」
カノ「キド、泣いてるの…?」
キド「……え?泣いてる?俺が?…え…何で……」
マリー「え……!?」
その時、全員は団長に注目した。
団長の頬は、
濡れていた。
-
- 19 : 2015/04/09(木) 23:20:02 :
- 貴音side
…ここは、学校?
私は制服を着ている。
どうやら、タイムスリップには
成功したみたいだ…。
お、
前からアヤノちゃんが歩いてくる。
ここからが本番だ…
アヤノ「あの、貴音さん…」
貴音「ん?どうしたの?アヤノちゃん」
アヤノ「ちょっと、相談に乗ってもらいたくて…今大丈夫ですか?」
貴音「平気だよ…何?」
アヤノ「あ…、場所を変えていいですか?」
貴音「え、あぁ!シンタローに聞かれちゃ、困る?もうすぐ来るもんね…」
アヤノ「え、い、いや、そんなことは…やっぱり、ここにしましょうか!!」
貴音「うん、わかった」
まずは1つ、変わった、かな…
アヤノ「それで、相談というか、質問なんですけど、もしも貴音さんが明日死ぬとしたら…」
アヤノ「自分の一番大切な人に何をしますか?」
貴音「うーん…」
アヤノ「すいません、変な質問してしまって」
貴音「ううん!全然平気。…ちょっと考えるから、座ったりして待っててー」
アヤノ「ありがとうございます…!真剣に考えてもらって」
自分の一番大切な人?
遥…?
いや、昔ならそうだった。
でも、
私の今、一番大切な人は、
遥じゃない、
シンタロー。……ご主人だ。
-
- 20 : 2015/04/09(木) 23:42:13 :
- 私がご主人に出来なかったこと。
私がご主人にしたかったこと。
それは…
貴音「アヤノちゃん」
アヤノ「…はい!」
貴音「質問の答えだけど…」
アヤノ「はい、何でしょうか…」
貴音「私なら…」
『エネ』のしたかったこと…
貴音「その人が困っている時に、手を、差しのべてあげる。」
貴音「そして、その人を、抱きしめる…」
私にはどうしても出来なかった…
貴音「思い残すことのないように……」
貴音「想いを、伝える」
アヤノ「……」
貴音「…こんな感じで、いいかな?アヤノちゃん」
アヤノ「…あっ、ありがとうございます!!
感動しました……!!」
シンタロー「あれ?アヤノ?何してるんだ?」
アヤノ「えっ、シンタロー!?」
貴音「じゃあ、アヤノちゃん、がんばって!!」
アヤノ「…はい!!」
よし、シンタロー…、ご主人はよしとして。
次は、私の番だ。
-
- 21 : 2015/04/10(金) 13:29:52 :
- さっきの説明書に、書いてあった。
記憶は、ターゲット(すなわちシンタロー)の記憶しか変えられない。
それは解っている。
解っている…。
だけど、
せっかく貴音になったんだ。
遥と過ごす日常が、ここに来た。
こんなこと、もう二度とないかもしれない。
だから、
このチャンスを逃す訳にはいかない…!
だって、
記憶に影響するのは
ご主人だけじゃない。
だって、
私の記憶にも残るでしょう?
-
- 22 : 2015/04/10(金) 13:54:03 :
- カノside
キド「わっ、悪い…気にしないでくれ」
キド…
何で……泣くの…?
僕には解らない?
キドの辛さなんか。
こういうとき、セトの能力が欲しくなる。
『僕のと変えて』、って、何度考えたことか。
僕は、欺くことしか出来ないんだ。
自分を、自分の本心を、
隠すだけ。
見せないだけ、
見せるのが、怖いだけなんだ。
だから、
さっき、シンタロー君が言ってたこと、
何か、
分かるのかもしれない。
シンタロー君も
分かるのかも知れない。
そう思ったんだ…
僕は。
でも、
キドは…
何を思ったんだろう。
セトも、
きっとマリーだって、
シンタロー君のことが
分からなかったのかも。
シンタロー君の、
本心が。
皆、僕と違うことを考える。
それは当たり前。
そんなことに、
僕は
気づかなかったんだ。
キドが、他の人が
何を考えているのかなんて
考えなかった。
ひどいなぁ、僕は。
皆、許して。
こんな僕を。
カノ「キド、ちょっといい?」
キド「え?」
カノ「あ、話は、進めてていいから…」
キド「え、ちょっと待て。一体どこに…」
マリー「カノ?」
シンタロー「え、どこに行くんだよ。」
セト「え…」
僕は、僕なりに、頑張ってみるよ。
僕にできることから。
こんな僕に。
-
- 23 : 2015/04/10(金) 14:56:12 :
- セトside
マリー「…行っちゃった。どうしよう、セト」
セト「…紅茶でも飲んで待ってればいいんじゃないんスか?」
マリー「わかった、紅茶入れてくるよ…!」
シンタローさんが来てから、ほとんどずっと能力を使っていた。
全員が、自分のことを
駄目だ、とか、ひどい、とか、どうして、って、悔やんでいた。
そして、
全員が、全員のことを大切に思っていた。
考え、考え、考えて。
それぞれの最善策を考えて、
皆は行動していた。
そして、その事は
自分しか、知らないんだ。
自分にしか、わからないんだ。
皆の前では平然としてるけど
団長として
悩んで、
団員のことを第一に考えてるキドの、
本心も。
本当の自分を見せないで
一人で抱え込んで
自分を欺く、カノの
本心も。
周りが見ているよりも、考えてる、そして、学んでる、
皆の変化も見逃さなかった、
今、一番真実に近づいてる、マリーの
本心も。
自分で、自分のことがわかってないフリして、
本当は全部理解してる、
お姉ちゃんの、一番大切だった人、シンタローさんの
本心だって。
俺にしかわからない。
カノが、この能力が欲しい、って考えていたけれど
本当に
交換してあげたい。
できることなら。
でも、
カノには、必要無い。
ほんの少しでも、
自分を、見せれば
カノは
自分でなんとかできる人なんだ。
キドも、
マリーも、
シンタローさんも。
能力を使わなくたって
そこまで理解してた。
エネちゃんも
シンタローさんのことを一直線に追いかけていた。
その結果が、アプリの中に入る、ということだった。
俺は
何も出来ない。
能力に頼って、
何も努力してない。
ただの、駄目な人間。
ただの、
弱虫だったんだ。
-
- 24 : 2015/04/11(土) 04:27:26 :
- 期待!
-
- 25 : 2015/04/11(土) 10:02:03 :
- 期待
-
- 27 : 2015/04/11(土) 13:36:29 :
- 注意2
作者は未だに結末を考えていないので、
話がズレる可能性があります。
(というか今から書こうとしている内容も考えていません)
-
- 28 : 2015/04/11(土) 14:19:32 :
- モモside
今、私の前で何が起こったんだろう。
状況を整理してみる。
まず、お兄ちゃんが急にアジトに行かなくなる。
エネちゃんも、お兄ちゃんのパソコンから動かなくなる。
キド『最近シンタローが来ないんだが、何で来ないのか知ってるか?』
モモ『それが…解らないんです。エネちゃんも一向に動こうとしないし…
しかも、アジトだけじゃなく、もう、しばらく
家から出てないんですよ……』
マリー『エネちゃんも?』
モモ『うん。私もしばらく会ってない』
それどころか、実の兄だって、最近まともに会話してない。
何か悩んでるのかな…?
お兄ちゃんがちょっと部屋から出てるその隙に、エネちゃんに聞いてみた。
モモ『エネちゃん、最近お兄ちゃんどうかしたの?』
エネ『はい、何か考え込んでいて…聞いても答えてくれなくて…
私に相談してくれるまで、パソコンからは出ないようにしてるんです』
モモ『心配?やっぱり』
エネ『それは、もちろんですよ。』
エネちゃんがいるなら安心だと思って、
私は特に変わりなく生活していたんだ。
そうして今日が来た。
リビングにいた私は、呼び鈴の音にすぐ気がついた。
でも、モニターに映っている人が見たこと無い人なら
私は出ないようにしている。
何故って?私がアイドルだから。
でもそこに映っていたのは
カノさん。
そうしてドアを開けた。
お兄ちゃんに会いに来たのかな。
モモ『どうしたんですか?』
カノ『あ、如月ちゃん。エネちゃんいる?』
モモ『はい…お兄ちゃんの部屋に』
お兄ちゃんの部屋の窓辺りを指さして言うと、
カノさんはすぐにそこに向かって歩き出した。
モモ『…?』
私はリビングに戻った。
2分か3分位して、二階から人が降りてくる足音が聞こえた。
カノ『お邪魔しましたー!』
エネ『え…?』ガチャン
どうやらカノさんとエネちゃんが家から出ていく様子だ。
何だったんだ…?
しばらくのんびりしていると、二階から大きな物音がした。
それと同時に階段をすごい勢いでかけ降りる音が聞こえた。
リビングのドアからその様子を見る。
お兄ちゃんはケータイを見つめながら少し変な様子で
家から出ていく。
モモ『待って、お兄…
そして、今が現在。
何があったのか、状況を整理した今でも解らない。
もしかして、
解ってないのは、私だけ?
前にアジトに行った時、皆はお兄ちゃんの心配をしていた。
エネちゃんだって。
今カノさんが来たのも多分、それに
関係があってのことだろう。
なのに、
実の妹だという、私は
何も知らない。
心配すらしてない。
…何これ。
私、酷くない?
もしかして、
妹失格?
-
- 29 : 2015/04/11(土) 23:12:12 :
- 貴音side
私は遥を探し始めた。
貴音「遥ー!!」
肝心の遥がいないとは……!!
考えていなかった。
とりあえず、学校の中を
全部探すしかない…
校舎の中は全部探したはず。
あとは…
屋上……!?
うっそ、ここから真逆じゃん!!!
でも、
行くしかない……
行くしか……
…どうしよう。
ちょっと……
…怖い、かも。
緊張してきたー!
でも、その前に…
駄目だ。
眠い…
何で、こんな時に……!!
まだ、アヤノちゃんがうまくいったかも
確認してないのに。
あぁ、助けて…
皆待ってるから。
メカクシ団の皆も。
ご主人も…
-
- 30 : 2015/04/11(土) 23:34:42 :
- アヤノ「…かねさん、貴音さん!?大丈夫ですか!?!?」
貴音「…え?」
アヤノ「貴音さん、ここで倒れてて…
びっくりしましたよ。もう平気ですか?」
貴音「嘘…!!ごめんね、アヤノちゃん。」
どうしよう、
今、何時!?
…あ、
もう一時間以上たってる。
正確には、一時間十五分。
つまり、あと十五分…
貴音「アヤノちゃん、遥知らない!?」
アヤノ「え…すいません、見てないですね……」
…やっぱり、屋上?
私は屋上に向かって走り出す。
貴音「遥!!いる!?」
そこには、座り込んでる人がいた。
その人は、
私の方を見て、
笑顔を向けた。
いつもと変わらない、懐かしい笑顔で。
-
- 31 : 2015/04/14(火) 17:55:25 :
- うわぁ!マジ感動!頑張ってね!期待です!
-
- 32 : 2015/04/14(火) 19:22:27 :
- >>31、ありがとうございます!!
けど、
ネタギレです…すいません…
でも頑張ります!!
-
- 33 : 2015/04/14(火) 19:49:38 :
- シンタローside
セト「…」
マリーは紅茶を入れていて、
セトはさっきから黙ってて、
カノは団長の側にいて、
団長は…泣いている。
オレのせいで…
何故だ?
何で…
いや、
理由はわかってる。
『怖い』って言ったから。
オレが。
『お前らが怖い』って。
今になって考える…
どうしてこんなこと言った?
1番、酷い言葉。
傷つけるって、わかってたはずだった。
わかってた…。
…わかってたのか?
本当に。
マリーに言われたことから
逃げ出したかっただけじゃないのか?
『本当のことを言わないの』、って。
エネに、皆に、
何も言わなかった自分から
逃げていただけじゃないか…
オレは何で間違える?
どうすれば、間違えなかった?
いや、この考え方は違う。
今から、
何をすればいい?
-
- 34 : 2015/04/14(火) 20:08:47 :
- 団長に…謝るか?
いや、それはまずカノに任せるのが正しいと思う。
じゃあ、マリー?
でも、
怖いんだよな…
いつものマリーとまるで違うというか。
あれ?
何でだ?
マリーは、
一体何がしたかったんだ?
オレに、
何を伝えようとして?
マリー「2人とも、もうちょっと待っててね~」
あ…
…エネ?
エネのことなのか?
オレが気づかなかった、
エネのことか?
…エネは、
何を思っていたのか。
何を思って、オレのパソコンに留まっていたのか。
…マリーは、わかってるのだろう……
オレが、今出来ること。
エネの為に、出来ること。
それは、
マリーに、話を聞くこと…
-
- 35 : 2015/04/16(木) 07:11:25 :
- マリーside
マリー「2人とも、紅茶入れたよ~」
セト「ありがとうっス」
シンタロー「あ、ありがとう」
何かシンタローの顔色が悪いような。
…当たり前か。
セト「…マリー、」
マリー「なぁに?セト。」
セトは紅茶を飲み干していた。
おかわりかな?
セト「ち…ちょっと、散歩に行ってくるっス!」
マリー「…散歩?」
セトはアジトから出ていった。
もしかして、ここにいづらかった?
今の私はちょっと
微妙な表情を浮かべていたみたいで。
シンタロー「マリー…セトは散歩じゃなくて…
オレが…」
えーと、シンタローが頼んだのか、
セトが心を読んだのか…
多分、後者だと思うけど。
どちらにしろ、シンタローがここに私と二人で
残ることを望んだってこと。
何故だろう。
マリー「…何で?」
シンタロー「マリーに、聞きたいことがあって…」
マリー「へぇ。何??」
シンタロー「あの……エネのことで…」
聞きたい…ってことは…
シンタローは
本当にわかってなかったってこと?
…まぁ、いいや。
今、こうして二人になれたことだし。
シンタローに、
私が、
理解させればいい。
無理矢理にでもね。
-
- 36 : 2015/04/18(土) 22:42:29 :
- 久々の貴音side
遥「貴音?どうしたの?息切らして」
貴音「…遥、探してた」
遥「えっ…」
遥の記憶には残らない。
そう思うと、
自然に言葉が出てくる。
貴音「遥…に、言いたいことがあって…」
遥「え…急に、どうしたの…」
言いたいこと。
私が本当に言いたかったことは、
『好き』という気持ち。
だけど、
何故だろう。
言えない。
怖くはない。
恥ずかしくもない。
じゃあ何故か?
だって、
言ってしまったら
私の中の遥が消えてしまうと思って。
だから、この言葉をかけた。
貴音「…ありがとう」
遥「…何?急に」
貴音「今まで、ありがとう。
ずっと…一緒に過ごしてきて…
楽しかった」
気づくと、私は涙を流していた。
その時、遥は
私を抱き締めた。
貴音「…遥?」
遥「ありがとう、貴音」
遥「僕は、きっと貴音より先に死ぬ。」
貴音「…」
私は何も言えなかった。
言わなかった、というのもあるけど。
遥の声を、
しっかりと記憶に、
心に、
残しておきたかった。
遥「だけど…、だけど
貴音の心で、僕は生きてるから」
貴音「…うん」
貴音「…でもさ」
遥「…うん?」
貴音「生きて……、もっと…生きて」
遥「…そう言ってくれると、嬉しいよ…でも」
貴音「何…?」
遥「泣かないで…。笑って?」
貴音「……うん」
私は、遥に向かって、今までで一番という位の、笑顔を向けた。
遥と一緒に。
その瞬間、また、謎の光に包まれた…
-
- 37 : 2015/04/21(火) 18:43:06 :
- マリーside
マリー「シンタロー…聞きたいのって?」
シンタロー「いや、だから、エネが…」
マリー「エネちゃんの何を?」
シンタロー「何って……あ、そうだな…す、すまん、あの…」
さっきは結構強気で言っちゃったから、
今度は少し待つことにしよう。
シンタロー「お前がさっき言ってたさ…どうしてエネはオレのパソコンから
出てこなかったっていうの…」
マリー「うん」
シンタロー「…何でだ?」
マリー「え?……もしかして、…解らない?」
シンタロー「検討もつかない」
マリー「えぇ…?」
…本当に解らなかったのか。
前にモモちゃんが言ってたけど、シンタローって
本当に鈍感なのね。
マリー「じ、じゃあ、エネちゃんがシンタローのことを
どう思ってたと思う?」
シンタロー「…うざい、とか?」
マリー「!?」
シンタロー「あとは…邪魔とか、キモいとか…引きニートとか」
マリー「えぇ…!?どうしてそんなにネガティブなの…?」
いや、大体合ってるけど…
ここまで来ると、ただの馬鹿だよ。
マリー「じゃあさ!シンタローは?」
シンタロー「え?自分のこと?」
マリー「いや、そうじゃなくて…」
マリー「エネちゃんのこと、どう思ってる?」
-
- 38 : 2015/04/22(水) 18:49:25 :
- シンタローside
え…
オレが…エネのことを…
どう…
シンタロー「…考えたことない」
マリー「えぇ…えっと…単刀直入に聞くけど……」
シンタロー「あ、あぁ」
マリー「好きなの?」
え?
シンタロー「す、好きって…」
マリー「あ…えっと…その、恋愛感情ってやつ!?」
はっ!?えっ!?
いや、違う違う違う!!!
だって、エネは、ずっと同じ部屋で過ごしてきた、
恋とは…無関係みたいな相手で…
何だろう。
じゃあこの想いは。
とりあえず…わかることは……。
シンタロー「…大切な人…だとは思う」
マリー「…うん」
マリーはさっきの迫力とは別人のように、
穏やかな目をしていた。
シンタロー「だけど…わからない。これがどういう感情なのかは」
マリー「…そっか」
シンタロー「そっか、って、何だよ」
マリー「あ!ごめんごめん。いやぁ…」
シンタロー「?」
マリー「それでいいんじゃないかな。今は」
シンタロー「…そうなのか?」
マリー「今は、の話だよ!」
その言葉の意味は、今のオレにはわからなかった。
-
- 39 : 2015/04/23(木) 22:33:20 :
- 久しぶりのキドside
キド「カノ、何処に…」
カノ「う~ん…アジトの外とかでいっかな」
カノの考えが読めない。
何をしようとしているんだ?
こうなったのは、きっと
俺が涙を流したから。
それは解ってるんだが…
キド「お、おい、いい加減、手を離せ…」
カノ「だって、そしたら能力使うじゃん。それとも、
ずっと見つめてる方がいい?」
キド「う…」
この能力はこういうところが本当に厄介だと思う。
さっきからカノの顔は余裕ぶった顔をしている。
こうなると、もうカノには暴力でしか勝てない。
キド「…で、何なんだよ…」
カノ「あのさ、僕たちの能力って、似てない?」
キド「はっ?」
こいつは何かの意図があって喋ってるのか、
ただの馬鹿なのか…よく分からない。
キド「似てるって、何がだ?」
カノ「…自分を見せない、っていうか」
キド「俺の場合、そのままだろ」
カノ「…確かに、そうだね」
キド「で…それが何だ」
カノ「いやぁ…思いついたから」
…こいつはただの馬鹿だったみたいだな。
カノ「では、本題に入ろうと思います!」
キド「手早く頼むな」
カノ「…さっきのシンタロー君の言葉、どう感じとった?」
その言葉は、俺の胸に深く突き刺さった。
-
- 40 : 2015/04/23(木) 23:05:28 :
- キド「どう…って……それは…」
カノ「簡単でいいよ?嫌だったとか、悲しい、とかで」
キド「…カノは?」
カノ「え、僕?」
キド「いや…何でもない」
カノはどう思ったのか気になったが、
知りたくない気もしたので止めた。
キド「…まぁ、悲しい、かな」
カノ「…まぁ、って何さ」
キド「…言いたくない」
カノに言うのはなんか悔しい。
それに、カノに言うような話じゃない。
カノ「じゃあ、ずっとこのまんまでいいの?」
キド「は?」
カノ「は?、って、手の話。」
…そうだ、さっきからずっと手を繋いでた(繋がれてた)んだ。
今更だけど、この手の温もりは
何故か、とても懐かしいような気がする。
カノ「……え、ちょ、泣くほど嫌なの!?」
キド「えっ!?…あ、ホントだ」
気づいたら、また泣いてた。
キド「いや…そうじゃなくて……」
カノ「え、じゃあ何…で……」
キド「あ、そ、その…何て言うか…
…暖かい?って言うのか?」
カノ「…え?えっ!?」
キド「何か、安心する」
カノ「…キドが素直で怖いんだけど」
確かに、今は素直に喋れてる。
キド「悪かったな。…あ、そうだ、カノ」
カノ「何?キド」
ここで、俺の中でシンタローの言葉から生まれた『疑問』を
カノに問う。
キド「メカクシ団が存在する意味って何?」
-
- 41 : 2015/04/26(日) 20:25:36 :
- カノside
…え?
カノ「…消失、した人たちを取り戻す…!?」
何で疑問系なんだ。
自分で自分に突っ込む。
キド「…じゃあ、俺達がここに集まる理由って何だ」
今言ったじゃんか。
と言いそうになりつつも抑える。
集まる理由…?
そんなの決まってる。
カノ「楽しいから」
キド「…」
何か僕、間違えたのか…
キドは無反応…というか、うつむいてしまった。
カノ「あれ…何か僕、間違えた…!?」
キド「い、いや!!そうじゃない!!そうじゃないけど…」
よかった、僕は間違えてないみたい…
いや、
よかった、じゃないな、この状況。
キド「…本当に、楽しい…?」
カノ「うん、僕は」
…僕は?
じゃあ、皆は?
…シンタロー君とか。
キドは、
それを聞きたかったのだろうか。
僕の予想が正しければ、100%そうだと思う。
カノ「…シンタロー君は、」
そう言うと、キドの肩はビクッと揺れ動く。
予想が的中したようだ。
カノ「…シンタロー君はさ、多分気持ちがちょっと荒れてたっていうか…
マリーのこともあって少し弱ってたっていうか…だから…」
何だ、この説得力の無い言葉は。
多分とか、ちょっととか、少しとか、っていうか、とか。
ここまで来ると、シンタロー君に腹が立ってきたけど、
何とか抑える。
キド「…だけど……この…メカクシ団のせいで、
シンタローを追い詰めてたんだろう?」
キドは優しいな。
僕からみたらシンタロー君は自分のことを僕達のせいにしているように
しか聞こえないけど?
キド「俺は何も分かってなくて…」
そう言うと、キドは大粒の涙を流し始める。
何も出来ない僕は、ただ、キドを強く抱き締める。
ドラマとかでこういうシーンを見ると
カッコいいなぁ、なんて思うけど
実際は、他に何も出来ないだけで。
こんなキドに声をかけることも出来なくて。
この時、僕は改めて強く感じた。
僕の無力さを。
-
- 42 : 2018/09/16(日) 21:16:18 :
- 期待((* ॑꒳ ॑* ))
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