この作品はオリジナルキャラクターを含みます。
神様のシンリガク
- ミステリー × 推理 × 恋愛
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- 1 : 2015/02/23(月) 22:49:22 :
- 「セシル…覚えておいて下さい。私はあなたのことを永遠に愛しています。あなたは一人ではありません。誰かが必ず傍にいます。」
「お母様っ!行かないで下さい…お母様…。」
「お母様っ!…ゆ…夢?」
4年程前、私がまだ10歳の頃。私の母はこの城から消えた。父やメイドや執事、誰も母の行方を語ろうとはしなかった。
それから私は、一日中部屋にこもるようになった。何も変化の無い日々。そんな暗い毎日は約一年間続いた。
国王である私の父は私の事など気にも止めず、国の経済のために力を尽くしていた。
そんな中、引きこもり状態となっていた私の話し相手をしてくれたのは、私の教育係でもあったメイドの''アイリス''だった。
こうして徐々に回復していた最中、ふとしたことでアイリスに触れたとたん、私の中にアイリスの記憶の一部が流れ込んできた。それはアイリスだけでなく他のメイドや執事もだった。
そして私はこの力が怖くなり、人に触れることをやめた。
それから数ヶ月後、私は世界でも有名な学園へ入学させられることになり、そこで大富豪の娘の''イリア''と''マルティーヌ''(当然、私よりは下。)と仲良くなった。
だが、ある日。私は誤ってイリアに触れてしまった。幸いその時の感情を吸い込んだだけだったが、イリアは私とマルティーヌに強い憎しみと妬みを抱いていることを知る…。それから私はイリアからなるべく離れた。
そして、約10日後。事件が起きた。
その日はたまたま遅く登校し、その時には学園は大騒ぎになっていて、警察とともに現れたのは、イリアだった。イリアが私の前を通ったときに言った言葉…。それは今でも忘れない。
「あんたもマルティーヌと同じ目に遭わせてやる。」
そのときは、その言葉の意味もそのときの状況も理解できなかったが、あとから話を聞いて、私は固まってしまった。話によると、イリアはマルティーヌを屋上から突き落とした…と。
結果から私はこの力にある意味救われたことになるが、当然、そんなふうに思うことはできなく、また私は部屋にこもるようになった。人に会うことを避け、アイリスとしか話さなくなった私は、人を見極めることを失い、その人物を好きか嫌いかを判断するのが精一杯になってしまった。だが、今のところ好きと判断した人間はいない。
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- 2 : 2015/02/26(木) 00:07:17 :
- 〈コンコン〉
ノック音…。
私は何故、ノック音が今聞こえるのかと、少し考えた。
そして間も無く、理由がわかった。
今から約2時間前。私はあまりのつまらなさにメイド…アイリスに暇つぶしになるものを持ってくるように言っておいたのだ。
それから、2時間。今現在に至るのだがすっかり忘れていた。
人間の脳は2時間前の出来事さえも忘れてしまうのだろうか。それとも私の脳がいかれてるとでもいうのか?と、自問自答していると、アイリスが入ってきた。
「お嬢様‼︎お部屋にいらっしゃるのでしたらお返事ぐらいしてください‼︎」
「いいじゃないか。私は今人間の脳について自問自答していたんだ。
…ところで、暇つぶしになるようなものを持って来たのか?」
「はい、お嬢様。暇つぶしになるようなお嬢様にピッタリの''モノ''を連れて参りました。」
…ん?アイリスは今「連れて参りました。」と言った。
…まさか⁉︎
私は心の中で、どうか私の勘があたりませんように…。
だが、そんな願いは叶わなかった
「初めまして。セシルお嬢様。」
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- 3 : 2015/02/26(木) 07:31:50 :
- 期待です
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- 4 : 2015/02/26(木) 18:37:38 :
- そう、アイリスが連れてきたのは紛れもなく人間であった…。
私はものすごい速さで布団に潜り込み、アイリスに文句を言った。
「アイリス…何故、人間を連れてきた‼︎私が嫌いなのはわかっていただろう…。」
「…申し訳ありません。」
「もう、いい。それより、何故その者を連れてきたのか説明しろ」
「はい、お嬢様。
こちらの方は王国一の心理学者様でして、その心理学の力で様々な謎を解き明かすと国で有名なので、ミステリー好きなお嬢様にピッタリかと…。」
たしかに私はミステリー好きだ。だが、城の者意外の人間と会話など、恐ろしくてできる訳が無い。
私は布団にくるまったまま、その男を見た。
心理学者とは言い難い程若い。20歳前後だろうか。髪はブラウンで、服装はごく普通…。眼鏡をしていて、なんとも外見は真面目そうだが、中身はたぶんすっからかんだ。いや、そう見せかけているのだろうか…。
「そこの心理学者…その…若さ…で…王国一…なのか?」
私はまるで死にかけの老婆のような声を出してしまった…。まあ、人間が嫌いなのだ。仕方が無いだろう…。
「王国一かどうかはわかりませんが、歳はセシルお嬢様の方がお若いと思いますよ。」
そうだな。と、ぎこちなくつぶやき、私はその男からなるべく離れるようにしてベッドから降りた。
「ところでお前、名前はなん…。」
と、私が言いかけた時。
外から銃声が聞こえた…。
すぐに男が私を伏せさせてかばった。
その時、私は男に触れてしまった…
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- 5 : 2015/03/08(日) 01:34:52 :
- すぐに私はその男から離れた。
だが、触れたはずが、私の中に男の記憶や感情など、全く入ってこなかった。
どうしてか。
男はきょとん、とした顔で私を見つめていた…。
私は説明しろ、という視線をアイリスに送り、その視線に気づいたのか、説明しだした。
「お嬢様は人に触れるとその方の記憶や感情が入ってきてしまうのです。」
「ああ、神の力とやらですね。」
男は満足そうに微笑んだ。
気に食わない…。
神の力などとくだらない。
この力は神でもなんでもない。
化け物だ…。
「お嬢様、私は外を見てまいります。お嬢様は心理学者様とご一緒に裏口から出て、待機してください。」
そう言ってアイリスは部屋から出ていった。
裏口に続く廊下を歩いている途中、私は男に質問した。
「名前はなんというのだ。」
男は自慢気に答えた。
「グラディス・ラ・ファントスです。」
「そうか…。」
「はい、ところで…先ほどの銃声は?まるで日常茶飯事のようでしたけど…。」
「ただのいたずらだ。」
グラディスはそれ以上、話そうとはしなかった。
裏口を出て、隠し部屋に入った。
「こんなところに部屋があったのですね。」
「普段は使っていない。昔は…母といつも…ここで遊んだ。
その母はもう、いないがな。」
グラディスは、悲しい顔でゆっくりと話し出した。
「…私にも、母がいません。
と言っても、私が物心つく前に亡くなりましたが…。」
「…そうか。私は、父を恨んだ。まあ、今も恨んでいるが。
グラディス、お前の父はなにをしてる?」
「私と同じ、心理学者です。」
「そうか…。恨まなかったか?」
「はじめは恨みました。私のことなどお構いなしに仕事ばかりで…。
ですが、今はこうして私も心理学者として働いています。
人生とはわからないですね。」
「お前と私は、似ているな。
私はお前に触れても記憶を吸い込まなかった。それが原因なのかもしれない。」
「そうだったのですか。もしかしたら、そうかもしれないですね。」
しばらくの沈黙があった。
だが、少しして、馬の鳴き声がその沈黙を壊した。
「少し、見てきます。」
グラディスはそう言って部屋から出ると、少したってから誰かと会話している声がしたので、私も外へ出た。
「どうかしたのか?」
「お嬢様‼︎…すいません。仕事が入ってしまいまして…。」
「そう…か。…グラディス、私を…私をその仕事に連れて行ってもらえないだろうか?」
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- 6 : 2015/03/08(日) 19:13:10 :
- 期待
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- 7 : 2015/03/12(木) 17:03:14 :
- 「それは…それはいけませんっ‼︎町にはたくさんの人がいます。それに、殺人事件ですよ。いつ何が起こるか…。」
「グラディス…私はお前に助けられた。だから、もしこの不気味な力が役に立つのであれば、協力したい。それに、触れても問題ないらしい。お前と一緒にいれば何も怖くない気がする。」
グラディスは深く考えこんでいた。
「グラディスの足手まといになるのであればいい。」
「セシルお嬢様…お気持ちはとても嬉しいのですが、一つ約束してもらえなければ申し訳ないですがお許しすることはできません。」
「…その約束とは?」
「私から決して離れないこと…です。それでないと私が責任をとることは難しくなってしまいます。」
私は、真面目な顔つきで頷いた。
グラディスは軽く微笑み、私に手を差し出した。
私は目の前の大きな扉が開けたような気がした。
たとえその先にどんなことが待っていようと、私はそれを受け止めるつもりだった。
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- 8 : 2015/03/16(月) 20:38:07 :
- 頑張ってください。次の投稿待ってます
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- 9 : 2015/03/17(火) 18:46:02 :
- 【お知らせ】
神様のシンリガク、ももいろデュエットともに、皆様から、様々な応援のお言葉をいただき、誠に感謝しております。
ですが、私の一身上の都合により、しばらくおやすみさせていただくことになりました。
この度は本当に申し訳ありません。
たまに、更新させていただくことがあるかもしれませんが、そのときはよろしくお願いします。
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- 10 : 2015/03/25(水) 20:01:38 :
- 待ってます。
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- 11 : 2015/04/05(日) 00:35:52 :
- 「お嬢様、大丈夫ですか?」
馬車にしばらく乗らなかったせいか、ひどく酔う…。
グラディスの言葉に返すこともままならないまま、15分程馬車に揺られ続けた。
「お嬢様、着きましたよ。」
ゆっくりと馬車から降りるとそこは今までに見たことのない光景だった。
高い建物や、きらびやかなドレスを身にまとった踊り子達。町の中心にそびえ立つ大きなホテル。きっとこのホテルは私の城より大きい。
私はあまり目立たぬよう、グラディスにしがみつき、決して顔を見られないように歩いた。
「お嬢様、離れないように、と言いましたが、さすがにそれは大げさではないですか?」
「仕方ないだろう。顔を見られては寄ってくる人間もいる。それに町へ行ったことがお父様に知れたら、それこそ一番起きてはならない事態になる。」
「…なぜですか?」
「私のこの力は普通じゃないからだ。国王の娘がこんなだと世間に知られてはならないのだ。無論、私は町へ行こうとも思わなかったがな。」
「なるほど。
あっ!着きましたよ。」
グラディスが指差した建物は、さっき見た大きなホテルだった。
「この…ホテルに行くのか?」
「はい。と言っても、ここが殺人現場なのですが…。」
私は殺人現場と知っているにも関わらず、心の中ははしゃいでいた。
ホテル内に入ると、真っ正面に大きな階段があり、この建物の大きさを物語っていた。
建物内に気をとられていると、階段を誰かが降りる音がした。
「おおーグラディス!やっと来たかぁ!」
…この声とこのテンション。
まさか…⁉︎
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