この手で。
                  夏之 深棺

 プロローグ

 先程まで泣いていた彼はもう、動かなくなっていた。
彼女は、そんな彼の頬を両手で愛おしそうに包み込み、唇を重ねた。
それから、手を首から背中へ回し言った。

「ごめんね、ずっと愛してる。」

外はまだ暗く、二人だけの部屋で、彼女は彼から溢れるその雫を舐め、嬉しそうに微笑んだ。
自分が、泣いていることにやっと気付いたとき思った。

ああ、わたし、まだ泣けたんだ。
また、あなたのおかげだよ?
いつまでも、わたしの愛しい人。
これで、ずっとわたしのもの。
ずっと、、、。

これが、彼女の生きている最期だった。