このスレッドの編集には編集パスワードが必要です。 表示するレスにはチェックしを、表示しないレスはチェックを外してください。 全てのレスを表示する 全てのレスを非表示にする ▼一番下へ 1 : ちずち : 2015/02/10(火) 20:21:32 目の前に、血が舞った。 スローモーションみたいに、 時間がゆっくりになった。 だけれど、一瞬だった。 あいつは命を取り留めた。 でも、大切なものは消えてしまった。 帰ってきてよ…修哉。 2 : ちずち : 2015/02/10(火) 20:33:42 日曜日。今日は珍しく、全員揃って遊園地へ来た。「あ、あれ!あれ乗りましょうよご主人!!」「はぁぁぁぁ!?乗らねーよ!」「あれ…?何…?」「ジェットコースターですよ〜!ニセモノさんも乗ります?」エネが提案すると、セトとマリーがシンタローを連れてジェットコースターへ向かって行った。やだやだ叫ぶシンタローの声がうるさい。思わず笑ってしまう。「カノ達は何か乗っててくださいっす!終わったらここに集合っすよ!」そういって手を振るセトに、カノが返事をしながら手を振りかえした。 3 : ちずち : 2015/02/12(木) 19:26:34 「さてと」皆の姿が見えなくなると、カノはこちらを向いて微笑んだ。「どこに行きたい?」ニヤけた顔じゃない、素直な笑顔。欺いていないカノを見たのは久しぶりかもしれない。その不意打ちに、思わず心臓がはねた。「はは、キド赤くなったー、どうしたのー?」「な、なんでもないっ」「えぇ〜」慌てて、被っていたフードを深くする。こんな顔見られたくない。見せてたまるか。こいつになんか……。「もったいないよ」は?声に出てしまっていたらしい。カノは丁寧にもう一度言う。「だから、もったいないよ?」「はぁ…?何がだ?」カノは俺のフードに手をかける。何がしたいのかわからず、顔を見つめてしまう。「キド、可愛いのに」フードを脱がせられる。カノは面白そうに、クスッと笑った。「もったいないって、そのままのがいいよ」顔が熱くなるのがわかった。何か言い返そうと考えた言葉も、喉の奥に引っ込んでしぼんでいく。紅潮した顔を隠すことも忘れて、ただただカノの顔を見つめる。 4 : ちずち : 2015/02/12(木) 21:04:41 「フード被るの禁止ね」「…か…」「ん?」「バカノ……」怒鳴ろうとした台詞は小さな呟きに。もう嫌だ……「ねぇ、喉乾いたんだけど…飲み物買いに行かない?」俺のそんな気持ちを見越してか、カノはそう誘った。いつもの"仮面の笑顔"になっていた。こいつのこの笑い方は大嫌いだ。仮面を剥がせたらいいのに。本当の笑顔にさせてあげられたらいいのに。頷くと、二人で歩き出した。さっき通ったときに見かけたし、そう遠くないだろう。「やっぱりコーラはおいしいね〜」コーラを一気飲みしたカノはぷはーっといいながらコーラのパッケージを眺める。「シンタローみたいなことを言うんだな」「あはは、そうだね。でも、いつもはそんなこと思ってないよ」どういう意味だろう。無意識に首を傾げる。「今日だけかな…」 5 : ちずち : 2015/02/14(土) 18:21:08 「キド、なんかさ、ありがとね」「え…」なんだ、こいつ。今日はなんだかおかしい。「何かあったのか?」ふぅと息を吐いたカノの顔は、日のあたり具合だろうか、寂しそうに見えた。「んー…」でも、その口元は笑っていて。なんでお前は笑うんだ。悲しいんじゃないのか……。「何もないよ」「本当にか?」「え?あぁ…うん」なに?と笑うカノ。仮面の笑い顔。「単に言ってみたかっただけだよ?」不思議そうに顔を覗き込まれる。不思議なのはこっちだ。カノ、お前はなんでいつも笑うんだ?本当は、何か言いたいはずなのに、どうしていつも…自分の中の何かがぷつりと切れた。「カノ……」ん?と目を合わせたカノの頬を、思い切り叩いた。「痛っ!?キド、何す…」「お前はっ!」カノの声を遮って大声になる。反射的に手で抑えたらしい頬の手の隙間から、じんわり赤くなった皮膚が覗く。「なんで……言ってくれないんだ何も…何か話したいことはないのか…」呆然とした様子のカノ。「一人で抱え込むなよ…」俺たちは仲間。昔から兄弟みたいに支え合って生きて来た、家族じゃないか。悩んでいることも打ち明けられないような、そんな薄っぺらい関係なのか。そう思うと、悲しくて、悲しくて。「え、僕は何も悩んでなんか…」「笑うな!!」そう叫ぶと、カノはびくっとしてから黙り込んだ。しばしの沈黙。カノが口を開いた。「だってさ、話したら駄目だよ……誰かがまた傷つく。そんなのもう、嫌なんだよ…」なんだよそれ。俺の中でまた何かが弾ける。「だからお前が一人で抱え込むのか…?一人で悩んで一人で悩んで一人で解決出来るのか!?」「うん……頑張る…」また、笑った。カノの頬には涙が伝っていた。「頑張る…そう、そうか……」気がつけば自分の目にも、溢れそうなほど涙が溜まっている。「だったら、一人で頑張ってろ。ぐずぐず悩んで笑いたくもないのに笑って。心ない笑顔なんてみたくない。そんなお前嫌いだ」捨て台詞のようにまくし立てると、俺はその場から走り去った。 6 : 神威 : 2015/02/26(木) 13:41:34 期待! 7 : か : 2015/03/10(火) 16:49:13 期待 8 : ウラ表 : 2015/03/24(火) 16:55:01 期待するぞよ! 9 : ちずち : 2015/04/13(月) 15:21:50 >>6-8ありがとうございます! 10 : ちずち : 2015/04/13(月) 15:32:56 馬鹿、馬鹿。流れる涙をしきりに袖元で拭いながら、立ち止まることもせず、ただただ走る。込み合う遊園地の中、孤独に足を動かし続けていた。人々の視線から逃げながらあいつの笑顔から逃げながら「きゃあっ!?」いつのまにか、たどり着いていた出口のゲートを破るように駆け抜けると、受付の女性は唖然とし、そばにいた女性客が悲鳴を上げる。その声も、耳には聞こえていなかった。 11 : ちずち : 2015/04/13(月) 16:05:55 「はぁ…っはぁっ…!」足がまともに動かなくなってきて、ようやく止まった。体を折るようにして息を吸い込む。咳き込んで余計に苦しくなったりと、その後何分かはそうして呼吸を整えた。ピロリン、と軽快な音と共にポケットから振動が伝わった。「ん……? セト達からか」『さっきジェットコースター終わったんすけど、キド達どこにいるんすか?もうすぐ四時だし…帰ろうかってことになってるんすよ。』「……」メール画面を見て俯く。そうだ、カノを置いてきてしまった。何と言えばいいんだろう…。それにしても、あいつはどこへ行ったんだろう。自分と同じように何処かへ走り去ってしまったのだろうか。『遊園地の外だ。帰りに通る場所だからここで待っている』そう返した。カノは……時間が経って暗くなればいずれ帰ってくるだろう。あれは、俺達以外は誰も知らない。今日のところはひとまず普通の顔をして帰ってくる、そう思おう。冷静に考えれば、普段ならあり得ない行動だった。でも、この時はカノへの怒りで、そんなことは考えなかった。あいつに優しくしたくなかった。『了解っす!』道路脇にある電信柱に寄りかかったと同時に、着信音がむなしく響いた。 12 : ウノ : 2016/08/07(日) 22:39:05 めっちゃ面白い‼︎ 13 : 櫂邏 : 2018/03/29(木) 15:58:19 さすが!!! ▲一番上へ 編集パスワード スレッド投稿時に設定した編集パスワードを入力してください。
このスレッドの編集には編集パスワードが必要です。 表示するレスにはチェックしを、表示しないレスはチェックを外してください。 全てのレスを表示する 全てのレスを非表示にする ▼一番下へ 1 : ちずち : 2015/02/10(火) 20:21:32 目の前に、血が舞った。 スローモーションみたいに、 時間がゆっくりになった。 だけれど、一瞬だった。 あいつは命を取り留めた。 でも、大切なものは消えてしまった。 帰ってきてよ…修哉。 2 : ちずち : 2015/02/10(火) 20:33:42 日曜日。今日は珍しく、全員揃って遊園地へ来た。「あ、あれ!あれ乗りましょうよご主人!!」「はぁぁぁぁ!?乗らねーよ!」「あれ…?何…?」「ジェットコースターですよ〜!ニセモノさんも乗ります?」エネが提案すると、セトとマリーがシンタローを連れてジェットコースターへ向かって行った。やだやだ叫ぶシンタローの声がうるさい。思わず笑ってしまう。「カノ達は何か乗っててくださいっす!終わったらここに集合っすよ!」そういって手を振るセトに、カノが返事をしながら手を振りかえした。 3 : ちずち : 2015/02/12(木) 19:26:34 「さてと」皆の姿が見えなくなると、カノはこちらを向いて微笑んだ。「どこに行きたい?」ニヤけた顔じゃない、素直な笑顔。欺いていないカノを見たのは久しぶりかもしれない。その不意打ちに、思わず心臓がはねた。「はは、キド赤くなったー、どうしたのー?」「な、なんでもないっ」「えぇ〜」慌てて、被っていたフードを深くする。こんな顔見られたくない。見せてたまるか。こいつになんか……。「もったいないよ」は?声に出てしまっていたらしい。カノは丁寧にもう一度言う。「だから、もったいないよ?」「はぁ…?何がだ?」カノは俺のフードに手をかける。何がしたいのかわからず、顔を見つめてしまう。「キド、可愛いのに」フードを脱がせられる。カノは面白そうに、クスッと笑った。「もったいないって、そのままのがいいよ」顔が熱くなるのがわかった。何か言い返そうと考えた言葉も、喉の奥に引っ込んでしぼんでいく。紅潮した顔を隠すことも忘れて、ただただカノの顔を見つめる。 4 : ちずち : 2015/02/12(木) 21:04:41 「フード被るの禁止ね」「…か…」「ん?」「バカノ……」怒鳴ろうとした台詞は小さな呟きに。もう嫌だ……「ねぇ、喉乾いたんだけど…飲み物買いに行かない?」俺のそんな気持ちを見越してか、カノはそう誘った。いつもの"仮面の笑顔"になっていた。こいつのこの笑い方は大嫌いだ。仮面を剥がせたらいいのに。本当の笑顔にさせてあげられたらいいのに。頷くと、二人で歩き出した。さっき通ったときに見かけたし、そう遠くないだろう。「やっぱりコーラはおいしいね〜」コーラを一気飲みしたカノはぷはーっといいながらコーラのパッケージを眺める。「シンタローみたいなことを言うんだな」「あはは、そうだね。でも、いつもはそんなこと思ってないよ」どういう意味だろう。無意識に首を傾げる。「今日だけかな…」 5 : ちずち : 2015/02/14(土) 18:21:08 「キド、なんかさ、ありがとね」「え…」なんだ、こいつ。今日はなんだかおかしい。「何かあったのか?」ふぅと息を吐いたカノの顔は、日のあたり具合だろうか、寂しそうに見えた。「んー…」でも、その口元は笑っていて。なんでお前は笑うんだ。悲しいんじゃないのか……。「何もないよ」「本当にか?」「え?あぁ…うん」なに?と笑うカノ。仮面の笑い顔。「単に言ってみたかっただけだよ?」不思議そうに顔を覗き込まれる。不思議なのはこっちだ。カノ、お前はなんでいつも笑うんだ?本当は、何か言いたいはずなのに、どうしていつも…自分の中の何かがぷつりと切れた。「カノ……」ん?と目を合わせたカノの頬を、思い切り叩いた。「痛っ!?キド、何す…」「お前はっ!」カノの声を遮って大声になる。反射的に手で抑えたらしい頬の手の隙間から、じんわり赤くなった皮膚が覗く。「なんで……言ってくれないんだ何も…何か話したいことはないのか…」呆然とした様子のカノ。「一人で抱え込むなよ…」俺たちは仲間。昔から兄弟みたいに支え合って生きて来た、家族じゃないか。悩んでいることも打ち明けられないような、そんな薄っぺらい関係なのか。そう思うと、悲しくて、悲しくて。「え、僕は何も悩んでなんか…」「笑うな!!」そう叫ぶと、カノはびくっとしてから黙り込んだ。しばしの沈黙。カノが口を開いた。「だってさ、話したら駄目だよ……誰かがまた傷つく。そんなのもう、嫌なんだよ…」なんだよそれ。俺の中でまた何かが弾ける。「だからお前が一人で抱え込むのか…?一人で悩んで一人で悩んで一人で解決出来るのか!?」「うん……頑張る…」また、笑った。カノの頬には涙が伝っていた。「頑張る…そう、そうか……」気がつけば自分の目にも、溢れそうなほど涙が溜まっている。「だったら、一人で頑張ってろ。ぐずぐず悩んで笑いたくもないのに笑って。心ない笑顔なんてみたくない。そんなお前嫌いだ」捨て台詞のようにまくし立てると、俺はその場から走り去った。 6 : 神威 : 2015/02/26(木) 13:41:34 期待! 7 : か : 2015/03/10(火) 16:49:13 期待 8 : ウラ表 : 2015/03/24(火) 16:55:01 期待するぞよ! 9 : ちずち : 2015/04/13(月) 15:21:50 >>6-8ありがとうございます! 10 : ちずち : 2015/04/13(月) 15:32:56 馬鹿、馬鹿。流れる涙をしきりに袖元で拭いながら、立ち止まることもせず、ただただ走る。込み合う遊園地の中、孤独に足を動かし続けていた。人々の視線から逃げながらあいつの笑顔から逃げながら「きゃあっ!?」いつのまにか、たどり着いていた出口のゲートを破るように駆け抜けると、受付の女性は唖然とし、そばにいた女性客が悲鳴を上げる。その声も、耳には聞こえていなかった。 11 : ちずち : 2015/04/13(月) 16:05:55 「はぁ…っはぁっ…!」足がまともに動かなくなってきて、ようやく止まった。体を折るようにして息を吸い込む。咳き込んで余計に苦しくなったりと、その後何分かはそうして呼吸を整えた。ピロリン、と軽快な音と共にポケットから振動が伝わった。「ん……? セト達からか」『さっきジェットコースター終わったんすけど、キド達どこにいるんすか?もうすぐ四時だし…帰ろうかってことになってるんすよ。』「……」メール画面を見て俯く。そうだ、カノを置いてきてしまった。何と言えばいいんだろう…。それにしても、あいつはどこへ行ったんだろう。自分と同じように何処かへ走り去ってしまったのだろうか。『遊園地の外だ。帰りに通る場所だからここで待っている』そう返した。カノは……時間が経って暗くなればいずれ帰ってくるだろう。あれは、俺達以外は誰も知らない。今日のところはひとまず普通の顔をして帰ってくる、そう思おう。冷静に考えれば、普段ならあり得ない行動だった。でも、この時はカノへの怒りで、そんなことは考えなかった。あいつに優しくしたくなかった。『了解っす!』道路脇にある電信柱に寄りかかったと同時に、着信音がむなしく響いた。 12 : ウノ : 2016/08/07(日) 22:39:05 めっちゃ面白い‼︎ 13 : 櫂邏 : 2018/03/29(木) 15:58:19 さすが!!! ▲一番上へ 編集パスワード スレッド投稿時に設定した編集パスワードを入力してください。