このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。
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東京喰種《The New World》序章~新世界創造計画~
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- 1 : 2015/01/06(火) 14:20:47 :
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「ねぇ、楽」
幼い少女の、小さくか弱く脆くて華奢な手が、僕の手を握る。微かに震えるその手を、自分の手で優しく包み込み、穏やかな口調で尋ねる。
「どうしたの」
「………私たち喰種は、化け物なのかな。存在していてもいいのかな」
なおも震える手と声。
彼女は言う。存在してもいいのかと。
僕は考える。────人間とは何なのか。
言葉を話し、二足歩行をし、命を食べる。
他の命を犠牲にし、生きる。
ならば、喰種も人間と同じなのでは?
言葉を話し、二足歩行をし、命を食べる。
それがたまたま人間を喰らうだけで、やっていることは人間と何ら遜色ない。
そこで思う。なぜ人間の喰種の間には、一線引かれているのだろう。
答えは簡単。
喰う者と喰われる者が合間見えることはできない。共存することはできない。
人間側の頑なな拒絶。
一度作用したものは、二度と戻れない。
だが、僕は人間が正義で、喰種が悪と思わない。
人間が悪で、喰種が正義とも思わない。
「……存在して、いいよ。きっと僕は、君がいないと生存できない」
「………うん」
間違っているのは、この世界だ。
そして、それらを歪めているのはその世界にあるもの全てだ。
───新世界創造計画────
喰種のために。
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- 2 : 2015/01/06(火) 14:43:07 :
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「僕思うんだ。ロリコンって社会的に抹殺されるべきだよね」
とある日の昼頃、横浜市立第一高校の屋上で、少年───御神楽(みかみらく)は研ぎ澄まされた宝剣のような瞳を隣に座る少女に向ける。
「いや、だってさ、この前幼女相手にハァハァ言いながら喋りかけるおっさんがいたんだよ?もう見るに耐えなくてさ。蹴り飛ばしちゃったんだ────って聞いてるのかな未礼」
「………ん、何。まさかロリコン変態野郎の楽が同類のロリコンきもオヤジのことを罵ってたの?それは自分の存在を否定してってことだよわかんないの?まあ幼女と同居しているのに自分のことをロリコンだと認識していないロリコンの楽にそんなことを言ってもわからないでしょうけどね。というかあなた、本当に自分のことをロリコンと認識していないの?それてヤバイよ?ああそうか。四六時中幼女のことしか頭にない楽はそんなことを考えている暇なんてないか。何たってロリコン幼女マスターだもんね」
「…………うん。僕死ぬ」
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- 3 : 2015/01/06(火) 15:04:29 :
言われている僕以外が聞けば、気持ちいいほどの罵倒だが、実際言われてみると精神HPが99%カットされてしまう。
この毒舌少女───竜童未礼(りゅうどうみら)が、ゴミを見るような視線をこちらに向ける。
「あなた、男のクセにパンだけで足りるの?」
「ん?ああ。僕あまり食べないし」
そう言うと、最後の一口を放り込む。
「ご馳走様!うーん、ジャムがいい感じに甘酸っぱくて美味しかった」
合掌してから立ち上がり、未礼に背を向ける。
「じゃあ僕は先に降りてるから」
「うん。わかった」
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- 4 : 2015/01/06(火) 15:13:32 :
未礼と別れた楽は、トイレの中で。
「うッッ………おぇぇぇ…………ッッ」
盛大に吐いていた。
喰種の宿命。人間の肉とコーヒー以外は口にできない。
「はァ……はァ………でも、結構演技が上手くなったよね。上出来上出来」
自動販売機で缶コーヒーを買い、口の中を直す。
「………喰種、か」
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- 5 : 2015/01/06(火) 22:00:06 :
─────その夜、僕は薄暗い路地裏にいた。
「おいおいガキ、ここは俺の喰場だぞ?そこにある肉は俺が殺したんだ。邪魔しないでもらえるか?」
「あいにく、同居人が腹空かしててね。食べ物を持って来いって言ってうるさいんだ」
「知ったこっちゃねえ。お前、俺が誰だか知らねえな?」
────来る。
優れた聴覚によって耳の中に入り込んでくるRc細胞の流れ。男の眼が紅く染まり、喰種の特徴とも言える赫眼がこちらを睨む。
そして、皮膚を突き破り、肩甲骨辺りから赫子が飛び出す。形状からして甲赫。
まるでダンゴムシのように身体を覆っている。
「……最悪。甲赫とか、相性最悪」
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- 6 : 2015/01/06(火) 22:11:28 :
「しかも、Aランク、《チャリオット》」
「ほう、わかってるんじゃねーか。悪いことは言わねえ。帰りな」
「……だから」
背中に羽が生えるイメージが脳内に浮かび、徐々に肩に熱が帯びていくのがわかる。
そして赫眼。視界が先ほどよりもクリアになる。はっきりと映るチャリオット。
「帰らないって」
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- 7 : 2015/01/06(火) 22:22:45 :
肩周りから二方向に放出されるRc細胞。
鮮血を思わせる深紅の羽は、ゆっくりと姿を変え、鎌のような形状に変化する。
まるで敵を威嚇するカマキリのような羽赫。
「相手が悪かったなガキ」
「本当だよまったく」
言い終わると同時に地面を蹴ってチャリオットの正面に躍り出る。羽赫の最大のポテンシャル、スピードを生かした高速接近。
突進の勢いを殺さず空中で旋回。鎌が牙を立てて敵の赫子を穿つ。二回転、三回転、四回転したところで飛び退き、距離を取る。
「いい動きだが、貫通はしなかったな」
赫子が再構成され、元の姿に戻る。
「硬いな………。本当、だから甲赫は大嫌いなんだ」
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- 8 : 2015/01/06(火) 22:42:36 :
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「羽赫は長期戦に弱い、だったか?はやくしねえとガス欠するぞ」
「いや、次で決着を着ける」
体内のRc細胞の流れが活発になる。感情の高ぶりか。それともはやく終わらせたいという気持ちからか。どっちでもいいが、とりあえず力が身体の奥から漲り、赫子へと伝わる。
「ウソ、だろ………その赫子、まさかお前ッッ!!」
二方向に放出された羽赫の下部から、さらに二方向、合計四方向に羽赫が放出される。
四本の鎌。まるで死神を連想させるその姿、いや。実際見たことは無いが、噂に聞いたことはある。
「《デスサイズ・マンティス》。Sレイド喰種ッッ!!?」
「その呼び方やめてよ。中二病っぽいって喰種の中で噂になってるんだから」
心底嫌そうな顔をする楽は、先ほどとは一変し、笑顔で問いかけた。
「食べ物を渡して立ち去るか、僕と戦うか、どっちがいい?」
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- 14 : 2015/01/07(水) 07:03:10 :
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チャリオットとの戦闘後、死体を水で洗い、カバンに詰め込む。居住しているアパートからそう遠くなかったので、気づいたらもうアパートが見えていた。
「はァ、チャリオット思いの外弱かったな。赫子出しただけで逃げちゃってさ」
あの後のチャリオットは恥ずかしいったらそりゃあもう。悲鳴を上げて逃げていくんだもの。本当にAランクなのかと疑ってしまう。
「何にせよ、これから一カ月は飢えずにすむかな」
何て思ってると、アパートの二階の窓が勢いよく開かれる。もくもくと湯気が上がる。
「おかえりなさい楽!私にする?私にする?そーれーとーも、私にする?」
「お前一択じゃねーか!!」
笑顔で出迎えてくれるのは嬉しいが、どう見ても入浴中、しかも全裸なのはいただけない。
「それよりも、はやく窓閉めて!お前のせいで僕はぁぁぁ」
───そう。この幼女こそ、僕がロリコン幼女マスターと呼ばれるようになった原因である。
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- 15 : 2015/01/07(水) 18:16:27 :
誰かに見られてはいないか周囲を確認、異常なし。赫子が出ている時に劣らない高速ダッシュで二階に駆け上がり、鍵穴に鍵を差し込み、折れるような勢いで捻る。
転がるようにして玄関に入り、即座に浴室に向かう。
「覗き?」
「違うッッ!」
ピシャリと窓を閉め、極力身体を見ないようにして退出する。
「わー、楽が欲情したー」
「このマセガキ………」
椿心珠(つばきしんじゅ)。12歳の喰種。
白銀を溶かしたかのような銀髪をツインテールに結ぶ──今は入浴中で髪を下ろしている──。一糸纏わぬ姿で僕の腰に手を回してくる心珠に、一瞬ドキリとした、とは死んでも言えない。
「楽お腹すいたー」
「玄関に置いてある」
「わーい」
「ちょっと待て」
駆け出そうとした心珠の髪を掴む。
「どうしたの楽。欲情した?」
「服を着ろッッ」
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- 16 : 2015/01/07(水) 19:41:14 :
喰種の女性は肉を喰べるところを見られたくないという概念が存在しているらしいが、心珠はそんなことお構いなしだ。
「実に二週間ぶりの肉だね楽」
「そうだね」
お互い赫眼になりながら肉を漁る。
匂いが気になるだろうけど、僕の知り合いが作った消臭剤で無臭。だから安心して。
「あ、そうだ。心珠、最近捜査官が喰種を狩って回ってるらしいから、僕と一緒にいるとき以外は外出は控えて」
「ま、まさか束縛ッ?」
そんなつもりで言ったワケじゃないんだが、顔を真っ赤にしてくねくねしている心珠を見ると、ツッこむ気力を削がれる。
「………」
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- 17 : 2015/01/07(水) 20:23:18 :
パァァァン、と、銃声が響く。
銃弾は喰種の足を捉え、行動を不能にする。
────Qバレット。
「さて、弦儀君。トドメは任せたわよ」
「了解ですッッ!」
真っ白の服を着た二人の捜査官の片翼、少年がアタッシュケースのスイッチをおすと、クインケが起動される。
喰種の赫子で形成された対喰種用の武器。
弦儀(つるぎ)と呼ばれた少年の手には、フォトンブレードのようなクインケが握られていた。
────羽赫:カゲミツ1/2
Sレイド喰種の羽赫を材料として造られたクインケ。弦儀持ち前のスピード、さらに羽赫ながら高火力、かなりの持久力を併せ持つ。
「───ッシッッ!」
トリガーを引いてRc細胞を放出。
さらに身体に捻りを加えてからの───会心の一撃が、標的の喰種の心臓を貫く。
「ァがッッ」
肉を抉る感触。何度やっても慣れるものではないが。
力尽きた喰種は、二度と動かなかった。
「さすがだよ弦儀君。私の部下にしておくのは勿体ないわ」
「そ、そんなことないですよ桐江さん!」
弦儀真太郎(つるぎしんたろう)二等捜査官と、桐江桜花(きりえおうか)上等捜査官。
最近徐々に実力を伸ばし、喰種の中でも警戒されているペアの一つだ。
「謙遜しないでいいよ。それより、今回の敵は強い。私たちで勝てるかどうか」
「……デスサイズ・マンティス。Sレイドの《シニガミ》ですか」
果たしてそれは偶然か。それとも必然か。
喰種の少女を守りたい者と、人間の平和を守りたい者。行く道違えど、時折交差し、ぶつかり合う。
二人の少年の間に、奇妙な何かが繋がれる。
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- 18 : 2015/01/07(水) 20:37:25 :
「あれ、楽。今日はどこにいくの?マスクも持って」
パーカーの上から羽織ったレザージャケット。
真っ黒なダークパンツといった、見るからに怪しい格好をしている。
「最近墓参りに行ってなかったしね。もう日が暮れてるけど」
「そっか。気をつけてね」
「うん」
───墓参り。
楽の命の恩人の墓。
彼は人間で、捜査官でありながら、命を救ってくれた。
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- 19 : 2015/01/07(水) 20:39:41 :
夜風が頬に当たり、優しく肌を撫でる。
心地がよくて、つい眼を瞑る。
「……新城さん」
恩人の名前が虚空に消えていく。
感極まったのか、少し眼が潤んできた。
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- 20 : 2015/01/07(水) 20:45:56 :
「………」
果たしてそれは、喰種の第六感なのだろうか。
背後からの気配を感じ、咄嗟にマスクを被る。
「やっぱり気づいたわね。デスサイズ・マンティス」
「……………」
捜査官。どうやら自分は付けられていたようだ。
「桐江さん、やりましょう!」
男の方がケースに手を掛ける。
どうやら僕は本当に駆逐対象らしい。
「そうね。先手必勝よ弦儀君」
そう言い放った瞬間、クインケが起動。
それと同時に、赫子を放出。Rc細胞が身体中を刺激する。
「いくぞ、シニガミッ!」
僕の名前はいったいいくつあるのだろうかと考えながらその迫り来る二つのクインケを見切った。
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- 21 : 2015/01/08(木) 19:47:42 :
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身体を翻しての回避。身体が宙に舞い上がるそこに、狙い澄ましていたかのようなタイミングで桐江が二本の刀、クインケ───甲赫:ゴウセツ改で斬撃を刻む。
「───ハズしたッ」
否、直撃の瞬間、楽がRc細胞を超噴射。その勢いでクインケの攻撃をずらしたのだ。
そのまま右手を軸に曲芸のような一回転。
二人から距離を取る。
「さすがはSレイド。そこらの喰種とはワケが違うってことね」
「関心してる場合じゃないですよ桐江さん」
決定的チャンスを逃してもまだ余裕の表情を見せる。きっと実践慣れした精鋭なのだろうと納得する。
「相手は羽赫よ。じっくり、慌てずにいくわよ」
「了解です」
ジリジリと距離を詰めてくる。やはり羽赫だからか。
(なら────)
再び赫子を放出。Rc細胞が流動し、身体が軽くなる。
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- 22 : 2015/01/08(木) 19:56:29 :
四方向への赫子の放出。これは楽の戦闘体制。
この二人は危険だ。喰種の本能が警鐘を鳴らしている。
「きますッ!桐江さんッッ」
地面が抉れる程の踏み切り。
前に立っていた弦儀の懐に潜り込む。
咄嗟に反応できたのか、クインケを水平に繰り出す。
しかしその刹那、眼を開けていられないほどの風圧残し、楽の姿が消えた。
「弦儀君ッッ、上よッッ!!」
「────ッッ!?」
人間は上下の動きに弱い。それが楽の超スピードと合わさり、一瞬で姿が消えたように見えただろう。
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- 23 : 2015/01/08(木) 20:03:44 :
(そのクインケ、ぶっ壊すッッ)
羽赫が鋭く曲線を描きながらしなり、弦儀のクインケを叩き割る───そう脳裏に映ったが、その思考は一瞬でゴミ箱に捨てた。
弦儀はクインケを握る力を弱め、シャドーで振り抜いた。そうなれば、クインケを叩き割るのが目的だった楽の体制は大きくつんのめる。
そこで後ろに立っていた桐江が身体を大きく捻り、二本の刀を振りかざしていた。
(これが狙いかッッ)
弦儀は誘導。本命は桐江の攻撃ッ。
考えるよりも赫子が動いた。
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- 24 : 2015/01/08(木) 20:10:50 :
一本、鎌を地面に突き刺し、桐江の斬撃を防ぐ。女の体から放たれる一撃とは思えないほどの力で押されるが、赫子が地面に深く突き刺さりブレーキになっているため、なんとか耐える。
「このッ─────!」
弾かれた刀を引き戻し、再び攻撃体制に入るが、楽がRc細胞を噴射。突き刺さった赫子が膨張し、その勢いを利用して空中で一回転。空振りした桐江の後頭部に、とん、と足を乗せ、跳躍。その際、弦儀の追撃を防ぐために羽赫から細かい羽根を飛ばし牽制。
(危なかった。この人たち、強い)
作戦会議なんてしていなかったであろう。
それなのにまるで打ち合わせていたかのような絶妙なタイミングでの攻撃。
やはり要注意ペアだ。
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- 25 : 2015/01/09(金) 18:23:55 :
「まさか、ここまで攻撃が掠りもしないなんて」
赫子の使い方、身のこなし。どれを取ってもこのあたりでトップクラスの喰種だろう。
まだ若く、伸びしろがおおいにあるため、これからレイドも上昇すると思われる。
しかしこのシニガミは、3年前の出来事から誰一人として殺してはいない。
3年前、新城特等を殺してから─────。
「まだまだ、これからが勝負よ。当然、動けるわよね弦儀君」
「はいッッ」
「いや、もう終わりだ」
突如上空から降りかかる声に、一同は同時に空を見上げる。
そこで気づく。声よりも先に降ってきていたものがあった。まるで触手のような───赫子。
鱗赫だ。
(まずいッッ!)
楽が赫子を超噴射。四本の鎌、羽赫が円運動を描きながら鱗赫と衝突。直撃は避けるものの、赫子が崩壊し、Rc細胞が雨のように散る。
「シニガミが私たちを守った……?」
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- 26 : 2015/01/09(金) 20:11:27 :
「デスサイズ・マンティス。お前がそうだな」
楽と捜査官二人の間に割って入ってきた一人の喰種が、足音軽く着地する。
捜査官の前で喋るのは控えたいが、なぜだろう。この喰種はヤバい。直感がそう告げている。
「……そうだけど」
「先ほどの戦い、見ていたぞ。もっと本気を出せば、この程度の捜査官は軽く殺せただろうに」
「シニガミッ、手加減していたのかッッ?」
弦儀が叫ぶが、今はこいつがなんなのかを判別しなくてはならない。
対峙する八つの瞳。沈黙が流れる。
しかしそれを破ったのは、鱗赫の喰種だった。
「……俺たちと共にこい。Sレイドのシニガミ。デスサイズ・マンティス」
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- 27 : 2015/01/09(金) 20:20:24 :
舞踏会用のマスク──ニタリと細く冷たく微笑んでいるような仮面。その隙間から覗く赫眼が、ジッと楽を見据える。
「共にこい……だって?なんのために」
「喰種のために」
「どういうことだ」
「言葉をそのまま受け止めてくれればいい。喰種のためだ」
喰種のために、いったい何をしようとしているのだろうか。
「喰種のため、なんて聞いたら黙ってられないわ」
話に割り込んでくる桐江。しかし鱗赫の喰種は気にする素振りを見せず、ただ楽を見据えながら続ける。
「我らの目的は、喰種のための世界を造ることだ」
「……喰種の、ため?」
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- 28 : 2015/01/09(金) 20:37:35 :
「そうだ。お前も目の当たりにしたことがあるんじゃないのか。罪の無い喰種が、無惨に殺されていく姿を」
「ッッ」
「横浜のスラム街にいる、幼い喰種たちの姿を見たことがあるだろう」
「我々はッッ、全ての喰種を救うために、人間を服従させる。《新世界創造計画》によって!!!」
言い放った。それは、CCGに対しての宣戦布告と言ってもいいだろう。今この瞬間、彼は、いや。彼ら《新世界創造計画》に携わる喰種は、全人類を敵に回したのだ。
「デスサイズ・マンティス。いや、『ミカグラ』、俺たちと共にこい」
「………ミカグラ?」
弦儀が首を傾げる。
それを見て、背筋に冷や汗が流れる。
ミカグラとは、御神楽(みかみらく)を単語で読んだ時の言葉。あえて本名は出さなかったのだ。
「………お前は、誰だ」
「……コードネーム《キュウビ》」
「僕のことをどこまで知っている」
「………返答は、後日聞こう。今日は邪魔者もいるしな」
ここでやっと《キュウビ》は、捜査官の方に眼を向ける。
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- 29 : 2015/01/09(金) 20:49:50 :
「喰種を前に、それにこんな話をされた後に逃がすわけにはいかないッッ」
再びクインケを構える二人。敵意むき出しの瞳を向けるが、それを流し、凄まじい跳躍でその場から離脱した。
(僕も逃げなきゃ)
赫子を放出。屋根に登り、飛び移る。
諦めたのか、捜査官は追って来なかった。
「……弦儀君、今すぐ本部に連絡して。《新世界創造計画》のことを」
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- 32 : 2015/01/10(土) 08:05:10 :
「ただいまー」
アパートはすでに暗く、灯りがついていない。
心珠はもう眠ってしまったのだろうか。
棚からインスタントコーヒーを取り出し、コップにお湯と一緒に注ぐ。ほろ苦い香りが鼻孔をくすぐる。
「……新世界創造計画。喰種のために」
キュウビと名乗る喰種が言っていたことを思い出す。罪の喰種が無惨に殺されていく。スラム街の喰種。
「…………」
喰種を救うために、人間を服従させる。
どうだろう。個人的には、間違っていると思う。世界のバランスは、喰種が人を喰い、捜査官が喰種を殺すことで保たれていると思う。
喰種が上になれば、きっと歯止めが効かなくなり、一方的に人間を喰う。
そうなれば、今のCCGと同じだ。罪のない人間を多く殺すことになる。
「……まあ実際、喰種が罪のない人を喰ってるんだけど」
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- 33 : 2015/01/10(土) 10:38:27 :
####
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- 34 : 2015/01/10(土) 11:18:50 :
「新世界創造計画ねぇ」
CCG横浜本部。会議室で榊原蓮太郎(さかきばられんたろう)二等捜査官が頬杖をつきながら呟いた。
「あのなぁ蓮太郎、会議中くらいまともに話を聞けよ」
弦儀が肘で蓮太郎を突っつく。
しかし大きく欠伸をし、一向に態度を改めない。
(実力はあるんだが………)
「弦儀君、榊原君、話聞いてるの?」
すかさず桐江の声が飛ぶ。
この会議は、3ペア合計六人で構成される少数精鋭アジュバントが集まり、今後の対策を錬る。
班長は特等、鳴神椋露(なるかみむくろ)。
28歳、わずか十年で特等に登りつめたCCG最強の男。
「鳴神特等、今後の方針はどうしましょう」
彼の部下、木更津楓(きさらづかえで)二等捜査官が腕を組んで座る鳴神を見る。
「…………新世界創造計画がどれほどの規模なのかを捜査しろ」
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- 35 : 2015/01/10(土) 12:02:00 :
「規模ですか。おそらく、神奈川のCCG全てを敵に回せるほどの規模があると考えた方がいいですね」
蓮太郎の上司、波芝梓(なみしばあずさ)一等捜査官が口を開く。
ちなみに、桐江上等捜査官とは犬猿の仲らしい。
「……桐江、お前が遭遇したキュウビはどうだった?」
「多分、Sレイドのデスサイズ・マンティス以上の実力があると思います」
「鱗赫……か。まあいい。お前ら、今日から本格的に始動するわけだが、敵はかつてないほど強大だ。喰種の好き勝手にさせてはいけない」
「全身全霊渾身全力を持って捜査を行え。他の班に遅れをとるなよ」
鳴神が言い終えると、五つの声が重なった。
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- 36 : 2015/01/10(土) 16:24:33 :
夢の中にいた。
景色は、紅蓮に染まった街道。夕日を背に、一人の男性から真っ赤な血がサラサラと流れる。まるで、赤い流星だな、と思った。
────新城、さん。
彼が立っていて奥の方は見えなかったけど、新城さんが地に付して、逆光であったが、赫眼を凝らして先を見据える。
そこには、笑った仮面がいた。
僕を嘲笑うかのようで、激しい怒りが身体の奥底から沸き上がってきたのを覚えている。
しかし、新城さんが言った。
────怒りに任せて力を使うな。君たち喰種は、人間にはない視点で世界を見ることができる。
身体が震えた。恐怖や寒気ではない。正確には、魂が震えた。彼の言葉に。
彼は、人間と喰種が共存できると信じて疑わなかった。
再び正面を見るが、そこに仮面はいなかった。
感極まって涙が出そうになったが、多くの足音が聞こえ、その感情を打ち消す。
もう、新城さんは動かなかった。
もう二度と─────────。
──────朝だ。
頬を伝う熱い涙。
人間と喰種。決してまみえることのできない二つの種族。
しかし彼は、共存できると信じた。
彼の意志を引き継ぐことはできない。そんな力は僕にはないから。
ならば見届けよう。力あるものが、この世界にある概念を吹き飛ばし、人間と喰種の間にあるわだかまりをなくすその時を。
寿命が足りないかもしれないけど。
「………無理だって、心の底では思っているのに諦めきれない」
いつの間にか布団に潜り込んできた心珠の頭を優しく撫で、コーヒーを淹れるためにキッチンに向かう。
────守ろう。心珠だけは。
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- 37 : 2015/01/10(土) 22:14:35 :
「おはよー楽。コーヒーは?」
銀糸のような長い髪が、寝ぐせのせいでぴょこんと跳ねている。
「今出来上がったところだよッと」
お湯を注ぎ、一定量まで達する。
ほろ苦い香りが部屋に充満し、穏やかな朝の空気が流れ込む。
「熱いからな」
「大丈夫だよ」
ズズズ、とスゴい勢いでコーヒーを飲む心珠。
5秒ほどで飲み干すと、満面の笑みを浮かべる。
「楽のつくるコーヒーはインスタントでも美味しいね。それだけ愛情がこもってるっていうことだねッ」
「うっせ。12歳のガキが愛を語るな。まだはやい」
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- 38 : 2015/01/10(土) 22:22:03 :
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(さて、どうしたものか)
楽は今も悩んでいた。新世界創造計画のことを心珠に話すかどうか。
まだ12歳の彼女がこんな大きな話を受け止めることができるのだろうか。
(うーん、どうしよう)
思考を凝らしていると、玄関のインターフォンが間抜けな音を立てて鳴り響く。
「誰だよ。いま朝の八時だぞ」
ガチャ、と玄関の扉を開けた瞬間、息が詰まりそうになった。
「喰種捜査官です。ただいま聞き込みをしていまして」
彼らは、桐江桜花と弦儀真太郎だった。
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- 39 : 2015/01/11(日) 08:27:24 :
「あ、えっと、その。喰種の捜査中ですか」
楽の問いに弦儀が答える。
「はい。デスサイズ・マンティスの目撃情報、そして新たなSレイド、《キュウビ》に関してなんですが」
キュウビという名前に、ぴくりと反応する。
新世界創造計画。CCGはすでに捜査に乗り出しているのだ。それなら当然、勧誘を受けた楽も捜査対象なのだろう。
「いつ頃現れたんですか?」
横目で心珠を見ると、怯えた表情はしてなく、ジッとこちらを見ている。
「昨日です」
「あー、すいません。昨日は外出していなくて」
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- 40 : 2015/01/11(日) 09:02:36 :
「そ、そうなの!楽と私は昨日の夜、それはもうラブラブで─────」
「心珠、頼むから誤解を招くような発言はやめて」
「ははは、仲が良いんですね」
微笑ましく思ったのか、弦儀がにこやかに微笑む。
「あの、すいません。力になれなくて」
「いえいえ。こちらこそ朝早くにすいませんでした」
そう言うと、アパートの階段を下り、先に下にいた桐江と共に隣の家に向かった。
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- 41 : 2015/01/11(日) 09:04:48 :
「………黒ね」
「先ほどの少年ですか。確かに背丈はシニガミと同じ位でしたが」
「声もよ。私が聞いたのと同じ」
彼がシニガミだと疑わない桐江。
「……なら、あの同居人の幼女も喰種ね」
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- 42 : 2015/01/11(日) 15:22:31 :
「…………はぁぁぁぁぁ~~」
捜査官が出ていった後、盛大にため息を吐いた。もしかしたら、声でバレているかもしれない。
「何度見ても捜査官はこわいね。クインケなんてもう」
「楽~、お願いだからクインケになって私を襲ってこないでよ?」
「え、縁起でもないこと言わないのッ。まったく。笑えない冗談はやめてほしいんだけど」
いや、マジで。クインケになるとか、表現が恐ろしい。
「………まあとにかく、気をつけるに越したことはないな」
息を大きく吐き出し、心珠のほうを向く。
「………心珠」
「なに?楽」
楽の真剣な眼差しで射抜かれ、続く言葉を飲み込んだ心珠。
少し間を開けて、楽は新世界創造計画について語った。
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- 43 : 2015/01/11(日) 16:04:40 :
「そんなことが………」
驚愕の表情を見せる心珠。まあ、当然だ。
こんな幼い少女には大きすぎる話だろう。
「………新世界創造計画。多分、神奈川県全域を支配できる位の規模はあると思う。CCGに喧嘩売ったくらいだしね」
「私は反対。だって楽が言ってたもん。バランスが大事だって」
心珠は素直に楽を信じて疑わない。
本当にいい子だな、とつくづく思う。
だからこそ、守ってあげたい。
「多分、CCGはこのことを公にはできない。パニックになるかもしれないし。僕はちょっと先生の所に行ってくるよ。消臭剤もそろそろ切れそうだし」
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- 44 : 2015/01/11(日) 16:16:37 :
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人通りの少ない路地を駆け抜け、横浜大学付属医学院の敷地内、地下駐車場の奥の扉を開ける。
眩しい光が顔に照りつけ、目を細める。
地面に散らかっている書類に足を滑らせそうになるが、ディスクの角を持ってなんとか踏ん張る。
「………先生、いい加減整理整頓というものを覚えたらどう?」
楽の声に反応し、プリントの山がもぞもぞと動く。
「ぷはぁぁぁぁぁ。あー、プリントの山に押しつぶされて窒息死って、ヤバいほどダサいよねーってミカグラ君じゃん。おひさ☆」
「……もう僕はつっこまないよ」
「なに?ミカグラ 君」
ミガクラを強調している。きっとつっこんでほしいんだ。だが、ここはグッと我慢する。
彼女にペースを持っていかれたらお終いだ。
「……はぁ、奏先生、今日は話があって来たんです」
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- 45 : 2015/01/11(日) 16:28:15 :
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「当ててあげようか?新世界創造計画という喰種が人間の上に立って人間を支配するって話でしょ☆」
奏林檎(かなでりんご)。彼女は喰種でありながら大学院の講師をしている。20代前後の容姿だが、本人が言うには「ご想像におまかせおまかせ☆」らしい。やたらハイテンションで生徒からバカにされることも多々あり。
「あたり。すごいね先生」
「そんなことを言いに来たんじゃないんでしょ?本題を話してね☆」
「その、勧誘されたんだ。新世界創造計画に」
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- 46 : 2015/01/11(日) 16:52:07 :
「……へぇ」
珍しく興味深々な奏。
「それで、どうするのさ」
「……僕は、喰種と人間はバランスが大事だと思うんです。新世界創造計画は、バランスを崩しかねない。けど、あの人の理想に近づける気がするんだ」
「元CCG最強の男、新城九重(あらしろここのえ)だね☆」
「だから僕は───────」
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- 47 : 2015/01/11(日) 16:58:55 :
薄暗い地下駐車場から出ると、奏の部屋とはまた違った眩しさが注ぐ。
今は、なんとなくアパートに帰る気がしなかった。
別に目的があるわけじゃないが、横浜の中心部から外れたスラム街へと遥々足を運んだ。
スラム街は崩れた瓦礫が積み重なり、今にも崩れ落ちそうだった。
時折こちらを覗く紅い瞳は、まだ感情をコントロールできず、赫眼を隠せない幼い喰種だろう。
「………あれから3年、か」
3年前、横浜で起こった人間と喰種の激しい対立。互いに決着が着かなかったが、双方び大きな被害をもたらした。
その傷跡がこのスラム街。横浜の中心部から離れたらこの有り様だ。政府もそこまで気が回らないのだろう。
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- 48 : 2015/01/11(日) 17:05:51 :
そのため、居場所を失った喰種の住処となっており、CCGに見つからないよう、息を潜めて暮らしている。らしい。
行くあてもなくふらふらと歩いていると、綺麗に並べられたら机。そこに座る幼い少年少女。
ボロボロの黒板の前に立っている老人。
青空教室というやつか。
「………みんな、喰種なんだよな」
しばらく見つめていると、こちらの視線に気づいたのか、老人が小走りして寄ってくる。
「なにか用かね、若き喰種よ」
「あ、いえ。その………。なんで僕が喰種ってわかったんですか?」
「臭いでわかるんだよ。どうやら私は鼻が利くようでね」
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- 49 : 2015/01/11(日) 17:13:52 :
「……何をやっているんですか」
「見ての通りだよ。彼らに勉強を教えてるんだ。赫眼の制御もね。将来、彼らが普通の人間と同じように生きられるようにとね。まあ、無理だとわかってても、彼らに生きる希望を持たせてやりたくて」
────同じだ。僕と。
喰種と人間。無理だとわかっていても、前へ進もうとする。
思わず感極まって涙が出そうになる。
「………僕と、同じです。僕は一緒に彼らと同じ位の喰種と暮らしてるんですけど、ちょっと感情が高ぶると赫眼だとバレちゃって。学校にも通わせることができないんです」
「ふむ、君の年でそんなことを考えれる人間がいるのだね。強い。芯がある」
「あはは、どうも」
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- 50 : 2015/01/11(日) 17:20:01 :
すると老人はこちらをマジマジと見てくる。
そしてポン、と肩を叩くと、曖昧な記憶が確かな認識に変わった、そんな顔をした。
「君、どこかで見たことがあると思ったら、奏君の教え子か。なるほど。デスサイズ・マンティス」
「そうですけど、なぜ奏さんを知って───」
楽の言葉を遮るようにして、机に座っていた幼い喰種たちが駆け寄ってきた。
「すっげー、Sレイドのちゅーに喰種だ!」
「ちゅーにびょうロリコン喰種!カッコイいぃぃぃ………」
「安心安全ちゅーに喰種!」
「ははは、やはり人気ですな。Sレイドの優しい喰種は。見てください。こんな嬉しそうな彼らは初めてです」
「バカにされてる気がする」
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- 51 : 2015/01/11(日) 18:35:57 :
「……奏君はね、たまにこういう所に学用品を無償で提供してくれるんだよ。その時知り合ってね」
「ああ………」
奏の意外な一面を知り、ハイテンションで掴みにくい喰種だが、優しいところもあるんだな、と。
「ねーねーちゅーに喰種さん」
「僕は御神楽。楽って呼んで。それに中二病でもないしロリコンでもない!まったく、誰がこんな幼い子供に……」
「えっとね、奏が教えてくれたの」
薄々気づいていたが、やはりあいつか。
「子供に変なこと吹き込むなよ………」
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- 52 : 2015/01/11(日) 18:59:36 :
「こらこら、バカにするのは止めなさい」
「……わかってて見守ってましたね。はぁ」
「ははは、すいませんな。私は柴崎と言います」
そう言って柴崎は手を差し出してきた。
その手を握り返すと、なぜだろう。優しく包み込まれているように思える。
似ているのだ。新城さんに。
「僕は御神楽です。その、柴崎さん。お願いがあるんですけど……」
「なにかな」
「さっき話した同居人を、一緒に指導してくれませんか?」
少し考える素振りをする柴崎。
「いいでしょう。しかし条件があります。週に一回ほどでいいので、御神君、ここの教師をやってくれないか?」
「も、もちろんです!」
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- 53 : 2015/01/11(日) 19:10:54 :
「はい皆さん、来週から新しい友達がくるので、仲良くしてあげてきださいね」
幼い喰種たちの返事を背中で聞き、楽は何かに導かれるように河川敷へと向かっていた。
「来ると思っていたよ。ミカグラ」
そこには、舞踏会用のマスクを被った《キュウビ》がいた。
「それで、答えは出たか?」
楽は大きく息を吸い、吐いた。
「僕は新世界創造計画に─────加入する」
NEXT TO Ⅱ
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- 54 : 2015/01/11(日) 19:16:51 :
初めて喰種の作品を書き終えて思ったことは、赫子での戦闘描写が難しすぎることです。
漫画やアニメのようにダイナミックに書くことはできませんでしたが、ある程度わかってもらえれば。
そしてこの作品は、東京喰種を知っているのが前提で書いてしまったので、わからない人がいたらすいません。説明不足でした。
とりあえず序章なので、短めに。
次回からは新世界創造計画についてもっと深く触れていきたいなと。主人公の崩壊も書いてみたい……。
この作品を読んでみて、素直な感想がほしいです。面白くなければ面白くないと、面白ければ面白いとコメントしてくださったら嬉しいです。
ではまた次回(^.^)/~~~
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- 55 : 2015/01/18(日) 01:12:57 :
- オリジナルストーリーで
しかも地の文多めのSSって書くのめっちゃ
難しいはずなのに……あなたは天才か(笑)
乙でした!続編も期待★☆★
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- 56 : 2015/01/18(日) 11:48:26 :
- >>55
どうもありがとうございます!
いえいえ、天才ではありませんよ。地の文もまだまだですし。
続編の方もよろしくですッッ
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- 57 : 2015/01/29(木) 21:23:53 :
- めちゃくちゃ面白いんだけど
レイドじゃなくてレートだと思う
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