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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

黒の斬撃/深紅の羽根Ⅱ《崩壊した人間性》

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  1. 1 : : 2014/12/23(火) 21:08:43


    《人類パラミックス化計画》














    「………お前、ETE狩りだな」




    後頭部に銃口を当てられている状況で、冷静に分析した結果を口に出す。




    「ご名答。《半分パラミックス》の凜崎綾人君」




    《半パラミックス》ーーー。
    その言葉を聞いた瞬間、背筋に電撃が迸った。




    「………お前は、何者だ」
  2. 2 : : 2014/12/23(火) 21:31:05

    その言葉とかぶるように、銃声が響いた。
    しかし撃たれたのは綾人ではなく、現場を目撃していた無関係の人だった。




    「おいお前ーーーー」




    とっさにポケットからシャーペンサイズで携帯している《パラミザード》の剣を通常の大きさに変換し、鞘を抜く。距離を取ると、その男と向き合う形になる。
    いつの間にか陽が沈んでいたらしく、月明かりが綾人の剣を反射する。
    ETE狩りの顔が露わになった。おそらく、自分より少し年上だろう。




    「はじめまして、凜崎綾人君。私は慎影涯(つつかげがい)。訳あって君の首をもらいにきたんだ」




    どこかの執事が着こなしていそうな真っ黒なスーツに、白い手袋。左手には銃を、右手にはステッキを持っている。




    「どういう訳だが知らんが、こっちもハイそうですかと言って首は差し出せないんでね」




    「だろうね。だからーーーー」




    目の前から一瞬で消えたかと思うと、懐に飛び込んでいた慎影と目が合う。




    (ーーー速ぇぇッ!)




    「少し、大人しくしてもらおうかな」




  3. 3 : : 2014/12/23(火) 21:54:46

    鳩尾に繰り出された蹴りを体の捻りで回避し、その勢いで慎影の首もと目掛けて剣を振る。
    読んでいたのか、慎影が後方に跳躍し、先ほどまで立っていた箇所に斬撃が走る。




    「ちィッッ!」




    体制を整え一気に距離を詰め、綾人の剣は黒い軌道を描きながら慎影の、今度こそ首を捉えたーーーそう確信していたが、それはギィン、という2つの塊がぶつかり合う音と共に消えた。ステッキで斬撃を防いだのだ。




    「いやあ、危ない」




    紙一重だったが、一切顔色を変えずに受け止める。




    「くっそーーー。心桐流抜刀術弌式ーー!!」




    一度バックステップで距離を取り、再び前へでる。




    「緋怨・霧雨ーーーッ!」




    霧雨のような細かい斬撃が、横殴りに慎影に襲いかかるーーーが、それを全て否し、お返しと言わんばかりに発砲。頬を掠めるだけで致命傷にはならなかった。銃口から目を離さなかったのが命運を分けた。あそこで顔を逸らさかったら、眉間に銃弾が突き抜けていただろう。




    「ほう、見事な運動能力」




    (今のは危なかった……。コイツ、強ぇぇ)




  4. 4 : : 2014/12/24(水) 11:22:27

    「慎影涯、お前一体何者だ」




    「ただのETE狩りさ」




    綾人の問いに微笑しながら答える。




    「ああそうかーーーよッ!」




    再び突進し、剣を振るう。




    「ダメだよ綾人君、戦い方が直線的すぎる。そんな攻撃じゃーーー」




    「ッッ!?」




    体を反らしてからのハイキック。咄嗟に反応し、そこから飛び退いて右手を軸に一回転。
    顔を上げた瞬間目の前に移ったのは、慎影の側頭部を狙った回し蹴り。




    「ぐッッ……ッ!」




    防御する暇もなく直撃した衝撃によって、首が持っていかれる。




    「単調なんだよ綾人君。いい線いってるけどね」




    痛む体を剣を支えに起こし、なんとか立ち上がる。




    「ほう、まだ立ち上がるか」




    実力差は歴然している。今この状況で、綾人が勝てる可能性は限り無くゼロに近い。
    だがーーーー。




    「ーーーここで俺が死んだら、恋羽空が1人になってしまう。それだけは、絶対にダメだ」




    ーーー開くか、ゲートを。




  5. 5 : : 2014/12/24(水) 11:50:52


    体内のポテンシャルのゲートを開放することによって、パラミックスに近づく代わりにエントラス並みの力を発揮できる。
    現在のPP細胞の稼働率は23,6%。《ゲート2》の状態だ。そこから1つゲートを開放すれば、40%前後まで跳ね上げることができる。




    (できれば使いたくないがーーやむを得ない)




    響子の薬を飲み続ければ、一週間で細胞の稼働率がもとに戻るが、パラミックスに近づくということもあって、できれば使いたくない。
    取り返しのつかないことになりそうだから。




    「綾人君、ゲートを開放する気かい」




    「ああそうだよ。お前を、倒す!」




    ゲートの開放は、細胞の働きを活発にする注射によって発生する。学生服の裏側に入れていた袋に入っている小型の注射器に手をかけた瞬間ーーーーー。




    場違いな携帯の着信音が響き、慎影が電話に出る。



    「ああ、祈璃か。うん、わかった。すぐ行く」




    ぴっ、と携帯の電源を切り、綾人に向き直る。




    「今日はここらで帰らせてもらうよ。私のエントラスが待っているのでね」




    「エントラス……お前まさかーーー」




    「そのまさかさ。私はETE序列109位、《慎影・瀬良ペア》」




    序列109位。その言葉が脳内で狂ったように飛び交う。




    ーーー無理だ。勝てるハズがない。




    「あ、そうだ綾人君。私から君にアドバイスだ」




    「アドバイスだと………?」




    「PP細胞の稼働率が50%を超えると、エントラスと同じように体内にプラントされたポテンシャルが使えるようになる」




    ポテンシャルとは、エントラスの戦闘臓器のことだ。そこから羽根を思わせるエネルギーが放出されたり、体から剣のようなものが突出したりする、武器みたいなものだ。




    「では、いい夜を。グッド・ナイト」




    人間とは思えない跳躍で、綾人の視線から一瞬で消え去った。




    「………チクショウッ」







  6. 6 : : 2014/12/24(水) 12:57:39





    「綾人ッ!」




    「恋羽空……。お腹空いただろ。すぐ作ってやるから、な」




    心配してアパートから飛び出してきたのだろう。スリッパのままだ。




    「そんな事言ってる場合じゃないでしょ!こんなボロボロになってッ!」




    恋羽空の肩を借り、なんとか立ち上がる。
    先ほどまでの緊張感がドッと抜け、身体中に痛みが走る。




    「何があったのか、しっかり聞かせてもらうから」




    「心配してくれてるなら、すぐに寝かせてほしいんだけどな……」
  7. 7 : : 2014/12/24(水) 13:08:40


    部屋に入ると、「私が作るから綾人は寝てて!」と言われたので、机の横に寝転がる。




    「そう言えばあいつ、料理の腕が絶望的だった気がーーーああぁぁぁ!!キッチンが炎上するぅッッ!」




    一度キッチンが炎上して大変だった事を思い出して頭を抱えながら叫ぶ。




    「もう、安静にしててよ」




    「だって恋羽空が料理したらキッチンが炎上してしまう!」




    「私だってインスタントラーメンくらい作れるよ!」




    「あ、カップラーメン……」




    安堵からか、胸をなで下ろして椅子に座る。




  8. 8 : : 2014/12/24(水) 16:04:47



    ズルズルと麺をすすりながら、先ほどの戦闘ーー慎影涯について話す。




    「綾人が全く歯が立たなかったなんて……」




    「序列109位だぞ。しかもアイツ、全く本気じゃなかった。エントラスも連れてなかったし、パラミザードも使ってなかった」




    箸を握る手に力が入る。
    2人の間に流れる重い空気。
    それを破ったのは、インターフォンの間抜けな音だった。




    「誰だろう………もしかしたら、ETE狩り?」




    「静かに。慎重に開けるぞ」




    床に投げてあったパラミザードの剣を拾い、通常の大きさに変換する。
  9. 9 : : 2014/12/24(水) 16:09:34


    ゆっくりと玄関に向かい、音を立てずにドアノブに手を掛け、鍵を開けたーーー瞬間。




    「綾人君大丈夫!?」




    「沙奈支部長!?」




    玄関に飛び込んできたのは、上代沙奈その人だった。




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