希望ヶ峰学園での三年間
-
- 1 : 2014/10/28(火) 02:55:00 :
- お久しぶりです
今回は苗木 誠君の希望ヶ峰学園での3年間の生活のお話を書きたいと思っております
全20話近い話になりそうですが
1話1話の長さは物足りないくらい少ないと思いますので長編にはならないと思います
それではどうぞ
※飽きないように頑張りマス
-
- 2 : 2014/10/28(火) 02:55:15 :
- 第一話『希望ヶ峰学園』
皆さんはどんな学園生活を送ってきたのだろうか
いや、今現在送っている人もいるかもしれないね
ここで、僕の学園生活の話をしようと思う
1クラス16人の生徒たちの3年間
それは、厳しくも甘い そんな 青春の日々を
-
- 3 : 2014/10/28(火) 02:55:27 :
- ========================================
『それでは入学式を終了します』
新しい制服に身を包み
僕の3年間が始まった
ここ、希望ヶ峰学園では才能を持った高校生が集められる
周りを見渡せば その分野での有名人だらけの学校だというわけ
え?僕は何の才能を持っているかって?
僕には何の才能も無い
ただ、くじ引きで選ばれただけでこの高校に入学できた幸運の持ち主らしい
本当に幸運なのだろうか
-
- 4 : 2014/10/28(火) 02:55:41 :
- 例えばの話をすると
15匹の犬の中に1匹の猫を入れたとする
同じゲージの中で飼育した時
そのゲージを見た人間はどう思うだろうか
16匹の犬がいると思うだろうか
きっと、どうして1匹猫がいるのだろうと思う
そしてゲージの中の15匹の犬は
1匹の猫に対してどう思うだろうか
つまり、種族の違う人達の中で僕は生活できるのだろうかと不安だった
-
- 5 : 2014/10/28(火) 02:55:59 :
- 僕が希望ヶ峰学園への入学が決まったとき
僕はそれを断ろうかと思っていた
でも
周りの人たちは祝福してくれた
両親も妹も友達も
僕は、行きたくないという言葉を飲み込んだ
胃袋の奥底に
辛いとき苦しいときがあったとしても出てこないように
そして今、僕の希望ヶ峰学園での生活が始まった
それはもう戻れないという意味も含まれていた
平凡な平凡な僕の人生が
-
- 6 : 2014/10/28(火) 02:56:18 :
- =========================================
僕は思った
何で僕が選ばれたのだろう
くじ引きに意志は無い
そんなことはわかっている
それでも僕はそんなことを考えていた
入学式も無事終了し全校生徒が自分の宿舎で帰る中
僕は未だに椅子から立てずにいた
別に嫌なことを言われたわけでは無い
誰かに暴力を振るわれたわけでは無い
ただ、一瞬の視線
それが、怖かった
それは、僕が座っているとき
立った時
名前を呼ばれて返事をした時
僕が何か行動を起こす時に誰かが僕のことを視界に入れる
それがとても恐ろしかったのだ
-
- 7 : 2014/10/28(火) 02:56:35 :
- 「不安かね、苗木 誠君」
俯いていたのだろう 僕の頭の上から声がした
見上げると
「学園長さん」
そこには希望ヶ峰学園の学園長である霧切 仁の姿があった
「いえ、僕は何故選ばれたのだろうかと考えていた所でした」
僕は嘘偽りのない言葉を学園長に言う
「ふむ」
顎に手を当てて考える学園長
「それは、この学園でのこれからの生活に不安があるということなんじゃないか?」
先ほどとほぼ変わらない質問を投げかけられ言葉に詰まる
-
- 8 : 2014/10/28(火) 02:57:09 :
- そんな僕の様子を見て学園長は話をする
「私は君のことを変わった生徒だなと思った」
やっぱり、それは才能を持つものの中にいる一般人である僕は変わっているのだろう
「私は才能なんてものは無い」
「君と一緒なんだ、でも立場は違う」
そう、彼は教師 僕は生徒
「そして、変わった生徒だと思った理由と言うのはね」
少しの間
僕は返答を待った
凄く短い時間だが
長い時間にも感じた
そう、理由が知りたかったから
-
- 9 : 2014/10/28(火) 02:57:34 :
- 彼がぽつりと何かを呟いた
-
- 10 : 2014/10/28(火) 02:57:50 :
- もう一度僕は彼の顔を見る
そこには万人受けしそうな笑顔があった
「今まで、幸運として選ばれた生徒にはある一定の法則があった」
法則
「その生徒達には幸運としてくじ引きで選ばれたわけだが」
そう、そのくじ引きによって選ばれたのだ
「そして、その生徒たちは過去に幸運としての成功と言うべきか失敗と言うべきかそのような過去があった」
成程、でも 僕には
「そう、君にはそのような過去が無い」
「もう一つ」
指を1本立てる学園長
「彼らには期待に満ちた目で入学式に臨んでいたよ」
「君のような目をしていた人を見たのは初めてだった」
それじゃ
とそう一言 言って彼は僕の元から去って行った
-
- 11 : 2014/10/28(火) 02:58:02 :
- 僕もそろそろ宿舎に帰ろう
明日から授業が始まる
-
- 12 : 2014/10/28(火) 02:58:18 :
- 彼がぽつりと言った言葉
「僕がそのために呼んだ」
その言葉
「苗木君ですよね?」
次回『舞園 コンサート』
-
- 13 : 2014/10/28(火) 23:11:41 :
- 消された2年間の話ですか? それとも、殺し合いのなかったストーリーですか?
-
- 14 : 2014/10/29(水) 23:04:22 :
- >>13 それはちがうよ様
コロシアイの無かったストーリーを予定してます
-
- 15 : 2014/10/29(水) 23:08:27 :
- 読みやすくて面白いです!さすがですねヾ(^v^)k
続きが楽しみです!
-
- 16 : 2014/10/30(木) 21:52:32 :
- >>15 風邪は不治の病様
いつもありがとうございます!頑張りマス!
-
- 17 : 2014/10/30(木) 21:52:51 :
- 中学生の時に初めて彼を目にした
特に特徴のない男子生徒だった
でも何故か私は惹かれていった
彼の周りにはいつも人がいた
そして、彼は周りの人から好かれていて
彼も周りの人が好きだった
私の周りにも人はいた
周りの人は私を好いてくれていた
でも
私は周りの人が嫌いだった
-
- 18 : 2014/10/30(木) 21:53:08 :
- 2話『舞園 コンサート』
「苗木君ですよね?」
心臓が高鳴り 体の筋肉が反応する
振り返ると
日本で一番人気のあるアイドルグループのセンターポジションである舞園 さやかの姿があった
「そうだけど・・・」
声が震えないように努力した
きっと、録音して自分で聞いたら震えているだろう
それは仕方のないことじゃないか
相手は超高校級のアイドル
そんな彼女に呼び止められて緊張しない男子がいるもんか!
-
- 19 : 2014/10/30(木) 21:53:24 :
- 「もしかして、覚えてませんか?苗木君と一緒の中学校だったんですけど」
こまる!お兄ちゃんはアイドルと2人で話しているぞ!
低身長でドジでまぬけと言ってるお前のお兄ちゃんは今アイドルと話しているんだぞ!
「覚えて無いですよね・・・話したこと無いですもんね」
早く宿舎に帰ってこまるに連絡しないと!
あれかな?土下座したら写真撮らせてもらえるかな?
-
- 20 : 2014/10/30(木) 21:53:40 :
- きっと、今僕に見せている天使のような俯いた悲しそうな顔で
「えっ?」
どうしよう、なんでこんな顔してるんだろう
もしかして、怒ってる?
いや、怒っている人の顔じゃない
もしかして、舞い上がってる間に何か言ってた?
『入学式中、苗木君のいやらしい視線が気持ち悪くて・・・』
こまる
お兄ちゃんは
高校を辞めたくなったよ
-
- 21 : 2014/10/30(木) 21:53:57 :
- いや!まだだ!
「ごっごめん・・・なさい」
きっと僕のせいでこんな顔になってしまったんだまずは謝らないと
「そう・・・ですよね・・・私なんかの事覚えて無い・・・ですよね・・・」
そう言い残し彼女は僕の元を去ろうとした
僕に背を向け
1歩
2歩
3・・・
-
- 22 : 2014/10/30(木) 21:54:13 :
- 「ちょっと!待って舞園さん」
咄嗟に呼び止める僕
「・・・はい?」
もう一度僕と彼女が対面する
「えっと・・・同じ中学校だったけど全然話しかけられないし近づけなかった舞園さんに話しかけられて緊張しちゃって さっき何を言ってたのか全然聞いてなくて・・・その・・・」
長らくの沈黙
絶対怒ってるよね
ちらっと様子を伺ってみると
彼女の頬には
涙が流れていた
-
- 23 : 2014/10/30(木) 21:54:22 :
- 「えっ・・・ちょっと・・・本当にごめんなさい」
これは本当に不味いことになった
「いえ、嬉し涙ですよ苗木君」
涙の混じる瞳で彼女は笑った
-
- 24 : 2014/10/30(木) 21:54:34 :
- =========================================
部屋に入る
そして、先ほどのことを思い出す
急に顔が熱くなる
「私・・・嬉し涙って・・・」
そんなの告白も同然ではないか
幸いなことに苗木君も相当あわてていたので
深くは考えないだろう
私は壁に背をつけ
大きく1つの深呼吸をした
-
- 25 : 2014/10/30(木) 21:54:43 :
- =========================================
「苗木 誠」
1人の生徒の名前を呟く
彼はこの78期生を変えることができるのだろうか
78期生そして
「響子」
-
- 26 : 2014/10/30(木) 21:54:58 :
- =========================================
目覚ましの音が鳴り響く
「・・・・ん」
時刻は7時をまわったところ
幸いこの希望ヶ峰学園は4月の中旬まで自由登校なのだ
それは、超高校級の才能を持つ生徒を抱える学園だからこその配慮であろう
「もうちょっと寝ようかな」
朝日がカーテンから零れて眩しい
僕は布団を頭から被りもう一度寝ようとした
-
- 27 : 2014/10/30(木) 21:55:15 :
- が
違和感があった
それは、実家で暮らしていたころの記憶
なんだ?この感覚
朝目が覚める
二度寝を試みる
妹の怒声で失敗
朝食を食べる
学校へ向かう
何かが引っかかる
その答えはすぐに見つかった
匂いだ
起きた時に漂う朝食の匂い
どういうことなんだろう
自室での暮らし
1人なはず
他の人なんていないはず
「いますよ」
「うああああああああああああああああ」
突然暗闇から声が聞こえて飛び上がる
そして光が僕の顔を照らす
「おはようございます。苗木君」
目の前に立っていたのはエプロン姿の目玉焼き
違う、エプロン姿の舞園さんと目玉焼き
-
- 28 : 2014/10/30(木) 21:55:27 :
- ======================================================
僕はようやく一人になり
天井を見つめていた
正直、あからさまな好意をぶつけられると人と言う生き物は困惑してしまうらしい
そして時折見せる
彼女の感情の起伏の激しさ
どこか、僕ではない何かを見ているような感覚
何故か僕には彼女の笑顔さえ
壊れかけの機械のような
そんな危なっかしさまで感じられた
-
- 29 : 2014/10/30(木) 21:55:42 :
- ========================================================
「どうしたんですか?こんなところに呼び出して」
彼女は予定の時間の10分前に待ち合わせ場所に着いた
「舞園さんに話したいことがあるんだ」
そして、僕は軽い深呼吸をする
その間の時間彼女の期待が溢れだしそうな視線は僕を捉え続けていた
「舞園さんにとって僕はどんな存在なのかな?」
彼女の顔の表情が一瞬止まり
頬を紅潮させて答える
「そんなこと、言わせないでくださいよ もぅ苗木君ったらいじわるですね」
僕は答えず真っすぐ彼女を見つめる
「わかりました。言いますね」
そんな僕の顔を見たのであろう彼女は浮ついた口調で答える
「運命の人です」
-
- 30 : 2014/10/30(木) 21:55:55 :
- そうはっきりと彼女は言った
そして長らくの静寂の間
僕はそれに対する答えをもう持っていた
ただ、もしかするとそれは大変なことになってしまうかもしれないということも僕はわかっていた
でも
「舞園さん」
「はい」
彼女は待ちきれないというかの様に近づいてきた
そしてもう1歩足を踏み出せば体が触れ合う距離まで来た
-
- 31 : 2014/10/30(木) 21:56:13 :
- 「悪いけど舞園さんの気持ちには応えられない」
先ほどよりも静寂が広がった
いや、音が無くなったと言ってもいい
まるで時が止まってしまったような感覚
そして、彼女は言葉の意味を理解した
「う・・・嘘です・・・そんなの」
僕と舞園さんの距離が少しずつ開く
「冗談ですよね?苗木君」
僕は何も言わなかった
いや
言えなかったんだ
それ以上口を開いてしまえば傷ついた彼女をフォローしてしまいそうになるから
-
- 32 : 2014/10/30(木) 21:56:26 :
- 「そんな・・・どうして?」
「私、苗木君の為なら何でもできます」
「家事も全部します」
「苗木君の代わりに働いてお金を稼ぎます」
「アイドルだからダメならアイドルもやめます」
「本当に・・・なんでもしますから・・・・」
最後は消えてしまいそうな声だった
-
- 33 : 2014/10/30(木) 21:56:41 :
- 僕は1冊の雑誌を彼女に見せる
「これは?」
「舞園さんがアイドルになって初めて受けた単独インタビューが掲載されてる雑誌」
『アイドルになったきっかけ』
『母親がいない家庭で寂しさで潰されそうになっていた私を笑顔にしてくれたのがテレビに映っていたアイドルだったからです』
『最後に一言』
『みなさんを笑顔にしていきます!』
「この1週間僕の部屋に来てたよね」
「レッスンや仕事は?」
彼女は何も答えない
「舞園さんは僕に言ったよね覚えてますか?って」
「覚えてるも何も、僕は知ってる限り周りでは一番のファンだよ」
ずっと俯いていた彼女が顔を上げる
「忘れるわけないじゃんか」
「1週間とても幸せなファンサービスだったよ舞園さん」
「でも、舞園さんは戻らなきゃ 皆待ってるんだから」
そう、彼女には待っている人が大勢いる
「・・・てくれますか?」
かすれた声で彼女は僕に言う
「来てくれますか?今度のライブ」
「もちろん!ファンとして そしてクラスメート 友達として」
-
- 34 : 2014/10/30(木) 21:56:53 :
- ======================================================
『本番5分前です』
ステージの裏で裏方さんが声を張り上げる
間もなくライブが始まる
私たちのグループの単独でのドームコンサートが
頭に彼のことが思い浮かぶ
一度 断られたくらいで諦めなんかしない
アイドルを全力でやる!
そして
見てもらうんです
私の一番大切なファンに
「みなさーん!来てくれてありがとー!!!」
運命はそう簡単に変えられませんよ苗木君
『舞園 コンサート終幕』
次回3話
『桑田 ピッチング』
-
- 35 : 2014/10/30(木) 22:03:45 :
- <<Ut4m4r0のお知らせコーナー>>
1話2話まで読んでくださった方本当にありがとうございます
質問が来ていたので答えさせていただきます
Q設定はなんなの?
Aコロシアイ生活でもなくコロシアイ生活が始まる前の消された記憶でもない もう一つの世界線のお話です
そしてこれからあるであろう質問や思ったであろう疑問
Q2話が飛び過ぎてよくわからない
A舞園さんはこれからの物語で苗木君の一番身近な異性となります
『舞園 コンサート』はここで話が終わりますが彼と彼女のお話は後日また物語中に出てくると思いますので現時点ではここまでと言うことになっています
それでは、もしこんな稚拙な文字の羅列をこれからも読んでいただける方は進展に期待してください!
-
- 36 : 2014/11/04(火) 11:34:27 :
- 俺は物心ついた時から野球が好きだった
大好きだった
何をしていても野球の事しか考える事しかできなかった
クラブチームでエースになり
市内でエースになり
県でも
いつしか俺は日本のエースになっていた
『あいつがいれば勝てる』
『選ばれた人間だ』
『天才』
周りからの言葉も俺には苦しかった
そして、俺は
野球が嫌いになった
-
- 37 : 2014/11/04(火) 11:34:40 :
- 『2話桑田 ピッチング』
「ふざけないでください!」
それは、5月の中盤突然帰りのホームルームが終わった後に起こった
「ちょ・・・ちょっと待ってくれよ舞園ちゃん」
怒鳴られていた男子が
怒鳴った女子を呼び止めようとする
彼にクラスメイトの視線が突き刺さる
彼が居心地が悪くなったのだろうか自分のバッグを手に取り教室から出て行った
-
- 38 : 2014/11/04(火) 11:34:57 :
- ==========================================
「そういうことだったの」
あの事件から2日が経過し
ようやくクラスでも事件の記憶が薄れ始めている中
僕は彼に問いかけてみた
事件の内容はこうだ
超高校級の野球選手として希望ヶ峰学園に入った桑田 怜恩は
野球のことが嫌いだった
野球よりも芸能界に興味があり
芸能界に通じる超高校級のアイドルである舞園 さやかに声をかけたというわけだ
そして事件が起こった
-
- 39 : 2014/11/04(火) 11:35:12 :
- 「わからないのは、舞園さんがあんなに大きな声を出したことかな」
仮定はたっているが僕は真実を聞きたかった
「野球はどーするんだ?って言われたもんだから あんなもんやめるわ 練習だって下手糞がやることだし俺天才だしって言っただけ」
彼は彼女が大声を出してまで憤慨したかが理解できないようだ
知っているだろうが僕は舞園 さやかのファンである
彼女の苦悩は少し他の人よりもわかっていると自負している
彼女の努力も
頭に血が上りそうになるのを抑えながら僕は彼に1つの質問を投げかける
-
- 40 : 2014/11/04(火) 11:35:24 :
- 「桑田君は野球が嫌いなの?」
その質問で反応を見ようかと思っていた
必ず悩むと思っていた
でも
「きれーだよ あんなもん」
即答だった
考える動作や素振りも無い
-
- 41 : 2014/11/04(火) 11:35:52 :
- =========================================
部屋で1人の時間
私はずっと彼の言葉を思い出してました
「練習だって下手糞がやることだし」
身体に力が入り 頭に血が上ります
私は下手糞だからレッスンを人一倍してきたのかもしれません
才能が無いから努力で頑張ったのかもしれません
もしかすると、アイドルの才能を持った人が自分の才能に気が付いたら私は
-
- 42 : 2014/11/04(火) 11:36:14 :
- 「それは違うよ」
心臓が飛び上がるほどの驚き
それは声をかけられたこと
そして、その声の主が
「・・・苗木君」
「鍵開いてたし、ドア半開きだったから」
アハハと彼が笑います
「どうしたんですか?もしかして愛の告白でも」
私は、先ほどの自分を思い返し冷静を装いおどけて見せた
「いやいやいや!そんなんじゃないって」
大げさな身振り手振りでその意志が無いことを表す彼
「えー、そんなに否定されると私傷ついちゃ
「舞園さん」
私の道化を遮るように彼が私の名前を呼びます
「才能が無いから努力したんじゃないでしょ?」
彼がそう一言
「それってどういう」
「舞園さんは
「おい、そこの愚民苗木 誠ちょっと手伝え」
「あわわわわわ 引っ張らないでよ十神君」
おい、待てや!御曹司メガネ
・・・・私が努力した理由
-
- 43 : 2014/11/04(火) 11:36:40 :
- =========================================
「うっし!完璧だな今のパート」
ギターをおろして ソファーに座る
そして先ほど苗木から言われた言葉
「桑田君は野球が嫌いなの?」
その一言
そして俺は
「きれーだよ」
そう、俺は野球が嫌い
ただ、その発言に憤りを感じていた
野球が好きじゃないからギター持って練習してるんだろうがそれなのに苗木は
わかりきったことを聞きやがる
違う
本当はわかっている
俺は苗木の言葉に憤っているわけではない
俺は俺自身の返答に憤っていた
そう、そうなんだよ
最初からわかってんだ
「でも」
俺はもう野球はしない
-
- 44 : 2014/11/04(火) 11:36:56 :
- =========================================
ある日の校舎裏
僕は変な光景を見た
1人の少女が壁に向かってひたすらボールを投げる姿
とはいってもボールが壁に届くことは無かった
それでも彼女はボールを投げていた
息が切れても
その美しい長い髪が乱れても
彼女はボールを壁に向かって投げていた
声をかけようかとも思った
でも、僕はかけなかった
そ の 役 目 は 僕 じゃ な い
-
- 45 : 2014/11/04(火) 11:37:08 :
- =========================================
「私はどうして努力をしているのでしょう」
そう自分自身に問いかける
ある日の校舎裏で私は壁に向かってボールを投げていた
それは、今度の週末に始球式があるから
アイドル舞園 さやかとしての仕事だから
ボールは壁に届かない
それでも私は続けないと
-
- 46 : 2014/11/04(火) 11:37:19 :
- =========================================
「あーすることがねぇ…暇だわ」
教室から出てあくびを噛み殺しながらふと窓の外を見る
夕焼けで空が赤く染まって綺麗だった
「綺麗だな」
ポツリと呟いて宿舎に戻ろうとした
「ん?」
視界の隅に動くものがあった
その動作は俺も知っている
と言うよりは俺が今までしてきた動作
そして、その動作をしていたのは
「舞園ちゃん」
どうして、そんな場所でそんなことをしているのだろうか
的である壁に届かずに転がるボール
何球も何球も投げているが届かない
それでも彼女はボールを投げることをやめなかった
俺は彼女から目を離した
そして、宿舎への帰りを急いだ
「野球なんて見てるだけでも」
その次の言葉は飲み込む
だが、彼は知らない
彼女のボールの行方を見ていた時間が30分を超えていたことを
-
- 47 : 2014/11/04(火) 11:37:37 :
- =========================================
次の日も彼女はいた
その次の日も
金曜日の今日もまた
そして、俺はまた眺めていた
ボールは未だに壁に当たっていなかった
それでも着実に壁に近づいてた
期限は明日
それまでには到底無理だ
「さて、帰ってギターの練習しよ」
誰に聞かせるわけでもない
誰かに聞いてほしかった
誰かって誰か?
俺自身に
-
- 48 : 2014/11/04(火) 11:37:56 :
- =========================================
「はぁ・・・はぁ・・・」
明日は始球式
それなのに
ボールは壁に届かない
それでも、最初にやったよりは壁に近づいてきてる
このままのペースでいたら間に合わない
肩に力が入る
投げようと振りかぶり投げる
やはり、壁に届かないボール
無茶なのかな
「肩に力入りすぎ」
背後から声がかけられる
そして私の隣に立つと
投げる素振りを見せた
「ボールが手から離れるときに力を入れるんだ」
「桑田君」
「そんなガチガチのフォームで何球も投げたら怪我しちまうぞ」
私の方を見ずに壁を見つめて呟く桑田君
「そんなに始球式が大切か?」
そして問いかける彼
「私にとってライブも握手会もイベントも全部大切です」
本心
「確かに私は下手糞だから練習を人一倍やります」
「それよりも私はみんなの笑顔が好きだから」
大きく息を吸い込む
いつか、苗木君が言いたかったこと
「アイドルが好きだから」
-
- 49 : 2014/11/04(火) 11:38:15 :
- ==========================================
「アイドルが好きだから」
そういう舞園ちゃんの瞳は真っすぐだった
「大好きだから、辛くても頑張れるんです」
笑顔
そうだよ、そうなんだよな
『父さん!今日もキャッチボールしよーよ』
そう、野球と出会ったその日から
『くそっくそっ!打たれちまった スタミナが無いから くそっ』
雨の日も風の日も
『内角の変化球に対応できるように』ブンッブンッ
辛くても苦しくても
『今日はいい感じだった、この感覚を忘れないように』ブンッブンッ
頑張れた
それなのに
『天才だ』
『才能があるやつは違うな』
確かに才能は少しあったかもしれない
『彼は一流の選手になる才能を持っている』
俺は
見てほしかった
才能では無く
桑田 怜恩を
誰よりも野球が大好きで
野球を理解しようと必死に練習をして
ここまで来た俺を
-
- 50 : 2014/11/04(火) 11:38:27 :
- 「桑田君」
彼女が問いかける
「野球好きですか?」
いつかの苗木から聞かれた質問
迷わない、もう自分を騙さない
「大好きだぜ 何よりも」
-
- 51 : 2014/11/04(火) 11:38:41 :
- =========================================
夕焼けに染まる世界の中
校舎裏の男女が話しているのを僕は廊下から見ていた
男はボールを拾い上げる
そして、振りかぶる
それは綺麗なフォームだった
素人目から見ても、きっと玄人の人が見ても
それはとても美しく雄大なフォーム
そんなフォームから繰り出される球は
空気を切り
壁へぶつかった
投げ終わった後男女は微笑みあっていた
「ストラーイク」
そう呟き 僕は宿舎へ戻った
3話『桑田 ピッチング終幕』
次回4話『不二咲 プログラム』
-
- 52 : 2014/11/25(火) 08:53:42 :
- 思うんだが・・・5-Aとかあるのだから、3年間ではなく、5年間では?
-
- 53 : 2014/12/05(金) 21:43:02 :
- 順番ってそういうこと?
-
- 54 : 2015/07/21(火) 19:00:58 :
- もしかしたら
希望ヶ丘学園は五年で卒業だけど三年目の時に
あの事件が起きて残り二年を残して学園生活を
終わらせることになってしまった・・・的な
そんな設定の可能性もありますね
それと このSSは神SSだべ!!!
俺の占いは10割当たる!!!
期待です
-
- 55 : 2015/07/21(火) 20:31:26 :
- 期待
- 著者情報
- 「ダンガンロンパ 」カテゴリの最新記事
- 「ダンガンロンパ 」SSの交流広場
- 【sn公式】ダンガンロンパ交流広場