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  1. 1 : : 2014/09/05(金) 20:26:54


    あぁ、もうこんな時間だ。




    腐るほど多い夕食もおわって


    花で飾られた入浴もすませて


    たまにしか行かない学校の宿題も終わらせた。








    あ、そろそろかな。







    コンコンコンッ



               ・・・
    ドアをノックする音が、アイツがきたことを知らせる。







    「おそい。ずっと待ってたのに。」



    むっとした口ぶりでそう言う。




    今は、夜9時。









    「悪い。開けて。」



    ドアの奥の声に、しょうがなくそこまで行き、ノブに手をかけた。










    ガチャ







       ・・・
    そう、アイツがくる。


    もうそんな時間だった。


  2. 2 : : 2014/09/05(金) 20:33:41


    こんにちわ(*^^*)はじめましての方は、はじめましてですね。かずみ&みおと申します。

    名前のとおり、かずみ と みお が交代で、話をかいていきます。

    完全オリジナルです。

    こうやって、交代でかいていくのは、初めてなので、いろいろご迷惑かけることもあるかもしれませんが、よろしくお願いします\(^o^)/\(^o^)/


    本編は名前もわけて、かいていきます。


    是非とも。ご覧あれ!!!!です(^o^)

  3. 3 : : 2014/09/05(金) 20:50:09

    〈設定〉



    白亜 乃愛(はくあ のあ)

    白亜財閥の娘。高校一年生だが、たまにしか学校にいかない。

    腰までの長い髪。清楚な感じ。


    翠にたいして、高圧的になることがある。我が儘姫。



    *-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*

    桐谷 翠(きりたに すい)

    乃愛の執事であり、自称 教育係り。


    金髪。ピアスの穴がたくさんあいている。(耳に)



    乃愛が学校に行くときのみ、学校に行く。不良執事。



    また、足りないものがあったら書き足します!!

    ありがとうございました(*^^*)
  4. 4 : : 2014/09/05(金) 21:50:19
    期待ですっ(●´ω`●)♪
  5. 5 : : 2014/09/05(金) 23:16:34


    「…遅れた。」




    そう言うアイツの手には教科書やらテキストやらが積み重なっていた。






    「んーん。大丈夫。」




    そう言って私はアイツを部屋へいれる。





    「んで、あんたはどうせまた何もやってないんでしょ?」





    私はアイツの持つ教科書を指差して言った。






    「当たり前だ。俺はお前と違って暇じゃないからな。」






    そう言ってアイツはソファーにどかっと座る。






    「はあ?あんただって大したことしてないでしょ!翠!」






    「んなことねーよ。」






    「大体ね、あんたは仮にも私の教育係なんだから………な、なによ…」






    すると、今まで教科書をぱらぱらしていた翠が突然私の顔を直視してきた。










    「いや、怒るとここにシワがよって
    ブッサイクになるなーって。」






    そう言って翠は私の眉間を押さえた。







    「んなっ⁉︎」





    そして、一気に自分の顔が熱くなってくのが分かった。










    「そんな顔赤くしなくても嘘ですよ。
    うーそ。
    それより、早く宿題見せてくれませんか?姫。」






    そういいながら翠は宿題のページをシャーペンでぽんぽんと叩いた。








    ……ほんと自己中すぎ。







    「…嫌だ。」






    だから私はぷいっと顔をそらした。










    「あっそ。」





    でも、その翠の声はどこか余裕があった。








    「せっかくコレ持ってきてやったのに。」





    そう言った翠の手には苺のマドレーヌがぶらさがっていた。








    ……もう、ほんとこの人嫌だ。










    だってそれ、私の大好物のうちの一つだもん。






    「……分かったよ!ちゃんと渡すから、
    それちょーだい!」






    「はいはい。」






    そう言って翠は私にマドレーヌをくれた。











    ……今日はいつになったら終わるのだろう。




    先の見えないことに私はため息をついた。
  6. 6 : : 2014/09/05(金) 23:23:58
    ほんとに初めましてですww

    今回が初めてなので内容ぐちゃぐちゃになっちゃうかもですけどその辺は大目に見てください‼︎


    よろしくお願いします(*^^*)
  7. 7 : : 2014/09/05(金) 23:26:23
    かずみん!いい(^з^)-☆いいよ!!!!
    サイコー\(^o^)/\(^o^)/
  8. 8 : : 2014/09/05(金) 23:27:39


    心愛さんへ

    もう、見てくれたんですね!?嬉しいです。ありがとうございます(*^^*)
  9. 9 : : 2014/09/06(土) 00:47:49


    「っおわったぁー!!!!サンキュ。」



    テキストをわたしに返すと、のびをしながら、横に倒れこむ。




    のあ「勘違いしちゃだめだからね。わたしの頑張りよ。それ。」




    翠がわたしのワークを写してる間に読んでいた本を横におき、舞い上がってる翠に釘をさすように言う。



    翠「えらい。えらい。」




    なにそれ。…見せてやってんのわたしなのにっ!!




    翠「嘘。わかってるっつの。だから礼をいってんだよ。




    ちゃんと渡したし、それ。」






    翠の指差す先には、先程のマドレーヌがあった。





    のあ「わざわざ城下までいって買ってきてくれたの?」



    マドレーヌを手に取り、翠にきく。




    翠「別に、用事のついで。」


    頬に手をつきながら言う翠。





    知ってるんだから。わたし。
    用事~とか言って、用事なんてない。


    公務があるとはきいたけど。



    なにより翠は、昔から嘘をつくとき目線が左下にいく。




    のあ「うん。ありがとう。」


    翠「こちらこそ。ありがとう。」







    なんかしっとりした空気だ。




    のあ「あ、そうだ。わたし台所に置いてくるね。マドレーヌ。」



    そんな空気を吹き飛ばすように言うと、部屋をでようとする。






    翠「待て。」






    ドアの目の前で、翠に手を握られ、びくっとなる。




    のあ「…な、なに…」







    翠「俺が置いてきてやる。」





    ゆっくりと翠がドアに手をつけ、追い込む形になった。




    のあ「え、大丈夫だよ?
    不審者はいないと思うし、メイドがいるから何より安全だもん。」






    翠「アホか。」





    わたしの背中を軽く押した。




    翠「不審者とかじゃなくて、メイドにおびえろ。

    また昨日みたいに怒られんぞ。」





    あ、忘れていた。つい昨日。今日のように出ていこうとして、ドアを開けた瞬間メイドにつかまった。


    バカだな。わたし。




    のあ「でも、それじゃぁ翠がつかまるでしょ?」







    翠「そんなヘマしませんよ。姫さん。」




    思いっきりデコピンされた。




    翠は、ニッと笑って部屋をでていく。





    のあ「あ、ちょっ、教科書っ忘れて…」




    バタン







    まだ翠の手の感触が残っている。




    自分の手とは、比べ物にならないくらい大きくて、かたい。






    でも、そんなことより




    デコピンが予想以上に痛くてヒリヒリした。




    そんな、いつもと変わらない夜だった。


  10. 10 : : 2014/09/06(土) 15:40:14



    翌朝。






    「んん…」





    どうやら昨日、私はいつの間にか寝ていたようだった。




    ふと、窓に目を向けると太陽はすでに登っていて、私は着替えをしようとベットから下りる。









    ん?あれ、ベット?






    私はふと疑問に思った。






    だって私、ベットに行った記憶なんてない。





    確か昨日は翠を見届けたあと、ソファーに戻って……

    …そこまでの記憶しかない。





    じゃあなんで私ベットに居たの…







    なんて思った時





    ガチャとドアがあいて、誰かが入ってきた。







    翠「あ、起きてたの?」






    乃愛「おわ”っ!」






    部屋に入ってきたのは翠で、私は思わず変な声をだした。







    翠「色気のない悲鳴だな。」




    そう言って翠はソファーに座った。






    乃愛「な、何しにきたのよ。」




    私の質問に対し、翠は机にあった教科書を指差して


    翠「あー、コレ取りにきただけ。」



    と言った。




    なんだ、それだけかー。
    と、1人で納得していると





    翠は再び口を開いて





    翠「お前運んでたら、コレの存在すっかりわすれちゃってなー。」




    と言った。









    ……は?




    乃愛「え、今お前運んでたらって…」




    私は翠が言ったことを確かめるようにもう一回聞いた。





    翠「あー。もっかい部屋に戻ってきたらお前ソファーで寝てるからさ。」




    そう言って翠はソファーにゴロンと倒れた。






    乃愛「あんたが私を運んだの⁉︎」





    私は翠の言動にびっくりして、思わず大っきい声をだした。





    翠「んな、大っきい声ださなくてもそーだよ。」





    そう言って翠はニッと笑って、再び口を開いた。





    翠「なに?私は重いんだから運ぶなって言いたいんだろ?」







    見事、翠に図星をつかれた私はもうやけになって




    乃愛「当たり前じゃん!」




    と強く言った。





    すると翠は突然、よいしょっと体を起こして





    翠「あのなー、お前俺が何年お前の教育係やってると思ってんの?お前を運ぶくらい余裕だわ。」




    と自慢気言った。





    〜♪


    翠がそう言い終えたら、ちょうど8時を伝える音楽が流れ出した。





    乃愛「あ…」




    ふと、翠のほうをみるといつの間には立ち上がっていて



    翠「分かったらさっさと着替えて飯食うぞ。いつまでも上だけパジャマでいるなよ。」




    と言って私の頭にぽんと手をおいて、部屋からでていった。







    私は1人で部屋に残された状態で、なぜか顔を真っ赤に染めていた。


  11. 11 : : 2014/09/06(土) 17:54:45


    ほっぺた…熱いな。




    着替えを済ませ、やたらと長い廊下を歩いている。




    さっきから風邪でもひいたのか、顔の赤みと熱がなかなかひかない。


    風邪か…何年ぶりだろう。









    「は?うるせー。だまってろっつの。」


    「また、そんな言葉使いっ!!そんなんで姫の執事が成り立つのですか?それにピアスまでっ…」





    リビングから声が聞こえる。


    いつもあんなに静かなのに。
    翠が一人漫才の練習でもしてるのかな。

    寂しいヤツめ。



    わたしなら、付き合ってやらないこともないのに…




    ドアノブに手をかけた瞬間だった。





    ガチャ







    乃愛「へ?」




    反対側から勢いよくドアが開く。




    え?な、なにっ






    「ちょ、わりぃ。かくまって!!」




    いきなり、見覚えのある黒の燕尾服が迫ってくる。





    乃愛「翠!?」






    翠「てか、逃げるっ。」




    腕をぐいっと掴まれ、走らされる。





    乃愛「翠っ。まって…」






    遠くで、メイドの山野が私達を追いかけながら言う。



    「翠!まだ話しは終わってませんよ!!」






    あぁ、さっきの声は、山野と翠の声か。




    翠「っ。まだ追ってきやがる。あのババァ、年の癖してどこに走る体力あるんだか。」



    乃愛「翠っ。やめっ…もう無理。」





    翠の速さについていけず、脚から崩れ落ちる。



    はぁ、はぁ、はぁ…

    息切れが半端ない。





    そんなわたしを見て、翠は言う。




    翠「…危なくするから。」



    体がふわっと宙に舞ったかと思うと、翠にかつがれる。




    わたしの腰に翠の手がまわっている。




    乃愛「ばか翠っ。」





    翠「ちゃんと捕まってないと、振り落とすよ。」



    夜、ベッドに運んでくれたときも、こんな風に運んでくれたのだと考えると、不思議と顔が熱くなる。





    乃愛「お腹減った。」


    翠の首に腕を回し、ぎゅっとつかまる。




    ばか翠のおかげで、朝食を抜かしたのだ。





    翠「今日は一日俺も暇だから、城下でデートでもしようか。」





    デート…。





    帰ったら、山野と料理長に謝らなきゃ。


    朝食を無駄にしてごめんなさいって。






    あと、翠にもらったマドレーヌを食べそこねたけど


    帰ったら絶対食べるんたから。




  12. 12 : : 2014/09/06(土) 20:24:03

    訂正です。


    最後の



    "食べるんたから"のところですが


    "食べるんだから"の間違いです。



    ごめんなさいm(__)m

  13. 13 : : 2014/09/06(土) 21:01:08



    乃愛「はぁ…はぁ…」




    あれからどれくらい走っただろうか。


    いや、正確には走ったのは私じゃなくて翠だけど。




    だけど、なぜか私はすごい疲れてる。





    乃愛「…ここに来たのはいいけど、翠はこの後どうするの?」




    結局、私たちは山野から逃れるために翠の部屋に逃げ込んだ。





    翠「ああ、バレるのも時間の問題だしな。さっさと出掛けないとな。」





    そういって翠はちらっと時間を確認した。





    翠「お前がここから出るとあのババァに見つかるしな。おい、乃愛。ちょっとそこでまってろ。」





    乃愛「はっ⁉︎」





    そう言って翠はゴソゴソとクローゼットをあさりだした。




    って、このまま出掛けるの⁉︎




    そんな風に1人であたふたしていたら





    シュルッ…




    布が擦れる音がした。





    そして、ふと音がしたところをみると、




    乃愛「っ⁉︎ちょっ、なにやってんのよ!」





    ネクタイを外し、シャツを脱ぎだした翠の姿があった。





    翠「いや、着替えてるだけだけど。
    それに俺の部屋はお前と違って他に部屋は無えんだよ。」





    乃愛「だからって…!」





    翠「何?もっとほかのことする?」






    そう言いながら、翠はプチっとシャツのボタンを一つ外した。






    乃愛「ばっ、ばっかじゃないの」





    自分の体が一気に熱くなったのがわかった。





    翠「俺、マジなんだけど。」




    そう言った翠の顔がいつのまにか、すぐ目の前にきてた。






    ばくばくばく…



    自分の心臓がすごい速さで動いてるのが分かる。







    乃愛「…あ…えっと…」




    私がどうしようか迷っていると







    翠「……ふっ」




    突然翠が笑いだした。





    翠「馬鹿かお前。俺がこんなお子様体型に手をだすわけが無いだろ。」




    乃愛「んなっ⁉︎」




    お、お子様体型って!

    確かに人より成長は多少悪いけど…




    そんな風に自分に言い聞かせてたら、翠が口をひらいた。




    翠「それに、俺とお前はあくまで執事と姫だからな。」






    …執事と姫。



    翠のその言葉がどこかひっかかった。





    翠「ふっ、なにしょげた顔してんだよ?んなことより、早くいくぞ。」




    そう言う翠はいつの間にか着替え終わっていて、トントンと靴をならしていた。




    乃愛「あ、うん。分かった!」




    そう言ってドアに手をかけようとしたら





    翠「馬鹿。そっちから行ったらババァ達に見つかるだろ。」




    と、翠に止められた。




    え、でもそっちからじゃって…





    乃愛「じゃあどっちからでてくのよ?」






    翠「決まってんだろ。

    ここから行くんだよ。」





    そう言って翠は窓の外をクイッと指差した。





    乃愛「はぁ⁉︎なに考えてんの!ここ二階だよ!」






    翠「んなの、飛べばいいじゃねーかよ。」


    なんて当たり前のように言う翠。






    乃愛「無理だよ!それに怪我でもしたらお出掛けどころじゃないよ」





    翠「俺がそんなヘマでもすると思ってんのか?心配はご無用ですよ、姫。」




    そういって翠はグイッと手を腰に回して私を持ちあげた。




    乃愛「わっ!」




    翠「ちゃんと掴まれよ。途中で落ちても助けれねぇぞ。」




    そう言った翠の足はすでに窓の淵にかかっていた。





    翠「いくぞー。」






    乃愛「いやー!無理無理!」







    なんて私が叫んだ時にはすでに時遅し。








    乃愛「いやぁぁぁ!!!」




    体がふわっとしたと同時に、冷たい風が私たちを包み込んだ。








    ガサっ





    そう、音がしたときにはすでに風の音はしなくなっていた。



    私がゆっくりと目をあけるとそこには翠の顔があった。





    乃愛「…無事、飛び降り成功?」




    翠「当たり前だ。」




    そう言って翠は私をそっと下ろした。






    翠「あと、こっからは裏門まで走るぞ。」





    乃愛「えっ、また⁉︎」





    翠「んだよ。じゃあデートやめるか?」




    そう言った翠の顔がどこかムカついたので



    乃愛「やめない。走る!」





    と言って翠より先に走り出した。





    翠「うおっ、ずりっ。」




    そう言って翠も走りだしたのかわかった。




  14. 14 : : 2014/09/06(土) 21:29:11

    あれ?かずみんトリップ変えた?
  15. 15 : : 2014/09/06(土) 21:40:06
    2回目のとき、トリップ間違えて投稿しちゃったんだよねww

    今のやつがほんとのやつです!


    迷惑かけましたm(_ _)m
  16. 16 : : 2014/09/06(土) 21:42:17
    ↑ごめんなさい

    また間違えましたm(_ _)m

    今のがほんとのですw

    ほんとすいません!
  17. 17 : : 2014/09/07(日) 03:22:56


    乃愛「っきゃぁー。」



    翠「何さわいでんだよ。」



    だ、だって、だって!!



    乃愛「甘いものたくさんあるんだもん!」



    城下には、たくさんの屋台が並んでいる。
    甘党のわたしには、実に嬉しい場所。





    翠「自分の城の下くらい自分で管理しろよ。」




    乃愛「だって、すっごい久し振りなんだもん。

    しかも管理とかは、じいや がやってくれてるし。」



    翠に軽く笑って見せる。









    乃愛「ひゃっ。」




    視界がぐらんっとなり、頭が重い。足を踏み外した。






    ぐいっ





    翠に肩を支えられ、肩がぶつかる。





    翠「ちゃんと前を見ろ。ぶつかるだろ。」




    横には、小さい子供が、わたしの隣をすれすれで走っていく。




    ぶつかるところだった。

    もし、翠に助けられなかったら…






    翠「おーい。大丈夫?」




    すぐそこには翠の顔があって、わたしの手は翠の服の裾を持っている。





    乃愛「っわぁっ。」




    それに気づくと同時に、勢いよく手を離す。




    ばくばくばくばく…

    心臓の音が大きく鳴りひびく。







    翠「何?意識した?」



    ニヤァと嫌な笑いを顔に貼り付け、わたしを見る。




    乃愛「え?あ、違うっ!!」



    顔が赤くなるのを感じた。




    翠「真っ赤だ。」




    乃愛「っなっ□□


    ばか翠っ。」






    翠「バカじゃねーよ。」




    そう言って、わたしの手をぎゅっと握る。



    な、手がっ。



    何も言えずにあわあわとしていると、翠が顔を傾けて聞いてくる。




    翠「どうしたの?」





    やや、笑いをこらえたような顔をしている。
    翠の耳のピアスが、あやしく光って揺れた気がした。





    ばくばくばくばくばく…




    不可解な動機がする。

    さっきみたいに顔も熱い。





    翠「のあ。あそこ行こ。」




    翠の指差す先には、おいしそうなスイーツのお店があった。




    乃愛「うん…。」



    そう言った瞬間、誰かに声をかけられた。






    「あらら?ごきげんよう。ウィストアルの姫。また大きくなられて。」



    目の前には、久し振りに会うシュラフ夫人がいた。






    乃愛「ごきげんよう。シュラフ夫人。


    そちらこそ……ん?えっと…」



    何を言えばいいのか言葉につまる。

    翠に目で助けを求めるも、三歩後ろで頭を下げ、黙ったままだ。



    こんなときにっ、翠っ!!





    夫人「いいのよ。そんな固くならないで。


    それにしても、そちらの方。」



    夫人は、翠を見て言った。





    夫人「よく見覚えのある方だと思ったら、アルステナの王子じゃないですか。」



    夫人は、笑いながら大声で言う。



    それを聞いた周りの客が、いっせいに振り返った。



    夫人「そろそろ自国に帰られたらどうですか?

    ・・・
    翠王子。」





    ザワザワとする周り。



    その発言にも、体勢を崩さず固まったまんまの翠。





    乃愛「貴女!!失礼な発言は命取りに…」


    夫人の言葉にカチンときたので、夫人に勝る大声で叫んでいるところだった。




    「どうか、お怒りにならないで下さい。



    姫。」




    翠がわたしを追い越して、そう言う。





    乃愛「っ。ばかっ…。」




    そのときには、もう遅かった。





    翠「シュラフ夫人。二度とこのような発言は、慎んでいただきたいのです。」



    夫人「なに…」





    翠「姫の名誉を汚すことになるのです。」




    はっきりと物を言える翠。




    本当に、一つの国を背負っていた、あのときの王子のまんま。

    わたしが初めて見た…小さかった、六歳の王子。



    昔から変わらない。






    翠「そんなアルステナだなんて。

    あんな腐った国の、腐った王子と一緒にしないでくださいよ。






    わたしも、あんな国の王子のように


    美しくないですか?」






    夫人の手に軽くキスを落とし、わたしの後ろに戻った。




    乃愛「家の執事が大変な御無礼を。

    本当に申し訳ございません。」




    深々と、頭を下げる。





    夫人「ほ、ほんとよっ。」



    そうとだけ言って、夫人はわたしたちから離れた。





  18. 18 : : 2014/09/07(日) 04:07:07

    夕日が沈む頃になった。


    二人で城までの長い道を並んで歩く。


    周りがオレンジ色に包まれる。







    さっきから、沈黙が続いたまんま。


    どうやって話しかければいいのかわからなくなっている。






    甘いものも、翠がたくさん買ってくれたけれど、どれも味がしなかった。












    翠の手がわたしの手とぶつかる。








    ぎゅっ






    自然と、絡むその手にあたたかさを感じた。











    "そろそろ自国に帰られたらどうですか"




    夫人の言った言葉にカチンのときた。





    別に、わたしに言われたわけじゃない。


    でも翠のことは、別の話にできないの。







    どんなときでも翠は、姫になりきれないわたしをたててくれる。











    乃愛「…翠。」




    気がつくと名前を読んでいた。







    乃愛「…あんたは誰に何を言われても、別に帰らなくていいんだから。








    いたいだけ、ここにいればいいの。」















    翠「…ありがとう。」









    何があっても変わらない。わたしは、翠とそんな関係でありたい。






    乃愛「翠は、わたしの執事でしょ?」











    翠「…やべ。泣きそう。」




    翠の震える声が聞こえた。









    今日もまた、夜がくる。




    いつものように


    一緒に宿題の答えあわせをして



    また、おもしろい話をして



    翠の話もたくさん聞くの。












    乃愛「ねぇ。翠。」







    これからも続くと思うこの




    不良で執事で王子なあんたと


    我が儘で素直じゃなくて姫なわたしの






    ややこしい関係を










    乃愛「マドレーヌ、食べよっか。」







    大切にするの。

  19. 19 : : 2014/09/07(日) 04:08:25
    かかずみん、ごめんねm(__)m
    2000字におさまらなかった(T-T)


  20. 20 : : 2014/09/07(日) 20:14:24


    屋敷についたころには、外はすっかりと暗くなっていた。





    あれから、翠とはほとんど話さず、ついさっき別れたばかりだ。







    『…やべ。泣きそう。』




    そう言ったときの翠の顔が今も脳裏に焼き付いている。




    翠とは長いこと一緒にいるけれどあんな顔、初めて見た。




    翠は、何をどう思ってああ言ったんだろう。





    ………。





    乃愛「ああー!分かんない!」




    山野「ゴホン。」





    っ⁉︎



    私は肩をびくっと震わせて後ろを振り返った。





    山野「おかえりなさいませ。お出掛けのほうはいかがでしたか?」




    そこには、頬をひきつかせて笑う山野の姿があった。





    乃愛「た、ただいま…」






    私がそういった瞬間、山野の顔が一気に強張る。






    山野「お嬢様!何もお怪我はされてませんよね⁉︎何か事件はありませんでしたか⁉︎」





    乃愛「えっ、あ、うん…。」




    もっと怒られるかと思ったら、そんなことなかったから内心びっくりしてる。





    山野「以後、このようなことはやめてくださいね。」




    最後にペコっと頭を下げて山野は歩いていってしまった。






    …なんか、申し訳なかったかも。





    と、少し反省をしつつ、再びあるきだした。










    ガチャン






    結局、このあとどうしようか私は迷った挙句、こうして自室にもどってきてしまった。






    乃愛「はぁ…」



    ため息をつきながらソファーに倒れこむ。





    ……もし翠がほんとに自国に帰っちゃったら?






    そう考えたら急に寂しくなった。







    翠に帰らないでほしい。



    それが、私の本心だった。




    だからーーーーーーー









    コンコン




    っ⁉︎


    いきなりドアがノックされてばっとソファーから飛び起きる。





    翠「…開けて」




    乃愛「えっ⁉︎翠っ⁉︎」





    突然の翠の訪問にびくっと肩を震わせる。





    翠「乃愛、開けて。」





    でも、言わなきゃ。



    私はそう、決心した。




    乃愛「…翠、帰らないで。」






    翠「乃愛?」





    ドアの向こうで翠が驚いてるのが分かる。





    乃愛「さっき、ここにいていいなんて偉そうなこと言っちゃったかど…国へ帰らないで」






    翠になんて言われるかなんてどうでもいい。





    でも、この気持ちだけはちゃんと伝えたい。

    それが私のだした結果だった。







    翠「…乃愛、開けて。」





    翠にそう言われてはっとする。





    乃愛「あっ!ごめん…。」





    そういってドアをあけた瞬間







    ふわっと翠が私を包み込んだ。





    乃愛「翠っ⁉︎」





    翠「ったくお前は、そんなくだらないことで悩むな。」





    そう言って私の頭をクシャっと撫でた。




    乃愛「え…」





    翠「それにお前の執事は俺だけにしか務まらねえだろ?」





    なんて、自慢気に言い出した翠。




    乃愛「…バカ翠。」





    そう言って私は腰に回す手の力を強める。





    翠「なんとでも言え。」





    翠の金色の髪が私の頬をかすめた。




    乃愛「くすぐったいよ。」





    翠「ふっ、悪い悪い。

    でもコレ、食うんだろ?」




    そういった翠の手には苺のマドレーヌがあった。





    乃愛「あったり前でしょ!」





    そう言って、翠の手からマドレーヌを受け取った。



  21. 21 : : 2014/09/08(月) 03:08:35


    乃愛「う、うまく割れるかな?」




    翠「貸せ。俺がやる。」



    マドレーヌを二人で半分こしようと、綺麗に割ろうとしているところだった。




    乃愛「ありがとう。」


    マドレーヌを翠に渡すと、器用に袋のリボンを解いて、等しい大きさに割った。






    翠「俺も、もらっていいの?」



    乃愛「一人で食べるよりも、二人で食べた方が美味しいもん。」




    ニコッと笑って見せる。





    翠「ん。紅茶いれるの忘れてた。」



    そう言って部屋を出ていくと、しばらくして部屋に帰ってきた。



    乃愛「いい香り。ダージリンだ。」





    翠「あたり。」



    コポコポコポ…




    カップに茶をいれてくれた。



    翠「どーぞ。召し上がれ。」




    乃愛「いただきます。」




    一口マドレーヌを頬張ると、ふわっと香りが広がって、ほっぺたが落ちそうだった。





    乃愛「美味しい!!」



    翠「良かったな。」



    紅茶も、温度が丁度よくて、美味しかった。




    乃愛「あれ?翠は、食べないの?」




    翠は、さっきから、マドレーヌも紅茶も口にしていない。






    翠「あぁ。

    食べてるお前を見る方が好き。」





    さらっと言ったその言葉に、顔を赤くする。






    だから、見られてたんだ。








    乃愛「翠も食べてよ。」




    翠「はーい。」



    わたしは、夢中になって食べていたため、途中から翠のことを忘れていた。



    乃愛「翠?」




    ソファには、寝息をたてて寝る翠の姿がある。




    翠の体を揺する。





    乃愛「…服がシワになるよ?」





    綺麗な顔───。


    人間に対して失礼だとは思うけど、本当お人形みたい。



    燕尾服だけでも脱がしてやろうと、手を伸ばす。




    翠「何してるの?」





    手をバシッと掴まれる。






    乃愛「え、あ…」






    別に、悪いことをしようとしたわけじゃない。

    なのに、何て言えばいいのかわからなくなって固まってしまう。







    綺麗なライトブルーの瞳から目がそらせない。







    翠は、体を起こして燕尾服を脱ぐ。




    いつも着ている厚手のソレを脱ぐと、薄手のシャツが翠の体のラインを魅せた。




    翠「どうかした?」






    乃愛「ううん。別に…」



    急いで首を振る。



    ふーん。と言うと、翠はティーセットを下げ、わたしと同じ高さに身をかがめて言う。





    翠「フロ入れ。

    その後また来るよ。」




    乃愛「うん。」






    翠はニコッと笑うと、部屋を出ていってしまった。

  22. 22 : : 2014/09/08(月) 19:39:25





    翌朝。






    …鳥の鳴き声がする。




    目を開けたいけど、眠気とカーテンの隙間から差し出す光が眩しくて目をあけれない。






    …まあいいや。もっかい寝ちゃえ。





    そう思い、再び夢の中へはいろうとした時




    「…い、…きろ。」





    どこからか、そう聞こえた。



    でも、眠気に勝てなかった私は1度それを無視する。






    「…い、起きろ。」





    だけど再びその声は聞こえた。




    「んん…」




    現実と夢の間にいる私には、これが精一杯の返事だった。






    翠「起きろ。」





    ベシっ





    乃愛「ったぁ!」






    翠の声がしたと思ったら突然、頭に激痛が走った。



    そのおかげで一気に眠気が覚める。





    翠「あ、起きた。」





    乃愛「なに呑気なこと言ってんのバカ翠!それに、こんなのぶつけるな!」




    そう言って私はベットに転がる教科書を指差した。





    翠「お前が起きないからじゃん。
    それに角をぶつけなかったことを有難く思え。」




    そう、ドヤ顔でいう翠に腹が立ってきた。



    乃愛「それにまだ6時過ぎだよ⁉︎
    いつもはもっと起きるの遅いじゃん!」








    翠「いや、それじゃあ遅刻するだろ。


    学校。」





    そう言って翠はゴソゴソと私のクローゼットをあさりだした。





    って、は?



    突然の翠の言動にフリーズする私。




    乃愛「学校…行くの?」




    翠はそんな私の質問におー。と軽く返事をして私に制服を差し出した。





    乃愛「嫌だっ‼︎絶対行かない。」




    私は制服を受け取らずに、再びベットの中へもぐり込んだ。





    すると、翠がはぁ。とため息をついたのがわかった。




    翠「お前なー。このままサボってばっかだと留年すっぞ。」




    そう言ってバサっと布団を剥いだ。




    乃愛「いーやーだーっ‼︎学校行きたくないー!」





    翠「アホか。駄々こねんな。」




    そんな私の我が儘に対して、翠は冷静に答える。






    翠「俺も行くから。」




    そう、優しく言って翠は再び制服を差し出した。







    こういう時だけ、そんな言い方ずるいよ…。





    乃愛「……スイーツ…。」




    私は小さな声でそう呟いた。






    翠「はいはい。好きなやつ買ってやるから。」



    翠は子供を子供をあやすような言い方で言った。







    乃愛「…わかった。」




    そう言って私は制服を受け取った。





    翠「ん。それでいい。」




    なんて言う翠は、完全に私をバカにしている。





    私は重たい腰を上げてベットから降りた。



    翠「飯食って準備できたら部屋で待ってろ。迎え行くから。」




    最後にぽんと私の頭に手を置いてから、翠は部屋を出て行った。





    乃愛「はぁ……」




    そして1人になった部屋で、私はため息をついた。



  23. 23 : : 2014/09/09(火) 16:35:22


    学校…行くのいつぶりだっけ。


    ここ一週間くらいだろうか。




    乃愛「もう。翠のばか。」





    着替えと朝食をすませ、翠が来るのをソファに寝て、じっと待つ。


    乃愛「いきたくないよぉー。」





    「まだ言ってんのかよ。」


    耳元で声がする。





    振り返ると、とても近い所に翠の顔がある。


    乃愛「いっ。ひゃぁっ。近寄るなぁっ!!」






    自分でも驚くほどの、変な声に羞恥心を覚える。




    翠「あんだよ。人をナメクジみたいに。」




    翠は、わたしの腕をひいて立たせると、そう言った。





    翠「山野が車だしてくれるって。」






    ───────────────











    一時間目から体育だ…。


    やだな。




    自分の席につく。





    この前の席替え翠とは、席が離れてしまった。
    だから、少し寂しい。




    いつも隣にいるせいか、離れることに慣れていない。




    「翠くーん!!」




    教室のドアの方で黄色い声が聞こえた。






    あ、女の子。





    「今日ね、わたしの家でダンスパーティがあるのよ。よかったらこない?」





    翠の近くまで寄って、軽く手を握る。





    翠「ありがと。でも用事があるから。


    悪い。」



    翠が最後に ニコッと笑って見せると、女子は手を離し、顔を赤くして教室をでていってしまった。






    すごーい。
    女子にモテモテじゃないか。

    顔は、綺麗だし



    性格は…





    わりといい?






    行ってくればよかったのに。ダンスパーティ。




    公務とかも


    なくしてあげたのに。





    ふと、翠の方を見る。


    あれ?いない…





    「おい。何見てんの。」




    机の横に、いるはずのない翠がいる。






    乃愛「す、翠っ。」



    わ、びっくりした。






    翠「お前、俺のこと見てたの?」


    翠がわたしをじっと見て、言う。






    乃愛「別に。違うよ。」





    目をそらして言った。





    顔が熱い…。





    翠「俺のこと目で探してたじゃん。」


    乃愛「探してません。」




    目をあわせないように、口を動かした。




    翠「ふははっ。顔赤っ。」


    乃愛「何が言いたいのよっ。


    ばか翠!!」




    ええ、見てましたとも。見てましたっ。








    翠「妬いてくれないの?」




    翠がいきなり立ち上がって、わたしの手を握る。






    さっきまでのふざけた顔じゃなくて




    いつのまにか真剣な表情で言う。






    乃愛「な、っ。」










    この手で、女の子に触った。



    この長い指で…






    乃愛「っばかっ。





    ほんと


    ばか翠っ。」





    翠の手をばっと離し、逃げる。








    いやだっ。







    なんかやだっ。









    だから




    学校には来たくなかった。










    階段をかけ上がると、屋上についた。






  24. 24 : : 2014/09/10(水) 21:42:26




    ガチャンと屋上のドアを開けると、冷たい風が私を包み込んだ。






    今は10月後半。




    さすがにこの時期の屋上は、風が冷たくて少し肌寒い。






    乃愛「ジャージ着てくればよかったなー。」





    なんて独り言をいいながら、壁にもたれかかるように座った。







    『っばかっ。




    ほんと


    ばか翠っ。』






    ……ほんとは、そんなこと言っちゃダメだって分かってた。







    別に、妬いてたわけじゃない。





    そう、自分に言い聞かせさっき翠に、掴まれた手を握った。







    キーンコーンカーンコーン






    すると、1時間目の始まりをつげるチャイムがなった。





    乃愛「あ…。」




    そろそろ行かなくちゃな…。




    そう思ったけど体が言うことを聞かなかった。





    乃愛「…サボっちゃえ。」





    そう、1人で呟きゆっくりと瞼を閉じようとした時





    ガチャン


    とドアが開く音がした。








    「1時間目から体育とか最悪ー。」




    「ほんと。しかも翠くんもどっか行っちゃし。」






    そう言って入ってきたのは、同じクラスの女子だった。






    乃愛「あっ…。」




    そしてなぜか私は建物の裏へ隠れた。





    「でもさ、翠くんの隣っていつもあの子いるよね。」




    「あー。白亜さんでしょ?」





    すると突然私の名前が出てきてビクッとした。





    「そーそー。
    翠くんもさー、ずっとあの子にベッタリで全然近づけないよねー」




    「うん。あの子の執事だか何だかは知らないけど、あれはねー。」




    そして次に出てきた翠の名前を聞いた瞬間、私は目を見開く。






    ……私はともかく、なんで翠の悪口言われなきゃいけないの?





    そう思った私の体は、いつのまにか動いていた。




    乃愛「あのっ…」




    ガチャン











    翠「見つけた。」





    私が一歩踏み出した瞬間、屋上のドアが開き、息をきらした翠が入ってきた。





    乃愛「…翠」





    翠「お前、急に逃げんなし…。」




    翠はふっと笑って私の隣にいる女の子達をちらっと見る。




    「あっ…、翠くん…。」



    当の女の子達は肩をビクンとさせ、何かを話しだした。





    翠「いや、俺らでてくんで。」




    翠はそう言うと、私の腕を掴んで屋上を出て行った。






    乃愛「ちょっ…待ってよ翠」





    私は立ち止まると、翠の手を振り払った。






    翠「…お前、何さっきからキレてんの?」




    翠はため息まじりにそういった。





    乃愛「…いや、キレてるわけじゃ…」




    翠「じゃあ何?」



    そう言って、翠は私の顔を覗き込んだ。



    そして金髪の髪がふわっと揺れる。








    乃愛「…翠が、女の子達にいろいろ言われてるから……」




    そう言って私は顔をぷいっと横に向けた。






    翠「ふーん。いろいろって?」




    乃愛「それは…いやぁ…」



    翠からの質問に私が困っていると、
    突然ふっと翠が吹き出した。





    翠「まぁ、まわりがなんと言おうと俺はお前の執事だから。」





    そう言って、翠はパチンと私のおでこにデコピンした。




    乃愛「ったぁ!」




    翠「あと、そんくらいのこといちいち気にすんな。

    それが分かったなら、次からちゃんと授業でろよ。」






    それだけ言うと翠は、くるっと方向転換をするとスタスタと廊下を歩き始めた。





    乃愛「あっ、っちょ!待ってよ!」





    私はそう言ってヒリヒリするおでこを押さえながら翠の後を追いかけた。



  25. 25 : : 2014/09/11(木) 18:40:45


    乃愛「あっ…。」








    ドサッ





    翠「お前、何その声。えっろ。」




    階段を降りていると、立ちくらみがした。





    それを翠が後ろから助けてくれる。






    乃愛「えろくないしっ///」





    翠が眉を下げ、呆れたような格好で言った。




    翠「お前、保健室いってこいよ。」



    乃愛「やだ。」




    そつぽを向いて歩きだす。





    クラッ








    また立ちくらみがした。





    翠「おい。だから行こって。」


    わたしの手をひいて歩く。




    乃愛「う…。うん。」






    ─────────────────




    翠「何か懐かしいな。こういうの。」



    乃愛「え。そう?」




    翠がベッドの横に座って、わたしに言う。






    翠「小さい頃は、"一人で寝るの寂しい"って言って、二人で寝たじゃん。」





    乃愛「そうだっけ。」




    翠「忘れんなよ。笑」




    不意打ちで見せてきた笑顔にドキッとした。






    乃愛「それじゃぁ、おいでよ。一緒に寝よう。」



    ベッドの横をポンポンと軽く叩いた。






    翠「やだよ。」








    乃愛「え!!なんで。」




    あ、大きな声だしちゃった。

    わたしのばか。





    翠「俺、興奮しちゃう。」




    乃愛「このヘンタイがっ。」




    翠の言葉に顔が赤くなった気がした。


    わたしは布団を頭までかぶって、隠れる。





    翠「おい。ごめんって。

    泣くな。」






    シンっとした空気がただよう。








    翠「マジかよ。泣くなって。」






    布団をはごうとする翠。






    ぐっ



    何も言わずに布団をはがせないように、握る。





    翠「乃愛。ごめん。」






    翠が珍しく本気にしている。

    いつもバレちゃうのに。



    おもしろい。





    体が震える。




    乃愛「くっ…。ふっ……」



    翠「おい。笑ってるだろ。」




    あ、バレた。








    ばっ



    いきおいよく布団をはがれて、視界が明るくなった。




    翠「騙したな。」


    乃愛「ごめんね。」


    翠の声のトーンが低くなっているのにも関わらず、笑いがとまらない。







    いきなり腰のあたりに重みを感じた。




    乃愛「へ?」




    上を見ると近くに翠の顔がある。







    乃愛「え、ちよ、翠っ。




    どいてっ。」




    気がつくとわたしの上には、翠が馬乗りの状態になっていた。




    ばくばくばくばくばくばく…




    心臓の音が響く。







    すると、翠が口をひらいた。








    翠「お仕置きだよ。







    姫。」

  26. 26 : : 2014/09/11(木) 19:54:23

    なんかエロくなってしまいました\(^o^)/


    ごめんね。かずみん!
  27. 27 : : 2014/09/13(土) 21:31:22





    乃愛「……翠?」






    私がそう問いかけても、翠は何も反応せずにただじっと私の顔を見つめる。





    その翠の顔は、いつものチャラけてる感じじゃなくて真剣そのものだった。







    乃愛「ね、ねぇ…翠なんか、いつもと違うよ?」




    すると翠はやっと口を開き







    翠「お仕置き、だって言ったでしょ?」



    と言って私の髪の毛に指を絡ませた。






    乃愛「だからって…!」




    私は腰を上げて起きようとするが、翠に腕を握られて動けない。




    乃愛「ねぇ、離してっ。」




    そう言って私は体をバタバタさせるが、翠に握られた腕はビクともしない。





    翠「…乃愛が悪いんだからな。」




    翠がそう言った瞬間






    ちゅっ




    と、リップ音をたてて頬のあたりに柔らかい感触がした。






    乃愛「…え?」





    翠「はい、お仕置きしゅーりょー。」



    そう言うと翠は、何事もなかったかのようにパッと私から手を離しベットから降りる。






    乃愛「えっ、ちょっとまってよ!」



    私はわけがわからずそう言って起き上がった。




    すると翠はくるっと振り返って




    翠「続き、したい?」




    と、いつものムカつく顔で言った。







    乃愛「バカっ!」




    私はそう叫んで翠を捕まえようとする。







    ふらっ




    だけど再び立ちくらみをしてふらっとよろける。








    翠「っぶねー。」




    そう言って翠はよろけた私を受け止めてくれた。





    乃愛「あ、ありがとう。」



    私は翠の顔から目をそらして言った。





    翠「ん。どーいたしまして。

    あ、でもまだ寝てろよ。」




    翠は私の腕を引っ張りながらそう言った。





    乃愛「…うん、分かった。」




    私がベットに腰をかけながらそういうと、翠はお大事に。とだけ言って保健室から出て行った。









    乃愛「…バカ翠。」



    私は、1人になった保健室で顔を真っ赤にしてそう呟いた。
  28. 28 : : 2014/09/14(日) 06:14:58

    乃愛「ねぇ、山野。」



    朝の5時を過ぎた頃、山野の部屋まで来た。






    山野「わぁ!?姫様?こんな朝早くからどうしたのですか?」



    ほうきを持った山野は、びっくりしてほうきを落としてしまった。





    乃愛「服の着付けを頼みたくて。」




    少し照れたような顔でわたしは言う。


    うしろのリボン結べないし。コルセットつけて欲しいし。




    山野「お安いご用です!!姫様。」



    山野は、精一杯の笑顔でそう言うと、持っていた掃除用具を側の壁に立てかけた。



    ──────────





    乃愛「あのね。聞いてくれる?」




    昨日の話。昨日は、あのまま山野が車で迎えに来てくれて、一緒に城まで帰った。


    でも問題は、その前だ。





    乃愛「あ、あのね。友達が悩んでる事の話なんだけどぉっ。」


    山野「あれ?姫様って友達いらっしゃいましたっけ。」



    山野の間髪いれない返事に、少しいらっとした。


    まぁ、嘘だけども!!


    乃愛「そのね友達がね、他のね…男の子にね……」



    山野「はいはい。」



    山野は、わたしの髪の毛をよけながら上手く着付ける。




    乃愛「き、…キス!されたんだって…

    頬っぺたに…」




    鏡越しに山野の顔をうかがうと、顔色ひとつ変えずに着付けをすすめる。



    乃愛「と、友達の話っ!友達の!!」


    なんか、わざとらしかったかな?

    ううん。そんなことないよね。






    山野「頬っぺたですか?」



    乃愛「うん。」




    うーん。と山野は、頭をかかえる。






    山野「あ!」




    乃愛「うん!!」



    大きな声をだしてしまった。





    山野「頬へのキスは、親愛を意味したり満足感を得るためにするそうです。

    だからその人は…」




    わたしもその続きを考える。


    答えが一つしか見つからないのだが、これでいいのかな。





    乃愛「…欲求不満…………?」




    山野「あ、はい。それですね。」



    な、なんじゃそりゃぁっ!


    よ、よ、よ…




    乃愛「ばか翠!!」





    山野「あれ?なんで翠が…」



    乃愛「ちょっと思いだしちゃっただけー!!」



    わたしは、とにかく隠し通すのだ。






    山野「あ、もうこんな時間。そろそろ行きます。
    続きの着付けは、翠に頼んでくださいね。」


    乃愛「え!!や、山野!!」





    足早に去っていく山野の後ろ姿を、目で追った。
  29. 29 : : 2014/09/14(日) 11:22:13
    期待です( *´艸`)
    友達いましたっけって笑笑
  30. 30 : : 2014/09/14(日) 20:01:22


    心愛さんへ

    読んでくれてありがとうございますっ(>.<)
    嬉しいです\(^o^)/心愛さんの言葉がもう、元気の源です。

    これからもよろしくお願いします(*^^*)
  31. 31 : : 2014/09/14(日) 23:04:42





    乃愛「うっそ…。」




    私は山野に取り残され、1人になった部屋でそう嘆いた。







    ガチャ





    すると、私が1人で落胆してる中誰かが部屋に入ってきた。







    翠「乃愛?なんか、山野に呼ばれたんだけど。」





    乃愛「えっ!嘘、翠⁉︎」






    そしていきなりの翠の登場に私は戸惑いを隠せなかった。




    乃愛「ちょ、ちょっとまって!」




    そう言って私は、急いで背中のチャックを閉めようとした。







    乃愛「……っ。」





    だけど、体のかたい私は上までチャックを上げることができなかった。







    翠「…何してんの?」




    そして、おまけに翠にこのだらしない格好をみられてしまった。






    乃愛「あっ…いや、山野のにね、コルセットと背中のリボン結んでもらってたんだけど…」




    私がそう言うと翠は納得したかのようにあー。と言った。





    翠「それであのババア俺を呼んだのか。」




    そう言って翠は、私のコルセットをグッと引っ張った。





    乃愛「⁉︎ちょっ、何してんの!」






    私は突然の翠の行動に驚いて、そう叫んだ。




    翠「ん、だってコレまだ途中だし。」





    乃愛「だからって急にやらないでよ!」




    私はそう言うと、翠の頭をベシッと叩いた。






    翠「動くなバカ。それと、前見えてっぞ。」




    翠は顔色一つ変えずにそういった。





    乃愛「ば、バカってなによ!それに見んな変態!」



    一応服着てるけど…。私はそう付け足すと体を手で隠すような真似をした。







    翠「はいはい、見ませんよ。」




    そう言って翠は、再び着付けをし始めた。










    ………………。






    するとなぜか空気が重たくなった。





    私がなにか話題がないかと探していると、さっきの山野のとの会話が思いうかんだ。






    そして、私はあの時から気になってたことを翠に聞いて見た。





    乃愛「あ、あのさ。一つ聞いてもいい?」




    翠「何?」





    翠はリボンを結ぶてを止めずにそういった。






    乃愛「翠って…よ、欲求不満なの?」




    すると、今までリボンを結んでた手がピタリと止まった。






    翠「………はぁ?」




    翠は、今日一番の大声をだすとわざとらしくグッとリボンを引っ張った。






    乃愛「ったぁ!」





    翠「俺がいつ、んなこと言ったんだよ。」






    すると、翠は私が叫んでるのを無視してそう言った。





    乃愛「いやぁ…さっきね、山野と…」





    翠「…っち。あのババアか。」





    翠は私の話しを最後まで聞かずにそう、小さく言った。







    翠「あのババアが言ったことは気にすんな。それと俺は欲求不満なんかじゃない。」





    翠はそうずばっと言い切ると、
    完成。と言って私の背中をぽんとたたいた。






    乃愛「えっ!そうなの⁉︎」




    私は驚きを隠せないかのようにそう言った。





    翠「当たり前だ。それに、この職業がてらそーゆうわけにはいかないしな。」



    そう言うと翠はゴホンとわざとらしく咳払いをした。






    乃愛「そっかー。なんだ、よかった。」




    私はホッと息を鳴らすとストンとソファーに座った。











    翠「俺が欲求不満ねぇ…」




    突然、翠がそう小さく言った。









    ちゅっ




    すると、同時に頬に柔らかい感触がした。





    乃愛「っ⁉︎」





    翠「また何かあった呼べよ。姫。」




    驚きを隠せない私とは対処的に、翠はあのムカつく顔でそう言うと、ガチャンと部屋から出ていってしまった。








    乃愛「……バカ翠!!」




    私はそう叫ぶと、熱くなった頬を押さえた。



  32. 32 : : 2014/09/15(月) 20:41:33


    乃愛「ねぇ、奈緒くん。わたし思うの。


    翠は、女たらしのようで女に慣れてないだけなのよ。」




    バイオリンのレッスン中。音楽教師の奈緒にきく。






    奈緒「はい、姫。続き。

    そんな相談、俺にしないで。」



    乃愛「いやよー。もう、弾けない。」






    フラフラと楽譜代に寄りかかる。




    奈緒「俺も姫の下手な演奏なんかききたくない。」



    真顔でそんな冷たい言葉を吐かれ、イライラする。


    乃愛「なによっ!!もうっ。バイオリンなんて無理よ。わたしが不器用なの知ってるでしょっ!?

    こういうのも翠の方が…」




    そんな風に冷たいことを言う真顔のイケメン教師に言ってやった。





    奈緒「翠の方が上手いよね。」



    乃愛「奈緒くんっ!」





    本当、鬼畜なヤローだ。この人は。







    奈緒「で、何?なんか相談?」



    乃愛「あのさ…」




    こういうことは、男の人にきくべきだ。奈緒くんみたいな、少し大人な大学生の男に…






    乃愛「奈緒くんは、女の子と遊びたいのに遊べないときってどうするの?」


    遠回しに欲求不満の改善方法を聞きたいのだ。
    きっと翠は、あんなこと言って貯めて貯めて貯めまくっているに違いない。

    だから、改善方法をわたしが教えてあげるの。



    なんてイイヤツなのだろう。わたし。(天然)





    奈緒は、予想外の言葉をわたしにかけた。




    奈緒「妄想する。」






    乃愛「へ?」






    目を真ん丸くして奈緒にきく。


    も、妄想?







    奈緒「はい。続き。38小節目から。



    さんはいっ。」




    ポンポンと手を鳴らしながらリズムをとる奈緒。





    軽く話を流された気がする。





    少しモヤモヤした気持ちを胸に、弦を弾いた。





    -*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-

    乃愛ちゃんは、翠の欲求不満をまだひきずっていました笑



  33. 33 : : 2014/09/17(水) 20:44:15




    奈緒「んー。なんか違うなー。」




    そう言って、奈緒は無駄に長い足を組換えた。







    乃愛「違うって何が?」




    私は演奏を一旦中止にして、奈緒に問いかけた。






    奈緒「いや、あんたの演奏のこともあるけどそれじゃなくてねー」




    乃愛「…失礼だからね。」










    ガチャ





    そんな風に私たちがくだらない会話をしてると、ドアが開く音がした。








    翠「乃愛?飯の準備できたけど…………


    あ、居たんすね、奈緒さん。」




    そう言って翠はガチャンとドアを閉めた。






    奈緒「え、何その反応。ひどくない?」




    翠「気のせいっすよ。」




    翠は奈緒の軽いノリを受け流し、どかっと近くにあった椅子に座りこむ。





    ってゆーか、翠って前から奈緒だけテンション変わるんだよね。



    だからこうして翠と奈緒くんのツーショットは中々お目にかかれないものだ。






    翠「ってか、バイオリンのレッスン中なのになに話してたの?」




    そう言って、私の顔をまっすぐ見つめる翠。





    私は不覚にも、そのまっすぐで綺麗な瞳にドキッとした。





    乃愛「ん、あー、いや、そこまで大した話しじゃない…よねー?」




    私は翠の瞳から目をそらしながら、奈緒に助けを求めるような言い方をした。





    だって、






    奈緒「ん?そーそ。乃愛ちゃんの悩み聞いてたくらいだよ。」





    翠「乃愛の悩み?」




    奈緒のその言葉に、翠は直ぐさま反応する。



    奈緒「うん。」








    奈緒「あー、翠くんほんと可哀想だわー。」




    翠「分かってもらって嬉しいです。」



  34. 34 : : 2014/09/17(水) 20:47:11
    ごめんなさい!
    書き途中で投稿してしまいましたっ。


    奈緒に助けを求めるような言い方をした



    から下は読まなかったことにしてください!(つェ⊂)
  35. 35 : : 2014/09/17(水) 21:22:13





    奈緒「んー。なんか違うなー。」




    そう言って、奈緒は無駄に長い足を組換えた。







    乃愛「違うって何が?」




    私は演奏を一旦中止にして、奈緒に問いかけた。






    奈緒「いや、姫の演奏のこともあるけどそれじゃなくてねー」




    乃愛「…それ、失礼だからね。」




    奈緒「ごめんごめん。あ、でね、さっきのことなんだけど。」







    ガチャ





    そんな風に私たちがくだらない会話をしてると、ドアが開く音がした。








    翠「乃愛?飯の準備できたけど…………


    あ、居たんすね、奈緒さん。」




    そう言って翠はガチャンとドアを閉めた。






    奈緒「え、何その反応。ひどくない?」





    翠「…気のせいっすよ。」




    翠は奈緒の軽いノリを受け流し、どかっと近くにあった椅子に座りこむ。





    ってゆーか、翠って前から奈緒だけテンション変わるんだよね。




    だからこうして翠と奈緒くんのツーショットは中々お目にかかれないものだ。






    翠「ってか、バイオリンのレッスン中なのになに話してたの?」




    そう言って、私の顔をまっすぐ見つめる翠。





    私は不覚にも、そのまっすぐで綺麗な瞳にドキッとした。





    乃愛「ん、あー、いや、そこまで大した話しじゃない…よねー?」




    私は翠の瞳から目をそらしながら、奈緒に助けを求めるような言い方をした。






    だって、さっきまでの話なんて翠にきかれちゃいけないことがたくさんあるし…。







    すると奈緒は私の助けに気がついたのか、静かに口を開いた。




    奈緒「ん?そーそ。乃愛ちゃんの悩み聞いてたくらいだよ。」






    翠「乃愛の悩み?」




    奈緒のその言葉に、翠は直ぐさま反応する。





    奈緒「うん。翠が女慣れして…」
    乃愛「うわぁぁぁぁぁぁ!!!!」





    奈緒の突然の発言に私は大声で叫んだ。




    翠「…うるさい。」




    乃愛「だって‼︎」






    私が奈緒のほうをちらっとみると、当の本人は口に手を当ててクスクスと笑ってる。






    乃愛「奈緒のバカっ‼︎」




    奈緒「なんとでも言ってくださーい。」



    そう言うと、奈緒は楽譜を片付け始めた。






    翠「…じゃあ。もうこれ連れてっていいっすか?」




    そう言って、くいっと私のことを指差す翠。




    奈緒「うん。お迎えご苦労様。」









    ……。なんかこの二人私の扱いひどくない?






    私は一人、もやもやとした気持ちのまま、翠と一緒に歩き出す。






    奈緒「あ。」






    すると、奈緒は何か言い忘れたかのように、突然声をだした。





    奈緒「姫。さっきの続きなんだけど、妄想ともうひとつ。






    無理矢理行動にでる。」






    そう言って奈緒はにっと笑うと、じゃあね。と言ってバイオリンを片付け始めた。






    乃愛「…何それ。」




    私は小さくそう呟やいて、ガチャンとドアを閉めた。







    _____________________





    翠「あの人となに話してたの?」





    スタスタと私の前を歩く翠が突然そう聞いてきた。




    乃愛「えっ!あ…その。」






    翠「なに?えろい話?」




    そう言って翠はあのムカつく笑顔を私に見せた。





    乃愛「…バカ翠‼︎」





    私はそう叫ぶと、先を歩く翠を追いかけた。


  36. 36 : : 2014/09/18(木) 21:56:51




    翠「妄想って何?」



    わたしの部屋までつき、テーブルの上に数学のテキストを並べる。

    そんな午後4時。




    乃愛「へ?な、何のことですか?」





    翠「キョドってるよね。顔がブサイク。」




    ソファに座っているわたしの横に腰かけて、肘をついて言う。



    乃愛「もとからブサイクだしっ。」




    わたしは背もたれに、きっちり背中をつけて寝るような体制になった。






    翠「で、妄想って何?」


    顔をぐいっと近づけ、わたしの腕を掴んで言った。


    ま、まだ言うかっ。

    妄想っていっても…





    乃愛「あ、あのっイメージトレーニングっ!

    バイオリンを弾く前にするといいって。」




    これは、我ながら良い嘘だと思…


    翠「それと、妄想は違くない?」




    その、もっともな意見に何も言い返せない。




    数学を勉強する前に、国語の勉強をした方がいいのかもしれない。


    そんなことを考えていると、翠が先に口を開いた。





    翠「妄想なら俺もするけど。」







    翠は、わたしの腕を掴んで背もたれに縫い付ける。


    翠の顔が夕日の光により、いつもに増して綺麗に見える。







    乃愛「は、離してよっ。」



    なんとなく、カッコいい翠を見ていると顔が赤くなったのを感じ、目をそらす。



    掴まれている手首からも熱がうまれる。








    ちゅっ








    優しいリップ音と共に、右頬に熱が触れたのを感じる。






    つむっていた目を明けると、翠の顔がすぐそこにあった。




    金に染められた翠の髪が頬をかすめ、赤いピアスが窓からの光で怪しく揺れる。





    ばくばくばくばくばくばく…



    心臓が激しく鳴り響き、今にも翠に聞こえてしまいそうだ。

    もう聞こえてるのかもしれない。



    翠が口を離すと、甘い吐息が漏れる。






    そのまま、顔を退けるのかと思うと、左頬に熱がうつる。

    翠の唇がまた、優しく触れる。






    乃愛「やめってよ…、」



    翠「はぁ?色気ねーなー。」




    いきなり耳元でする翠の声に、びっくりする。

    いつのまにか、口を離していたらしい。







    翠「もっと構えろよ。



    ココをっ。」





    そう言うと、わたしの腿のあたりに手をそわせ、トントンと叩く。






    乃愛「に、な、なっ。」



    さっきより余計に顔が赤くなったのを感じた。






    翠「俺、妄想は得意だよ。」




    いつもしている白い手袋を取り、ソファの下に投げ捨てる。




    わたしの唇に、白くて細長い指が触れた。







    翠「…可愛い。」




    唇の上を何度も優しく往復する。





    -*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*
    変なところで終わったけど、ごめんねっ!かずみんファイティン!





  37. 37 : : 2014/09/20(土) 22:25:54





    つーっと翠の綺麗な指が唇を通り過ぎ、くいっと私の顎を持ち上げた。






    乃愛「なに、すんのよ…」



    私がそう言っても、翠は何も聞こえなかったかのようにただじっと、私の顔を見つめている。








    翠「顔、赤い。」



    やっと口を開いた翠は、それだけ言うと、ちゅっとリップ音を立てて私の額に口付けた。




    乃愛「っ!」





    私がびっくりきて目を見開くと、突然ふわっと金髪の髪を頬にかすめさせ、私の首筋に顔をうずめた。






    乃愛「す、翠…?」



    私がそう声をあげると、何かがぺろっと私の首筋をつたった。






    乃愛「ひゃっ⁉︎

    ちょっ、す、ストップ!!」



    心臓をばくばくさせながら私は、ぐいっと翠の頭を押し上げた。






    翠「んだよ。折角いいとこまできたのに。」




    翠は、あーあ。と言いながら自分の頭をクシャっとした。






    乃愛「い、いいとこって!

    変態!バカ翠!!」


    翠の背中をべしっと叩いて言う。






    翠「はいはい。どーもすいませんね。」



    そう言って翠はどかっと、ソファーに座った。






    すると、ソファーの下で何かがキラッと光ったのが見えた。






    ……なんだろ?



    私はしゃがみ込んで、落ちてたものを拾い上げる。





    乃愛「あっ。」



    私が拾い上げたのは、いつも翠がつけている赤いピアスだった。






    …いつのまに落ちたんだろ?




    そう思いながら、私はピアスを手のひらにのせ、翠につきだした。






    乃愛「これ、翠のじゃない?」




    翠「んー?」





    私の問いに、翠はゆっくりと振り返った。




    だけど次の瞬間、翠の目がカッ見開いた。







    翠「おいっ‼︎お前それ返せっ!」



    翠はばっと私の手からピアスをとった。





    乃愛「ーっ‼︎」



    私はいつもとは違う翠の表情にビクッとしながら手を引っ込めた。





    ______あんな翠の顔、初めて見たかも…。






    すると私の心境に気づいたのか、翠ははっとなり



    翠「…悪い。」


    と、いつもと声で言った。





    乃愛「…ううん、大丈夫。」



    私はそれだけ言うと、翠から視線をそらした。







    ………………………………。




    そして、私たち2人の間に重たい空気が流れる。




    乃愛「あ、えと…。」



    空気をなおすために私がそなんとなく口にしたら、突然翠が立ち上がった。




    翠「俺、ちょっと他のことしてくるわ。なんかあったら呼んで。」




    それだけ言うと、翠はまだ開いてないテキストを片付け始めた。






    乃愛「あ、うん。わかった…。」



    私も私で折角もってきたテキストを机に置きにいった。









    ガチャン






    私がテキストを置いてる間に翠は、何も言わずに部屋から出て行った。







    乃愛「…バカ翠。」



    私はそう呟いて立ち上がると、夕日の指す窓のカーテンをしめだした。


  38. 38 : : 2014/09/21(日) 05:20:01




    "何かあったら呼んで"



    翠のその言葉が頭の中をぐるぐると回る。




    何かって言われても…


    乃愛「何もない。」



    そう呟きながら、夕食を済ませたわたしは、翠の部屋へ向かう。



    別に何もないんだけど。










    翠は、昔からあのピアスのことになると敏感だ。


    あの怪しく揺れる赤い三角形の。







    翠は、いつも自分のことを話そうとしないの。

    だから何を聞いても無駄。







    コンコンコンっ







    軽くドアをノックする。




    乃愛「翠?わたしだけど。」






    そう告げると、すぐに返事がかえってきた。


    翠「今、忙しい。」






    翠は、なんとなくキツイ口調でそう言う。







    乃愛「何かあったら呼んでって言ったじゃん。」





    ドアに額をつけて寄りかかり、大きな声で言った。





    翠「今は無理。」




    ぼそぼそと小さい声で言う翠にイライラする。


    なによ。声が小さいのよ。






    バンッ



    乃愛「ばか翠っ。」






    勢いよくドアの扉をあけ、翠の部屋に侵入する。

    バンッと大きな音に自分でもびっくりした。








    翠「忙しいって言ったじゃん。



    俺。」







    そこには、暗い部屋で一人、ベットに堂々と横たわる翠がいた。


    さっき忙しいって言ったのに





    乃愛「なんで…」






    近くまでより、上から翠を見下ろす。





    乃愛「…なんで嘘つくの!!」




    疑問文というより叫んでいる感じになってしまう。









    翠「忙しい。寝るのに。」







    枕に顔を埋めて、喋っているわたしの顔を見ようともしない。




    乃愛「ねぇっ!!」




    翠の肩を軽く押してそう言うと、ハラリと肩にかかっていたシーツがズレ落ちる。



    いつも堅苦しい格好で身を固める翠の綺麗な肌が見えた。

    金色の髪が月明かりに照らされて、キラキラとひかるのと同時に、あのピアスも怪しく揺れる。





    翠「俺、裸。」





    顔を埋めたまま手を上にあげ、ヒラヒラとさせる。




    乃愛「ばか。」






    その翠の手をグッと掴み、強く握る。







    翠が顔を上げたかと思うと、わたしと目があった。


    翠の綺麗な瞳がわたしを見つめあげ、くらくらする。
    いつも翠と目が合うと、吸い込まれそうになってしまうのだ。










    翠「…キスしてもいい?」








    突然の翠の言葉に思考が固まり、何も言えない。






    乃愛「…っ!!」






    そっとわたしの頬に両手を添え、優しく包み込む。


    翠は、ベットから半分起き上がると、顔を近づけて…








    何もできなくてグッと目をつむり、時を待つ。




    唇がつくまでの時間が長く感じる。














    翠「なんで…」





    翠の発した言葉にドキッとし、目を開き、体が跳ねる。





    翠「お前が来たんだよ…。


    なんでメイドじゃないんだよ。」





    わたしの頬から手を離して、背中を向けながら言う。




    翠「お前なんかに…


    しねーよ。ばか。」






    寂しそうに口調が変わる。






    気がつくと、わたしのほっとかれた唇が物を言っていた。





    乃愛「翠は、昔から言うじゃん。

    何かあったら呼んでって。」




    うん。だから来たの。




    何もないけど



    それだけが合言葉







    そう言われたら








    乃愛「わたしも翠のとこに来ちゃうの。」





    そう言って、優しく翠の頭を撫でた。

  39. 39 : : 2014/09/22(月) 21:44:33




    私の手が、ふわっと翠の髪に触れる。






    翠「俺のとこに来たってなんもねーよ。」



    ははっと笑いながらそう言う翠は、いつもの翠とはどこか違った。







    乃愛「私が…会いたかったの。」




    そう言って私は翠の頭から手を離し、ゆっくりと口を開いた。








    乃愛「あ、あのね…私…」

    翠「…なあ、1人にさせてくれ。」




    私の言葉を遮るように、突然翠がそう言った。




    翠に話を遮られた私はイラっとしながら、




    乃愛「…嫌だ。」


    と、小さく言った。






    翠「頼むから。」






    乃愛「やだ。」






    翠「乃愛。」






    乃愛「行かない。」






    そんな風に私は翠の言葉一つ一つに反論した。







    ドンッ




    すると、とうとうしびれを切らした翠が壁を殴りつけた。






    翠「出てけっつってるだろッ‼︎」




    今までに聞いたこと無いくらいの大声で叫ぶ翠に、ビクッとしながら私はギュっと自分の手に力を入れた。





    乃愛「嫌だっ‼︎」



    そう大声で言い返した私の目には涙が溜まっていた。





    乃愛「やだ…嫌だからね。」




    私はそう言うと、ぎゅっと翠の頭を抱きしめた。







    翠「…なんで、なんでだよ。」




    私の腕の中で翠はそう呟いた。






    翠「お前の自分の意思を曲げないとこ、すげぇムカつく。」



    それだけ言うと、翠はギュっと私の腰に手を回した。






    乃愛「…私だって。……翠はバカだし変態だし、公務サボるし、不良だし意地悪だけど…でも、」




    私は翠に負けじと言い返すと、再びすっと息を吸い込んだ。











    乃愛「でもね。好きなの。

    翠の事が、大好きなの。」





    私がそう言い終えると、つーっと涙が私の頬をつたった。









    翠「……お前バカだわ。
    ほんと、バカ。」




    私の腕に顔をうずめながら、翠はそう言って小さく笑う。















    翠「俺、勘違いしちゃうよ?」




    すると突然、翠がさっきとは違う口調でそう言った。






    びっくりした私がはっと翠のほうを見ると、いつの間にか顔をあげて、ムカつく顔で笑う翠がいた。





    乃愛「……さいってー‼︎」



    私はそう言うと、ばしっと翠の頭を叩いた。






    乃愛「折角私が慰めてあげたのに!そ、それに、好きって恋愛の好きなんかじゃないしっ‼︎」





    翠「ははっ。悪い。


    ……でも、もうちょっとこのままでいさせて…。」




    そう言うと、翠はまた私の腕に顔をうずめた。






    乃愛「…うん。」




    私はそう言うと、ギュっと翠の頭に回す腕の力を強めた。










    翠「…乃愛。」




    そう、私の腕の中で翠が小さく呟いた。










    翠「…俺の昔の話、聞いてくれる?」






    翠の震えるその声に、私は力強く頷いた。








    *************

    変なとこで止めちゃってごめんね(;´Д`)みおっち!

  40. 40 : : 2014/09/23(火) 03:06:23



    東洋の貴族


    アルステナという大きな国にそんな異名を持つ貴族たちが居ました。



    明るくて



    暖かくて



    優しい国






    そんなの誰もが知っていたことだし、僕も思っていたこと。











    でも、実際は違う。









    誰も触れられない黒






    誰も触れようとしない黒








    世間の知っている表の白






    それは、君も知っているだろう?










    翠「皆の衆。」













    君はどこまで知らないの?










    まぁ、あんまりエグい所とかは上手くさらって






    黒は、魅せすぎないように










    翠「俺が、当主だ。」









    大きな城のてっぺんで、大勢の民衆に言った俺が浮かぶ。












    そんな世間知らずで、最高に黒い六歳の王様のことを












    少し君にも話そうかな






    -*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*

    短いからもう一個下にかくね♪(*^^*)

    翠の過去編です!

  41. 41 : : 2014/09/23(火) 21:14:59


    翠「ん。わかる?」


    乃愛「へ?な、

    わからん。」






    翠の話を聞いていた。



    でも、全くわからない。





    翠「だから。

    父さんが女好きでイライラしたから、乃愛のとこに来たの。」





    ん?それってすごく



    乃愛「省きすぎ。」







    翠「そんなことない。」





    翠は、ベットから起き上がり、乱れた髪の毛を整えながら言う。






    翠「少々、頭の働きが悪い姫に一番わかりやすいように伝えただけ。」






    失礼な。そんくらいわかりますぅっ。


    って、わからなかったんだけど。








    翠「んー。」




    そう言いながら、グッと伸びをする翠。






    あれ?



    この人、裸っていってたよね?さっき。



    バッと目をそらし、なんて言えばいいのか考えていると






    翠「下、ちゃんとはいてるし。」



    がら空きのわたしの頭に、ゴツンっと軽くげんこつをもらった。








    乃愛「いったぁっ。」



    すかさず、翠の脇腹を殴ろうとすると、翠が上に何も着ていない事を思いだして、手を引っ込める。



    セクハラになる。







    翠「あんだよ。さわんねーのかよ。」





    翠は、グイッとわたしの手をひいて、自分の体に這わせる。

    いつも見れない男らしい体にドキドキする。





    体、固っ…じゃなくてっ







    乃愛「いゃぁっ。」




    バシッと手を離して、ドアの方へ向かう。




    わ、わ、わ、わ、わ、わ…






    自分の顔が赤くなっているのがわかる。

    恥ずかしい。




    今すぐにでも、部屋からでたくてドアノブに手をかける。









    翠「乃愛。







    ピアスのこと聞かないの?」







    翠に呼び止められて、後ろを向く。






    乃愛「教えてくれるの?」



    目を細め、ブサイクな顔で翠を睨みながら言う。







    翠「先代の。」




    わたしの顔に、軽く吹きながら喋る。





    乃愛「え?せんだい?」





    首をかしげ、精一杯頭で考える。





    すると、翠の口から驚愕する言葉が飛び出た。







    翠「先代のお墓から盗ってきた。」






    乃愛「はぁ?」





    お、おじいさまのお墓から…とってきただと?


    なんたる奇想天外な出来事だろう。









    乃愛「…」




    翠ってこんなにバカっぽかったっけ。


    少し唖然として息を飲む。








    翠「俺、じいちゃん大好き。」



    ニコッと笑ってわたしを見る。

    青色の瞳が細まって、キラキラと輝く。






    そんな可愛い笑顔を見せられたら何も言えないじゃないか。











    翠「乃愛も大好き。」





    翠は、わたしの肩の上に腕を置いて、顔を近づける。

    なんの裏もなさそうな笑顔で





    そんなこと言わないで…



    赤くなった顔を隠すため、うつむく。








    翠「っあ…わり。」



    翠は、わたしの肩に、おいていた腕をどかして後ろで組む。





    予想外の反応に翠の顔を見る。








    また、いつものように「照れてる」とか言ってバカにすると思ったのに。







    乃愛「…え?」






    翠の顔は、少し赤みをおびていて、今まで見たことのないような顔をしていた。


    じっと その様子を見つめていると、手のひらで顔をおおい、わたしと目をあわせないように 開いている窓から外を見る。









    外は、すっかり暗くなっていて








    まるで翠のようだった。



    黒い空のように、何か抱えているものがあってそれを見せない星のような明るさ。



    翠は、いつになったら全てを話してくれるの?










    でも



    翠を待ってるから。





    待つことは、小さい頃から慣れてるのよ。



    翠を待つことくらいお安いご用。








    ただ




    翠のことを




    翠と時間を送りながら






    ずっと








    待ってるから。














    乃愛「ねぇ。翠。」







    翠「なに?」




















    乃愛「もうすぐ、舞踏会だね。」





    -*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*


    ごめんなさい。


    また、翠の過去をためちゃいました。





    これからもミステリアスな翠を、とくと御覧あれ。です(^o^)
  42. 42 : : 2014/09/25(木) 22:58:34




    乃愛「今度の舞踏会ってどこのやつだっけー?」



    私は隣を歩く翠に向かってそう聞いた。






    翠「どっかの親戚の何とかさんの誕生日パーティーかなんか。」




    少し…いや、かなり適当な返事をして翠はスタスタと足早に歩きだした。






    乃愛「なにそれ…って、ちょっと待ってよ!」



    そう言って私は、翠の後を追いかけた。







    __________________________







    ドンっ




    乃愛「ったぁ!」





    今までぼけーっと歩いてた私は、急に立ち止まった翠の背中に突撃した。






    翠「痛いのはこっちだ。」



    そう言うと、翠はガチャとドアを開けた。





    乃愛「え?ここ?」




    私はそう言って翠に連れて来られた部屋ーーー衣装室に入った。







    翠「だって舞踏会の服決めなきゃいけないだろ。」




    部屋に入るなり翠は、近くにあったドレスをとって突き出してきた。







    乃愛「まあそうだけど……ってかわいいっ!」




    私はドレスを見るなりそう叫び、急いで他のドレスに向かって走り出した。






    乃愛「ドレス着るのなんて久しぶりー!
    ねぇっ!翠もそんなとこ突っ立てないで選んでよ‼︎」




    私はそう言って翠の手を引っ張った。












    翠「いや、俺脱がす専門だから。」





    そう言った翠は突然、私の腰のリボンに手を掛けた。







    乃愛「えっ、ちょっ…やめてって!」




    そう言って、私は翠から離れようとする。


    だけど翠に腕をガッチリ掴まれてるから離れられない。








    翠「暴れないでください。姫。」




    翠は私が持っていたドレスを取ると、シュルっとリボンをほどき始めた。





    乃愛「バカっ‼︎…離れてって!」



    私は熱くなっていく顔を隠すようにそっぽを向きながら翠のことを手で押し返す。






    翠「何、照れてんの?

    かーわい。」



    私がいくら押してもビクともしない翠は、余裕な顔をしてそう言った。






    乃愛「照れてないしっ!」









    翠「…じゃあ顔みせてよ。」




    翠はそう言うと、私の髪の毛を指に絡み付けた。




    そして私が不覚にも、前を向くとそこには翠の綺麗な瞳があった。








    翠「キス、できそう。」





    そう、小さく呟いた翠の顔がだんだんと近づいてくるのが分かった。









    乃愛「す、翠やめ……んんっ!」




    私がそういいかけた瞬間、なぜか翠が私の口を手で押さえつけた。







    乃愛「なにすんのっ…」

    翠「しっ。」



    そう言って翠は再び私の口を押さえつけた。







    すると、廊下のほうから何か声がするのが聞こえた。





    山野「姫様ー?どこにいるんですかー?」








    乃愛「や、山野っ‼︎」



    私は廊下から聞こえる山野の声に、ビクっと肩を揺らした。







    翠「行かなくていいの?」



    翠にそう言われた私ははっとなり、急いでドアを開けた。







    乃愛「山野っ!」



    私は廊下をうろつく山野のに向かって力一杯叫んだ。






    山野「あっ、姫様そんなとこに居たんですね。」





    乃愛「あ、うん。まあね。」




    すると私の姿を見つけた山野が小走りでこっちに向かってきた。








    山野「あれ…姫様、お背中のリボンは…。」



    山野は私を見るなりいきなりそう言った。






    乃愛「あっ、えと……く、クローゼットにぶつけてほどけちゃったの!」




    私は精一杯平常心を保ちながら、山野にそういった。




    うん。我ながらにいい誤魔化し方だ。





    なんて自分にいいかせて、山野から目線をそらした。






    山野「…そうですか。

    あっ、それより姫様。」



    若干私を疑うような口ぶりで山野はそう言うと、一旦間を開けた。



    私は何かと思い、じっと山野の顔をみた。













    山野「祐弥様が、姫様をお待ちです。」



    そう、山野が言った。



    ************

    みおっち、また変なとこできっちゃっでごめんね(つェ⊂)


  43. 43 : : 2014/09/27(土) 15:00:44



    山野「では、失礼しますね。」



    そう言って、山野は足早にこの場を去っていった。






    翠「あー。聞いちゃった~。」





    わたしの後ろからヒョコッと出てきた随所は、金色の髪の毛を揺らしてそう言う。






    乃愛「何よ。」




    翠のふざけた言葉にイラッとしたのでムッとした顔で言った。









    翠「なんで俺に脱がされたって言わなかったの?」





    翠は、わたしの耳元まで顔をよせてそう言う。




    乃愛「っなっ…」






    翠「バレたらヤバイことでもあるの?」







    フワッとかかる吐息が首筋をかすめ、くすぐったい。





    乃愛「…っあ、別に…」




    翠がドンドンこちらに迫ってくる。


    少しずつ後ろに身をひくも、壁まで追いやられ、逃げ場がない。



    翠がそっと壁に手をつく。











    フッ





    耳元に生暖かい風が吹いた。






    乃愛「ひゃあっ。」






    どうやら翠がわたしの耳に息を吹きかけたらしい。



    乃愛「…な、なにすんのっ!




    ばか翠っ。」







    翠の肩をドンドンと叩き、退かそうとする。







    翠「んー。ノリ?」





    そう言って顔を離し、わたしの腰に軽く手をあてて、ワンピースにリボンを通す。





    乃愛「…祐の前ではそういうことしないでね。」





    翠「ゆう?」





    そう首をかしげて聞く。





    乃愛「祐弥。

           ・・・
    覚えてないの?いとこ。」





    そう言えば、三年前くらいに会ってから、ここ最近顔を見ていないような気もする。







    乃愛「客室にいると思うけど。

    はやく行かないと。」






    翠がわたしのリボンを結び終わったのを確認すると、廊下を歩き出す。







    翠「覚えてるよ。」





    翠が後ろからそう言う。







    乃愛「ほんと?

    よかった。」




    ニコッと笑って後ろを見ると、真顔でそこに立っている翠がいる。








    翠「でも、あんま会いたくないよ。」






    ゆっくりとわたしに近づいて、わたしの手を握る。




    いつもと違う真剣な表情の翠にドキッとした。





    乃愛「なんで?」









  44. 44 : : 2014/09/27(土) 15:02:42

    ごめんね。かずみん!間違えて変なとこで投稿しちゃった(;o;)

    書きにくいよね。ごめんねっ!!
  45. 45 : : 2014/09/29(月) 22:23:31






    シンっと、辺りが静まる。





    翠「だって、あの人お前と似てるから。」




    静かな空間で、翠がそう言った。








    乃愛「似てるって?顔が?」



    私は翠の言葉が理解できず、首を傾げた。






    翠「そんなんじゃねーよ。」



    それだけ言うと、翠は何もなかったかのようにまたスタスタと歩き出した。




    そんなツンっとした翠の態度に私はむっとしながら



    乃愛「なにそれ。」



    と言って翠の後を追いかけた。










    ___________________________






    乃愛「うわー…緊張するー!」



    そう言ってドアの前をうろうろすること約3分。






    翠「今更なに言ってんだよ。いいから早くはいれ。」




    壁によりかかりながら翠が飽きれた顔で言った。






    早くはいれっていわれても、会うのすっごく久しぶりなんだよ!



    私は心の中でそう叫び、再びドアの前をうろうろし始めた。







    翠「ったく。」



    翠はそう呟くと、ガチャとドアノブを握った。






    乃愛「ちょっ!待ってよ!」



    私がそう叫んだときにはすでに時遅し。



    翠はすでにドアを開けていた。










    祐弥「…乃愛?」




    翠が開けたドアの向こうから懐かしい声が聞こえてきた。






    乃愛「う、うん!」



    私はぎこちない返事をすると、ゆっくりと部屋に足を踏み入れた。






    祐弥「乃愛っ!久しぶり!」



    すると祐は私の姿をみるなり飛びついてきた。






    乃愛「ちょっ、祐!苦しいよ!」



    そう言うと私は祐の腕の中でバタバタともがきはじめた。





    祐弥「っと。悪ぃ。久々だったからついな。」



    祐はそう言ってもう一度ソファーに座った。







    乃愛「んーん。

    で?今回はどこ行ってたの?」






    祐弥「今回はずっとアメリカにいたよ。」




    私の質問に、祐は紅茶をすすりながら答えた。





    乃愛「えっ!3年もアメリカにいたの⁉︎」




    祐弥「うんー。まあ大学はあっちのとこの受けるつもりだし?」



    そう言うと、祐は自分の隣のソファーをぽんぽんと叩いた。





    そこに座れってこと?



    私は祐の支持に従い、すとんとソファーに座った。





    乃愛「そっかー。祐は今年受験だもんね?」





    祐弥「うん。んで今回はちょっと気晴らしに来たってわけ。



    …あ、そーいえば君も久しぶりだね。翠くん。」




    祐は視線を翠に移し変えながら言った。








    翠「そうですね。祐弥さん。」



    祐の言葉に翠はにこりとも笑わずそう言った。





    祐弥「そんな硬くならないでよ。小学生の時からの仲でしょ?」



    そう言った祐の顔は笑っているものの、目が笑っていないような気がした。









    うん。なんてゆーかこの感じ…




    空気重っ。











    乃愛「じ、じゃあ私、ちょっと部屋にもどるね。」




    とうとうこの空気に耐えられなくなった私は特に用があるわけでもないのに席をたった。






    翠「じゃあ俺も。」


    翠もそう言って、私の後をついて来た。







    ガチャと私がドアノブを握った瞬間、
    乃愛!と祐が私を呼び止めた。




    祐弥「後で話あるから。」




    それだけ言うと祐はニコッと笑っててをヒラヒラさせた。











    ________________________





    翠「…なぁ。」




    私の目の前を歩いていた翠が突然くるっと振り返った。






    乃愛「ん?」




    そんな翠の言葉に私は首を傾げた。






    翠「…あの人のこと部屋に入れちゃダメな。」



    翠は小さくそう言った。





    乃愛「…え?」





    私は翠の言葉が理解できず、キョトンとする。






    翠「…なんでもねーよ。ばーか。」






    すると翠はバシッと私のおでこにデコピンをした。






    乃愛「たぁっ!なにすんのよ!」



    私がおでこを押さえながら顔を上げると翠はいつの間にか歩き出してた。










    乃愛「…今日の翠、なんか変だよ。」




    私は1人でそう呟くと、翠の後を追いかけた。
  46. 46 : : 2014/10/05(日) 21:23:21



    乃愛「…っな、ちょ、近いって!!」




    翠「ん?何が?」







    そう言って翠は、わたしの方に顔を寄せる。






    夕食の最中。

    長いテーブルの端と端に祐と座って、優雅に食事。


    と言いたいところだけど…





    乃愛「翠っ。近い。」



    翠は、わたしの座っている椅子にピタッとくっついて、食事の様子を眺める。







    翠「口んとこついてる。」




    そう言って目を閉じ、わたしの頬に口を近づける。



    乃愛「なぁっ…!」




    そう叫びながら手で顔を隠すと翠の顔が、すぐそこでピタッと止まる。








    祐弥「ひゅーひゅー。いちゃこらすんなよ。

    お・ふ・た・り・さ・ん。」




    祐弥がニヤリとした笑みを浮かべて、ちゃかすような言葉をわたしに言う。






    これが、なんというか大人の余裕というやつか。

    翠は、今までに見たことのないような、子供っぽいムッとした表情で後ろにさがった。







    翠「失礼。」


    そういうことすんなって言ったのに。







    祐は、すぐにわたし達のことを、からかうから。




    ────────────────────








    コンコンコン




    ドアのノックする音がきこえた。





    もう入浴を済ませた今、ベットにねっころがって本を読んでいた。




    「俺だよ。あけてくれる?」







    ドアごしにきこえてくるその声はまぎれもなく




    乃愛「祐?あけていいよ?」







    ガチャ




    わたしがそう言うと、ドアがガチャっとあいて祐が顔をだした。




    乃愛「どうしたの?何かあった?」



    読みかけの本にしおりをはさみ、枕の横におく。







    祐「んー。

    俺、話があるって言ったじゃん。」





    あ。そういえば、そんなことも行っていたような。




    祐は、ギシッとソファに腰かけるとわたしを じっと見つめた。




    乃愛「…?」





    そっとわたしの手を握って、真剣な表情をする。





    わたしと少ししか年は変わらないのに、祐がすごく大人っぽく見えた。







    乃愛「…っえっと…」




    祐「乃愛。」





    いつもより少し低い声で名前を呼ばれて体が跳ねる。






    え、え、…なんかっ。



    うん。


    緊張するな。この空気。







    シャツの下に見える、祐の綺麗な白い肌がすごく色っぽい。





    自然とベットの上に正座になって下を向いていた。

    祐の黄金色の瞳がキラッと怪しく光って、目をあわせられない。





    祐は、そっとわたしの背中の後ろあたりに手をついて、下から除きこむように顔を近づける。







    祐「目、閉じてよ。」










    そう祐が言った瞬間だった。





    コンコンコン




    ドアのノック音が聞こえて、ドキッとする。







    「乃愛。あけていい?」






    この声は、翠だ。
  47. 47 : : 2014/10/08(水) 21:41:10




    ドアの向こうから翠の声がする。






    乃愛「すっ……!」



    私が声を出そうとしたら裕が私の口を手でおさえた。








    翠「…乃愛?」





    再び翠の声が聞こえた。






    私ははっと裕のほうに顔を向けると裕は唇に人差し指をあててゆっくりと私の口から手を離した。







    乃愛「っはぁ…!な、なにするのよ!」






    裕「しっ。」





    裕はそう言うと少し意地悪っぽく笑った。








    翠「乃愛?いるの?」



    コンコンっとドアをノックしながら翠が言った。







    え、どうしよ…。



    私は裕のほうへ助けを求めるような感じで言った。




    乃愛「ど、どうしたらいい…?」






    そんな私の言葉に裕は冷静な顔つきで






    裕弥「よし。じゃあこっちきて。」




    と言ってベットの上に乗ってきた。







    乃愛「えっ、ちょっ、何?!」




    突然の裕の行動に私は思わず後ずさる。






    でも裕はそんな私の行動を無視してゴソゴソと毛布の中へ潜り込んだ。




    乃愛「なにしてんのよ!」







    翠「…入るよ。」





    裕が毛布の中に入ったのと同時にガチャっとドアが開く音がした。





    乃愛「っ⁉︎」












    翠「あ、乃愛…?














    寝てるの?」











    翠が部屋に入る直前に、裕は私の腕をぐっと引っ張って毛布の中に入れた。










    ぎゅっ…





    すると突然私の腰に裕の手がまわってきた。





    っ?!



    私はいきなりの裕の行動に肩をビクつかせた。





    自分の顔がどんどんあつくなってくのがわかる。





    ばくばくばく…




    いつもにまして大きな音を立てる心臓に気をつけながら私はただじっとこの時が過ぎ去るのを待った。











    翠「…ったく。」





    翠は私が寝てるのだと思ったらしくそれだけ言うと部屋からでていった。











    乃愛「っぷはぁっ!び、びっくりしたじゃん!」




    私は息をきらしながら裕に向かって言った。






    裕弥「悪い悪い。」




    ははっと笑いながら裕はベットから降りて近くのソファーに座った。







    裕弥「あのままだったら俺、乃愛のこと襲ってたかも。」




    裕はニッと意地悪っぽく笑うと私の頬に手を添えた。






    乃愛「じょ、冗談言わないでよ!!」




    私はぐっと自分の拳に力を入れながらそう言った。








    裕弥「うん。これは冗談。

    でも今から言うのは冗談じゃないよ。」




    裕は私の頬に手を添えたまま真面目な顔つきでそう言った。







    そしてしばらく間があくと、すっと裕が息を吸い込んだのが分かった。










    裕弥「乃愛、一緒にアメリカに行こ?」








    乃愛「…え」






    私は裕が言った言葉に対して驚きを隠せなかった。






    裕弥「ここの国からでて、向こうの大学受けようよ。」









    言葉が出なかった。




    喉の奥が詰まったような感じになって言葉がうまくでてこない。








    どうしよう。



    あんなに真剣な裕の表情なんて滅多に見ない。


    いや、もしかしたら初めてかもしれない。






    乃愛「あ、えっと…」




    やっとでてきた言葉は裕の誘いに対する答えじゃなくて単なる迷いの言葉だった。




    答えなくちゃいけないのにそれをうまく言葉に表せない。








    すると裕は私の心情を読み取ったのか、ゆっくりと手を頬から離すと





    裕弥「返事は今じゃなくていいよ。」




    と、いつもの優しい笑みを浮かべて言った。







    乃愛「うん…ごめん。」




    私のその言葉に裕は返事の代わりに私の頭をクシャっと撫でて部屋からでていった。








    シンっと部屋がいっきに静まった。







    乃愛「裕の考えてること、わかんないよ…」





    そんな部屋の中で私は裕がでていったドアに向かって小さく呟いた。

  48. 48 : : 2014/10/10(金) 05:50:55



    ─一緒にアメリカに行こう─





    祐の言葉が脳裏をよぎる。



    ・・・・
    アメリカだなんて。





    なんでわたしを連れていこうとするのだろう。






    ついさっき祐が出ていったこの部屋を見わたす。


    頬に手をそえられたときは、ちょっとドキドキしたな。





    ガチャ




    そんなことを思いながら、部屋の扉をあける。








    「…いたっ。って起きてんのかよ。」





    目の前にたちはだかる黒い壁に鼻をぶつけた。

    その声をたどってみると







    乃愛「翠っ!!」





    目の前には、目を細めてこちらを見る翠の顔がある。



    あ、久しぶりに私服を見た。




    翠は、灰色のスウェット生地のズボンとと真っ黒いパーカーを着ている。


    私服っていうかパジャマだけど。







    乃愛「びっくりしたよ。気を付けてよねっ。」





    翠の体に触れたくなって、薄手のパーカーごしに腰へ軽くパンチをする。



    翠「…。」



    あれ?




    なんで何も言わないん…






    翠「今、祐がこっからでてくるの見えたんだけど。」







    え?



    き、聞こえてないよね?





    アメリカの話は…









    乃愛「別に、ただ部屋を見にきただけだよ。」





    翠から目をはなして足元をみる。


    ちょっとわざとらしかったかもしれない。







    翠「嘘。」




    そう言って、ガチャリと閉まるドアに手をそえると壁まで一気においやられた。


    顔が近くなってドキドキする。





    翠「何してたの?ベットの中で。」







    翠は真剣な表情でわたしに聞く。





    乃愛「へ、変な言い方しないでよっ。」





    勢いよく翠の体を突き飛ばすと、反動でわたしがドアに体をぶつけてしまった。



    いたっ。







    翠「ごめん。」





    翠は、わたしの肩を勢いよくつかみ寄せると、わたしをぎゅっと抱き締める。






    びっくりした。




    なぜかわからないけど頬に涙がつたう。







    翠「お願い…泣かないで。」



    わたしの髪の毛を くしゃっと掴み、首もとまで顔を近づける。





    翠のあたたかい体温がわたしにつたわっていくのがわかる。

  49. 49 : : 2014/10/17(金) 17:53:54




    翠「乃愛。泣かないで。」



    そう言って翠は親指で私の涙をぬぐった。






    私はぎゅっと閉じていた目を開けるとゆっくりと翠の腰に手を回した。







    乃愛「…ねぇ、翠。」




    そして、何かを決心するように口を開いた。









    乃愛「私、アメリカに行くかもしれない。」






    私はそう言うとぎゅっと翠の腰に回す手の力を強めた。







    翠「は…?」





    私はゆっくりと顔を上げるとそこには翠の驚いた顔があった。




    様子を見るからに、さっきの会話は聞かれていなかったようだ。


    私はほっと息を落とすと再び口を開いた。





    乃愛「祐にね、一緒に向こうの大学受けよって言われたの。」





    翠「…だからって。」




    翠のその言葉は何か言いたげだったけど私はあえてそれを打ち切り、話を続けた。




    乃愛「私思ったの。
    お父さんもお母さんもいない中、これ以上この白亜財閥の管理を他の人に任せっぱなしじゃいけないって。」






    私はここでいったん区切りをつけると、そっと翠の頬に手を添えた。





    そして、すっと息を吸い込む。






    乃愛「それにね、

    私が早く自立して、翠に自由になってもらいたいの。」




    私はそう言い終えると、ニコッと翠に微笑んだ。









    翠「…んな、しょげた笑顔向けられても、俺何も言えねえよ。」



    翠はそういうと、ははっと小さく笑った。


    でも、その翠の顔も“しょげた笑顔”だったことに私は気付く。







    でもね、翠。




    翠は私の執事であると同時に、アルステナという国の王でもあるんだよ。




    そんな人がいつまでも私の執事をやっていて言い訳がない。






    翠「お前…そんなこといっても俺が口出しできないってわかってるだろ。」




    そう言って翠は両手で顔を隠した。







    乃愛「うん。…ごめんね。」






    翠「…謝るなよ。

    でもお前、そんなこと考えるようになったんだ。
    俺のことなんで別にどーだっていいのに。」





    そう言った翠の声はどこか冷たく、か細かった。







    乃愛「私だってそれくらい考えれるもん。
    でもね、翠は私の中で大切な人だから。そんな楽観的には考えれないよ。」




    私はそう言うと、ぐっと背伸びして翠のおでこにデコピンをした。





    翠「ばーか。なに乃愛のくせに大人ぶってんの?」



    翠は軽くふっと笑うと私の髪をくしゃっとした。




    そしてしばらく間が空くと、翠の口がゆっくりと開いた。






    翠「でも、俺もちょっと考えなきゃいけないことあるから、部屋もどるわ。」





    乃愛「…うん。わかった。」





    私はそう言うと手を横にひらひらさせた。


    すると翠も同じように手を振ると、くるっと後ろを向いて歩きだした。










    乃愛「…ごめんね。」



    私は、翠に聞こえないようにそう言った。






    ほんとに


    ごめんね、翠。





    こんな我が儘な姫で。








    乃愛「翠、大好きだよ。」




    私は小さくなった翠の背中に向かってそう呟いた。

  50. 50 : : 2014/10/19(日) 09:48:19

    翠side





    アメリカか…




    自分の部屋へと続く長い廊下を歩きながら、さっきアイツの言っていたことを思い出す。


    俺の国とすごく遠いし。

    もしアイツがアメリカに行ってしまったら、俺はどうしようか。

    あんな親父のいる国になんざ帰りたくはないし、かといって乃愛のいないこの城に残る意味もない。




    乃愛と離れるの…よりも乃愛がアイツと一緒に行くというのが、何よりも気にくわないけど。





    翠「俺もついていっちゃ駄目なのかな」




    何てことを口にしながら、部屋のドアノブに手をかける。



    ガチャ







    ドアをあけたその瞬間だった。





    前から飛んでくる何かが顔面を直撃し、ドサッと下に落ちる。











    翠「…はぁ?」



    目を細めて回りを見渡すと、部屋にはいるはずのないアイツが…




    祐「わー。ごめーん。わざとじゃないんだけどー(棒読み)」




    翠「なんでここにいんだよ。祐。」




    祐は、"様づけて読んでくれないんだ"とかなんとか言いながらベットの上にゴロっと寝る。






    翠「ここ俺の部屋だっつーの。」




    祐の腹を軽く蹴りながら隣にねっころがる。







    祐「改めて久しぶり。元気?」





    翠「普通。お前は?」





    二人で隣に寝ながら話を進めるこの感じは、すごく懐かしい。






    祐「うん。元気かな。


    そういや、お前父ちゃんどうなの?テレビで、すんごいことになってるぜ?」




    祐のきりだした話には、本当に呆れる。


    つい最近、ニュースで取り上げられた、奇抜な格好した女達とキャッキャやってる親父の様子。

    えっとこれ何回目だっけ。


    あんな親父。親父なんかじゃない。






    翠「…知らね。


    今夜も、どっかの女とヨロシクやってんじゃない?」




    そう言って、目を閉じる。




    祐「母ちゃん何人いたっけ。」



    翠「9人。」





    祐「兄弟は?」




    翠「あれから増えて、今は13人。血縁は、一人だけ。

    男ばっかでむさくるしいよ。」




    祐からされる質問に坦々と答えていく。
    聞きたいことたくさんだな。





    祐「あー。お前んち女いねーよな。オネェは、いるけど。」


    翠「いねーよ。」



    祐の冗談にクスクスと笑いながらそう言う。





    翠「お前、アイツになんかした?」



    きっと祐がしたのは、アメリカの話だけじゃない。
    乃愛の様子が変だったし。







    祐「するどーい。

    ちょっとね、おあついハグを。」




    ニヤニヤしながら言う祐は、俺を見ている。

    なんだよ。別に妬いてなんかねーよ。




    翠「ばーか。キモい顔で見るな。

    あいにくハグなんか毎日のようにされます。」




    毎日だなんて話を盛ったけど、うん。ちょっと牽制?






    祐「俺、乃愛と風呂はいった。」





    くそ。

    なんか負けた。





    そんなことを思いながらも、俺の口からでてきた言葉には、自分でもびっくりした。






    翠「お前みたいなヤツが兄弟にいたら…なんか違ったかな。」





    自分の言っていることに、ハッと気づくと祐の顔をうかがった。









    祐「あんだよ。なればいいじゃん。」







    ほら。


    またそういうこと言う。





    昔からそうだ。






    なれもしないこと簡単に言って





    優しい言葉で酔わせて




    忘れられなくなって








    "はやく翠に自由になってもらいたいの"





    ほんと





    アイツみたいで



    会いたくない。









    翠「やっぱやめた。」










    お前なんか






    祐「えー。いいと思ったんだけど。」






    大嫌いだ。






    翠「やっぱり、友達がいいだろ。」






    ───────────────────

    翠の気持ちがわからない。そう思って翠sideをかきました。


    いや、いまだに掴めません笑
  51. 51 : : 2014/10/22(水) 21:52:40

    乃愛side





    ガチャ





    私は翠のことを見送ると、再び部屋に戻った。





    乃愛「はぁ…。」



    そして部屋に入るなり、そうため息をこぼしてその場に座り込んだ。








    乃愛「き、緊張したー…。」




    私はそう呟くと、ゆっくりと立ち上がってベットにダイブした。









    乃愛「翠、なんて思ったのかな…。」





    私はまくらに顔をうずめながらそう言ってみた。




    今、自分で考えてみるとさっきの発言はあまりにも唐突すぎて我が儘だったと思う。





    なんせ、アメリカだなんてこの国からじゃかなり遠い。



    そんなところにいきなり行く。と言われても戸惑うのが普通だろう。








    乃愛「悪いことしちゃったな。」




    さっきは翠にこのことを伝えるのが精一杯で考えれなかったけど、今考えると改めて悪かったと感じる。







    乃愛「よし、誤りに行こう。」




    私はそう決心すると、重たい腰を上げてベットから降りる。









    ガチャ





    すると、突然部屋のドアが開いた。








    山野「ひ、姫様っ‼︎」




    ドアを開けて入ってきたのは、なぜがあたふたしている山野だった。






    乃愛「えっ、何?どーしたのっ?」






    山野「それがっ!祐弥様がいらっしゃらないんです!」





    乃愛「…どこに?」




    私はいまいち山野の言っていることが理解できず、首を傾げた。





    山野「お部屋にですよ!
    先程、お風呂の案内をしようとお部屋にいったらいらっしゃらなくて…。」







    乃愛「そっかそっか。



    ってはぁ?!」






    山野「近くの部屋とか探したんですけどいないので、姫様の部屋にいると思ったんですけど…。」





    そう言うと、山野ははぁ。とため息をついた。





    乃愛「…成る程。
    じゃあ、私も一緒に探すよ。」





    山野「ほ、ほんとですかっ!
    ありがとうございます。」




    山野はそう言うと、ぺこっと頭を下げた。








    乃愛「うん。じゃあまずは翠にでも聞いてみよ?」




    私の言葉に山野ははいっ。と返事をすると私の少し後ろで歩き始めた。










    あっ、そうだ。




    と、突然心の中で思い出した。







    アメリカのこと、まだ山野に言ってないや。



    まだ決まったわけじゃないけど、言ったほうがいいよね?






    私はそう思い、ゆっくりと口を開いた。





    乃愛「ねぇ、山野。」



    私は後ろを歩く山野に向かって言った。

    山野は私の言葉に何ですか?と言って首を傾げた。






    乃愛「私ね、アメリカに行くかもしれない。」








    山野「…はぁ?」



    後ろを歩く山野から、そう声が聞こえた。






    山野「それは旅行としてですか?」





    乃愛「違う。

    実はさっき祐に言われたの。一緒にアメリカの大学を受けよって。」





    私はそう言い終えると、ちらっと横目で山野のほうをみた。





    でも私の視界に入った山野の顔は、驚きと言うには、ちょっと違った。







    山野「姫様、正気ですか?」




    乃愛「な、なにが?」






    私がそう言うと、山野はコホンっと咳払いをして言った。








    山野「私には無理だと思いますけど…。」










    え?




    私は思わず山野の言葉にフリーズした。






    山野「大体、アメリカに行くだなんて言っていますけど、アメリカの大学なんてこの国の大学の何倍も難しいんですよ?」





    乃愛「で、でもっ…!」






    私は山野に反論しようとするけど、山野はそんな私を無視して話を続けた。





    山野「それに、アメリカに行くって言ったって生活はどうなさるおつもりですか?」





    乃愛「うぅ…。」




    山野の正論を聞き終えた私は、涙が出てくる一歩手前だった。





    むかつくけど、山野が言っていることは全部正しいし、私は何も言い返すことができなかった。






    山野「わかったなら、そんなこと言ってないでしっかり学校にいってください。」






    山野は最後に私の心に追い打ちをかけると、1つの部屋の前でとまった。




    どうやら、いつの間にか翠の部屋についていたようだ。


  52. 52 : : 2014/11/03(月) 02:46:53



    うーん。


    昨日は、なんで部屋にいなかったんだろう。


    結局、あのまま会えなくて…。

    はぁ。

    ちょっとだけ話したかったのに。



    ん?まてよ?


    翠ばっかだな。わたしの話って…。




    そんなことを考えながら、朝。翠の部屋へ向かう。


    コンコンコンッ


    乃愛「翠ー?あけるよー。」


    軽くドアをノックして部屋に入る。

    ガチャ



    乃愛「…よかった。

    ちゃんといる。」


    このまま居なくなっていたらどうしようかと思っていたから、少し安心した。




    乃愛「翠っ!起きて。」

    ベッドの上に乗って、仰向けで寝ている、綺麗な翠の寝顔を崩すように頬をつねる。


    乃愛「…おいっ。起きろぉっ!!!!」


    そう言って、さらに強く頬をつねると、翠が声をあげて暴れた。



    翠「…いたい。」


    うっすらと目をあける翠にドキッとして、慌てて手を離す。


    乃愛「…お、おはよう。」




    翠「…おこしかた雑。」

    少し笑いながら言う翠は、わたしをどけて起き上がる。

    どうしよう。


    何て言おう。


    わたしは、ただひたすら言葉を探していた。












  53. 53 : : 2014/11/03(月) 02:47:42
    寝ぼけて変なところで投稿しちゃいました。

    かずみんごめんね。
  54. 54 : : 2014/11/09(日) 23:18:57





    乃愛「お、おはよ…。」




    私はそう言うと、思わず顔をぷいっとそむけた。








    翠「…2回目だけど。」




    と、翠が不思議そうな顔で言った。






    し、しまった‼︎


    確かに言われてみればさっき言ったような…。






    うぅ、恥ずかしっ。





    翠「乃愛、顔真っ赤。」



    そう言いながら、クスクス笑い出す翠。





    乃愛「う、うるさいっ!」



    私は熱くなってく顔を隠すようにくるっと後ろを振り返ると、近くにあった椅子に座る。






    翠「んで?俺を起こしにきた理由はー?」




    まだ起きたばっかの翠は、舌ったらずな言い方でそう言った。






    あっ、そういえば昨日のことを聞きに来たんだっけ。




    でも、そんな単刀直入に昨日裕と何話してたの?なんて聞けないし…。








    乃愛「えっと…舞踏会っていつだったかなーって…。」





    んー…、これはちょっと嘘っぽかったかな…。



    私はぎこちない顔を作って翠の言葉をまった。





    翠「はぁ?そんなこと聞きにきたの?」





    うわうわ…絶対翠疑ってる。



    でも、ここは何とか乗り切らなければ話は進まないし…。





    乃愛「う、うん。なんか急に気になって…。」






    翠「…ふーん。まぁ、舞踏会なら明日だけどね。」



    翠は面倒くさそうにあくびをしながらそう言った。




    乃愛「そ、そっか!ありがとう!」




    なるほど。明日なのか。









    …………ん?












    乃愛「明日っ?!」






    思わず変な声で言った。



    明日?!今明日って言った?この人?!





    もうすぐあるってことは知ってたけど、明日なんて知らなかったしっ‼︎







    私は勢いよく椅子から立ち上がると、特に意味もなく近くにあった机をバンバンと叩いた。








    翠「おいコラ姫、行儀悪いぞ。」





    そんなどーでもいいとこ突っ込まないで!



    私は叩くのをやめると、ズカズカと翠の元へ向かう。






    乃愛「もっと早く言ってよ!
    私まだ何も準備してないんだけど!!」




    私はキレ気味に力強くそう言うが、どうやら翠は何も感じてないようだ。





    翠「別に準備なんて1日あれば十分だろ。」





    十分じゃないわっ!



    この前は裕がきたから結局ドレス選んでないし…。






    乃愛「ばか翠‼︎
    ほらっ!早く起きて準備して!
    私先に食堂行ってるから!」






    私は一方的にそれだけ言うと、翠の声も聞かずに部屋から出た。



  55. 55 : : 2014/11/09(日) 23:21:30


    ___________________________






    乃愛「あっ、裕!」




    私が食堂に入ると、すでに裕が椅子に座って待っていた。






    裕弥「乃愛!おはよ。」



    裕は私の姿を見るなり笑顔でそう言った。




    乃愛「おはよ。ごめんね?またせちゃって。」




    …申し訳なかったな。




    私はそんなことを思いながら、いつもの席についた。







    裕弥「そういえば乃愛。」





    裕にそう名前を呼ばれた瞬間、肩がビクッと上がった。






    乃愛「ど、どうしたの?」




    私は平常心を保とうと、笑顔でそう言った。





    裕「これ、乃愛にあげるー。」




    裕がそう言うと、近くにいたメイドから綺麗に包装された箱をもらった。




    私は突然のことに思わずびっくりした。



    乃愛「なに…?これ?」






    私は内心ドキドキしながら裕に向かってそう言った。






    裕「まぁ、開けてみ?」




    裕のその言葉に私は頷くと、綺麗に結ばれたリボンをほどく。








    乃愛「うわー!かわいいー!」



    私は箱の中を見た瞬間、思わずそう叫んだ。






    中には、綺麗な色のドレスが入っていた。




    乃愛「すごい可愛い!!
    でも…こんな綺麗なのもらってもいいの?」






    裕「いいに決まってんじゃーん。
    あ、ちなみにそれデザインしたの俺。」






    乃愛「ええ?!これ、裕がデザインしたの?!」



    私は丁寧にドレスを箱から出すと、もう1度じっくりと見る。






    …上は白で統一されていて、スカートのところはピンクや黄色などのパステルカラーでふんわりとしていてすごく可愛い。








    でも、改めてみてみたら思ったんだけどこれ、すごい露出するよね…。




    絶対翠に寸胴とか言われそう…。







    裕弥「あ、気に入らなかった?
    でも舞踏会、明日でしょ?だから使えるかなって。」





    乃愛「ううん。すごい気に入ったよ!明日着させてもらうね!」



    私はドレスをぎゅっと抱きしめながら言った。





    裕弥「ん。ならよかった。」








    …あ、そうじゃん、明日かぁ。舞踏会。




    翠は来るのかな?







    …って、私また翠のこと考えちゃったわ。





    あんなばかのこと考えちゃうなんて、

    最近の私、絶対へんだよ…。






    ***************

    2000字以内に入りきりませんでしたっ‼︎

    ごめんね、みおっち‼︎
  56. 56 : : 2014/11/11(火) 03:29:37


    って。


    ちょっと待てよ。


    祐に可愛いドレスも用意してもらって
    メイドに綺麗にお化粧して、髪の毛もやってもらって



    でも、それって



    乃愛「踊れないと、ダメじゃね。」



    翠「…今更。」


    大きなダンスホールの真ん中で独り言を呟いていると、いつのまにか後ろにいた翠が、わたしの頭を叩いた。




    乃愛「…いっだ。」


    そう言って、翠を細い目で見る。


    もうっ。

    女子にすることじゃないよ。



    そんな顔のわたしは、いつにもましてブサイクだろう。





    翠「乃愛。」



    いきなり翠に、名前を呼ばれた。

    翠は、わたしの方を向いて手招きをしている。



    なんだろう…!?




    乃愛「わぁっ。」


    わたしが近づくなり、翠は、いきなりお辞儀をする。

    っえぇっ!!


    いきなりここで従順な感じになられても…。


    そう思い、少し後ろに後ずさった。



    翠「踊ろう。俺と。」


    そう言うと、ラジカセをもってきて、いきなりCDをあさりだす。



    乃愛「え?」


    翠「やっぱ、モーツァルトかチャイコフスキーあたり?」


    二枚のCDから一枚を選ぶと、翠は、ニコッとわたしに笑いかけた。



    ジャンッと、聞いたことのあるような音楽が流れ出す。


    あ、なんか知ってる…



    乃愛「…踊れる気がする。」


    翠「気がするだけでしょ。」



    翠は、そっとわたしの腰に手をあてて、さらっと毒を吐く。


    ニコニコとした営業スマイルの翠。


    なんか…演技っぽい。






    乃愛「…触り方がいやらしいっ。」


    本当は、そんなこと思ってないけれど、わたしの口は可愛くないことばかり言う。


    翠「気のせい。」



    そう言うと、翠は、長い脚をスッと動かし、わたしの手をひいた。



    乃愛「ひゃぁっ。」



    翠の足をぐにゅっと踏みつけてしまった。


    お、踊るのむずかしい。



    申し訳なさそうな顔で翠を見る。


    翠「…大丈夫だよ。」


    翠の優しく綺麗な笑顔に返され、思わず頬が緩む。



    ただ、ひたすら美しい音楽がなっていた。







  57. 57 : : 2014/11/11(火) 03:30:03




    乃愛「翠は、何でもできるね。」


    バイオリンもできて、チェスとかもできて、ダースも踊れる。


    もう完璧じゃないか?





    乃愛「カッコイイよ。翠。」


    わたしは、精一杯の笑顔でそう言う。


    翠「…。」


    乃愛「翠?…ってきゃぁっ。」



    いきなり止まった翠の脚にひっかかり、前に倒れる。

    体が少し宙にういていた。


    ドサッ




    そんな音と同時に、細いけれどたくましい腕がわたしを抱き止める。


    翠が助けてくれたんだ。




    乃愛「…ありがと…」



    そう言って顔を上げようとすると




    翠「見んな!!」



    普段からあまり大きな声をださない翠の声にドキッとする。

    そのままわたしの頭も押さえ込んで、ぎゅっと抱き締め、離さない。

    わたしは、翠の胸のなかにすっぽりおさまって、体がすごく密着していた。


    乃愛「…翠?」


    翠「…絶対、顔あげんなよ。」


    翠は、そう言うとさらにわたしを強く抱き締める。




    翠は、そういった。でもね、わたし見ちゃったんだ。


    そう言う、翠の顔が真っ赤だったの。

    そんな翠の顔を見たら、わたしも恥ずかしくなった。




    それって


    どういう意味だったんだろう。










  58. 58 : : 2014/11/11(火) 05:46:38


    記念すべき1000hit!!

    ありがとうございます!!
  59. 59 : : 2014/11/15(土) 22:56:48



    翠「悪っ。」




    乃愛「へっ?!」






    突然の翠の言葉に、思わず変な声がでた。



    それと同時に、翠の手が緩くなる。






    私はゆっくりと 翠の顔を見ると、さっきの表情がまるで嘘のだったかのように普段の顔つきに戻っていた。





    乃愛「翠っ……」

    翠「悪い、練習再開。」





    そう言うと翠は、くるっと後ろを向いてしまった。







    …あれ?もしかして、翠照れてる?




    嘘っ?!だったらすっごいレアなんですけど!








    私は翠の近くまで行くと、ゆっくりと翠の顔を覗き込んだ。







    乃愛「翠、もしかして照れてる?!」







    翠「…お前、何言ってんの?」




    パチンっ





    乃愛「いったぁ…」





    私は翠にデコピンされたおでこを押さえながら言った。






    あーっ、ヒリヒリする!



    でも、絶対さっきの翠は照れてたな。



    うん。絶対そうだ。






    私はそんな風に1人で考えてると、
    翠がはぁーっ。とため息をついたのがわかった。




    翠「んなこと考えてる暇があったらさっさっと踊れるようになれ。」





    翠はそう言うと、さっきまで練習していた音楽を流し始めた。






    乃愛「分かりましたよー。」




    私は拗ねたような口調で言うと、ぎゅっと、翠の手を握った。












    ______________________________






    翠「よし。まあ、ここまで踊れるようになれば大丈夫だろ。」




    翠は私から手を離すと音楽を止めた。






    乃愛「ほんとっ?!」




    翠の鬼のようなレッスンが始まって早3時間。



    ここでやっと、私は解放されるんだ!





    翠「まあ、明日も踊れればの話だけど。」





    乃愛「うっ…。」







    翠の言う、明日とはもちろん本番のことで…。



    …あーっ!もう!こんなんだったらもっと前から練習しとけばよかった!








    まあいいや。本番は翠にエスコートしてもらえばなんとかなるしっ。




    翠「あっ、先に言っとくけど俺、明日裏方の手伝いとかあるから会場のほう行けないわ。」





    翠は私のほうを見向きもせずに言った。










    って、は?





    そ、そんなの聞いてないしっ‼︎





    乃愛「えっ?!困るっ‼︎」



    やばい、色々やばいぞ。

    どうしよう…。






    翠「ま、俺がいなくてもちゃんとできるよなー?
    ちゃんと他のお偉いさんに挨拶くらいできなきゃなー。」





    そう言うと、翠はニコッと笑った。






    …翠サン、怖いです。





    私は翠から隠れるように、近くにあった柱の後ろにつく。







    翠「ってわけで、俺他にやんなきゃいけないことあるから行くわ。
    頼みたいこととかあったら山野のとことかに行って。」





    んじゃ。と翠は軽くてをあげるとがちゃんと部屋から出て行った。









    …ってどうしよ。




    なんか、すっごい不安になってきたんですけど。





    乃愛「…困る。」








    私は翠がいなくなった部屋でぽつんと呟いた。


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