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超高校級の雨男

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  1. 1 : : 2014/07/13(日) 23:26:17
    『あなたを【超高校級の雨男】として我が校に招き入れます』


    【苗木誠;超高校級の雨男】


    苗木「…なんだかなあ…」

    雨の中傘をさして帰って来たにも関わらず、ずぶ濡れになったボクに突然突きつけられた手紙。

    ボクは、超高校級の雨男として、希望ヶ峰学園に入学することができるようだ。

    苗木(…確かに、天気予報がたとえ90%晴れと言っても、ボクが出掛けたら雨になるけどさ…)

    苗木(…複雑だなあ…)

    家族はとても喜んでくれたし、希望ヶ峰学園といえば才能がある人だけが入学できる学校だ。それに普通すぎるボクが入学できるんだから、喜んで行くべきなんだろう。

    苗木(…うーん…)

    苗木(そもそも雨男って才能なのか…?)

    苗木(そもそも雨が降るのはボクは全く関係ないと思う…)

    苗木(そもそもこれが偽物だったら…)

    どんどん掘り下げて、どんどん不安になってしまう。

    苗木(…でも…折角のチャンスだし…みんな喜んでくれたし…)

    苗木(…)

    苗木(…よし…行こう…)

    苗木(行って…何かの間違いなら、そのまま素直にすぐに帰ろう。うん)

    苗木誠と明記されてるが、ボクはまだ信じてなかった。

    信じられるわけない。

    むしろ信じる方がおかしい。

    こんな普通すぎるボクが希望ヶ峰学園に入れるなんて…

    絶対何かの間違いだ。

    苗木(…やっぱり止めようかな…)

    雨男である故か、何故か自動的に雰囲気が暗くなる。

    苗木(…まあ…確認だけしてみよう)

    ボクは希望ヶ峰学園への入学準備をした。
  2. 2 : : 2014/07/13(日) 23:39:35
    【入学日】


    ザアアアァァー…

    苗木「うん、いつも通りの天気」

    たとえ天気予報が200%晴れと言っても持ち歩く、愛用の傘を持って希望ヶ峰学園に向かった。

    ちなみにボクは今まで晴れている天気の中を歩いた事がない。

    曇りならかろうじてある。

    近くに晴れ男なる人がいたら、雨にならないようだ。

    ボクが晴れた日を出歩くなら、近くに大量の強い晴れ男が必要だろう。

    ただ、晴れ男は大抵明るくて体力のある人なので、その場合、ボクの周りはムキムキのすごく明るい元気で活発な男達で埋まってしまう事だろう。

    …想像しないようにしよう。


    【希望ヶ峰学園】


    苗木(…今日からボクは…本当に…)

    ザアアアァァー…

    苗木(希望ヶ峰学園に…)

    ザアアアァァー…

    苗木(入学…)

    ザアアアァァー…

    苗木(するん…)

    ザアアアァァー…

    苗木(だ…)

    ザアアアァァー…

    苗木(な…)

    ザアアアァァー…

    苗木(…)

    ザアアアァァー…

    雨がすごくうるさい。
  3. 5 : : 2014/07/14(月) 21:35:54
    ボクは希望ヶ峰学園に足を踏み入れた。

    苗木(…誰もいない…)

    苗木(さすがに早く来すぎたか…?)

    とりあえず、中に入ってパンフレットを見ながら歩く。

    「あら?」

    苗木「ん?」

    前から声がした。

    苗木「あっ…!舞園さん…!?」

    舞園「覚えててくれたんですね!嬉しいです苗木君!」

    苗木(そりゃあ覚えてて当然だ…っていうか…彼女の方が覚えててくれたのが驚きだ…)

    苗木「舞園さんは、超高校級のアイドルとして入学してきたんだよね?」

    舞園「はいっ!知ってる人と出会えて良かったです!」


    【舞園さやか;超高校級のアイドル】


    苗木「っていうか舞園さん…いつからいたの?」

    後から来たボクでも早すぎなようだった。

    それより早く居たということは…?

    舞園「あ…えーっと…さっき着いたばかりですよ?」

    苗木「そう…」

    舞園「…」

    苗木「…」

    舞園「え…えっと…今日はいい天気…じゃ…ない…ですね…」

    苗木「そうだね…どしゃ降りだね…」

    舞園「…」

    苗木「…」

    舞園「…あっ!晴れてきましたよ!」

    希望ヶ峰学園からは、雨があがって空が輝く様子が見えた。

    ボクの才能は、建物の中に入ると効果が切れる。

    そして外に出ると、その瞬間洪水でも起きるかのように雨が降る。

    苗木(…ある意味才能…なのか…)

    舞園「あっ。ところで、苗木君はどんな才能なんですか?」

    苗木「えっと…これ…」

    希望ヶ峰学園から届いた手紙を見せた。

    舞園「超高校級の…雨男…?」

    苗木「…みたいだね…」

    舞園「…ああ!確かに、苗木君が登校した時間帯や、参加した遠足とか体育祭とかではいつも雨降ってましたね!苗木君ってすごいですね!なんか魔法みたいです!」

    苗木「それ…誉めてるの?」

    舞園「はい!立派な才能ですよ!広く見たら、天気を変えられる力があるってことじゃないですか!」

    苗木「そ…そうかな…。はは…」

    舞園さんと話すと、いつも暗いボクの雰囲気が、少し晴れた。
  4. 6 : : 2014/07/14(月) 23:54:21
    その後、生徒達が集まったり入学式をやったりした。


    【翌日】


    早速授業が始まった。

    そして放課後。

    石丸「苗木くんッ!丁度良い!君に頼みたい事がある!」

    苗木「え?」

    石丸「生徒会室は何処か知らないかね?」

    苗木「あっ…えっと…」

    ボクは希望ヶ峰学園のパンフレットを見た。

    石丸「何だと!?」

    苗木「まだ何も言ってないよ…。えーっと、あっちに進んで…」

    石丸「常にパンフレットを持ち歩いているだと…!?くっ…!ぼくもまだまだということか…!」

    苗木「えっと…石丸クン…?どうしたの…?」

    石丸「ありがとう苗木くん!君のおかげで、ぼくに目標ができた!まず君を越える事だッ!」

    苗木「え…?えっと…?は?」

    石丸「さらばだ苗木くん!また会おうではないか!っはっはっは!」

    苗木「あ!ちょっと!えっと…石丸クン!生徒会室はあっちだよ!」

    石丸「む?」

    石丸「ああそうだったな!またしても助けてもらってしまったな!ありがとう苗木くん!」

    苗木「う…うん…」

    石丸「お礼を言われたら、どういたしまして、だッ!」

    苗木「ど…どういたしまして!」

    石丸「うむ!ではまたな苗木くん!」

    石丸クンは去って行った。

    苗木「…」

    苗木(元気な人だなあ…)

    苗木(力はなさそうなだけど…晴れ男かも…)
  5. 7 : : 2014/07/15(火) 23:45:22
    舞園「あっ。苗木君」

    苗木「何?」

    舞園「ちょっと買う物があるんですけど…付き合ってくれますか?」

    苗木「あ、うん。いいけど、なに買うの?」

    舞園「えっと…ノートとかです…」

    苗木「…え?もう使い切ったの!?」

    舞園「ち…違いますよ!?ただ…予備ノートを忘れて…ついでに新しいのを買っておこうかと」

    苗木「ああ、うん。分かった」

    苗木「あ、そうだ。傘持ってった方がいいよ」

    舞園「え?今日は雨は降らないみたいですけど…?」

    苗木「…多分絶対雨降るから…」

    舞園「…あっ…はい」

    そしてボクと舞園さんは、外にでた。
  6. 8 : : 2014/07/16(水) 23:47:02
    外は曇りだった。

    苗木「あれ…?」

    舞園「雨、降りませんね」

    苗木「まあたまにあるんだけどね」

    舞園「そうなんですか?」

    苗木「うん」

    2人で、近くの文房具屋まで歩く。


    ずっと歩いていても、雨は降ってこなかった。

    それどころか、どんどん晴れていくようだ。

    舞園「ちょっと太陽が見えてきましたねっ」

    苗木「う…うん」

    苗木(ボクが外を出歩いて…太陽が見えるなんて…)

    石丸「やあ苗木くん!舞園くん!」

    苗木「あ、石丸クン!」

    舞園「こんにちはっ!」

    石丸「2人でどこにいこうというのかね?」

    苗木「ちょっと近くの文房具屋にね」

    石丸「そうか。ところで、何故君達は傘を持っているのだ?」

    苗木「い…いや…雨降りそうだったし…」

    石丸「はっはっは!まあ用心にこしたことはないな!それにどんな理由であれ、外で太陽を浴びるのはいいことだッ!」

    苗木「はは…は?」

    苗木「…はあ!?」

    太陽が出ていた。

    まさに晴れだった。

    雨が降るどころか、眩しいほどに太陽の光が降り注いでいる。

    苗木(は…晴れた!?)

    苗木(ちょっと待って…!?こんなの…超高校級の晴れ男とかでもいない限り…)

    苗木「…」

    石丸「?」

    苗木「じゃあ…石丸クン、またね」

    石丸「うむ!あまり遅くならないようにな!」

    舞園「はいっ」

    そして、石丸から離れていくと…

    舞園「あら?」

    …どんどん空が暗くなっていく…

    苗木(やっぱりあの人、強すぎる晴れ男だ…)

    苗木(っていうかいくらなんでも強すぎる…!!よほど強い晴れ男でも、ボクの前では曇りにするのが精一杯のはずなんだけど!?)

    舞園「…苗木君?どうかしましたか?」

    苗木「えっ?あ、いや、何でも無い!」

    舞園「そうですか?」

    そんなこんなでなんだかんだで、文房具屋に着いた。
  7. 9 : : 2014/07/17(木) 21:53:47
    【文房具屋】


    舞園はノートを持って来た。

    舞園「はいどうぞ、苗木君!」

    苗木は、まだ買ってないノートを渡された。

    苗木「…えっ?いや、ボクは別に…」

    舞園「えっと…それ、2人で買うと半額になるんですよ」

    苗木「え?あ、ホントだ」

    確かにそう書いてあった。

    とりあえず半額はお得なので、ボクも今後の為に買うことにした。

    ついでに消しゴムやシャー芯も買った。


    【外】


    苗木「一応学園内でも買えるのに、こっちに来たのはこのためだったんだ」

    舞園「はい。それに…苗木君と出掛けたかったから…」

    苗木「え…?」

    苗木「雨でも降って欲しかったの?」

    舞園「…いえ…何でも無いです」

    相変わらず、外は曇りだ。

    葉隠「お、よう苗木っち!」

    桑田「おっす!こんなとこで2人で何してんだよ?」

    苗木「…あ、葉隠クンに桑田ク…

    ズドドドドドドドド!!

    2人が現れた瞬間、雨が滝のように降ってきた。

    葉隠「うおおお!?」

    ザーーーー!!!

    桑田「なんだこれ!?ゲリラ豪雨か!?」

    ザアアアアア!!!

    葉隠「下痢…!?なんだって!?」

    ザアアアアアアアアア!!

    桑田「うっせ!とにかく帰んぞ!またな!苗木!舞園ちゃん!」

    ザーーー!!

    苗木「う…うん」

    2人は猛スピードで去って行った…

    ザー…!

    そして…それに比例するように、雨も弱まって来た。

    舞園「か…傘…持って来て良かったですね…」

    苗木「う…うん…」

    あまりに突然降ってきたので、2人とも傘をさすのが遅れてずぶ濡れだったが。
  8. 10 : : 2014/07/19(土) 01:50:00
    【希望ヶ峰学園】


    とりあえず帰って来た。

    舞園「じゃあ、苗木君。今日はありがとうございました」

    苗木「うん、ボクも助かったよ。ありがとう」

    舞園「はい。では」

    舞園と別れた。

    外を見ると、さっきの雨は何だったのか、晴れ渡っていて、大きな虹がかかっていた。


    【翌日】


    「…ということで了解してくれるか」

    苗木「…はい」

    どうやら、雨男の原理を調べるとかなんとかで、雨が降るときのボクの状態が知りたいようだ。

    そのため、常にある機械を持っていたり、目立たない場所に装着するなどが行われた。


    桑田「…で、そこでシンカーでも投げてやろうかと思ったんだけどよ…」

    葉隠「俺には力及ばず…ってことか」

    桑田「いや、投げる事自体は問題なかった。だがな…」

    葉隠「急にボールが恋しくなり…」

    桑田「いやならねえよ」

    葉隠「俺がボールを投げるのは無理だ…!となり…」

    桑田「続けんなよ」

    葉隠「逃がしてやろうと、思いっきりどこかへ投げた…」

    桑田「…もうどーでもいいや」

    葉隠「…が、その方向はバッターがいる!そして、ボールはすごい勢いで打たれた!」

    葉隠「桑田「ボールゥゥゥ!!」」

    葉隠「そのままボールは見えなくなった…」

    葉隠「俺は…負けてしまった…」

    葉隠「もうすぐ甲子園だったのに…」

    葉隠「ちくしょおおお!!甲子園ーーーー!!」

    葉隠「第一部・完」

    葉隠「って感じだったんか?」

    桑田「何一つとしてあってねぇよ」


    【校門】


    一応、外に出てみる事にした。

    ザーー……

    例によって、雨が降り注いでいる。

    そして、人が通り過ぎる度に強くなったり弱くなったりを繰り返している。

    たまに、一瞬滝が降り注いだと思うような大雨も降る。

    苗木「…天気ってさ…もっと…自然的な感じがしたのになぁ…」

    自分1人がいると、まるで意識があるように、青空を雲が襲ってくるのは、前からずっと不思議な感じでいっぱいだった。
  9. 11 : : 2014/07/20(日) 10:09:29
    苗木「…はぁ…」

    ザー…

    雨が降ると、憂鬱になる。

    ボクが出歩くと大抵雨になるので、大体いつも憂鬱だ。

    ボクは少し出歩いたところで、希望ヶ峰学園に向かった。


    朝日奈「さくらちゃーん!暑いしプールに行こう!」

    大神「別に暑くはないが…いいだろう」

    ザーー

    朝日奈「…」

    大神「…今日は無理のようだな」

    大神「待て行くな。風邪を引いてしまうぞ」

    朝日奈「…あっ。苗木」

    苗木「あれ、何してるの?」

    朝日奈「近くのプールに行こうと思ったんだけど…」

    苗木「…そんなのあったっけ?」

    朝日奈「あったよ。えーっとたしか、あっちのほう」

    苗木「…?」

    大神「はっきり言うと、かなり遠い。そこが朝日奈のお気に入りスポットらしいのだ」

    苗木「へぇ」

    朝日奈「遠くなんかないよ!あっという間だよ!」

    大神「片道3時間は、さすがに遠いと思うのだが…」

    それは遠い。

    朝日奈「あ、ほら!雨あがったよ!行こう!」

    大神「う…むう…」

    まあ片道3時間は…なあ…


    大和田「…で、そこにバイクが突っ込んできてよ!」

    石丸「はっはっは!そんなことがあったのか!」

    葉隠「ん?何話してんだ?」

    大和田「…別に」

    石丸「うむ」

    葉隠「ってちょい待て!何故俺が来ると急に雰囲気が暗くなるんだべ!」

    苗木「…」

    大和田「…んじゃな。兄弟」

    石丸「…うむ。ではまたな」

    2人は異様に低いテンションで別れる。

    葉隠「え?え?俺何かしたか?」

    苗木「さあ…」
  10. 12 : : 2014/07/21(月) 01:07:15
    葉隠「なぁ桑田っち〜…」

    桑田「ん?」

    葉隠「なんか最近みんなが冷たいんだべ…」

    桑田「そうか。じゃあな」

    葉隠「いやこんなふうに!ちょっと待てって!」

    桑田「…じゃあオメーは、「臭いけど」とでも言ってろ。一瞬で場が明るくなるから」

    葉隠「お、マジか!?サンキュー!」


    【食堂】


    大和田「昼何食うんだ?」

    石丸「うむ…」

    石丸「よし決めた!カレーにしよう!」

    葉隠「臭いけどな」

    大和田「…って葉隠!?何言ってんだ!?」

    石丸「いつの間に!?テレポートでもしたというのか!?」

    葉隠「臭いけどな!」

    石丸「臭いのか!?」

    大和田「臭いテレポートって何か嫌だな…」

    葉隠「じゃあ俺は…納豆かけご飯にすっか!臭いけどな!」

    石丸「いや、納豆の臭いが好きな人もいるはずだ!」

    大和田「そんな話してねえよ!?」


    苗木(…騒がしいなあ…)
  11. 13 : : 2014/07/26(土) 23:26:33
    【外】


    昼食を済ませ、再び外を散歩する。

    例によって大雨だった。

    苗木「…はぁ…」

    十神「おい、苗木」

    苗木「ん?…十神クン?」

    雨が一層強くなった。

    十神「これ以上に無いくらい暇そうだな?」

    十神「暇な時間をどう過ごすかも分からない頭を持つお前には、頭を使わずただ体を動かすのがお似合いだよな?」

    苗木「…だから何?」

    雨が強すぎて、少し声が聞き取りにくい。

    雷もしばしば落ちる。

    十神「喜べ。そんなお前に、ただ体を動かす仕事を与えてやろう」

    苗木「…買い出しなら自分で行きなよ」

    十神「違う。それではない」

    苗木「じゃあ何?」

    十神「俺の手伝いだ。人手が足りなくてな」

    苗木「へぇ」

    十神「それなりにこなせば、それなりのバイト料も出す」

    苗木「…へぇ」

    十神「どうだ?やるのか?さっさと決めろ」

    苗木「…別にバイト料なんか要らないよ。単なる手伝いでしょ?」

    十神「…フン」

    十神「俺の部屋だ。さっさと来い」

    苗木「うん」

    若干雨が弱まった。
  12. 14 : : 2014/07/27(日) 18:38:34
    【十神部屋】


    十神クンの荷物を運ぶ作業だった。

    苗木「でも、力仕事ならボクよりも向いてる人がいると思うけど…?」

    十神「口を動かす暇があるなら体を動かせ」

    苗木「はいはい…」

    十神「別に、たまたまお前に会ったから言っただけだ。別に理由などない」


    苗木「…終わったよ」

    十神「ご苦労だったな。報酬だ」

    苗木「えっ…だから要らないって」

    十神「俺がやると言ったんだ。さっさと受け取れ」

    苗木「う…うん…ありがとう」

    十神「さっさと出て行け」

    苗木「う…うん…」


    【廊下】


    苗木(何だかんだで良い人…なのかな)
  13. 15 : : 2014/07/27(日) 18:51:59
    【数日後】


    苗木「…」

    舞園「…あんまり気を落とさないで下さい」

    大和田「ああ!俺らが絶対勝ってやるからよ!」

    学校生活が馴染んできた頃。体育祭の連絡が届いた。

    その中、ボクだけに渡された注意事項。

    『    超高校級の雨男 苗木誠殿
     あなたの体育祭の出場を禁止させて頂きます』

    苗木「…うん…まあ…当然といえば当然だし…」

    理由は勿論、絶対に雨で中止になるからだ。

    苗木(…はぁ…)

    …ザァー…

    苗木「…ん?」

    山田「最近雨が多いですなぁ」

    不二咲「そうだねぇ」

    教室の中で、2人が外を見ていた。

    雨が降っていた。

    大和田「また苗木か?」

    苗木「違う…と思うけど…」

    舞園「確か苗木君の才能は、屋内では意味が無いんでしたよね?」

    苗木「うん」

    大和田「じゃあ自然に降ったやつか。よくもまあそんな降らせられるな」

    舞園「明日は快晴になりそうですねー」

    大和田「そういや苗木。雲一つ無い快晴で外出たら、どうなるんだ?」

    苗木「あり得ない早さで雲が出来て、あり得ない早さで降る」

    大和田「そりゃもう魔法だな…」
  14. 17 : : 2014/07/31(木) 01:35:09
    次は体育祭の種目決め。

    …だけどボクは、唐突に呼び出された。

    「いきなり呼びだしてすまない」

    苗木「いえ…どうせ出られませんし…」

    「そのことなんだが…」

    苗木「?」

    「まず、君の雨男の才能についてだが、あることが分かった」

    苗木「…!」

    今まで何一つ分からなかった事が…

    「君は、基本的に外に出ると雨が降る。が、たまに雨が降らない事もあったな」

    ボクは頷いた。

    苗木「確かその時は大抵、晴れ男がいて…」

    「なるほど、君は晴れ男と呼んでいるか。確かに分かりやすくて、ある意味的確だ」

    「データによると、君の気分が高まると、雨が弱まったり、または晴れたりするらしい」

    苗木「!?」

    「君が晴れ男と呼んでいる者は、恐らく君がその明るさに影響されて、結果的に天気を曇りまたは晴れに変えていたんだろう」

    苗木「えっとつまり…ボクのテンションが上がれば…晴れると…?」

    「そうなるな」

    苗木(確かに石丸クンの明るさに影響されて、自然とテンションが上がるかもしれないけど…)

    「いくつか思い当たる事があるなら、それも教えてくれるとありがたいんだが…」

    苗木「ああ、はい」

    苗木(そういえば…)

    舞園さんと一緒にいたときは、少し雨が弱まってた…

    石丸クンが近くに居た時は…舞園さんも居たからあんなにも晴れた…

    十神クンに色々言われた時は…豪雨で雷もよく落ちてた…


    「…なるほど…」

    「つまり、テンションが高いと晴れ、低いと豪雨になる…と」

    「広く見れば、中々天気を操る才能みたいじゃないか」

    苗木「はぁ」

    「あ、そうだ。それで、体育祭についてだが」

    苗木「はい」

    「実は既に学園長に申し出済みだ。君が1日中ハイテンションで、雨を降らせなければ、体育祭に出席してもいいと」

    苗木「…はい!?」
  15. 18 : : 2014/07/31(木) 17:31:58
    「もちろん、君が欠席をするつもりならそれでもいいが…」

    苗木「…」

    「まあ、よくクラスメイト達と相談しておいてくれ」

    苗木「はい…」


    【教室】


    ボクは教室に戻って来た。

    そして一斉に注目を浴びる。

    石丸「苗木君!遅かったではないか!」

    苗木「ご、ごめん」

    大和田「もうほとんど種目決まっちまって、あとはもう余りしかねえよ」

    苗木「えっと…そのことなんだけどさ…」

    石丸「では苗木君の種目は、1500M走でいいな!」

    苗木「え、ちょっと…」

    黒板を見ると、1500M走の欄に、舞園・山田・桑田・大神・苗木と書いてあった。

    石丸「では、これで決定だな!」

    苗木「いや…だからさ…」

    石丸「各自確認しておきたまえ!以上だ!」

    苗木「聞いてってば!」

    石丸「む?どうしたのかね?苗木君」

    舞園「具合でも悪いんですか?」

    大和田「まさか、休むつもりじゃねえだろうな?」

    石丸「苗木君!我々は、既に君に課せられた条件を承知済みだ!」

    苗木「…えっ?」

    大和田「なんだ、そんなことを心配してやがったのか?」

    苗木「いや…えっと…うん…」

    桑田「あんなの、つまりは楽しめばいいって話だろ?」

    山田「全力を尽くせば、自然と気分が上がるものですぞ!」

    不二咲「あまり深く考えなくてもいいと思うよ」

    霧切「やっぱり、全員参加した方がいいに決まってるでしょう?」

    セレス「もちろん、苗木君自身が嫌ならそれでもいいですわ」

    舞園「少しでもやる気があるなら…苗木君にも来て欲しいです」

    江ノ島「やりすぎなくらい盛り上げてやるって!」

    苗木「…みんな…」

    石丸「で、どうする?」

    苗木「…うん…やるよ!」

    石丸「そうこなくてはな!」

    苗木(大丈夫…!)

    苗木(みんななら、意地でも晴れにしてくれる…!)
  16. 19 : : 2014/08/01(金) 22:09:42
    【当日】


    大和田「てめえらあああああ!!気合入れていくぞおおおお!!」

    「っしゃあああああああああああああ!!!」

    苗木「わあ…」

    舞園「見事に晴れましたね…」

    朝日奈「あんなゴリ押しでいいんだ…」

    セレス「苗木君も単純ですわね」

    苗木「ははは…」

    石丸「いくぞおおお!!準備体操ーーー!!!ラジオ体操第一いいいい!!!」

    カチッ

    『ジャンジャンジャジャジャジャン!
     ジャンジャンジャジャジャジャン!
     ジャジャジャジャジャジャジャジャジャジャジャジャジャーン!♪』

    苗木「ピアノ伴奏全部エレキギターなの!?」

    桑田「ラジオ体操カッケーーー!!」

    『HEY!ワン!トゥー!スリー!フォー!』

    『ファイブ!シックス!セブン!エイト!』

    『ONE!TWO!THREE!FOUR!』

    『FIVE!SIX!SEVEN!EIGHT!』

    苗木「やりづらっ!」

    『NINE!TEN!カンカンカァン!ワーー!!』

    葉隠「うお!?なんじゃこりゃあ!?」

    苗木「ボクシングの試合!?」
  17. 20 : : 2014/08/02(土) 10:46:24
    『足を揃えてジャンプ!ヒャッハー!』

    『1ー!2ー!3ー!』

    『ダー!!』

    苗木「今度は某プロレスラー!?」

    『足を曲げて腕振れえ!イェアー!』

    『1!1!1!1!』

    『1!1!1!8!』

    『深呼吸ー!』

    『1!2!3!4!5!6!7!8!』

    『3!2!1!』

    『Yaーーーー!!』

    『ズドーーーン!』

    苗木「何いまの!?」

    石丸「爆発だが!?」

    苗木「それは知ってる!」

    セレス「…なんですか今のラジオ…」

    朝日奈「無茶苦茶だったね…」

    大神「…これではまともに体操などできんな…」

    「…」

    ザァー…

    雨が降ってきた。

    「…!!」

    (まずい…!!)

    この瞬間、全員の意志が一つになった!

    石丸「プログラム2!200M走!!」

    大和田「て、てめえらああ!!元気出してっくぞおお!!」

    「お、おーーーー!!」

    桑田「いくぞコラァ!!出る奴ぁ俺についてきやがれ!!」

    桑田「うおおおおおおお!!!」

    桑田クンが1人でスタートラインまで走った!

    朝日奈「え…えっと…」

    戦刃「…」

    朝日奈「が、がんばろう!!」

    戦刃「う、うん…!」
  18. 21 : : 2014/08/08(金) 16:12:06
    3人がスタートラインに立った。

    江ノ島「はい位置についてドン!」

    ズドン!

    桑田「えっ!?ちょっ!?早っ!?」

    戦刃「っていうかそれ私のミサイル!」

    桑田「てめえはなんて物騒なもん持ってきてんだ!」

    パァン!

    石丸『朝日奈君1位!』

    うぉぉぉおおおお!!

    と、途端に歓声が聞こえてきた。

    …たまに大声出し過ぎて奇声が聞こえるのは気にしない。

    桑田「あっ!卑怯な!」

    2人がモタモタしている間に、朝日奈さんは既にゴール。

    桑田「くそ!勝負だ戦刃ぁ!!」

    パァン!

    石丸『戦刃君2位!』

    ちなみに桑田クンはまだスタート地点だ。

    桑田「ちっくしょぉぉおおおお!!!」

    パァンパァン!

    石丸『桑田君3位!』

    江ノ島「えっと、次だれだっけ?」

    苗木『えっと…大神さんと不二咲さんと葉隠クン』

    江ノ島『だそうです』

    苗木「サボらないでよ!」

    江ノ島『なおハンデとして、大神は800M走となります』

    霧切「…葉隠君、下駄だけど走りにくくないの?」

    葉隠「まあ多分大丈夫だろ!」

    山田「不二咲千尋殿、別に無理しなくても…」

    不二咲「ううん、大丈夫!大神さん、よろしくね!」

    大神「うむ。共に全力を尽くそう」

    江ノ島「いや大神は全力尽くすなよ!!」


    江ノ島『位置にドン!』

    パァン!

    葉隠「ちょっ!?」

    全員、遅れて一斉に走り始めた。

    苗木「え、江ノ島さん…もうちょっと普通にやってくれないかな…」

    江ノ島「だが断るッ!」

    苗木「あ、そう…」

    ズドドドドド…!

    苗木「ん?」

    大神さんがものすごいスピードで走っていた…!

    うぉぉぉおおおおおおお!!怖ええ!!
    がんばれ不二咲いー!
    おい葉隠おせーぞ!

    パァン!

    石丸『大神君1位!続いて葉隠君が2位!不二咲君が3位!』

    苗木「中々接戦だったみたいだね」

    江ノ島「…葉隠遅っ…」
  19. 22 : : 2014/08/10(日) 11:22:43



    石丸『次ッ!1500M走!!』

    江ノ島『えーっと、出場者ー舞園・山田・桑田・大神・苗木ー』

    石丸『もっと声を出さんか!!』

    江ノ島『はいはい』

    江ノ島『なお、大神はハンデとして3000M走となります』

    江ノ島『1周200Mだから、つまり15周』

    苗木「うわぁ…」

    石丸「うおおおおおおお!!」

    葉隠「らあああああああ!!」

    大和田「うらあああああ!!」

    苗木「なにあれ」

    舞園「ああ、昨日結成した、『サニー団』です」

    苗木「は…?」

    舞園「まあつまり、無駄にテンションを上げる事で晴れにするらしいですよ」

    苗木「あの人達がテンションを上げても意味ないんだけどなぁ…」

    舞園「でも、見てるだけで、なんだか気持ちが盛り上がりませんか?」

    苗木「…」

    苗木「まぁね」

    舞園「まあもっとも、苗木君自身がテンション上げないと意味ないですけど」

    苗木「…うん」

    苗木「じゃ、頑張ろうか!」

    舞園「はい!」

    桑田「全力尽くそうぜ!!」

    「おー!」
  20. 23 : : 2014/08/11(月) 12:31:24
    江ノ島『位置について位置について位置について位置につドン!』

    苗木「!」

    みんな遅れて、一斉に走り出した。(大神さんだけは遅れなかった)

    江ノ島「長距離走って暇だよねー」

    不二咲「そうだね」

    江ノ島「…」

    江ノ島「苗木、途中で飽きてローテンションになるかもねー」

    石丸「うおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

    大和田「苗木いいいいいいい!!!頑張れえええええええ!!!」

    葉隠「あああああああああああああ!!!!」

    江ノ島「あ、これ絶対飽きないわ」


    ダダダダダダダッ!!

    大神さん以外のボク達が走っている横を、すごい勢いで大神さんが通り過ぎた。

    苗木「はっやいなぁ…」

    桑田「おいブーデー!そろそろバテてんじゃねーか!?」

    山田「なんのこれしきぃ…!」

    舞園「大丈夫ですかー?」

    苗木「舞園さん、結構余裕そうだね…」

    舞園「アイドルの体力舐めないでください!」

    ダダダダダダダッ!!

    さっき通り過ぎたばかりの大神さんが、再び後ろから迫ってきた。

    苗木(うわっ…!怖ッ…!)

    苗木(大神さん…確か3000M走だけど…それでも足りないかも…)
  21. 24 : : 2014/08/11(月) 23:42:26
    江ノ島『大神1位!』

    朝日奈「さすがさくらちゃん!速いねー!」

    大神「うむ。まだ走り足りないな」

    江ノ島『続いて舞園、桑田、苗木、山田ー!』

    苗木「はぁ…はぁ…」

    ポツ…ポツ…

    苗木「あ…雨…」

    大和田「うおあああああああああああああああ!!!」

    石丸「らあああああああああああああああああ!!!」

    葉隠「ああああああああああああああああああ!!!」

    ポツ………ポツ……

    葉隠「…もう…声が…」

    石丸「足りないか…!」

    大和田「はぁ…くそ!大神!助太刀頼む!」

    大神「うむ」

    大神「すぅ…」

    大神「ハアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」

    大神「喝ッッ!!!!」

    苗木「…!!」

    ポツ……………

    江ノ島「あ、止んだ」

    不二咲「な、なんか元気出るよ…!」


    石丸『プログラム6!最後だな!全員リレーッ!』

    不二咲「う、うーん…何だかまた曇ってきたねぇ…」

    大和田「っしゃああああああらああああああ!!!」

    石丸「うおおおおおおおおおらああああああ!!!」

    葉隠「ァァァァァァァァァァァァァァァァ…!!!」

    葉隠クンは既に声が枯れている。

    ポツ…ポツ…ポツ…ポツ…

    江ノ島「あんま効果なくなってきたねー」

    大和田「大神…頼む…」

    大神「…その必要はないらしいな」

    大和田「あ゛…?」

    舞園「頑張りましょう!苗木君!」

    苗木「う、うん!」

    パァー…!

    一気に雲が退散して、日の光が降り注いだ。

    石丸「うむ…!やはりこの天気でないとな…!」

    十神「…単純な奴だ」
  22. 25 : : 2014/08/13(水) 01:20:24
    江ノ島『えーっと、Aチーム朝日奈・葉隠・山田・不二咲・大和田・石丸・大神』

    江ノ島『Bチームそれ以外』

    苗木「適当ッ!」

    舞園「戦刃さん!頑張ってください!」

    戦刃「…うん」

    こっち(Bチーム)の1番手は戦刃さんだ。

    苗木「戦刃さん!頑張って!」

    戦刃「…」

    戦刃さんは、そそくさと行ってしまった…

    苗木(あれー?)


    江ノ島『位置について…よーいドン!って言ったらスタートね!』

    江ノ島『はい二人ともフライング!』

    朝日奈「ずるい!!」
    戦刃「ずるい!!」

    江ノ島『位置についてよいドン!』

    二人ともかなり遅れてスタートした。

    苗木「頑張れーー!」

    舞園「頑張ってくださーい!」

    大和田「うおおおおおおおおおおお!!!」

    石丸「ハァァァァァァァァァァァァ…!!」

    葉隠「ーーーーーーーーーーーーー…!!」

    流石に石丸クンも声が枯れてきたようだ。

    葉隠クンに至っては、もう全く声が出せない。

    戦刃「…」

    バトンがボクの手に渡った。

    朝日奈「はい!葉隠!」

    葉隠「ー…!」

    葉隠クンは声が出ない。

    舞園「苗木君ー!頑張ってくださーい!」

    桑田「走れ苗木いい!」

    江ノ島「ガンバレー」

    カッ…!

    太陽が熱いくらいに照る。

    苗木(…はは…ボクって単純だなぁ…)

    自分でもすごくそう思う。



    「…なるほど」
  23. 26 : : 2014/08/14(木) 12:44:05
    苗木「はいっ!」

    舞園「はい!」

    舞園さんにバトンを渡す。

    苗木「はぁ…はぁ…」

    江ノ島「苗木お疲れー」

    霧切「お疲れ様」

    苗木「あ、ありがとう…」

    戦刃「…!」

    江ノ島「お姉ちゃんどしたの?」

    苗木「え?」

    戦刃さんは、学校とは反対方向を睨んでいた。

    戦刃「…何か…視線を感じた…」

    江ノ島「アタシのファンかな?」

    苗木「…それは違うと思うよ?」

    苗木(視線…かあ…)

    大和田「ワッショイッ!!!!」

    大和田「ワッショイッ!!!!」

    ついに、大和田クン一人で変な事を叫び始めた…

    苗木(流石に限界だよね…)

    石丸「ワッショイ!!」

    大和田「ワッショイ!!」

    石丸「ワッショイ!!」

    大和田「ワッショイ!!」

    石丸クンが復活した!


    全員リレーもそろそろ終わり。

    アンカーは、大神さんと江ノ島さんだ。

    江ノ島さんが、大神さんより速く走り始めた。

    苗木「…え、江ノ島さんってあんな速かったっけ…」

    大神さんより少し遅い程度だった。

    戦刃「…超高校級の陸上選手を分析して真似たらなんか出来たって…」

    苗木「…わぁ…」


    結果、ギリギリ逃げ切って江ノ島さんが勝った。

    苗木「さすが江ノ島さんだよ!」

    舞園「お疲れ様です!」

    江ノ島「はっはっは!もっと誉めなさい!」

    石丸『ー!』

    大和田『貸せ。これから整理体操を始めんぞ。適当に並べ』

    そして、またフリーダムすぎる整理体操を終え、今日の体育祭は終了した。
  24. 27 : : 2014/08/15(金) 20:11:14
    翌日


    苗木「あ、おはよう石丸クン」

    石丸「!」

    石丸「ーぅ!ーー!」

    苗木「…まだ声出ないんだね」

    石丸クンは頷いた。


    戦刃「…」

    江ノ島「何苗木の周りでキョロキョロしてんの、残姉」

    戦刃「え、あ、いや!違うよ!昨日の視線が気になって…近くに怪しい人いないかと…」

    江ノ島「どのみち希望ヶ峰学園内で怪しい行動できる人なんていないから」

    戦刃「え?あ、そうだね!盾子ちゃん以が…

    江ノ島「よーし残姉!とっとと教室行こうか!」

    戦刃「わ…!ちょ…!苦し…!首引っ張らないで盾子ちゃん…!」


    教室


    山田「こんにちは。朝のニュースを始めます。今日の天気は快晴です」

    大和田「ああ、すっごく晴れたな」

    大神「このような日に、体を動かしたいものだ」

    朝日奈「やっぱり晴れた日にやることといったら泳ぐしかないよね!」

    大和田「晴れっつったら爆走だろ」

    山田「晴れといえばコミケですな」

    セレス「晴れの日は外で優雅にティータイムで決まりですわ」

    山田「ならば、雨の日は籠もってDVDを見たりしますぞ」

    大和田「雨っつったら爆走だろ」

    大神「雨の日は、体を休めねばな」

    朝日奈「雨の日は濡れても変わらないから泳ぐ!」

    セレス「風邪引きますわよ」

    山田「半分が内容変わってない件」

    朝日奈「雨でバイク滑るじゃん!」

    大和田「んなことあるか!雨の中走るのが気持ちいいんだよ!」

    山田「流石は超高校級の暴走族。事故など絶対に起こさないわけですな」

    大和田「お?…おう…まぁな…」
  25. 28 : : 2014/08/17(日) 13:12:52
    カッカッカッカ

    石丸はまともに話せないので、黒板に書くことにした。

    石丸『では、HRを始めよう』

    石丸『苗木君はどうした?』

    見渡すと、苗木の姿が無かった。

    大神「欠席か?」

    石丸『いや、今朝会った』

    戦刃「…私も…朝見た…」

    霧切「…少し心配ね」

    江ノ島「どーせその辺でぶっ倒れたとかそういうオチっしょ」

    大和田「ヤベーじゃねーかそれ」

    舞園「…」

    舞園「…私、ちょっと保健室見てきます」

    舞園は教室を出て行こうとした。

    石丸『まて!』

    しかし、舞園は黒板を見ずに出て行った。

    石丸「ー!」

    ガン!ガン!

    チョークで黒板を叩いた。

    霧切「…私もちょっと行ってくるわ」

    石丸『まて!』

    しかし、霧切が見ぬフリして出て行った。

    朝日奈「まあ…霧切ちゃんは探偵だし、任せておいた方がいいのかも…」

    山田「女子2人に探されるとは…苗木誠殿め…」


    【保健室】


    舞園「はぁ…はぁ…」

    舞園「いない…」

    走って来た舞園は、保健室を調べたが、苗木がいなかった。

    霧切「いるわけないじゃない」

    舞園「!」

    霧切が舞園に追いついた。

    霧切「彼なら、ここに来る前に、必ず誰かに言っておくはずよ。丁度、石丸君も居たようだし」

    舞園「…」


    【教室】


    セレス「最後に苗木君を見たのはいつでしたか?」

    石丸『分からん…いつのまにか居なかったのだ』

    大和田「トイレにでも行ってんじゃねーのか?」

    山田「大の方ですな」

    朝日奈「あんたら馬鹿なの?」

    セレス「朝日奈さん」

    セレス「その人達は馬鹿です。何を今更」

    大和田・山田「そっちかよ!!」
  26. 29 : : 2014/08/19(火) 17:19:28
    大神「…む?」

    不二咲「あ…雨…」

    窓の外を見てみると、雨が降っていた。

    葉隠「…っまり苗っ…ちは…外にぃんのか?」

    朝日奈「…まだ声治ってないんだね…。石丸よりはマシだけど…」

    セレス「まあ確かに、苗木君一人で外に出た場合、雨にはなりますでしょうが…」

    大神「然れど…必ずしも、雨に苗木が必要ということもあるまい…」

    大和田「これが自然に降ったもんならいいんだけどなぁ…」

    戦刃「…」


    【廊下】


    舞園「あっ…」

    霧切「雨…ね」

    舞園「…まさか…!」

    霧切「落ち着きなさい、舞園さん。苗木君が外に居なくても、降るときは降るのよ」

    舞園「でも…さっきまで快晴でしたよ!」

    霧切「それを最後に確認したのは1時間前よ。少しずつ雲ができはじめても、おかしくはないわ」

    舞園「霧切さんは…苗木君が心配じゃないんですか!?」

    霧切「そんなわけないわ。ただ、視野を広げているだけ」

    霧切「それに、苗木君が外にいたとしても、探し出すのは難しいでしょう。まずは学園内を調べましょう」

    舞園「…」





    苗木「…」

    苗木「…う…ん…?」

    苗木「…ここは…?」
  27. 30 : : 2014/08/20(水) 16:08:05
    意識がはっきりしない…

    眠ってた…?

    …今何時だろう…?

    此処はどこ…?

    ボクは何をしていたんだ…?

    何だか狭い感じがする…

    真っ暗で何も見えない…

    目隠しされてる様子はない…

    手は…後ろで縛られてる…

    手以外は自由…だけど…狭くて動けない…

    ここはどこだろう…

    息苦しい…

    今何時?

    此処はどこ?

    ボクは…苗木誠。



    …誰か…助けて…





    舞園「…?」

    霧切「どうしたの?」

    舞園「何か…苗木君の声が聞こえた様な…」

    霧切「…」

    舞園「…空耳…でしょうか…」

    霧切「…苗木君の事を気にしすぎよ。彼はそんな簡単に危ない目に合わないわ」

    舞園「…そう…ですね」

    霧切「あ」

    霧切「ほら…外も晴れてきたわ」

    舞園「…はい…」


    【教室】


    大和田「おっ。晴れてきたな」

    山田「通り雨でしたか」

    不二咲「あ…!虹が出てるよ…!」

    桑田「おー!でっかくてくっきり見えるな!」

    葉隠「ん?石丸っち?どした?」

    石丸は、紙に書いた。

    石丸『僕は声が出ないから、代わりに一応最年長の葉隠君が注意してくれ』

    葉隠「はいはい。了解だべ…」

    葉隠「おいおめーら!ちゃんと授業に集中しろって!」





    さぁ…始めよう…
  28. 31 : : 2014/08/23(土) 15:10:10
    ピリリリリロロロロリ!

    「っ!?」

    全員の携帯が一斉に鳴った。

    葉隠「な…メールか!?」

    山田「全員の携帯が一斉に鳴るとは…事件の予感がしますな!」

    セレス「…」

    十神「…フッ」

    『件名;うぷぷぷぷぷぷ』

    『第七十八期生のオマエラに連絡致します!』

    『本日、超高校級の雨男・苗木誠クンの身柄を拘束させて頂きました』

    『苗木誠クンは、本日午後0時、「おしおき」を執行させて頂きます』

    『それを阻止する為には、苗木誠クンを見つけ、安全を確保してください』

    『尚、このゲームは第七十八期生以外の人物が参加する事を禁じます』

    『うぷぷ。じゃあ頑張ってね』

    朝日奈「な…なんなのこれ!?」

    腐川「おしおき…まさか…あんなことやこんなことを…!?」

    葉隠「おいおい、苗木っちは男だべ。変な想像すんじゃねーっての…」

    不二咲「これ…ひょっとしたら…苗木君が危ないんじゃ…」

    十神「俺はいくぞ。じゃあな」

    葉隠「ちょ!?十神っち!待てって!」

    セレス「それにしても意外ですわね。十神君が食いつくとは…」

    十神「こういうゲームは、全力でやらないと面白くないだろ?」

    十神は教室から出て行った。

    大和田「おい待て十神!オレも行くぞ!」

    桑田「めんどくせーけど、要はとっとと苗木見つけりゃいーんだろ?」

    大神「…苗木が心配だ」

    ぞろぞろと、教室から出て行く。

    石丸「ま…待っ…たまぇ…!みん…な…!」

    石丸の声は届かなかった…

    江ノ島「…」

    江ノ島「…うぷぷ…」


    廊下


    舞園「苗木君…」

    霧切「…なるほどね…」

    舞園は、さっそく走り出そうとした。

    霧切「待って」

    …が、霧切が止めた。

    舞園「…何ですかっ!?」

    霧切「落ち着いて。手当たり次第に探しても、見つかる筈ないわ」

    霧切「苗木君がこの学校内にいるとも限らない…。たった数時間で、隅々まで調べることは無理よ」

    舞園「なら…どうすれば…!」

    霧切「…」

    霧切「…安心して。必ず、苗木君を見つけるわ」
  29. 32 : : 2014/08/26(火) 16:59:43
    大和田「苗木いい!どこだああ!返事しろおお!」

    十神「フン。返事をする訳がないだろう」

    大和田「んだとコラァ!」

    十神「俺は事実を言っただけだ。それに、手当たり次第で苗木が見つかるとは思えんがな?」

    大和田「んじゃあどうしろっつーんだよ!」

    山田「ひょっとしたら、あの掃除用具入れの中に隠されているのやもしれぬ!僕の勘がビンビン来てますぞ!」

    十神「では、手当たり次第調べる雑用係は、山田に任せるぞ」

    山田「承知!」

    大和田「オレらはどーすんだよ」

    十神「苗木の行方を探る。安心しろ。貴様らにも存分に動いて貰う」

    セレス「苗木君の行方が分かるのですか?」

    十神「それをこれから探るんだよ。それに、俺はこのゲーム、手抜きはしないさ」

    十神「では、早速だが大和田。動ける奴らと共に、苗木の目撃証言を集めてこい」

    大和田「わーったよ」

    朝日奈「私も付き合うよ!大和田!」

    大神「我も力を貸そう…」

    十神「桑田もとっとと行け」

    桑田「へいへい」


    舞園「で…まず具体的にどうしますか…?」

    霧切「まずは、何か情報が必要よ」

    舞園「じゃあ、教室に行ってみましょう!」

    霧切「いえ。恐らくみんな苗木君を探しに行ってるわ」

    舞園「あ…そ、そうですね…」

    霧切「とりあえずあとで収穫があれば教えて貰うとして…」

    霧切「まずは苗木君がいなくなったと思われる場所に行ってみましょう」

    舞園「はい」
  30. 33 : : 2014/08/31(日) 23:16:59


    霧切「石丸君に聞いてみたら、どうやらこの辺りで苗木君に会ったらしいわ」

    2人は、ある廊下に来た。

    舞園「じゃあ、ここから教室までの中で苗木君が…」

    霧切「そうね。その可能性はあるでしょう」

    霧切「さて舞園さん。苗木君を連れ出すには、どうすればいいと思う?」

    舞園「えっ…!?」

    霧切「そうね…質問を変えましょう。苗木君を連れ出すに当たって、やってはいけない事はなんだと思う?」

    舞園「えっと…人に見られる事…ですか?」

    霧切「人に見られるくらいならまだいいわ。正解は、不自然に思われる事」

    霧切「例えば遊園地で子供を誘拐するとき、あからさまに抱えて連れて行こうとしたら、目立つし誘拐だとも思われてしまう可能性があるわ」

    霧切「だから、餌で釣るのよ。親が呼んでいる…いいものをあげる…とね。そうすれば、子供の方からついてくる。これを見て怪しむ人はほとんどいないわ」

    舞園「えっと…」

    霧切「つまりね。苗木君は自分から何処かへ行ったのよ。そこからどこかに連れて行かれたのか、その場に閉じ込められているかとかは分からないけどね」

    霧切「勿論、犯人におびき出された筈よ。それも…希望ヶ峰学園に関係している人物である可能性が高いわ。それが生徒なのか、あるいは別の人物なのかは分からないけどね」

    舞園「希望ヶ峰学園に関係のある人が…苗木君をさらって…みんなにあんなメールを…!?」

    霧切「でも不思議よね?どうやって、私達第七十八期生全員のメールアドレスを手に入れ、一斉送信出来たのかしらね?」

    舞園「…」
  31. 34 : : 2014/09/07(日) 23:41:42


    苗木「…」

    苗木(ここは…?)

    ガコンッ

    苗木「っ!」

    不意に体が投げ出された。

    苗木「って!」

    放り出され、ボクは地面に落とされる。

    苗木(…これは…土…?)

    ボクはすぐに上を見た。

    苗木(空だ…)

    ここは…どうやら外みたいだ。


    大和田「ん」

    朝日奈「あれ?」

    さっきまで晴れていたのが、急に雲が厚くなって、すぐに暗くなった。

    大神「…雨が降りそうだな」


    舞園「…さっきまで、結構晴れてましたよね…?」

    霧切「…」

    舞園「これはきっと…苗木君が…」

    霧切「…」

    舞園「霧切さん?」

    霧切は、電話に集中している。

    霧切「…やられたわ」

    舞園「え?」

    霧切「ちょっと気になった事があってね。電話で確認したのよ」


    十神「外を見てみろ」

    葉隠「ん、暗いべ?」

    十神「そうか。どうやらお前の頭には明らかに足りない部分があるな」

    葉隠「回りくどいべ!はっきり言えって!」

    十神「さっきまでそこに、使われてないトラックがあったんだよ」

    葉隠「…つまり?」

    十神「苗木の才能により、普通に連れ出すと確実に雨が降る。ここまで分かるな?」

    葉隠「馬鹿にすんじゃねーって!それくらい分かるべ!」

    十神「ならば、雨を降らさずに苗木を連れ出すには?」

    葉隠「祈るべ」

    十神「トラックを使え。何の為にトラックの話をしたと思っている」

    葉隠「トラックを使って…そっからどーすんだ?」

    十神「そのまま苗木を運べばいい。苗木の馬鹿らしい才能は、屋内では効果が無い。それはトラックの荷台の中でも同じことだ」


    霧切「つまり苗木君は、トラックでどこかに連れ去られたはずよ」

    舞園「そんな…それじゃあ見つけることなんて…」

    霧切「不可能、でもないわ」

    舞園「え…?」

    霧切「行きましょう」


    十神「いくぞ」

    葉隠「は?ちょっ…どこ行く気だべ?」


    十神「屋上だ」
    霧切「屋上よ」
  32. 35 : : 2014/09/16(火) 23:09:27
    【屋上】


    霧切「あら」

    十神「フン…」

    4人は合流した。

    葉隠「舞園っち、霧切っち。どこにいたんだべ?」

    舞園「苗木君を探し回っていただけですよ」

    霧切「あなたも同じ考えだったのかしら?」

    十神「さぁな」

    葉隠「そろそろ教えろって。一体何があんだべ?」

    十神「少しは自分で調べたらどうだ?」

    葉隠「は…!?いきなりか…!?」

    霧切「大丈夫よ。ちょっと周りを見渡せば、すぐに分かるわ」

    舞園「えぇ…?」

    ちょっと周りを見渡した。

    舞園「…え?」

    葉隠「…は?」

    2人の視線は、ある場所に止まった。

    十神「あそこか…」

    霧切「そうみたいね」

    少し離れた場所、きっちり一定範囲だけに大雨が降っていた。


    【希望ヶ峰学園外】


    霧切「恐らく苗木君は、あの雨の中心にいるわ」

    大神「だが、中心などどうすれば分かる…?」

    十神「これがある」

    十神は、小さいタブレット端末のようなものを取りだした。

    その画面には、この辺りの地図と、青い円が描かれていた。

    十神「青い範囲が雨の降っている場所だ。これを使ってさっさと行け」

    大神「…分かった。使わせて貰うぞ」

    葉隠「こういう時役に立つお金持ちポジションだべ!」

    十神「御曹司だ。ただお金を持っているだけではない」

    葉隠「へいへい…」

    霧切「大神さん、よろしくね。私達も出来るだけ早く向かうわ」

    舞園「十神財閥の車で」

    大神「うむ」

    大神は頷き、直後、超スピードで走り出した。
  33. 36 : : 2014/09/20(土) 01:48:01


    苗木「…」

    ピッ…ピッ…ピッ…

    雨の中、土の上にずっと立っている。

    かれこれもう数十分だ。

    土がぬかるんできた、それに、傘もないから体中ずぶ濡れだ。

    苗木「…はぁ」

    ピッ…ピッ…ピッ…

    足元の赤い電子時計の時間が動く度、高い電子音が鳴る。

    分かりやすい時限爆弾だ。

    みんなが助けに来てくれれば、ボクを解放して逃げられる。

    霧切さんのことだ。ボクがここにいるということくらいすぐ分かるだろう。

    時間的にも、大神さんや大和田クン辺りが居れば大丈夫なはずだ。

    ピッ…ピッ…ピッ…

    …残り時間、約1時間。

    …長すぎる。自分たちが巻き込まれないのが目的なら、数十分でいいはずだ。

    そうでなければ…1時間ないと逃げ切れない範囲爆発する爆弾?

    …分からない…


    ズダダダダダダダ!

    雨の中、大神は疾走する。

    大神「…むっ」

    左右に曲がり角。

    大神は直感で、右に進んだ。さっきからずっと直感で進んでいる。

    十神の機械は、普通の電子機器よりもデリケートで壊れやすく、大神が一瞬で粉砕してしまった。

    大神(…まさか開始5秒で壊れるほどとは…。力を入れすぎたか…)

    …そんな脆いものを大神に渡した十神も問題だが。
  34. 37 : : 2014/09/28(日) 20:45:23


    苗木「…」

    ピッ…ピッ…

    苗木「…」

    ピッ…ピッ…

    「お前の仲間が、こっちに来てるみたいだよ」

    苗木「っ!?」

    急に前から声がした。

    前を見ると、そこには…半分が白、半分が黒の不気味なクマがいた。

    苗木「なっ…何だよ…おまえ…クマ…でいいのか…!?」

    「ボクのことはこの際どうでもいいんだよ。それよりもさ…もっと大事なことがあるでしょ?君の大切なお友達が、近くに来てるんだよ」

    苗木「…」

    苗木(…やっぱり…)

    「例えばさ、その人達が来た瞬間、その爆弾が爆発したら。どうなるかなぁ?」

    苗木「…ッ!」

    「それってかなり絶望的じゃない!?アッハハハ!!」

    苗木「…やめろ…!」

    「ん?」

    苗木「みんなを巻き込むなよ!!一体何なんだよ君は!!」

    「ほら、もうすぐみんなが来る」

    苗木「…ッ!!」

    クマは、何かのスイッチを手に持った。

    「これがなにか分かる?」

    「みんなが来たのと同時に、これを押しちゃうよっ」

    苗木「止め…!!」

    ボクは止めようとした…けど…

    「どう頑張っても、君はそこから抜け出せないんだ。ただ黙って見ておくんだね」

    ボクの手は縛られていて、縛ってあるロープは、地面に固定されている。

    ここで黙って見ておくことしかできない…!

    苗木「く…!!!」


    ザアアアアアッ

    車に乗って、舞園達は移動している。

    舞園「雨が強くなってきましたね…」

    運転席は、雨でほとんど前が見えないくらいだ。

    霧切「…この雨は、苗木君の気分に関係しているのよ…?」

    十神「苗木に何かがあったと考えるのが妥当だな」

    葉隠「は?何かって?」

    霧切「今の段階では分からないけど…良くない事であるのは確かよ…」
  35. 38 : : 2014/10/06(月) 19:49:30


    ダダダダダダダッ

    大神は、大雨の中疾走している。

    大神「…むっ」

    大神は立ち止まった。

    大神「…」

    目を閉じ、精神を集中させる。

    ザアアアアアアアアア

    大神「…こっちか」

    曲がり角を曲がり、大雨の中微かに聞こえた苗木の声を頼りに走った。


    「そろそろ来たっぽいね」

    苗木「…っ!」

    …ダダダダダ…

    苗木(この音…)

    何処かで聞いた…

    この音…体育祭で…

    苗木「…大神さん…!!」

    「もうすぐ近くみたいだね」

    苗木「…ッ!!」

    苗木「や…止めろ…!」

    「止めろと言われて止めるクマに見える?」

    …ダダダダダダダ…!

    苗木「止めろ…!!大神さんまで巻き込むなよ!!」


    ダダダダダダダ!!

    大神「…!」

    苗木の声をはっきりと聞き、更にスピードを上げて走る。

    大神「…近い…!」

    そして、遂に辿り着いた。

    大神「…ここか…!」


    苗木「大神さん!!」

    遂に辿り着いてしまった…

    「とうとうきたね…!」

    クマは、スイッチを押そうとした

    「まとめて吹き飛んでしまえぃ!」

    苗木「…ッ!!!」

    苗木「待てッ…!!」

    苗木「止めろおおッ!!!!」

    ピシッ

    ズシャアアアアッッッ!!!!

    体全体が震えるほどの大きな音が聞こえ、

    目の前が真っ白になった。
  36. 39 : : 2014/10/14(火) 16:59:10
    苗木「…」

    次に目が見えるようになった時には、目の前が真っ黒になっていた。

    苗木「…!?」

    少し焦げ臭い…

    まるで、戦地の焼け跡のようだった。

    大神「…無事か。苗木よ」

    苗木「…大神…さん…!?」

    声が聞こえた方を見てみると、大神も少し焼け跡が付いていた。

    苗木「だ…大丈夫!?大神さん!」

    大神「ふっ…。この程度、我には関係無い。お主は無事か」

    苗木「…あ、うん…」

    何故かボクには、焼け跡らしきものは全く付いてなかった。

    大神「どうやら、ここに雷が落ちたらしいな…」

    苗木「…雷!?」

    大神「うむ…。この至近距離に雷が落ちたとなれば、苗木も…我でさえただでは済まぬはずではあるが…」

    苗木「…」

    …下を見ると、さっきのクマが消し炭になっていた…

    苗木「…なんだったんだろう…」

    大神「…我にはよく分からぬ。…ふんっ!」

    ブチィ!

    苗木「っ!」

    ボクの手を縛り付けていたロープをちぎってくれた。

    大神「行くぞ、苗木よ。風邪を引いてしまうぞ」

    苗木「…っくし!」

    大神「…」

    …そういえば、随分前からずっと、雨に当たりっぱなしだ…

    言われて気付いて…急にフラフラする…目が回る…意識が急降下する……

    大神「…苗木っ!」




    苗木は、大神に向かって倒れた。

    大神は倒れた苗木を支える。

    大神「…相変わらず貧弱な奴よ」

    …ーーキキッ

    長い車が止まった。

    舞園「…苗木君!」

    そして中から、舞園達が降りてきた。

    大神「案ずるな。苗木は無事だ」

    舞園「良かったです…!苗木君…」

    葉隠「ッハハ!さすがオーガだべ!」

    霧切「…一体何があったの?」

    大神「…すまぬが、我の理解の範疇を越えた事が起きた」

    十神「起きた事をそのまま話せ。命令だ」

    大神「…分かった」


    大神は、自分の体験した事をそのまま話した。


    霧切「…」

    十神「…なるほどな」

    葉隠「何か分かったんか?」

    十神「…」

    葉隠「おーい?十神っち?」

    十神「黙れ。気軽に呼ぶな」

    葉隠「はぁ!?」

    舞園「…とにかく、苗木君を早く連れて帰りましょうよ…」

    霧切「そうね。まずは苗木君の安全が最優先よ」

    十神「…チッ」

    葉隠「んじゃ、かえっか。オーガはどうすんだ?」

    大神「我はまた走って帰る事にしよう」

    十神「ついでにお前も少し運動したらどうだ?」

    葉隠「いやー…はは…十神っち、ご冗談を…」

    そして4人は車に乗り、希望ヶ峰学園へ帰っていった。
  37. 40 : : 2014/11/02(日) 02:52:13


    …予想以上の結果だった

    これは、研究のしがいがありますね。彼は単なる”雨男”に収まる器ではない

    ああ。だが、あまり無茶をし過ぎて研究に支障をきたすのも困る。今日はこれで終わろう

    はい。分かりました。

    全ては希望の為に…


    【希望ヶ峰学園】

    【保健室】


    苗木「…ぅ…ん…?」

    ボクが次に目を覚ましたのは、白い天井の下だった。

    そして、視界の隅に青色や紫色がボンヤリと見えた。

    霧切「あら。起きた?」

    舞園「苗木君っ!大丈夫ですか…?」

    苗木「霧切さんに…舞園さん?」

    ボクは起き上がろうとした…けど、頭が妙に重くて、そのまままた横たわってしまった。

    霧切「無理しない方がいいわ。単なる風邪だけど、またしばらく寝てるといいわよ」

    苗木「うん…そうするよ」

    ふと、でこに冷たいものが触れた。

    舞園「…やっぱり熱いですね。先生に知らせた方が良いでしょうか…」

    舞園さんの手だった。

    霧切「別にいいでしょう。それほど酷い熱でもないし」

    舞園「そう…ですか」

    霧切「さ、私達は行きましょう。苗木君、ゆっくり寝ててね」

    苗木「…うん」

    霧切さんは、舞園さんをつれて行った。

    苗木「…」

    ベッドの上でうずくまる。

    頭が熱くて痛くて、体がだるい。

    目を瞑ると、まるで落ちるような感覚に襲われた。

    苗木「…はぁ」

    …風邪をひくなんて、情けないな…

    外からは、元気な声が聞こえてくる。

    天気の良い日に、みんな外で遊んでいるようだ。

    ボクがいないんだから、外は天気が良いはずだ。

    この才能のおかげで、ボクは今まで天気の良い日に外で遊んだ事がないんだから。

    苗木「…はぁ」


  38. 41 : : 2014/11/02(日) 13:30:21
    天気を操る才能…もはやそれは魔法だ。だが彼はそれを実際に出来ている

    そして雷を自由に落とせるならば、それはとても強い才能になる

    彼は非常に貴重な研究対象だ。手荒い真似はほどほどにしておいてくれたまえ

    行きすぎた科学は、魔法と違わない…あの力を解析出来れば…場合によっては、本物の魔法も再現出来るかもしれないのだから。研究者として、腕がなるよ

    さて、彼に伝えておいてくれ。彼の才能を。

    自覚させることで、研究の効率を上げることにしよう

    これからも期待している…超高校級の雨男…苗木誠。


    翌日、風邪はあっという間に治った。

    朝日奈「あ、苗木だ!風邪治ったんだね!」

    苗木「うん、軽い風邪だったしね」

    朝日奈「普段から運動しないから風邪ひくんだよ!今から軽く外行って運動しよう!」

    苗木「…出来ないんだよ」

    朝日奈「え?」

    苗木「あ、いや…」

    大和田「うーっす苗木!」

    苗木「え?うわっ!」

    急に後ろから、頭を掴まれた。

    大和田「ったく無駄に心配かけさせやがってよ!」

    苗木「ご、ごめん…」

    大和田「ま、無事で良かったぜ」


    【教室】


    舞園「苗木君!もう大丈夫なんですか?」

    苗木「うん。もう平気だよ」

    葉隠「俺なんて風邪ひいたことねえぞ!もっと俺を見習え苗木っち!」

    十神「葉隠は風邪をひかないっていうからな」

    葉隠「そーそー!俺は常に健康体なんだべ!」

    桑田「おい馬鹿にされてんだぞ」


    【放課後】


    苗木「晴れてるし、ちょっと出掛けてこようかな」

    ザアー

    苗木「うん、知ってた」

    常備している愛用の傘を開いて外に出る。折りたたみ傘だと使いすぎでよく壊れるので、外行くときは必ず普通の傘を持ち歩いている。

    傘に雨が落ちる音が鳴り続けた。大粒の雨だ。

    希望ヶ峰の研究室で言われたこと。雨の日がノーマル状態、気分が良いと少しずつ晴れる。

    気分が悪いと大雨になり、キレるとその瞬間雷が落ちる。

    ボクはただの雨男じゃなく、天気を操る才能だったんだ。

    ただ、雨の頻度が高いだけで。

    でもだからといって、今から才能の名前を変えることは出来ないらしいので、ボクはどう足掻いても雨男らしい。

    苗木(…ま、別にそれはいいんだけどさ)

    舞園「苗木君?」

    苗木「え?」

    後ろを向くと、舞園さんが立っていた。

    苗木「舞園さん?」

    舞園「奇遇ですね。苗木君はどこに行くんですか?」

    苗木「うーん、特に用事も無いけど。舞園さんは?」

    舞園「ちょっと行くところがあるんですけど、苗木君も来ますか?」

    苗木「うん、そうするよ」

    舞園さんと、外の道を歩く

    雲の切れ目から太陽が覗き

    虹が架かり始めていた


    END

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hurenn1gou

フレン

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