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ペトラ「部屋の角隅」
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- 1 : 2014/06/28(土) 21:04:43 :
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これは私が大学2年生の時、保母さんのバイトを始めたばかりの頃のお話です。
期待と不安が入り混じる初仕事で、両親の帰りが遅い家庭の子のお守りをすることになりました。
可愛らしい一人っ子の女の子です。
その子は内向的な性格のせいで、あまり友達は多くないそうです。
案の定、初対面の私が優しく話しかけても、なかなか心を開いてくれませんでした。
ですから私はそんな彼女の心に少しでも近づけるよう、様々な試行錯誤を繰り返しました。
それから一ヶ月ほどが経過して、ようやく彼女も私に親近感が湧いてくれたようでした。
その子はどうもお絵描きが好きらしく、何か描いては私に見せてくれるようになったのです。
特に、風景画を描くのが好きなようでした。
その子の部屋の壁には、独特な色使いの作品が所狭しと飾ってあるのです。
そんなある日、彼女がいつものように絵を描いていた時のこと……。
ペトラ「わぁ、とっても上手だね。お姉ちゃんのこと描いてくれたのね?ありがとう。」
突出した完成度の一枚の人物画。
私はその子の頭を、愛情を注ぐように撫でました。
その子が初めて描いた人物画モデルが私だったので、つい嬉しくなったのです。
すると、意外な答えが返ってきました。
クリスタ「それ……お姉ちゃんじゃないよ。」
その子は静かに呟くのです。
ペトラ「……え?」
その絵をもう一度見直しました。
角隅の壁をバックに、どこか憂いげな表情で佇む女性。
言われてみれば確かに、私ではなさそうでした。
ペトラ「じゃ、じゃあ……この人は?」
瞬時に喉が渇き、声が上ずり、嫌な脂汗が額に滲み出ました。
クリスタ「いつもそこにいる人だよ。」
その子は何のためらいも無く、私の背後の角隅を真っ直ぐ指差すのです。
私は背筋が凍るような思いがして、ゆっくりと後ろを振り向きました。
異常は……無いようです。
ペトラ「もぅ、ビックリさせないでよ〜。」
私は強張る肩の力が抜けて、自然と視線を下ろしました。
ペトラ「……あれ?」
一瞬思考が停止して、血の気が引く感覚で意識を取り戻しました。
そこには、数本の長い黒髪が落ちているのです。
私は茶髪、その子は金髪なのに……。
その子は私の震え上がる背中に、容赦無くトドメを刺しました。
クリスタ「今もね、お姉ちゃんのこと……ジィーと見てるよ。」
くれぐれも部屋の角隅にはご注意を……
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- 2 : 2014/06/28(土) 21:09:53 :
- 暇つぶしにどうぞ
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近々長めのss書きます
その時はどうぞよろしくお願いします
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