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人類最強が見つめた背中
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- 1 : 2013/10/27(日) 23:53:06 :
- 旧調査兵団本部
古城を改装した施設で趣とやらだけは一人前のこの本部。
しかし、壁と川から離れたこの本部は
調査兵団には無用の長物であった。
しかし、今回この古城は
リヴァイ率いる特別作戦班 通称リヴァイ班の待機場所として再び活用された。
精鋭中の精鋭が集うこのリヴァイ班の
目的は巨人化能力を持つ「エレン イエーガー」の管理であった。
人間が巨人化し人間の味方をするなど
過去に例がなく人類にとって彼は利する存在なのかを示すためこの班でエレンを管理し壁外調査へ出ることが議会で決定し今に至る。
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- 2 : 2013/10/27(日) 23:54:56 :
- 壁外調査はあと30日後に行われ
それまでリヴァイ班には待機命令が降りた。
旧調査兵団本部
「今期卒業の新兵をそうそうに交えて壁外調査に出ると聞いた。」
「本当か?エルド」
「グンタ。詳しい事はわからない。しかし俺達は兵長の指示に従うまでだ。」
「そうだな。」
。。。
「なぁ。グンタ。。聞こえるか?
さっきからハンジ分隊長の叫び声がどこからともなくするんだが。。」
「ああ。。聞こえてるよ。」
ドンドン!ドンドン!
足音はだんだん近くなる。
ドンドン。。
ドン!
「リヴァイ班のみなささささーーん?」
ドンドン!ドンドン!
来た。。。。。
この扉こんなに重かったっけ。。そう思いながらも扉を開ける。
「ハンジ分隊長。こんな夜中にどうなさいましたか?」
「あ!エルド!こんばんは!グンタも!
ところで!リヴァイとエレンはどこかなー?オルオは。。」
「兵長ならもうお休みですよ。
エレンならペトラとコーヒーを淹れてます。オルオは。。外で身体を鍛えてます。」
「リヴァイもう寝たの?早いなー。
もう歳だからね!アハハ〜!
まぁ、私も暇で来ただけだから特に用事はないんだ!コーヒー1杯もらってもいいかな?」
「そうですか。どうぞ。。」
ややこしいのが来たな。。
今回新しく生け捕りにした巨人について話されたらまた寝れなくなるぞ。。
ハンジ分隊長が居座り始めて数分後。
何も知らない平和なエレンとペトラが
淹れたてのコーヒーを持ち戻ってきた。
ハンジ分隊長を見た瞬間のエレンの驚いた顔とペトラの絶望的な顔はなかなか絵になった。
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- 3 : 2013/10/27(日) 23:57:20 :
- 「ハンジ分隊長!こんな夜中にどうなさったんですか?」
エレンは不思議そうに尋ねた。
ハンジは答えた。
「やーさ!内地で良い酒が手に入ったもんだからリヴァイと呑みついでエレンの身体を調べようかなって!」
そう言うハンジの腕には高そうな酒が
大切そうに持たれていた。
「俺の身体ですか?それはどんな。。」
「それはもう。。最高に滾るやつをだよ。。♡」
エレンも何かを悟ったのか
不思議そうな顔が一瞬で曇った。
そして必死に話題をそらそうと俺達に
向かって言った。
「そ。そういえば!
グンタさんやエルドさんペトラさん。
オルオさんの討伐数や討伐補佐数を聞いて驚きました!巨人に勝つコツなどはありますか?」
おいおい。エレンよ。。
その話題は無理矢理過ぎやしないか。。
返答に困っているとどこからともなく声が聞こえた。
「まぁ。。こいつらの中じゃ、俺の討伐数が1番上だ。。エレンよ。」
「オ。。オルオさん、、、」
エレンの顔には
出てこなくて良かったのに。。と書かれていた。
「そうね。確かに私達は精鋭としてリヴァイ兵長に指名されたけど私達の討伐数、討伐補佐数を合わせてもリヴァイ兵長の
足元にも届かないのよ。」
すかさずペトラが空気をぶち壊したオルオのフォローを入れた。
さすがペトラだ。
すると今まで黙っていたハンジが突然
独り言のようにボソっと呟いた。
「過去にリヴァイを越える人類最強がいたんだよ。」
全員の視線がハンジに向けられた。
ハンジはそのまま話を続けた。
「これはまだエルヴィンが団長に
私が分隊長になりたての頃の話。
その時リヴァイはエルヴィンに連れられて
調査兵団に入団したばかりだったの。」
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- 4 : 2013/10/28(月) 00:00:37 :
- なぁ。知ってるか?
人類最強の兵士がいるんだって。
調査兵団の自由の翼のマントは緑だろ?
だけどその人のマントは
赤なんだって。
なんで?
巨人の返り血を浴び過ぎて赤になっちゃったんだって。
すげー。そんなに強いのか?
そうだよ。。
「ルシア。君を今日からリヴァイの
直属の上官として命ずる。」
「エルヴィン。。なんだ。そのリヴァイ?とか言う奴。今期卒業の新兵?」
「いいや。都の地下街のゴロツキだ。」
「はぁ?私は人間に殺されるの?」
「ハハ。君は相変わらず面白いな。元ゴロツキだよ。今は君やミケ、ハンジに続く調査兵団希望の星とでも言っておこうか。
リヴァイ。こっちへ来い。お前の直属の上官ルシアだ。分からないことは全て彼女に聞くんだ。」
「了解だ。エルヴィン。」
「後は頼んだぞ。ルシア。」
これが人類最強とのちの人類最強の出会いだった。
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- 5 : 2013/10/28(月) 00:03:35 :
- 「あーえっと私はルシア。
調査兵団で兵士長をしているの。
で、、あんたは?元ゴロツキだって?」
「ああ。そうだ。元ゴロツキだがそれが何か問題にでもなるのか?」
「聞いただけだよ。堅物。
リヴァイ。さっき名前は覚えた。
はい。これマント。そのジャケットだけでも良いけど気温が低い日なんかはみんなこれを羽織る。いいね。」
「了解だ。。
しかし、なぜ他の奴らは緑なのにお前のは赤なんだ?」
「ああ。これ?ファッション!
緑とかカッコ悪い」
「そうか。」
変人。そんな風にしか出会った当初は思わなかった。
しかしその時、俺はこの人の本当の凄さをわかっていなかったし、今でも到底追いつけやしないと思っている。
「リヴァイ。あんた座学はやったの?」
「あ?座学?」
「その顔じゃやってないね。
ふぅ。ちょっと待ってな。」
数分後そいつは分厚くていかにもつまらなそうな本を俺に突き出した。
「これ。座学の本。訓令兵はみんなやるんだよ。以前は巨人の情報や戦い方。武器の使い方が主だったんだけど、最近じゃエルヴィンが考案した長距離索敵陣形っていう壁外での索敵を学ぶんだー。実践された事はまだなくてリヴァイが初めて壁外に出る時、初めて実践されるね。」
「これを覚えるのか。」
「ええ。あんた頭働かすの苦手そうだから巨人の情報や武器の使い方その他の事は全て実技で教えるよ。だから索敵だけ覚えて!」
「了解だ。。」
「じゃぁ、明日は索敵の基礎確認するから!あと実技!
今日はここまで!私は残りの仕事を終わらせるから!」
慌ただしい奴だな。と思った。
変人で慌ただしい。面白い奴だな。
しかし、さっき初対面で匂いを嗅いできた奴と巨人の歯を大切そうに持ってた奴とは極力関わりたくはない。
明日は索敵の基礎確認と言っていたな。。
自室でやるか。。
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- 6 : 2013/10/28(月) 00:37:42 :
- コンコン。
「リヴァイ!朝だよ!あーさ!起きてー!」
「ちっうるせーな。」
声のする方へ向かい扉を開けた。
相変わらずアホヅラの上官が
基礎確認だと部屋にコーヒーを持って
入ってきた。
索敵についてはすぐに理解した。
なので基礎確認は問題なかった。
アホヅラは
「うん。よく理解出来てるね!
よし次は実技!」
そう言って
立体起動装置の使い方、巨人の生態について事細かく指導した。
アホヅラの話では、巨人は近くの人間に襲いかかりうなじに深いダメージを与えない限りは絶命せず再生する。今はここまでしかわかってないらしい。
アホヅラのくせになかなかの分かり易さだったと思う。
そんな日々を過ごすうち
立体起動装置の扱いには慣れ
兵団の事も大体は理解した。
あの匂い嗅ぎと巨人爪が分隊長というそこそこの位の人間と知った。
そして、あのアホヅラは更に上の位。。兵士長とか言ってたな。。
なんだよ。。並兵士8000人分の戦闘力って。。そんなに強いのか。。
この間なんか巨人20体1人で歌いながら倒してたとか。本物のアホだ。
そんなある日
アホヅラが言った。
「リヴァイ。なんであんたは調査兵に入団すんの?訓令兵経験があったわけでもないみたいだし。エルヴィンとはなんか知り合いみたいだし。」
「なぜ入団する?」
ああ。そんな事考えた事も無かったな。
ただエルヴィンに生活を保障するとかなんとか言われて興味本位で来ただけだ。。
「なぜ。。分からない。興味本位だ。」
その瞬間アホヅラの顔は真剣にこっちを見つめ言った。
「あんた。目的がないなら辞めな。
そんな中途半端な気持ちでやっていけるような場所じゃないんだよ。壁外は。」
初めてだったと思う。
アホヅラのあんな真剣な顔を見たのは。
「うるせー。そのうち探す。」
はぁ。。
アホヅラの溜息が聞こえた。
そして確かに聞こえた。
「なら目的が見つかるまで私があなたを守るわ。エルヴィンは言っていた。
あんたは希望の星だと。」
エルヴィンが?
「守る?女に守られるほど柔じゃねーよ。
元ゴロツキだ。強者は勝ち弱者は負ける。その仕組みは理解している。」
アホヅラはただ笑うだけだった。
しかしその目は笑っていなかった。
気がつかなかった。その時は。
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- 7 : 2013/10/28(月) 19:16:46 :
- そして初めての壁外調査が3日後に
行われると聞いた。
俺の索敵は中央指令班後方あたりで
ほぼノーリスクと言ったような配置だった。
壁外調査当日の朝
アホヅラと俺はエルヴィンのすぐ後ろで開門を待った。
「開門30秒前!!」
とうとうか。。
その時俺は思っていた。
やけにガスが軽いな。と。
しかしそれを誰かに伝えることはなかった。
「進めー!!!!!」
エルヴィンの声が響き渡ると同時に
兵士達は一斉に馬でかけた。
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- 8 : 2013/10/28(月) 19:18:32 :
- 市街地を抜けて援護班のサポートがなくなった。
長距離索敵陣形が開始された。
兵士達は自分の持ち場へかけて行った。
順調に進んでいると思っていた。
しかしいつまでたっても信煙弾が上がらない。
市街地を抜けてから随分経つ。
こんなに長い間巨人と遭遇しないなんて事があるのか?
そんな時だった。
バーン!
信煙弾。。!
あれはムラサキ!!!
緊急事態なのか?
「ルシア兵士長!
巨人が。。巨人が飛んでいます!
周囲の人間を無視して索敵を破壊しています!右翼側は全滅です!」
「ぜ。。全滅?これまで遭遇した巨人とは違う種類の巨人か!?」
「そうです!見たこともありません!
……なぜか兵士達はもうガスがないんです!」
「ガスがないだと?まだガスがなくなるほど戦闘はしていないはずだ!何故だ!」
「兵士全員のガスが補給されているはずの容量の半分もなかったのです!」
!!!!!!!!
ガスがない。。やはりそうか!
ガスが軽いと感じたのは間違いでなかった。。
「おい!アホヅラ!
俺のガスも軽い。兵士達のガスが仕込まれている。この調子だと補給班は最悪カラだ。」
「私のガスには異常はない。。
上層部の兵士のガスは抜かなかったのか!」
一体誰が。。なんのために。。
最悪を想定した。
ガスがもう半分も残っていない兵士達。
想定外の巨人。
これが壁外なんだ。。。
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- 9 : 2013/10/28(月) 19:19:45 :
- 「 ルシア兵士長!伝達は私が!」
1人の兵士が言った。
「いや!待て!私が行く!
……リヴァイ。これが壁外だ。
お前はこれから何度も何度も情報不足の中、
こうやって巨人と戦うんだ。
そして人類が勝つ日まで巨人を絶滅させる日まで決して諦めない。わかったか」
そう言ってアホヅラは
エルヴィンのいる指令班へと向かった。
「エルヴィン!!!」
「ルシア。リヴァイはどうした。」
「よく聞いてくれ。兵士達のガスが
もう半分も残っていない。私達上位の兵士以外、全員のガスが半分しか補給されていないよう仕込まれているだろう。
そしてこれまでとは想定外の巨人が現れた。周囲の人間を無視し飛ぶ。もはや奇行だ。ここで戦うのはあまりにもリスクが高過ぎる。私なら兵団が壁近くまで辿り着くまで抑えることが出来る。ガスは残っている。全員を真ん中に集めるんだ。
私は後ろから援護する。今すぐに陣形全ての兵をここへ!」
ルシアはリヴァイの元へと戻った。
「リヴァイ。お前はエルヴィンのいる指令班へ向え!一斉に兵士達が集まる!」
「了解だ。しかしお前は。」
「リヴァイ忘れるな。人類は必ず勝つ。巨人を絶滅させる。」
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- 10 : 2013/10/28(月) 22:46:35 :
- その頃
索敵全ての兵士が指令班へ集合した。エルヴィンと分隊長達が何かを話していたが内容までは聞こえなかった。
全ての兵士が集合したというのに
あのアホヅラの姿は見えなかった。
まさか。と思った。
おかしい。巨人が追ってこない。
そして遠くでは立体起動特有のワイヤーの音が聞こえる。
「エルヴィン!あのアホヅラはどこだ!
さっきから遠くで立体起動のワイヤーの音が聞こえる!まさか1人でアホヅラは戦っているのか?!!」
「リヴァイ前を向け!!」
「なぜ増援を出さない!!
お前達兵士のガスは有り余ってるだろうが!」
「リヴァイ。ルシアは必ず帰ってくる。
信じるんだ。前を向け。そして走れ!」
「もうすぐ壁です!!」
もう時間稼ぎは充分だ。
なぜ戻らない。。
おい。アホヅラ。。
戻って。。こいよ。
。。
ドンドンドンドンドンドン
なんだこの足音。
待て。もしや。。
「巨人だー!!!!!!!」
振り返ると同時に3体の巨人が
こちらに向かってくるのが見えた。
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- 11 : 2013/10/29(火) 21:19:58 :
- あぁ
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- 12 : 2013/10/29(火) 23:12:13 :
- (´;ω;`)
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- 13 : 2013/10/30(水) 15:13:55 :
- そして、追ってくる巨人1体の体に血がついているのも、
口に咥えている白いストールはアホヅラ上官がいつも巻いていたものなのもハッキリとわかった。
全身の血が沸騰した。
怒りが俺を駆り立てた。
それと同時に3体の巨人のうなじを
深く深く削いでいた。
「おい。アホヅラ。出てこい。
おい。アホ。。」
………………………?
何かがおかしい。
討伐した巨人の身体には血がついていたというのに咥えられたストールには
一滴の血もついていない。
ストールに付着していたのは茶色の細く短い動物の毛のようなものだった。
明らかに巨人の毛などではない。
なんだ。この違和感。
本当にアホヅラは死んだのか……
「リヴァイ!ぼーと立ってる暇はない!
走れ!もうすぐ壁だ!」
呆然とした意識の中
どう壁の中に辿り着いたのかは覚えていない。
ただ声が聞こえた。
「死んだのか!あの人類最強が?
嘘だろ。。人類はもう。。」
そんな声だった。
馬を降り本部へ歩くエルヴィンを追いかけた。
なぜ刃をエルヴィンの首に向けたかはわからない。
ただエルヴィンは言った。
「俺を殺すつもりか。リヴァイ。」
「ああ。そうだ。俺が調査兵団に入ったのはそのためだ。」
本当はそんな理由なんかじゃない。
ただの当てつけだとわかっている。
あの時、増援を出さなかったエルヴィンへの。
半分のガスしかなくても戦わなかった自分への当てつけだ。
無意識のまま刃に力を入れようとした。
「リヴァイ。ルシアはお前になんと言った。」
腕の動きが止まった。
「リヴァイ。聞け。人類は必ず勝つ。
巨人を絶滅させる。
リヴァイ。お前はこの意志を受け継ぐんだ。人類最強の兵士として。」
人類は………勝つ。
人類は勝つ。。
「エルヴィン。結果は誰にも分からない。アホヅラのとった行動もお前の判断も何が間違ってて正しかったかなんて言い切ることはできない。すまなかった。」
「アホヅラは言った。
人類は勝つと。必ずいつの日か。
ならばそれまで戦い続けよう。」
「ああ。人類の勝利の日まで」
「兵長!やりましょう!あいつは危険です!俺たちが殺るべきです!」
「兵長!!!」
「見殺しにする理由が分かりません!それを説明しない理由も!わからない!」
「兵長が説明すべきでないと判断したからだ!それがわからないのはお前がまだひよっこだからだ!」
「エレン何をしているの!」
お前は間違ってない。選べ。
自分の力を信じるか。
俺やこいつら調査兵団組織を信じるかだ。
俺にはわからない。
そう。あの時だって。
自分の力を信じても信頼に足る仲間の選択を信じてもいつだって結果は誰にもわからなかった。
だからせいぜい後悔しない方を自分で
選ぶんだ。
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- 14 : 2013/10/30(水) 21:05:08 :
- いい話だね!
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- 15 : 2013/10/30(水) 21:46:15 :
- わわわわ(´・_・`)♡
ありがとうございます!
兵長にもエレンのような時期があったら。。と仮定してみました!
- 著者情報
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