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  1. 1 : : 2014/04/24(木) 20:38:22
    844年 2月10日 

    近隣の木々の下

    エレン「そういや、今日はお前の誕生日だったな」

    ミカサ「…?うん」

    エレン「…何かプレゼントを買おうと思ったけどさ ミカサが本当に欲しい物が何か分からなくて」

    ミカサ「私はプレゼントなんていらない」

    エレン「そんなこと言うなよ 今まで小遣い貯めてたから、好きなもん買ってやるって」

    ミカサ「…じゃあ」

    エレン「お、なんだ!?

    ミカサ「私とずっと家族で居て欲しい」

    エレン「…!このバカッ!」

    ミカサ「え…」

    エレン「俺達はもう家族なんだから…そんな事考える必要ねぇよ」

    ミカサ「…ありがとう」

    エレン「ほら、家帰るぞ」
  2. 2 : : 2014/04/24(木) 20:56:12
    イェーガー家 夕方

    エレン「ただいまー」

    グリシャ「あぁ、エレン、ミカサ。おかえり」

    エレン「?父さん今日帰ってくるの早いね」

    グリシャ「今日はミカサの誕生日だからね。それで、プレゼントなんだが…」

    大きな箱が机の上に置いてある。グリシャはその箱から、古びた楽器を取り出した。

    エレン「これって…!」

    ミカサ「…!!」

    グリシャ「年代物だが、このギターが奏でる音は格別だよ。ミカサ、これが私達からのプレゼントだ」

    ミカサ「…!でも、こんな高い物…」



  3. 3 : : 2014/04/24(木) 21:01:58
    グリシャ「いいんだよミカサ。ミカサが家に来てから、家族が増えて私達も嬉しいんだ。これは君のモノだよ」

    ミカサ「あ、ありがとう…」


    エレン「すげぇ!アルミンに見せたらきっと驚くぜ!良かったなミカサ!」

    ミカサ「うん…ありがとう」ポロッ

    エレン「…!」

    グリシャ「さぁ、もうすぐカルラも買い物から帰ってくるだろう。今日はパーティーだ」
  4. 4 : : 2014/04/24(木) 21:15:56
    翌日 木々の下

    エレン「そのギターでなんか弾いてみてくれよ」

    ミカサ「歌うのは好きだけど、ギターは初めてだから…」

    エレン「確かにそうだな」

    ミカサ「…エレンがこのギターを弾いて」

    エレン「は?なんで俺が?」

    ミカサ「エレンが弾いて、私が歌う」

    エレン「なんでだよ、お前のギターなんだぞ?」

    ミカサ「私はエレンに弾いて欲しい」

    エレン「…分かったよ、でも俺だってギターなんて初めてだからな!?文句言うなよ?」

    ミカサ「大丈夫、言わない」
  5. 5 : : 2014/04/24(木) 21:23:06
    エレン「じゃあ何か歌いたいのあるか?」

    ミカサ「…昔、お父さんがよく聞いていた曲…」

    エレン「どんな曲だ?」

    ミカサ「名前は忘れたけど…メロディは覚えてる」

    http://www.youtube.com/watch?v=pJanaHzA4Pc
  6. 6 : : 2014/04/24(木) 21:40:42
    夕暮れ

    ♪♪・♪♪♪・♪・♪・♪♪・・

    ミカサ「………」

    エレン「おい…何笑ってんだよ」

    ミカサ「笑ってない」

    エレン「俺だって初めてなんだからな」

    ミカサ「うん…分かってる」

    エレン「…ミカサは歌上手いからな 俺が上手くなって…」

    「おーーーぃ」

    エレン「ん?おぉアルミン!」

    アルミン「どうしたのそれ!?」

    エレン「これはミカサのギターだ!まだ弾けねぇけど、音は凄くいいぜ!」

    アルミン「エレンが弾いて…ミカサが歌うの?」

    エレン「アルミンは聞いたことなかったか?こいつめちゃ歌上手いからな!」

    アルミン「へぇー、ミカサが歌ってるところ聞きたいなー」

    ミカサ「…アルミンになら、歌ってもいい」

    エレン「よし、じゃあやるぞ!」

  7. 7 : : 2014/04/24(木) 21:50:24



    「…サ…カサ…」

    「ミカサァァァァァァァァァ!!!!!!!」

    ビクゥッ

    ミカサ「!?!?!?」

    ドッドッドッドッドッ

    サシャ「ったく、いくら呼んでも起きなかったんですよ」

    ミカサ(びっくりした…)

    サシャ「ミカサが寝坊しかけるなんて珍しいですね!早くしないと朝食に間に合いませんよ!」

    ミカサ「…分かった、すぐ着替える」
  8. 8 : : 2014/04/24(木) 21:53:26
    今日はここまで。見てくれた方、ありがとうございます。
  9. 9 : : 2014/04/24(木) 21:56:17
    期待ですね~
  10. 10 : : 2014/04/24(木) 22:00:12
    期待です! MAXで!
  11. 11 : : 2014/04/24(木) 22:20:20
    すっごく期待です!(≧∇≦)
  12. 12 : : 2014/04/26(土) 21:33:34
    食堂前

    アルミン「あ、ミカサ」

    ミカサ「おはようアルミン…。…この人だかりは何?」

    アルミン「あぁ、これは…」

    食堂に入る門前に、人が群がり集まっていた。

    アルミン「トロスト区の富豪が、訓練兵団に楽器を寄付してきたんだ。訓練兵の僕達の事が不憫に思ったとか…」

    ミカサ「…エレンは…?」

    アルミン「エレンならあそこに…」

    アルミンが指さす先には、沢山の訓練兵達と共に腰を屈めて、楽器の中の一つに視線を向けるエレンの姿があった。
  13. 13 : : 2014/04/26(土) 22:03:09
    マルコ「珍しいな、エレンが静かなんて」

    エレン「は?何でだよ」

    マルコ「いつもは巨人の事以外は目もくれないのに、今日はやけに熱心に見てるからさ」

    エレン「いや、これは…シガンシナに置いてきたギターにそっくりだったから…」

    ジャン「死に急ぎ野郎がギター持ってたつーのは意外だな」

    背後から、興味の無さそうにジャンが話しかける。

    エレン「なんだよジャン、悪いか?」

    ジャン「別に悪くは言ってねぇよ。ただ、楽器を扱えるほど繊細な感性を持ってた事に驚いただけだ」

    エレン「…別に扱えるって程じゃねぇよ。元々はミカサの物だったしな」

    ジャン「は?ミカサの…?」

    エレン「ミカサが誕生日に貰ったのに、俺に弾いて欲しいって言われてよ…ミカサが歌って、俺がギター弾いてたんだ」

    ジャン「…このヤロォ!!」

    後ろからエレンの服を引っ張ると、マルコがジャンを止めに入る。

    エレン「何すんだよ!!」

    ジャン「何すんだじゃねぇだろうが羨ましい!!」

    マルコ「ジャン、落ち着け!!」
  14. 14 : : 2014/04/26(土) 22:12:49
    人だかりから少し離れた場所から傍観しているアルミンとミカサ。

    アルミン「はは…仲良いねあの二人は」

    ミカサ「…」

    アルミン「…どうしたの?」

    ミカサ「私も今日、あのギターの夢を見た。この頃夢を見なかったのに、今日は凄く鮮明に覚えている…」

    アルミン「じゃあ…弾いてみる?」

    ミカサ「エレンが嫌がる。あのギターは…色々思い出させるから」

    アルミン「…そうかな。僕には、君とエレンが楽しそうに弾いて、歌ってる光景が見える」

    ミカサ「…アルミン、もう中に入ろう」

    アルミン「え、エレンは?」

    ミカサ「…」

    アルミン「…そうだね、入ろうか」
  15. 15 : : 2014/04/26(土) 22:34:30
    ーーーーー
    「おい、何だあれ…」

    「奴だ…巨人だ…」

    「馬鹿な…あの壁は…50mだぞ」

    「奴らが…入ってくる…」

    「エレン…ミカサ…生き残るんだよ…!!!」

    「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

    パキッ

    「あ…」

    ーーーーー

    ガバッ

    ミカサ「…うっ…」
  16. 16 : : 2014/04/26(土) 22:40:29
    深夜 女子宿舎

    ミカサ「うぅ…」

    ミカサ(…また…私は泣いてたのか…)

    布団を畳むと、音を立てないように静かに私用の服に着替えた。

    ミカサ「…」

    そのまま静かに部屋を後にする。外へ出る出て何をするという目的もなかったが、そのまま一人で横になっているのが耐えられなかった。

  17. 17 : : 2014/04/26(土) 23:02:49
    兵団敷地内には小川が流れている。その川を上から一望出来る丘があり、その丘の大木の下がミカサの密かなお気に入り場所だった。
    しばらく歩くと、遠くからかすかに音が聞こえてくる。
    その音の発生元は、自分が向かっている方向にあるように思えて、更に歩く。
    その音は、どこか懐かしい、切ない音色に聞こえた。自然と足取りも早くなった。
    目的の大木が見えると、その大木の下に人影が見えた。どうやらこの音色を出している人間らしい。

  18. 18 : : 2014/04/26(土) 23:11:19
    気づかれないように、足音を消しながら大木の背後に移動した。
    この大木の向かい側から奏でられる音色は、シガンシナ区でイェーガー夫妻に貰った、そしてエレンが奏でるギターの音色にそっくりだった。
    エレンが弾いている、と思った。が、体が動かなかった。
    心ではすぐにでも向かい側の人間に会いたいが、体は金縛りにあったかのようにその場で固まり、筋肉を支えきれずそのまま尻をついた。
    すると、にわかにギターの音色が止まった。暫しの沈黙に、ミカサの心臓の鼓動は速くなる。全身が心臓のように脈打っていた。こんな感覚は、厳しい訓練でも一回もなった事がなかった。

    向かい側から、小さく息を飲む音が聞こえた。
    そして、再び音色が奏でられる。先程弾かれていた音とは違う音色だった。
    そして、音色とリズムに合わせて、透き通るような、優しい声が聞こえてきた。
  19. 19 : : 2014/04/26(土) 23:14:12
    あぁ 歌うことは 難しいことじゃない

    ただ 声に身をまかせ 頭の中を空っぽにするだけ 

    あぁ 目を閉じれば 胸の中にうつる

    懐かしい思い出や あなたとの毎日

    本当のことは 歌の中にある

    いつもなら 照れさくて言えないことも

    今日だってあなたを 思いながら

    歌うたいは歌うよ ずっと言えなかった言葉がある 

    短いから聞いておくれ 愛してる 
  20. 20 : : 2014/04/26(土) 23:28:36
    それは、ミカサの父が好きだった曲だった。
    そして、初めてギターを貰った時に、エレンが練習してくれた曲でもあった。
    胸から温かい何かが溢れ出てきて、自然と涙が零れ出た。ギターの音色も、初めて聞くエレンの歌声も、全てが優しく心に入ってきた。体の内にあった塊が、溶けていく感覚を確かに感じた。

    「暖かい…」

    マフラーを握りしめながら、好きだったこの歌を、向かい側のエレンと共に、いつまでもずっと歌っていた…。
  21. 21 : : 2014/04/26(土) 23:29:02
    終わり。
  22. 22 : : 2014/04/26(土) 23:36:08
    歌うたいのバラッド、これで誰か手書きMAD作って欲しいですね…。
    読んでくださった方、ありがとうございました。

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