このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。
【ロンパ&ドラゴンズ】四章:過去と真実
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- 1 : 2014/04/11(金) 01:08:09 :
- 序章:http://www.ssnote.net/archives/6840
一章:http://www.ssnote.net/archives/7111
二章:http://www.ssnote.net/archives/7385
三章:http://www.ssnote.net/archives/7981
恐ろしい鈍足ですがなんとか四章まで来ました。なんで長編2本も兼ねようとしてしまったのか()
資料についてですがやっとこさ重い腰が上がりまして、猛スピードで進めています。
出来上がったものから順次Twitter(プロフィール参照)にうpしていく予定です。
異様な前振りの長さになってしまいましたが、このシリーズもいよいよ後半戦に入ってきました。
最後まで楽しんでいただけるよう尽力致しますので、温かい目で見守っていただけると幸いです。
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- 2 : 2014/04/11(金) 01:10:40 :
苗木『カムクライズル……』
カムクラ『…最初から、期待はしてませんでしたが』
苗木の言葉を無視して、古い竜は───カムクラは言葉を続ける。
カムクラ『あなたたちはいつでも僕の期待を裏切る。まったく、どこまで勝手な存在なんですか』
苗木『勝手なのはどっちだよ!協力したと思えば邪魔してきたり、ヘンな夢を見せたり……』
ソニア『日向さんを返してください!彼は、どこに行ってしまわれたのですか…!?』
墜落してきた日向の体の周りには、彼の友人たちの心配そうな顔が揃っていた。
豚神『日向!』
澪田「起きるっす!創ちゃんが寝ちゃうと唯吹もつまんなくなっちゃうっすよ!」
終里「おい日向、テメーいつまで寝ぼけてんだよ!起きてくれよ!」
九頭龍「オイオイ…、冗談じゃねぇぞ……!!」
しかし、いくら声をかけたところで返事はない。
ただ、闇色に落ちくぼんだ眼に、必死に呼びかける彼らの顔が映るだけだった。
カムクラ『日向創を返せ?日向創はどこへ行った?愚問ですね。日向創はかつての僕であり、今は隠れ蓑』
カムクラ『おとぎ話にもあるでしょう?「古い竜は姿を変え、今も世を見守っている」と』
カムクラ『それが日向創なんですよ』
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- 3 : 2014/04/12(土) 01:14:41 :
- ついに四章まで来たね!
ゆっくり期待して待ってるぜ!
応援してるよ
資料も急いで雑にならないように頑張って
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- 4 : 2014/04/22(火) 12:05:43 :
- 本当に面白すぎてヤバイっすわwww
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- 6 : 2014/04/22(火) 22:44:21 :
カムクラ『それに僕が勝手だって?…何も知らない者が知った体でほざくな』
しん…と空気が静まり返った。
カムクラの長い鋭鱗がゆらりと振れる。その間から、咎めるような鋭い眼光。
カムクラ『いえ、あなたの場合は知らないのではなく忘れてしまっていたのでしたね…苗木誠』
苗木(ボクが…忘れてる?)
苗木『忘れてるって何をだよ!答えろ!』
カムクラ『ええ、もちろんそのつもりです。でもその前に……』
カムクラはふわりと地に降り立つ。
地上の者たちは警戒して、反射的に後ずさった。
…江ノ島盾子と戦刃むくろ以外は。
江ノ島「あー、分かってる分かってる。おい残姉」
戦刃「【霧裂き】の根絶やしだね」
そう言って戦刃は跳ねる。その足が再び地に着く前に
戦刃「ゴアアアアァァッ!!!」
戦刃の姿は竜へと変貌していた。
戦刃『悪いけど…』
苗木『させないっ!!』
彼女がアクションを起こす前に、苗木は動く。
ドンと大きく足踏みすると大地がささくれ立ち、戦刃を貫かんと向かっていった。が…
戦刃『効かないよ』
ガラガラガラッ…!
逆に戦刃の強靭な体躯が、大地の矛を砕いた。
苗木『なっ…!!』
戦刃『苗木くんそれ本気?私、知ってるよ。君の力がこんなものじゃないこと』
探るような視線に、苗木はただただ困惑する。
苗木(この状況で本気じゃないワケないのに…!!)
江ノ島「お姉ちゃん、苗木のことは後でいいから【霧裂き】殺せ!」
戦刃『ご、ごめん。盾子ちゃ…狛枝『させないよ…っと!』
シュウウウウ……
戦刃『!?…あっ、つ……!』バッ
身を腐らせる《瘴気》にひるみ、戦刃は飛び退いた。
狛枝『ふう。セリフを遮られてばっかりだったし、やっと遮り返せたって感じだね。あははっ』
苗木『狛枝クン!』
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- 7 : 2014/04/22(火) 23:33:05 :
十神『貴様…!』
狛枝『わわっ、ちょっと落ち着いてよ。ほら深呼吸深呼吸』
十神『フン。その深呼吸で俺たちの肺でも腐らせる寸法か?』
狛枝『あっ…。参ったなあ、別にそんなつもりじゃなかったんだけど』
狛枝は困ったように笑う。その笑みは出会ったころと何ら変わりない、人のいい笑顔だった。
狛枝『ボクはただ、彼女を連れてきただけだよ』
罪木「こ、狛枝さぁん!私、確かに《瘴気》は平気ですけど、いきなりはびっくりしちゃいますよぉ……」
罪木「…ってきゃああああ!日向さんに滅びの竜さんも重傷ですううう!!」
狛枝の背からひょっこりと顔を覗かせたのは罪木。
医者である彼女は目の前の惨劇に絶叫する。
豚神『罪木!すぐに診てくれ!』
罪木「はいっ、了解ですぅ!」
狛枝から飛び降りた罪木は、一目散に日向の傍へと駆け寄る。
苗木『狛枝クン、舞園さんは!?』
狛枝『危険だから里に帰るように言っておいたよ。危なくなったら助けを呼ぶように頼んだから大丈夫』
苗木『そうか…。えっと、ありがとう』
狛枝『どういたしまして』ニコッ
十神『………………』
苗木はさっきのことなんて忘れたようにお礼を言ったが、十神はずっと猜疑の眼差しを向けていた。
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- 8 : 2014/04/23(水) 00:35:50 :
澪田「蜜柑ちゃん、どうっすか!?」
罪木「…ど、どうしましょう……」オロオロ
カムクラ『無駄ですよ。ソレは生き物ではありませんから、あなたの《治癒》は通じません』
罪木「ふぇっ!?」ビクッ
カムクラは惑う罪木へと呼びかける。
罪木の《治癒》は生命力を分け与える業。
彼女の鼓動は傷を癒やす波動を持っており、対象と鼓動をシンクロさせることで、その波動を伝え、対象の傷や病を癒やす。
…つまり、必要なのはシンクロさせる鼓動。
いくら彼女でも、脈打たない屍を蘇生させることは不可能なのだ。
カムクラ『まあ、抜け殻にはそもそも蘇生させる命などありはしませんが』
罪木「ひ、日向さん……」
それを聞いて、罪木は俯いて唇を噛む。
罪木「私は医者…今ある命を一つでも多く助けないといけないんですぅ……」
罪木「だから、ごめんなさいいぃ…!!」
彼女は涙で顔をぐしゃぐしゃにしながらも、霧切の方へと移動した。
江ノ島「おっと、それは困っちゃうな!」ポポン!
モノクマ『いうならば、この世から正義がなくなっちゃうぐらい!』
モノクマ『希望を持って人が死ぬぐらい!』
モノクマ『ボクは困っちゃうんだよなぁ!』
その背を召喚されたモノクマたちが狙う。
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- 9 : 2014/04/25(金) 23:56:22 :
狛枝『邪魔しちゃダメだよ?』
狛枝がその間に割り込み、《瘴気》を浴びせた。
モノクマ『あぎゃあ!?』
狛枝『フフフ』ゴウッ
吐き出した炎が、腐り落ちたモノクマたちを焼き尽くす。
狛枝『ボクの《瘴気》は単なる毒とは違う。有機物である限り、この脅威からは逃れられないよ』
狛枝『想像できる?《瘴気》が体内外の見えないバクテリアを活性化させて、キミたちの皮膚を、ウロコを、ぐずぐずに分解していくんだ』
狛枝『そして《火炎》はそのバクテリアたちを皮膚もろとも焼き払う。あとはウジがわいて肉を食い荒らし、そこにハエが集るんだよ……』
誰に向けるでもない解説。
おぞましい狛枝の力に、それを身を持って体感した苗木は、思わず息を飲んでいた。
狛枝『ただ罪木さんは脈打つたびに細胞が蘇るから、大した苦痛は与えられないんだけどね』
戦刃『それで私たちを近づかせないつもり?そんなの我慢すればいい。あるいはあなたを倒すか』
そう言って、じりじりと近寄る戦刃。
だが、それはカムクラによって阻まれた。
カムクラ『やめなさい。あなたは僕が殺すのですから』
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- 10 : 2014/04/30(水) 01:21:44 :
戦刃『…うん』
戦刃はカムクラの言葉に不服な様子を見せながらも従った。
十神『殺すだと?貴様らはグルなのではないのか』
カムクラ『グル…、まあ間違いではないですね』
江ノ島「もう面倒くせっ。カムクライズル、全部教えちゃったら?」
カムクラ『…いいでしょう』バサッ
そう言うと、カムクラは羽ばたき、再び空中へと舞い戻る。
カムクラ『すべての真実を伝えましょう。そして失ったものの価値を知れ、【悲劇の時代】ロストワンの忌まわしい者どもよ』
カムクラ『…ただ、その前に霧切響子。この《濃霧》を晴らしなさい』
霧切『イヤ…よ……』
か細い霧切の返答が聞こえる。
罪木「はわぁっ!まだ治療中なので、無理はいけませぇん!!」
霧切『そういう問題じゃないの……』
必死に止めようとする罪木をちらりと見ると、霧切は自らの真実を語り出した。
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- 11 : 2014/04/30(水) 01:40:04 :
霧切『古い竜が操る力の1つである《太陽》の力……。強力だけど、日光を遮られる事が弱点なの』
霧切『私は、古い竜がために日射を阻む霧を晴らすことを宿命づけられた【霧裂き】の忌名を持つ。逆に私が霧を払わなければ、古い竜の力は激減するわ』
霧切『私が各地を《濃霧》で覆ったのは、古い竜の脅威を少しでも削ぐためだったのよ……』
江ノ島「まあ、そこはアタシとお姉ちゃんが直々に潰していったから、【滅びの竜】なんて大層なあだ名付けられて諸悪の根源みたいな扱いされちゃったとは皮肉な話よね~」
切実な霧切の声に重なる、あざ笑うような江ノ島の声。
朝日奈「じゃあ、霧切ちゃんが世界中飛び回って霧を撒いてたのは、あたしたちを守ろうとして…?」
カムクラ『ええ、その通り』
問いに答えたのは、上空に静止するカムクラだった。
カムクラ『あなたたちはあやふやな噂を鵜呑みにし、真実を確かめようとも、霧切響子の話も聞こうともしなかった。…まったく、嘆かわしい事です』
狛枝『…それなら霧切さん。どうしてそのことを話さなかったんだい?』
狛枝の問いに、少しの惑いを見せながらも、霧切は答える。
霧切『むやみやたらに他言して、それが噂にでもなったら、江ノ島盾子や戦刃むくろは関わった人たちを殺戮してしまうわ。…それだけは避けたかった……』
これが、滅びの竜の真実だった。
古い竜を裏切り、その力を弱めるために行動し…
……結果的に汚名を着せられ、守ろうとした人間や竜たちに敵意を向けられ、疲労困憊しながらもなお、戦い続けたのだ。
苗木『そんな…。どうしてキミはそこまでして……!』
霧切『…これでも人間は好きなの。それに、古い竜にはいろいろ私怨があるのよ』
気丈に、ふっと笑いながら答える霧切。
苗木(ああ…。なんて強いんだろう)
そんな彼女に対し、言葉にできない感情が沸き起こる。
哀れみ、畏怖、後悔、羨望、尊敬……そんな感情をぐちゃ混ぜにしたような気持ち。
苗木はその不可解な感情に、吐き気のようなものすら覚えていた。
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- 12 : 2014/05/03(土) 23:50:41 :
カムクラ『…まあいいでしょう。【霧裂き】にも真実を伝えることにします』
カムクラは、若干気だるそうに霧切を見下ろした。
カムクラ『罪木蜜柑。…霧切響子の治療は終わりましたか』
罪木「ふぇっ!?なんで古い竜さんは私の名前を知ってるんですかぁ!?」
カムクラ『…僕はカムクライズルである以前に日向創としてあなたと関わっています』
カムクラは『そんなことも分からないのか』とでもいいたげな目で、じろりと罪木を見下ろす。
澪田『じゃあイズルちゃんは唯吹たちのこともしっかり覚えてるじゃないっすか!』
カムクラ『ええ、覚えてますよ。…それがどうしたんですか』
カムクラ『言っておきますけど「友達だったじゃないか」みたいな安いセリフは通じませんから』
里の誰かが反論しようとして、その言葉はついに口から飛び出すことはなかった。
カムクラ『あなたたちが友達だと言い張るのは「日向創」であって、僕ではないんです。…そのあたり、混同しないでくださいよ』
非情で冷たい声と視線。
それこそ「日向創」と「カムクライズル」の決定的な違いを示す、何よりの証拠だった。
カムクラ『さて、そろそろいいでしょうか』
そう言うと、念じるように瞳を閉じて、天を仰いだ。
カムクラ『江ノ島盾子の《睡魔》と僕のテレパシーで過去と真実の全てを伝えます』
カムクラ『ただ、「認めない」なんて言い張るのはやめてくださいよ。苗木誠、霧切響子』
苗木(…なんでボクと霧切さんだけ名指しで……?)
江ノ島「ハーイ、じゃあ行っくよー!」
その疑問が形になる前に、意識はまどろみへと落ちていった。
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- 13 : 2014/05/03(土) 23:57:54 :
苗木『んっ……』
目が覚める。辺りに景色と呼べそうなものはなく、ただ空間が揺らめくのみだ。
苗木『夢…か……』
霧切『苗木君』
苗木『霧切さん!キミもいたのか……』
目の前に現れたのは、美しい毛鱗の彼女。
逆に彼女以外の仲間の姿は、どこにも見あたらなかった。
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- 14 : 2014/05/04(日) 00:01:08 :
カムクラ『いいでしょうか』
苗木・霧切『『!!』』バッ
突如かけられた声に、苗木と霧切は身を翻し、声の主を威嚇するように睨み付けた。
カムクラ『落ち着いてください、これは夢ですよ。つまりここで何をしようと、僕にもあなたたちにも影響はない』
そんな2人を目の前に、カムクラはあくまで冷静だ。
カムクラ『これからあなたたちに見てもらうのは、6億年前の真実。これを見ればあなたたちの本当の役目を思い出すでしょう……』
そう言うと、まるで空間に溶け込むように、カムクラの姿は消えた。
…それと同時に世界が歪む。
苗木『くっ……!』
霧切『苗木君、こっちに来て!』
襲い来るめまいに耐えながら、彼女の声のする方に駆け寄る。
霧切『何が起きるか分からないわ…。しばらくお互い傍にいましょう』
苗木『分かった』
そう会話している間にも、空間は揺らめき、一つの景色を形作った。
そこは薄暗い、鼻につく薬品の臭いが立ち込めた部屋だった。
◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇
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- 15 : 2014/05/04(日) 00:11:52 :
【繁栄の時代】グロウ末期(約6億年前)
=松田夜助の研究室=
松田「…失敗か」
ガラス筒の中で眠りながらたゆたう被験体を睨みながら、松田は一言愚痴った。
◆松田夜助…飛竜・鋭鱗種(竜人)
誓約者:音無涼子
*特別な力こそないものの、生まれながらに竜人へ変貌できる竜。【竜博士(リュウハクシ)】の忌名を持ち、自らの特異な体質について研究を重ねている。
音無「まーつだくんっ!もう入ってもいいかな?いいかな?」
そこに不意に部屋のドアが開き、ひょっこりと少女が顔を覗かせる。
◆音無涼子…竜人
誓約竜:松田夜助
*破滅的に忘れっぽく、自らの能力すら忘却した少女。能力とは別に、データにより先を見通す分析の才能を持つ。誓約竜である松田の気を惹こうと一生懸命で、自ら実験に協力している。
松田「うるさいドブス。もう少し待っとけ」
音無「えええっ!?無理無理無理!これ以上松田くんと離れてたら私、ウサギみたいに寂しすぎて死んじゃうよ!!」
松田「いいこと教えてやる。…それは迷信だ」
音無「ウサギが死ななくても私は死んじゃうの!」
音無は赤髪を振り乱しながら、ぷくっと頬を膨らませた。
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- 16 : 2014/05/04(日) 00:20:34 :
音無「松田くん、今日は私とお買い物に行くって約束したじゃん!嘘つきは泥棒の始まりだよ!お買い物はレジに通さないと泥棒だよ!」
松田「何言ってるんだお前……」
焦ってるのか、よく分からない事を口走る音無に呆れながらも、松田はすっと目を細める。
松田「それに、そりゃいつの話だ?俺は覚えがないぞ」
音無「私もないけど…事実だよ、ほらっ!」バサッ
彼女が広げたのは『音無凉子の記憶ノート』と大きく書かれたノートだった。
そこには確かに「松田くんとお買い物!」という、大きく書いたうえに赤ペンでグルグルと印を付けられた言葉が記されている。
音無「ね、嘘じゃないでしょう?」ドヤァ
松田「…チッ。しょうがないか……」
誇らしげにノートを掲げる音無を前に、松田はわしゃわしゃと頭を掻いた。
松田「俺も、買い物があるしな……」
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- 17 : 2014/05/04(日) 19:15:39 :
- 安定の文体に安定の面白さですね!
引き続き帰宅です!!
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- 18 : 2014/05/07(水) 01:48:04 :
- >>17
うおおおありがとうございます!(誤字には触れないでおきますねw)
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- 19 : 2014/05/07(水) 01:48:15 :
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夢を見ながら、苗木は不思議な感覚に囚われていた。
苗木(どうしてボクが…彼らの名前を知ってるんだ?)
初めて見たはずの音無と松田という存在を、何の疑問にも思わずに受け止めている自分がいる。
苗木(どこかで会ったこと…ないよな。これは6億年前の話だし……)
だからこそ、不気味だった。
自分も知らない自分がいて、それがあの2人を認識しているだけ───そんな錯覚さえ覚えた。
苗木(イヤ、これはカムクラの力か何かだきっと……)
不安を払いのけるように首を振る。
そして再び、夢をじっくりと見続ける。
───────────
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- 20 : 2014/05/07(水) 01:52:21 :
音無「ねえねえねえねえねえ、松田くんがほしいものって何?」
松田「ねえは1回だろ。オウムかお前はよ」
音無「ねえいいじゃんいいじゃん!教えてよ~」グイグイ
松田「わーったわーった。分かったから離れろ、臭うだろブス」
音無「ひどい!ちゃんと毎日、お風呂入ってるよ!」
松田「…情報だよ」
音無「…ほえ?」
突然示された答えに、音無はポカンと口を開ける。
松田「最近はいい被験体が減ってるからな…。せっかく実験に成功した奴が1人でてきたんだ、絶対に解き明かしてやる」
音無「そうだっけ?忘れちゃった」
松田「………………………」ハァ
松田は素っ気なく、親指で1つのガラス管を指差す。
そこにはショートの黒髪、色白の肌にそばかす、細身だが筋肉の付いた体の少女が浮かんでいた。
ガラス管には『被験体No.3756…戦刃むくろ』と書かれたラベルが貼られている。
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- 21 : 2014/05/07(水) 01:54:15 :
松田「ちょっと前に、自分から実験に協力したいと名乗り上げたヤツだ。媒体の竜との適合率が他の被験体の数倍高かった、良い素材だよ」
音無「ほぇ~。…媒体の竜ってどの子?」
松田「アイツだ」
松田が指さしたのは、戦刃むくろのガラス管の数倍はあるガラス管。
そこには───苗木にも見覚えのある───緑味がかったウロコの竜が浮かんでいた。
苗木(日向クン…!?)
松田「日向創…、こいつも良い素材だ。あらゆる実験に耐える、頑強な体を持っている」
松田「奴隷商人から逃げてきて、俺に協力するのを条件に保護したんだ」
音無「ふむふむ」
松田の言葉に続いて、さらさらとペンが紙の上を滑る音がする。
音無「じゃあ、この子に適合したのが戦刃むくろってことなんだね」
松田「ああ。…だが、戦刃むくろ以外の被験体は、適合出来ずにこくごとく廃棄になっちまう」
松田「だから、俺は情報のプロに良い素材になる竜人を探させてたんだ」
音無「うん、納得納得!じゃ、街に行こう!」
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- 22 : 2014/05/10(土) 00:31:31 :
=市場=
市場は人混みと、そこから生まれるたくさんの音が密集している。
音無「すごい熱気だねー…」
松田「なんたって里…いや、街のシンボルだからな」
音無「里?どうして里って言っちゃったの?」
松田「前も教えたはずなんだがな……」
音無「…忘れちゃった、ごめん」
しゅんと肩を落とす音無を横目に、松田はぽつぽつと語り出す。
松田「ここは昔、【希望ヶ峰の里】と呼ばれ、竜の王である古い竜の生誕地だと伝えられていたんだ」
音無「ふ、古い竜!?」
音無が反射的に声を張り上げる。と同時に、嘲笑と侮蔑の視線が彼女に向けられた。
フルイリュウダッテ…クスクス
アンナノコドモダマシノオトギバナシナノニナー
イマドキリュウトカハヤンネーンダヨ
松田「マヌケ」ゴチン
さらに松田の拳が、彼女の後頭部を打つ。
音無「いったーい…。いきなり殴るなんて、女の子にする事じゃないよ!」
音無「それに、何この空気……」
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- 23 : 2014/05/11(日) 02:49:38 :
松田「決まってんだろ。古い竜の伝説なんて、今どき子どもも信じてないようなおとぎ話なんだ」
【繁栄の時代】グロウ
数十億に渡る世界の盛衰の中でも、最も人間が高い技術力を持っていた時代。
その圧倒的な科学の英知は、例え能力を操る竜や竜人であろうと、簡単にねじ伏せてしまうほどだ。
それゆえ、人間は竜や竜人を『恐るるに値しない下等生物』と捉えていた。…能力を持たない竜なら、なおさらだ。
松田「この街にいる竜なんて、奴隷か俺か…あとは、山に住んでる賢者の誓約竜ぐらいだろ」
松田は自らの奇異な能力を隠れ蓑に、こっそり暮らしながら研究を続けている。
音無「えっと…。それで、ここは今なんて名前なの?」
???「お姉ちゃんは相変わらず忘れっぽいなあ。ここは【人の都市】テンプルムだよ」
音無「なるほど…。ってきゃああああ!?あなたいつの間にそこにいたの!?」
???「きゃははっ、面白ーい!毎回同じ反応だよね、お姉ちゃんは」
音無の前に立っていたのは、地味で特徴のない顔をした、小柄な少年だった。
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- 24 : 2014/05/17(土) 00:13:40 :
- 音無ちゃんはどのタイミングで盾子ちゃんになるんやろ?
期待です♪
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- 25 : 2014/05/19(月) 18:46:00 :
- >>24
期待ありがとうございます!色々考察してみてくださいね^^
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- 26 : 2014/05/19(月) 18:46:10 :
???「じゃあ自己紹介しようか!僕は裏の情報屋でスーパースパイ!名前はふぁみひろふうほあお」モグモグ
音無「ちょっと!なんで肝心なところでパンを食べ出すの!?」
???「ん?ああ、ごめんごめん」
少年は口にした菓子パンを飲み込むと、改めて音無に向かい合う。
神代「僕は裏の情報屋でスーパースパイ!名前は神代優兎だよ」
◆神代優兎…純血
誓約竜:なし
*影の薄さを逆手に取り、この街で情報屋兼スパイとして活躍する少年。好奇心旺盛で、売り渡すために集めた情報を、独自に分析したがる。それゆえに知識も豊富。
神代はそう言って胸を張った。
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- 27 : 2014/05/19(月) 21:10:11 :
神代「じゃ、自己紹介はこの辺にして仕事の話だね!僕もう我慢できなくてムラムラだよ」
音無(へ、ヘンな擬音が聞こえた気がするけど無視しよう……)
松田「…その様子だと、結構な収穫があったらしいな」
神代「モチのロンですがな!そもそも僕に依頼した時点で、収穫がないなんて有り得ないよ」
そう言ってパンを一口かじると、神代は本題へと移る。
神代「さて、君たちはこの街を囲んでる不死山に住んでる賢者を知ってるかな?」
松田「聞いたことはある。確か、名前は……」
神代「村雨早春だね!」
松田「…そうだな」
答えを横取りされて、若干顔をしかめながらも、松田は同意した。
松田「おいブス。ちゃんとメモっとけよ」
音無「合点!」
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- 28 : 2014/05/20(火) 22:32:05 :
松田「それで、その賢者がどうかしたのか」
【賢者】村雨早春
不死山に隠れ住む青年で、【ヤマタノオロチ】の忌名を持つ竜を誓約竜としている。
希望ヶ峰の里を人の都市テンプルムへ改造する事への、数少ない反対者だった。
…現時点、松田が持ち合わせている情報はこれぐらいのものだ。
神代「その賢者なんだけどさ…。実は不死山で隠居しているのは、どうもあるモノを守っているかららしいんだよね」
音無「あるモノ?」
音無がこてんと首を傾げると、神代は「ムフフ」と不敵に笑った。
神代「それが、松田夜助のお目当ての竜人だよ」
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- 29 : 2014/05/22(木) 21:16:14 :
松田「特別な竜人なのか?」
神代「そうそ!なんでも【言霊の娘】って呼ばれていて、忌名を司る少女らしいんだ」
神代「…それにうさんくさい話だけど、なんでもその言霊の娘って、古い竜の妹にあたるらしいよ」ボソッ
露骨に周囲を気にしながら、神代は小声でささやく。
松田「古い竜の妹か…。それが本当なら、適合率は悪くなさそうだ」
音無「松田くん!でも本当にうさんくさいよ!信じるの!?」
松田「俺は特別口にしないだけで、古い竜の存在は信じている。…そうでもしねーと、『進化』って言葉じゃ片づけられないんだよ。竜の力はな」
そう言って、松田は首を回した。
松田「報酬は…。調べる自由だろ」
神代「分かってるね。さすがお得意さんだ!」
神代は本当に面白い依頼に当たったとき、決して報酬に金を要求することはない。
ただ、その情報について知る権利を要求するのみだ。
松田「別に何しようと勝手だけどよ…。死んでも知らないからな」
神代「僕が死ぬわけないじゃん。だって僕はスーパースパイだよ?きゃははははは!」
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- 30 : 2014/05/23(金) 22:43:22 :
────────────
狂気じみた神代の眼光と笑い声。それに苗木はひどい不快感を感じていた。
苗木(何でだ?何で彼らの言動を見ると、とても腹が立つ…?)
───決まってるでしょ。
苗木(!?)バッ
霧切『…苗木君?』
苗木『あ、イヤ…。何でもないよ』
苗木(またテレパシーか……)
でも、この声はカムクラじゃない。もっと近しい者の声。
とても懐かしいのに…。なぜか、思い出せない少女の声。
───あの人たちはもうすぐ、言霊の娘に手を出すから。そんなことも分からないの?
───まったく。何回転生しても変わんないよね、そういうところ
───ねえ、お……
そこで、声は途切れた。
誰かに無理やり声をかき消されたかのように、唐突にその声は消えた。
苗木(……?)
結局、声の主は分からないまま、夢の景色は転換する。
塔の頂のような場所。そこに音無と松田は並んで立っていた。
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- 31 : 2014/05/24(土) 22:48:13 :
音無「いい天気だね、探し物日和!」
さんさんと注ぐ日光とそよぐ風の心地よい冷たさに、音無はぐっと体を伸ばす。
これだけの高所なら、街の汚れた空気を、不死山の澄んだ空気が吹き飛ばしてしまうのだ。
松田「ああ。…迷っててもしょうがない、行くぞ」
音無「うん、準備OKだよ!」
音無の返事を聞くと、松田はその場から飛び降りた。重力に従い、彼の体は吸い込まれるように下へ下へと落ちていく。
音無「う~っ…。いつ見てもヒヤヒヤするなぁ……」
松田『まあ、そうかもな』バサッ
下降していった松田は竜へと変貌し、再び音無の元まで舞い戻ってきた。
細い体躯に青みがかった鋭鱗、大きな背の翼をはためかせている。
松田『乗れ、行くぞ』
音無「レッツゴー!」ピョン
音無が背に乗ったことを確認すると、松田は不死山へ向かって飛び出していった。
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- 32 : 2014/05/25(日) 22:33:03 :
=不死山:上空=
松田『………………』キョロキョロ
音無「松田くん、さっきからそわそわしてるけど、どうしたの?」
松田『おい、ドブス。しっかり捕まってろよ』
音無「そ、それはベルトもとめてるし大丈夫だけど…敵がいるの?」
音無が見る限り、視界に特に襲いかかってくるような生き物はいない。周りにいる生き物と言えば、大人しい草食の飛竜や、さえずる小鳥たちぐらいだろうか。
松田『いるんだよ。賢者の誓約竜がな』
音無「賢者の誓約竜?…なんだっけそれ」
松田『…ノート見ろ。昨日教えただろ』
音無「あ、そうだね!そうするよ!」
バタバタと風に煽られる、暴れるノートのページを押さえながら、音無は目当てのページを見つけた。
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- 33 : 2014/05/29(木) 23:03:34 :
賢者の誓約竜
*忌名は【ヤマタノオロチ】
*賢者を守る黒い走竜
音無「情報少なっ!」ガーン
松田『ああ、遠目で見た人間が数人いるぐらいだからな』
松田『…まあ実際、見つかってなぶり殺された人間もいるんだろうけどよ』
音無「う~…。で、でも松田くんは飛べるから、走竜のこの子は相手しなくてもいいんじゃないかな?」
背筋の寒くなった音無は、苦笑いで松田へと問いかける。
それに対する松田の返答は
松田『そういう訳にもいかないみたいだな。おいブス落ちんなよ』
音無「えっ…?」
そう言った瞬間、ぐらりと体が傾いた。松田がターンを描くように、何かを避けたのだ。
音無「ひゃあっ!」
そしてその何かは、空を切る黒い腕だった。
音無「っ!!」ゾクッ
???『ちっ、気づいてやがったのか。…まあいい』
細い体躯に黒い鋭鱗。長い手足に赤い舌。
一言で言うならば、不気味な竜。
???『次は仕留めてやるよ』
そう言いながら、その竜は地上に落ちていった。
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- 34 : 2014/05/30(金) 23:14:13 :
音無「な、なんなの…?だってあの竜、飛竜じゃないよね?こんな高くまで跳んできたの…?」
松田『少し、話してみるか』
はるか下方を見下ろしながら、松田は呼びかける。
松田『おい。いきなり見ず知らずの竜を襲うって、どんな了見してんだお前は』
???『フン。お前が通りすがりだったら手は出してないさ』
姿は見えないが、竜のコミュニケーションはテレパシー。距離は関係ない。
???『お前ら、言霊の娘を狙ってるんだろ?じゃあ俺の敵だな』
松田『…やっぱり、賢者の誓約竜か』
???『そうだ。俺の名は斑井一式』
斑井『ま、冥土の土産にでもすればいいんじゃねーか?』
◆斑井一式…走竜・鋭鱗種
誓約者:村雨早春
*賢者・村雨早春のボディガードを担う竜で、【ヤマタノオロチ】の忌名を持つ。特別な能力はないが、忌名により8つの命に匹敵するものを与えられている。
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- 35 : 2014/06/01(日) 23:15:17 :
斑井は軽口を叩くと、再び松田を狙って跳躍し、腕を伸ばす。
松田『舐めんなよ蛇ヤロー』ブォン!
松田はその腕を尾で冷静に払い、蹴りを放った。
斑井『軽いキックだな』ガッ
だが、斑井はそれを余裕で受け止める。
松田『放しやがれ!』
松田「グオオオオオオオン!!」
一つの咆哮の後、松田は脚に絡む斑井をたたき落とそうと、一気に急降下する。
その体は地上すれすれまで落下し、無理やり斑井を地に落とす。
ズドオオオォォォン!!
斑井『ぐっ!…やるじゃねーの』
衝撃で手を離した斑井はそう言うと、上空へ戻っていく松田を睨んだ。
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- 36 : 2014/06/03(火) 21:43:16 :
松田『おいブス生きてるか?』
音無「うう…。激しい絶叫マシンに乗ってる気分……」
先ほどより高所を飛びながら、松田と音無は息をついていた。
音無「でも、この辺ならあの竜のジャンプも届かないよ。だから安心!」
松田『信用していいんだな』
音無「うん!誤差まできちんと考慮した予測だからね」
音無凉子は記憶を長く保持することができない。そのせいで、竜人なら必ず1つある能力すらも、記憶の底に眠ってしまっているのだ。
しかし、彼女には才能がある。
データから対象を分析し、その動きを予測する分析家の才能だ。
音無「ぱっとみた感じの筋肉量、あの時点での呼吸のリズム、重量感…エトセトラ」
音無「間違いない!あの竜はここまでは跳んでこないはずだよ!」ドヤァ
松田『調子に乗んなブス』
音無「ええ!?怒ったうえに罵るなんてひどいよ!むしろ褒めてくれたっていいじゃん!ねえねえねえねえ!」
松田『うるさい。鼓膜が破ける』
ぐずる音無をよそに、松田はじっと遠方を見据えていた。
松田(これで終わり…なわけないよな。あっさりすぎる)
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- 37 : 2014/06/05(木) 14:37:00 :
- 音無可愛い////
期待♪
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- 38 : 2015/07/01(水) 22:29:37 :
- 楽しみにしてます。期待してます。頑張ってください。
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- 39 : 2017/05/10(水) 20:33:00 :
- 更新、まだですか?
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- 40 : 2017/05/12(金) 12:17:31 :
- 続きが気になってるのに、更新が全然来てません
更新カモン
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