この作品は執筆を終了しています。
苗木「君が居なくなって」
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- 1 : 2014/04/02(水) 22:28:29 :
- 初投稿です。短いですが温かい目で見守ってくれると助かります。
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- 2 : 2014/04/02(水) 22:44:29 :
- 「………御馳走様」
「大丈夫か苗木……?しっかり栄養を摂らねば…」
「大丈夫だよ大神さん。……部屋に戻るね」
一回目の学級裁判が終わって二日が経過した。
舞園さんが殺され、桑田クンが犯人として処刑。
そして学級裁判で、舞園さんがボクを利用して殺人の計画を立てていた事が明らかになった。
その事実を知ったボクは、あの日から―――“ボクがあの時舞園さんの計画に気付いて、止めさせていたら”、“この殺人は何も気付かず部屋を譲ったボクの責任”という考えが頭の中を駆け回っていた。
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- 3 : 2014/04/02(水) 22:59:40 :
- ご飯を食べる気にもならず、軽く口に入れて終わり。
大神さんは自室に戻るボクを心配してくれるけど、そんな必要は無いのに。
ボクは―――――気付かなければいけない事に気付かず、のうのうと生きている殺人犯なのだから。
―――苗木・自室―――
部屋に戻ったボクは、力が抜けたようにベッドに身を投げた。
だが、何をしても自責の念はボクの心を掻き乱す。
ふと頭によぎったのは、あの時の――――教室内での舞園さんの顔。
『苗木くんだけは、何があっても………ずっと、私の味方で居て………!』
ボクはあの時、舞園さんを守ると言ったのに―――――
「(ごめん…………舞園さん)」
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- 4 : 2014/04/02(水) 23:19:18 :
- 気付いたら、ボクは不可解な場所に居た。
「(ああ、ボクは寝たのか……じゃあここは、夢の中………?)」
冷静に状況を分析したボクは辺りを見回す。だが、周りには暗闇が広がっているだけで、立っているより浮いている感覚に陥ってしまうような場所だった。
「(何なんだこの夢は…………?……あれ、光か…?)」
良く見ると、暗闇の遥か彼方に小さな光がぽつりと存在している。
その瞬間、ボクは光に向かって歩き出していた。
すると、光に急速に近付けた――――いや、光の方がボクに近付いてきた。
そのまま光は大きくなり、ボクは眩しい程の光に飲み込まれた。
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- 5 : 2014/04/02(水) 23:47:30 :
- 「(うわっ、眩しい…!)」
視界を手で覆う。すると光は数秒で徐々に消えていった。
「(なんだったんだ今のは……)」
辺りを見回すが、何も変化は――――
………………………………
何度も目を擦る。だけど、そこに居た“彼女”の笑顔はそこに存在していた。
そこに居たのは―――――――
「ふふっ、どうしたんですか?驚いた顔して」
「舞園、さん…………!」
そこに居たのは、間違いなく――――舞園さんだった。
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- 6 : 2014/04/03(木) 00:10:41 :
- 「なんで…………」
「夢の中に出て来ちゃ嫌ですか?そこまで嫌われてたなんて……」
「ううん、嫌なんかじゃないよ!」
「ふふ、冗談ですっ」
伏せていた顔を出し上げて笑いかけてくる舞園さん。
あの頃と変わらない、元気をくれる笑顔を向けてくる舞園さん。
そんな舞園さんに、ボクは………………
「舞園さん……ゴメン…ゴメン…!」
ボクは……………………………只謝る事しか出来なかった。
「………なんで苗木くんが謝るんですか。謝るのは私の方ですよ」
「でもっ……!ボクは、キミが苦しんでるのに何もしてあげられなくて……!結果的にキミと桑田クンを――――」
「苗木くん」
舞園さんが、強く抱き締めてきた。
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- 7 : 2014/04/03(木) 01:32:26 :
- 「ま、舞園さん……!?」
「苗木くんの責任なんか全然ありません。あの出来事は全て私のせいなんですから、自分を責めないで下さい」
彼女の言葉は、とても温かく………ボクの心に響いた。
「人より前向きなのが取り柄でしょ?今の苗木くんは苗木くんっぽくないです!私を励ましてくれてた時は凄く明るかったじゃないですか」
舞園さんの優しい言葉を聞いて……ボクは気付いた。―――あぁ、そうだったのか。ボクは…………ボクは…………
「舞園さん……!ボクは、怖かったんだ!いきなり舞園さんが死んで、居なくなって……!簡単に仲間がいなくなってしまう事が、辛くて…怖くて……!自分を責めていないと狂ってしまいそうだったんだ……!」
気付けばボクは泣いていた。溜め込んだ悲しみを涙に、気持ちを言葉にして。
「苗木くんは優しいですもんね。みんなに弱音を吐いたら、みんなも不安になる。そう思ったんでしょ?」
ボクは頷きを返す。続けて舞園さんは、ゆっくりとボクに語りかけた。
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- 8 : 2014/04/03(木) 01:58:14 :
- 「でも、そういう時にこそ仲間を頼るんです。みんなの言葉は、存在はきっと苗木くんの助けになりますから」
「みんなを、頼る……」
「そうです!苗木くん自身だって、誰かの助けになってますから」
体を離して、笑う舞園さん。彼女の笑顔は、まるで太陽のように、この暗闇の世界の中で光輝いていた。
「ありがとう舞園さん。ボクは……死んでしまった、キミや江ノ島さん、桑田クンの希望を背負って生きていくよ」
「ふふっ、やっと笑った」
「え?」
「苗木くん、全然笑わなかったから。やっと元気になりましたね」
「そうだね。もう挫けない。前だけを向いて、みんなと一緒に歩いていく」
「それでこそ苗木くんです!……もう、お別れの時間ですね」
そう言って悲しそうな表情を浮かべる舞園さん。だけどそれも束の間、彼女は何かを決心したような顔をした。
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- 9 : 2014/04/03(木) 02:21:05 :
- 「苗木くん、良く聞いて下さいね。――――――私、中学の頃から苗木くんの事が好きでした」
「え………………」
舞園さんからの突然の告白。心臓が飛び上がる程嬉しかった。
だって、ボクは………………
「舞園さ―――――んっ!」
「ん………………」
唇と唇が触れ合う感覚。舞園さんの顔が目の前に。
唇を離した舞園さんは、唖然としているボクに微笑んだ。
「“ボクも好きでした”って、言おうとしたんでしょ?」
光が再び、この暗闇の世界を照らし始める。
「なんで分かったの?」
「そんなの決まってるじゃないですか。私にはお見通しなんですよ」
舞園さんは照れたように顔を赤らめて、そして――――――――お決まりの“あの言葉”を呟いた。
「エスパーですから」
その瞬間、光が世界を満たした。
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- 10 : 2014/04/03(木) 02:32:03 :
- 「ふう、御馳走様でした」
「あら、元気が戻ったのね。何よりだわ」
「うん、心配掛けてごめんね霧切さん」
「し、心配したとは一言も言ってないわ」
「そっか……ボクは心配を掛けるような人間じゃないよね……」
「……人の反応で遊ぼうとするのは感心しないわね」
「あは、バレた?」
ありがとう舞園さん。
ボクは、不安や恐怖を跡形も無く消してしまえるような、みんなの希望になってみたい。
それは遠い未来の話かもしれないけど、いつか必ずなってみせる。
死んでしまったキミ達の分まで。
もし名前をつけるとしたら、それは――――――――
超高校級の希望――――かな。
Fin
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- 11 : 2014/04/03(木) 02:32:45 :
- これで終わりです、ありがとうございました。
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- 12 : 2014/04/03(木) 02:50:59 :
- 乙。良作だった
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- 13 : 2015/06/13(土) 19:03:10 :
- 乙です すごくよかったです
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